【課題】本発明は、スプレーガン本体に装着されるスプレーノズルの表面に位置する水滴が飛散することを抑制可能なスプレーノズル及び缶本体内面塗布装置を提供することを目的とする。
【解決手段】塗料噴出孔38の周囲に付着した水滴を塗料噴出孔38から離間した位置に誘導する水滴誘導部材33と、スプレーノズル22の外周部に配置され、水滴誘導部材33が取り付けられることで水滴誘導部材33の位置を規制する凹部32B(水滴誘導部材取り付け部)と、有する。
前記スプレーノズルの表面のうち、前記塗料噴出孔を露出する塗料噴出面は、前記塗料噴出孔から前記スプレーノズルの他方の端に向かうにつれて、幅が広くなるテーパ面であることを特徴とする請求項1または2記載のスプレーノズル。
前記水滴誘導部材の表面における水滴の接触角は、前記スプレーノズルの表面における水滴の接触角よりも小さいことを特徴とする請求項1ないし7のうち、いずれか1項記載のスプレーノズル。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、図面を参照して本発明を適用した実施の形態について詳細に説明する。なお、以下の説明で用いる図面は、本発明の実施形態の構成を説明するためのものであり、図示される各部の大きさや厚さや寸法等は、実際のスプレーノズル及び缶本体内面塗布装置の寸法関係とは異なる場合がある。
【0038】
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る缶本体内面塗布装置が缶本体の内面に塗料を塗布している様子を模式的に示す図である。
図1では、缶本体18、及び缶本体18に塗布された塗布層20のみを断面として図示する。
また、
図1において、Aは塗料19が塗布される際の缶本体18の回転方向(以下、「A方向」という)、C
1は缶本体18の中心軸(以下、「中心軸C
1」という)、C
2は塗布用スプレーガン11の中心軸(以下、「中心軸C
2」という)をそれぞれ示している。缶本体18の中心軸C
1は、鉛直方向に対して直交している。
【0039】
図2は、
図1に示す塗布用スプレーガンの水滴誘導部材が配置された先端部、及び水滴回収部材を拡大した斜視図である。
図2に示すBは、水滴誘導部材33により誘導された水滴の移動方向(以下、「B方向」という)を示している。
図3は、
図2に示す構造体を分解した斜視図である。
図2及び
図3において、
図1に示す構造体と同一構成部分には、同一符号を付す。
【0040】
図1〜
図3を参照するに、第1の実施の形態の缶本体内面塗布装置10は、塗布用スプレーガン11と、塗料供給源13と、クリーニング用スプレーガン14と、水滴回収部材15と、洗浄液供給源16と、制御部17と、を有する。
【0041】
塗布用スプレーガン11は、A方向に回転させられる缶本体18の内面18aを覆うように、塗料19を塗布するスプレーガンである。
塗布用スプレーガン11は、塗布用スプレーガン11の中心軸C
2が缶本体18の中心軸C
1と交差し、かつスプレーガン本体21よりもスプレーノズル本体31が上方に位置するように配置されている。
【0042】
このように、塗布用スプレーガン11の中心軸C
2が缶本体18の中心軸C
1と交差し、かつスプレーガン本体21よりもスプレーノズル本体31が上方に位置するように塗布用スプレーガン11を配置することにより、塗料噴出孔38の周囲に付着した水滴が水滴誘導部材側に移動しやすくなる。
このため、水滴誘導部材33により、塗料噴出孔38の周囲に付着する水滴を、塗料噴出孔38から離間した位置に、効率良く誘導することができる。
【0043】
缶本体18は、底部18−1を有し、かつ蓋体(図示せず)が取り付けられる前の缶である。缶本体18の材質としては、例えば、アルミニウムを用いることができる。
【0044】
塗布用スプレーガン11は、スプレーガン本体21と、スプレーノズル22と、を有する。スプレーガン本体21は、スプレーノズル22が着脱可能に装着される接続部24を有する。接続部24は、円柱形状とされ、その一部に雄ねじが設けられた雄ねじ部26と、スプレーノズル本体31の接触面35aと接触する円形の平坦面26aと、平坦面26aの中心を貫通し、塗料供給源13から供給された塗料19を輸送する塗料輸送孔27と、を有する。
【0045】
スプレーノズル22は、スプレーノズル本体31と、装着用部材32と、水滴誘導部材33と、を有する。スプレーノズル本体31は、円形板部材35と、塗料噴射部37と、塗料噴出孔38と、を有する。円形板部材35は、スプレーノズル22を接続部24に装着する際、雄ねじ部26と接触する部材である。
【0046】
円形板部材35は、雄ねじ部26の平坦面26aと接触し、平坦面26aと同じ直径とされた接触面35aを有する。また、円形板部材35は、接触面35aの反対側に配置された平坦面35bを有する。
【0047】
塗料噴射部37は、円形板部材35の平坦面35bから平坦面35bに直交する方向に突出している。塗料噴射部37は、円形板部材35と一体とされている。塗料噴射部37の形状は、円形板部材35よりも直径の小さい円柱形状とされている。
【0048】
塗料噴射部37は、2つの端部のうち、円形板部材35が配置された側とは反対側に位置する端部に平坦な塗料噴出面37aを有する。塗料噴出面37aは、円形とされている。
接続部24に対して装着用部材32が装着された際、塗料噴射部37の塗料噴出面37a及び側面37bは、装着用部材32から露出される。
【0049】
つまり、塗料噴出面37a及び側面37bには、噴出させた塗料19のはね返りによる塗料19が付着したり、クリーニング用スプレーガン14により、塗料噴射部37を純水(洗浄液)で洗浄させた際に該純水よりなる水滴が付着したりする。
【0050】
塗料噴出孔38は、塗料噴出面37aに直交する方向に対して、円形板部材35及び塗料噴射部37を貫通するように設けられている。塗料噴出孔38は、塗料噴出面37aの中心(言い換えれば、中心軸C
2)を通過している。
