特開2015-131801(P2015-131801A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特開2015-131801オキサジアゾール化合物の結晶形及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-131801(P2015-131801A)
(43)【公開日】2015年7月23日
(54)【発明の名称】オキサジアゾール化合物の結晶形及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07D 413/14 20060101AFI20150630BHJP
   A61K 31/4439 20060101ALI20150630BHJP
   A61P 25/20 20060101ALI20150630BHJP
   A61P 25/24 20060101ALI20150630BHJP
   A61P 25/22 20060101ALI20150630BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20150630BHJP
   A61P 25/18 20060101ALI20150630BHJP
   A61P 25/30 20060101ALI20150630BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20150630BHJP
   A61P 25/16 20060101ALI20150630BHJP
   A61P 25/14 20060101ALI20150630BHJP
   A61P 3/04 20060101ALI20150630BHJP
   A61P 25/04 20060101ALI20150630BHJP
   A61P 25/06 20060101ALI20150630BHJP
   A61P 1/00 20060101ALI20150630BHJP
   A61P 25/08 20060101ALI20150630BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20150630BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20150630BHJP
   A61P 5/00 20060101ALI20150630BHJP
   A61P 9/12 20060101ALI20150630BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20150630BHJP
【FI】
   C07D413/14CSP
   A61K31/4439
   A61P25/20
   A61P25/24
   A61P25/22
   A61P25/00
   A61P25/18
   A61P25/30
   A61P25/28
   A61P25/16
   A61P25/14
   A61P3/04
   A61P25/04
   A61P25/06
   A61P1/00
   A61P25/08
   A61P29/00
   A61P37/02
   A61P5/00
   A61P9/12
   A61P43/00 111
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-250482(P2014-250482)
(22)【出願日】2014年12月11日
(31)【優先権主張番号】特願2013-257690(P2013-257690)
(32)【優先日】2013年12月13日
(33)【優先権主張国】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002819
【氏名又は名称】大正製薬株式会社
(72)【発明者】
【氏名】荒木 裕子
(72)【発明者】
【氏名】服部 信隆
【テーマコード(参考)】
4C063
4C086
【Fターム(参考)】
4C063AA03
4C063BB01
4C063CC58
4C063DD12
4C063EE01
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086AA04
4C086BC71
4C086GA01
4C086GA07
4C086GA08
4C086GA09
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZA02
4C086ZA05
4C086ZA06
4C086ZA08
4C086ZA12
4C086ZA16
4C086ZA18
4C086ZA42
4C086ZA66
4C086ZA70
4C086ZB07
4C086ZB11
4C086ZC02
4C086ZC39
(57)【要約】      (修正有)
【課題】オキシレン受容体拮抗作用を示し、一定品質を有する単一の結晶として再現性良く得られる、オキサジアゾール化合物の安定な結晶形及びその製造方法の提供。
【解決手段】N−エチル−N−{(2S)−1−[5−(5−フルオロピリジン−2−イル)−1,2,4−オキサジアゾール−3−イル]プロパン−2−イル}−5−メチル−2−(2H−1,2,3−トリアゾール−2−イル)ベンズアミドを低級アルコール等に溶解後、結晶化、乾燥させた、下記(a)〜(c)の物性の少なくとも1つを有する結晶及びその製造方法。(a)粉末X線回折(Cu−Kα)で、2θ=14.9,20.8,24.9及び26.8度のピーク;(b)融点が138〜143℃;(c)赤外線吸収スペクトルで、特性吸収帯が1631、1623、1365、1235、951及び819cm-1
