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特開2015-130483ファイバレーザーを使用したレーザースパイクアニーリング
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-130483(P2015-130483A)
(43)【公開日】2015年7月16日
(54)【発明の名称】ファイバレーザーを使用したレーザースパイクアニーリング
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/268 20060101AFI20150619BHJP
   B23K 26/073 20060101ALI20150619BHJP
   B23K 26/03 20060101ALI20150619BHJP
   B23K 26/00 20140101ALI20150619BHJP
   B23K 26/354 20140101ALI20150619BHJP
【FI】
   H01L21/268 F
   B23K26/073
   B23K26/03
   B23K26/00 N
   B23K26/354
   H01L21/268 G
【審査請求】有
【請求項の数】23
【出願形態】OL
【外国語出願】
【全頁数】42
(21)【出願番号】特願2014-215833(P2014-215833)
(22)【出願日】2014年10月23日
(31)【優先権主張番号】61/920,655
(32)【優先日】2013年12月24日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】14/497,006
(32)【優先日】2014年9月25日
(33)【優先権主張国】US
(71)【出願人】
【識別番号】502400304
【氏名又は名称】ウルトラテック インク
(74)【代理人】
【識別番号】100136319
【弁理士】
【氏名又は名称】北原 宏修
(74)【代理人】
【識別番号】100147706
【弁理士】
【氏名又は名称】多田 裕司
(74)【代理人】
【識別番号】100148275
【弁理士】
【氏名又は名称】山内 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100142745
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 世子
(72)【発明者】
【氏名】アニキチェフ、セルゲイ
【テーマコード(参考)】
4E168
【Fターム(参考)】
4E168AC01
4E168AC03
4E168CA11
4E168CB07
4E168CB22
4E168DA02
4E168DA13
4E168DA28
4E168DA34
4E168DA42
4E168EA13
4E168EA26
4E168JA12
4E168KA04
(57)【要約】      (修正有)
【課題】ファイバレーザーを使用したレーザースパイクアニーリング方法を提供する。
【解決手段】複数のファイバレーザーシステムを用いて、ウエハ表面において部分的に重複する個々のCW出力放射ビームを発生させて、長軸及び該長軸に沿った長さLを有する伸長アニーリング画像を形成する工程と、ウエハの少なくとも一領域をアニール前温度TPAに加熱する工程と、該伸長アニーリング画像が、30ns≦t≦10msの範囲の滞留時間tを有し、ウエハ表面の温度を、アニーリング温度Tに上昇させるように、ウエハ表面上における予熱領域内において、伸長アニーリング画像を走査する工程とによって、ウエハ表面のレーザースパイクアニーリングを実行する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウエハ表面のレーザースパイクアニーリングを実行する方法であって、
複数のファイバレーザーシステムを用いて、部分的に重複する個々の持続波(CW)出力放射ビームを前記ウエハ表面に発生させて、長軸及び該長軸に沿った長さLを有する伸長アニーリング画像を形成する工程と、
前記ウエハの少なくとも一領域をアニール前温度TPAに加熱し、予熱領域を規定する工程と、
前記伸長アニーリング画像が、30ns≦t≦10msの範囲の滞留時間tを有し、前記ウエハ表面の温度を、アニーリング温度Tに上昇させるように、前記ウエハ表面上において、前記長軸に実質的に垂直な方向に前記予熱領域内を少なくとも部分的に、前記伸長アニーリング画像を走査する工程と
を備える方法。
【請求項2】
前記長さLは、3mm≦L≦450mmの範囲内である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記伸長アニーリング画像は、前記長軸に対して垂直に測定された幅Wを有し、ここでWは、25ミクロン≦W≦500ミクロンである、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記CW出力放射ビームは、100W≦P≦10,000Wの範囲の光学出力量PAを有する、請求項1から3の何れか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記アニール前温度TPAは、200℃≦TPA≦600℃の範囲内である、請求項1から4の何れか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記アニーリング温度Tは、1,100℃≦T≦1,350℃の範囲内であるか、あるいは、T≧1,410℃の範囲内である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記ウエハ表面における温度分布を測定する工程と、
前記CW出力放射ビームの少なくとも一つの出力量を調整し、前記温度分布の均一性の量を改善する工程と、
をさらに備える、請求項1から6の何れか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記ウエハが縁を有し、
前記伸長アニーリング画像が端を有し、
