特開2015-131761(P2015-131761A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ AvanStrate株式会社の特許一覧

<>
  • 特開2015131761-ガラス導管及びガラス板の製造方法 図000003
  • 特開2015131761-ガラス導管及びガラス板の製造方法 図000004
  • 特開2015131761-ガラス導管及びガラス板の製造方法 図000005
  • 特開2015131761-ガラス導管及びガラス板の製造方法 図000006
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-131761(P2015-131761A)
(43)【公開日】2015年7月23日
(54)【発明の名称】ガラス導管及びガラス板の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C03B 5/235 20060101AFI20150630BHJP
【FI】
   C03B5/235
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-43246(P2015-43246)
(22)【出願日】2015年3月5日
(62)【分割の表示】特願2012-194732(P2012-194732)の分割
【原出願日】2012年9月5日
(71)【出願人】
【識別番号】598055910
【氏名又は名称】AvanStrate株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000165
【氏名又は名称】グローバル・アイピー東京特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】宇夫方 孝顕
(72)【発明者】
【氏名】苅谷 浩幸
【テーマコード(参考)】
4G014
【Fターム(参考)】
4G014AF00
(57)【要約】
【課題】ガラス板を製造するとき、従来とは異なる方式を用いて、熔融ガラスの通電加熱を効率よく行う。
【解決手段】ガラス板の製造方法は、熔融ガラスを加熱しながら搬送する下記ガラス導管を用いる。ガラス導管は、金属製の管本体と、前記管本体の長手方向の異なる位置に設けられた一対のフランジと、前記管本体に電流を流して加熱するために、前記フランジのそれぞれに接続した電極と、を備える。前記電極から前記フランジに至る電流路は、前記フランジのそれぞれに給電する前に、前記フランジの周上の異なる2箇所に給電するために、分岐した分岐路を備える。前記電極の幅は、前記フランジの外径より大きい。
【選択図】 図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熔融ガラスを加熱しながら搬送するガラス導管であって、
金属製の管本体と、
前記管本体の長手方向の異なる位置に設けられた一対のフランジと、
前記管本体に電流を流して加熱するために、前記フランジのそれぞれに接続した電極と、を備え、
前記電極から前記フランジに至る電流路は、前記フランジのそれぞれに電流が流れるとき、前記フランジの周上の異なる2箇所に給電するために、電流を分岐させる分岐路を備え、
前記電極の幅は、前記フランジの外径より大きい、ことを特徴とするガラス導管。
【請求項2】
前記電極は、前記フランジの外縁に接続された板状電極であり、前記板状電極の幅方向における中心線の延びる方向は、前記管本体の断面の中心点から延びる放射方向である、請求項1に記載のガラス導管。
【請求項3】
前記フランジは、前記管本体の周りを囲むように接続した内環部と、前記内環部の周りを取り囲み、前記電極と接続された外環部とを有し、
前記内環部の厚さが、前記外環部の厚さよりも薄い、請求項1または2に記載のガラス導管。
【請求項4】
前記外環部は、周上に厚肉部と前記厚肉部に比べて厚さの薄い薄肉部とを有し、前記電極と接続される前記フランジの接続部分は、前記薄肉部である、請求項3に記載のガラス導管。
【請求項5】
前記管本体の中心点は、前記フランジの中心点に対して前記電極が前記フランジに延びる方向に向かってオフセットしている、請求項1〜4のいずれか一項に記載のガラス導管。
【請求項6】
ガラス板を製造するガラス板の製造方法であって、
ガラス原料を熔解して熔融ガラスをつくる熔解工程と、
