(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-129418(P2015-129418A)
(43)【公開日】2015年7月16日
(54)【発明の名称】換気材および軒換気構造
(51)【国際特許分類】
E04D 13/152 20060101AFI20150619BHJP
E04B 1/70 20060101ALI20150619BHJP
E04B 7/18 20060101ALI20150619BHJP
E04B 9/02 20060101ALI20150619BHJP
【FI】
E04D13/152 Z
E04B1/70 E
E04B7/18 B
E04B5/60 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-2028(P2014-2028)
(22)【出願日】2014年1月8日
(71)【出願人】
【識別番号】000001096
【氏名又は名称】倉敷紡績株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100167988
【弁理士】
【氏名又は名称】河原 哲郎
(72)【発明者】
【氏名】小野 為数
(72)【発明者】
【氏名】細谷 公隆
(72)【発明者】
【氏名】福島 健一
(72)【発明者】
【氏名】三澤 真
【テーマコード(参考)】
2E001
【Fターム(参考)】
2E001DB02
2E001FA14
2E001FA17
2E001GA12
2E001GA60
2E001HB02
2E001HB04
2E001HF12
2E001LA01
2E001NB01
2E001ND21
2E001ND23
(57)【要約】
【課題】施工および取り外しが容易な換気材を提供する。合わせて、施工および換気材の取り外しが容易な軒換気構造を提供する。
【解決手段】棒状に成形されたセメント系材料からなり、間隔を空けて略平行に配置された第1および第2の支持部材20、25と、通気口31が設けられて前記第1および第2の支持部材の間に配置された通気面32を備え、前記第1および第2の支持部材に固定された通気部材30とを有する換気材10である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
棒状に成形されたセメント系材料からなり、間隔を空けて略平行に配置された第1および第2の支持部材と、
通気口が設けられて前記第1および第2の支持部材の間に配置された通気面を備え、前記第1および第2の支持部材に固定された通気部材と、
を有する換気材。
【請求項2】
前記第1および第2の支持部材が比重0.7〜1.5のセメント系押出成形体である、
請求項1に記載の換気材。
【請求項3】
前記第1および第2の支持部材の間に形成される通気間隙の幅が最小となる部分における該幅が、前記通気面の幅より小さい、
請求項1または2に記載の換気材。
【請求項4】
前記第1および第2の支持部材は、その下部において外側に突出した見切り部を有し、
前記見切り部は、前記換気材に隣接して施工が予定される軒天井材の端部を覆うように形成されている、
請求項1〜3のいずれか一項に記載の換気材。
【請求項5】
軒裏空間と外部を隔絶する複数の軒天井材と、
前記軒天井材のいずれかの間に配され、軒裏空間と外部を連通する換気材とを有し、
前記換気材は、
棒状に成形されたセメント系材料からなり、間隔を空けて平行に配置された第1および第2の支持部材と、
通気口が設けられて前記第1および第2の支持部材の間に配置された通気面を備え、前記第1および第2の支持部材に固定された通気部材とを有し、
軒天井下地材に直接固定される、
軒換気構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物の軒天井に施工される換気材、および軒の換気構造に関する。
【背景技術】
【0002】
住宅等の軒には、屋根裏の劣化防止や法上の要請から、換気構造を備えたものが求められている。従来から多く採用されている換気構造は、軒天井の先端側または基端側に換気材を設けるものである。より具体的には、先端側換気では軒天井材の先端部と鼻隠しまたは破風板の間に、基端側換気では軒天井材の基端部と外壁材の間に換気材を挟み込む。この換気材によって、軒天井の上下を連通する通気路が形成され、屋根と軒天井に挟まれた軒裏空間およびそれに連なる屋根裏の換気が行われる。
【0003】