前記伸長アニーリング画像が前記ウエハの前記縁を通過する前に、前記伸長アニーリング画像の前記端を形成する前記CW出力放射ビームの出力量を低下させるか、あるいは、前記CW出力放射ビームを停止させる工程をさらに含む、請求項1から7の何れか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記伸長アニーリング画像は、3から50までのCW出力放射ビームによって形成される、請求項1から8の何れか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記CW出力放射ビームは、前記長軸に沿って量Δで部分的に重複する長さLの伸長画像を規定し、ここで、重複量Δが、Δ≧0.79・(L/2)である、請求項1から9の何れか1項に記載の方法。
【請求項11】
表面を有する測定ウエハを用いてアニーリング画像の均一性の量を最適化する方法であって、
複数のファイバレーザーシステムを用いて、部分的に重複する個々の持続波(CW)出力放射ビームを前記測定ウエハの前記表面に発生させて、長軸及び該長軸に沿った長さLを有する伸長アニーリング画像を形成する工程と、
前記CW出力放射ビームのそれぞれについて、前記測定ウエハから反射された光学出力量を検出する工程と、
前記CW出力放射ビームの一つ以上の光学出力量を調整し、前記伸長アニーリング画像の均一性の量を最適化する工程と、
を備える方法。
【請求項12】
ウエハ表面のレーザースパイクアニーリングを実行する方法であって、
複数のファイバレーザーシステムを用いて、部分的に重複する個々の持続波(CW)出力放射ビームを前記ウエハ表面に発生させて、長軸及び該長軸に沿った長さLを有する伸長アニーリング前画像を形成する工程と、
前記伸長アニーリング前画像を用いて、前記ウエハの少なくとも一領域をアニール前温度TPAに加熱し、予熱領域を規定する工程と、
前記予熱領域内に少なくとも部分的に存在する第2のレーザービームを走査し、前記ウエハ表面の温度をアニーリング温度Tに上昇させる工程と、
を備える方法。
【請求項13】
前記アニーリング温度Tは、1,100℃≦T≦1,350℃の範囲内である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記アニーリング温度Tは、ドープされたシリコンの溶融温度よりも高い、請求項12または13に記載の方法。
【請求項15】
表面を有するウエハのレーザースパイクアニーリングを実行するシステムであって、
複数のファイバレーザーシステムと、ウエハ支持アセンブリとを備え、
前記ファイバレーザーシステムは、前記ウエハの前記表面において部分的に重複する個々の出力放射ビームを伝達してアニーリング画像を形成し、
前記ウエハ支持アセンブリは、前記ウエハを支持し、前記ウエハをアニール前温度TPAに加熱し、前記アニーリング画像が、30ns≦t≦10msの範囲の滞留時間tで前記ウエハの前記表面上を走査するように、前記アニーリング画像に対して前記ウエハを動かし、
前記アニーリング画像は、前記ウエハの表面温度が、当該走査中にアニール前温度TPAからアニーリング温度Tまで上昇するように、10W≦P≦1,000Wの範囲の光学出力量Pを有する
システム。
【請求項16】
前記アニール前温度TPAが200℃≦TPA≦600℃の範囲内である、請求項15に記載のシステム。
【請求項17】
前記アニーリング温度Tは、1,100℃≦T≦1,350℃の範囲内であるか、あるいは、T≧1,410℃の範囲内である、請求項15または16に記載のシステム。
【請求項18】
表面を有するウエハのレーザースパイクアニーリングを実行するシステムであって、
複数のファイバレーザーシステムと、予熱レーザーシステムと、ウエハ支持アセンブリとを備え、
前記ファイバレーザーシステムは、前記ウエハの前記表面において部分的に重複する個々の出力放射ビームを伝達してアニーリング画像を形成し、
前記予熱レーザーシステムは、前記ウエハの前記表面の一領域を、アニール前温度TPAに予熱する予熱放射ビームを生成し、
前記ウエハ支持アセンブリは、前記ウエハを支持し、前記アニーリング画像が、30ns≦t≦10msの範囲の滞留時間tで、前記ウエハの前記表面上における予熱領域内を少なくとも部分的に走査するように、前記アニーリング画像に対して前記ウエハを動かし、
前記アニーリング画像は、前記ウエハの表面温度が、当該走査中に前記アニール前温度TPAからアニーリング温度Tまで上昇するように、100W≦P≦10,000Wの範囲の光学出力量Pを有する、
システム。
【請求項19】
前記アニール前温度TPAが200℃≦TPA≦600℃の範囲内である、請求項18に記載のシステム。
【請求項20】
前記アニーリング温度Tは、1,100℃≦T≦1,350℃の範囲内であるか、あるいは、T≧1,410℃の範囲内である、請求項18または19に記載のシステム。
【請求項21】
表面を有するウエハのレーザースパイクアニーリングを実行するシステムであって、
複数のファイバレーザーシステムと、アニーリングレーザーシステムと、ウエハ支持アセンブリとを備え、
前記ファイバレーザーシステムは、前記ウエハの前記表面において部分的に重複する個々の出力放射ビームを伝達して前記ウエハの前記表面の予熱領域をアニール前温度TPAに予熱するアニーリング前画像を形成し、
前記アニーリングレーザーシステムは、前記予熱領域と少なくとも部分的に重複するアニーリングレーザービームを生成し、
前記ウエハ支持アセンブリは、前記ウエハを支持し、前記アニーリング前画像が、30ns≦t≦10msの範囲の滞留時間tで、前記ウエハの前記表面上における予熱領域内を少なくとも部分的に走査するように、前記アニーリング前画像に対して前記ウエハを動かし、
前記アニーリング前画像は、前記ウエハの表面温度が、当該走査中に前記アニール前温度TPAからアニーリング温度Tまで上昇するように、100W≦P≦10,000Wの範囲の光学出力量Pを有する、
システム。
【請求項22】
前記アニール前温度TPAが200℃≦TPA≦600℃の範囲内である、請求項21に記載のシステム。
【請求項23】
前記アニーリング温度Tは、1,100℃≦T≦1,350℃の範囲内であるか、あるいは、T≧1,410℃の範囲内である、請求項21または22に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
この出願は、米国特許法(35 U.S.C.)第119条(e)の下で、2013年12月24日に出願された米国仮出願第61/920,655号の優先権の利益を主張する。また、当該米国仮出願第61/920,655号は、参照により本明細書中に組み込まれる。