前記熔融ガラスが内部を流れる金属管で構成された清澄槽を通電加熱することにより、前記熔融ガラスを清澄する清澄工程と、
前記清澄後の熔融ガラスを均質化する均質化工程と、
ガラス板を製造するために、均質化した前記熔融ガラスをシート状ガラスに成形する成形工程と、を含み、
前記熔解工程、前記清澄工程、前記均質化工程、及び前記成形工程の間の熔融ガラスの搬送のために、請求項1〜5のいずれか一項に記載のガラス導管を用いる、ことを特徴とするガラス板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熔融ガラスを加熱しながら搬送するガラス導管、及びガラス板を製造するガラス板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイやプラズマディスプレイなどのフラットパネルディスプレイ(以下、「FPD」という。)に用いるガラス基板には、厚さが例えば0.5〜0.7mmと薄いガラス板が用いられている。このFPD用ガラス基板は、例えば第1世代では300×400mmのサイズであるが、第10世代では2850×3050mmのサイズになっている。
【0003】
このような第8世代以降の大きなサイズのFPD用ガラス基板、例えば、TFT(Thin Film Transistor)をガラス表面に形成するガラス基板には、TFTの特性を劣化させないために、アルカリ金属を全く含まないか、含んでも少量であるガラス板が好適に用いられる。また、このようなガラス板は、熱収縮が極めて小さいため、400〜500℃の熱処理を行ってポリシリコンTFTをガラス表面に形成する場合にも好適に用いられる。
【0004】
一方、アルカリ金属を全く含まないか、含んでも少量であるガラス板の製造段階では、熔融ガラスの高温粘性は高い。このため、熔融ガラスの脱泡を行う清澄槽は、上記熔融ガラスの脱泡を効果的に行うために、上記熔融ガラスを、アルカリ金属を含む従来の熔融ガラスに比べて高い温度に昇温する。また、清澄処理では、酸素等を放出して、熔融ガラス内の泡を成長させるための清澄剤が熔融ガラスに含まれているが、昨今の環境負荷の低減の点から、清澄機能は大きいが毒性の高いAs23に替えて、熔融ガラスを1600〜1630℃以上の高温にして脱泡処理を有効に機能させるSnO2等の清澄剤を用いる場合が多い。
【0005】
以上の理由から、清澄槽では熔融ガラスは、1600℃以上の高温に加熱される。このような加熱は、ガラス原料を熔解して熔融ガラスをつくる熔解槽から数100℃の温度上昇を行うために、熔解槽から清澄槽に熔融ガラスを搬送するガラス導管には、金属製のガラス導管を通電加熱して搬送中の熔融ガラスを加熱する電極が設けられる。
また、清澄槽から、清澄槽の後工程である、熔融ガラスを均質化するための攪拌槽に熔融ガラスを搬送するガラス導管にも、熔融ガラスの温度を所望の温度に調整するために、金属製のガラス導管を通電加熱して搬送中の熔融ガラスを加熱する電極が設けられる。
また、攪拌槽から成形装置に熔融ガラスを搬送するガラス導管にも、熔融ガラスの温度を所望の温度に調整するために、金属製のガラス導管を通電加熱して搬送中の熔融ガラスを加熱するために電極が設けられる。
ガラス導管に電極を設ける場合、一般にガラス導管の管本体の周上を取り囲むフランジを介して、電極がガラス導管の管本体に接続される。しかし、電極は、一方向から管本体と接続されるため、管本体を流れる電流は管の周上の一部に局在化し易い。このため、通電加熱も局在化し、ガラス導管の周上の温度が分布を持ち、熔融ガラスの加熱にも影響を与え、熔融ガラスに温度差をつくる。この温度差は、シートガラスを成形工程で成形したとき、シートガラスの厚さの変動によってガラス表面に凸凹をつくり易い。また、温度の低い部分がガラス導管の周上の一部に存在することにより、この部分のガラスは失透し易くなる。
また、熔融ガラスを所望の温度に加熱するには、通電加熱が十分でない部分に電流を流すために、電極及びフランジにも過度な電流が流れ、フランジが必要以上に加熱され、さらに、管の一部分も必要以上に高温に加熱される。
【0006】
このようなガラス導管に関して、電極をガラス導管に接続して、効率よくガラス導管を通電加熱するための電極のガラス導管への接続形態が提案されている。
例えば、通電加熱用の電極の局部過加熱が防止された熔融ガラス用の中空管体(ガラス導管)が知られている(特許文献1)。
