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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-130848(P2015-130848A)
(43)【公開日】2015年7月23日
(54)【発明の名称】植栽ユニット及び植栽具
(51)【国際特許分類】
   A01G 9/02 20060101AFI20150630BHJP
   A01G 1/00 20060101ALI20150630BHJP
【FI】
   A01G9/02 B
   A01G9/02 E
   A01G9/02 103T
   A01G1/00 301C
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2014-5471(P2014-5471)
(22)【出願日】2014年1月15日
(71)【出願人】
【識別番号】309007911
【氏名又は名称】サントリーホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】橋本 昌樹
【テーマコード(参考)】
2B022
2B327
【Fターム(参考)】
2B022AB04
2B022AB08
2B022BA22
2B022BB02
2B327NC02
2B327NC05
2B327NC08
2B327NC25
2B327ND02
2B327NE12
2B327QA01
2B327UA02
2B327UA10
2B327UA14
(57)【要約】      (修正有)
【課題】複数個を組み合わせることで任意の構成形態の植栽具を低コストで実現することができる植栽ユニット及び該植栽ユニットで構成された植栽具を提供する。
【解決手段】植栽具を構成する植栽ユニット10は、その内部に植栽床材30の載置用空間と、載置用空間に載置された植栽床材30のための植栽用水を貯留可能な貯水部と、載置用空間に載置された植栽床材30を露出可能な正面開口部13とが備えられた筐体11を備え、筐体11の上部には貯水部に植栽用水を供給可能な給水部14が、筐体11の下部には貯水部の植栽用水を排水可能な排水部15が、筐体11の左右の側面部の夫々には該植栽ユニット10の貯水部と正面視で左側または右側に隣接配置される他の植栽ユニット10の貯水部とを連通可能な連通部17が、形成可能とされている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
その内部に植栽床材の載置用空間と、前記載置用空間に載置された前記植栽床材のための植栽用水を貯留可能な貯水部と、前記載置用空間に載置された前記植栽床材を露出可能な開口部とが備えられた筐体を備えた植栽ユニットであって、
前記筐体の上部には前記貯水部に前記植栽用水を供給可能な給水部が、前記筐体の下部には前記貯水部の前記植栽用水を排水可能な排水部が、前記筐体の左右の側面部の夫々には該植栽ユニットの貯水部と正面視で左側または右側に隣接配置される他の植栽ユニットの貯水部とを連通可能な連通部が、形成可能とされている植栽ユニット。
【請求項2】
前記連通部は、夫々基端側が前記筐体の側面部に接続され、他端側に管継手が備えられ、その軸心が水平方向、且つ同じ高さに配置された一対の配管で構成され、
前記管継手は、左側または右側に隣接配置される他の植栽ユニットの連通部が備える管継手と接続可能に構成されている請求項1に記載の植栽ユニット。
【請求項3】
前記一対の配管のうち少なくとも一方の配管には水誘導部が形成されていることを特徴とする請求項2に記載の植栽ユニット。
【請求項4】
前記水誘導部は、前記配管の外周のうち下部に前記他端側から前記基端側にかけて前記軸心に沿って立設されたリブを備え、前記リブはその下端部が前記他端側から前記基端側へ下方に傾斜した傾斜部を有するように構成されている請求項3に記載の植栽ユニット。
【請求項5】
前記筐体は、天面部に天面開口部を有し、前記天面開口部が前記給水部を構成する請求項1から4のいずれか一項に記載の植栽ユニット。
【請求項6】
前記天面開口部は、上側に隣接配置された他の植栽ユニットの下端部を収容可能、且つ載置可能に構成されている請求項5に記載の植栽ユニット。
【請求項7】
前記天面開口部は、前記給水部へ給水可能な給水口が備えられている蓋体で覆蓋可能に構成されている請求項5または6に記載の植栽ユニット。
【請求項8】
前記排水部は、所定の排水水位を超えた植栽用水を溢流させて排水可能なオーバーフロー管で構成され、前記所定の排水水位は前記連通部の最大高さ近傍に設定されている請求項1から7のいずれか一項に記載の植栽ユニット。
【請求項9】
前記筐体は、少なくとも前記排水部及び前記連通部が一体的に、且つ前記排水部及び前記連通部は前記植栽用水の通水が不可能な閉塞状態で成形される請求項1から8のいずれか一項に記載の植栽ユニット。
【請求項10】
前記筐体は、前記開口部の下方に、前記貯水部に貯留された前記植栽用水の水位を目視可能な水位窓を備えている請求項1から9のいずれか一項に記載の植栽ユニット。
【請求項11】
前記筐体は、該植栽ユニットと、正面視で少なくとも左側または右側に隣接配置された他の植栽ユニットの筐体とを、互いに連結する連結部を備えている請求項1から10のいずれか一項に記載の植栽ユニット。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか一項に記載の植栽ユニットを、正面視で左右方向に複数列隣接配置、且つ上下方向に一段または複数段隣接配置した植栽具であって、