【0002】
技術分野
本開示は、レーザースパイクアニーリングに関し、より具体的には、ファイバレーザーを使用したレーザースパイクアニーリングに関する。
【0003】
本明細書中で言及されるあらゆる刊行物または特許文献の全ての開示は、参照により本明細書中に組み込まれる。
【背景技術】
【0004】
走査されるレーザービームを使用したレーザーアニーリングは、超低熱量、高ドーパント活性化、及び超段階接合を提供し、進歩した半導体装置の製造に理想的である。その結果、45nm以下の最小形状及び32nm以下の多数の記憶装置を有するほとんどの論理装置は、現在、ソース−ドレイン活性化、金属−ケイ素合金形成、欠陥アニーリングなどを含む種々の製造工程の一つで、何らかの形でレーザー処理を用いている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開公報 WO2001/071787
【特許文献2】米国特許第6,365,476号明細書
【特許文献3】米国特許第6,366,308号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
レーザーアニーリングの一形態では、パルスレーザーを使用している。国際公開第2001/071787号公報、米国特許第6,365,476号明細書、及び、米国特許第6,366,308号明細書には、パルスレーザーアニーリングの例が記載されている。典型的な半導体への応用では、0.1ミリ秒から10ミリ秒(ms)のアニーリング時間を要する。パルスレーザーからの光学パルスは、要求されるアニーリング時間に比べて大幅に短い持続時間(例えば、ナノ秒からマイクロ秒)しか有さないため、多くの光学パルスが、既定の露光に必要とされる。このことが、パルスごとの出力(強度)差によるアニーリング均一性の問題を引き起こす。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一局面は、ウエハ表面のレーザースパイクアニーリングを実行する方法である。本方法は、複数のファイバレーザーシステムを用いて、部分的に重複する個々の持続波(CW)出力放射ビームを前記ウエハ表面において発生させて、長軸及び該長軸に沿ったアニーリング長さLを有する伸長アニーリング画像を形成する工程と、前記ウエハの少なくとも一領域をアニール前温度TPAに加熱し、予熱領域を規定する工程と、前記伸長アニーリング画像が、100ns≦t≦10msの範囲の滞留時間t、あるいは、別の例では、30ns≦t≦10msの範囲の滞留時間tを有し、前記ウエハ表面の温度を、アニーリング温度Tに上昇させるように、前記ウエハ表面上において、前記長軸に実質的に垂直な方向に前記予熱領域内を少なくとも部分的に、前記伸長アニーリング画像を走査する工程と、を含む。
【0008】
本開示の他の局面は、上述の方法であって、前記アニーリング長さLは、3mm≦L≦450mmの範囲内であるか、あるいは、別の例では、3mm≦L≦30mmの範囲内である。
【0009】
本開示の他の局面は、上述の方法であって、前記伸長アニーリング画像は、前記長軸に対して垂直に測定された幅Wを有し、ここで、25ミクロン≦W≦500ミクロンであるか、あるいは、別の例では、50ミクロン≦W≦500ミクロンである。
【0010】
本開示の他の局面は、上述の方法であって、前記CW出力放射ビームが、100W≦P≦10,000Wの範囲、あるいは、別の例では、100W≦P≦1,000Wの範囲の光学出力量(強度)Pを有する。
【0011】
本開示の他の局面は、上述の方法であって、前記アニール前温度TPAが200℃≦TPA≦600℃の範囲内である。
【0012】
本開示の他の局面では、上述の方法であって、前記アニーリング温度Tが、1,100℃≦T≦1,350℃の範囲内であるか、あるいは、T≧1,410℃の範囲内である。
【0013】
本開示の他の局面は、上述の方法であって、前記ウエハ表面における温度分布を測定する工程と、前記CW出力放射ビームの少なくとも一つの出力量(強度)を調整し、前記温度分布の均一性の量(程度)を改善する工程とを、さらに含む。
【0014】
本開示の他の局面は、上述の方法であって、前記ウエハが縁を有し、前記伸長アニーリング画像が端を有し、前記伸長アニーリング画像が前記ウエハの前記縁を通過する前に、前記伸長アニーリング画像の前記端を形成する前記CW出力放射ビームの出力量(強度)を低下させるか、あるいは、前記CW出力放射ビームを停止させる工程をさらに含む。
【0015】
本開示の他の局面は、上述の方法であって、前記伸長アニーリング画像は、3から(最大)50までのCW出力放射ビーム(すなわち、3,4,5,6など、最大で50の出力放射ビーム)によって形成される。
【0016】
本開示の他の局面は、上述の方法であって、前記CW出力放射ビームは、前記長軸に沿って量Δで部分的に重複する長さLの伸長画像を規定し、ここで、重複量Δが、Δ≧0.79・(L/2)である。
【0017】
本開示の他の局面は、表面を有する測定ウエハを用いてアニーリング画像の均一性の量(程度)を最適化する方法である。本方法は、複数のファイバレーザーシステムを用いて、前記測定ウエハの前記表面において部分的に重複する個々の持続波(CW)出力放射ビームを発生させて、長軸及び該長軸に沿った長さLを有する伸長アニーリング画像を形成することを含む。また本方法は、前記CW出力放射ビームのそれぞれについて、前記測定ウエハから反射された光学出力量(強度)を検出することも、含む。また本方法は、前記CW出力放射ビームの一つ以上における光学出力量(強度)を調整し、前記伸長アニーリング画像の均一性の量(程度)を最適化することをも含む。
【0018】
本開示の他の局面は、ウエハ表面のレーザースパイクアニーリングを実行する方法である。本方法は、複数のファイバレーザーシステムを用いて、前記ウエハ表面において部分的に重複する個々の持続波(CW)出力放射ビームを発生させて、長軸及び該長軸に沿った長さLを有する伸長アニーリング前画像を形成することを含む。また本方法は、前記伸長アニーリング前画像とともに、前記ウエハの少なくとも一領域をアニール前温度TPAに加熱し、予熱領域を規定することも含む。また本方法は、前記予熱領域内に少なくとも部分的に存在する第2のレーザービームを走査し、前記ウエハ表面の温度をアニーリング温度Tに上昇させることも含む。
