前記冷媒回路は、前記凝縮器で凝縮された液冷媒と、前記蒸発器で蒸発されたガス冷媒との間で熱交換を行う内部熱交換器を備えることを特徴とする請求項1または2に記載の冷凍装置。
前記非共沸混合冷媒は、同一圧力条件における液冷媒温度とガス冷媒温度との温度グライドが10℃以上であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の冷凍装置。
【背景技術】
【0002】
一般に、沸点の異なる2種類以上の冷媒を混合した非共沸混合冷媒を用い、少なくとも圧縮機、凝縮器、減圧装置、蒸発器を順次接続した冷媒回路を備えた冷凍装置が知られている。この種の冷凍装置では、冷媒回路中に余剰冷媒が発生した場合、この余剰冷媒に含まれる高沸点の冷媒が、例えば、冷媒回路中に設けられたアキュムレータや、凝縮器または蒸発器内に溜まり易くなる。このため、冷媒回路に封入した際の冷媒の組成比率(以下、封入組成という)と、実際に冷媒回路を循環している冷媒の組成比率(以下、循環組成という)とが異なる。
冷媒回路内の循環組成が変化すると、冷媒の圧力と飽和温度との関係が変化して冷却能力も大幅に変化する。このため、冷凍装置を安定して、かつ、所定の能力を発揮できるようにするには、循環組成を正確に把握し、この循環組成に応じて圧縮機の回転数や減圧装置の開度を調整する必要がある。
冷媒回路内の循環組成を把握する技術として、従来、圧縮機の出入口で冷媒回路の主回路から分岐したバイパス回路を設け、このバイパス回路に非共沸混合冷媒を高沸点冷媒と低沸点冷媒とに分離する冷媒精留器及び毛細管を備え、更に、この毛細管の入口側に第1温度検出手段を、出口側に第1圧力検出手段と第2温度検出手段を設け、第1圧力検出手段により検出した圧力、第1温度検出手段および第2温度検出手段により検出したそれぞれの温度を用いて冷媒回路内の循環組成を演算する組成演算手段を備えた冷凍サイクル装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の構成では、冷媒回路の主回路から分岐したバイパス回路を設け、このバイパス回路に各種の機器を設けるといった循環組成検出を検出するための専用の機構を備えることを要し、装置構成が煩雑化するという問題があった。
本発明の目的は、上述した従来の技術が有する課題を解消し、簡単な構成で、非共沸混合冷媒の循環組成を正確に知ることができる冷凍装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明は、沸点の異なる2種類以上の冷媒を混合した非共沸混合冷媒を用い、少なくとも圧縮機、凝縮器、減圧装置、蒸発器を順次接続した冷媒回路を備えた冷凍装置において、前記非共沸混合冷媒の封入組成に基づいて、前記冷媒回路を流れる前記非共沸混合冷媒の仮循環組成を仮定し、この仮循環組成と前記減圧装置の出入口における冷媒温度及び冷媒圧力とに基づいて、当該減圧装置の出入口のエンタルピをそれぞれ算出し、これら算出した各エンタルピの差分が所定値以下となる仮循環組成を、前記冷媒回路を流れる前記非共沸混合冷媒の循環組成とする循環組成算出手段を備えたことを特徴とする。
【0006】
この構成において、前記循環組成算出手段は、前記減圧装置の前後のエンタルピが略一致した場合の仮循環組成を前記循環組成としても良い。また、前記冷媒回路は、前記凝縮器で凝縮された液冷媒と、前記蒸発器で蒸発されたガス冷媒との間で熱交換を行う内部熱交換器を備えても良い。
【0007】