各段に位置する植栽ユニット群のうち所定の植栽ユニットの給水部から植栽用水を該植栽ユニットの貯水部に給水し、
前記各段に位置する各植栽ユニットは、夫々隣接配置された他の植栽ユニットとの間で互いに連通された前記連通部を介して植栽用水を共有し、
前記各段に位置する植栽ユニット群のうち所定の植栽ユニットの貯水部から排水部を介して植栽用水を排水することを特徴とする植栽具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して鉛直に配置された壁面を緑化する植物のための植栽ユニット及び該植栽ユニットによって構成される植栽具に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の植栽具に関連する先行技術文献情報として下記に示す特許文献1がある。この特許文献1では、正面視で四角形の表板と、同形の裏板との間に保水性の基盤を挟み込んでボルトとナット等で固定し、表板の複数箇所には斜め上向きに開口した植栽用の棚部を設けた植栽容器とし、これをワイヤー等によって壁面に取り付けることで、壁面緑化用の植栽具として使用可能とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−239878号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に記載された植栽具は、表板と裏板の間に保水基盤を挟み込んでボルトとナット等で固定した大掛かりな形態を有し、ユーザの要望や設置場所に応じてそのサイズを個別に設計する必要があるため製造コストの低減が困難であり、さらに、製造後に植栽具の構成形態を変更することが困難であった。
【0005】
また、該植栽具は保水基盤の上端部の上に長手方向に沿って配設されたホースに水を流すことによって、ホースに長手方向に間隔をあけて複数設けられた孔から、ホースに流れる水を水滴として落として植物に水を供給し、保水基盤の下端から排水された余剰水をポンプで汲み上げて循環させるような構成となっている。そのため、植栽具の特に横方向のサイズが長くなると、その分長いホースが必要となり、その結果配管抵抗が増すためより高揚程のポンプが必要となる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであって、複数個を組み合わせることで任意の構成形態の植栽具を低コストで実現することができる植栽ユニット及び該植栽ユニットで構成された植栽具を提供することを目的とする。
本発明による植栽ユニットの第一特徴構成は、その内部に植栽床材の載置用空間と、前記載置用空間に載置された前記植栽床材のための植栽用水を貯留可能な貯水部と、前記載置用空間に載置された前記植栽床材を露出可能な開口部とが備えられた筐体を備えた植栽ユニットであって、前記筐体の上部には前記貯水部に前記植栽用水を供給可能な給水部が、前記筐体の下部には前記貯水部の前記植栽用水を排水可能な排水部が、前記筐体の左右の側面部の夫々には該植栽ユニットの貯水部と正面視で左側または右側に隣接配置される他の植栽ユニットの貯水部とを連通可能な連通部が、形成可能とされている点にある。
【0007】
貯水部に植栽用水を供給するための給水部が必要な場合には給水部を形成し、貯水部の植栽用水を排水するための排水部が必要な場合には排水部を形成し、該植栽ユニットの貯水部と正面視で左側または右側に隣接配置される他の植栽ユニットの貯水部とを連通するための連通部が必要な場合には連通部を形成することができる。給水部と、排水部と、連通部の夫々の有無が植栽ユニットごとに後から任意に設定可能であるので、製造段階では同じ構成の植栽ユニットを大量生産することで製造コストを低減できる。
そしてこのような植栽ユニットを複数個用いて、上下左右の任意の方向に隣接配置して大きな植栽具を構成した際には、上下方向に隣接配置された上側の植栽ユニットの貯水部の植栽用水は、該上側の植栽ユニットに形成された排水部から下方へ排水され、下側の植栽ユニットに形成された給水部へ供給され、同様に左右方向に隣接配置された一方の植栽ユニットの貯水部の植栽用水は、互いに連通するように形成された連通部を介して他方の植栽ユニットの貯水部へ供給されるので、前記植栽具を構成する植栽ユニットごとへの個別の給水配管及び排水配管の設置が不要であり、結果として任意の構成形態の植栽具を低コストで実現することが可能となる。
【0008】
同第二特徴構成は、前記連通部は、夫々基端側が前記筐体の側面部に接続され、他端側に管継手が備えられ、その軸心が水平方向、且つ同じ高さに配置された一対の配管で構成され、前記管継手は、左側または右側に隣接配置される他の植栽ユニットの連通部が備える管継手と接続可能に構成されている点にある。
【0009】
連通部は基端部が筐体の側面部に接続され、他端側に管継手を備えている配管で構成されているので、他の植栽ユニットの連通部と簡単に、且つ確実に接続させることができる。管継手としては、差込継手、ねじ込み継手、フランジ継手等の継手が好ましく例示できる。
【0010】
同第三特徴構成は、前記一対の配管のうち少なくとも一方の配管には水誘導部が形成されている点にある。
【0011】
左右方向に隣接配置される植栽ユニットは、連通部を介して連通される。仮に連通部の破損等によって該破損箇所から植栽用水が筐体の外部に漏れ出すようなことがあったとしても、少なくとも一方の植栽ユニットの配管に形成された水誘導部によって、漏れ出した植栽用水を配管の他端側から基端側方向へと誘導することが可能となる。
【0012】
同第四特徴構成は、前記水誘導部は、前記配管の外周のうち下部に前記他端側から前記基端側にかけて前記軸心に沿って立設されたリブを備え、前記リブはその下端部が前記他端側から前記基端側へ下方に傾斜した傾斜部を有するように構成されている点にある。