塗料噴出孔38の一方の端は、塗料噴出面37aにより露出されている。塗料噴出孔38の他方の端は、雄ねじ部26に設けられた塗料輸送孔27と対向するように配置されている。
【0051】
接続部24に対してスプレーノズル22が装着された際(
図2に示す状態になった際)、塗料噴出孔38の他方の端は、塗料輸送孔27と接続される。
塗料輸送孔27により輸送された塗料は、A方向に回転する缶本体18の内面18aに対して、塗料噴出孔38の一方の端から所定の噴出角度で噴出される。これにより、缶本体18の内面18aに、塗料19よりなる塗布層20が形成される。
【0052】
図4は、スプレーノズル本体の親水性処理された塗料噴出面に位置する水滴の接触角を説明するための模式的な断面図である。
図4において、
図3と同一構成部分には、同一符号を付す。
【0053】
図4に示すように、上記構成とされたスプレーノズル本体31の表面(塗料噴出面37a及び側面37bを含むスプレーノズル本体31の全ての表面)は、水滴42の接触角θ
1が30度以下となる親水性を有する。
スプレーノズル本体31の表面に位置する水滴42の接触角θ
1が30度よりも大きいと、缶本体18の内面18aの塗布不良率が所定の塗布不良率以上(具体的には、例えば、塗布不良率が1%以上)となるため、好ましくない。
【0054】
図5は、板材に付着した水滴の接触角が大きい場合を模式的に示す断面図である。
図5に示すように、板材44の表面44aに付着した水滴45の接触角θ
2がかなり大きいと、水滴45の形状が球体に近づくため、表面44aから落下しやすくなる。
このような球形の水滴45が塗料噴射部37の表面に形成されると、缶本体18の内面18aに水滴45が飛散しやすくなるため、缶本体18の内面18aに精度良く塗料19を塗布することが困難となってしまう。
【0055】
一方、第1の実施の形態の塗布用スプレーガン11を構成するスプレーノズル本体31の表面は、水滴42の接触角θ
1が30度以下となる親水性を有するため、例えば、クリーニング用スプレーガン14により、スプレーノズル22の表面を純水で洗浄した際、スプレーノズル本体31の表面に付着する水滴42が面方向に広がるため、水滴42の形状が球体に近づくことを抑制可能となる。
【0056】
このように、スプレーノズル本体31の表面方向に水滴42が広がることで、厚さの薄い水滴42が付着することになるため、スプレーノズル本体31の表面に付着した水滴42が飛散しにくくなる。
したがって、スプレーノズル本体31の表面から飛散した水滴42が缶本体18の内面18aに付着することを抑制可能となるので、缶本体18の内面18aに精度良く塗料19を塗布することができる(
図1参照)。
【0057】
上記スプレーノズル本体31の材質としては、例えば、ステンレス鋼を用いることができる。
スプレーノズル本体31の材質としてステンレス鋼(例えば、SUS301、SUS303、SUS304等)を用いる場合、スプレーノズル本体31の表面に位置する水滴42の接触角θ
1を30度以下にするためには、スプレーノズル本体31の表面処理として、例えば、親水性処理を行うとよい。
上記親水性処理としては、例えば、トーカロ株式会社の表面処理技術であるSGC−koteを用いることができる。
【0058】
図1〜
図3を参照するに、装着用部材32は、スプレーノズル本体31を接続部24に装着させるための部材であり、装着部材本体32−1と、貫通孔32Aと、水滴誘導部材取り付け部であるリング状の凹部32Bと、を有する。
【0059】
装着部材本体32−1は、貫通孔32A及び凹部32Bが形成される部材である。装着部材本体32−1は、装着部材本体32−1のうち、貫通孔32Aに露出された部分に設けられた雌ねじ(図示せず)を有する。
該雌ねじが雄ねじ部26を構成する雄ねじと螺合されることで、スプレーノズル本体31が接続部24に装着される。装着部材本体32−1の外形は、例えば、多角形(例えば、六角形)とされている。
【0060】
装着部材本体32−1の表面は、水滴の接触角が30度以下となる親水性を有する。これにより、装着用部材32は、先に説明したスプレーノズル本体31と同様な効果を得ることができる。
具体的には、装着用部材32の表面に付着した水滴が飛散しにくくなり、飛散した水滴42が缶本体18の内面18aに付着することを抑制可能となるので、缶本体18の内面18aに精度良く塗料19を塗布することができる(
図1参照)。
【0061】
装着部材本体32−1の材質としては、例えば、スプレーノズル本体31の材質と同様なものを用いることができる。また、装着部材本体32−1の表面を親水性にする処理は、スプレーノズル本体31の表面を親水性にする処理と同様な処理を用いることができる。
【0062】
貫通穴32Aは、雄ねじ部26及び塗料噴射部37を挿入可能なように、装着部材本体32−1を貫通している。
凹部32Bは、装着部材本体32−1の外周部に設けられている。凹部32Bは、装着部材本体32−1の外周部を囲むように配置されたリング状の溝である。凹部32Bの深さは、凹部32B内に水滴誘導部材33の一部を収容させた際、水滴誘導部材33の位置を規制可能な深さであればよい。
【0063】
このように、装着部材本体32−1の外周部を囲み、かつ水滴誘導部材33の一部が収容される凹部32Bを有することにより、水滴との接触面積が増加するため、凹部32Bに水滴を集めることが可能になると共に、接続部24への装着用部材32の着脱(締結)作業に悪影響を及ぼすことなく、水滴誘導部材33の位置を容易に規制することができる。
【0064】
水滴誘導部材33は、装着部材本体32−1の周囲を囲むように、その一部が凹部32B内に配置されている。水滴誘導部材33は、スプレーノズル22に付着した水滴をスプレーノズル22から離間した位置に配置された水滴回収部材15に誘導するための部材である。
【0065】
