【解決手段】 第1方向X1周りに回転する送給ローラ535を含む第1部材53と、第1方向X1周りに回転する押圧ローラ545を含む第2部材54と、第1部材53を保持する保持機構50と、を備え、押圧ローラ545は、送給ローラ535との間にワイヤ891を挟んだ状態で、送給ローラ535を押圧し、保持機構50には、第1方向X1に交差する方向における第1部材53の移動を許容する移動空間50Aが形成されている。
前記保持機構は、ガイド部を含み、前記ガイド部は、前記第1方向に交差する方向への前記第1部材および前記第2部材の移動をガイドする、請求項10に記載のワイヤ供給機構。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の送給装置においては、送給用ローラや加圧ローラはねじやボルトで回転軸に固定する。そのため送給ローラや加圧ローラを交換する作業は、送給装置の作業者にとって非常に面倒なものである。
【0005】
本発明は、上記した事情のもとで考え出されたものであって、ローラの交換をより簡単に行うことのできるワイヤ供給機構を提供することをその主たる課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の側面によると、第1方向周りに回転する送給ローラを含む第1部材と、前記第1方向周りに回転する押圧ローラを含む第2部材と、前記第1部材を保持する保持機構と、を備え、前記押圧ローラは、前記送給ローラとの間にワイヤを挟んだ状態で、前記送給ローラを押圧し、前記保持機構には、前記第1方向に交差する方向における前記第1部材の移動を許容する移動空間が形成されている、ワイヤ供給機構が提供される。
【0007】
好ましくは、前記保持機構は、ガイド部を含み、前記ガイド部は、前記第1方向に交差する方向への前記第1部材の移動をガイドする。
【0008】
好ましくは、前記保持機構は、第1移動規制部および第2移動規制部を含み、前記第1移動規制部は、前記第1部材に当接することにより、前記第1部材が前記第1方向に移動することを規制し、前記第2移動規制部は、前記第1部材に当接することにより、前記第1部材が前記第2方向に移動することを規制する。
【0009】
好ましくは、前記第1部材は、前記送給ローラの第1回転軸を含み、前記第1移動規制部は、前記第1回転軸に当接することにより、前記第1部材が前記第1方向に移動することを規制し、前記第2移動規制部は、前記第1回転軸に当接することにより、前記第1部材が前記第1方向とは反対の第2方向に移動することを規制する。
【0010】
好ましくは、前記ガイド部は、前記第1回転軸の端が嵌る凹部によって構成されている。
【0011】
好ましくは、前記保持機構は、第3移動規制部および第4移動規制部を含み、前記第3移動規制部は、前記第1部材に当接することにより、前記第1部材が第3方向に移動することを規制し、前記第4移動規制部は、前記第1部材に当接することにより、前記第1部材が前記第3方向とは反対の第4方向に移動することを規制し、前記第3方向は、前記第1方向と、前記送給ローラおよび前記押圧ローラの離間方向と、のいずれにも直交する。
【0012】
好ましくは、前記第1部材は、前記送給ローラの第1回転軸を含み、前記第3移動規制部は、前記第1回転軸に当接することにより、前記第1部材が前記第3方向に移動することを規制し、前記第4移動規制部は、前記第1回転軸に当接することにより、前記第1部材が前記第3方向とは反対の第4方向に移動することを規制する。
【0013】
好ましくは、前記押圧ローラに対し、前記押圧ローラから前記送給ローラに向かう力を与える力付与機構を更に備える。
【0014】
好ましくは、前記力付与機構は、前記押圧ローラを前記第1方向周りに回転可能に支持する支持部品を含む。
【0015】
好ましくは、前記移動空間は、前記第1方向に交差する方向における前記第2部材の移動を許容する。
【0016】
好ましくは、前記保持機構は、ガイド部を含み、前記ガイド部は、前記第1方向に交差する方向への前記第1部材および前記第2部材の移動をガイドする。
【0017】
好ましくは、前記保持機構は、追加第1移動規制部および追加第2移動規制部を含み、前記追加第1移動規制部は、前記第2部材に当接することにより、前記第2部材が前記第1方向に移動することを規制し、前記追加第2移動規制部は、前記第2部材に当接することにより、前記第2部材が前記第1方向とは反対の第2方向に移動することを規制する。