また、前記非共沸混合冷媒は、同一圧力条件における液冷媒温度とガス冷媒温度との温度グライドが10℃以上であっても良い。また、前記非共沸混合冷媒に含まれる少なくとも一の冷媒は、地球温暖化係数が10未満であっても良い。また、前記非共沸混合冷媒は、少なくともHFO1234ZEまたはHFO1234YFを含んでも良い。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、仮循環組成と減圧装置の出入口における冷媒温度及び冷媒圧力とに基づいて、当該減圧装置の出入口のエンタルピをそれぞれ算出し、これら算出した各エンタルピの差分が所定値以下となる仮循環組成を、冷媒回路を流れる非共沸混合冷媒の循環組成とする循環組成算出手段を備えたため、冷媒回路の構成を煩雑にすることなく、簡単な構成で、非共沸混合冷媒の循環組成を正確に知ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
図1は、本実施形態にかかる冷凍装置100の冷媒回路図である。冷凍装置100は、
図1に示すように、圧縮機11、凝縮器13、内部熱交換器15、膨張弁(減圧装置)17、蒸発器19、内部熱交換器15、アキュムレータ21、及び、圧縮機11を順次環状に配管接続した冷媒回路10を備え、この冷媒回路10内に非共沸混合冷媒を封入して構成されている。
凝縮器13及び蒸発器19には、それぞれ凝縮器13及び蒸発器19に送風する送風機23,25が設けられている。
内部熱交換器15は、凝縮器13で凝縮された高圧の液冷媒と、蒸発器19で蒸発された低圧のガス冷媒との間で熱交換を行うものである。本実施形態では、内部熱交換器15として、凝縮器13と膨張弁17とを接続する高圧側流路27の周囲に、蒸発器19とアキュムレータ21とを接続する低圧側流路29が設けられた二重管式の熱交換器が用いられている。
【0011】
また、冷媒回路10には、膨張弁17の入口17A側、すなわち、内部熱交換器15と膨張弁17との間に上記高圧側流路27を流れる高圧の液冷媒の温度T
Hを検出する第1温度センサ31と、当該液冷媒の圧力P
Hを検出する第1圧力センサ33とが設けられる。さらに、冷媒回路10には、膨張弁17の出口17B側、すなわち、膨張弁17と蒸発器19との間に上記低圧側流路29を流れる低圧のガス冷媒の温度T
Lを検出する第2温度センサ35と、当該ガス冷媒の圧力P
Lを検出する第2圧力センサ37とが設けられる。なお、本実施形態では、膨張弁17の入口17A側に、高圧の液冷媒の圧力P
Hを検出する第1圧力センサ33を設けているが、これに限るものではなく、圧縮機11から膨張弁17の入口17Aまでの配管長から、当該配管を流れる際の圧力損失が分かる場合には、圧縮機11の吐出圧力を検出し、この吐出圧力から圧力損失分を差し引いた補正値を利用しても良い。
第1温度センサ31、第1圧力センサ33、第2温度センサ35及び第2圧力センサ37は、制御装置(循環組成算出手段)40にそれぞれ接続されている。制御装置40は、冷凍装置100全体の動作の制御を司るものであり、圧縮機11の運転周波数、膨張弁17の開度を制御するとともに、後述する非共沸混合冷媒の循環組成を算出する。
【0012】
次に、非共沸混合冷媒について説明する。
非共沸混合冷媒は、沸点の異なる2種類以上の冷媒を混合した冷媒であり、沸点の高い冷媒が沸点の低い冷媒よりも先に凝縮する。このため、非共沸混合冷媒の等温線は、飽和液線から飽和蒸気線に向かって右下がりであり、同一圧力条件における飽和液線と飽和蒸気線には、所定の温度グライドが生じる。
一方で、近年、地球温暖化問題が注目を浴び、空気調和装置や冷凍装置で使用される冷媒に対しても、COPが高く環境負荷がより小さいものが望まれている。特に、地球温暖化問題に対する注目度は高く、温度グライドが大きく(例えば10℃〜20℃)なったとしても、地球温暖化係数(Global Warming Potential)GWPのより小さい冷媒が求められている。
【0013】
本実施形態では、非共沸混合冷媒として、CO
2(二酸化炭素)、HFC32(R32)及びHFO1234ZE(R1234ZE)を所定比率で混合したものが冷媒回路10に封入されている。この冷媒の封入時の組成比率(封入組成)は、制御装置40の記憶部(不図示)に記憶されている。
ここで、CO