このように、装着部材32の凹部32Bに取り付けられ、スプレーノズル22に付着した水滴をスプレーノズル22から離間した位置に誘導する水滴誘導部材33を有することで、スプレーノズル22の表面に付着した水滴を塗料噴出孔38から離間するように配置された水滴回収部材15に導くことが可能となるので、スプレーノズル22の表面に、水滴が溜まりにくい環境を形成することができる。
【0066】
水滴誘導部材33の両端部のうち、装着部材本体32−1に巻き付けられていない側の一方の端部は、水滴回収部材15に水滴を誘導可能な位置に配置されている。
水滴誘導部材33の一方の端部は、水滴回収部材15の上端部と接触していてもよいし、水滴回収部材15から離間した状態で水滴回収部材15の上端部の上方に配置させてもよい。
【0067】
水滴誘導部材33は、スプレーノズル22の表面に付着した水滴を水滴回収部材15に誘導することが可能な部材であればよい。具体的には、水滴誘導部材33としては、例えば、チェーンを用いることができる。
【0068】
水滴誘導部材33の材質は、水滴誘導部材33の表面を親水性にすることが可能な材質が好ましい。具体的には、水滴誘導部材33の材質としては、例えば、金属を用いることができる。親水性とされた水滴誘導部材33としては、例えば、金属製(例えば、真鍮製や、ステンレス(例えば、SUS301、SUS303、SUS304等)製等)のチェーン(例えば、ボールチェーン)を用いることができる。
【0069】
このように、水滴誘導部材33として金属製のチェーンを用いることで、スプレーノズル22の周囲に対して、水滴誘導部材33を容易に巻き付ける(取り付ける)ことができると共に、水滴誘導部材33の表面を容易に親水性にすることができる。
【0070】
水滴誘導部材33の表面は、該表面に付着した水滴の接触角が30度以下となるような親水性を有することが好ましい。
このように、水滴誘導部材33の表面を、水滴の接触角が30度以下となる親水性にすることで、水滴誘導部材33の表面に球形状とされた水滴が形成されることを抑制可能となる。これにより、水滴誘導部材33の表面に形成された水滴が飛散して、缶本体18の内面18aに付着することを抑制できる(
図1参照)。
【0071】
また、水滴誘導部材33の表面に付着した水滴の接触角は、スプレーノズル22の表面に付着した水滴の接触角よりも小さくするとよい。
このように、水滴誘導部材33の表面に付着した水滴の接触角を、スプレーノズル22の表面に付着した水滴の接触角よりも小さくすることで、スプレーノズル22の表面の親水性よりも水滴誘導部材33の表面の親水性の方が高くなるため、水滴誘導部材33の水滴を誘導させる能力を向上させることができる。
【0072】
第1の実施の形態のスプレーノズルによれば、塗料噴出孔38の周囲に付着した水滴を塗料噴出孔38から離間した位置に誘導する水滴誘導部材33と、スプレーノズル22の外周部に配置され、水滴誘導部材33が取り付けられることで水滴誘導部材33の位置を規制する凹部32B(水滴誘導部材取り付け部)と、を有することで、クリーニング用スプレーガン14によりスプレーノズル22の表面を純水で洗浄した際に塗料噴出孔38の周囲に付着する水滴を、水滴誘導部材33により塗料噴出孔38から離間した位置に誘導することが可能となる。
【0073】
これにより、塗料噴出孔38の周囲に水滴が溜まりにくくなるため、塗料噴出孔38の周囲に、球体に近い形状とされた水滴が形成されることを抑制可能となる。
したがって、塗料噴出孔38の周囲から水滴が飛散することを抑制可能となるので、缶本体18の内面18aに精度良く塗料19を塗布することができる。
【0074】
なお、第1の実施の形態では、スプレーノズル22の表面、及び水滴誘導部材33の表面が親水性(具体的には、水滴の接触角が30度以下となる親水性)の場合を例に挙げて説明したが、スプレーノズル22の表面、及び水滴誘導部材33の表面における水滴の接触角が30度よりも大きい場合でも塗料噴出孔38の周囲から水滴が飛散することを抑制可能である(後述する表3参照。)。
【0075】
図1を参照するに、塗料供給源13は、スプレーガン本体21に塗料19を供給可能な状態で、スプレーガン本体21と接続されている。塗料供給源13としては、例えば、水性塗料を用いることができる。缶本体18の内面18aに塗料19が塗布されることで、塗料19よりなる塗布層20が形成される。
【0076】
クリーニング用スプレーガン14は、ガン本体51と、管路52と、洗浄用スプレーノズル54と、を有する。
管路52は、ガン本体51から延在している。管路52は、その一方の端がガン本体51と接続されており、他方の端が洗浄用スプレーノズル54と接続されている。管路52は、洗浄用スプレーノズル54に洗浄液供給源16から供給される洗浄液を供給する。
【0077】
洗浄用スプレーノズル54は、洗浄液噴出孔54Aを有する。洗浄液噴出孔54Aは、スプレーノズル22に洗浄液を噴出させることが可能な位置に配置されている。
洗浄用スプレーノズル54は、スプレーノズル22からの塗料の噴出が停止された状態で、スプレーノズル22に洗浄液を吹き付けることで、スプレーノズル22の洗浄を行う。
【0078】
図1では、一例として、塗布用スプレーガン11の上方にクリーニング用スプレーガン14を配置し、塗布用スプレーガン11の上方からスプレーノズル22の表面を洗浄する構成を図示したが、塗布用スプレーガン11の下方にクリーニング用スプレーガン14を配置し、塗布用スプレーガン11の下方からスプレーノズル22の表面の洗浄を行ってもよい。
【0079】
図2を参照するに、水滴回収部材15は、水滴誘導部材33の一方の端部を介して、水滴を回収するための部材である。水滴回収部材15は、所定の方向に延在する底板部15−1と、一対の側壁部15−2,15−3と、を有する。
側壁部15−2は、底板部15−1の延在方向と同じ方向に延在しており、底板部15−1の一方の側壁に配置されている。側壁部15−3は、底板部15−1の延在方向と同じ方向に延在しており、底板部15−1の他方の側壁に配置されている。
【0080】