【0013】
リブの下端部が該配管の他端側から基端側へと下方に傾斜した傾斜部を有しているため、仮に連通部の破損等によって該破損箇所から植栽用水が外部に漏れ出すようなことがあったとしても、漏れ出した植栽用水は前記傾斜部によって円滑に誘導され前記リブを伝って基端側へと案内される。また、該リブは、配管の補強の役割も果たす。
【0014】
同第五特徴構成は、前記筐体は、天面部に天面開口部を有し、前記天面開口部が前記給水部を構成する点にある。
【0015】
植栽ユニットを上下方向に複数段隣接配置した際には、上側の植栽ユニットの排水部からの排水を下側の植栽ユニットの天面開口部で受け入れることができる。該排水を受け入れる天面開口部が給水部を構成する。
【0016】
同第六特徴構成は、前記天面開口部は、上側に隣接配置された他の植栽ユニットの下端部を収容可能、且つ載置可能に構成されている点にある。
【0017】
植栽ユニットを上下方向に複数段隣接配置した際には、上側の植栽ユニットの下端部を、下側の植栽ユニットの天面開口部内に確実に載置することができる。
【0018】
同第七特徴構成は、前記天面開口部は、前記給水部へ給水可能な給水口が備えられている蓋体で覆蓋可能に構成されている点にある。
【0019】
蓋体によって植栽ユニットの筐体の天面開口部を覆蓋することで、天面開口部から筐体内部への塵埃の混入を阻止したり天面開口部から筐体外部への植栽用水の蒸散を低減したりすることができる。蓋体の給水口は給水部へ給水が可能となっているので、天面開口部を蓋体で覆蓋したとしても、必要に応じて該植栽ユニットの貯水部へ植栽用水を供給することができる。
【0020】
同第八特徴構成は、前記排水部は、所定の排水水位を超えた植栽用水を溢流させて排水可能なオーバーフロー管で構成され、前記所定の排水水位は前記連通部の最大高さ近傍に設定されている点にある。
【0021】
所定の排水水位としてオーバーフロー管による排水水位を低く設定しすぎると、貯水部に貯留される植栽用水の貯留量が少なくなるため、植栽床材の植物の生育に十分な量の植栽用水を確保することができない虞がある。逆に、オーバーフロー管による前記排水水位を高く設定しすぎると、植栽床材の植物に根腐れの虞が生じる。
オーバーフロー管による植栽用水の排水水位を連通部の最大高さ近傍に設定することで、左右方向に隣接配置された植栽ユニット間で連通部の開口を有効に利用した植栽用水の円滑な通水をしつつ、貯水部に適量の植栽用水を貯留することができ、上述のような植栽用水の供給不足や供給過剰による植物への悪影響を回避することができる。
【0022】
同第九特徴構成は、前記筐体は、少なくとも前記排水部及び前記連通部が一体的に、且つ前記排水部及び前記連通部は前記植栽用水の通水が不可能な閉塞状態で成形される点にある。
【0023】
植栽ユニットは、製造段階では同じ構成の植栽ユニットを大量生産することで製造コストを低減できる。複数個を組み合わせて植栽具を構成する際には、植栽具における配置箇所に応じて、排水部や連通部は後加工によって通水可能となるので、構成態様や設置場所に関して自由度の高い植栽具を実現することができる。
【0024】
同第十特徴構成は、前記筐体は、前記開口部の下方に、前記貯水部に貯留された前記植栽用水の水位を目視可能な水位窓を備えている点にある。
【0025】
植栽ユニットの外部からでも植栽用水の貯留量を視認することができる。
【0026】
同第十一特徴構成は、前記筐体は、該植栽ユニットと、正面視で少なくとも左側または右側に隣接配置された他の植栽ユニットの筐体とを、互いに連結する連結部を備えている点にある。
【0027】
複数個の植栽ユニットを隣接配置する際には、少なくとも正面視で左右方向に隣接する植栽ユニットどうしを連結部によって連結することができる。連結することによって不意に連通部の管継手の接続が解除されるような虞がなく、連結された植栽ユニット群を一体的に扱うことができる。
【0028】
本発明による植栽具の特徴構成は、上述した第一から第十一特徴構成のいずれかの特徴構成を備えた植栽ユニットを、正面視で左右方向に複数列隣接配置、且つ上下方向に一段または複数段隣接配置した植栽具であって、各段に位置する植栽ユニット群のうち所定の植栽ユニットの給水部から植栽用水を該植栽ユニットの貯水部に給水し、前記各段に位置する各植栽ユニットは、夫々隣接配置された他の植栽ユニットとの間で互いに連通された前記連通部を介して植栽用水を共有し、前記各段に位置する植栽ユニット群のうち所定の植栽ユニットの貯水部から排水部を介して植栽用水を排水する点にある。
【0029】
複数個の植栽ユニットを上下左右方向に隣接配置する構成であるので任意の構成形態の植栽具を、従来のような個別に設計される植栽具に比べてはるかに安価に提供することができる。また、後からの構成態様の変更も該植栽ユニット単位で可能となる。
【0030】
植栽ユニットごとに上下左右方向の植栽用水の外部からまたは外部へ通水の可否を設定可能であるので、複数個を組み合わせて大きな植栽具を構成する際には、植栽具全体としてみれば、単一の給水部と単一の排水部を備える構成とすることができる。植栽ユニット自体が下流側の植栽ユニットへの植栽用水の供給手段となるため、植栽用水を各植栽ユニットへ供給するための別途ホースや配管等の配設が不要であり、植栽具の少なくとも左右方向のサイズの変更による配管抵抗の増大に起因するポンプの変更が不要である。
【発明の効果】
【0031】
