【実施例】
【0018】
次に、参考例、実施例及び試験例によって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの内容に限定されるものではない。
粉末X線は、Rigaku RINT2200Ultimalllにて測定した。
示差熱分析/熱質量測定(TG/DTA)は、Rigaku Thermo plus EvoTG8120にて測定した。
赤外線吸収スペクトルは、IRAffinity−1(島津製作所)にて測定した。
以下の参考例及び実施例においてカラムクロマトグラフィーを使用して精製した際の「KP−NH」にはBiotage社SNAPCartridge KP−NHを使用した。
【0019】
以下の参考例および実施例において、高速液体クロマトグラフィーマススペクトル(LCMS)は以下の2種類の条件のいずれかにより測定した。
条件1
測定機械:Agilent社 Agilent2900及びAgilent6150
カラム:Waters社 Acquity CSH C18 1.7μm 2.1x50mm
溶媒:A液;0.1%ギ酸含有水、B液;0.1%ギ酸含有アセトニトリル
グラジエント:0分(A液/B液=80/20)、1.2〜1.4分(A液/B液=1/99)
流速:0.8mL/min、検出法:UV 254nm
イオン化法:エレクトロンスプレー法(ESI:Electron Spray Ionization)
条件2
測定機械:Agilent社 Agilent2900及びAgilent6150
カラム:Waters社 Acquity CSH C18 1.7μm 2.1x50mm
溶媒:A液;0.1%ギ酸含有水、B液;0.1%ギ酸含有アセトニトリル
グラジエント:0分(A液/B液=95/5)、1.2分(A液/B液=50/50)、1.38分(A液/B液=3/97)
流速:0.8mL/min(0〜1.2分)、1.0mL/min(1.2〜1.38分)、検出法:UV 254nm
イオン化法:エレクトロンスプレー法(ESI:Electron Spray Ionization)
参考例及び実施例中、以下の用語及び試薬は下記のように表記した。
DMT−MM(4−(4,6−ジメトキシ−1,3,5−トリアジン−2−イル)−4−メチルモルホリニウムクロリド)、DBU(1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン)、DIPEA(N,N−ジイソプロピルエチルアミン)。
参考例及び実施例中、室温とは25℃付近を示し、通常20〜30℃を示す。
【0020】
参考例1 N−エチル−N−[(2S)−1−ヒドロキシプロパン−2−イル]−5−メチル−2−(2H−1,2,3−トリアゾール−2−イル)ベンズアミド
【0021】
【化2】
【0022】
(2S)−2−(エチルアミノ)プロパン−1−オール(22.3g)をDMF(400mL)に加え攪拌した。この混合物に12℃以下を保ちながら、5−メチル−2−(2H−1,2,3−トリアゾール−2−イル)安息香酸(40.0g)を加えた。同温度で、DIPEA(103mL)、DMT−MM(70.8g)を加え1時間攪拌した。その後、室温まで昇温し、4日間撹拌した。反応混合物を体積比で半分程度まで減圧濃縮後、残渣に水(100mL)を加えて1時間撹拌した。析出した固体をろ取後、温風乾燥、さらに減圧下乾燥させた。得られた固体に酢酸エチル(440mL)を加え、室温で一晩撹拌後、ろ過した。ろ液にNH型シリカゲル(富士シリシア化学社製、60g)を加えて室温で1時間撹拌し、懸濁液をろ過後、酢酸エチル(200mL)で洗い流した。ろ液を減圧下濃縮することにより固体を得た。この固体を酢酸エチル−ヘキサン溶液(10:1、80mL)で撹拌洗浄後、濾取、乾燥することにより、無色固体として表題化合物(37.4g)を得た。
LCMS retention time 1.057、1.206 min.(条件2)
MS (ESI pos.) m/z : 289 [M+H]+
【0023】
参考例2 N−[(2S)−1−シアノプロパン−2−イル]−N−エチル−5−メチル−2−(2H−1,2,3−トリアゾール−2−イル)ベンズアミド
【0024】
【化3】
【0025】