水滴回収部材15は、水滴回収部材15の上端部からB方向に水滴が流れる(移動する)ように、水平方向に対して傾斜して配置されている。水滴回収部材15の下端部は、水滴を回収する水滴回収容器(図示せず)と接続されている。
なお、
図2に示す水滴回収部材15は、一例であって、水滴回収部材15の形状は、
図2に示す形状に限定されない。
【0081】
洗浄液供給源16は、ガン本体51に洗浄液を供給可能な状態で、ガン本体51と接続されている。洗浄液供給源16としては、例えば、純水を用いることができる。
なお、洗浄液供給源16とガン本体51とを接続するラインに、ソレノイド作動式弁(図示せず)を設けてもよい。
【0082】
制御部17は、塗布用スプレーガン11、塗料供給源13、クリーニング用スプレーガン14、及び洗浄液供給源16と電気的に接続されている。
制御部17は、記憶部(図示せず)を有する。該記憶部(図示せず)には、塗布用スプレーガン11、塗料供給源13、クリーニング用スプレーガン14、及び洗浄液供給源16を動作及び停止させるためのプログラムが格納されている。
制御部17は、上記プログラムに基づいて、缶本体内面塗布装置10の制御全般を行う。
【0083】
第1の実施の形態の缶本体内面塗布装置によれば、クリーニング用スプレーガン14により、スプレーノズル22の先端部に吹き付けられる純水よりなる水滴が飛散して、缶本体18の内面18aに付着することを抑制可能となるので、缶本体18の内面18aに精度良く塗料19を塗布することができる。
【0084】
なお、第1の実施の形態では、スプレーノズル本体31と装着用部材32とを別体にした場合を例に挙げて説明したが、本発明は、スプレーノズル本体31及び装着用部材32が1つの部材で構成されたスプレーノズルにも適用可能であり、このような構成とされたスプレーノズルは、第1の実施の形態のスプレーノズル22と同様な効果を得ることができる。
【0085】
図6は、第1の実施の形態の変形例に係る塗布用スプレーガンの主要部の斜視図である。
図6において、
図2に示す構造体と同一構成部分には、同一符号を付す。
【0086】
図6を参照するに、第1の実施の形態の変形例に係る塗布用スプレーガン60は、第1の実施の形態の塗布用スプレーガン11(
図2参照)を構成するスプレーノズル22に替えて、スプレーノズル61を有すること以外は、塗布用スプレーガン11と同様に構成されている。
【0087】
スプレーノズル61は、スプレーノズル22(
図2参照)を構成するスプレーノズル本体31に替えて、スプレーノズル本体63を有すること以外は、スプレーノズル22と同様に構成される。
【0088】
スプレーノズル本体63は、スプレーノズル61の一方の端に位置する塗料噴出孔38を露出する塗料噴出面63aを有する。塗料噴出面63aは、塗料噴出孔38からスプレーノズル61の他方の端に向かうにつれて、幅が広くなるテーパ面とされている。
【0089】
図7は、
図6に示すスプレーノズル本体の模式的な断面図である。
図7に示すθ
3は、中心軸C
2と塗料噴出面63aとが成す角度(以下、「傾斜角度θ
3」という)を示している。
図7において、
図6に示す構造体と同一構成部分には、同一符号を付す。
図7に示す傾斜角度θ
3は、例えば、40度とすることができる。
【0090】
第1の実施の形態の変形例に係るスプレーノズルによれば、塗料噴出孔38を露出する塗料噴出面63aを、塗料噴出孔38からスプレーノズル61の他方の端に向かうにつれて、幅が広くなるテーパ面とすることで、塗料噴出孔38の周囲に付着した水滴がテーパ面により、塗料噴出孔38から離間する方向へ流れていくため、塗料噴出孔38の周囲に水滴が存在しにくい環境を形成することが可能となる。
これにより、スプレーノズル61の表面から水滴が飛散しにくくなるため、缶本体18の内面18aに付着することを抑制可能となる。したがって、缶本体18の内面18aに精度良く塗料19を塗布することができる。
【0091】
なお、
図6では、スプレーノズル本体63と装着用部材32とを別体にした場合を例に挙げて説明したが、本発明は、スプレーノズル本体63及び装着用部材32が1つの部材で構成されたスプレーノズルにも適用可能であり、このような構成とされたスプレーノズルは、第1の実施の形態の変形例に係るスプレーノズル61と同様な効果を得ることができる。
【0092】
(第2の実施の形態)
図8は、本発明の第2の実施の形態に係る缶本体内面塗布装置を構成する塗布用スプレーガンの主要部、水滴誘導部材、及び水滴回収部材を拡大した斜視図である。
図8において、
図2に示す構造体と同一構成部分には、同一符号を付す。
【0093】
図8を参照するに、第2の実施の形態の塗布用スプレーガン70は、第1の実施の形態の塗布用スプレーガン11を構成するスプレーノズル22に替えて、スプレーノズル71を有すること以外は、塗布用スプレーガン11と同様に構成される。
【0094】
スプレーノズル71は、第1の実施の形態のスプレーノズル22を構成する装着用部材32に替えて、装着用部材73を有すること以外は、スプレーノズル22と同様に構成されている。
装着用部材73は、装着用部材32を構成する凹部32B(水滴誘導部材取り付け部)に替えて、水滴誘導部材取り付け部である凸部73Aを有すること以外は、装着用部材32と同様に構成される。
【0095】
凸部73Aは、装着用部材本体32−1の外周部に設けられている。凸部73Aは、装着部材本体32−1の側面32−1Aから突出している。凸部73Aとしては、例えば、リング状の突出部を用いることができる。
装着部材本体32−1の側面32−1Aを基準としたときの凸部73Aの高さは、凸部73Aに巻き付けられた水滴誘導部材33が外れない高さであればよい。
【0096】
水滴誘導部材33は、その一方の端部が凸部73Aの両側に巻き付けられている。水滴誘導部材33の両端部のうち、凸部73Aに巻き付けられていない他方の端部は、水滴回収部材15に水滴を誘導可能な位置に配置されている。