当該中空管体は、通電加熱される用途に用いられる白金または白金合金製の中空管を有する中空管体であって、中空管の外周には、リング状の電極が接合されている。このリング状の電極の外縁には、1またはそれ以上の引き出し電極が接合されており、リング状の電極は、白金または白金合金製の電極中心部と、該電極中心部の外側に設けられた白金もしくは白金合金製、または白金以外の金属材料製の厚肉部と、からなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開2006/132044号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述の中空管体のリング状の電極の外縁には、電極中心部の外側に設けられた白金製もしくは白金合金製、または白金以外の金属材料製の厚肉部が設けられ、中空管の周上には従来に比べて均一に電流が流れる。このため、通電加熱用の電極の局部過加熱が防止される。しかし、この中空管では、相対する方向から2つの引き出し電極が中空管に設けられるので、電極の配置が複雑になり、煩雑な装置構成になり易い。
【0009】
本発明は、従来とは異なる方式を用いて、熔融ガラスの通電加熱を効率よく行うことができるガラス導管及びこのガラス導管を用いてガラス板を作製するガラス板の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様は、熔融ガラスを加熱しながら搬送するガラス導管である。当該ガラス導管は、
金属製の管本体と、
前記管本体の長手方向の異なる位置に設けられた一対のフランジと、
前記管本体に電流を流して加熱するために、前記フランジのそれぞれに接続した電極と、を備える。
前記電極から前記フランジに至る電流路は、前記フランジのそれぞれに電流が流れるとき、前記フランジの周上の異なる2箇所に給電するために、電流を分岐させる分岐路を備える。前記電極の幅は、前記フランジの外径より大きい。
【0011】
前記ガラス導管の好ましい一形態では、前記電極は、前記フランジの外縁に接続された板状電極であり、前記板状電極の幅方向における中心線の延びる方向は、前記管本体の断面の中心点から延びる放射方向である。
【0012】
前記ガラス導管の好ましいさらに他の一形態では、前記フランジは、前記管本体の周りを囲むように接続した内環部と、前記内環部の周りを取り囲み、前記電極と接続された外環部とを有し、前記内環部の厚さが、前記外環部の厚さよりも薄い。
このとき、前記外環部は、周上に厚肉部と前記厚肉部に比べて厚さの薄い薄肉部とを有し、前記電極と接続される前記フランジの接続部分は、前記薄肉部である、ことが好ましい。
【0013】
前記ガラス導管の好ましいさらに他の一形態では、前記管本体の中心点は、前記フランジの中心点に対して前記電極が前記フランジに延びる方向に向かってオフセットしている。
【0014】
本発明の他の一態様は、ガラス板を製造するガラス板の製造方法である。当該製造方法は、
ガラス原料を熔解して熔融ガラスをつくる熔解工程と、
前記熔融ガラスが内部を流れる金属管で構成された清澄槽を通電加熱することにより、前記熔融ガラスを清澄する清澄工程と、
前記清澄後の熔融ガラスを均質化する均質化工程と、
ガラス板を製造するために、均質化した前記熔融ガラスをシート状ガラスに成形する成形工程と、を含む。
前記熔解工程、前記清澄工程、前記均質化工程、及び前記成形工程の間の熔融ガラスの搬送のために、前記ガラス導管が用いられる。
【発明の効果】
【0015】
上記態様のガラス導管およびガラス板の製造方法では、搬送中の熔融ガラスの通電加熱を効率よく行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本実施形態のガラス板の製造方法の工程図である。
図2図1に示す熔解工程〜切断工程を行う装置を模式的に示す図である。
図3】(a),(b)は、本実施形態のガラス導管を説明する図である。
図4】(a),(b)は、本実施形態のガラス導管の変形例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本実施形態のガラス導管及びガラス板の製造方法について説明する。
【0018】
(ガラス板の製造方法の全体概要)
図1は、ガラス板の製造方法の工程図である。
