【実施例】
【0053】
1.プラスミドコンストラクション
pBR322およびpUc19は、タカラバイオ株式会社から購入した。pBR322への大腸菌由来ギ酸デヒドロゲナーゼ(FDH−O)に関連する活性サブユニット遺伝子(fdoG)および電子伝達サブユニット遺伝子(fdoH)の組み込みは以下の通り行った。
まず、大腸菌から抽出したゲノムDNAを鋳型とし、EcoRI-Fdo-F145プライマー(配列番号9)と、EcoliFdoH-St-Rプライマー(配列番号10)を用いたPCRによって、DNA断片1(配列番号1)を得た。この断片と、EcoRIとSalIで切断したpBR322を等モルで混合し、In-fusion kit(タカラバイオ株式会社)を用いて連結することで、pBR fdoGHmst(配列番号2)を得た。
【0054】
pUc19へのfdoGおよび、膜貫通ドメインを欠失したfdoHの組み込みは以下の通り行った。
まず、pBR fdoGHmstを鋳型とし、fdo145 pUcプライマー(配列番号11)と、fdoH st rvプライマー(配列番号12)を用いたPCRによって、DNA断片2(配列番号3)を得た。次に、pUC plac rvプライマー(配列番号13)とpUC st forプライマー(配列番号14)を用いて、pUc19を鋳型としたインバースPCRによって、DNA断片3(配列番号4)を得た。DNA断片2および3を混合し、In-fusion kit(タカラバイオ株式会社)を用いて連結することで、pUc fdoGHst(配列番号5)を得た。
【0055】
また、DNA断片2の増幅の際に、複製エラー頻度の高いKODFX DNAポリメラーゼ(東洋紡株式会社)を用いて、pUc fdoGHstの作製と同様の操作を行うことで、pUc fdoGHst’変異体のライブラリーを得た。
【0056】
配列番号1〜8に示す塩基配列の主な特徴について以下に示す。
[配列番号1](pBR fdoGHmst)1位〜37位:EcoRI-Fdo-F145プライマー/166位〜3216位:活性サブユニット/3229位〜4161位:電子伝達サブユニット/4114位〜4178位:EcoliFdoH-St-Rプライマー。
[配列番号2]26位〜62位:EcoRI-Fdo-F145プライマー/191位〜3241位:活性サブユニット/3254位〜4185位:電子伝達サブユニット/4139位〜4203位:EcoliFdoH-St-Rプライマー。
[配列番号3]162位〜3212位:活性サブユニット/3225位〜3974位:電子伝達サブユニット/3960位〜3974位:ストレプタグの一部。
[配列番号4]1位〜30位:ストレプタグ/34位〜2250位:pUcプラスミド。
[配列番号5](pUc fdoGHst)2252位〜5302位:活性サブユニット/5315位〜6049位:電子伝達サブユニット/6050位〜6079位:ストレプタグ。/2197位:(変異なし)c/2346位:(変異なし)t。
[配列番号6](pUc fdoGHst’)2252位〜5302位:活性サブユニット/5315位〜6049位:電子伝達サブユニットpUc/6050位〜6079位:ストレプタグ/2197位:(変異あり)c→t/2346位:(変異あり)t→c。
[配列番号7](活性サブユニット)195位:セレノシステイン。
[配列番号8](電子伝達サブユニット)。
【0057】
上記のプラスミドの作製などで用いた各プライマーの塩基配列は、次表のとおりである。
【表1】
【0058】
2.大腸菌Mo/W-FDH遺伝子破壊株
大腸菌BW25113株、および、FDH−O膜サブユニット(fdoI)破壊BW25113株は、E. coli Keio Knockout Strainsから購入した。
FDH−OおよびFDH−N遺伝子破壊BW25113株は、常法により作製し、単離した。
【0059】
3.培地の調製