【0019】
本開示の他の局面は、上述の方法であって、前記アニーリング温度Tが、1,100℃≦T≦1,350℃の範囲内であるか、あるいは、T≧1,410℃の範囲内である。
【0020】
本開示の他の局面は、上述の方法であって、前記アニーリング温度Tが、ドープされたシリコンの溶融温度よりも高い。
【0021】
本開示の他の局面は、表面を有するウエハのレーザースパイクアニーリングを実行するシステムである。本システムは、複数のファイバレーザーシステムと、ウエハ支持アセンブリ(部品)とを備え、前記ファイバレーザーシステムは、前記ウエハの前記表面において部分的に重複する個々の出力放射ビームを伝達してアニーリング画像を形成し、;前記ウエハ支持アセンブリは、前記ウエハを支持し、前記ウエハをアニール前温度TPAに加熱し、前記アニーリング画像が、100ns≦t≦10msの範囲の滞留時間t、あるいは、別の例では、30ns≦t≦10msの範囲の滞留時間tで前記ウエハの前記表面上を走査するように、前記アニーリング画像に対して前記ウエハを動かし、;前記アニーリング画像は、これにより、前記ウエハの表面温度が、当該走査中にアニール前温度TPAからアニーリング温度Tまで上昇するように、10W≦P≦1,000Wの範囲、あるいは、別の例では、10W≦P≦100Wの範囲の光学出力量(強度)Pを有する。
【0022】
本開示の他の局面は、上述のシステムであって、前記アニール前温度TPAが200℃≦TPA≦600℃の範囲内である。
【0023】
本開示の他の局面は、上述のシステムであって、前記アニーリング温度Tが、1,100℃≦T≦1,350℃の範囲内であるか、あるいは、T≧1,410℃の範囲内である。
【0024】
本開示の他の局面は、表面を有するウエハのレーザースパイクアニーリングを実行するシステムである。本システムは、複数のファイバレーザーシステムと、予熱レーザーシステムと、ウエハ支持アセンブリとを備え、前記ファイバレーザーシステムは、前記ウエハの前記表面において部分的に重複する個々の出力放射ビームを伝達してアニーリング画像を形成し、;前記予熱レーザーシステムは、前記ウエハの前記表面の一領域を、アニール前温度TPAに予熱する予熱放射ビームを生成し、;前記ウエハ支持アセンブリは、前記ウエハを支持し、前記アニーリング画像が、100ns≦t≦10msの範囲の滞留時間t、あるいは、別の例では、30ns≦t≦10msの範囲の滞留時間tで、前記ウエハの前記表面上であり、かつ、予熱領域内を少なくとも部分的に走査するように、前記アニーリング画像に対して前記ウエハを動かし、;前記アニーリング画像は、前記ウエハの表面温度が、当該走査中に前記アニール前温度TPAからアニーリング温度Tまで上昇するように、100W≦P≦10,000Wの範囲、あるいは、別の例では、100W≦P≦1,000Wの範囲の光学出力量(強度)Pを有する。
【0025】
本開示の他の局面は、上述のシステムであって、前記アニール前温度TPAが200℃≦TPA≦600℃の範囲内である。
【0026】
本開示の他の局面は、上述のシステムであって、前記アニーリング温度Tが、1,100℃≦T≦1,350℃の範囲内であるか、あるいは、T≧1,410℃の範囲内である。
【0027】
本開示の他の局面は、表面を有するウエハのレーザースパイクアニーリングを実行するシステムである。本システムは、複数のファイバレーザーシステムと、アニーリングレーザーシステムと、ウエハ支持アセンブリとを備え、前記ファイバレーザーシステムは、前記ウエハの前記表面において部分的に重複する個々の出力放射ビームを伝達して前記ウエハの前記表面の予熱領域をアニール前温度TPAに予熱するアニーリング前画像を形成し、;前記アニーリングレーザーシステムは、前記予熱領域と少なくとも部分的に重複するアニーリングレーザービームを生成し、;前記ウエハ支持アセンブリは、前記ウエハを支持し、前記アニーリング前画像が、30ns≦t≦10msの範囲の滞留時間tで、前記ウエハの前記表面上であり、かつ、予熱領域内を少なくとも部分的に走査するように、前記アニーリング前画像に対して前記ウエハを動かし、;前記アニーリング前画像は、前記ウエハの表面温度が、当該走査中に前記アニール前温度TPAからアニーリング温度Tまで上昇するように、100W≦P≦10,000Wの範囲の光学出力量(強度)Pを有する。
【0028】
本開示の他の局面は、上述のシステムであって、前記アニール前温度TPAが200℃≦TPA≦600℃の範囲内である。
【0029】
本開示の他の局面は、上述のシステムであって、前記アニーリング温度Tが、1,100℃≦T≦1,350℃の範囲内であるか、あるいは、T≧1,410℃の範囲内である。
【0030】
さらなる特徴及び利点は、以下の詳細な説明に明記される。また、それらの一部は詳細な説明の記載内容から当業者にとって直ちに明白となるか、詳細な説明、特許請求の範囲、添付図面に記載された実施形態を実施することによって認識されるであろう。上記の概要及び下記の詳細な説明に関する記載は、単なる例示であって、特許請求の範囲に記載されている本発明の本質及び特徴を理解するための概略または枠組みを提供するものであることを理解すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0031】
添付図面は、さらなる理解を提供するために含まれており、本明細書の一部を構成すると共に本明細書の一部に組み込まれる。図面は、1または複数の実施形態を示しており、詳細な説明と共に種々の実施形態の原理や動作を説明する役割を担う。このように、本開示は、添付図面と共に以下に示す詳細な説明からより完全に理解されることになるであろう。
図1図1は、本開示によるレーザースパイクアニーリング(LSA)システムの一例であって、本明細書中で開示される方法を実施するために使用され得るレーザースパイクアニーリング(LSA)システムの模式図である。
図2図2は、ファイバレーザーシステムの一例を示すLSAシステムの一例の詳細図である。
図3図3は、固定された(standing)音波格子を形成する音響光学変調器の形態での変調器の一例を示す詳細図である。
図4A図4Aは、ウエハ表面を横断する持続波出力放射ビームによって形成された伸長画像の一例を示す詳細図である。