参考例1で得られたN−エチル−N−[(2S)−1−ヒドロキシプロパン−2−イル]−5−メチル−2−(2H−1,2,3−トリアゾール−2−イル)ベンズアミド(91.0g)をクロロホルム(550mL)に加え、室温にて攪拌した。この混合物に、30℃以下を保ちながら、塩化チオニル(25.2mL)を滴下した。室温にて1時間撹拌後、反応混合物を減圧下濃縮した。得られた残渣を酢酸エチル(1350mL)に溶解させ、飽和NaHCO
3水溶液(400mL)を加えて塩基性(pH8)にした。分液後、水層を酢酸エチル(400mL)で抽出した。さらに水層を酢酸エチル(300mL)で抽出した。あわせた有機層をブライン(100mL)で洗浄後、MgSO
4を用いて乾燥した。乾燥剤を濾別後、減圧下濃縮した。得られた残渣をDMSO(380mL)に溶解させ、シアン化ナトリウム(12.6g)を加えた。この時、反応混合物は、47℃まで上昇した。反応混合物を室温まで放冷し、一晩撹拌した。反応混合物に水(1140mL)を加えた後、氷冷下2時間撹拌した。析出した固体をろ取し、水(350mL)で洗い流した後、温風乾燥、さらに減圧下乾燥させることにより、薄橙色固体として表題化合物(70.7g)を得た。
LCMS retention time 0.782 min.(条件1)
MS (ESI pos.) m/z : 298 [M+H]+
【0026】
参考例3 N−エチル−N−[(2S)−4−(ヒドロキシアミノ)−4−イミノブタン−2−イル]−5−メチル−2−(2H−1,2,3−トリアゾール−2−イル)ベンズアミド
【0027】
【化4】
【0028】
参考例2で得られたN−[(2S)−1−シアノプロパン−2−イル]−N−エチル−5−メチル−2−(2H−1,2,3−トリアゾール−2−イル)ベンズアミド(58.4g)をエタノール(392mL)に加え、室温にて攪拌した。この混合物に50%ヒドロキシルアミン水溶液(39mL)を加え、80℃に加熱して3時間撹拌した。室温まで放冷後、反応液を水(120mL)に注ぎ、酢酸エチル(240mL)で3回抽出した。あわせた有機層をブライン(120mL)で洗浄後、MgSO
4を用いて乾燥した。乾燥剤をろ別後、減圧下濃縮し、淡黄色非晶質として、表題化合物(73.7g)を得た。
LCMS retention time 0.763 min.(条件1)
MS (ESI pos.) m/z : 331 [M+H]+
【0029】
参考例4 N−エチル−N−{(2S)−1−[5−(5−フルオロピリジン−2−イル)−1,2,4−オキサジアゾール−3−イル]プロパン−2−イル}−5−メチル−2−(2H−1,2,3−トリアゾール−2−イル)ベンズアミド
【0030】
【化5】
【0031】
5−フルオロピリジン−2−カルボン酸(30.4g)をアセトニトリル(485mL)−DMF(55mL)混合液に加え攪拌した。この混合物に、1,1’−カルボニルジイミダゾール(38.5g)を加え、室温にて2時間撹拌した。この混合物に参考例3の方法で得られたN−[(2S)−1−シアノプロパン−2−イル]−N−エチル−5−メチル−2−(2H−1,2,3−トリアゾール−2−イル)ベンズアミド(64.8g)のアセトニトリル(180mL)−DMF(20mL)混合溶液を室温にて滴下した。同温度で1時間半撹拌し後、DBU(29.3mL)を滴下した。この混合物を80℃に加熱して2時間撹拌後、室温にて一晩撹拌した。この混合物を減圧下濃縮後、得られた残渣を酢酸エチル(900mL)に溶解させ、0.5M 塩酸(400mL、300mL)、水(200mL)で順に洗浄し、MgSO
4を用いて乾燥した。乾燥剤をろ別後、溶媒を減圧下留去して、固体として表題化合物(67g)を得た。
LCMS retention time 0.974 min.(条件1)
MS (ESI pos.) m/z : 436 [M+H]+
【0032】
実施例1 N−エチル−N−{(2S)−1−[5−(5−フルオロピリジン−2−イル)−1,2,4−オキサジアゾール−3−イル]プロパン−2−イル}−5−メチル−2−(2H−1,2,3−トリアゾール−2−イル)ベンズアミド(化合物(A))のA形結晶の製造法
【0033】
【化6】
【0034】