LB寒天培地は、LB培地(ナカライテスク株式会社)12.5g、寒天末(ナカライテスク株式会社)7.5g、イオン交換水500mlを混合し、オートクレーブ後、シャーレに分注して、固化させるという操作によって調製した。
LB培地(液体)は、LB培地(ナカライテスク株式会社)20gとイオン交換水1000mlを混合し、オートクレーブすることで作製した。
SOC培地(液体)は、Bacto Tryptone 20g、Yeast Extract 5g、5M NaCl 2ml、2M KCl 1.25mlおよびイオン交換水990mlを混合し、オートクレーブ後、さらに2M Mg solution(1M MgSO
4・7H
2O+1M MgCl
2・6H
2O)を10mlおよび2Mグルコース溶液10mlを加えて、調製した。
【0060】
4.形質転換体の培養
FDH−OおよびFDH−N遺伝子破壊BW2511株へのpBR fdoGHstおよびpUc fdoGHst’の導入は、通常のケミカル形質転換で行った。形質転換体は、150mlの100μg/mlアンピシリン含有LB培地が入った200ml三角フラスコに植菌し、37℃、振盪速度90rpm、振盪幅2.5センチで微好気的に培養した。約50時間後、600nmのODが約2〜3に達した時点で、菌体を回収した。
【0061】
5.ギ酸デヒドロゲナーゼ活性測定
ギ酸デヒドロゲナーゼ(FDH)活性は、細胞破砕をNative−PAGEで分離後、活性染色によって評価した。
Native−PAGEゲルは、4.5mlイオン交換水、3.8ml 30%Acrylamide(ナカライテスク株式会社)、2.8ml 1.5M Tris−HCl(pH8.8)、0.11ml 1%TritonX−100を混合し、テトラメチルエチレンジアミンと過硫酸アンモニウムで重合を開始させて作製した。泳動バッファーは、3gトリスヒドロキシメチルアミノメタン、14.4gグリシン、1ml TritonX−100をイオン交換水に溶解させ、pHを8.3に調節後、容量を1Lに合わせて、調製した。電気泳動は、ゲル一枚につき20mAの定電流で、4℃のコールドルーム内で行った。泳動後は、ゲルを活性染色液(50mM Tris−HCl(pH7.6)、2mMベンジルビオローゲン、2mMニトロブルーテトラゾリウム(NitroBlue tetrazolium)、0.2Mギ酸ナトリウム、0.1%TritonX−100)に浸して、窒素ガス雰囲気下に数時間置くことで、FDH活性によるニトロブルーテトラゾリウムの還元と色素沈着によって形成されたバンドを写真撮影した。
【0062】
6.ギ酸デヒドロゲナーゼ活性の評価
BW2511株(WT)、FDH−O膜サブユニット破壊株(△fdoI)、FDH−O破壊株(△fdo)、FDH−O/FDH−N破壊株(△fdo△fdn)、FDH−O/FDH−N破壊株に、pBR fdoGHmst、pUc fdoGHst、もしくはpUcfdoGHst’を導入した形質転換体の活性測定の結果を
図5に示す。
【0063】
レーン1(WT)の野生型のFDHでは、膜サブユニットおよび膜貫通ドメインを有するために、膜蛋白質が可溶化せずに、FDH-OおよびFDH-Nの両者が不溶型であることが確認された。
レーン2(△fdoI)の大腸菌のゲノム上のFDH-Oの膜サブユニットのみを破壊した株では、FDH-Nが可溶化せずに残存しているが、FDH-Oでは膜サブユニットがないことから、活性を有する可溶型FDH(大サブユニットおよび膜貫通ドメインを有する小サブユニット)が観察された。
【0064】
レーン3(△fdo)の大腸菌のゲノム上のFDH-Oの活性サブユニットを破壊した株では、FDH-Nが観察された。FDH-O遺伝子自体が破壊されているため、可溶型FDHは観察されないと考えられる。
レーン4(△fdo△fdn)の大腸菌のゲノム上のFDH-OおよびFDH-Nを破壊した株(FDH遺伝子の大サブユニット、小サブユニット、および膜サブユニットのすべてが破壊されている)では、野生型と比べて不溶型FDHも可溶型FDHもいずれも観察されないことから、かかる遺伝子が破壊されていることがわかる。