ガラス板の製造方法は、熔解工程(ST1)と、清澄工程(ST2)と、均質化工程(ST3)と、供給工程(ST4)と、成形工程(ST5)と、徐冷工程(ST6)と、切断工程(ST7)と、を主に有する。この他に、研削工程、研磨工程、洗浄工程、検査工程、梱包工程等を有し、梱包工程で積層された複数のガラス板は、納入先の業者に搬送される。
【0019】
図2は、熔解工程(ST1)〜切断工程(ST7)を行う装置を模式的に示す図である。当該装置は、図2に示すように、主に熔解装置100と、成形装置200と、切断装置300と、を有する。熔解装置100は、熔解槽101と、清澄槽102と、攪拌槽103と、ガラス導管104,105,106と、を有する。
【0020】
熔解工程(ST1)では、熔解槽101内に供給されたガラス原料を、図示されない火焔および電気ヒータで加熱して熔解することで熔融ガラスを得る。
清澄工程(ST2)は、ガラス導管104、清澄槽102およびガラス導管105において主に行われ、清澄槽102内の熔融ガラスMGを加熱することにより、熔融ガラスMG中に含まれるO2等の気泡が、清澄剤の酸化還元反応により成長し液面に浮上して放出される、あるいは、気泡中のガス成分が熔融ガラス中に吸収されて、気泡が消滅する。
均質化工程(ST3)では、ガラス導管105を通って供給された攪拌槽103内の熔融ガラスMGを、スターラを用いて攪拌することにより、ガラス成分の均質化を行う。
供給工程(ST4)では、ガラス導管106を通して熔融ガラスMGが成形装置200に供給される。
【0021】
成形装置200では、成形工程(ST5)及び徐冷工程(ST6)が行われる。
成形工程(ST5)では、熔融ガラスMGをシート状ガラスGに成形し、シート状ガラスGの流れを作る。本実施形態では、図示されない成形体を用いたオーバーフローダウンドロー法を用いる。徐冷工程(ST6)では、成形されて流れるシートガラスSGが所望の厚さになり、内部歪が生じないように冷却される。
切断工程(ST7)では、切断装置300において、成形装置200から供給されたシートガラスSGを所定の長さに切断することで、板状のガラス板を得る。切断されたガラス板はさらに、所定のサイズに切断され、目標サイズのガラス板が作製される。この後、ガラス端面の研削、研磨、及びガラス主面の洗浄が行われ、さらに、気泡等の異常欠陥の有無が検査された後、検査合格品のガラス板が最終製品として梱包される。
【0022】
(ガラス導管)
図3(a)は、図2に示すガラス導管104をより詳細に説明した断面図である。図3(b)は、図3(a)に示すガラス導管104の左端をX方向から見た電極及ぶフランジの配置を説明する図である。以降で説明するガラス導管104の形態は、ガラス導管105,106においても用いることができる。
【0023】
ガラス導管104は、熔解槽101と清澄槽102との間を結ぶ、白金あるいは白金合金で構成された管を有する。具体的には、ガラス導管104は、白金あるいは白金合金で構成された管本体110と、管本体110の長手方向の異なる位置に設けられた一対の金属製のフランジ112,114と、管本体110に電流を流して加熱するために、フランジ112,114のそれぞれに接続した板状の電極116,118と、を備える。本実施形態では、電極116,118は、フランジ112,114と平行に配置されているが、フランジ112,114に対して傾斜して配置されていても良い。フランジ112,114の材質は、電流を流す導電体であればよく、好ましくは、高温に耐えられる点から、白金あるいは白金合金が好適に用いられる。フランジ112,114は、管本体110と接続された内環部112a,114aと、内環部112a,114aを取り囲み、電極116,118と接続された外環部112b,114bとを有する。内環部112a,114aの厚さは、外環部112b,114bの厚さよりも薄い。外環部112b,114bは、電極116,118と接続されている。
【0024】
このように、電極116,118と接続される外環部112b,114bの厚さを内環部112a,114aより厚くするのは、外環部112b,114bの電気抵抗を内環部112a,114aに比べて小さくするためである。これにより、電極116,118からフランジ112,114に流れる電流が、外環部112b,114bを流れ易くなる。すなわち、本実施形態では、内環部112a,114a及び外環部112b,114bの厚さが同じ場合に比べて、フランジ116,118を挟んで電極116,118と反対側の部分にまで電流が回りこんで流れ易くなる。この結果、本実施形態では、より均一な電流の流れを管本体110の周上で形成することができ、従来のような局部的な通電加熱を解消することができる。