しかし、このような構造では、通気路に木の葉等が詰まることなどにより、清掃や交換のために換気材を取り外す場合、軒天井材や鼻隠し等を外さなければならず、高所での煩雑な作業が必要であった。これに対して、特許文献1には、換気部材本体と固定部材からなり、固定部材の穴に釘、木ねじ等の固着具を貫通させて野縁等の軒天井下地材に直接固定することにより、施工性が改善された換気部材が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−183913号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載された換気部材では、換気部材本体と固定部材が分離しており、固定部材を換気部材本体内でスライドさせて固定しようとする野縁等の位置に合わせる必要があるため、位置合わせに手間がかかり、施工性にはさらなる改善の余地があった。
【0006】
本発明は、上記を考慮してなされたものであり、より容易に施工および取り外しが可能な換気材、ならびにより容易に施工および換気材の取り外しが可能な軒換気構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題に対して、本発明の換気材は第1および第2の支持部材と、通気部材とを有する。そして、第1および第2の支持部材は、棒状に成形されたセメント系材料からなり、間隔を空けて平行に配置されている。そして、通気部材は、通気口が設けられて前記第1および第2の支持部材の間に配置された通気面を備え、前記第1および第2の支持部材に固定されている。
【0008】
ここでセメント系材料とは、水硬性の無機物を含む組成物を硬化させた材料である。前記第1および第2の支持部材は、好ましくは、比重0.7〜1.5程度のセメント系押出成形体である。押出成形であれば、長手方向(押出方向)に断面形状がほぼ同一な成形体が容易に得られ、通気部材を一体化するのが容易であり、さらに一対の支持部材を精度良く容易に製造することができる。また、比重0.7〜1.5、特に0.7〜1.3程度の押出成形体であれば、防炎性能を維持しながら軽量性による施工性の向上の効果も生じる。なお、セメント系押出成形体は、ビス、ネジ、釘等の固着具により固定可能である。
【0009】
好ましくは、前記第1および第2の支持部材の間に形成される通気間隙の幅が最小となる部分における該幅は、前記通気面の幅より小さい。
【0010】
ここで、通気面の幅とは、第1の支持部材に当接する通気面の一側端から第2の支持部材に当接する通気面の他側端までの幅をいう。これにより、無機材料である支持部材間の通気間隙を換気に必要な範囲で小さくすることができるので、防火性が向上する。特に、セメント系であるがゆえ防炎性能に優れ、単に金属製の通気部材を支持部材無しで直接軒天井材に固定する場合より、防炎性能に優れる。
【0011】
好ましくは、前記第1および第2の支持部材は、その下部において外側に突出した見切り部を有し、前記見切り部は、前記換気材に隣接して施工が予定される軒天井材の端部を覆うように形成されている。
【0012】
ここで下部とは、換気材が施工された状態において下方に位置する部分をいう。また、外側とは、換気材の幅方向の中心から遠い側をいう。これにより、軒天井材の端部を保護することができ、軒天井材の寸法調整や施工がより容易となる。
【0013】
本発明の軒換気構造は、軒裏空間と外部を隔絶する複数の軒天井材と、前記軒天井材のいずれかの間に配置され、軒裏空間と外部を連通する換気材とを有する。そして、前記換気材は、棒状に成形されたセメント系材料からなり、間隔を空けて平行に配置された第1および第2の支持部材と、通気口が設けられて前記第1および第2の支持部材の間に配された通気面を備え、前記第1および第2の支持部材に固定された通気部材とを有し、軒天井下地材に直接固定される。
【0014】
ここで、軒には、切り妻屋根の妻側のそば軒も含む。軒裏空間とは、屋根と軒天井に挟まれた空間をいう。軒天井下地材とは、野縁などの、軒裏空間にある各種構造材、補助構造材をいう。このような構造により、施工が容易となり、換気材の取り外しも容易となる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の換気材または軒換気構造によれば、施工が容易であり、またメンテナンス時の換気材の取り外しが容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の一実施形態の換気材を示す図である。
【
図3】本発明の一実施形態の換気材の施工例を示す図である。
【
図4】本発明の他の実施形態の換気材を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の換気材の一実施形態を図に基づいて説明する。
【0018】
図5は切り妻屋根を有する家屋を示している。家屋80の外壁面から外に突き出した屋根81の部分が軒82、84であり、その先端部には鼻隠し83または破風板85が設けられている。妻側の軒84はそば軒または登り軒と呼ばれることがある。本実施形態の換気材は軒82、84下の軒天井に施工される。
【0019】