【0065】
レーン5(△fdo△fdn+pBRfdoGHmst)の大腸菌のゲノム上のFDH-OおよびFDH-Nを破壊した株に、FDH-Oの活性サブユニットを導入した場合では、膜貫通ドメインを有し、活性を有する可溶型FDH(FDH-O)が観察された。
レーン6(△fdo△fdn+pUcfdoGHst)の大腸菌のゲノム上のFDH-OおよびFDH-Nを破壊した株に、膜貫通ドメインを破壊したFDH-Oの活性サブユニットを導入した場合では、可溶型FDHは観察されなかった。
【0066】
レーン7(△fdo△fdn+pUcfdoGHst’)の大腸菌のゲノム上のFDH-OおよびFDH-Nを破壊した株に、膜貫通ドメインを破壊したFDH-Oの活性サブユニットで、プロモーターに変異を導入した場合では、膜貫通ドメインをもたない活性を有する可溶型FDHが観察された。
【0067】
レーン5(△fdo△fdn+pBRfdoGHmst)とレーン6(△fdo△fdn+pUcfdoGHst)から、膜貫通ドメインを有しているFDHプラスミドを導入した場合、膜貫通ドメインを有していないFDHプラスミドを導入に比べて、活性が高いことがわかる。また、レーン6(△fdo△fdn+pUcfdoGHst)とレーン7(△fdo△fdn+pUcfdoGHst’)から、FDH遺伝子プラスミドおよびそのプロモーターを導入しただけでは、可溶型FDHがほとんど発現しないことがわかる。
【0068】
以上の結果から、膜サブユニットを破壊することで、可溶性FDH−Oが生成することがわかる。また、FDH−O/FDH−N破壊株ではFDHに由来する活性が観察されなくなったが、pBR fdoGHmstを導入することで、僅かに活性が観察され、宿主ベクター系による可溶型FDH−Oの調製に成功したことが明らかとなった。しかし、膜貫通ドメインをコードする配列を削除したpUc fdoGHstを導入することで、再び活性がほとんど見られなくなった。そこで、pUc fdoGHstにランダムな変異を導入する目的で、複製エラー頻度の高いポリメラーゼでDNA断片を増幅しなおし、再びpUc19に導入して得られた多数のプラスミドを、FDH−O/FDH−N破壊株に導入し、それぞれ評価を行った。その結果、活性が回復した膜貫通ドメイン欠失可溶型FDH−Oの調製に成功したことが確認された。高い活性が示したプラスミドpUc fdoGHst’の変異個所を調べた結果、2197位において、cがtへ、2346位において、tがcへの変異が確認できた。
【0069】
このことから、単に膜貫通ドメインを有していないFDHプラスミドを導入しただけでは、可溶型FDHを大量に発現させることができず、FDH遺伝子プラスミドのプロモーターに特定の変異を入れ、FDH遺伝子プラスミドの発現を適切に調節することによって、高い活性を有する可溶型FDHを大量に発現させることができることがわかる。
【0070】
7.PsaE・Mo/W−FDHの構築とリンカーの検討
光合成反応中心蛋白質複合体における光誘起電子移動と可溶型ギ酸デヒドロゲナーゼの二酸化炭素還元能(ギ酸生産能)を組み合わせた光駆動ギ酸生産を目的とし、可溶型ギ酸デヒドロゲナーゼ(FDH)をPSIに組み込んだFDH−PSI複合体を構築するため、可溶型ギ酸デヒドロゲナーゼのサブユニット(fdoH)にPSIを構成するサブユニットの一つであるPsaEサブユニット組み込むことを検討した。また、可溶型ギ酸デヒドロゲナーゼと光合成反応中心蛋白質複合体のサブユニットを介するリンカーを検討した。
【0071】
PsaEサブユニット遺伝子(ssr2831)は、Synechocystis sp. PCC 6803ゲノム(Pasteur Culture Collection(PCC)から入手可能)を鋳型にしたPCRによって得ることができ、これを上記と同様にfdoH遺伝子と組み合わせ、さらにfdoH遺伝子とPsaE遺伝子との間にアミノ酸リンカーが挿入されるように、PsaE・Mo/W−FDHを作製し(