【0025】
電極116,118におけるフランジ112,114に向けて流れる電流の電流路は、フランジ116,118のそれぞれに給電する前に、フランジの周上の異なる2箇所に給電するために、分岐した分岐路116a,116b(118a,118b)を備える。
このような分岐路116a,116b(118a,118b)は、例えば、図3(b)に示すように、電極116,118の一部に切り欠き117,119が形成されることにより、分岐路116a,116b(118a,118b)が形成されていることが好ましい。電極116,118の一部に切り欠き117,119が形成されることで、分岐路116a,116b(118a,118b)が容易に形成され得る。なお、分岐路116a,116b(118a,118b)の形成のために切り欠き117,119が形成されなくてもよい。例えば、切り欠き117,119のように、電極116,118の板厚が完全に0にならなくても、板厚を薄くすることにより、電流を図3(b)に示すように2又に分岐させることができる。
本実施形態では、電極116,118は、管本体110の上方からフランジ112,114に接続されているが、電極116,118の接続は、管本体110の上方からフランジ112,114に接続される形態に限定されず、管本体110の斜め上方から、横方向から、斜め下方向から、あるいは、真下方向から、接続されてもよい。
【0026】
なお、電極116,118の幅方向における中心線CLは、管本体110の断面の中心点Oから延びる放射方向であり、切り欠き117,119は、中心線CL上に形成されていることが、電流を均等に配分して、分岐路116a,116b(118a,118b)に電流を流す点で好ましい。これにより、管本体110の周上に分散して電流が流れ易くなる。
また、板状を成した電極116,118の幅は、管本体110の直径よりも大きいことが、フランジ112の上部(電極の接続位置の側の部分)において、管本体110の外径よりも広い範囲に電流が供給され、管本体110の底部(電極の接続位置の反対側の部分)まで電流が回り込み易くなる点で好ましい。なお、電極116,118の幅は、フランジ112の外径(直径)より大きくてもよい。この場合、フランジ112の外径よりも広い範囲に電流が供給され、管本体110の底部(電極の接続位置の反対側の部分)まで電流がより回り込み易くなる点で好ましい。また、電極116,118の幅は、フランジ112の直径以下であってもよい。この場合、電極116,118の幅がフランジ112の直径よりも大きい場合と比較して、電極における放熱をより少なくすることができる。また、電流の回り込みやすさと放熱性とのバランスを考慮して、電極116,118の幅を管本体110の直径よりも大きく、かつ、フランジ112の直径以下にしてもよい。本実施形態のように、電極116,118の幅W1は、フランジ112,114の直径(W2)と等しいことが、電流を分散させて管本体110に流し、かつ電極116,118における放熱を抑制することができる点で、好ましい。
本実施形態のフランジ112,114は、管本体110と接続された内環部112aと、内環部112aを取り囲み、電極116,118と接続された外環部112b,114bとを有する。内環部112a,114aの厚さは、外環部112b,114bの厚さよりも小さい。本実施形態でのフランジ112,114は、厚さの異なる内環部及び外環部を有するが、フランジ112,114の厚さは均一であってもよい。本実施形態では、電極116,118における電流の電流路が、フランジ116,118のそれぞれに給電する前に、フランジの周上の異なる2箇所に給電するために、分岐した分岐路116a,116b(118a,118b)を少なくとも備えていればよい。
【0027】
(変形例1)
図4(a)は、図3に示す形態と異なる変形例1である。