水滴誘導部材33の他方の端部は、水滴回収部材15の上端部と接触していてもよいし、水滴回収部材15から離間した状態で水滴回収部材15の上端部の上方に配置させてもよい。
【0097】
上記説明した第2の実施の形態の塗布用スプレーガンは、塗料噴出孔38の周囲に付着した水滴を塗料噴出孔38から離間した位置に誘導する水滴誘導部材33と、装着部材本体32−1の外周部に配置され、水滴誘導部材33が取り付けられることで水滴誘導部材の33の位置を規制する凸部73A(水滴誘導部材取り付け部)と、を有する。
このような構成とされた第2の実施の形態の塗布用スプレーガン70は、第1の実施の形態の塗布用スプレーガン11と同様な効果を得ることができる。
【0098】
なお、
図8では、スプレーノズル本体31を用いる場合を例に挙げて図示したが、スプレーノズル本体31に替えて、
図6に示すスプレーノズル本体63を用いてもよい。この場合、
図6に示す塗布用スプレーガン60と同様な効果を得ることができる。
【0099】
以上、本発明の好ましい実施の形態について詳述したが、本発明はかかる特定の実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲内に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【0100】
(試験例1)
試験例1では、
図2に示す塗料噴出面37aが平坦な面とされたスプレーノズル本体31(材質;SUS303)と、
図2に示す凹部32Bが形成されていない装着部材本体32−1(材質;SUS303)と、を有するスプレーノズルEを3つ準備した。
スプレーノズルEを構成する塗料噴射部37の直径は、13mmとした。また、塗料噴出孔38の直径は、0.5mmとした。
【0101】
次いで、3つのスプレーノズルFのうち、1つのスプレーノズルEの表面に対して親水化処理を行うことで、スプレーノズルEの表面が親水性とされたスプレーノズルE1を作製した。
このときの親水化処理としては、トーカロ株式会社のSGC−koteを用いた。
【0102】
次いで、残りの2つのスプレーノズルEのうち、一方のスプレーノズルEの表面に対しては、何も表面処理を行わず(以下、このスプレーノズルを「スプレーノズルE2」という)、他方のスプレーノズルEの表面に対しては疎水化処理を行った。
上記疎水化処理として、白色ワセリンをスプレーノズルEの表面に塗布した。この疎水化処理されたスプレーノズルEを、以下の説明では、スプレーノズルE3という。
【0103】
次いで、協和界面化学株式会社製の接触角計であるFACE CONTACT−ANGLE METER(型番)を用いて、各スプレーノズルE1〜E3の表面の6ヶ所における水の接触角を測定した。
この結果、スプレーノズルE1の表面における水の接触角は、12度、17度、28度、20度、23度、21度であった。スプレーノズルE1の6ヶ所の水の接触角の範囲は、12度以上28度以下であり、30度以下におさまった。スプレーノズルE1の6ヶ所の水の接触角の平均は、20.1度であった。
【0104】
また、スプレーノズルE2の表面における6ヶ所の水の接触角は、59度、40度、46度、38度、40度、48度であった。スプレーノズルE2の6ヶ所の水の接触角の範囲は、38度以上59度以下であった。スプレーノズルE2の6ヶ所の水の接触角の平均は、45.2度であった。
【0105】
また、スプレーノズルE3の表面における6ヶ所の水の接触角は、63度、87度、84度、61度、88度、91度であった。スプレーノズルE3の6ヶ所の水の接触角の範囲は、61度以上91度以下であった。スプレーノズルE3の6ヶ所の水の接触角の平均は、79.1度であった。
上記スプレーノズルE1〜E3の表面における6ヶ所の水の接触角の範囲を、表1に示す。
【0107】
次いで、
図1に示す接続部24にスプレーノズルE1を取り付け、塗料噴出孔38と缶本体18との距離が20mmとなるように位置を調整した。
次いで、内面18aに塗料が塗布されていない1000個(1000缶)の缶本体18(内径66mm、深さ124cm)を準備した。
【0108】
その後、スプレーノズルE1を介して、1000個のアルミニウム製の缶本体18の内面18aに水性塗料を塗布した。このとき、缶本体18の回転速度は、2000rpm(1分間に2000回転)とした。
【0109】
クリーニング用スプレーガン14によるスプレーノズルF1の表面の洗浄は、連続して5缶塗布した後に、水性塗料の噴出を停止させた状態で実施した。このときの洗浄条件として、洗浄液が純水、純水の噴出量が0.5g/sec、洗浄時間を50msecとした。
【0110】
次に、水性塗料が良好に塗布されたか否かを判定するために、水性塗料が塗布された1000個の缶本体18のエナメルレーター値(Enamel Rater Value、以下、「ERV」という)を測定した。
【0111】
ERVは、以下の方法により計測した。始めに、1%の濃度とされた食塩水を缶本体18内に注ぎ込み、缶本体18をアノード電極として利用し、缶本体18内の食塩水にカソード電極となるステンレス製の棒を浸漬させた。次いで、アノード電極とカソード電極との間に6.2ボルトの電位差を4秒間与えた直後の瞬間的な電流(ERV)を測定することで、ERVを取得した。
【0112】
試験例1では、塗料が塗布された1000個の缶本体18のうち、ERVが25mA以上の缶本体18を塗布不良品とした。
測定したERVに基づいた塗布不良の缶本体18の割合が0.5%未満(言い換えれば、不良品が5缶未満)の場合、○(非常に良好)と判定した。また、測定したERVに基づいた塗布不良の缶本体18の割合が0.5%以上1%未満(言い換えれば、不良品が5缶以上10缶未満)の場合、△(良好)と判定した。
【0113】
さらに、測定したERVに基づいた塗布不良の缶本体18の割合が1%以上(言い換えれば、不良品が10缶以上)の場合、×(不良)と判定した。
上記判定に基づいた試験例1で使用したスプレーノズルE1のEVRに基づく判定結果、及び塗布不良の缶本体の数を表1に示す。