図4B図4Bは、ガウス強度出力放射ビームによって形成された伸長画像の一例について、位置座標x/Lの関数として強度I(正規化された単位)をプロットした図である。
図5図5は、複数の伸長画像がどのようにして長軸方向(X方向)において部分的に重複し、本明細書中で「アニーリング画像」と呼ばれる混合画像を形成するかを示すウエハ表面の上面図である。
図6A図6Aは、位置ずれ(オフセット)Δ=L/2を用いて7つの伸長画像を結合することによって形成されたアニーリングの強度プロファイルI(x/L)をプロットした図である。
図6B図6Bは、図6Aと同様の図であるが、位置ずれ(オフセット)Δ=0.9・(L/2)でのプロット図である。
図6C図6Cは、図6Aと同様の図であるが、位置ずれ(オフセット)Δ=0.79・(L/2)でのプロット図である。
図7A図7Aは、長軸方向に重複する個々の伸長画像で構成されたアニーリング画像の一例を示すウエハの上面図である。本図において、アニーリング画像は、ウエハの表面において矢印ARによって示される方向に走査される。
図7B図7Bは、図7Aと同様の図であるが、アニーリング画像がウエハの縁の一部を横断し、最も端の伸長画像が消されるか、あるいは、強度が低下して、ウエハに対する縁の損傷の発生を避ける場合を示す図である。
図7C図7Cは、図7Bと同様の図であり、最も端の伸長画像が消されるか、あるいは、強度が低下しながら、アニーリング画像がウエハの縁を横断し続け、ウエハの縁上を走査するに従って、アニーリング画像の寸法が減少する様子を示す図である。
図7D図7Dは、図7Bと同様の図であり、最も端の伸長画像が消されるか、あるいは、強度が低下しながら、アニーリング画像がウエハの縁を横断し続け、ウエハの縁上を走査するにしたがって、アニーリング画像の寸法が減少する様子を示す図である。
図8A図8Aは、図2と同様の図であり、予熱放射ビームを生成する予熱レーザーシステムがウエハ表面を予熱するために用いられるLSAシステムの一例の実施形態を示す図である。
図8B図8Bは、図8Aのウエハ表面の上面図であって、アニーリング画像が完全に予熱領域内にある場合の予熱領域及びアニーリング画像の例を示す図である。
図8C図8Cは、図8Aのウエハ表面の上面図であって、アニーリング画像が部分的に予熱領域内にある場合の予熱領域及びアニーリング画像の例を示す図である。
図9A図9Aは、LSAシステムの一例を示す模式図である。本システムでは、ファイバレーザーシステムから構成されるレーザーシステムが、ウエハの予熱表面に用いられるアニーリング前画像を形成して、予熱領域を形成し、第2のレーザーシステムがアニーリング画像を形成するために使用される。
図9B図9Bは、図8Bと同様の図であり、図9Aの例示的なLSAシステムの第2のレーザーシステムによって形成されるアニーリング画像とともに、アニーリング前画像によって形成される予熱領域を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以降、本開示の様々な実施形態、および、添付の図面に示される複数の例について詳述する。可能な限り、同一または類似の部分の図では、同一または類似の参照番号および参照符号が用いられる。図面には決まった縮尺がなく、当業者であれば、図面は本発明の主要な部分を説明するために簡略化されていることに気づくであろう。
【0033】
下記の特許請求の範囲の記載は、発明の詳細な説明に組み込まれると共にその一部を構成する。
【0034】
いくつかの図面において、参考のために直交座標系が描かれているが、これは特定の方向および配置方向を限定するものではない。
【0035】
図1は、本開示によるレーザースパイクアニーリング(LSA)システム10の一例の模式図である。LSAシステム10は、レーザーシステム12及びウエハ支持アセンブリ14を含む。ウエハ支持アセンブリ14は、表面22を有するチャック20を有する。表面22は、表面32を有する半導体基板(「ウエハ」)30を支持する。一例では、チャック20は、熱を生成するように構成され、ウエハ30をアニール前温度TPA(例えば、200℃から600℃の範囲)まで加熱する。チャック20は、チャック制御部26と接続するものとして示される。チャック制御部26は、チャック20の温度を制御するために使用される。
【0036】
チャック20は、可動ステージ40上に存在する。可動ステージ40の動作は、ステージ制御部46によって制御される。ステージ制御部46は、可動ステージ40に操作可能に接続されている。
【0037】
レーザーシステム12は、1つ以上のファイバレーザーシステム50を含む。図2は、ファイバレーザーシステム50の一例を示すLSAレーザーシステム10の一例を示す詳細図である。各ファイバレーザーシステム50は、ファイバ部分53の長さを有するファイバレーザー52を含む。一例では、各ファイバレーザー52は、約2μm(例えば、1.8μm≦λ≦2.1μm)の波長λを有する初期放射(初期放射ビーム)54を発する。例示的なファイバレーザー52は、例えば、マサチューセッツ州オックスフォードのIPGフォトニクスコーポレーション(IPG Photonics Corp, Oxford, Massachusetts)より入手可能なツリウム系ファイバレーザーである。一例では、2から50個のファイバレーザーシステム50(すなわち、2,3,4・・・50個のファイバレーザーシステム50)が使用でき、より具体的な例では、3から6個のファイバレーザーシステム50(すなわち、3,4,5または6個のファイバレーザーシステム50)が使用できる。
【0038】
一例では、各ファイバレーザー52は、単一モードで動作する。すなわち、各ファイバレーザー52は、単一モード初期放射ビーム54を生成する。一例では、初期放射ビーム54は、最大約200Wの出力量(強度)を有する。一実施形態では、ファイバレーザー52は、隣接するファイバレーザー52の波長λが数ナノメートル異なり、ウエハ30の表面32におけるスペックル効果を避けるように構成されている。図1に示す一例のLSAシステムでは、ファイバレーザーシステム50のいくつか又は全てが、ウエハ支持アセンブリ14に対して操作可能に配置された支持部材55(例えば、搭載板)によって操作可能に支持される。一例では、支持部材55は、ウエハ支持アセンブリ14に対して移動可能であり、また、他の例では、支持部材55は固定されている。一例では、各ファイバレーザー52の出力は、レーザー制御部を介して直接調整される。一例では、レーザー制御部は、導入され、以下で説明される制御器90によって概略的に表される。
