【解決手段】帯電ローラの接離機構には帯電ローラ12を感光体ドラム10に当接する方向に付勢する押し螺旋バネ52と、帯電ローラ12の回転軸51に遊びを持って嵌合するカム54の円環部55の外周面に形成された凸部56とを設けられ、カム54が回転して凸部56を感光体ドラム10の端部周面に当接させて帯電ローラ12を感光体ドラム10から間隙dだけ離隔する位置に移動させると離隔用リブ57が帯電ローラ12の回転軸51に下方から当接して帯電ローラ12を固定して離隔状態を維持する。カム54が離隔解除方向に回転し感光体ドラム10との係合から外れた凸部56はストッパ用リブ58も当接して回転を制止され、帯電ローラ12の感光体ドラム10への圧接が維持される。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
[実施例1]
【0015】
図1は、本発明の実施例1に係るフルカラーの画像形成装置(以下、単にプリンタ、又は装置本体という)の内部構成を説明する断面図である。
【0016】
図1に示すプリンタ1(以下、装置本体1とも言う)は、電子写真式で二次転写方式のタンデム型のカラー画像形成装置であり、画像形成部2、転写ベルトユニット3、トナー供給部4、給紙部5、ベルト式定着ユニット6、及び両面印刷用搬送ユニット7で構成されている。
【0017】
上記画像形成部2は、いわゆる背面転写方式で転写ベルト8の下部走行部表面8aにトナー画像を転写するために、その転写ベルト8の下部走行部表面8aに接して上流側から下流側(同図の右側から左側)へ4個の画像形成ユニット9(9k、9c、9m、9y)を多段式に並設した構成をとっている。
【0018】
上記4個の画像形成ユニット9のうち上流側の3個の画像形成ユニット9y、9m及び9cは、それぞれ減法混色の三原色であるイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)の色トナーによるモノカラー画像を形成する。
【0019】
また、画像形成ユニット9kは、主として文字や画像の暗黒部分等に用いられるブラック(K)トナーによるモノクロ画像を形成する。上記の各画像形成ユニット9は、画像を現像するトナーの色を除き全て同じ構成である。したがって、以下イエロー(Y)のトナー用の画像形成ユニット9yを例にしてその構成を説明する。
【0020】
画像形成ユニット9は、最上部に像担持体としての感光体ドラム10を備えている。この感光体ドラム10は、その周面が例えば有機光導電性材料で構成されている。この感光体ドラム10の周面に当接し又は近傍を取り巻いて、クリーナ11、帯電ローラ12、光書込ヘッド13、及び現像器14の現像ローラ15が配置されている。
【0021】
書込ヘッド13は、矢印bで示すように、感光体ドラム10に対し近接する印字時の近接位置と、保守時等に画像形成ユニット9を装置本体前方に引き出す際に、下方に降下して感光体ドラム10から離れる離間位置とに移動可能に装置本体1のフレームに保持されている。
【0022】
現像器14は、外部を覆うユニット筐体16、内部に設けられた隔壁17、現像ローラ15、第1の攪拌搬送スクリュー18、及び第2の攪拌搬送スクリュー19を備えている。第1及び第2の攪拌搬送スクリュー18及び19は、特には図示しないが、スクリュー軸と、このスクリュー軸と一体に構成されて回転するフィンから成る。
【0023】
この現像器14には、トナー供給部4のトナー補給容器20(20y、20m、20c、20k)から、同図にはY、M、C、Kで示すようにイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)のいずれかのトナーが供給される。
【0024】
転写ベルトユニット3は、装置本体のほぼ中央で図の左右方向に扁平なループ状になって延在する無端状の上述した転写ベルト8と、この転写ベルト8を掛け渡されて転写ベルト8を図の矢印aで示す反時計回り方向に循環移動させる駆動ローラ21と従動ローラ22を備えている。
【0025】
上記の転写ベルト8には、一次転写ローラ23がユニットと一体に組み込まれている。一次転写ローラ23は転写ベルト8を介して感光体ドラム10に圧接し、下方を循環移動する転写ベルト8の下部走行部表面8aにトナー像を直接転写(一次転写)する。
【0026】