【0018】
好ましくは、前記押圧ローラに対し、前記押圧ローラから前記送給ローラに向かう力を与える力付与機構を更に備え、前記力付与機構は、押圧回転体と、前記押圧回転体を前記第1方向周りに回転可能に支持する支持部品を含み、前記押圧回転体は、前記押圧ローラに当接する。
【0019】
好ましくは、前記送給ローラを回転させる駆動機構を更に備える。
【0020】
好ましくは、前記駆動機構は、モータと、前記モータの回転によって回転する駆動回転体と、を含み、前記駆動回転体は、前記送給ローラに当接し、且つ、前記送給ローラに回転を伝達する。
【0021】
好ましくは、前記駆動機構は、前記駆動回転体の駆動回転軸を含み、前記駆動回転軸は、前記保持機構に保持されている。
【0022】
好ましくは、前記送給ローラには、ワイヤをガイドする溝が形成されており、前記駆動回転体は、前記送給ローラのうち前記溝を避けた位置に当接する。
【0023】
好ましくは、前記保持機構は、前記第1部材を支持する支持部を含み、前記支持部および前記第1部材の間に介在する弾性部材を更に備え、前記弾性部材は、前記第1部材に対し、前記送給ローラから前記押圧ローラに向かう方向に弾性力を与える。
【0024】
好ましくは、前記送給ローラが前記押圧ローラから力を受けていない場合、前記送給ローラは前記駆動回転体から離間しており、前記送給ローラが前記押圧ローラから力を受けている場合、前記駆動回転体は前記送給ローラに当接している。
【0025】
好ましくは、前記第1部材は、前記送給ローラの第1回転軸を含み、前記第1回転軸および前記弾性部材の間に介在し、前記第1回転軸を回転自在に保持する第1回転軸用ベアリングを更に備える。
【0026】
本発明の第2の側面によると、本発明の第1の側面によって提供されるワイヤ供給機構と、ワイヤが巻かれたワイヤリールを取り付けるワイヤリールハブと、を備える、送給装置が提供される。
【0027】
本発明の第3の側面によると、本発明の第1の側面によって提供されるワイヤ供給機構と、前記ワイヤ供給機構によって供給されたワイヤを用いてアーク処理を行うロボットと、を備える、アーク処理システムが提供される。
【0028】
本発明のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下に行う詳細な説明によって、より明らかとなろう。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の実施の形態につき、図面を参照して具体的に説明する。
【0031】
<第1実施形態>
図1〜
図9を用いて、本発明の第1実施形態について説明する。
【0032】
図1は、本発明の第1実施形態にかかるアーク処理システムの正面図である。
【0033】
同図に示すアーク処理システムA1は、ロボット1と、送給装置2と、トーチ3と、を備える。
【0034】
ロボット1は母材Wに対してアーク処理を行う。このようなアーク処理としては、たとえば、溶接および溶射が挙げられる。本実施形態では、ロボット1は、母材Wに対して自動でアーク溶接を行う。ロボット1は、たとえば多関節ロボットである。
【0035】
送給装置2は、トーチ3にワイヤ891を送給するためのものである。
図1では、送給装置2を模式的に示している。
【0036】
図2は、本発明の第1実施形態にかかる送給装置の正面図である。
【0037】
送給装置2は、フレーム21と、ワイヤ供給機構23と、ワイヤガイド25と、ワイヤリールハブ27と、を含む。送給装置2はカバーも含んでいることが多いが、理解の便宜上、
図2ではカバーの図示を省略している。
【0038】
フレーム21はたとえば金属よりなる。本実施形態では、フレーム21は底板および側板等を有する。各側板は、底板に立設されている。ワイヤリールハブ27は、フレーム21における側板に固定されている。ワイヤリールハブ27には、ワイヤ891が巻かれたワイヤリール29が取り付けられる。これにより、ワイヤリール29はフレーム21に回転可能に固定される。ワイヤガイド25はフレーム21に固定されている。ワイヤガイド25は送給されているワイヤ891をガイドする。具体的には、ワイヤガイド25にはワイヤ891を挿通させるための穴が形成されている。これにより、ワイヤガイド25は、ワイヤ供給機構23から送給されてきたワイヤ891を、送給装置2の外部に適切に案内する。