参考例4で得られた固体(67g)にエタノール(260mL)を加え、70℃に加熱して1時間撹拌後、室温にて一晩撹拌した。析出した固体をろ取後、得られた固体上から冷やしたエタノール(50mL)を流し、温風乾燥することにより、化合物(A)のA形結晶(55.5g)を得た。
LCMS retention time 0.974 min.(条件1)
MS (ESI pos.) m/z : 436 [M+H]+
【0035】
実施例2
実施例1の方法で得られた化合物(A)のA形結晶の粉末X線回折パターンをリガク製の粉末X線回折装置(Ultima III)を用い、Cu―Kα線をX線源として測定した。2θ=14.9度、20.8度,24.9度及び26.8度付近にピークが認められた。
融点をリガク製の示差熱天秤(Thermo plus EVO TG8120)及び同等の装置を用い、大気下にて、室温から約250℃まで10℃/分の昇温速度で測定した。その結果、138〜143℃に融解に由来する吸熱ピークが認められた。
赤外スペクトルを島津製作所製のフーリエ変換赤外分光光度計(IRAffinity−1)を用い、全反射法(ATR法)にて積算回数20回、分解能:4cm
-1の条件で測定した。1631cm
-1、1623cm
-1、1365cm
-1、1235cm
-1、951cm
-1及び819cm
-1付近にピークが認められた。
【0036】
試験例 (オレキシン拮抗活性の測定)
試験化合物のヒトオレキシン1型受容体(hOX1R)、オレキシン2型受容体(hOX2R)に対する拮抗活性は文献(Toshikatsu Okumura et al., Biochemical and Biophysical Research Communications 280, 976−981, 2001)に記載された方法を改変して行った。hOX1R、hOX2Rを強制発現させたChinese hamster ovary(CHO)細胞を96wellのBlack clear bottomプレート(Nunc)の各ウェルに24,000個となるように播種し、0.1mM MEM非必須アミノ酸、0.5mg/ml G418、10% 牛胎児血清を含むHam’s F−12培地(以上インビトロジェン)で、37℃、5% CO
2の条件下で16時間培養した。培地を除去後、0.5μM Fluo−3AM エステル(同仁)を含むアッセイ用緩衝液(25mM HEPES(同仁)、Hanks’ balanced salt solution(インビトロジェン)、0.1% 牛血清アルブミン、2.5mM プロベネシド、200μg/ml Amaranth(以上Sigma−Aldrich)、pH7.4)を100μL添加し60分間、37℃、5% CO
2にインキュベートした。Fluo−3AM エステルを含むアッセイ用緩衝液を除去したのち、試験化合物は10mMとなるようにジメチルスルホキシドで溶解してアッセイ用緩衝液で希釈後、150μLを添加し、30分間インキュベートした。
リガンドであるヒトオレキシン−Aの2アミノ酸を置換したペプチド(Pyr−Pro−Leu−Pro−Asp−Ala−Cys−Arg−Gln−Lys−Thr−Ala−Ser−Cys−Arg−Leu−Tyr−Glu−Leu−Leu−His−Gly−Ala−Gly−Asn−His−Ala−Ala−Gly−Ile−Leu−Thr−Leu−NH2;ペプチド研究所)はhOX1Rに対しては終濃度500pM、hOX2Rに対しては1nMとなるようにアッセイ用緩衝液で希釈し、このリガンド溶液50μLを添加して反応を開始した。反応はFunctional Drug Screening System(FDSS;浜松ホトニクス社製)を用いて各wellの蛍光値を1秒毎に3分間測定し、最大蛍光値を細胞内Ca
2+濃度の指標として拮抗活性を求めた。試験化合物の拮抗活性は希釈緩衝液のみを添加したウェルの蛍光値を100%、リガンドおよび化合物を含まない緩衝液を添加したウェルの蛍光値を0%として算出し、種々の濃度の試験化合物を添加した際の蛍光値から、50%阻害濃度(IC
50値)を求めた。
本発明の化合物(A)の、ヒトオレキシン1型受容体に対する拮抗活性はIC
50=0.8nM、オレキシン2型受容体に対する拮抗活性はIC
50=9.5nMであった。