図6左図)、上記と同様に大腸菌にて発現させた(
図6右図)。
【0072】
アミノ酸リンカーとして、
図7の8と表示されたレーンには、[配列番号15]グリシン−グリシン−セリン−グリシン−グリシン−セリン−グリシン−グリシン(GGSGGSGG:Gly-Gly-Ser-Gly-Gly-Ser-Gly-Gly)(8アミノ酸)、
図7の10と表示されたレーンには、[配列番号16]グリシン−グリシン−セリン−グリシン−グリシン−グリシン−グリシン−セリン−グリシン−グリシン(GGSGGGGSGG:Gly-Gly-Ser-Gly-Gly-Gly-Gly-Ser-Gly-Gly)(10アミノ酸)
図7の10sと表示されたレーンには、[配列番号17]グリシン−セリン−セリン−グリシン−セリン−セリン−グリシン−セリン−セリン−グリシン(GSSGSSGSSG:Gly-Ser-Ser-Gly-Ser-Ser-Gly-Ser-Ser-Gly)(10アミノ酸)、
図7の10Pと表示されたレーンには、[配列番号18]グリシン−グリシン−セリン−グリシン−グリシン−プロリン−グリシン−セリン−グリシン−グリシン(GGSGGPGSGG:Gly-Gly-Ser-Gly-Gly-Pro-Gly-Ser-Gly-Gly)(10アミノ酸)、
【0073】
図7の12と表示されたレーンには、[配列番号19]グリシン−グリシン−セリン−グリシン−グリシン−グリシン−グリシン−セリン−グリシン−グリシン−セリン−グリシン(GGSGGGGSGGSG:Gly-Gly-Ser-Gly-Gly-Gly-Gly-Ser-Gly-Gly-Ser-Gly)(12アミノ酸)、
図7の12Dと表示されたレーンには、[配列番号20]グリシン−グリシン−セリン−グリシン−アスパラギン酸−グリシン−セリン−グリシン−アスパラギン酸−グリシン−セリン−グリシン(GGSGDGSGDGSG:Gly-Gly-Ser-Gly-Asp-Gly-Ser-Gly-Asp-Gly-Ser-Gly)(12アミノ酸)、
図7の12DKと表示されたレーンには[配列番号21]グリシン−グリシン−セリン−グリシン−アスパラギン酸−グリシン−セリン−グリシン−リジン−グリシン−セリン−グリシン(GGSGDGSGKGSG:Gly-Gly-Ser-Gly-Asp-Gly-Ser-Gly-Lys-Gly-Ser-Gly)(12アミノ酸)、
【0074】
図7の14と表示されたレーンには、[配列番号22]グリシン−グリシン−セリン−グリシン−グリシン−グリシン−グリシン−セリン−グリシン−グリシン−セリン−グリシン−グリシン−グリシン(GGSGGGGSGGSGGG:Gly-Gly-Ser-Gly-Gly-Gly-Gly-Ser-Gly-Gly-Ser-Gly-Gly-Gly)(14アミノ酸),
図8のaと表示されたレーンには、[配列番号23]グリシン−グリシン−セリン−グリシン−グリシン(GGSGG:Gly-Gly-Ser-Gly-Gly)(5アミノ酸)、
図8のbと表示されたレーンには、上記配列番号16のアミノ酸(GGSGGGGSGG:Gly-Gly-Ser-Gly-Gly-Gly-Gly-Ser-Gly-Gly)リンカーを使用、
図8のcと表示されたレーンには、[配列番号24]グリシン−グリシン−セリン−グリシン−グリシン−セリン−グリシン−グリシン−セリン−グリシン−グリシン−グリシン−グリシン−セリン−セリン(GGSGGSGGSGGGGSS:Gly-Gly-Ser-Gly-Gly-Ser-Gly-Gly-Ser-Gly-Gly-Gly-Gly-Ser-Ser)(15アミノ酸)をそれぞれ用いた。
【0075】
大腸菌で発現したPsaE・Mo/W−FDHを、上記と同様に抽出し、上記と同様にNative−PAGEで泳動し、ギ酸分解活性を観察した。その結果、いずれのリンカーを有するPsaE・Mo/W−FDHも活性を有し、PsaE・Mo/W−FDHの安定性が増していることが示された。特に10アミノ酸のリンカーを有するPsaE・Mo/W−FDHは、他に比べて、細胞内での発現が増した(
