【解決手段】スイッチング電源制御回路100は、アナログの第1直流電圧Vo1または第2の直流電圧Vo2をデジタル値に変換するADC110と、ADC110から入力されたデジタル値のゲイン、位相をデジタル的に処理し補償するデジタル補償器120と、デジタル補償器120で処理されたデジタル信号に基づき駆動信号Sを生成するパルス生成回路130を備える。パルス生成回路130はオンオフ信号Eに応動して制御方式選択信号Mを駆動信号Sとして出力する。
アナログの直流電圧をデジタル値の電圧に変換するアナログ・デジタル変換器と、前記アナログ・デジタル変換器から出力されるデジタル値の電圧のゲインおよび位相特性を設定するデジタル補償器と、前記デジタル補償器で処理されたデジタル補償値を元にして駆動信号を生成するパルス生成回路を備え、前記パルス生成回路は前記駆動信号が前記パルス生成回路からの出力をオンまたはオフさせるオンオフ信号および、複数の前記駆動信号のなかから所定の駆動信号を選択する制御方式選択信号によって切り替えられることを特徴とするスイッチング電源制御回路。
前記デジタル補償器と前記パルス生成回路との間に前記デジタル補償器から出力されるデジタル補償値をアナログに変換するデジタル・アナログコンバータと、前記デジタル・アナログコンバータから出力されるアナログ値とスイッチング素子に流れる電流を比較するコンパレータが接続され、前記コンパレータの出力が前記パルス生成回路に入力されることを特徴とする請求項1に記載のスイッチング電源制御回路。
前記アナログの直流電圧は、第1直流電圧および第2直流電圧を有し、前記第1直流電圧は第1のADCを介して選択回路の第1入力に、前記第2直流電圧は第2のADCを介して前記選択回路の第2入力にそれぞれ結合され、前記選択回路の切り替えによって、前記第1直流電圧および前記第2直流電圧のいずれか一方が前記デジタル補償器に接続されることを特徴とする請求項1または2に記載のスイッチング電源制御回路。
前記アナログの直流電圧は、第1直流電圧および第2直流電圧を有し、前記第1直流電圧はスイッチの第1接点に前記第2直流電圧は前記スイッチの第2接点に結合され、前記スイッチを切り替え、前記第1直流電圧および前記第2直流電圧のいずれか一方が前記デジタル補償器に接続されることを特徴とする請求項1または2に記載のスイッチング電源制御回路。
前記パルス生成回路は、前記オンオフ信号によって一旦オフとされ、その後前記制御方式選択信号が前記パルス生成回路に印加され、その後前記オンオフ信号によって前記パルス生成回路がオンとされることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のスイッチング電源制御回路。
前記スイッチング電源制御回路は、さらに第1レジスタおよび第2レジスタを備え、前記第1レジスタには前記ゲインおよび前記位相特性が一時記憶され、前記デジタル補償器には前記第1レジスタより前記ゲインおよび前記位相特性が取り込まれ、前記第2レジスタには前記パルス生成回路で生成されるスイッチング信号の周波数、デッドタイムが一時記憶されていることを特徴とする請求項6に記載のスイッチング電源制御回路。
前記スイッチング電源制御回路は、前記第1レジスタに一時記憶される前記ゲインおよび前記位相特性および、前記第2レジスタに一時記憶される前記スイッチング信号の周波数,デッドタイムはマイコンから取り込まれることを特徴とする請求項7に記載のスイッチング電源制御回路。
前記スイッチング電源制御回路は、さらに不揮発性メモリを備え、前記第1レジスタに一時記憶される前記ゲインおよび前記位相特性および、前記第2レジスタに一時記憶される前記スイッチング信号の周波数,デッドタイムは前記不揮発性メモリから取り込まれることを特徴とする請求項7に記載のスイッチング電源制御回路。
前記スイッチング電源制御回路は、さらにデータ読み出し回路を備え、前記データ読み出し回路は、前記不揮発性メモリと前記レジスタとの間に設けられ、前記デジタル補償器に設定される前記ゲインおよび位相特性および、前記パルス生成回路に設定される前記スイッチング信号の周波数,デッドタイムは、前記不揮発性メモリから前記データ読み出し回路を介して前記第1レジスタおよび前記第2レジスタに一時記憶され、前記第1,第2レジスタより前記デジタル補償器および前記パルス生成回路に取り込まれ、前記デジタル補償器および前記パルス生成回路に各別に設定されることを特徴とする請求項9に記載のスイッチング電源制御回路。
前記制御方式選択信号が前記パルス生成回路に印加され、かつ、前記データ読み出し回路にも印加されることを特徴とする請求項10に記載のスイッチング電源制御回路。
前記データ読み出し回路には制御方式を選択する上位アドレスが設けられ、前記上位アドレスを指定して複数の制御方式選択信号から所望の制御方式選択信号を読み出すことを特徴とする請求項11に記載のスイッチング電源制御回路。
前記読み出し回路にはさらに下位アドレスが設けられ、前記下位アドレスを指定して、前記デジタル補償器に設定されるゲイン、位相特性および前記パルス生成回路に設定される前記スイッチング周波数,デッドタイムを読み出すことを特徴とする請求項12に記載のスイッチング電源制御回路。
前記下位アドレスで指定される前記ゲイン、前記位相特性、前記スイッチング周波数,デッドタイムは前記不揮発性メモリに前記制御方式ごとに格納されていることを特徴とする請求項13に記載のスイッチング電源制御回路。
前記制御方式選択信号に基づき前記パルス生成回路から出力される前記駆動信号は、フェーズシフト信号、同期整流信号、PWM信号、PFM信号の少なくとも1つであることを特徴とする請求項1〜14のいずれか1項に記載のスイッチング電源制御回路。
前記フェーズシフト信号、前記同期整流信号、前記PWM信号、前記PFM信号は、フルブリッジ方式、ハーフブリッジ方式、アクティブ・クランプ方式、チョッパ方式、プッシュプル方式の前記駆動信号として用いられることを特徴とする請求項15に記載のスイッチング電源制御回路。