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(a)〜(c)の物性の少なくとも1つを有する、N−エチル−N−{(2S)−1−[5−(5−フルオロピリジン−2−イル)−1,2,4−オキサジアゾール−3−イル]プロパン−2−イル}−5−メチル−2−(2H−1,2,3−トリアゾール−2−イル)ベンズアミドの結晶。
(a)粉末X線回折(Cu−Kα)において、2θ=14.9度、20.8度,24.9度及び26.8度にピークを有する;
(b)融点が138〜143℃である;又は
(c)赤外線吸収スペクトルにおいて、特性吸収帯が1631cm-1、1623cm-1、1365cm-1、1235cm-1、951cm-1及び819cm-1にある。
【請求項2】
低級アルコール、酢酸エチル、若しくはジC1-4アルキルエーテル又はこれらの混合溶媒にN−エチル−N−{(2S)−1−[5−(5−フルオロピリジン−2−イル)−1,2,4−オキサジアゾール−3−イル]プロパン−2−イル}−5−メチル−2−(2H−1,2,3−トリアゾール−2−イル)ベンズアミドを溶解させた後、結晶化させ、乾燥させることを特徴とする請求項1に記載の結晶の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、N−エチル−N−{(2S)−1−[5−(5−フルオロピリジン−2−イル)−1,2,4−オキサジアゾール−3−イル]プロパン−2−イル}−5−メチル−2−(2H−1,2,3−トリアゾール−2−イル)ベンズアミドの結晶多形及びその製造方法に関する。更に詳しくは、例えば睡眠障害、うつ病、不安障害、パニック障害、統合失調症、薬物依存症、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン舞踏病、摂食障害、頭痛、片頭痛、疼痛、消化器疾患、てんかん、炎症、免疫関連疾患、内分泌関連疾患、高血圧等の疾患など、オレキシン(OX)受容体が関与しているとされる疾患の治療剤及び予防剤として有用性が期待されるオレキシン受容体拮抗薬であるN−エチル−N−{(2S)−1−[5−(5−フルオロピリジン−2−イル)−1,2,4−オキサジアゾール−3−イル]プロパン−2−イル}−5−メチル−2−(2H−1,2,3−トリアゾール−2−イル)ベンズアミドの結晶多形及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
オレキシンは、視床下部外側野に特異的に発現するプレプロオレキシンからスプライシングされる神経ペプチドである。これまでに、33個のアミノ酸からなるOX−Aおよび28個のアミノ酸からなるOX−Bが同定されており、これらはいずれも睡眠・覚醒パターンの調節や摂食の調節に深く関与している。
【0003】
OX−AおよびOX−Bは、いずれもOX受容体に作用する。OX受容体は、これまでにOX1およびOX2受容体の2つのサブタイプがクローニングされており、いずれも主として脳内に発現する7回膜貫通Gタンパク質共役型受容体であることが知られている。OX1受容体は、Gタンパク質サブクラスのうちGqと特異的に共役しており、一方でOX2受容体はGqおよびGi/oに共役している(非特許文献1及び非特許文献2参照)。
OX受容体のサブタイプによって組織分布は異なっており、OX1受容体はノルアドレナリン作動性神経の起始核である青斑核、OX2受容体はヒスタミン神経の起始核である結節乳頭核に高密度に発現している(非特許文献3、非特許文献4及び非特許文献5参照)。セロトニン神経の起始核である縫線核や、ドパミン神経の起始核である腹側被蓋野にはOX1受容体とOX2受容体両方の発現がみられる(非特許文献3参照)。オレキシン神経は脳幹と視床下部のモノアミン神経系に投射し、それらの神経に対して興奮性の影響を与えており、さらにREM睡眠の制御に関わる脳幹のアセチルコリン神経にもOX2受容体の発現がみられ、これらの神経核の活性にも影響を及ぼしている(非特許文献3及び非特許文献4参照)。
【0004】
近年、OX1およびOX2受容体と睡眠・覚醒調節との関連が注目されており、OX受容体拮抗作用を有する化合物の有用性が研究されている。OX−Aをラットの脳室内に投与すると、自発運動量の亢進(非特許文献6及び非特許文献7参照)、常同行動の亢進(非特許文献7参照)、覚醒時間の延長(非特許文献6参照)などが認められる。OX−Aの投与によるREM睡眠時間の短縮作用は、OX受容体拮抗物質の前処置により完全に拮抗される(非特許文献8参照)。さらに、経口投与が可能なOX1およびOX2受容体を同程度に拮抗する物質の投与により、運動量の減少、入眠潜時の短縮、non−REM睡眠量およびREM睡眠の増加が報告されている(非特許文献9および非特許文献10参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Zhu Y et al., J. Pharmacol. Sci., 92, 259-266, 2003.
【非特許文献2】Zeitzer JM et al., Trends Pharmacol. Sci., 27, 368-374, 2006.
【非特許文献3】Marcus JN et al., J. Comp. Neurol, 435, 6-25, 2001.
【非特許文献4】Trivedi JP et al., FEBS Lett, 438, 71-75, 1998.
【非特許文献5】Yamanaka A et al., Biochem. Biophys. Res. Commun., 290, 1237-1245, 2002.
【非特許文献6】Hagan JJ et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 96, 10911-10916, 1999.
【非特許文献7】Nakamura T et al., Brain Res., 873, 181-187, 2000.