図1は、本実施形態の換気材の断面斜視図である。以下において、上または下とは、換気材が施工された状態において上または下を意味する。
図1は、換気材が施工された状態での向きに概ね一致している。また、内側または外側とは、換気材の幅方向の中心に近い側または中心から遠い側を意味する。
【0020】
図1において、換気材10は、第1の支持部材20、第2の支持部材25および通気部材30を有する。一対の支持部材20、25は、比重1.1のセメント系成形体であり、いずれも棒状に押出成形され、間隔を開けて略平行に、つまり並行して配置されている。通気部材30は、通気口31が設けられた通気面32を備える。通気面32は支持部材20、25間にあって、その上下が開放されている、すなわち支持部材と当接していない部分である。通気部材30は一対の支持部材20、25に固定されて、換気材10の全体が一体化されている。
【0021】
通気路は換気材10の下側から通気口32、支持部材20、25の間に形成される通気間隙11を経て、換気材10の上側に抜けるように形成されている。本実施形態では、一対の支持部材20、25の間に形成される通気間隙11が最も狭い部分における幅W
Gは、通気面32の幅W
Sよりも小さい。
【0022】
支持部材20、25は幅方向の断面形状が対称に成形されており、その間隔は下部で広く、上部で狭くなっている。それぞれの支持部材は上面に平らな面を有し、この面が野縁等の軒天井下地材に直接または間接に当接する。支持部材20、25の下部には外側に突出する突条が設けられて、見切り部27を形成している。
【0023】
支持部材20、25はセメント系材料からなる。セメント系材料とは、水硬性の無機物を含むセメント系組成物を硬化させた材料である。なお、ビス、ネジ、釘等の固着具が貫通可能なものがより好ましい。水硬性の無機物としては、各種ポルトランドセメント、高炉セメント、フライアッシュセメント、シリカセメントなどを用いることができる。また、セメント系材料は、軽量化のために軽量化骨材等を含んでいてもよいし、補強等のためにパルプ、水溶性セルロース、鉱物繊維等を含んでいてもよいし、着色のために顔料を含んでいてもよい。セメント系材料には、スレート材、珪酸カルシウム材、スラグ石膏材が含まれる。
【0024】
各種のセメント系材料のなかでも、耐火性に優れ、比重が軽いことから、珪酸カルシウムを主成分とする珪酸カルシウム系材料を用いることが好ましい。また、強度に優れることから、パルプで補強された珪酸カルシウム系材料を用いることがさらに好ましい
【0025】
支持部材20、25の成形には、各種公知の方法を用いることができる。なかでも、比較的低コストで棒状体を製造することができる押出成形法によることが好ましい。
【0026】
通気部材30の通気面32には、幅方向に長いスリット状の通気口31が長手方向に並列して設けられている。通気部材30は、通気面32の両端部で上方に折曲し、支持部材20、25の内側面に沿って延伸している。通気部材は、さらに支持部材の表面に沿って、上部で外向きに折曲・延伸し、外側端部で下方に折曲・延伸している。このように支持部材を囲うように成形された通気部材の長手方向端部から、支持部材をスライドさせて挿入することにより、通気部材と支持部材が一体化される。さらに、
図1A部の断面を
図2に示すように、通気部材30の上面には、コの字状の切り込みにより形成した舌状片を下方に折曲、傾斜させることによって、ばねが形成されている。挿入された支持部材は、ばねに押さえられてしっかりと固定され、また、逆方向にスライドして抜けることが防止される。
【0027】
通気部材30の材料は特に限定されないが、防火性の点からスチール、アルミ等の金属を用いることが好ましい。通気部材30は、その材質に応じて、ロールフォーミング等による折り曲げ加工、押出成形、プレス加工、またはこれらの組み合わせによって製造することができる。
【0028】
図3に、本実施形態の換気材を施工した軒構造を示す。
図3は、
図5の軒82に相当する部位の断面を示している。
【0029】
図3において、軒82は、屋根の下地となる野地板50、野地板を支える垂る木51、鼻隠し52、鼻隠し下地材53、野縁41、42、軒天井材40などで構成されている。軒天井材40は縦野縁41や横野縁42に釘、木ねじなどで固定されている。軒天井材40は、外壁材54と鼻隠し52の間の軒下を覆って、軒裏空間と外部を隔絶している。
【0030】
本実施形態の換気材10は、複数ある軒天井材40のいずれかの間に設置される。換気材は、ビス、ネジ、釘等の固着具を支持部材(
図1の20、25)に貫通させて、縦野縁41等の軒天井下地材に直接固定されている。
【0031】