前記スイッチング電源制御回路は、第1直流電圧と第2直流電圧との間で双方向に電圧の伝達が可能であって、前記フルブリッジ方式、ハーフブリッジ方式、アクティブ・クランプ方式、チョッパ方式およびプッシュプル方式から選ばれた少なくとも1つの制御方式が前記第1直流電圧および前記第2直流電圧の少なくとも一方側に用いられていることを特徴とする請求項16に記載のスイッチング電源制御回路。
【発明を実施するための形態】
【0021】
スイッチング電源装置としては、たとえばDC/DCコンバータが知られている。DC/DCコンバータは、たとえばスイッチング素子またはスイッチング回路を用いて第1直流電圧を一旦交流電圧に変換した後、トランスを用いてこれを降圧または昇圧し、さらに平滑回路を用いてこれを第2直流電圧に変換する。トランスを用いるDC/DCコンバータは、絶縁型DC/DCコンバータと称され、トランスを用いない非絶縁型DC/DCコンバータと区別されることが少なくない。本発明のスイッチング電源制御回路は絶縁型DC/DCコンバータに好適であるが非絶縁型DC/DCコンバータにも適用することができる。
【0022】
図1は本発明にかかるスイッチング電源制御回路にかかるブロック図を示す。スイッチング電源制御回路100は1つのICで構成され、たとえば絶縁型DC/DCコンバータに用いられ、アナログ・デジタル変換器(以下ADCと称する)110、デジタル補償器120、パルス生成回路130、レジスタ140,150、および不揮発性メモリ210を備える。
【0023】
デジタル補償器120は、ADC110で変換されたデジタル値の電圧を受け入れる。なお、ADC110とデジタル補償器120との間には図示しないエラー増幅器が介在されている。エラー増幅器ではアナログ・デジタル変換されたデジタル値とデジタル基準値とが比較され、その誤差信号を生成する。生成された誤差信号がデジタル補償器120に入力される。デジタル補償器120はエラー信号に基づきデジタルフィードバック信号を生成する。デジタルフィードバック信号によって第1直流電圧Vo1または第2直流電圧Vo2は所定の値に設定される。また、デジタル補償器120は、ゲイン設定、位相補償を行う。ゲイン設定、位相補償は、図示しない平滑回路でのゲインの減衰と位相の遅れを補償し、スイッチング電源制御回路を含むスイッチング電源装置全体の閉ループを安定化させる。
【0024】
スイッチング電源装置の閉ループを安定化させるためには、ゲイン余裕と位相補償を確保する必要がある。ゲイン余裕は、位相が180度遅れたときのゲインであり、位相補償はゲインが0dbのときの位相が180度に対してどれだけ余裕があるかを示す。たとえば、位相補償が70度であるとスイッチング電源装置は安定に出力電圧を供給できる。このようなゲイン余裕や位相補償を確保するために、デジタル補償器120によってゲイン補償と位相補償を行う。なお、デジタル補償器120には、よく知られたP(Proportional)制御、PI(Proportional integral)制御、PID(Proportional integral Differential)制御などを採用することができる。
【0025】
パルス生成回路130は、デジタル補償器120からの信号を受け、後段に配置されるたとえばフルブリッジ回路、ハーフブリッジ回路を駆動する駆動信号Sを生成する。パルス生成回路130は、フリップフロップ群132、論理積回路群134を有する。パルス生成回路130にはさらに、後述するレジスタ群510からオンオフ信号E、および制御方式選択信号Mが与えられている。オンオフ信号Eはパルス生成回路130から駆動信号Sが出力されるのを遮断する。制御方式選択信号Mは、パルス生成回路130から出力される駆動信号Sの制御方式を選択し決定する。
【0026】
オンオフ信号Eは、パルス生成回路130から駆動信号Sが出力されるのを制御する。オンオフ信号Eがオンに選ばれると駆動信号Sが出力され、オンオフ信号Eがオフに選ばれると駆動信号Sは出力されない。
【0027】
制御方式選択信号Mは、スイッチング電源装置がたとえばフルブリッジ方式、ハーフブリッジ方式、アクティブ・クランプ方式、チョッパ方式、プッシュプル方式のいずれか1つまたはこれらの組み合わせで構成されるとき、それらの回路方式に合った、たとえばフェーズシフト信号、同期整流信号、PWM信号、PFM信号のいずれか1つまたは複数の駆動信号(制御信号)をパルス生成回路130から出力させるための選択信号である。所望する制御方式に合った制御信号を選択するときには、オンオフ信号Eを用いて一旦パルス生成回路130からの駆動信号Sの出力をオフにし、その後所定の制御方式選択信号Mをパルス生成回路130に印加する。所望の制御方式選択信号Mが印加されると、パルス生成回路130から、たとえばフェーズシフト信号、PWM信号、同期整流信号、PFM信号などが出力される。
【0028】
第1レジスタ140は、デジタル補償器120に各制御方式に合った各種のパラメータを一時的に記憶する。デジタル補償器120がたとえばPI制御を採用したときには乗算器121,122(後述の
図4参照)が用意され、それら乗算器にはよく知られた比例定数、積分定数が与えられる。本書でいう各種パラメータとはこうした各種の設定値を指している。PI制御によって、デジタル補償器120のゲイン、位相特性が決められている。
【0029】
第2レジスタ150は、パルス生成回路130に各制御方式に合った各種パラメータを一時的に記憶する。ここで各種パラメータとはパルス生成回路130から出力される駆動信号Sの周波数,デッドタイムを一時的に記憶する。したがって、たとえばフルブリッジ方式、ハーフブリッジ方式、アクティブ・クランプ方式、チョッパ方式、プッシュプル方式に合った、たとえばフェーズシフト信号、PWM信号、同期整流信号、PFM信号の周波数、デッドタイムなどが第2レジスタ150に記憶される。
【0030】
不揮発性メモリ210には、デジタル補償器120およびパルス生成回路130の制御方式を設定するために、たとえば、ゲイン、位相特性、周波数、デッドタイムなどが設定された各種パラメータの設定値が格納されている。不揮発性メモリ210にはたとえば、EEPROM、フラッシュメモリを用いることができる。不揮発性メモリ210に格納された各種パラメータは第1レジスタ140、第2レジスタ150を介してそれぞれデジタル補償器120およびパルス生成回路130に設定される。