転写ベルト8は、そのトナー像を更に用紙に転写(二次転写)すべく用紙への二次転写部24まで搬送する。二次転写部24は、駆動ローラ21に隣接して下流側(図では上方)に配置された転写補助ローラ25と、この転写補助ローラ25に転写ベルト8を介して圧接する二次転写ローラ26とで形成されている。
【0027】
転写ベルト8には、ベルトクリーナ27が配置されている。ベルトクリーナ27は、転写ベルト8の従動ローラ22に掛け渡されている表面に当接するクリーニングブレード28を備えている。また、ベルトクリーナ27の左方から下方にかけて隣接して、廃トナー回収容器29が着脱自在に配置されている。
【0028】
ベルトクリーナ27は、クリーニングブレード28により転写ベルト8の表面に残留する廃トナーを擦り取って除去し、その廃トナーを不図示の搬送スクリューにより廃トナー回収容器29に送り込んでいる。
【0029】
トナー供給部4は、転写ベルト8の上部走行部の上方に配置される4個のトナー補給容器20(20y、20m、20c、20k)を着脱自在に備えている。4個のトナー補給容器20には前述したようにイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)のトナーが収容されている。
【0030】
これら4個のトナー補給容器20は、
図1では転写ベルトユニット3の向う側に隠れて見えないが、それぞれ装着部のトナー供給口に続くトナー供給路を介して、それぞれに対応する画像形成ユニット9の現像器14と連結されている。
【0031】
このトナー供給部4は、特には図示しないが、
図1に示す印刷実行時位置から、それより上方の保守位置に、昇降可能に装着部を介してプリンタ1本体のフレームに保持されている。
【0032】
給紙部5は、上下2段に配置された2個の給紙カセット30(30a、30b)を備えている。2個の給紙カセット30の給紙口(図の右方)近傍には、それぞれ用紙取出ローラ31、給送ローラ32、捌きローラ33、待機搬送ローラ対34が配置されている。
【0033】
待機搬送ローラ対34の用紙搬送方向(図の鉛直上方向)には、転写ベルト8、転写補助ローラ25、二次転写ローラ26による前述した用紙への二次転写部24が形成されている。
【0034】
この二次転写部24の下流(図では上方)側にはベルト式熱定着ユニット6が配置され、ベルト式熱定着ユニット6の更に下流側には、定着後の用紙をベルト式熱定着ユニット6から搬出する搬出ローラ対36、及びその搬出される用紙を装置上面に形成されている排紙トレー37に排紙する排紙ローラ対38が配設されている。
【0035】
両面印刷用搬送ユニット7は、外面(図の右方外側面)がプリンタ1の内部を側面から外部に開放又は遮蔽する開閉部材を兼ねている。
【0036】
この両面印刷用搬送ユニット7は、排紙ローラ対38の直前から図の右横方向に分岐する開始返送路39a、それから下方に曲がる中間返送路39b、更に上記とは反対の左横方向に曲がって最終的に返送用紙を反転させる終端返送路39cから成る返送路39を備えている。
【0037】
また、返送路39の途中には、5組の返送ローラ対41(41a、41b、41c、41d、41e)が配置されている。上記終端返送路39cの出口は、給紙部5の下方の給紙カセット30bに対応する待機搬送ローラ対34への搬送路に合流している。
【0038】
図2は、上記構成のプリンタ1の外観斜視図である。尚、
図2には
図1と同一の構成部分には
図1と同一の番号を付与して示している。
図2に示すように、プリンタ1には、前方に取っ手が付いた前扉40aが備えられ、右側面には、これも取っ手が付いた開閉部材40bが備えられている。開閉部材40bには
図1に示した両面印刷用搬送ユニット7が一体化されている。
【0039】
このプリンタ1は、
図1に示したように、用紙に直接トナー像を転写する方式ではなく、待機搬送ローラ対35により二次転写部まで鉛直方向に搬送される用紙に転写ベルト8を介してトナー像を転写し、更に鉛直方向に用紙を搬送して転写トナー像を用紙に定着する方式となっている。
【0040】
したがって、用紙の搬送路に発生する用紙ジャム等の不具合を回復するメンテナンス処理時には、
図2に示す右側の開閉部材40bを開放するのみで対処できるようになっている。
【0041】
つまり、用紙ジャム等の不具合は、
図1の左側に集中するキット類の配設部では発生しないので、キット類などの消耗品の着脱の操作は、
図2に示す前扉40aを開いて、キット類を長手方向(前扉方向)に入れ替え操作するように構成されている。