【0114】
次いで、
図1に示す接続部24からスプレーノズルE1を取り外し、接続部24にスプレーノズルE2を取り付けた。この段階において、スプレーノズルE2の塗料噴出孔38と缶本体18との距離を20mmにした。
【0115】
次いで、内面18aに塗料が塗布されていない1000個の缶本体18(スプレーノズルE1の評価に使用した缶本体と同じ形状及び同じ材質のもの)を準備し、スプレーノズルE2を介して、1000個のアルミニウム製の缶本体18の内面18aに水性塗料を塗布した。なお、塗布条件は、スプレーノズルE1を使用した場合と同じ条件を用いた。
また、スプレーノズルE2の表面の洗浄条件は、スプレーノズルE1の表面の洗浄条件と同じ条件を用いた。
【0116】
次に、水性塗料が良好に塗布されたか否かを判定するために、スプレーノズルE2により水性塗料が塗布された1000個の缶本体18のERVを測定した。その後、上記説明した判定基準、及びスプレーノズルE2を使用したときのERVに基づいて判定を行った。表1に、ERVに基づく判定結果、及び塗布不良の缶本体の数を示す。
【0117】
次いで、残りのスプレーノズルE3についても、スプレーノズルE1,E2と同様な塗布処理及び洗浄処理を行った。その後、塗料が塗布された缶本体18のERVを測定した。
その後、上記説明した判定基準、及びスプレーノズルE3を使用したときのERVに基づいて判定を行った。表1に、ERVに基づく判定結果、及び塗布不良の缶本体の数を示す。
【0118】
(試験例1の結果について)
表1を参照するに、表面が親水性とされた(言い換えれば、表面の水の接触角が30度以下とされた)スプレーノズルE1は、塗布不良が非常に少なく(塗布不良は3缶)、かなり良好な結果が得られた。
【0119】
また、表1からスプレーノズルE1〜E3の表面の水の接触角が大きくなればなるほど、塗布不良の缶本体18の数が増加することが確認できた。
このことから、塗料噴出面37aが平坦な面とされたスプレーノズルEの表面の水の接触角が30度以下となるように、親水性処理することで、缶本体18の塗布不良の数を減少させることが可能(言い換えれば、塗布工程での歩留りを向上させることが可能)であることが確認できた。
【0120】
(試験例2)
試験例2では、
図6に示す塗料噴出面63aがテーパ面とされたスプレーノズル本体63(材質;SUS303)と、
図6に示す凹部32Bが形成されていない装着部材本体32−1(材質;SUS303)と、を有するスプレーノズルFを3つ準備した。
【0121】
スプレーノズル本体63のうち、塗料噴出面63aと装着部材本体32−1との間に位置する部分の直径は、13mmとした。また、
図7に示す傾斜角度θ3は、40度とした。また、塗料噴出孔38の直径は、試験例1で使用したスプレーノズルEの直径と同じ大きさとした。
【0122】
次いで、3つのスプレーノズルFのうち、1つのスプレーノズルFの表面に対して、先に試験例1で説明したスプレーノズルE1と同様な親水化処理を行うことで、スプレーノズルFの表面が親水性とされたスプレーノズルF1を作製した。
【0123】
次いで、残りの2つのスプレーノズルFのうち、一方のスプレーノズルFの表面に対しては、何も表面処理を行わず(以下、このスプレーノズルを「スプレーノズルF2」という)、他方のスプレーノズルFの表面に対しては、試験例1で説明したスプレーノズルE3と同様な疎水化処理を行った。この疎水化処理されたスプレーノズルFを、以下の説明では、スプレーノズルF3という。
【0124】
次いで、試験例1で使用した接触角計を用いて、各スプレーノズルF1〜F3の表面の6ヶ所における水の接触角を測定した。
この結果、スプレーノズルF1の表面における水の接触角は、28度、20度、24度、17度、20度、23度であった。スプレーノズルF1の6ヶ所の水の接触角の範囲は、17度以上28度以下であり、30度以下におさまった。スプレーノズルF1の6ヶ所の水の接触角の平均は、21.8度であった。
【0125】
また、スプレーノズルF2の表面における6ヶ所の水の接触角は、37度、59度、40度、53度、39度、49度であった。スプレーノズルF2の6ヶ所の水の接触角の範囲は、37度以上59度以下であった。スプレーノズルF2の6ヶ所の水の接触角の平均は、45.9度であった。
【0126】
また、スプレーノズルF3の表面における6ヶ所の水の接触角は、92度、89度、73度、63度、87度、83度であった。スプレーノズルF3の6ヶ所の水の接触角の範囲は、63度以上92度以下であった。スプレーノズルF3の6ヶ所の水の接触角の平均は、81.1度であった。
上記スプレーノズルF1〜F3の表面における6ヶ所の水の接触角の範囲を、表2に示す。
【0128】
次いで、
図1に示す接続部24にスプレーノズルF1を取り付け、塗料噴出孔38と缶本体18との距離が20mmとなるように位置を調整した。
次いで、内面18aに塗料が塗布されていない1000個(1000缶)の缶本体18(内径66mm、深さ124cm)を準備し、試験例1と同じ処理条件(塗布条件、洗浄条件等)を用いて、スプレーノズルF1を介して、1000個のアルミニウム製の缶本体18の内面18aに水性塗料を塗布した。
【0129】
次に、試験例1と同様に、水性塗料が塗布された1000個の缶本体18のERVを測定し、該ERVに対して試験例1と同様な判定条件で判定結果を行った。表2に、ERVに基づいて判定した判定結果、及び塗布不良の缶本体の数を示す。
【0130】
次いで、
図1に示す接続部24からスプレーノズルF1を取り外し、接続部24にスプレーノズルF2を取り付けた。この段階において、スプレーノズルF2の塗料噴出孔38と缶本体18との距離を20mmにした。
【0131】
次いで、内面18aに塗料が塗布されていない1000個の缶本体18(スプレーノズルF1の評価に使用した缶本体と同じ形状及び同じ材質のもの)を準備し、スプレーノズルF2を介して、1000個のアルミニウム製の缶本体18の内面18aに水性塗料を塗布した。なお、塗布条件は、スプレーノズルG1を使用した場合と同じ条件を用いた。