【0039】
ワイヤ供給機構23はワイヤ891を母材W(
図1参照)側に供給するためのものである。本実施形態では、ワイヤ供給機構23はワイヤ891をトーチ3に供給する。ワイヤ供給機構23はフレーム21に固定されている。
【0040】
図3は、
図2に示したワイヤ供給機構の部分拡大図である。
図4は、
図3の一部を拡大して示す部分拡大図である。
図5は、
図3のV−V線に沿う断面図である。
図6は、
図5のVI−VI線に沿う断面図である。
【0041】
図2、
図3に示すように、ワイヤ供給機構23は、保持機構50と、支持部材51と、駆動機構52と、第1部材53と、第2部材54と、力付与機構57と、弾性部材58と、第1回転軸用ベアリング591と、駆動回転軸用ベアリング592(
図5参照)と、を含む。
図5、
図6(
図7〜
図9、
図11、
図12も同様)では、第1部材53と、第2部材54の一部と、は、断面を示さず、外から見た状態を示している。
【0042】
支持部材51は、たとえば、金属よりなり、保持機構50と、駆動機構52と、第1部材53と、第2部材54と、力付与機構57と、弾性部材58と、第1回転軸用ベアリング591と、駆動回転軸用ベアリング592と、を支持している。支持部材51は、フレーム21に支持されている。
【0043】
第1部材53は、第2部材54と協働して、ワイヤ891を所望の方向に送り出すための部材である。本実施形態においては、第1部材53は、第1方向X1周りに回転する部材である。第1部材53は、保持機構50に保持されている。
【0044】
図3〜
図6に示すように、第1部材53は、第1回転軸533と、送給ローラ535と、を有する。
【0045】
第1回転軸533は送給ローラ535の回転軸である。第1回転軸533は、第1方向X1に沿って延びている。第1回転軸533は、保持機構50に、回転可能に支持されている。第1回転軸533は、第1方向X1周りに回転する。
【0046】
図5、
図6によく表れているように、第1回転軸533は、第1外周面533Aと、2つの第1端面533Bと、を有する。第1外周面533Aは、第1回転軸533の軸線の径方向側を向いている。2つの第1端面533Bの一方は第1方向X1を向き、本実施形態では、平坦である。2つの第1端面533Bの他方は第1方向X1とは反対の第2方向X2を向き、本実施形態では、平坦である。
【0047】
送給ローラ535は、第1回転軸533に固定されている。そのため、第1回転軸533が第1方向X1に回転することに伴い、送給ローラ535は第1方向X1周りに回転する。送給ローラ535は、押圧ローラ545(後述)とともに、ワイヤ891を送給する機能を果たす。
【0048】
送給ローラ535は送給ローラ周面535aを有する。送給ローラ周面535aは、第1回転軸533の軸線の径方向側を向いている。送給ローラ535には、溝535bが形成されている。溝535bは、送給ローラ周面535aから凹んでいる。溝535bはワイヤ891をガイドするために形成されている。
【0049】
図5、
図6に示すように、本実施形態では、送給ローラ535は、ローラ本体535Aと動力伝達回転体535Bとを含む。ローラ本体535Aは円盤状である。ローラ本体535Aは、上述の送給ローラ周面535aおよび溝535bを構成している。動力伝達回転体535Bは、円盤状であり、ローラ本体535Aの外径よりも小さい外径を有する。動力伝達回転体535Bは、ローラ本体535Aにつながっている。本実施形態では、動力伝達回転体535Bは、ローラ本体535Aと一体となっている。
【0050】
図2〜
図6に示す保持機構50は、第1部材53を保持するためのものである。保持機構50は、たとえば金属よりなる。
図5に示すように、保持機構50には、移動空間50Aが形成されている。移動空間50Aは、第1方向X1に交差する方向における第1部材53の移動を許容する。本実施形態では、第1部材53は、第1方向X1に直交する方向に移動する。より具体的には、第1部材53は、保持機構50内にて、X5−X6方向に移動可能である。本実施形態では、保持機構50の外部から第1部材53が入れられることにより、保持機構50に第1部材53が保持される。保持機構50の内部に入れられた第1部材53は、移動空間50Aを通った後、