【0042】
図3(a)はプリンタ1の画像形成部の4個の画像形成ユニットを取り出して横に並べて示す正面図、(b)はその斜視図である。尚、
図3(a),(b)には、
図1と同一の構成部分には
図1と同一の番号を付与して示している。
【0043】
図3(a),(b)に示すように、画像形成部2の4個の画像形成ユニット9(9k、9c、9m、9y)は、正面に抓み42を備えている。抓み42の右端部には、印刷、刻印、又は成形による三角記号43が、三角の一角を抓み42の外端部に向けて配置されている。
【0044】
図3では、抓み42を水平位置で示しているが、実際には後述するように、画像形成ユニット9が画像形成部2の装着部から外に取り出されているときは、抓み42は、垂直位置にある。したがって、その場合は三角記号43の一角は上向きとなる。
【0045】
抓み42の周囲のユニット前面カバー44には、画像形成ユニット9が画像形成部2の装着部に装着されて
図3(a),(b)に示すように抓み42が横90度にひねり廻されたとき抓み42の三角記号43の外向きの一角に向き合う位置に、これも印刷、刻印、又は成形による三角印45が配置されている。
【0046】
同様に抓み42の周囲のユニット前面カバー44には、画像形成ユニット9が画像形成部2の装着部から前方に引き出される際に抓み42が縦90度にひねり廻されたとき抓み42の三角記号43の上向きの一角に向き合う位置に、これも印刷、刻印、又は成形による三角印46が配置されている。
【0047】
また、
図3(b)では、ユニット前面カバー44の切り欠かれた形状の右上部分には感光体ドラム10とクリーナ11の前端部共用カバー47が突出し、現像器14と帯電ローラ12の前端部は、ユニット前面カバー44の後方に隠れている形状となっている。
【0048】
図4はプリンタ1の画像形成ユニット9がユニット装着部に装着前の又はユニット装着部から抜脱後の単体であるときの斜視図である。なお、
図4には、
図3(a),(b)と同一の構成部分には
図3(a),(b)と同一の番号を付与して示している。
【0049】
図4には、ユニット装着部とのロックを解除するために、三角記号43をユニット前面カバー44の上部の三角印46に対向させる縦位置に90度回動している抓み42と、現像器14のユニット筐体16の底部48と、帯電ローラ12の筐体49を示している。
【0050】
図5(a)は
図4に示す画像形成ユニットのA−A´断面矢視図であり、
図5(b)は感光体ドラム10と帯電ローラ12と帯電ローラ筐体49のみを取り出して右方部分を切り欠いて示す側面図、
図5(c)は
図5(b)のB−B´断面矢視図、
図5(d)は
図5(b)のC−C´断面矢視図、
図5(e)は
図5(b)と同一部分の動作状態を示す図、
図5(f)は
図5(e)のD−D´断面矢視図である。
【0051】
尚、
図5(a)〜(f)には、
図1ないし
図4に示した構成と同一の構成部分には
図1ないし
図4と同一の番号を付与して示している。
図5(b),(e)に示すように、帯電ローラ12には、その両軸端部に、帯電ローラ12を感光体ドラム10に当接する方向に付勢する押し螺旋バネ52が軸受53を介して取り付けられている。
【0052】
また、帯電ローラ12の回転軸51は、軸受53に軸支されている端部より内側の径は軸支部よりも径が太く形成されている。その太い径の部分に、
図5(b)〜(f)に示すようにカム54が嵌合している。
【0053】
カム54は、
図5(b)〜(f)に示すように、回転する円環部55と、この円環部55と一体に円環部55の外周面の一部に突設された凸部56とで構成されている。帯電ローラ12の回転軸51に嵌合する円環部55は、回転軸51の外周径よりも大きな内周径を有して、径が異なる分だけ遊びを持って回転軸51に嵌合にいる。
【0054】
図5(b),(c),(d)は、カム54が、その凸部56を感光体ドラム10の端部周面に押し当てるように回転して、押し螺旋バネ52の付勢力に抗して帯電ローラ12を感光体ドラム10から離隔させる位置にある場合を示している。このとき帯電ローラ12と感光体ドラム10との間には間隙dが形成される。
【0055】
このように帯電ローラ12が感光体ドラム10から間隙dだけ離隔する位置に在るとき、つまり帯電ローラ12が下方に降下したとき、
図5(b)ではハッチングで、
図5(c)には実線で、