【0031】
図2は
図1の変形例であり、スイッチング電源制御回路200を示す。
図2も
図1と同様に1つのICで構成されている。
図2が
図1と異なる第1の相違点は、パルス生成回路130を少し詳しく示したことである。第2の相違点はデータ読み出し回路310を第1レジスタ140、第2レジスタ150と不揮発性メモリ210との間に設けたことである。
【0032】
パルス生成回路130は、複数のフリップフロップ群132および複数の論理積回路群134を有する。1つのフリップフロップに対応して1つの論理積回路が設けられ、フリップフロップ132群と論理積回路134群は同じ段数である。これらの段数は駆動信号Sの数に応じて決められる。駆動信号Sの数は、本発明の制御方式によって異なる。たとえば、双方向のフルブリッジ型スイッチング電源制御に用いるときは、駆動信号Sは6〜8個使用するので、フリップフロップ群132および論理積回路群134の段数は6〜8段用意される。
【0033】
オンオフ信号Eがたとえばハイレベルに設定されると、論理積回路群134はオンとなり、フリップフロップ群132から論理積回路群134に入力される信号が駆動信号Sとして出力される。一方、オンオフ信号Eがたとえばローレベルに設定されると論理積回路群134はオフとなり、駆動信号Sの出力は遮断される。
【0034】
データ読み出し回路310は、不揮発性メモリ210に格納され、デジタル補償値120およびパルス生成回路130に設定される各種パラメータを第1レジスタ140および第2レジスタ150に伝達する。データ読み出し回路310にはパルス生成回路130に印加される制御方式選択信号Mが同時に印加される。
【0035】
図3は、
図2の変形例を示す。
図3に示したスイッチング電源制御回路300は
図1、
図2と同様に1つのICで構成され、
図2と相違する点は、第1にデータ読み出し回路310に上位アドレス311を設けたことである。これによって、不揮発性メモリ210に格納された複数の制御方式をデータ読み出し回路310で選択することができる。第2に不揮発性メモリ210にたとえば、制御方式1用メモリ領域212および制御方式2用メモリ領域214を設けたことである。こうした制御方式ごとにメモリ領域を分けることができるのは、データ読み出し回路310に上位アドレス311を設けたからである。上位アドレスを指定することで、所望の制御方式を設定できることになる。なお、不揮発性メモリ210には2つの制御方式を例示したが、これに限らず3以上の制御方式をあらかじめ用意しておくことができる。
【0036】
図4は
図3のスイッチング電源制御回路300を具体的に示す。スイッチング電源制御回路400は1つのICで構成されている。ここで、
図3と相違する点について説明する。
【0037】
デジタル補償器120はデジタル信号処理でよく知られたPI制御回路を有する。PI制御回路は、乗算器121,122、遅延回路123,124、加算器125を有する。デジタル補償器120の出力はデジタル信号であり、ゲインおよび位相特性は、たとえば乗算器121,123に与えられた比例定数、積分係数などで設定される。デジタル補償器120の出力は後段のパルス生成回路130を構成する補償値変換手段136に入力される。
【0038】
パルス生成回路130は、補償値変換手段136、フリップフロップ群132、論理積回路群134を有する。補償値変換手段136は、デジタル補償器120から出力されたデジタル補償値に基づき、たとえばPWM信号やフェーズシフト信号を生成する。すなわち、デジタル値化された信号を時間軸をもった駆動信号Sに変換する。これによって、駆動信号Sのデューティ比、パルス幅、周波数などが設定される。
【0039】
レジスタ群510は、第1レジスタ140、第2レジスタ150、パルス生成回路130をオンオフさせるオンオフ信号E、制御方式選択信号Mを有する。第1レジスタ140には、デジタル補償値120の各種パラメータを設定するたとえば、乗算器121,122の比例定数kp、積分定数kiが格納される。こうした各定数は、デジタル補償器120のゲイン、位相特性を決める。
【0040】
第2レジスタ150には、パルス生成回路130を構成する補償値変換手段136の、たとえば、スイッチング周波数fsw、デッドタイムtdなどの各種パラメータが一時的に記憶される。
【0041】
フリップフロップ群132および論理積回路群134は、デジタル補償器120、補償値変換手段136で設定された、ゲイン、位相特性、スイッチング周波数、デューティ、パルス幅などを有する駆動信号Sを出力する。
【0042】
データ読み出し回路310は、上位アドレス311、下位アドレス312、パラレル・シリアル変換手段313、シリアル・パラレル変換手段314、読み出しデータ315、およびレジスタ群制御回路316を備える。
【0043】
上位アドレス311はたとえば3ビットのデジタル信号から成り、各制御方式たとえば、フルブリッジ方式、ハーフブリッジ方式、アクティブ・クランプ方式、チョッパ方式、プッシュプル方式などの回路方式ごとに認識番号が与えられる。
【0044】
下位アドレス312は、たとえば8ビットのデジタル信号から成り、比例定数kpや積分定数ki、スイッチング周波数fsw、デッドタイムtdなどの情報が、制御方式1用設定値212と制御方式2用設定値214のどの位置にあるかを指定する。下位アドレス312は、データ読み出し回路310でインクリメントして自動生成することができる。
【0045】
パラレル・シリアル変換手段313では、上位アドレス311、下位アドレス312から不揮発性メモリ210にアドレスを指定するときにパレルデータからシリアルデータに変換するために設けている。不揮発性メモリ210とのインターフェースがIIC(Inter Integrated Circuit)やSPI(Serial Peripheral Interface)などのシリアルインターフェースである場合に必要となるが、不揮発性メモリにパラレルのインターフェースを有している場合、パラレル・シリアル変換手段313は不要である。