以上説明した通り、本発明によれば、複数個を組み合わせることで任意の構成形態の植栽具を低コストで実現することができる植栽ユニット及び該植栽ユニットで構成された植栽具を提供することができるようになった。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】本発明による植栽ユニットの説明図であって(a)は正面を含む斜視図、(b)は背面を含む斜視図
図2】植栽ユニットの概略図
図3】植栽ユニットが備える筐体の正面図
図4】植栽ユニットが備える筐体の背面図
図5】植栽ユニットが備える筐体の右側面図
図6】植栽ユニットが備える蓋体の説明図であって、(a)は平面図、(b)は平面図のVIb−VIb線断面図
図7】植栽ユニットが備える筐体の説明図であって、(a)は断面図、(b)は断面図のVIIb−VIIb線における位置の端面図
図8】本発明による植栽具の概略図
図9】本発明による植栽具の説明図
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下に本発明を実施するための形態について図面を参照しながら説明する。
図1は、植栽ユニット10の内部に植栽床材30が収容され、この植栽床材30に植物32が植栽されている状態を示している。植栽ユニット10は、その正面視で上下左右方向に複数個(例えば、図8及び図9に示すように左右方向に3列、上下方向に2段の合計6個)を組み合わせることで植栽具100を構成する。該植栽具100は、建物の内壁または外壁の一部または全部に取り付けられ壁面を緑化するために用いられる。
【0034】
図2図5に示すように、筐体11は正面視で正面部及び背面部が略正方形に構成され、その高さと幅に対して奥行き、つまり底面部及び側面部の各幅が、正面部と背面部の1辺の数分の一(例えば1/5〜1/3の範囲)となるように設定された有底箱状の筐体11を備えている。
【0035】
筐体11の内部空間は、植栽床材30を載置可能な植栽用空間Sとして機能する。筐体11の正面部には載置用空間Sに載置された植栽床材32を前記正面部に露出可能な開口部の一例としての正面開口部13が設けられている(図2図3参照)。筐体11の正面開口部13の下縁部よりも下方の内部空間は、載置用空間Sに載置された植栽床材32のために給水部14等から供給された植栽用水Wを貯留可能な貯水部Tとしても機能する(図7参照)。
【0036】
筐体11の天面部には天面開口部12が備えられ、天面開口部12は蓋体28によって覆蓋可能に構成されている(図2参照)。筐体11の底面部にはオーバーフロー管16が設けられ(図2図5参照)、筐体11の左右の側面部の夫々には配管18R,18Lが備えられ(図1図5参照)、筐体11の側面部や背面部には上下左右方向に隣接配置された植栽ユニットどうしを連結する連結部23R、23L及び24T,24B等(図1図5参照)が備えられている。
【0037】
筐体11はABS樹脂を射出成形することによって正面開口部13、天面開口部12、オーバーフロー管16、配管18R,18L、連結部23R,23L及び24T,24B等が一体的に成形される。なお、筐体11はABS樹脂、塩ビ、PET、アクリルのような熱可塑性樹脂を射出成形する構成に限らず、アルミ、ステンレスのような金属材料を加工や溶接等することで成形することも可能である。
【0038】
配管18R,18Lは夫々基端側が筐体11の正面視で左右の側面部に接続され、他端側に管継手が備えられ、且つその軸心が水平方向であって同じ高さとなるように配置されている。本実施形態では、図7(a)に示すように、配管18R,18Lは配管18Lがオス型で配管18Rがメス型の差込継手で構成される。なお、管継手は配管18Lがメス型で配管18Rがオス型の差込継手で構成されてもよい。さらに、管継手は差込継手によるものに限らず、両配管18R及び18Lの夫々にフランジを備えたフランジ継手等公知の管継手が採用可能である。
【0039】
図9に示すように、植栽ユニット10を正面視で左右方向に隣接配置した場合は左側の植栽ユニット10の配管18Rに右側の植栽ユニットの配管18Lが差し込まれ、両配管18R,18Lが互いの貯水部Tを連通する連通部17を構成する。
【0040】
図7(a)及び図7(b)に示すように、配管18Rの外周のうち下部に前記他端側から前記基端側にかけて軸心に沿って2枚のリブ19が所定の間隔をもって平行に立設されている。各リブ19はその下端部が前記他端側から前記基端側にかけて下方に傾斜するように構成されている。即ち、本実施形態では、リブ19の下端部の全体が前記他端側から前記基端側へ下方に傾斜した傾斜部を構成する。なお、前記傾斜部は、リブ19の下端部の全体に形成される構成に限らず、前記他端側から前記基端側へ所定の距離だけに形成される構成や、途中で傾斜の角度が異なるように構成してもよい。配管18Lは各リブ19によって補強がされる。
【0041】
各リブ19の下端部は連通部17を構成する配管18Rの前記他端側から前記基端側にかけて下方に傾斜しているので、仮に連通部17の破損等によって該破損箇所から植栽用水Wが筐体11の外部に漏れ出すようなことがあったとしても、漏れ出した植栽用水Wは各リブ19を伝って前記左側の植栽ユニット10側へと案内される。即ち、本実施形態では、リブ19が、連通部17の外部に漏れ出した植栽用水を、前記他端側から前記基端側方向へと誘導する水誘導部を構成する。
【0042】
少なくとも該左側の植栽ユニット10の下側にさらに別の植栽ユニット10を隣接配置してれば、リブ19を伝って案内されてきた植栽用水Wは該下側の別の植栽ユニット10へ排水されるので、これら複数個の植栽ユニット10によって構成される植栽具100全体としてみれば植栽用水Wの外部への漏洩は防止される。例えば、図9に示す植栽ユニット10(10a)と植栽ユニット10(10b)の連結部17に破損等によって該破損箇所から植栽用水Wが漏れ出すようなことがあっても、該植栽用水Wは植栽ユニット10(10a)の配管18Rに備えられたリブ19を伝って最終的に植栽ユニット10(10d)へと案内される。