2とHFO1234ZEは、地球温暖化係数GWPがそれぞれ1と4であり、地球温暖化係数GWPが10未満の非常に小さな冷媒である。このため、これらを混合することにより、地球温暖化係数GWPの小さな非共沸混合冷媒とすることが可能となる。
【0014】
図2は、上記した非共沸混合冷媒が封入された冷媒回路10におけるp−h線図である。
この
図2に示す点A〜Fは、
図1の冷媒回路10における点A〜Fの状態を示したものである。
図2に示すように、本実施形態で使用される非共沸混合冷媒は、同一圧力条件における飽和液線41と飽和蒸気線43との間に10℃以上の大きな温度グライドが生じる冷媒である。
一般に、温度グライドが大きな冷媒を用いた場合、夏期の外気温度(例えば35℃)の下で、外気によってすべて凝縮させるには、この35℃の等温線42と飽和液線41とが交差する点G(
図1)と同一圧力まで圧縮する必要があり、圧縮比が高くなる傾向にある。
このため、本実施形態では、冷媒回路10は、上記した内部熱交換器15を備え、この内部熱交換器15にて、凝縮器13で凝縮された液冷媒と、蒸発器19で蒸発されたガス冷媒との間で熱交換を行うことにより、外気温度が高い状況下にあっても、圧縮機11の吐出圧力を点Gまで高くすることなく、内部熱交換器15の出口(点D)で完全に凝縮させることができ、その分圧縮比を小さくできる。
【0015】
ところで、非共沸混合冷媒が封入された冷凍装置100では、冷媒回路10中に余剰冷媒が発生した場合、この余剰冷媒に含まれる高沸点の冷媒が、冷媒回路10中に設けられたアキュムレータ21や、凝縮器13または蒸発器19内に溜まり易くなる。このため、冷媒回路10に封入した際の下の封入組成と、実際に冷媒回路10を循環している循環組成とが異なる。冷媒回路10内の循環組成が変化すると、冷媒の圧力と飽和温度との関係が変化して冷却能力も大幅に変化することとなる。
【0016】
図3は、冷媒が封入組成のまま循環したと仮定した場合におけるp−h線図である。
通常、冷凍サイクルにおいて、膨張弁17の前後では、冷媒は等エンタルピ変化をする(
図2点D−点E参照)。しかし、上記したように、非共沸混合冷媒では、封入組成と実際の循環組成とが異なるため、封入組成と各点A〜Fにおける冷媒温度、圧力からp−h線図を描いた場合、
図3に示すように、膨張弁17の前後のエンタルピが異なり、点D−点Eを結ぶ線が傾斜してしまう。この傾向は、温度グライドの大きな冷媒ほど、顕著となるため、本実施形態のように、温度グライドの大きな非共沸混合冷媒を用いた冷凍装置では、冷凍装置を安定して、かつ、所定の能力を発揮できるようにするため、循環組成を正確に把握し、この循環組成に応じて圧縮機の回転数や減圧装置の開度を調整する必要がある。
【0017】
次に、
図4に示すフローチャートに基づき循環組成を算出する手順について説明する。
制御装置40は、高圧側の乾き度Xを仮定する(ステップS1)。乾き度Xは、循環している冷媒における気相冷媒の比率を示すものであり、0〜1の中から任意の値が選択されて仮定される。
続いて、制御装置40は、仮定した乾き度Xに基づいてガス組成(仮循環組成)α
gasを仮定する(ステップS2)。具体的には、制御装置40に記憶された封入組成αと、第1圧力センサ33で検出された膨張弁17の入口17A側の冷媒圧力P
Hと、乾き度Xとに基づいて算出された値をガス組成α
gasとして仮定する。
【0018】
続いて、制御装置40は、仮定したガス組成α
gasと、膨張弁17の入口17A側の冷媒温度T
H、冷媒圧力P
Hとに基づいて、膨張弁17の入口17A側におけるエンタルピh
Hを算出すると共に、仮定したガス組成α
gasと、膨張弁17の出口17B側の冷媒温度T
L、冷媒圧力P
Lとに基づいて、膨張弁17の出口17B側におけるエンタルピh
Lを算出する(ステップS3)。
そして、制御装置40は、入口17A側のエンタルピh
Hと、出口17B側のエンタルピh
Lとを比較し、これらエンタルピh
H,h