【非特許文献8】Smith MI et al., Neurosci. Lett., 341, 256-258, 2003.
【非特許文献9】Brisbare-Roch C et al., Nat. Med., 13, 150-155, 2007.
【非特許文献10】Cox CD et al., J. Med. Chem., 53, 5320-5332, 2010.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、OX受容体拮抗作用を示し、一定の品質を有する単一の結晶として再現性良く得られ、医薬品及び医薬品原料の製造に用いられる原薬の結晶として安定的に供給されることが可能で、保存安定性に優れた物理学的特性を有する新規な化合物の結晶形と製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、N−エチル−N−{(2S)−1−[5−(5−フルオロピリジン−2−イル)−1,2,4−オキサジアゾール−3−イル]プロパン−2−イル}−5−メチル−2−(2H−1,2,3−トリアゾール−2−イル)ベンズアミド(以下、化合物(A)と記すこともある)が、高いOX受容体拮抗作用を示すことを示し、また物理的特性に優れた化合物(A)の結晶を提供することができることを発見し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本願発明の1つの態様は、
(1)下記(a)〜(c)の物性の少なくとも1つを有する、
N−エチル−N−{(2S)−1−[5−(5−フルオロピリジン−2−イル)−1,2,4−オキサジアゾール−3−イル]プロパン−2−イル}−5−メチル−2−(2H−1,2,3−トリアゾール−2−イル)ベンズアミドのA形結晶である。
(a)粉末X線回折(Cu−Kα)において、2θ=14.9度、20.8度,24.9度及び26.8度にピークを有する;
(b)融点が138〜143℃である;又は
(c)赤外線吸収スペクトルにおいて、特性吸収帯が1631cm-1、1623cm-1、1365cm-1、1235cm-1、951cm-1及び819cm-1にある。
また、本願発明の他の態様は、
(2)低級アルコール、酢酸エチル、又はジC1-4アルキルエーテル又はこれらの混合溶媒にN−エチル−N−{(2S)−1−[5−(5−フルオロピリジン−2−イル)−1,2,4−オキサジアゾール−3−イル]プロパン−2−イル}−5−メチル−2−(2H−1,2,3−トリアゾール−2−イル)ベンズアミドを溶解させた後、結晶化させ、乾燥させることを特徴とする(1)に記載の化合物(A)のA形結晶の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
N−エチル−N−{(2S)−1−[5−(5−フルオロピリジン−2−イル)−1,2,4−オキサジアゾール−3−イル]プロパン−2−イル}−5−メチル−2−(2H−1,2,3−トリアゾール−2−イル)ベンズアミドのA形結晶は室温付近の温度で安定な結晶であり、保存安定性に優れている。さらに、粉砕等の製剤操作によっても結晶形の転移を起こさないため、取り扱いやすく、有用な医薬品原料となりうることが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】化合物(A)のA形結晶の粉末X線回折パターンを示す。
図2】化合物(A)のA形結晶の示差熱分析/熱質量測定カーブを示す。
図3】化合物(A)のA形結晶の赤外吸収スペクトル(ATR法)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態を具体的に説明する。
本発明の化合物であるN−エチル−N−{(2S)−1−[5−(5−フルオロピリジン−2−イル)−1,2,4−オキサジアゾール−3−イル]プロパン−2−イル}−5−メチル−2−(2H−1,2,3−トリアゾール−2−イル)ベンズアミド(以下、化合物(A)と記すことがある)は、下記に示す化学構造を有している。
【0012】
【化1】
【0013】
化合物(A)のA形結晶は、次の(a)〜(c)の物性の少なくとも1つを有する。
(a)粉末X線回折(Cu−Kα)において、2θ=14.9度、20.8度,24.9度及び26.8度にピークを有する;
(b)融点が138〜143℃である;又は
(c)赤外線吸収スペクトルにおいて、特性吸収帯が1631cm-1、1623cm-1、1365cm-1、1235cm-1、951cm-1及び819cm-1にある。
化合物(A)のA形結晶の粉末X線回折パターンは図1に、示差熱分析/熱質量測定カーブは図2に、赤外線吸収スペクトルは図3に示した通りである。