【0039】
各ファイバレーザーシステム50は、光学システム60を含む。光学システム60は、初期放射ビーム54を受け取り、出力放射ビーム64を生成する。複数のファイバレーザーシステム50からの出力放射ビーム64は、以下で説明するように、混合された出力放射ビーム64Cを集合的に形成する。一例では、光学システム60は、ファイバ部分53から順に、平行光レンズ(コリメートレンズ)72、(放射)変調器74、及び、円筒光学システム80(図2参照)を含む。円筒光学システム80は、一例では、直交面に光学出力(強度)をそれぞれ有する第1及び第2の円筒レンズ82及び84を含む。図1に示す一実施形態では、第2の円筒レンズ84は、ファイバレーザーシステム50のいくつか又は全てによって共有される単一の要素として形成される。
【0040】
円筒光学システム80は、コリメートレンズ72から一般的に対称なガウス平行放射ビーム54Cを受け取り、当該放射ビーム54Cを一方向に拡張し、その後、直交方向に焦点に導く役割を果たす。この結果、結果的に得られる出力放射ビーム64は、ウエハ30の表面32上に伸長画像102を形成する(図4A参照)。伸長画像102は、長軸aを有する。一例では、光学システム60を構成する要素のいくつか又は全てが、石英ガラスで形成される。
【0041】
LSAシステム10は、制御器90も含む。一実施形態では、制御器90は、ウエハ支持アセンブリ14に操作可能に接続される。より具体的には、制御器90は、チャック制御部26及びステージ制御部46に接続され、以下で説明するように、チャック20の加熱及び可動ステージ40の走査動作を制御する。一例では、制御器90は、レーザーシステム12にも接続される。より具体的には、制御器90は、ファイバレーザーシステム50に接続され、以下で説明するように、ファイバレーザーの活性化を制御するとともに、初期放射ビーム54の出力量を制御する。例示的な制御器90は、コンピュータを備える。制御器90は、一般的に、コンピュータ読取り可能な媒体において具現化された指令によってプログラム制御できる。当該指令は、制御器90に対してLSAシステム10の操作を制御させる。制御器90は、1つ以上のコンピュータ、処理装置、マイクロコントローラ、マイクロコンピュータ、プログラム可能な論理制御器、特定用途向け集積回路、及び、他のプログラマブル回路を備えるか、含んでもよい。
【0042】
LSAシステム10の一例では、制御器90は、ファイバレーザー52に初期放射ビーム54を放射させる。初期放射ビーム54は、ファイバ部分53を通過して進み、発散ビームとしてファイバ部分53から出射する。発散した初期放射ビーム54は、コリメートレンズ72によって受光される。コリメートレンズ72は、上述の平行放射ビーム54Cを形成することに寄与する。平行放射ビーム54Cは、その後変調器74によって受光される。上述したように、制御器90は、ファイバレーザー52の出力量(強度)を変調するために用いられ得る。
【0043】
図3は、音響光学変調器の形態での例示的な変調器74の詳細図である。音響光学変調器は、固定された(standing)音波回折格子(「回折格子」)76を形成する。音波回折格子76は、平行放射ビーム54Cを回折し、0次放射ビーム54C0及び1次放射ビーム54C1とするように機能する。音波回折格子76の振幅を調整することによって、0次放射ビーム54C0及び1次放射ビーム54C1の出力量(強度)が調節され得る。一例では、1次放射ビーム54C1は、円筒光学システム80に続く一方、0次放射ビーム54C0は、ビーム集積(ダンプ)BDに導かれる。変調器74は、ケイ素の熱拡散時間よりも大幅に短い高周波数(例えば、メガヘルツ(MHz)域)で駆動することができる。このため、変調器74の使用を可能とし、各出力放射ビーム64で出力の制御が可能となり、ウエハ30の表面32において発生するあらゆる温度勾配を補償することができる。
【0044】
一実施形態では、変調器74は採用されず、ファイバレーザー52は、例えばレーザー制御器を介して直接変調される。レーザー制御器は、上述したように、制御器90であり得る。ファイバレーザー52の直接変調の手法は、レーザー制御器を介したフィードバックを用いて変調を実行することができる程度に、可動ステージ40の速度が充分に遅い場合に、特に使用することができる。
【0045】
図2に示されるLSAシステム10の操作の一実施形態では、処理されるウエハ30は、測定ウエハ30Mによって置き換えられる。測定ウエハ30Mは、各ファイバレーザーシステム50の出力量(強度)を調整するために使用される。調整(キャリブレーション)を実行するために、各ファイバレーザーシステム50は活性化され、それに対応する出力放射ビーム64を生成する。測定ウエハ30Mは、表面32Mを有する。表面32Mは、測定放射64Mとしての出力放射ビーム64の任意の量を光検出器120へ導くように構成されている。光検出器120は、測定ウエハ30Mに対して配置されている。
【0046】
例えば、測定ウエハ30Mの表面32Mは、任意の量の表面粗さを有していてもよい。このような表面粗さは、測定放射64Mを形成する際に、出力放射ビーム64の任意の量の、あるいはそれ以外の既知の量の散乱を引き起こすように設計されている。光検出器120によって実行されるファイバレーザーシステム50の調整出力測定は、制御器90に設けられた光検出器信号SDにおいて具現化される。制御器90は、光検出器信号SDを処理し、それに基づいて(例えば、変調器制御信号SMを介して)各変調器74を調整する。これにより、各出力放射ビーム64は、実質的に同じ量(強度)の光学量又は任意の出力量(強度)を、処理されるウエハ30の表面32に伝える。他の例では、変調器制御信号SMは、ファイバレーザー52に導かれ、その結果、制御器90は、各ファイバレーザー52の出力量(強度)を制御するレーザー制御部として動作する。
【0047】
一例では、光検出器120は、多重チャンネル高温計を備える。多重チャンネル高温計は、LSAシステム10の通常動作中に、後述するような、混合出力放射ビーム64Cにおける出力分配を制御するために使用することができる。
【0048】