図4(a)に示す変形例1では、フランジ112,114の中心点に対して、管本体110の中心点が電極116,118の反対側(図4(a)では下方の側)にオフセットしている。図3に示す形態では、フランジ112,114の中心点と、管本体110の中心点は、一致していた。この中心点のオフセットの有無のみが、上記実施形態と本変形例1との差異である。このような中心点のオフセットをすることにより、内環部112a,114aの電極116,118側(図4(a)中の上方側)の長さL1を上記実施形態に対して長くすることができ、内環部112の電極116,118と反対側(図4(a)中の下方側)の長さL2を上記実施形態に対して短くすることができる。内環部112a,114aの厚さは外環部112b,114bよりも薄いので、電気抵抗が比較的高い。このため、内環部112a,114aの電極116,118側の、電流の流れる流路の長さが比較的長い部分は電流が流れ難く、内環部112a,114aの電極116,118と反対側の、電流の流れる流路の長さが比較的短い部分は電流が流れ易い。したがって、図4(a)に示す変形例1の場合、内環部112a,114aの電極116,118と反対側(図4(a)中の下方側)の部分に電流が回り込み易いため、より均一な電流の流れを管本体110の周上で形成することができる。このため、局部的な通電加熱を解消することができる。
【0028】
(変形例2)
図4(b)は、図3に示す形態と異なる変形例2である。
図4(b)に示す変形例2では、フランジ112,114の電極116,118との接続部分である上半分が、薄肉部112b1,114b1になっており、下半分が厚肉部112b2,114b2になっている。すなわち、外環部112b,114bは、周上に厚肉部112b2,114b2と厚肉部112b2,114b2に比べて厚さの薄い薄肉部112b1,114b1とを有し、電極116,118と接続されるフランジ112,114の接続部分は、薄肉部112b1,114b1である。このように、電極116,118と接続されるフランジ112,114の接続部分を、薄肉部112b1,114b1とすることにより、電極116、118と反対側にある厚肉部112b2,114b2に電流を回り込み易くすることができる。したがって、変形例2は、より均一な電流の流れを管本体110の周上で形成することができる。このため、局部的な通電加熱を解消することができる。
【0029】
(ガラス原料、ガラス組成)
本実施形態のガラス板の製造方法では、あらゆるガラス板の製造に適用可能であるが、特に液晶表示装置、有機EL表示装置やプラズマディスプレイ装置などのフラットパネルディスプレイ用のガラス基板、あるいは、表示部を覆うカバーガラスの製造に好適である。
本実施形態のガラス板の製造方法に従ってガラス板を製造するには、所望のガラス組成となるようにガラス原料を調合する。例えば、フラットパネルディスプレイ用のガラス基板を製造する場合は、以下の組成を有するように原料を混合するのが好適である。
【0030】
(a)SiO2:50〜70質量%、
(b)B23:5〜18質量%、
(c)Al23:10〜25質量%、
(d)MgO:0〜10質量%、
(e)CaO:0〜20質量%、
(f)SrO:0〜20質量%、
(o)BaO:0〜10質量%、
(p)RO:5〜20質量%(但し、Rは、Mg、Ca、SrおよびBaから選ばれる少なくとも1種であり、ガラス板に含有される成分)、
(q)R’2O:0.10質量%を超え2.0質量%以下(但し、R’は、Li、Na、およびKから選ばれる少なくとも1種であり、ガラス板に含有されるアルカリ金属成分)、
(r)酸化スズ、酸化鉄、および、酸化セリウムなどから選ばれる少なくとも1種の金属酸化物を合計で0.05〜1.5質量%。
【0031】
なお、(q)R’2Oは必須ではないため、含有させなくてもよい。この場合、R’2Oを実質的に含まない無アルカリガラスとなり、ガラス板からR’2Oが流出してTFTを破壊するおそれを低減することができる。他方、あえて(q)R’2Oを、0.10質量%を超え2.0質量%以下含有させることによって、TFT特性の劣化やガラスの熱膨張を一定範囲内に抑制しつつ、ガラスの塩基性度を高め、価数変動する金属の酸化を容易にして、清澄性を高めることができる。さらに、ガラスの比抵抗を低下させることができるので、熔解槽101にて電気熔融を行うためには好適となる。
【0032】