【0043】
なお、前記漏れ出した植栽用水Wの前記基端側への誘導機能を向上させるために、少なくとも配管18Lの前記他端側の端面やリブ19は素材表面に他の表面張力を低下させる物質をコーティングしたり、アルコールや界面活性剤等の表面張力の低くさせる物質を塗布したり、その成分の一部を溶解することにより表面の凹凸を作ったりして親水性を向上させておくことが好ましい。さらに、水誘導部として、配管18Lの前記他端側の端面であって2枚のリブ19の間に前記他端側から前記基端側にかけて所定の長さのスリットを形成したりしてもよい。前記漏れ出した植栽用水Wは配管18Lに形成されたスリットやリブ19の傾斜部を伝ってリブ19の前記基端側へと円滑に誘導される。
【0044】
図7(a)に示すように、オーバーフロー管16は上端が筐体11内部へ突出し、下端が筐体11外部へ突出した配管状に構成されている。オーバーフロー管16の内径は植栽用水Wに含まれる粒子状や繊維状の夾雑物によって閉塞され難い適切な大きさを有するように設定されている。
【0045】
オーバーフロー管16の上端の筐体11内部への突出高さは、連通部17を構成する配管18Lの内径の最大高さ近傍に設定されている。前記突出高さが貯水部Tの植栽用水Wの貯留高さである所定の排水水位WLとなり、該所定の排水水位WLを超えた植栽用水Wがオーバーフロー管16から溢流されて下方に排水されるので貯水部Tの植栽用水Wの貯留量が一定量以下に維持される。つまり、植栽床材30の吸水能力を超える量の植栽用水Wが供給された場合や、給水手段による植栽用水Wの供給速度が植栽床材30の吸水速度を超える場合は、余剰の植栽用水Wがオーバーフロー管16から排水される。
【0046】
植栽ユニット10を上下方向に隣接配置した際に、上側の植栽ユニット10のオーバーフロー管16の下端が下側の植栽ユニット10の天面開口部12内に開放され、上側の植栽ユニット10から排水された植栽用水Wは下側の植栽ユニット10の植栽用空間Sに載置された植栽床材30や貯水部Tに供給される。つまり、複数個の植栽ユニットを少なくとも上下方向に隣接配置する場合は、オーバーフロー管16から排水された植栽用水Wを下側の植栽ユニット10に植栽用水Wとして供給することができる。
【0047】
従って、少なくとも上下方向に隣接配置された植栽ユニット群のうち最上方に位置する植栽ユニット10に植栽用水Wを供給するだけで、各段の植栽ユニット10で所定の排水水位WLを上回る分の余剰の植栽用水Wが下側の植栽ユニットに排水され、最終的に上下方向の全ての植栽ユニット10の植栽床材30に適量の植栽用水Wが供給される。また、最下方の植栽ユニット10のオーバーフロー管16から排水された植栽用水Wは貯水タンクに回収され、必要に応じて植栽用水Wとして最上方の植栽ユニット10に循環利用される。
【0048】
所定の排水水位WLとしてのオーバーフロー管16による排水水位を低く設定しすぎると貯水部Tに貯留される植栽用水Wの貯留量が少なくなるため、植栽床材30に植栽した植物32の生育に十分な量の植栽用水Wを確保することができない虞がある。逆にオーバーフロー管16による排水水位を高く設定しすぎると植栽床材30に植栽した植物32に根腐れの虞が生じる。そこで、オーバーフロー管16による植栽用水Wの排水水位を連通部17の最大高さ近傍に設定することで、左右方向に隣接配置された植栽ユニット10間で連通部17を有効に利用した植栽用水Wの円滑な通水をしつつ、貯水部Tに適量の植栽用水Wを貯留することができる。従って、上述のような植栽用水Wの供給不足や余剰確保による植物への悪影響が回避される。
【0049】
図7(a)に示すように、筐体11を射出成形するにあたりオーバーフロー管16及び配管18R,18Lは夫々隔壁16a,18aによって閉塞状態で成形される。つまり該成形後そのままではオーバーフロー管16は排水部15として機能せず、配管18R,18Lは連通部17として機能しない。しかし、オーバーフロー管16の隔壁16aを後加工で取り除くことで、オーバーフロー管16を該植栽ユニット10の貯水部Tの植栽用水Wを排水する排水部15として機能させることができる。同様に、配管18R,18Lの隔壁18aを後加工で取り除くことで、配管18R,18Lを該植栽ユニット10の貯水部Tと左右方向に隣接配置される他の植栽ユニット10の貯水部Tとを連通する連通部17として機能させることができる。
【0050】
つまり、製造段階では同じ構成の植栽ユニット10を大量生産することで製造コストを低減できる。複数個を組み合わせて植栽具100を構成する際には、植栽具100における配置箇所に応じて、排水部15や連通部17は後加工によって通水可能となるので、構成態様や設置場所に関して自由度の高い植栽具を実現することができる。
【0051】
なお、隔壁16a,18aの成形位置は図示のものに限らない。隔壁16aはオーバーフロー管16の上端を閉塞するような位置に備えられてもよいし、オーバーフロー管16の下端を閉塞するような位置に備えられてもよい。同様に、隔壁18aは配管18R,18Lの夫々筐体11の外方端に形成されてもよいし、配管18R,18Lの夫々筐体11の内方端に形成されてもよい。また、筐体11を射出成形するにあたりオーバーフロー管16及び配管18R,18Lを予め通水可能なように開口しておき、必要に応じて後加工によってオーバーフロー管16や配管18R,18Lを閉塞する構成であってもよい。ただし、筐体11の成形時には隔壁16a,18aを備えておき後加工によって隔壁16a,18aを取り除くことで初めてオーバーフロー管16及び配管18R,18Lを通水可能な構成のほうが、筐体11の成型時にはオーバーフロー管16及び配管18R,18Lを通水可能に成形しておき後加工によって閉塞する構成より、後加工によって閉塞し損ねる等の不具合によって植栽用水Wが漏れる虞が生じない点で好ましい。