図1〜3から分かるように、本発明の製造方法により製造される化合物(A)のA形結晶は、基本的に純度の高い結晶であることが分かる。結晶の純度は高いものが望ましく、好ましくは他の結晶形のものを実質的に含まないものである。
後述の実施例に示されるように、本発明の製造方法により製造される化合物(A)のA形結晶は、一定の品質を有する単一の結晶として再現性良く得られ、医薬品及び医薬品原料の製造に用いられる原薬の結晶として安定的に供給されることが可能で、保存安定性に優れた物理学的特性を有する。
【0014】
次に、化合物(A)のA形結晶の製造方法について説明する。本発明のA形結晶は、以下のような再結晶操作により得られる。たとえば、所定の有機溶媒に化合物(A)を加熱溶解させた後、徐冷することにより結晶を析出させ、析出した結晶をろ過、遠心分離等により溶媒と分離した後に乾燥させることにより化合物(A)のA形結晶を得ることができる。なお、再結晶は、1度のみならず2度以上繰り返してもよいが、通常は1度のみ再結晶を行う。
再結晶前の原料の化合物(A)を溶解させる所定の有機溶媒とは、例えば低級アルコール、酢酸エチル、ジC1-4アルキルエーテル、アセトン、アセトニトリル、THF、DMF、DMSOなどの一般的な有機溶媒又は、これらの有機溶媒の混合溶液が挙げられる。
【0015】
低級アルコールとしては、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2-プロパノールなどが挙げられる。好ましくは、メタノールもしくはエタノールである。
ジC1-4アルキルエーテルとしては、ジエチルエーテル、ジイソピルエーテル、tブチル−メチルエーテルなどが挙げられる。
【0016】
化合物(A)を溶解させる濃度は1〜50質量%、好ましくは5〜50質量%である。ここで質量%とは、溶液中または懸濁液中の化合物(A)のA形結晶の質量パーセントである。
化合物(A)のA形結晶の結晶化は、通常0〜100℃で行う。
化合物(A)のA形結晶の乾燥は、通常100℃以下で行う。
【0017】
本明細書中における「睡眠障害」とは、入眠時、睡眠持続相又は覚醒時の障害であり、例えば、不眠症等を挙げることができる。また、不眠症の分類としては、入眠障害、中途覚醒、早朝覚醒、熟眠障害等を挙げることができる。
本発明の化合物の結晶は、経口又は非経口的に投与することができる。その投与剤型は錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、粉剤、トローチ剤、軟膏剤、クリーム剤、皮膚貼付剤、乳剤、懸濁剤、坐剤、注射剤等であり、いずれも慣用の製剤技術(例えば、第15改正日本薬局方に規定する方法等)によって製造することができる。これらの投与剤型は、患者の症状、年齢、体重、及び治療の目的に応じて適宜選択することができる。
これらの製剤は、本発明の化合物を含有する組成物に薬理学的に許容されるキャリヤー、すなわち、賦形剤(例えば、結晶セルロース、デンプン、乳糖、マンニトール)、結合剤(例えば、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドン)、滑沢剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、タルク)、崩壊剤(例えば、カルボキシメチルセルロースカルシウム)、その他薬理学的に許容される各種添加剤を配合し、製造することができる。
本発明の化合物は、成人患者に対して1回の投与量として0.001〜500mgを1日1回又は数回に分けて経口又は非経口で投与することが可能である。なお、この投与量は治療対象となる疾病の種類、患者の年齢、体重、症状等により適宜増減することができる。
【実施例】
【0018】
次に、参考例、実施例及び試験例によって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの内容に限定されるものではない。
粉末X線は、Rigaku RINT2200Ultimalllにて測定した。
示差熱分析/熱質量測定(TG/DTA)は、Rigaku Thermo plus EvoTG8120にて測定した。
赤外線吸収スペクトルは、IRAffinity−1(島津製作所)にて測定した。
以下の参考例及び実施例においてカラムクロマトグラフィーを使用して精製した際の「KP−NH」にはBiotage社SNAPCartridge KP−NHを使用した。
【0019】
以下の参考例および実施例において、高速液体クロマトグラフィーマススペクトル(LCMS)は以下の2種類の条件のいずれかにより測定した。
条件1
測定機械:Agilent社 Agilent2900及びAgilent6150