図3に示す位置にて保持される。
【0051】
保持機構50は、ガイド部508と、第1移動規制部501と、第2移動規制部502と、第3移動規制部503と、第4移動規制部504と、支持部506と、を含む。
【0052】
ガイド部508は、第1方向X1に交差する方向(本実施形態では第1方向X1に直交する方向)への第1部材53の移動をガイドする。ガイド部508は、第1回転軸533の端が嵌る凹部によって構成されている。当該凹部は、保持機構50の上端から、下方に延びる形状である。本実施形態では、ガイド部508たる凹部の内面に、第1回転軸533における第1外周面533Aおよび第1端面533Bが摺接する。
【0053】
図5、
図6に示す第1移動規制部501は、第1部材53に当接することにより、第1部材53が第1方向X1に移動することを規制する。具体的には、第1移動規制部501は、第1回転軸533(より具体的には、2つの第1端面533Bの一方)に当接することにより、第1部材53が第1方向X1に移動することを規制する。
【0054】
図5、
図6に示す第2移動規制部502は、第1部材53に当接することにより、第1部材53が第1方向X1とは反対の第2方向X2に移動することを規制する。具体的には、第2移動規制部502は、第1回転軸533(より具体的には、2つの第1端面533Bの他方)に当接することにより、第1部材53が第2方向X2に移動することを規制する。
【0055】
図6に示す第3移動規制部503は、第1部材53に当接することにより、第1部材53が第3方向X3に移動することを規制する。具体的には、第3移動規制部503は、第1回転軸533(より具体的には、第1外周面533A)に当接することにより、第1部材53が第3方向X3に移動することを規制する。なお、第3方向X3は、第1方向X1と、送給ローラ535および押圧ローラ545の離間方向と、のいずれにも直交する。
【0056】
図6に示す第4移動規制部504は、第1部材53に当接することにより、第1部材53が第3方向X3とは反対の第4方向X4に移動することを規制する。具体的には、第4移動規制部504は、第1回転軸533(より具体的には、第1外周面533A)に当接することにより、第1部材53が第3方向X3とは反対の第4方向X4に移動することを規制する。
【0057】
本実施形態では、第1移動規制部501と、第2移動規制部502と、第3移動規制部503と、第4移動規制部504と、はいずれも、ガイド部508を構成する凹部の内面によって構成されている。
【0058】
図5等に示す支持部506は、第1部材53を支持する。本実施形態では、支持部506は、以下に述べる弾性部材58を介して、第1部材53を支持する。
【0059】
図5等に示す弾性部材58は、支持部506および第1部材53(具体的には、第1回転軸533)の間に介在する。弾性部材58は、第1部材53に対し、送給ローラ535から押圧ローラ545に向かう方向(方向X5)に弾性力を与える。本実施形態では、弾性部材58はコイルばねである。本実施形態とは異なり弾性部材58は、ゴムブロックであってもよい。
【0060】
図5等に示す第1回転軸用ベアリング591は、第1回転軸533および弾性部材58の間に介在し、第1回転軸533を回転自在に保持する。本実施形態では、第1回転軸用ベアリング591は、たとえばすべり軸受である。本実施形態では、ある第1回転軸用ベアリング591が、第1回転軸533の一端を保持し、他の第1回転軸用ベアリング591が第1回転軸533の他端を保持している。本実施形態とは異なり、第1回転軸533の一端のみが、第1回転軸用ベアリング591に保持されていてもよい。
【0061】
図5等に示す駆動機構52は、送給ローラ535を回転させるためのものである。駆動機構52は、モータ521と、減速機522と、駆動回転軸523と、駆動回転体525と、を含む。
【0062】
モータ521は、支持部材51に固定されている。モータ521の回転は、減速機522によって回転速度が減少させられる。駆動回転軸523は、駆動回転体525の回転軸である。駆動回転軸523は、駆動回転軸用ベアリング592を介して保持機構50に保持されている。駆動回転体525には、モータ521の回転が駆動回転軸523を介して伝達される。駆動回転体525は、駆動回転軸523に固定されている。駆動回転体525は、駆動回転軸523と一体となって回転する。このようにして、駆動回転体525は、モータ521の回転によって回転する。駆動回転体525は、送給ローラ535に当接し、且つ、送給ローラ535に回転を伝達する。