また、スプレーノズルF2の表面の洗浄条件は、スプレーノズルF1の表面の洗浄条件と同じ条件を用いた。
【0132】
次に、水性塗料が良好に塗布されたか否かを判定するために、スプレーノズルF2により水性塗料が塗布された1000個の缶本体18のERVを測定した。その後、試験例1で説明した判定基準、及びスプレーノズルF2を使用したときのERVに基づいて判定を行った。表2に、ERVに基づいて判定した判定結果、及び塗布不良の缶本体の数を示す。
【0133】
次いで、残りのスプレーノズルF3についても、スプレーノズルF1,F2と同様な塗布処理及び洗浄処理を行った。その後、塗料が塗布された缶本体18のERVを測定した。
その後、試験例1で説明した判定基準、及びスプレーノズルF3を使用したときのERVに基づいて判定を行った。表2に、ERVに基づいて判定した判定結果、及び塗布不良の缶本体の数を示す。
【0134】
(試験例2の結果について)
表2を参照するに、表面が親水性とされた(言い換えれば、表面の水の接触角が30度以下とされた)スプレーノズルF1は、塗布不良が非常に少なく(塗布不良は2缶)、かなり良好な結果が得られた。
【0135】
また、表2からスプレーノズルF1〜F3の表面の水の接触角が大きくなればなるほど、先に説明した試験例1と同様に塗布不良の缶本体18の数が増加することが確認できた。
このことから、塗料噴出面63aがテーパ面とされたスプレーノズルFの表面の水の接触角が30度以下となるように、親水性処理することで、缶本体18の塗布不良の数を5缶未満にすることが可能(言い換えれば、塗布工程での歩留りを向上させることが可能)であることが確認できた。
【0136】
また、表1及び表2を参照するに、水滴の接触角の範囲が同じ場合、テーパ面とされた塗料噴出面63aを有するスプレーノズルF1〜F3の方が、平坦な面とされた塗料噴出面37aを有するスプレーノズルE1〜E3のよりも塗布不良の缶本体18の数が少ない結果となった。
このことから、塗布不良の缶本体18の数を減少させるためには、スプレーノズルの塗料噴出面をテーパ面にすることが有効であることが確認できた。
【0137】
(試験例3)
試験例3では、
図6に示す塗料噴出面63aがテーパ面とされたスプレーノズル本体63と、
図6に示す凹部32Bを有する装着用部材32と、
図6に示す水滴誘導部材33と、を有するスプレーノズルGを3つ準備した。
スプレーノズル本体63は、試験例3で使用したスプレーノズル本体63と同じ材質及び同じ形状のものを用いた。
【0138】
装着用部材32を構成する凹部32Bとしては、幅が2.5mm、深さが2.5mmのリング状の溝を用いた。
水滴誘導部材33としては、SUS303製のボールチェーン(留め具がカップリング式のボールチェーン)を用いた。このとき、ボールチェーンを構成するボールの直径は、2.0〜2.3mmとした。
【0139】
次いで、3つのスプレーノズルGのうち、1つのスプレーノズルGの表面(但し、ボールチェーンの表面は除く)に対して、先に試験例1で説明したスプレーノズルE1と同様な親水化処理を行うことで、ボールチェーンの表面以外の表面が親水性とされたスプレーノズルG1を作製した。試験例3では、ボールチェーンの表面に対して何も表面処理を行わなかった。
【0140】
次いで、残りの2つのスプレーノズルGのうち、一方のスプレーノズルGの表面に対しては、何も表面処理を行わず(以下、このスプレーノズルを「スプレーノズルG2」という)、他方のスプレーノズルGの表面(但し、ボールチェーンの表面は除く)に対しては、試験例1で説明したスプレーノズルG3と同様な疎水化処理を行った。この疎水化処理されたスプレーノズルGを、以下の説明では、スプレーノズルG3という。
【0141】
次いで、試験例1で使用した接触角計を用いて、各スプレーノズルG1〜G3の表面(但し、ボールチェーンの表面は除く)の6ヶ所における水の接触角を測定した。
この結果、スプレーノズルG1の表面(但し、ボールチェーンの表面は除く)における水の接触角は、30度、20度、28度、17度、26度、23度であった。スプレーノズルG1の6ヶ所の水の接触角の範囲は、17度以上30度以下であり、30度以下におさまった。スプレーノズルG1の6ヶ所の水の接触角の平均は、24.0度であった。
【0142】
スプレーノズルG2の表面(但し、ボールチェーンの表面は除く)における6ヶ所の水の接触角は、35度、60度、40度、55度、37度、58度であった。スプレーノズルG2の6ヶ所の水の接触角の範囲は、35度以上60度以下であった。スプレーノズルG2の6ヶ所の水の接触角の平均は、47.5度であった。
【0143】
スプレーノズルG3の表面(但し、ボールチェーンの表面は除く)における6ヶ所の水の接触角は、70度、90度、62度、65度、82度、87度であった。スプレーノズルG3の6ヶ所の水の接触角の範囲は、62度以上90度以下であった。スプレーノズルG3の6ヶ所の水の接触角の平均は、76.0度であった。
上記スプレーノズルG1〜G3の表面における6ヶ所の水の接触角の範囲を、表3に示す。
【0145】
次いで、
図1に示す接続部24からスプレーノズルG1を取り外し、接続部24にスプレーノズルG2を取り付けた。この段階において、スプレーノズルG2の塗料噴出孔38と缶本体18との距離を20mmにした。
【0146】
次いで、内面18aに塗料が塗布されていない1000個の缶本体18(スプレーノズルG1の評価に使用した缶本体と同じ形状及び同じ材質のもの)を準備し、スプレーノズルG2を介して、1000個のアルミニウム製の缶本体18の内面18aに水性塗料を塗布した。
なお、塗布条件は、スプレーノズルG1を使用した場合と同じ条件を用いた。また、スプレーノズルG2の表面の洗浄条件は、スプレーノズルG1の表面の洗浄条件と同じ条件を用いた。
【0147】