1次放射ビーム54C1は、円筒光学システム80によって受光される。円筒光学システム80は、上述したように、拡張した方向と、焦点合わせされ幅がより狭められた方向とを有する出力放射ビーム64を形成する。ファイバレーザーシステム50からの出力放射ビーム64は、結果的に各伸長画像102を形成するような方法で、ウエハ30の表面32に導かれる。ここで、隣接する伸長画像102は、部分的に重複する。
【0049】
図4Aは、ウエハ30の表面32を交差する出力放射ビーム64によって形成された伸長画像102の一例の詳細図である。伸長画像102は、狭小方向(Y方向)に幅Wを有し、長軸aを規定する伸長方向(X方向)に長さLを有する。一例では、幅W及び長さLは、伸長画像102を規定するガウス強度分布の閾値強度線によって規定される。図4Bは、強度I(正規化された単位)を、ガウス強度出力放射ビーム64によって形成された伸長画像102の一例について位置座標x/Lの関数としてプロットした図である。ガウス強度出力放射ビーム64のプロファイル(輪郭)は、以下の式によって表すことができる。
I(x)=exp{−2・(x/L)
一例では、長さLは、図4Bに示されるように、1/e強度線によって規定される。
【0050】
図5は、複数の伸長画像102がどのようにして長軸方向(X方向)において部分的に重なり合い、アニーリング画像102Aと呼ばれる混合画像を形成するかを示すウエハ30の表面32の上面図である。アニーリング画像102Aは、長軸A、長軸Aの方向に測定された長さL(「アニーリング長」と呼ばれる)、及び、長軸Aに垂直な方向に測定された幅Wを有する。隣接する画像間の長軸方向の位置ずれは、Δとして示される。アニーリング画像102Aの強度プロファイルI(x)は、以下の式で表すことができる。
(x)=Σexp{−2・[(x−Δ・n)/L]
ここで、nは、混合伸長画像102の数(整数)に関する数値パラメータであり、位置ずれΔは、アニーリング画像102Aの中心に対して測定される。アニーリング画像102Aは、全長Lを有する。全長Lは、一例では、アニーリング画像102Aの1/e強度線によって規定される。長さLの範囲の一例は、3mm≦L≦30mmである。幅Wの範囲の一例は、50ミクロン≦W≦500ミクロンであり、他の一例では、25ミクロン≦W≦500ミクロンである。
【0051】
図6Aは、7つの伸長画像102を組み合わせることによって形成されたアニーリング画像102Aの強度プロファイルI(x/L)をプロットした図である。パラメータ数nは、I(x)に関する上記式において、−3から+3の範囲であり、位置ずれは、Δ=L/2となる。
【0052】
図6B及び図6Cは、図6Aと同様の図であるが、Δ=0.9・(L/2)であり、Δ=0.79・(L/2)である。位置ずれΔの数値が小さくなるに従って、アニーリング画像102Aの全体の強度は増加し、その全体の長さLは減少する。
【0053】
一例の実施形態では、アニーリング画像102Aは、100W≦P≦10,000Wの範囲の光学出力量(強度)Pを有し、他の例では、100W≦P≦1,000Wの範囲の光学出力量(強度)Pを有する。
【0054】
一例では、アニーリング画像102Aの均一性は、ウエハ30からの熱放射Eによって評価される。ウエハ30は、温度変化に対して非常に感受性が高く、出力密度に順次比例する。
δ(E)/E≒(10−α)・δ(T)/T(ここで、11<α<15)
したがって、強度プロファイルの許容可能な均一性は、強度プロファイルの平坦な部分における実質的に均一な分布によって与えられる。通常、強度に明らかな変調がある場合は、ウエハ30の温度の許容できない変化につながる。図6Aから図6Cに示されるアニーリング画像102Aの強度プロファイルI(x)のうち、図6Cの強度プロファイルは、許容可能な不均一性を有する。一方、図6A及び図6Bの強度プロファイルは、アニーリングへの応用にはほとんど適さない。したがって、一例では、位置ずれΔ≦0.79・(L/2)が、適度に均一な強度プロファイルを獲得し、これにより実質的に均一なウエハ加熱を得るために使用される。
【0055】
一旦、アニーリング画像102Aが形成されると、アニーリング画像102Aは、ウエハ30の表面32上を走査され、ウエハ30の表面32のレーザースパイクアニーリングを実行し、例えば、ウエハ30によって支持された半導体デバイス(図示せず)のドーパント拡散を促進させる。アニーリング画像102Aの走査は、一例の実施形態において、制御器90によって達成される。制御器90は、ステージ制御部46に対して可動ステージ40を動かすように指示し、これにより、ウエハ30の表面32は、アニーリング画像102Aに対して移動する。ウエハ30の移動は、走査されるウエハ30の表面32における任意の点でのアニーリング画像102Aの滞留時間tが30ns≦t≦10msの範囲となるように、あるいは、他の例では100ns≦t≦10msの範囲となるように、実行される。
【0056】
図7Aは、ウエハ30及びウエハ30の表面30をウエハ30の縁(エッジ)34とともに示す上面図であり、長軸方向に重複する個々の伸長画像102で構成されたアニーリング画像102Aを示す。図7Aでは、ウエハ30の表面32に対するアニーリング画像102Aの移動方向を、矢印ARで示す。アニーリング画像102Aは、その長軸Aに垂直な方向に動作(走査)する。すなわち、その長軸がX方向である場合は、図7Aに示すように、アニーリング画像102AはY方向に動く。
【0057】
複数の伸長画像102からアニーリング画像102Aを形成することの利点は、アニーリング画像102Aが、個々の伸長画像102を変化させることによって調整可能であること、あるいは、適応可能であることである。このような調整は、アニーリング画像102Aの走査中であっても実行可能である。図7B図7Aと同様の図であり、アニーリング画像102Aの一つの縁103Eがウエハ30の縁34を越える場合の例を示す。アニーリング画像102Aの出力によるウエハ30の縁34への損傷の発生を避けるために、最端の伸長画像102(102Eとして示す)の出力を止めるか、あるいは、その強度を弱める。これにより、アニーリング画像102Aは、ウエハ30の縁34を照射しない(あるいは、ウエハ30の縁34を実質的な出力または強度で照射しない)。最も端の伸長画像102Eにおいて出力を止めたり、強度を弱めたりするこのようなプロセスは、図7C及び図7Dに示すように、アニーリング画像102Aがその走査経路を継続し、ウエハ30の縁34を越えるまで、継続させることができる。最終的に、アニーリング画像102Aを構成するただ一つの伸長画像102のみが残される。