【0046】
シリアル・パラレル変換手段314では不揮発性メモリ210から、レジスタ群510を構成する第1レジスタ140と第2レジスタ150に各種パラメータを送るときに、シリアルデータからパラレルデータに変換するために設けている。不揮発性メモリ210とのインターフェースがIICやSPIなどのシリアルインターフェースである場合に必要となるが、不揮発性メモリ210にパラレルのインターフェースを有している場合、パラレル・シリアル変換手段314も不要となる。
【0047】
不揮発性メモリ210の制御方式1用メモリ領域212、制御方式2用メモリ領域214にそれぞれ、制御方式1用設定値、制御方式2用設定値が格納される。不揮発性メモリ210には各制御方式に用いられる各種パラメータすなわち各種のデータ設定値がランダムに格納されているのではなく制御方式ごとに束ねて格納している。こうしたデータの格納方法によって、制御方式選択信号Mが所定のものに選択されたときの制御方式の決定を迅速に行うことができる。
【0048】
制御方式1用設定値はたとえば、PI制御回路に用いる乗算器の比例定数kp1、積分定数ki1、スイッチング周波数fsw1、デッドタイムtd1などが格納される。これ以外にも駆動信号Sのパルス幅などを挙げることができる。制御方式1はたとえば、絶縁型双方向フルブリッジ回路を用いたスイッチング電源制御回路であれば、トランスの1次側から入力電圧を供給し、その2次側から出力電圧を取り出す場合が該当する。制御方式2はトランスの2次側から入力電圧を供給し、その1次側から出力電圧を取り出す場合が該当する。入力電圧と出力電圧の関係は降圧であったり昇圧であったりする。具体的には後述する。
【0049】
制御方式2用設定値も制御方式1用設定値とほぼ同じであり、PI制御回路に用いる乗算器の比例定数kp2、積分定数ki2、スイッチング周波数fsw2、デッドタイムtd2などが格納される。これ以外にも駆動信号Sのパルス幅などを挙げることができる。制御方式2はたとえば、絶縁型双方向フルブリッジ回路を用いたスイッチング電源制御回路であれば、トランスの2次側から入力電圧を供給し、その1次側から出力電圧を取り出す場合が該当する。入力電圧と出力電圧の関係は降圧であったり昇圧であったりする。具体的には後述する。
【0050】
図5は、
図1の変形例である。
図1とはマイコン180を用いたことで相違する。すなわち
図1では不揮発性メモリ210を用いたが、
図5に示したスイッチング電源制御回路500は、それに替えてマイコン180を用いている。マイコン180を用いるならば第1直流電圧Vo1、第2直流電圧Vo2を監視することができるなど、さらに細部に亘る管理が行うことができる。マイコン180とのインターフェースはたとえば、IIC、SPI、PMBus(Power Management Bus)、SMBus(System Management Bus)を用いることができる。
【0051】
図6Aは、ADCの切り替えを説明するための図である。スイッチング電源制御回路600Aは、ADC610,620、および選択回路SWを有する。その他の構成は
図1に示したものと同じである。第1直流電圧Vo1はアナログ値である。アナログの直流電圧Vo1がADC610に入力されると、ADC610の出力にはデジタル値に変換されたデータが選択回路SWの第1入力aに伝達される。
【0052】
第2直流電圧Vo2も第1直流電圧Vo1と同じであり、アナログ値である。アナログ値の直流電圧Vo1がADC620に入力されると、ADC620の出力にはデジタル値に変換されたデータが選択回路SWの第2入力bに伝達される。
【0053】
選択回路SWの中点cはデジタル補償器120に結合され、中点cが第1入力aを選択したときは、第1直流電圧Vo1がデジタル補償器120、パルス生成回路130で処理される。このとき、第2直流電圧Vo2はデジタル補償器120、パルス生成回路130では処理されない。したがって、第2直流電圧Vo2の大きさやゲイン、位相特性は制御されない。
【0054】
一方、選択回路SWの中点cが第2入力bを選択したときは第2直流電圧Vo2の制御が行われ第1直流電圧Vo1の制御は行われない。
【0055】
選択回路SWの中点cを第1入力aを選択させるか或いは第2入力bを選択させるかは、入力電圧をどちらに設定するかによって決まる。たとえば、第1直流電圧Vo1を入力電圧とし、その電圧に基づき第2直流電圧Vo2を出力電圧として取り出す場合には選択回路SWの中点cは第1入力aを選択する。この逆の場合には第2入力bを選択することになる。いずれにしてもデジタル補償器120、パルス生成回路130との回路の段数を最小限にするために選択回路SWが用意されている。
【0056】
スイッチング電源制御回路600Aは、第1直流電圧Vo1または第2直流電圧Vo2のいずれか一方に応じた出力電圧の制御を行っている間でも、他方の出力電圧をADC610およびADC620で常時監視し、別の用途に用いることができる。
【0057】
図6Bに示したスイッチング電源制御回路600Bは、ADC630およびスイッチSW1を有する。
図6Aとの相違はADCを1つで構成していることである。すなわち、
図6Aでは2つのADCを用意したが、
図6Bに示したスイッチング電源制御回路はADC630の1つである。第1直流電圧Vo1はスイッチSW1の接点a1に伝達され、第2直流電圧Vo2は接点b1に伝達される。スイッチSW1の中点c1はADC630の入力に結合される。スイッチSW1の切り替え動作は
図6Aと同じである。スイッチング電源制御回路600BはADC630の1つで構成している。その他の構成は
図1に示したものと同じである。
【0058】
第2直流電圧Vo2も第1直流電圧Vo1と同じであり、アナログ値である。アナログ値の第1直流電圧Vo1または第2直流電圧Vo2が接点a1または接点b1に入力され、スイッチSW1の中点c1に伝達される。