【0063】
本実施形態では、駆動回転体525から送給ローラ535へと、以下のように回転が伝達される。
【0064】
駆動回転体525は、回転体周面525aを有する。回転体周面525aは、すべり止め加工がされた面であり、たとえばウレタンよりなる。回転体周面525aは動力伝達回転体535Bの周面に当接する。このように、駆動回転体525は、送給ローラ535のうち溝535bを避けた位置に当接している。そして、駆動回転体525の回転は、回転体周面525aと、動力伝達回転体535Bの周面を介して、送給ローラ535に伝達され、送給ローラ535が回転する。
【0065】
駆動回転体525が、送給ローラ535のうち溝535bを避けた位置に当接する例は、上述の例に限定されない。本実施形態とは異なり、
図8に示すように、駆動回転体525を、回転体周面525aから凹む形状とすることにより、駆動回転体525が送給ローラ535のうち溝535bを避けた位置に当接していてもよい。または、
図9に示すように、ローラ本体535Aの第1方向X1の端部と第2方向X2の端部に段差を設けることにより、駆動回転体525が送給ローラ535のうち溝535bを避けた位置に当接していてもよい。
【0066】
駆動回転体525から送給ローラ535への回転の伝達は、回転体周面525aをすべり加工することによって行う必要は必ずしもない。たとえば、本実施形態とは異なり、駆動回転体525および動力伝達回転体535Bがいずれもギアであり、これらのギアが互いに噛み合っている構成を採用してもよい。
【0067】
図3〜
図5等に示す第2部材54は、送給ローラ535との間にワイヤ891を挟んだ状態で、ワイヤ891を送給ローラ535に押圧するためのものである。これにより、第2部材54は、ワイヤ891を介して送給ローラ535を押圧する。
【0068】
第2部材54は、第2回転軸543と、押圧ローラ545と、を有する。
【0069】
第2回転軸543は押圧ローラ545の回転軸である。第2回転軸543は、第1方向X1に沿って延びている。押圧ローラ545は、第2回転軸543に回転可能に支持されて、第1方向X1周りに回転する。押圧ローラ545は円盤状である。押圧ローラ545は押圧ローラ周面545aを有する。押圧ローラ周面545aは、第2回転軸543の軸線の径方向側を向いている。押圧ローラ周面545aは、送給ローラ535における送給ローラ周面535aに対向している。押圧ローラ周面545aと送給ローラ535との間にワイヤ891が挟まれた状態で押圧ローラ545および送給ローラ535が回転することにより、ワイヤ891が送給される。
【0070】
押圧ローラ545の回転方向は、送給ローラ535の回転方向とは反対である。押圧ローラ545および送給ローラ535がワイヤ891を挟んだ状態で回転すると、押圧ローラ545および送給ローラ535からワイヤ891に摩擦力が働き、ワイヤ891が送給される。本実施形態では、ワイヤ891は
図3の右方向に送給される。
図3では、ワイヤ891が送給されるワイヤ送給経路P1およびワイヤ891を、2点鎖線で示している。ワイヤ送給経路P1は、送給ローラ535と押圧ローラ545との間から、
図3の右方向に向かっている。
【0071】
図3等に示す力付与機構57は、押圧ローラ545に対し、押圧ローラ545から送給ローラ535に向かう力を与える。力付与機構57は、力付与器571と、支持部品576と、を含む。
【0072】
支持部品576は、支持部材51に回動可能に支持されている。支持部品576は軸579周りに回動する。支持部品576には、第2部材54における第2回転軸543が固定されている。
【0073】
図3に示す力付与器571は、押圧ローラ545を送給ローラ535に押し付けるためのものである。力付与器571は、支持部品576に連結されている。力付与器571は、バネ571Cを有する。力付与器571は、バネ571Cの弾性力によって、支持部品576を介して、押圧ローラ545に対して、送給ローラ535に向かう力を与える。
【0074】