【0052】
筐体11は、正面開口部13の右下方向に貯水部Tに貯留された植栽用水Wの水位を目視可能な水位窓20を備えている。水位窓20にはオーバーフロー管16の上端の高さと対応する位置等に所定の排水水位の基準等を示す水平な直線状の指標が備えられている。
【0053】
前記指標と実際に貯水部Tに貯留されている植栽用水Wの水位に基づいて、植栽ユニット10の外部からでも容易に植栽用水Wの貯留量を視認することができる。
【0054】
図2に示すように、複数個の植栽ユニット10どうしを上下方向に隣接配置する際の利便性のために、天面開口部12の内周部には上側の植栽ユニット10の底部を収容可能、且つ載置可能な段部11Tが設けられ、筐体11の底部の外周部は段部11Tと当接可能なように、外面から内側に向けて少し引退した段部11Bが設けられている。
【0055】
植栽ユニット10を上下方向に隣接配置した際には、上側の植栽ユニット10の底部の段部11Bが下側の植栽ユニット10の天面開口部12内の段部11Tに当接し、上側の植栽ユニット10の底部の段部11Bが下側の植栽ユニット10の天面開口部12内に確実に収容、且つ載置される。
【0056】
植栽ユニット10を上下方向に複数段隣接配置した際には、上側の植栽ユニット10の排水部15からの排水を下側の植栽ユニット10の天面開口部12で受け入れることができる。この場合、筐体11の天面開口部12が該植栽ユニット10の給水部14を構成する。
【0057】
筐体11の左右の側面部には、その中央部には左右方向に隣接された植栽ユニット10どうしを連結する連結部23R,23Lが備えられるとともに、その上部に左右方向に隣接された植栽ユニットどうしで互いに係止する係止部21R,21Lが備えられている。筐体11の背面部の上部と下部には上下方向に隣接配置された植栽ユニット10どうしを連結する連結部24T,24Bが備えられている。
【0058】
隣接配置された植栽ユニット10どうしで互いに対応する連結部23R,23Lや、連結部24T,24Bどうしを当接させた状態で夫々ボルト及びナット等で固定することで、隣接配置された植栽ユニット10どうしが連結される。
【0059】
複数個の植栽ユニット10を隣接配置する際に、少なくとも正面視で左右方向に隣接する植栽ユニット10どうしが連結部23R,23Lによって連結されるため、不意に連通部17を構成する配管18R,18Lの管継手の接続が解除されるような虞なく、連結された植栽ユニット群を一体的に扱うことができる。なお、配管18R,18Lやオーバーフロー管16が閉塞状態であっても、隣接配置した植栽ユニット10どうしの連結は可能である。この場合、植栽用水Wの通水は行われない。
【0060】
筐体11の背面部の高さ方向の中央よりやや上方には、水平方向に三つの固定部25が備えられており、壁面から立設させた釘状の取り付け手段の頭部等を固定部25に係止させることで、植栽ユニット10を壁面に吊り下げることが可能である。さらに、筐体11の背面の上方であって左右中央には吊り下げ用の係止孔26が備えられており、係合部26に通した紐やフックによって、或いは、壁面から立設させた釘状の取り付け手段の頭部等を係合部26に係止させることで、植栽ユニット10を壁面に吊り下げることが可能である。植栽ユニット10を壁面に取り付ける方法は、これに限らない。壁面に打設されたアンカーボルトに固定するような方法であってもよいし、ピクチャーレール等にワイヤーで吊り下げてもよい。
【0061】
さらに、筐体11の左右の側面部であって、係止部21R、21Lと連結部23R,23Lの高さ方向の間の位置には、植栽ユニット10を枠体101(図8参照)に固定する固定部22R、22Lが備えられており、植栽ユニット10が固定された枠体101を壁面に設置することができる。
【0062】
図2に示すように、蓋体28はその外形が天面開口部12の開口形状及びその内部に設けられた段部11Tに対応する形状に構成されている。蓋体28を天面開口部12に覆蓋する際には、蓋体28の底面が植栽ユニット10の天面開口部12内の段部11Tに当接して蓋体28は天面開口部12内に確実に収容、且つ載置される。このように蓋体28によって天面開口部12を覆蓋することで天面開口部から筐体11内部への塵埃の混入を阻止したり天面開口部12から筐体11外部への植栽用水Wの蒸散を低減したりすることができる。
【0063】
図6(a)及び図6(b)に示すように、蓋体28には、左右方向中央やや右方に給水口29が上方に突出して備えられている。蓋体28は、ABS樹脂を射出成形することによって給水口29が一体的に成形される。蓋体28の射出成形時には、給水口29は隔壁29aによって閉塞状態で形成され、必要に応じて給水口29の隔壁29aを後加工で取り除くことで、給水口29を介して該植栽ユニット10の天面開口部12内に植栽用水Wが給水することができる。蓋体28の製造段階では給水口29を隔壁29aで閉塞した状態にしておき、使用時に必要に応じて給水口29の隔壁29aを後加工で取り除く構成とすることで、同じ構成の蓋体28を大量生産することができ製造コストを低減できる。なお、隔壁29aの成形位置は図示のものに限らない。隔壁29aは、給水口29の下端を閉塞するような位置に備えられてもよいし、蓋体28を射出成形するにあたり給水口29を予め通水可能なように開口しておき、必要に応じて後加工によって給水口29を閉塞する構成であってもよい。なお、蓋体28はABS樹脂、塩ビ、PET、アクリルのような熱可塑性樹脂を射出成形する構成に限らず、アルミ、ステンレスのような金属材料を加工や溶接等することで成形することも可能である。