【0059】
スイッチSW1の中点c1はADC630を介してデジタル補償器120に結合され、中点c1が接点a1を選択したときは、第1直流電圧Vo1がデジタル補償器120、パルス生成回路130で処理される。このとき、第2直流電圧Vo2はデジタル補償器120、パルス生成回路130では処理されない。したがって、第2直流電圧Vo2の大きさやゲイン、位相特性は制御されない。
【0060】
一方、スイッチSW1の中点c1が接点b1を選択したときは第2直流電圧Vo2の制御が行われ第1直流電圧Vo1の制御は行われない。
【0061】
スイッチSW1の中点c1を接点a1を選択させるか或いは接点b1を選択させるかは、入力電圧をどちらに設定するかによって決まる。たとえば、第1直流電圧Vo1を入力電圧とし、その電圧に基づき第2直流電圧Vo2を出力電圧として取り出す場合にはスイッチSW1の中点c1は接点a1を選択させる。この逆の場合には接点b1を選択することになる。いずれにしてもADC630を第1直流電圧Vo1と第2直流電圧Vo2に共用するので、ADC630のダイナミックレンジおよび応答性を勘案しなければならない。
【0062】
図7は本発明のスイッチング電源制御回路として用いる電流モード型のスイッチング電源制御回路700を示す。スイッチング電源制御回路700の回路構成は
図1に示したものとは、DAC710、コンパレータ720が追加された点で相違する。デジタル補償器120から出力されるデジタル値の信号はアナログ値の信号に変換するためにDAC710が用意され、変換されたアナログ電圧がコンパレータ720の反転入力端子に印加され、コンパレータ720の非反転入力端子には第1直流電圧Vo1または第2直流電圧Vo2を生成するために用意したスイッチング素子に流れる電流をカレントトランスCsで検出し、その電流を電圧に変換して印加される。
【0063】
図7に示した電流モード型のスイッチング電源制御回路700でも、パルス生成回路130をオンオフ信号Eでオンオフさせ、制御方式選択信号Mを入力するようにすることで
図1〜
図6に示した電圧モード型のスイッチング電源制御回路と同じ効果を奏することができる。
【0064】
図8はこれまで説明してきたパルス生成回路130をオンオフさせ、制御方式選択信号Mを入力して、2つの制御方式を切り替える状態を示すタイミングチャートを示す。以下
図4を参照しながら説明する。
【0065】
図8において、オンオフ信号Eはレジスタ群510からパルス生成回路130に印加され、パルス生成回路130から駆動信号Sを出力させるか或いはさせないかを決める。オンオフ信号Eがハイレベルのとき駆動信号Sが出力され、ローレベルのときに駆動信号Sの出力は遮断される。オンオフ信号Eは、具体的にはパルス生成回路130の一部を構成する論理積回路群134に印加される。オンオフ信号Eをハイレベルからローレベルに切り替えるタイミングは、スイッチング電源制御回路400の制御方式を切り替えるときのタイミングである。従前、この種のスイッチング電源制御回路ではDSPを用い、プログラムによって制御方式を切り替えることは知られている。しかし、本発明ではDSPを採用せずにパルス生成回路130の一部の動作を遮断して行うので、プログラムをする必要がないので操作が容易になる。
【0066】
制御方式選択信号Mは、たとえばフルブリッジ方式,ハーフブリッジ方式,アクティブ・クランプ方式,チョッパ方式,プッシュプル方式などの回路方式、降圧型,昇圧型,反転型などの動作モード、フェーズシフト信号,PWM信号、PFM信号などの駆動信号(制御信号)の組み合わせを決定・選択する信号である。
【0067】
制御方式がたとえば「フェーズシフト・フルブリッジ降圧」と称されるときには、駆動信号(制御信号)としてフェーズシフト信号をフルブリッジ方式に使用して降圧型のスイッチング電源制御回路を提供することを指す。同様に「フェーズシフト・フルブリッジ昇圧」と称されるときは、駆動信号(制御信号)としてフェーズシフト信号をフルブリッジ方式に使用して昇圧型のスイッチング電源制御回路を提供することを指す。
【0068】
制御方式選択信号Mは、オンオフ信号Eと同様にレジスタ群510からパルス生成回路130に印加される。また制御方式選択信号Mは、データ読み出し回路310に設けた上位アドレス311にリンクしており、上位アドレス311を所定のアドレスに指定すると所定の制御方式に切り替え、選べるようにしている。制御方式はたとえば制御方式1から制御方式2に切り替えることができる。制御方式1はたとえば「フェーズシフト・フルブリッジ降圧」であり、制御方式2はたとえば「フェーズシフト・フルブリッジ昇圧」に設定することができる。制御方式1または制御方式2が選択されると、それらに合った駆動信号Sがパルス生成回路130から出力される。
【0069】
図8は、一例として制御方式1から制御方式2に切り替える状態を模式的に示している。制御方式1から制御方式2に切り替えるときは、時間t1で一旦オンオフ信号Eをローレベルにしてパルス生成回路130からの駆動信号Sの出力を遮断し、その後制御方式2を選択した制御方式選択信号Mをパルス生成回路130に印加する。その後、オンオフ信号Eを再度ハイレベルにし、パルス生成回路130をオンさせると完全に制御方式2に切り替わる。
【0070】
第1レジスタ140には、デジタル補償器120のゲインおよび位相特性を設定する、比例定数kp、積分定数kiなどの各種パラメータが一時記憶される。制御方式1を制御方式2に切り替えるときには第1レジスタ140に記憶されている比例定数kp1、積分定数kiを、比例定数kp2、積分定数ki2に切り替えることになる。切り替えは、制御方式選択信号Mを切り替えた後に行う。第1レジスタ140に記憶される新たな各種パラメータは切り替えた直後では制御方式2の各種パラメータのものには確定されず不定の状態が生ずるが、制御方式2に完全に切り替わって不定の状態がなくなる時間t2よりも後で、オンオフ信号Eをオフからオンに切り替える。
【0071】