さらに、近年さらなる高精細化を実現するために、α-Si(アモルファスシリコン)・TFT(Thin Film Transistor)ではなく、p-Si(低温ポリシリコン)・TFTや酸化物半導体を用いたディスプレイが求められている。ここで、p-Si・TFTや酸化物半導体の形成工程では、α-Si・TFTの形成工程よりも高温な熱処理工程が存在する。そのため、p-Si・TFTや酸化物半導体が形成されるガラス板には、熱収縮率が小さいことが求められている。熱収縮率を小さくするためには、ガラスの歪点を高くすることが好ましいが、歪点が高いガラスは、高温時の粘度(高温粘性)が高くなる傾向にある。そのため、ガラス導管において、より熔融ガラスの温度を上昇させる必要がある。しかし、熔融ガラスの温度を上昇させるために電極116,118からフランジ112,114に供給する電力が大きくなる。従来のガラス導管では、電極側に電流が集中することになるので、ガラス導管が破損してしまう虞がある。しかし、本実施形態及び変形例1,2では、ガラス導管104の電極116,118側への電流の集中を緩和できるので、高温粘性が高くなりやすい高歪点ガラスの製造にも好適である。
【0033】
例えば歪点が655℃以上のガラス板の製造には本実施形態及び変形例1,2が好適となる。特に、p-Si・TFTや酸化物半導体にも好適な歪点が675℃以上のガラス板が本実施形態及び変形例1,2に好適であり、歪点680℃以上のガラス板がさらに好適であり、歪点690℃以上のガラス板が特に好適である。
【0034】
歪点が675℃以上のガラス板の組成としては、例えば、ガラス板が質量%表示で、以下の成分を含むものが例示される。
SiO2:52〜78質量%、
Al23:3〜25質量%、
23:3〜15質量%、
RO(但し、ROはMgO、CaO、SrO及びBaOの成分であって、ガラス板に含まれる成分の合量):3〜20質量%、
質量比(SiO2+Al23)/B23は7以上の範囲である、
ことが好ましい。
さらに、歪点をより上昇させるために、質量比(SiO2+Al23)/ROは7.5以上であることが好ましい。さらに、歪点を上昇させるために、β−OH値を0.1〜0.3mm-1とすることが好ましい。他方、溶解時にガラスではなく溶解槽101に電流が流れてしまわないように、R2O(但し、R2OはLi2O、Na2O及びK2Oの成分であって、ガラス板に含まれる成分の合量) 0.01〜0.8質量%としてガラスの比抵抗を低下させることが好ましい。あるいは、ガラスの比抵抗を低下させるために質量比Fe23:0.01〜1質量%とすることが好ましい。さらに、高い歪点を実現しつつ失透温度の上昇を防止するために質量比CaO/ROは0.65以上とすることが好ましい。あるいは、質量比(SiO2+Al23)/B23は7.5〜20の範囲であることが好ましい。失透温度を1250℃以下とすることにより、オーバーフローダウンドロー法の適用が可能となる。また、モバイル機器などに適用されることを考慮すると、軽量化の観点からはSrO及びBaOの合計含有量が0〜2質量%未満であることが好ましい。
【0035】
なお、上記のフラットパネルディスプレイ用のガラス基板は、ヒ素を実質的に含まないことが好ましく、ヒ素およびアンチモンを実質的に含まないことがより好ましい。すなわち、これらの物質を含むとしても、それは不純物としてであり、具体的には、これらの物質は、As23、および、Sb23という酸化物のものも含め、0.1質量%以下であることが好ましい。
【0036】
上述した成分に加え、本実施形態及び変形例1,2で用いるガラスは、ガラスの様々な物理的、熔融、清澄、および、成形の特性を調節するために、様々な他の酸化物を含有しても差し支えない。そのような他の酸化物の例としては、以下に限られないが、SnO2、TiO2、MnO、ZnO、Nb25、MoO3、Ta2O5、WO3、Y23、および、La23が挙げられる。ここで、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイなどのフラットパネルディスプレイ用ガラス基板は、泡に対する要求が特に厳しいので、上記酸化物の中では清澄効果が大きいSnO2を少なくとも含有することが好ましい。
【0037】
以上、本発明のガラス導管およびガラス板の製造方法について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良や変更をしてもよいのはもちろんである。
【符号の説明】
【0038】
100 熔解装置
101 熔解槽
102 清澄槽
103 攪拌槽
104,105,106 ガラス導管
110 管本体
112,114 フランジ
112a,114a 内環部
112b,114b 外環部
112b1,114b1 薄肉部
112b2,114b2 厚肉部
116,118 電極
116a,116b,118a,118b 分岐路
117,119 切り欠き
図1
図2
図3
図4