図5(d)では破線で示される離隔用リブ57が、帯電ローラ12の回転軸51に下方から当接する。
【0056】
この状態で、離隔用リブ57は、カム54の円環部55の内周径内で遊びを持っている帯電ローラ12の回転軸51を、カム54の円環部55の感光体ドラム10側の内周面とで挟んで保持して帯電ローラ12を固定する。
【0057】
このようにカム54の凸部56が感光体ドラム10の端部周面に押し当てられて帯電ローラ12が感光体ドラム10から離隔した位置にあるときは、帯電ローラ12の回転軸51がカム54の円環部55の内周面と離隔用リブ57とに挟み込まれて固定される。
【0058】
したがって、例えば輸送途上の振動等があっても、回転軸51が容易に離隔位置から外れることがなく、安定した離隔状態が維持される。これにより、帯電ローラ12の変形が解消され、良質な画像形成状態を維持することができる。
【0059】
尚、本例の帯電ローラの接離機構には、離隔用リブ57の面に直角に連続してストッパ用リブ58が形成されている。感光体ドラム10が画像形成を開始するために、
図5(c),(d)の矢印cで示すように時計回り方向に回転を開始すると、この回転に連動してカム54の凸部56が反時計回り方向に回転して感光体ドラム10との当接係合から外れる。
【0060】
カム54の凸部56が感光体ドラム10との当接係合から外れると、押し螺旋バネ52の付勢力が働いて、帯電ローラ12が回転軸51と共に感光体ドラム10に当接するように移動する。
【0061】
カム54の円環部55も感光体ドラム10の方向に移動するが、円環部55は、内周径は回転軸51の外周径よりも大きいが、円環部55の外周径は帯電ローラ12の外周径よりも小さい。
【0062】
したがって、
図5(f)に示すように、カム54の円環部55が感光体ドラム10に接触することはない。この状態で、カム54の回転方向には、ストッパ用リブ58が立設している。このストッパ用リブ58にカム54の凸部56が突き当たるので、カム54のそれ以上の回転が制止される。これにより、帯電ローラ12の感光体ドラム10への当接状態が安定して維持される。
【0063】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、本発明は特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。以下に、本願出願の当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[付記1]
【0064】
帯電ローラを感光体ドラムに当接する方向に付勢する付勢部材と、
前記帯電ローラの回転軸に嵌合し、前記帯電ローラを、前記付勢部材の付勢力に抗して前記感光体ドラムから離隔する第1の位置と、前記付勢部材の付勢力に応じて前記感光体ドラムに当接する第2の位置とに移動させるカムと、
該カムが前記帯電ローラを前記第1の位置に移動させたとき、前記帯電ローラの前記回転軸を固定する離隔用押さえ形状部と、
を有することを特徴とする帯電ローラの接離機構。
[付記2]
【0065】
前記カムは、円環部と該円環部と一体に該円環部の外周面の一部に突設された凸部からなり、
前記凸部は、前記カムが前記帯電ローラを前記第1の位置に移動させたとき前記感光体ドラムの端部周面に当接し、前記カムが前記帯電ローラを前記第2の位置に移動させたとき前記感光体ドラムの端部周面との当接から外れ、
前記円環部は、前記帯電ローラの前記回転軸の外周径よりも大きな内周径と、前記帯電ローラの外周径よりも小さな外周径を有し、径が異なる分だけ遊びを持って前記回転軸に嵌合し、前記カムが前記帯電ローラを前記第1の位置に移動させたとき前記凸部が形成された部分の円環部内周面と前記離隔用押さえ形状部とで前記回転軸を挟持して該回転軸を固定する、
ことを特徴とする付記1記載の帯電ローラの接離機構。
[付記3]
【0066】
前記離隔用押さえ形状部の面に連設されたストッパ用回り止め形状部を更に有し、
前記凸部は、前記カムが前記帯電ローラを前記第2の位置に移動させるとき、前記感光体ドラムの端部周面との当接から外れる方向に回転し、前記帯電ローラが前記第2の位置に移動したとき前記ストッパ用回り止め形状部に当接して前記カムの回転を制止する、
ことを特徴とする付記1又は2記載の帯電ローラの接離機構。
[付記4]
【0067】
付記1、2又は3に記載の帯電ローラの接離機構を備えたことを特徴とする画像形成装置。