第2レジスタ150にはパルス生成回路150のスイッチング周波数、デッドタイムなどを設定する各種パラメータが一時記憶される。制御方式1を制御方式2に切り替えるときには、第1レジスタ140に記憶されている、たとえばスイッチング周波数fsw1、デッドタイムtd1などの各種パラメータを制御方式2用である、スイッチング周波数fsw2、デッドタイムtd2などに切り替えることになる。両者の切り替えは、制御方式選択信号Mを切り替えた後に行う。切り替えた直後が各種パラメータは確定されず不定の状態が生ずるが、オンオフ信号Eをオフからオンに切り替えた時間t2で制御方式2に完全に切り替わる。
【0072】
図8に示した駆動信号Sにおいて、駆動信号S1〜S8は、制御方式1を選択したときにパルス生成回路130から出力される。制御方式1は、たとえば「フェーズシフト・フルブリッジ降圧」であり、制御方式2は「フェーズシフト・フルブリッジ昇圧」に選択することができる。
【0073】
駆動信号S1〜S8のなかで、駆動信号S1〜S4に基づきフェーズシフト信号が生成される。駆動信号S1と駆動信号S3とには位相差φが設定され、駆動信号S2と駆動信号S4との間にも同じ大きさの位相差φが設定される。こうした位相差φをもたせることでフェーズシフト信号が生成される。駆動信号S1と駆動信号S2との間にはデッドタイムtdが設定される。同様に駆動信号S3と駆動信号S4との間にも図示しないデッドタイムtdが設定される。
【0074】
駆動信号S5〜S8は同期整流信号を示す。駆動信号S5と駆動信号S8は同じであり、駆動信号S6と駆動信号S7は同じである。駆動信号S5と駆動信号S6との間にはデッドタイムtdが設定されている。デッドタイムtdは駆動信号S5と駆動信号S6をたとえば2つのトランジスタを用いた同期整流型のスイッチング電源装置に採用したときに、2つのトランジスタが同時にオンしないようにするために設定されている。
【0075】
駆動信号S11〜S18は、制御方式2を選択したとき、パルス生成回路130から出力される。駆動信号S11〜S14は、同期整流信号を示す。駆動信号S11と駆動信号S14は同じであり、駆動信号S12と駆動信号S13は同じである。駆動信号S13と駆動信号S14との間にはデッドタイムtdが設定されている。
【0076】
駆動信号S15〜S18に基づきフェーズシフト信号が生成される。駆動信号S15と駆動信号S17との間に位相差φが設定され、駆動信号S16と駆動信号S18との間にも同じ大きさの位相差φが設定される。駆動信号S15〜S18のパルス幅と位相差φを調整して、図示しないトランスに生成されるパルス電圧の大きさを設定する。駆動信号S15と駆動信号S16との間にはデッドタイムtdが設定される。同様に駆動信号S17と駆動信号S18との間にもデッドタイムtdが設定されている。
【0077】
図9は、フルブリッジ方式のスイッチング電源制御回路を模式的に示す。フルブリッジ方式はおもに大電力のスイッチング電源に多く用いられる。フルブリッジ方式は本発明にかかる制御方式の1つに用いることができる。フルブリッジ双方向型スイッチング電源910は、第1フルブリッジ回路911および第2フルブリッジ回路912を備える。第1フルブリッジ回路911から第1フルブリッジ回路912に向かって電圧が伝達でき、かつ、第2フルブリッジ回路912から第1フルブリッジ回路911に向かって電圧が伝達できる、いわゆる双方向のスイッチング電源装置を構成する。第1直流電圧Vo1は降圧または昇圧し第2直流電圧Vo2として取り出すことができる。また、第2直流電圧Vo2は降圧または昇圧し第1直流電圧Vo1として取り出すことができる。なお、第1直流電圧Vo1および第2直流電圧Vo2はたとえば、それぞれ100V,12Vである。
【0078】
第1フルブリッジ回路911は、トランス810の1次巻線811に、第2フルブリッジ回路912はその2次巻線812にそれぞれ結合される。
【0079】
第1フルブリッジ回路911は、端子P1,P2、キャパシタC1、トランジスタQ1〜Q4を備える。トランジスタQ1とトランジスタQ2とは互いに直列に接続され、トランジスタQ3とトランジスタQ4も互いに直列に接続され、それぞれの直列接続体は、端子P1と端子P2との間に接続される。端子P1と端子P2との間に第1直流電圧Vo1が入出力される。
【0080】
第2フルブリッジ回路912は、第1フルブリッジ回路911と同じ回路構成を成す。第2フルブリッジ回路912は、端子P3,P4、キャパシタC2、トランジスタQ5〜Q8を備える。
【0081】
第1フルブリッジ回路911から第2フルブリッジ回路912に直流電圧を伝達するとき、すなわち、第1直流電圧Vo1を入力電圧とし、第2の直流電圧Vo2を出力電圧として取り出す場合、第1フルブリッジ回路911を構成するトランジスタQ1〜Q4のゲートに、
図8に示した駆動信号S1〜S4を各別に印加する。駆動信号S1〜S4はたとえばフェーズシフト信号である。また、このとき第2フルブリッジ回路912を構成するトランジスタQ5〜Q8のゲートには
図8に示した駆動信号S5〜S8を各別に印加する。駆動信号S5〜S8は、前述のとおり同期整流信号である。
【0082】
第1フルブリッジ回路911が入力側に、第2フルブリッジ回路912が出力側にそれぞれ設定されたときには、第1フルブリッジ回路911は第1直流電圧Vo1を交流電圧(パルス電圧)に変換し、第2フルブリッジ回路912は、生成されたパルス電圧を直流に変換するための整流回路と作用するよう駆動信号S5〜S8が設定される。キャパシタC2は交流電圧を平滑するための平滑回路として用いる。
【0083】
第2フルブリッジ回路912から第1フルブリッジ回路911に直流電圧を伝達する場合、すなわち、第2直流電圧Vo2を入力電圧とし、第1直流電圧Vo1を出力電圧として取り出す場合には、第1フルブリッジ回路911を構成するトランジスタQ1〜Q4のゲートには
図8に示した駆動信号S11〜S14を各別に印加する。駆動信号S11〜S14は前述のとおり同期整流信号である。このとき、第2フルブリッジ回路912を構成するトランジスタQ5〜Q8のゲートには