【0064】
植栽床材30は上部から下部まで略均一に水分と空気をバランスよく保持でき、且つ根の育成に必要な空気が保たれやすい吸水性材料で構成されている。
吸水性材料は保水性充填材、水、及び、ウレタンプレポリマーと、ポリオールを少なくとも反応させてなる保水性充填材割合が20〜60重量%のものが好ましく例示できる。本実施形態では、植栽床材30には正面視で4箇所に貫通孔31が備えられ、植物32を予め植栽した截頭錐体状のブロック体を該貫通孔31に嵌入する構成となっている。なお植栽床材30に植物32を直接植栽する構成であってもよい。
【0065】
植栽床材30はいくらか縦長の矩形の平板状を呈し、そのサイズが筐体11の内部の載置用空間Sと略等しいか僅かに小さくなるように設定されており、正面開口部13から筐体11の内部の植栽用空間Sに収容される。
【0066】
筐体11の正面開口部13は、正面部の上下方向の中心よりも上方に変位した位置に設けられている。
また、概して平板状の植栽床材30に対して前後方向に貫通形成された、植物32が植栽されたブロック体を植栽するための4つの貫通孔31も、同様に全体として上下方向の中心よりも上方に変位した位置に配置されている。
その結果、図1に示すように、筐体11に収納された植栽床材30に配置されている4つの貫通孔31及びこれに嵌入される植物32が植栽されたブロック体は、このように上方に変位した正面開口部13の内側に概して均等に配分される。
【0067】
植栽床材30は、その側面部が正面部から背面部にかけてテーパ状に形成されている。また、天面開口部13の下縁よりも下方に配置される植栽床材30の下方の部位には貫通孔31が設けられておらず、この部位の左右の側面部は正面視において角部が切り欠かれた形状をし、この部位の背面部は側面視において前方に向かって次第に幅が狭くなるテーパ状に形成されている。このような形状であることで、正面開口部13の下縁よりも下方に形成される貯水部Tの体積をより大きく確保する働きをするとともに、貯留される植栽用水Wの円滑な通水を可能としている。
【0068】
筐体11に供給された植栽用水Wは、オーバーフロー管16の上端を越えないレベルで貯水部Tに溜まり、その溜まった植栽用水Wに一部が浸漬されている植栽床材30が植栽用水Wを吸い上げ適当量の植栽用水Wを内部に保持するため、植栽床材30に植栽された植物32が適切に育成され得る。
【0069】
次に本発明による植栽具について説明する。
図8及び図9に示すように、植栽具100は、上述のように構成された植栽ユニット10を正面視で左右方向に3列隣接配置、且つ上下方向に一段または2段隣接配置して構成される。さらに、植栽具100の周囲には枠体101が固定されている。
【0070】
植栽具100を構成する複数の植栽ユニット10どうしの連結について説明する。
例えば、二つの植栽ユニット10を正面視で左右方向に隣接配置する際には、左側の植栽ユニット10の配管18Rと右側の植栽ユニットの配管18Lの軸心が一致する位置であって、左側の植栽ユニット10の係止部21Rが右側の植栽ユニット10の係止部21Lより手前となるような位置から、配管18Rに配管18Lを差し込んでいく。配管18Rと配管18Lの差し込みが完了したら、または差し込み完了するのに合わせて、左側の植栽ユニット10を右側の植栽ユニット10に対して配管18R,18Lの軸心に周りに相対的に回転させ、係止部21Rと係止部21Lとを係止させる。係止部21Rと係止部21Lの係止が完了すると同時に、左側の植栽ユニット10の連結部23Rと右側の植栽ユニット10の連結部23Lが当接するので、連結部23Rと、連結部23Lとを螺着し、左右方向に隣接配置された植栽ユニット10の連結が完了する。三つ以上の複数の植栽ユニット10を左右方向に隣接配置する場合は、このような連結作業を繰り返すこととなる。複数の植栽ユニット10の連結を解除するときは、上記作業と反対の作業を行う。なお、互いに連結される植栽ユニット10の配管18R,18Lは夫々隔壁18aを取り除くと植栽用水Wを通水できる連通部17を構成する。
【0071】
また、二つの植栽ユニット10を上下方向に隣接配置する際には、上側の植栽ユニット10の底部の段部11Bを下側の植栽ユニット10の天面開口部12内の段部11Tに当接するように載置する。上側の植栽ユニット10の連結部24Bと下側の植栽ユニット10の連結部24Tを螺着すると、上下方向に隣接配置された植栽ユニット10の連結が完了する。三つ以上の複数の植栽ユニット10を上下方向に隣接配置する場合はこのような連結作業を上下方向に繰り返すこととなる。複数の植栽ユニット10の連結を解除するときは、上記作業と反対の作業を行う。なお、互いに連結される植栽ユニット10のうち上側の植栽ユニット10のオーバーフロー管16は隔壁16aを取り除くと植栽用水Wを排水できる排水部15を構成する。
【0072】
従って、図8に示すような植栽具100を構成するには、まず、左右方向に3個の植栽ユニット10a,10b,10cを連結し、同じく植栽ユニット10d,10e,10fを連結し、それらを上下方向に隣接配置して植栽ユニット10aと植栽ユニット10dとを、植栽ユニット10bと植栽ユニット10eとを、植栽ユニット10cと植栽ユニット10fとを夫々連結する。
【0073】