カラム:Waters社 Acquity CSH C18 1.7μm 2.1x50mm
溶媒:A液;0.1%ギ酸含有水、B液;0.1%ギ酸含有アセトニトリル
グラジエント:0分(A液/B液=80/20)、1.2〜1.4分(A液/B液=1/99)
流速:0.8mL/min、検出法:UV 254nm
イオン化法:エレクトロンスプレー法(ESI:Electron Spray Ionization)
条件2
測定機械:Agilent社 Agilent2900及びAgilent6150
カラム:Waters社 Acquity CSH C18 1.7μm 2.1x50mm
溶媒:A液;0.1%ギ酸含有水、B液;0.1%ギ酸含有アセトニトリル
グラジエント:0分(A液/B液=95/5)、1.2分(A液/B液=50/50)、1.38分(A液/B液=3/97)
流速:0.8mL/min(0〜1.2分)、1.0mL/min(1.2〜1.38分)、検出法:UV 254nm
イオン化法:エレクトロンスプレー法(ESI:Electron Spray Ionization)
参考例及び実施例中、以下の用語及び試薬は下記のように表記した。
DMT−MM(4−(4,6−ジメトキシ−1,3,5−トリアジン−2−イル)−4−メチルモルホリニウムクロリド)、DBU(1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン)、DIPEA(N,N−ジイソプロピルエチルアミン)。
参考例及び実施例中、室温とは25℃付近を示し、通常20〜30℃を示す。
【0020】
参考例1 N−エチル−N−[(2S)−1−ヒドロキシプロパン−2−イル]−5−メチル−2−(2H−1,2,3−トリアゾール−2−イル)ベンズアミド
【0021】
【化2】
【0022】
(2S)−2−(エチルアミノ)プロパン−1−オール(22.3g)をDMF(400mL)に加え攪拌した。この混合物に12℃以下を保ちながら、5−メチル−2−(2H−1,2,3−トリアゾール−2−イル)安息香酸(40.0g)を加えた。同温度で、DIPEA(103mL)、DMT−MM(70.8g)を加え1時間攪拌した。その後、室温まで昇温し、4日間撹拌した。反応混合物を体積比で半分程度まで減圧濃縮後、残渣に水(100mL)を加えて1時間撹拌した。析出した固体をろ取後、温風乾燥、さらに減圧下乾燥させた。得られた固体に酢酸エチル(440mL)を加え、室温で一晩撹拌後、ろ過した。ろ液にNH型シリカゲル(富士シリシア化学社製、60g)を加えて室温で1時間撹拌し、懸濁液をろ過後、酢酸エチル(200mL)で洗い流した。ろ液を減圧下濃縮することにより固体を得た。この固体を酢酸エチル−ヘキサン溶液(10:1、80mL)で撹拌洗浄後、濾取、乾燥することにより、無色固体として表題化合物(37.4g)を得た。
LCMS retention time 1.057、1.206 min.(条件2)
MS (ESI pos.) m/z : 289 [M+H]+
【0023】
参考例2 N−[(2S)−1−シアノプロパン−2−イル]−N−エチル−5−メチル−2−(2H−1,2,3−トリアゾール−2−イル)ベンズアミド
【0024】
【化3】
【0025】
参考例1で得られたN−エチル−N−[(2S)−1−ヒドロキシプロパン−2−イル]−5−メチル−2−(2H−1,2,3−トリアゾール−2−イル)ベンズアミド(91.0g)をクロロホルム(550mL)に加え、室温にて攪拌した。この混合物に、30℃以下を保ちながら、塩化チオニル(25.2mL)を滴下した。室温にて1時間撹拌後、反応混合物を減圧下濃縮した。得られた残渣を酢酸エチル(1350mL)に溶解させ、飽和NaHCO3水溶液(400mL)を加えて塩基性(pH8)にした。分液後、水層を酢酸エチル(400mL)で抽出した。さらに水層を酢酸エチル(300mL)で抽出した。あわせた有機層をブライン(100mL)で洗浄後、MgSO4を用いて乾燥した。乾燥剤を濾別後、減圧下濃縮した。得られた残渣をDMSO(380mL)に溶解させ、シアン化ナトリウム(12.6g)を加えた。この時、反応混合物は、47℃まで上昇した。反応混合物を室温まで放冷し、一晩撹拌した。反応混合物に水(1140mL)を加えた後、氷冷下2時間撹拌した。析出した固体をろ取し、水(350mL)で洗い流した後、温風乾燥、さらに減圧下乾燥させることにより、薄橙色固体として表題化合物(70.7g)を得た。
LCMS retention time 0.782 min.(条件1)
MS (ESI pos.) m/z : 298 [M+H]+
【0026】
参考例3 N−エチル−N−[(2S)−4−(ヒドロキシアミノ)−4−イミノブタン−2−イル]−5−メチル−2−(2H−1,2,3−トリアゾール−2−イル)ベンズアミド