換気材10を軒天井に取り付けるにあたっては、軒天井材40を軒基端側(外壁54側)から順に施工していき、換気材10を施工後、先端側の軒天井材40を施工し、最後に鼻隠し52を施工してもよい。換気材10の施工は、換気材の全体が一体化されており、支持部材の適当な位置にビス等を貫通させて野縁等に固定することができるので、極めて容易である。また、本実施形態の換気材10を施工するに当たって、軒天井材や鼻隠し等に予め溝や穴を形成しておく必要はない。
【0032】
あるいは、建築工事の進捗状況によっては、換気材10の施工位置を空けてすべての軒天井材40を施工し、鼻隠し52を施工した後に、2枚の軒天井材の間に換気材を施工してもよい。本実施形態の換気材10は、そのように最後に施工する場合でも、軒天井材の間に挿入してビス等で野縁41等に直接固定することが可能である。
【0033】
さらに、換気材10を取り外す場合にも、軒天井材40や鼻隠し52を外す必要がないので、竣工後のメンテナンス時に換気材を取り外すことも容易である。取り外した換気材は、清掃した後に元通りに施工してもよいし、金属製の通気部材を交換して施工してもよいし、換気材全体を新しいものに交換して施工してもよい。
【0034】
また、本実施形態の換気材10には、支持部材に見切り部(
図1の22、27)が設けられているので、換気材と隣接する軒天井材40との隙間を隠すことができる。これによって、軒天井材の端部を保護することができる。また、軒天井材を切断して寸法調整を行う場合にも切断に高い精度が求められないし、部材の固定時に多少のずれが出ても目立たないという利点がある。
【0035】
本実施形態の換気材10は、住宅に防火性能が求められる場合にも好適に用いることができる。その場合、換気材の通気部材30は、金属製のものを用いるのが好ましい。
【0036】
住宅に防火性能が求められる場合は、軒天井材40にも珪酸カルシウム板等の耐火材が用いられる。軒の防火性能を向上させるためには、軒天井材のない通気路は換気が確保できる範囲で断面積が小さい方が好ましい。一方、通気面の開口率を100%にすることはできないため、通気面の面積は換気の確保に必要な通気路の断面積よりも大きくなる。そのため、本実施形態の通気部材30に相当する金属製部材のみで換気材を構成すると、軒天井材の隙間にある通気面のほぼ全体が軒裏空間から見えることになり、火災時に高温に熱せられた金属が軒裏空間に放射する熱量が大きくなり、軒裏空間の温度が上昇しやすくなる。
【0037】
これに対して、本実施形態の換気材10では、
図1において、支持部材20、25の間に形成される通気間隙11の最小幅W
Gは、通気面32の幅W
Sよりも小さくなっている。このW
Gを換気に必要な範囲で小さくすることによって、軒裏空間から見える通気面の面積を小さくすることができる。これは、通気面から軒裏空間への輻射伝熱における形態係数が小さくなることを意味する。例えば、換気を確保するために幅15mm以上の間隙が必要な場合、通気面の開口率が50%であれば通気面32の幅W
Sは30mm以上が必要となるが、支持部材20、25の間に形成される通気間隙11の最小幅W
Gは15mmとすることができる。その結果、火災時に金属製部材から軒裏空間に放射される熱量を小さくすることができる。この点において、本実施形態の換気材は、本実施形態の通気部材に相当する金属製部材のみで構成された換気材よりも優れる。
【0038】
住宅にさらに高度な防火性能が求められる場合は、火災時に通気を遮断することができる。これは、本実施形態の換気材と公知の方法を組み合わせることによって実現することができる。例えば、通気口にダンパーを設け、火災によって温度ヒューズが溶断するとダンパーが閉じる構造とすることができる。あるいは、通気面上側の側方などに熱膨張断熱材を備えておき、火災時に断熱材が膨張することによって通気路が閉塞されるようにすることができる。
【0039】
本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その技術的思想の範囲内で種々の変形が可能である。
【0040】
例えば、通気面32の形状は、換気に必要な通気量が得られれば、特に限定されない。個々の通気口31の形状は任意に選択することができるし、通気面をがらり等のルーバー構造としてもメッシュスクリーンとしてもよい。
【0041】
例えば、通気部材30と支持部材20、25を一体化するには、
図4に示すように、通気部材を支持部材にビスやステープラー37などで固定してもよい。
【符号の説明】
【0042】
10 換気材
11 通気間隙
20 第1の支持部材
22 見切り部
25 第2の支持部材
27 見切り部
30 通気部材
31 通気口
32 通気面
36 ばね
37 ステープラー
40 軒天井材
41 縦野縁
42 横野縁
43 木ねじ(固着具)
50 野地板
51 垂る木
52 鼻隠し
53 鼻隠し下地材
54 外壁材
80 家屋
81 屋根
82、84 軒
83 鼻隠し
85 破風板
W
G 通気間隙11の最小幅
W
S 通気面32の幅