図5に示すように、送給ローラ535が押圧ローラ545から力を受けている場合、駆動回転体525は送給ローラ535に当接している。一方、
図7に示すように、たとえば送給ローラ535の交換時等、送給ローラ535が押圧ローラ545から力を受けていない場合、送給ローラ535は駆動回転体525から離間している。
【0075】
図2に示すように、本実施形態においては、ワイヤ供給機構23は、2つのローラ58Dを更に備えている。ワイヤリール29に巻かれたワイヤ891は、各ローラ58Dにガイドされて、送給ローラ535と押圧ローラ545との間に導かれ、ワイヤガイド25から送給装置2の外部に送り出される。なお、本実施形態とは異なり、ワイヤ供給機構23がローラ58Dを備えていなくてもよい。
【0076】
図1に示したトーチ3は、チューブおよびノズル等を有する。チューブおよびノズル内を挿通させられることにより、送給装置2によって送給させられたワイヤ891が、母材W側に供給される。
【0077】
次に、本実施形態の作用効果について説明する。
【0078】
本実施形態においては、保持機構50には、第1方向X1に交差する方向における第1部材53の移動を許容する移動空間50Aが形成されている。このような構成によると、第1部材53を保持機構50に入れることにより、送給ローラ535を所望の箇所に装填することができる。この作業に、従来の送給装置におけるネジとめ作業は不要である。したがって、本実施形態によると、ローラの交換作業を簡単に行うことが可能となる。
【0079】
本実施形態においては、保持機構50は、ガイド部508を含む。ガイド部508は、第1方向X1に交差する方向への第1部材53の移動をガイドする。このような構成によると、第1部材53を保持機構50に入れた場合、ガイド部508が第1部材53の移動をガイドする。よって、第1部材53を所望の箇所へ適切に移動させることができる。
【0080】
本実施形態においては、保持機構50は、第1移動規制部501および第2移動規制部502を含む。第1移動規制部501は、第1部材53に当接することにより、第1部材53が第1方向X1に移動することを規制する。第2移動規制部502は、第1部材53に当接することにより、第1部材53が第1方向X1とは反対の第2方向X2に移動することを規制する。このような構成によると、送給装置2の使用時に、送給ローラ535が、第1方向X1や第2方向X2に位置ずれすることを防止できる。このことは、送給ローラ535と押圧ローラ545とによって、継続的にワイヤ891を送るのに好適である。
【0081】
本実施形態においては、保持機構50は、第3移動規制部503および第4移動規制部504を含む。第3移動規制部503は、第1部材53に当接することにより、第1部材53が第3方向X3に移動することを規制する。第4移動規制部504は、第1部材53に当接することにより、第1部材53が第3方向X3とは反対の第4方向X4に移動することを規制する。このような構成によると、送給装置2の使用時に、送給ローラ535が、第3方向X3や第4方向X4に位置ずれすることを防止できる。このことは、送給ローラ535と押圧ローラ545とによって、継続的にワイヤ891を送るのに好適である。
【0082】
本実施形態においては、駆動回転体525は、送給ローラ535のうち溝535bを避けた位置に当接する。このような構成によると、溝535bに傷が生成したり、埃が付着したり、摩耗したりすることを防止できる。
【0083】
送給ローラ535の交換時には、支持部品576を軸579周りに反時計方向に回動することにより押圧ローラ545を上方に移動させる。本実施形態においては、支持部506および第1部材53の間に介在する弾性部材58を更に備える。弾性部材58は、第1部材53に対し、送給ローラ535から押圧ローラ545に向かう方向に弾性力を与える。そのため、送給ローラ535が押圧ローラ545から力を受けていない場合、送給ローラ535は駆動回転体525から離間することとなる。よって、押圧ローラ545を上方に移動させた際、駆動回転体525の回転が送給ローラ535に伝達しない。このことにより、送給ローラ535の交換時に、駆動回転体525が誤って回転したとしても、送給ローラ535が回転することを防止できる。
【0084】
<第2実施形態>
図10〜
図12を用いて、本発明の第2実施形態について説明する。