図8に示した駆動信号S15〜S18を各別に印加する。駆動信号S15〜S18は前述のとおりフェーズシフト信号である。第2フルブリッジ回路912が入力側であり、第1フルブリッジ回路911が出力側に設定されたときは、第1フルブリッジ回路911は整流回路として作用するよう駆動信号S11〜S14が設定される。キャパシタC1はパルス電圧を直流電圧に変換するための平滑回路として用いる。
【0084】
図9に示したトランジスタQ1〜Q8のドレイン・ソース間には図示しない、いわゆるボディダイオードが介在されている。こうしたボディダイオードは従前、整流回路を構成するダイオードとして利用される。こうした構成下においては駆動信号S1〜S8、駆動信号S11〜S18のなかから選ばれた駆動信号を、フェーズシフト信号、同期整流信号、PWM信号、PFM信号でもない、単にローレベル信号またはハイレベル信号に設定することもある。
【0085】
図10は、ハーフブリッジ方式のスイッチング電源制御回路を模式的に示す。ハーフブリッジ方式は基本的にはフルブリッジ方式の半分のトランジスタで構成することができる。本発明にかかる制御方式の対象とされるハーフブリッジ双方向型スイッチング電源920は、第1ハーフブリッジ回路921および第2ハーフブリッジ回路922を備える。第1ハーフブリッジ回路921から第2ハーフブリッジ回路922に向かって電圧が伝達でき、かつ、第2フルブリッジ回路922から第1フルブリッジ回路921に向かって電圧が伝達できる、いわゆる双方向のスイッチング電源装置を構成する。すなわち、第1直流電圧Vo1は降圧または昇圧し第2の直流電圧Vo2として取り出すことができる。また、第2の直流電圧Vo2は降圧または昇圧し第1直流電圧Vo1として取り出すことができる。
【0086】
第1ハーフブリッジ回路921はトランス820の1次巻線821側に、第2ハーフブリッジ回路922はその2次巻線822側に結合される。
【0087】
第1ハーフブリッジ回路921は端子P1,P2、キャパシタC3〜C5、およびトランジスタQ19,Q20を備える。トランジスタQ19とトランジスタQ20は互いに直列に、キャパシタC4とキャパシタC5は互いに直列にそれぞれ接続され、それぞれの直列接続体は端子P1と端子P2との間に結合される。端子P1と端子P2との間にアナログ値である第1直流電圧Vo1が入出力される。
【0088】
トランジスタQ19とトランジスタQ20との共通接続点と、キャパシタC4とキャパシタC5との共通接続点との間に1次巻線821が結合される。
【0089】
キャパシタC3は第1ハーフブリッジ回路921が平滑回路すなわち出力側として構成されたときはパルス電圧(交流電圧)を直流に平滑し、また、第1ハーフブリッジ回路921が入力側に構成されたときには第1直流電圧Vo1のリップル成分を除去する働きを有する。
【0090】
第2ハーフブリッジ回路922は、端子P3,P4、キャパシタC6〜C8、およびトランジスタQ21,Q22を備える。トランジスタQ21とトランジスタQ22は互いに直列に、キャパシタC6とキャパシタC7は互いに直列にそれぞれ接続され、それぞれの直列接続体は端子P3と端子P4との間に結合される。端子P3と端子P4との間にアナログ値である第2直流電圧Vo2が入出力される。
【0091】
トランジスタQ21とトランジスタQ22との共通接続点と、キャパシタC6とキャパシタC7との共通接続点との間に2次巻線822が結合される。
【0092】
キャパシタC8は第2ハーフブリッジ回路922が平滑回路すなわち出力側として構成されたときはパルス電圧(交流電圧)を直流に平滑し、また、第2ハーフブリッジ回路922が入力側に構成されたときには第2直流電圧Vo1のリップル成分を除去する働きを有する。
【0093】
トランジスタQ19〜Q22の各ゲートには、たとえばフェーズシフト信号、PWM信号などの駆動信号S19〜S22各別に印加することができる。また、フェーズシフト信号、PWM信号ではなくパルス周波数が変調されたPFM信号を印加してもよい。また、たとえば第2ハーフブリッジ回路922を平滑回路すなわち出力側とするときには、トランジスタQ21,Q22にはフェーズシフト信号、PWM信号、PFM信号ではなく、単なるハイレベルまたはローレベルを印加し、常時トランジスタQ21,Q22の動作を遮断させ、それらのトランジスタに寄生的に存在するいわゆるボディダイオードを利用して平滑回路を構成することもできる。
【0094】
図11は本発明の制御方式の1つとして適用可能なアクティブ・クランプ方式のスイッチング電源制御回路を示す。アクティブ・クランプ方式はフォワード型コンバータに属し、数十ワットから数百ワットのいわゆる中容量のスイッチング電源装置に広く用いられている。
【0095】
本発明の制御方式の1つとして用いるアクティブ・クランプ型スイッチング電源930は、トランス830の1次巻線831側にトランジスタQ23,Q24、キャパシタC7,C8、および端子P1,P2を備える。端子P1と端子P2との間には第1直流電圧Vo1が供給される。トランジスタQ23は、アクティブ・クランプ型スイッチング電源930の主スイッチング素子として、トランジスタQ24は補助スイッチング素子として、それぞれの役割を有する。
【0096】
トランジスタQ24とキャパシタC10が直列に接続される。トランジスタQ24とキャパシタC10を用いない方式は一般的にフォワード型コンバータと称される。アクティブ・クランプ方式は広義的にはフォワード型コンバータの1つである。
【0097】
トランジスタQ24とキャパシタC10から成る直列接続体と並列にトランジスタQ23が接続される。トランジスタQ23がオフのときトランジスタQ24をオンさせ、トランス830の1次巻線831をリセットしてトランスコアの磁化を防止する。
【0098】
トランジスタQ23,Q24の各ゲートにはたとえば、パルス幅が変調されたたとえばPWMの駆動S23,S24が印加される。トランジスタQ23とトランジスタQ24が同時にオンしないように所定のデッドタイムおよび所定のデューティ比に設定された駆動信号S23,S24を各別に印加する。キャパシタC9は第1直流電圧Vo1を平滑するために用意される。