【0058】
図8Aは、図2と同様の図であり、LSAシステム10の一例の実施形態を示す。LSAシステム10では、予熱放射ビーム202を発生させる予熱レーザーシステム200が、ウエハ30の表面32を予熱(予備加熱)するために使用される。図8Bの詳細図に示されるように、予熱放射ビーム202は、ウエハ30の表面32上に予熱領域202Rを形成するために作用する。予熱領域202Rは、ウエハ30の表面32において出力放射ビーム64の吸収を増加させるための役割を果たす。一例では、予熱領域202Rの予熱(アニール前)温度TPAは、200℃から600℃までの範囲である。アニーリング画像102Aは、予熱領域202Rの範囲内に少なくとも部分的に存在するが、その後、ウエハ30の表面の温度を、アニール前温度TPAからアニーリング温度Tに上昇させる。一例では、非溶融アニーリングプロセスでのアニーリング温度Tは、1,100℃から1,350℃の範囲内であり、また、溶融アニーリングプロセスでのドープされたシリコンの溶融温度(例えば、約1410℃)よりも高い。
【0059】
図8Bの例では、予熱領域202Rは、矢印AR1及び矢印AR2で示されるように、アニーリング画像102Aとともに動く。予熱放射ビーム202を使用したレーザーアニーリングの実行の一例は、米国特許付与前公報第US2012/0111838号(‘838公報)に開示されている。図8Cは、図8Bと同様の図であるが、図8Cでは、アニーリング画像102Aの縁103Eが予熱領域202Rの外側にある。図8Cのような配置により、強度が不均一なアニーリング、あるいは、アニーリング画像102Aの縁103Eか、その近傍で起こり得る段階的な強度減少を伴うアニーリングを避けるための一方法が提供される。
【0060】
本開示の一局面は、ウエハ30の表面32を予熱(予備加熱)するためのアニーリング画像102Aの使用に関する。また、本開示の一局面は、図8A及び図8Bで示す方法、並びに、‘838公報に記載の方法と同様の方法で、別のアニーリングビームを使用したLSAシステムを実行するためのアニーリング画像102Aの使用に関する。図9Aは、LSAシステム10の一例を示す模式図である。LSAシステム10は、アニーリング画像102Aを形成するレーザーシステム12を備える。アニーリング画像102Aは、ウエハ30の表面32を予熱(予備加熱)するために使用され、予熱領域202Rを形成する。この役割において、アニーリング画像102Aは、アニーリング前画像102PAと呼ばれる。図9AのLSAシステム10は、第2レーザーシステム312も備える。第2レーザーシステム312は、図9Bの上面詳細図に示されるように、ウエハ30の表面32上にアニーリング画像402Aを形成するアニーリングレーザービーム364を生成する。アニーリングレーザービーム364は、持続波(CW)レーザービームまたはパルスレーザービームであり得る。アニーリングレーザービーム364は、予熱領域202Rの範囲内に少なくとも部分的に存在するが、ウエハ30の表面を、アニール前温度TPAからアニーリング温度Tに上昇させるために作用する。一例では、非溶融アニーリングプロセスでのアニーリング温度Tは、1,100℃から1,350℃の範囲内(すなわち、1,100℃≦T≦1,350℃)であり、溶融アニーリングプロセスでのドープされたシリコンの溶融温度(例えば、約1410℃)よりも高い。他の例では、1,100℃≦T≦1,300℃である。
【0061】
本明細書中で開示されるLSAシステム10の種々の実施形態は、多くの利点を有する。一つの利点は、ファイバレーザー52が調節可能であり、隣接するファイバレーザー52の波長λを、数ナノメートルだけ互いに離調(デチューン)することが可能であるということである。この特性は、それらの初期放射ビーム54を、互いに実質的に非干渉にさせて、ウエハ30の表面32からの反射で形成されるスペックルなどのコヒーレント光の悪影響を避けるために使用され得る。他の利点は、ファイバレーザー52が、高信頼性及び高効率性を有し、低コストであり、他の種類のレーザーよりも小さな空間に収まることである。また、ファイバレーザー52は単一モードで動作するため、初期出力ビーム54が比較的きれいなガウス分布を有し、単純な光学システム60を用いて処理することが可能である。このことは、結果的に、光学システムのスループットを相当高く(例えば、約70%に)するという効果をもたらす。したがって、200Wの初期放射ビーム54が、結果として、ウエハ30の表面32に140Wを供給する出力放射ビーム64となり得る。
【0062】
さらに、名目上(すなわち、約)2μmの出力波長λは、ウエハ30の表面32上の特徴物(feature)の寸法よりも実質的に大きい。そのため、不均一な加熱を引き起こし得るウエハパターンの悪影響が軽減される。また、ファイバレーザー52の2μmの出力波長λ、及び、この出力波長λの可変性により、LSAシステム10が、ウエハ30の表面32に隣接して存在し得るプロセスガスの選択吸収帯を避けるために調整されることを可能にする。例えば、アンモニアは、ちょうど2μm付近に強い吸収帯を有し、ファイバレーザー波長λは、この吸収帯波長からわずかに離れて調整され得る。
【0063】
当業者には明白であるが、添付の特許請求の範囲で規定された本開示の精神又は範囲を逸脱することなく、本明細書中に記載された本開示の好ましい実施形態に対して種々の変更を加えることができる。したがって、本開示は、添付の特許請求の範囲およびその均等範囲内において行われる本開示の修正および変更を包含する。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6A
図6B
図6C
図7A
図7B
図7C
図7D
図8A
図8B
図8C
図9A
図9B
【外国語明細書】
1. Abstract
2. Representative Drawing
Fig.1
Fig.1
Fig.2
Fig.3
Fig.4A
Fig.4B
Fig.5
Fig.6A
Fig.6B
Fig.6C
Fig.7A
Fig.7B
Fig.7C
Fig.7D
Fig.8A
Fig.8B
Fig.8C
Fig.9A
Fig.9B