夫々所定の隔壁18aを取り除くことで、植栽ユニット10aの配管18Rと植栽ユニット10bの配管18Lとがお互いの貯水部Tを連通する連通部17として機能し、植栽ユニット10bの配管18Rと植栽ユニット10cの配管18Lとがお互いの貯水部Tを連通する連通部17として機能し、植栽ユニット10dの配管18Rと植栽ユニット10eの配管18Lとがお互いの貯水部Tを連通する連通部17として機能し、植栽ユニット10eの配管18Rと植栽ユニット10fの配管18Lとがお互いの貯水部Tを連通する連通部17として機能する。また、夫々所定の隔壁16aを取り除くことで、植栽ユニット10aのオーバーフロー管16が該植栽ユニット10aの貯水部Tの余剰の植栽用水Wを下側の植栽ユニット10dへと排水する排水部15として機能し、植栽ユニット10fのオーバーフロー管16が植栽具100から余剰の植栽用水Wを外部に排水する排水部15として機能する。
【0074】
植栽用水Wを、枠体101に配設された給水配管102を介して、植栽ユニット10cの給水口29に供給すると、給水部14を介して該植栽ユニット10cの貯水部Tに貯留され、該植栽用水Wは植栽ユニット10cから植栽ユニット10b、そして植栽ユニット10aへと夫々の連通部17を介して供給され、植栽ユニット10aの排水部15を介して植栽ユニット10dへ供給される。植栽ユニット10dの貯水部Tに供給された植栽用水Wは、植栽ユニット10e、植栽ユニット10fへと夫々の連通部17を介して供給され、最終的に植栽ユニット10fの排水部15を介して植栽ユニット10fの外部へと排水されることとなる。
【0075】
植栽ユニット10fの排水部15から排水された余剰の植栽用水Wは、該排水部15に連接された貯水タンク(図示せず)に回収し、その後ポンプによって再度植栽ユニット10cの給水口29へと循環供給することができる。
【0076】
本発明による植栽ユニット10によれば、複数個隣接配置することで任意の構成形態の植栽具100を、従来のような個別に設計される植栽具に比べて、はるかに安価に提供することができる。また、植栽具100の後からの構成態様の変更も、該植栽ユニット10単位で可能となる。
【0077】
さらに、植栽ユニット10ごとに上下左右いずれの方向にも植栽用水Wを外部から供給、または外部へ排水できるように後から任意に設定可能であるため、複数個を組み合わせて大きな植栽具100を構成する際には、植栽具100全体としてみれば、単一の給水部14と単一の排水部15を備える構成とすることができる。植栽具100を構成する植栽ユニット10自体が下流側の植栽ユニット10への植栽用水Wの供給手段となるため、植栽用水Wを各植栽ユニット10へ供給するための別途ホースや配管等の配設が不要であり、植栽具100の少なくとも左右方向のサイズの変更による配管抵抗の増大に起因するポンプの変更が不要である。
【0078】
なお、図8及び図9では、左右方向に3列、上下方向に2段の合計6個の植栽ユニット10を連結し、全体として矩形状の植栽具100を例に説明したが、植栽ユニット10の配列はこれに限らない。例えば、植栽ユニット10ごとに、さらには個別の植栽ユニット10に収容された植栽床材30の貫通孔32ごとに、異なる植物32を植栽することで、その植物の色や、種類によって、タイルないしモザイク状に全体として何らかの模様をなすように配置することで植栽ユニット10及び植栽具100の意匠性を向上させることができる。
【0079】
さらに、植栽具100は、複数個の植栽ユニット10を全体として必ずしも矩形状に配列する必要はない。各植栽ユニット10は上下左右方向に隣接配置された植栽ユニット10間であれば下左右の任意の方向に植栽用水Wを通水することができるので、植栽ユニット10をその配列を工夫して全体として何らかの形状をなすように配置することで意匠性を向上させることもできる。枠体101もそれに合わせて適宜設計すればよい。
【0080】
どのような態様に植栽具100を構成する場合であっても、最上方の植栽ユニット10、または植栽ユニット10群のうちの所定の植栽ユニット10が備える蓋体28の給水口29を介して植栽用水Wを給水し、各段の植栽ユニット10群のうちの一つ、好ましくは、上側の植栽ユニット10から植栽用水Wの供給がなされる植栽ユニット10から一番離間した植栽ユニット10から、下側の植栽ユニット10に排水するように構成することを最下方の植栽ユニット10、または植栽ユニット10群まで繰り返し、最下方の植栽ユニット10、または植栽ユニット10群のうちの所定の植栽ユニット10の排水部15から植栽用水Wを排水するように構成することが好ましい。植栽ユニット10ごとへの給水配管及び排水配管の設置が必要なく、任意の構成形態の植栽具100を低コストで実現することができる。
【0081】
上述した実施形態は、いずれも本発明の一例であり、該記載により本発明が限定されるものではなく、各部の具体的構成は本発明の作用効果が奏される範囲で適宜変更設計可能である。
【符号の説明】
【0082】
10:植栽ユニット
11:筐体
12:天面開口部
13:正面開口部
14:給水部
15:排水部
16:オーバーフロー管
16a:隔壁
17:連通部
18L、18R:配管
18a:隔壁
19:リブ
20:水位窓
21L,21R:連結部
22L,22R:係止部
23L,23R:連結部
24T,24B:連結部
25:固定部
26:係合部
28:蓋体
29:給水口
29a:隔壁
30:植栽床材
31:貫通孔
32:植物
100:植栽具
101:枠体
S:載置用空間
T:貯水部
W:植栽用水
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9