【0085】
なお、以下の説明では、上記と同一または類似の構成については上記と同一の符号を付し、説明を適宜省略する。
【0086】
図10は、本発明の第2実施形態にかかるワイヤ供給機構の正面図である。
図11は、
図10のXI−XI線に沿う断面図である。
図12は、
図11のXII−XII線に沿う断面図である。
【0087】
本実施形態においても、第1実施形態と同様に、ワイヤ供給機構23は、保持機構50と、支持部材51と、駆動機構52と、第1部材53と、第2部材54と、力付与機構57と、弾性部材58と、第1回転軸用ベアリング591と、駆動回転軸用ベアリング592と、を含む。
【0088】
保持機構50と、第2部材54と、力付与機構57と、を除き、本実施形態における、支持部材51と、駆動機構52と、第1部材53と、弾性部材58と、第1回転軸用ベアリング591と、駆動回転軸用ベアリング592と、の各構成は、上記実施形態にて行った説明を適用できるから、本実施形態では説明を省略する。
【0089】
保持機構50は、第1部材53および第2部材54を保持するためのものである。保持機構50は、たとえば金属よりなる。保持機構50には、移動空間50Aが形成されている。移動空間50Aは、第1方向X1に交差する方向における第1部材53および第2部材54の移動を許容する。本実施形態では、第1部材53および第2部材54は、第1方向X1の直交する方向に移動する。より具体的には、第1部材53および第2部材54は、保持機構50内にて、X5−X6方向に移動可能である。
【0090】
本実施形態では、保持機構50の外部から第1部材53および第2部材54が入れられることにより、保持機構50に保持される。まず、第1部材53が保持機構50の内部に入れられると、移動空間50Aを通った後、
図10に示す位置にて保持される。次に、第2部材54が保持機構50の内部に入れられると、移動空間50Aを通った後、
図10に示す位置にて保持される。
【0091】
保持機構50は、ガイド部508と、第1移動規制部501と、第2移動規制部502と、第3移動規制部503と、第4移動規制部504と、支持部506と、に加え、追加第1移動規制部501Aと、追加第2移動規制部502Aと、追加第3移動規制部503Aと、追加第4移動規制部504Aと、を含む。第1移動規制部501と、第2移動規制部502と、第3移動規制部503と、第4移動規制部504と、支持部506と、は第1実施形態で述べたのと同様であるから、説明を省略する。
【0092】
ガイド部508は、第1方向X1に交差する方向への第1部材53および第2部材54の移動をガイドする。ガイド部508は、第1回転軸533の端、および、第2回転軸543の端が嵌る凹部によって構成されている。当該凹部は、保持機構50の上端から、下方に延びる形状である。本実施形態では、ガイド部508たる凹部の内面に、第1回転軸533における第1外周面533Aおよび第1端面533B、および、第2回転軸543における第2外周面543Aおよび第2端面543Bが摺接する。
【0093】
追加第1移動規制部501Aは、第2部材54に当接することにより、第2部材54が第1方向X1に移動することを規制する。具体的には、追加第1移動規制部501Aは、第2回転軸543(より具体的には、2つの第2端面543Bの一方)に当接することにより、第2部材54が第1方向X1に移動することを規制する。
【0094】
追加第2移動規制部502Aは、第2部材54に当接することにより、第2部材54が第1方向X1とは反対の第2方向X2に移動することを規制する。具体的には、追加第2移動規制部502Aは、第2回転軸543(より具体的には、2つの第2端面543Bの他方)に当接することにより、第2部材54が第2方向X2に移動することを規制する。
【0095】
追加第3移動規制部503Aは、第2部材54に当接することにより、第2部材54が第3方向X3に移動することを規制する。具体的には、追加第3移動規制部503Aは、第2回転軸543(より具体的には、第2外周面543A)に当接することにより、第2部材54が第3方向X3に移動することを規制する。
【0096】