【0099】
トランス830の2次巻線832にはトランジスタQ25,Q26、コイルL1、およびキャパシタC11で形成された平滑回路が設けられる。トランジスタQ25とトランジスタQ26はいわゆる同期整流の動作を成すように、すなわち、トランジスタQ25とトランジスタが交互にオンオフするように、たとえばPWMの駆動信号S25,S26が各別に印加される。端子P1と端子P2との間から第2直流電圧Vo2が取り出される。
【0100】
図11に示したアクティブ・クランプ型スイッチング電源930は一方向すなわち、1次巻線831側から2次巻線832側に向かって、第1直流電圧Vo1を第2直流電圧Vo2に変換するものを示した。しかし、2次巻線832側にフルブリッジ回路、ハーフブリッジ回路等を設け双方向のスイッチング電源制御回路を構成することは当業者には比較的容易なことである。
【0101】
図12Aは本発明の別の制御方式に用いることができるチョッパ型スイッチング電源940を模式的に示す。チョッパ型スイッチング電源940はトランス840の1次巻線841に接続された端子P1,P2、トランジスタQ27〜Q30、およびキャパシタC10を備える。端子P1と端子P2との間には第1直流電圧Vo1が供給される。
【0102】
トランジスタQ27とトランジスタQ28は互いに直列に端子P1と端子P2との間に接続される。トランジスタQ29とトランジスタQ30は互いに直列に接続され、端子P1と端子P2との間に接続される。したがって、トランジスタQ27とQ28の直列接続体と、トランジスタQ29とQ30の直列接続体とは互いに並列に端子P1と端子P2との間に結合される。
【0103】
トランジスタQ27とトランジスタQ28の共通接続点と、トランジスタQ29とトランジスタQ30の共通接続点との間に1次巻線841が結合される。端子P1と端子P2との間にはキャパシタC10が平滑用として接続される。端子P1と端子P2との間に第1直流電圧Vo1が供給される。
【0104】
トランス840の2次巻線842側にはダイオードD1〜D4で構成されたダイオード整流回路、コイルL2、キャパシタC13が接続され、さらに端子P3,P4が接続される。ダイオード整流回路の出力はコイルL2とキャパシタC13との直列接続体と並列に接続される。コイルL2とキャパシタC13との共通接続点には端子P3が接続され、端子P3と端子P4との間に生じた第2直流電圧Vo2を取り出す。
【0105】
図12Aに示したチョッパ型スイッチング電源940はトランス840を用いている。しかし
図12Aに示したトランジスタQ27〜Q30から成る構成はトランジスタQ27,Q30を同時にオンまたはオフさせ、また、トランジスタQ29,Q28を同時にオンさせるようにオンオフを繰り返して用いるのでチョッパ方式と称する。なお、トランジスタQ27〜Q30の回路構成は駆動信号S27〜S30を設定することでフルブリッジ方式またはハーフブリッジ方式にも転用可能である。
【0106】
図12Bは、
図12Aに示したスイッチング電源940のトランジスタQ27〜Q30に印加する駆動信号を示す。駆動信号S27と駆動信号S30は同じであり、駆動信号S28と駆動信号S29は同じである。駆動信号S27はトランジスタQ27のゲートに、駆動信号S30はトランジスタQ30のゲートに各別に印加する。
【0107】
駆動信号S28はトランジスタQ28のゲートに、駆動信号S29はトランジスタQ29のゲートに各別に印加する。駆動信号S27,S30と駆動信号S28,S29との間には周期T1ではデッドタイムtd1が、周期T2ではデッドタイムtd2が各別に設定される。デッドタイムtd1,td2は、トランジスタQ27とトランジスタQ28が共に同時にオンしないように、また、トランジスタQ29とトランジスタQ30が共に同時にオンしないように設定される。こうしたデッドタイムを設定することは当業者にはよく知られている。
【0108】
周期T1ではオンデューティtxが比較的大きく選ばれた場合を示す。オンデューティtxを大きくするのは端子P3と端子P4との間に取り出す第2直流電圧Vo2を増加させる場合である。
【0109】
周期T2ではオンデューティtxが比較的小さく選ばれた場合を示す。オンデューティtxを小さくするのは端子P3と端子P4との間に取り出す第2直流電圧Vo2を低下させる場合である。トランジスタQ27〜Q30のオンする時間を調整して第1直流電圧Vo1を所定の第2直流電圧Vo2に変換する。
【0110】
図13は本発明の制御方式の選択対象の1つとされるプッシュプル方式のスイッチング電源制御回路を示す。プッシュプル型スイッチング電源950は、トランス850の1次巻線851a,851b側にトランジスタQ31,Q32、キャパシタC14、および端子P1,P2を備える。端子P1と端子P2との間には第1直流電圧Vo1が供給される。1次巻線851aと851bは互いに直列に接続され、1次巻線851aと851bの第1端子同士は共通に接続され、1次巻線851aの第2端子はトランジスタQ31のたとえばドレインに、1次巻線851bの第2端子はトランジスタQ32のたとえばドレインにそれぞれ接続される。キャパシタC14は端子P1と端子P2の間に接続される。トランジスタQ31,Q32には交互にオンオフさせる駆動信号S31,S32が印加される。
【0111】
トランス850の2次巻線852側にはダイオードD5〜D8、コイルL3、キャパシタC15で構成された平滑回路が設けられている。端子P3,P4には第2直流電圧Vo2が出力される。
【0112】
図13に示したプッシュプル型スイッチング電源950の電圧伝達は一方向であり、端子P1,P2間に供給した第1直流電圧Vo1を降圧または昇圧して第2直流電圧Vo2を取り出す方式である。しかし、当業者には1次巻線851a,851b側および2次巻線852側にフルブリッジ方式、ハーフブリッジ方式、アクティブ・クランプ方式などの回路を結合させ他方式のスイッチング電源制御回路を構成させることは容易なことである。