Lが一致したか否かを判別する(ステップS4)。この判別では、エンタルピh
H,h
Lが完全に一致するだけでなく、略一致(例えば、エンタルピの値の整数部分が一致)した場合をも含むものとする。
【0019】
この判別において、エンタルピh
H,h
Lが一致していない場合(ステップS4;No)には、制御装置40は、処理をステップS1に戻すとともに、先ほどとは異なる乾き度Xを仮定した後に、ステップSS〜ステップS4の処理を繰り返し実行する。
一方、エンタルピh
H,h
Lが一致した場合(ステップS4;Yes)には、制御装置40は、これらエンタルピh
H,h
Lを算出する際に用いたガス組成α
gasを、実際に循環している循環組成α´として設定して処理を終了する(ステップS5)。
制御装置40は、設定された循環組成α´の下での、膨張弁17の開度や圧縮機11の周波数の最適な制御を行い、冷凍装置を安定して、かつ、所定の能力を発揮できる制御を実現する。制御装置40は、上記した処理手順を定期的に行うことにより、リアルタイムに変動する循環組成α´に追従することができる。
【0020】
上記した実施形態では、算出したエンタルピh
H,h
Lが一致したか否かで、ガス組成α
gasを循環組成α´とするか判別していたが、これに限るものではなく、算出したエンタルピh
H,h
Lの差分値が所定値(例えば、3kJ/kg)以下の場合には、該エンタルピh
H,h
Lを算出する際に用いたガス組成α
gasを、実際に循環している循環組成α´として設定しても良い。この構成では、循環組成α´を短時間で算出することができ、循環組成α´を算出する構成をより簡素化することができる。
【0021】
以上、説明したように、本実施形態によれば、沸点の異なる2種類以上の冷媒を混合した非共沸混合冷媒を用い、少なくとも圧縮機11、凝縮器13、膨張弁17、蒸発器19を順次接続した冷媒回路10を備えた冷凍装置100において、非共沸混合冷媒の封入組成αに基づいて、冷媒回路10を流れる非共沸混合冷媒のガス組成α
gasを仮定し、このガス組成α
gasと膨張弁17の出入口における冷媒温度T
H,T
L及び冷媒圧力P
H,P
Lとに基づいて、当該膨張弁17の出入口のエンタルピh
H,h
Lをそれぞれ算出し、これら算出した各エンタルピh
H,h
Lが略一致した場合のガス組成α
gasを実際の循環組成α´とする循環組成算出手段としての制御装置40を備えたため、冷媒回路10の構成を煩雑にすることなく、簡単な構成で、非共沸混合冷媒の循環組成α´を正確に知ることができる。
【0022】
また、本実施形態によれば、冷媒回路10は、凝縮器13で凝縮された高圧の液冷媒と、蒸発器19で蒸発された低圧のガス冷媒との間で熱交換を行う内部熱交換器15を備えたため、外気温度が高い状況下にあっても、圧縮機11の吐出圧力を、外気温度と飽和液線とが公差する圧力以上に高めることなく、内部熱交換器15の出口で完全に凝縮させることができ、その分圧縮比を小さくできる。この構成は、温度グライドの大きな(10℃以上の)冷媒ではより効果的である。
【0023】
また、本実施形態によれば、非共沸混合冷媒に含まれる少なくとも一の冷媒は、地球温暖化係数GWPが10未満であるため、これらを混合することにより、地球温暖化係数GWPの小さな非共沸混合冷媒とすることが可能となる。
【0024】
以上、本発明を実施するための形態について述べたが、本発明は既述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術思想に基づいて各種の変形および変更が可能である。例えば、非共沸混合冷媒に混合される冷媒の種類、及び、比率は、冷凍装置100の環境、負荷等に応じて適宜変更することができる。
また、本実施形態では、非共沸混合冷媒に混合される冷媒の一つとして、HFO1234ZEを例示したが、これに限るものではなく、同様な特性を有するものであれば、例えば、HFO1234YFを含む構成としても良い。