追加第4移動規制部504Aは、第2部材54に当接することにより、第2部材54が第3方向X3とは反対の第4方向X4に移動することを規制する。具体的には、追加第4移動規制部504Aは、第2回転軸543(より具体的には、第2外周面543A)に当接することにより、第2部材54が第3方向X3とは反対の第4方向X4に移動することを規制する。
【0097】
本実施形態では、追加第1移動規制部501Aと、追加第2移動規制部502Aと、追加第3移動規制部503Aと、追加第4移動規制部504Aと、はいずれも、ガイド部508を構成する凹部の内面の一部によって構成されている。
【0098】
力付与機構57は、押圧回転体577を含んでいる。押圧回転体577は、支持部品576に回転可能に支持されている。そして、力付与器571によって支持部品576が力を受け、押圧回転体577が、押圧ローラ545に
図10の下方に向かう力を与える。これにより、押圧ローラ545が送給ローラ535を押圧し、押圧ローラ545および送給ローラ535が所望の位置に固定される。
【0099】
次に、本実施形態の作用効果について説明する。
【0100】
本実施形態によると、第1実施形態について述べた作用効果に加え、以下の作用効果を奏する。
【0101】
本実施形態においては、移動空間50Aは、第1方向X1に交差する方向における第2部材54の移動を許容する。このような構成によると、第2部材54を保持機構50に入れることにより、押圧ローラ545を所望の箇所に装填することができる。この作業に、従来の送給装置におけるネジとめ作業は不要である。したがって、本実施形態によると、ローラの交換作業を更に容易に行うことが可能となる。
【0102】
特に、送給ローラ535および押圧ローラ545は、ワイヤ891に接触するため摩耗しやすい。そのため、送給ローラ535および押圧ローラ545の交換作業は、比較的頻繁に行われる。このような摩耗しやすい送給ローラ535および押圧ローラ545の交換を容易に行うことのできる本実施形態の構成は、作業者にとって非常に便利なものである。
【0103】
本実施形態においては、ガイド部508は、第1方向X1に交差する方向への第1部材53および第2部材54の移動をガイドする。このような構成によると、第2部材54を保持機構50に入れた場合、ガイド部508が第2部材54の移動をガイドする。よって、第2部材54を所望の箇所に適切に移動させることができる。
【0104】
本実施形態においては、追加第1移動規制部501Aおよび追加第2移動規制部502Aによって、送給装置2の使用時に、押圧ローラ545が、第1方向X1や第2方向X2に位置ずれすることを防止できる。このことは、送給ローラ535と押圧ローラ545とによって、継続的にワイヤ891を送るのに好適である。
【0105】
本実施形態においては、追加第3移動規制部503Aおよび追加第4移動規制部504Aによって、送給装置2の使用時に、押圧ローラ545が、第3方向X3や第4方向X4に位置ずれすることを防止できる。このことは、送給ローラ535と押圧ローラ545とによって、継続的にワイヤ891を送るのに好適である。
【0106】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではない。本発明の各部の具体的な構成は、種々に設計変更自在である。
【0107】
上述の第1・第2実施形態では、送給ローラ535および押圧ローラ545の間の回転の伝達に、ギアを用いない例を示したが、送給ローラ535および押圧ローラ545の間の回転の伝達にギアを用いる構成を採用してもよい。
【0108】
上述の第1・第2実施形態では、第1部材53が移動する方向(第1方向X1に交差する方向)が第1方向X1に直交する方向である例を示したが、本発明はこれに限定されない。たとえば、第1部材53が移動する方向(第1方向X1に交差する方向)が、第1方向X1と30度や60度の角度をなす方向であってもよい。第2実施形態の第2部材54の移動する方向(第1方向X1に交差する方向)についても同様である。
【0109】
上記の第1・第2実施形態では第1回転軸533および送給ローラ535はいずれも、第1方向X1周りに回転するが、本発明はこれに限定されない。すなわち、送給ローラ535と第1回転軸533との間にベアリングが介在しており、送給ローラ535のみが、第1回転軸533周りに回転してもよい。
【0110】
保持機構50は上述のものに限定されず、たとえば、2本のレールによって構成されていてもよい。