次に、水性塗料が良好に塗布されたか否かを判定するために、スプレーノズルG2により水性塗料が塗布された1000個の缶本体18のERVを測定した。その後、試験例1で説明した判定基準、及びスプレーノズルG2を使用したときのERVに基づいて判定を行った。表3に、ERVに基づいて判定した判定結果、及び塗布不良の缶本体18の数を示す。
【0148】
次いで、残りのスプレーノズルG3についても、スプレーノズルG1,G2と同様な塗布処理及び洗浄処理を行った。その後、塗料が塗布された缶本体18のERVを測定した。
その後、試験例1で説明した判定基準、及びスプレーノズルG3を使用したときのERVに基づいて判定を行った。表3に、ERVに基づいて判定した判定結果、及び塗布不良の缶本体18の数を示す。
【0149】
(試験例3の結果について)
表3を参照するに、表面が親水性とされた(言い換えれば、表面の水の接触角が30度以下とされた)スプレーノズルG1は、塗布不良は無く、かなり良好な結果が得られた。
【0150】
また、表3を参照するに、白ワセリンが塗布されることで表面が疎水性とされたスプレーノズルG3において、表面処理がされていないスプレーノズルG2に近い結果が得られた。
これは、ボールチェーンが、スプレーノズルG3の表面に付着した水滴を塗料噴出面63aから離間させる水滴誘導部材33として機能したためであると考えられる。
【0151】
(試験例4)
試験例4では、試験例3で説明したボールチェーンを有するスプレーノズルGを3つ準備した。
3つのスプレーノズルGのうち、1つのスプレーノズルGの表面(ボールチェーンの表面を含む)に対して、試験例3で説明した親水化処理を行うことで、ボールチェーンの表面も親水性とされたスプレーノズルH1を作製した。
【0152】
残りの2つのスプレーノズルGのうち、一方のスプレーノズルGを構成するボールチェーンの表面のみを、試験例3で説明した親水化処理した。これにより、ボールチェーンの表面のみが親水性とされ、他の表面がなにも表面処理されていないスプレーノズルH2を作製した。
【0153】
そして、残りの1つのスプレーノズルGを構成するボールチェーンの表面のみを、試験例3で説明した親水化処理し、他のスプレーノズルHの表面については、試験例3のスプレーノズルG3と同様な疎水化処理を行うことで、スプレーノズルH3を作製した。つまり、試験例4では、全てのボールチェーンの表面を親水性とした。
【0154】
次いで、試験例1で使用した接触角計を用いて、各スプレーノズルH1〜H3の表面(但し、ボールチェーンの表面は除く)の6ヶ所における水の接触角を測定した。
この結果、スプレーノズルH1の表面(但し、ボールチェーンの表面は除く)における水の接触角は、28度、21度、18度、20度、24度、16度であった。スプレーノズルH1の6ヶ所の水の接触角の範囲は、16度以上28度以下であり、30度以下におさまった。スプレーノズルH1の6ヶ所の水の接触角の平均は、21.1度であった。
【0155】
スプレーノズルH2の表面(但し、ボールチェーンの表面は除く)における6ヶ所の水の接触角は、60度、48度、57度、48度、42度、46度であった。スプレーノズルH2の6ヶ所の水の接触角の範囲は、42度以上60度以下であった。スプレーノズルH2の6ヶ所の水の接触角の平均は、50.0度であった。
【0156】
スプレーノズルH3の表面(但し、ボールチェーンの表面は除く)における6ヶ所の水の接触角は、67度、87度、65度、82度、78度、96度であった。スプレーノズルH3の6ヶ所の水の接触角の範囲は、65度以上96度以下であった。スプレーノズルH3の6ヶ所の水の接触角の平均は、79.2度であった。
上記スプレーノズルH1〜H3の表面における6ヶ所の水の接触角の範囲を、表4に示す。
【0158】
次いで、スプレーノズルH1〜H3を用いて、試験例3と同様な塗布処理及び洗浄処理を行った。その後、塗料が塗布された缶本体18のERVを測定した。
その後、試験例1で説明した判定基準、及びスプレーノズH1〜H3を使用したときのERVに基づいて判定した判定結果、及び塗布不良の缶本体の数を表4に示す。
【0159】
(試験例4の結果について)
表3及び表4を参照するに、スプレーノズルH1を用いた場合、スプレーノズルG1を用いた場合と同じく、塗布不良の缶本体18は無く、非常に良好な結果が得られた。
また、水滴の接触角の範囲が同じ場合、スプレーノズルH2,H3(ボールチェーンの表面が親水性とされたスプレーノズル)の方が、スプレーノズルG2,G3(ボールチェーンの表面が表面処理されていないスプレーノズル)よりも塗布不良の缶本体18の数が少ない結果となった。
【0160】
これは、表面が親水性とされたボールチェーンの方が、表面処理がされていないボールチェーン(言い換えれば、表面が親水性でないボールチェーン)よりも塗料噴出孔38から離間する方向に水滴を移動させる効果が高いためであると考えられる。
表3及び表4に示す結果から、ボールチェーンの表面を親水性にした方が、塗布不良の缶本体18の数を少なくできることが確認できた。
【0161】
(試験例1〜4の水の接触角の範囲について)
表1〜4を参照するに、親水化処理されたスプレーノズルE1,F1,G1,H1の表面における水の接触角の範囲は、12度以上30度以下(つまり、30度以下)であった。
また、表面処理がされていないスプレーノズルE2,F2,G2,H2の表面における水の接触角の範囲は、35度以上60度以下(言い換えれば、30度よりも大きく、かつ60度以下)であった。
また、疏水化処理されたスプレーノズルE3,F3,G3,H3の表面における水の接触角の範囲は、61度以上96度以下(言い換えれば、60度よりも大きく、かつ100度以下)であった。
【0162】
なお、上記試験例1〜4では、スプレーノズルの材質としてSUS303を用いた場合について説明したが、これに替えて、SUS301と、SUS304と、をそれぞれ用いた場合について、同様な実験を行ったところ、上記試験例1〜4と同様な結果が得られた。