図7)。
【0076】
8.変異体の作出および該変異体の安定性
fdoHの領域の111位のアラニン(A)、114位のアラニン(A)、134位のイソロイシン(I)、138位のチロシン(Y)、141位のアラニン(A)、150位ロイシン(L)のアミノ酸を他のアミノ酸へ置換して、それぞれの変異体を作出し、評価した。その結果、特に、111位のアラニンをトレオニン、114位のアラニンをセリン、134位のイソロイシンをグルタミンン酸、138位のチロシンをセリン、141位のアラニンをセリン、かつ、150位ロイシンをグルタミン酸に置換した変異体(A111T/A114S/I134E/Y138S/A141S/L150E)、111位のアラニンをトレオニン、114位のアラニンをセリン、134位のイソロイシンをグルタミン酸、138位のチロシンをセリン、141位のアラニンをセリン、かつ、150位ロイシンをグルタミンに置換した変異体(A111T/A114S/I134E/Y138S/A141S/L150Q)、ならびに、111位のアラニンをトレオニン、114位のアラニンをセリン、134位のイソロイシンをグルタミン、138位のチロシンをセリン、141位のアラニンをセリン、かつ、150位ロイシンをグルタミ酸に置換した変異体(A111T/A114S/I134Q/Y138S/A141S/L150E)の各変異体の安定性が増すことが示された(
図9)。なお、
図9の記号は、FDHは、配列番号7および8の蛋白質、stは、Strepタグ、HisはHisタグ、10gsは、上記配列番号16のアミノ酸(Gly-Gly-Ser-Gly-Gly-Gly-Gly-Ser-Gly-Gly:GGSGGGGSGG)からなるリンカー、PsaEは、PsaEサブユニットをそれぞれ表す。FDH括弧書きは、数字がFDHの置換したアミノ酸の位置、数字の前のアルファベットが置換前のアミノ酸、数字の後のアルファベットが置換後のアミノ酸をそれぞれ表す。またMEDはメチオニン−グルタミン酸−アスパラギン酸を表す。
【0077】
9.タグの検討
PsaE・Mo/W−FDHに、Strepタグ(商品名:Strep-TagII)とHisタグ(Hisx6)との比較実験を行った。PsaE・Mo/W−FDHを発現させた大腸菌から、上記と同様に細胞破砕液を得た。さらに遠心分離処理し、その後、ニッケルキレートカラムもしくはストレプタクチンカラムを用いて、PsaE・Mo/W−FDHを精製し、上記と同様にギ酸分解活性を観察した。蛋白質の安定性は、1〜4日間4℃放置し、その活性を調べて評価した。さらに活性の強さおよび収量は、イメージアナライザー(Image J)を使用し、バンドの濃さを定量して評価した。
その結果、Strepタグを有するPsaE・Mo/W−FDHは、細胞破砕液およびその上清には存在するものの、その後沈殿し、さらにはカラムを通しても、素通りしてしまうことが示された。しかし、Hisタグの場合は、ほとんど沈殿せず、さらにカラムに吸着することが示された。すなわち、Strepタグに特異的なストレプタクチンを用いたPsaE・Mo/W−FDHより、StrepタグをHisタグ(Hisx6)に変えたPsaE・Mo/W−FDHの方が、沈殿が少ないことから、PsaE・Mo/W−FDHの安定性が増していることが示され、さらにその精製の効率が10〜20倍良いことが示された(
図10)。
【0078】
10.ギ酸の生産
PsaE破壊株(Prof. N. Nelson (Roche Institution of Molecular Biology)から入手)から、ドデシルβD−マルトシドで可溶化し、PsaEサブユニットの欠損したPSI蛋白質を抽出し、上記と同様に得らえたPsaE・Mo/W−FDHを混合し、420nm以下の波長をカットしたハロゲンライトを用いて光を照射した。その結果、電気伝導度検出によるイオンクロマトによってギ酸が生成したことが確認された。