【0027】
【化4】
【0028】
参考例2で得られたN−[(2S)−1−シアノプロパン−2−イル]−N−エチル−5−メチル−2−(2H−1,2,3−トリアゾール−2−イル)ベンズアミド(58.4g)をエタノール(392mL)に加え、室温にて攪拌した。この混合物に50%ヒドロキシルアミン水溶液(39mL)を加え、80℃に加熱して3時間撹拌した。室温まで放冷後、反応液を水(120mL)に注ぎ、酢酸エチル(240mL)で3回抽出した。あわせた有機層をブライン(120mL)で洗浄後、MgSO4を用いて乾燥した。乾燥剤をろ別後、減圧下濃縮し、淡黄色非晶質として、表題化合物(73.7g)を得た。
LCMS retention time 0.763 min.(条件1)
MS (ESI pos.) m/z : 331 [M+H]+
【0029】
参考例4 N−エチル−N−{(2S)−1−[5−(5−フルオロピリジン−2−イル)−1,2,4−オキサジアゾール−3−イル]プロパン−2−イル}−5−メチル−2−(2H−1,2,3−トリアゾール−2−イル)ベンズアミド
【0030】
【化5】
【0031】
5−フルオロピリジン−2−カルボン酸(30.4g)をアセトニトリル(485mL)−DMF(55mL)混合液に加え攪拌した。この混合物に、1,1’−カルボニルジイミダゾール(38.5g)を加え、室温にて2時間撹拌した。この混合物に参考例3の方法で得られたN−[(2S)−1−シアノプロパン−2−イル]−N−エチル−5−メチル−2−(2H−1,2,3−トリアゾール−2−イル)ベンズアミド(64.8g)のアセトニトリル(180mL)−DMF(20mL)混合溶液を室温にて滴下した。同温度で1時間半撹拌し後、DBU(29.3mL)を滴下した。この混合物を80℃に加熱して2時間撹拌後、室温にて一晩撹拌した。この混合物を減圧下濃縮後、得られた残渣を酢酸エチル(900mL)に溶解させ、0.5M 塩酸(400mL、300mL)、水(200mL)で順に洗浄し、MgSO4を用いて乾燥した。乾燥剤をろ別後、溶媒を減圧下留去して、固体として表題化合物(67g)を得た。
LCMS retention time 0.974 min.(条件1)
MS (ESI pos.) m/z : 436 [M+H]+
【0032】
実施例1 N−エチル−N−{(2S)−1−[5−(5−フルオロピリジン−2−イル)−1,2,4−オキサジアゾール−3−イル]プロパン−2−イル}−5−メチル−2−(2H−1,2,3−トリアゾール−2−イル)ベンズアミド(化合物(A))のA形結晶の製造法
【0033】
【化6】
【0034】
参考例4で得られた固体(67g)にエタノール(260mL)を加え、70℃に加熱して1時間撹拌後、室温にて一晩撹拌した。析出した固体をろ取後、得られた固体上から冷やしたエタノール(50mL)を流し、温風乾燥することにより、化合物(A)のA形結晶(55.5g)を得た。
LCMS retention time 0.974 min.(条件1)
MS (ESI pos.) m/z : 436 [M+H]+
【0035】
実施例2
実施例1の方法で得られた化合物(A)のA形結晶の粉末X線回折パターンをリガク製の粉末X線回折装置(Ultima III)を用い、Cu―Kα線をX線源として測定した。2θ=14.9度、20.8度,24.9度及び26.8度付近にピークが認められた。
融点をリガク製の示差熱天秤(Thermo plus EVO TG8120)及び同等の装置を用い、大気下にて、室温から約250℃まで10℃/分の昇温速度で測定した。その結果、138〜143℃に融解に由来する吸熱ピークが認められた。
赤外スペクトルを島津製作所製のフーリエ変換赤外分光光度計(IRAffinity−1)を用い、全反射法(ATR法)にて積算回数20回、分解能:4cm-1の条件で測定した。1631cm-1、1623cm-1、1365cm-1、1235cm-1、951cm-1及び819cm-1付近にピークが認められた。
【0036】
試験例 (オレキシン拮抗活性の測定)
試験化合物のヒトオレキシン1型受容体(hOX1R)、オレキシン2型受容体(hOX2R)に対する拮抗活性は文献(Toshikatsu Okumura et al., Biochemical and Biophysical Research Communications 280, 976−981, 2001)に記載された方法を改変して行った。hOX1R、hOX2Rを強制発現させたChinese hamster ovary(CHO)細胞を96wellのBlack clear bottomプレート(Nunc)の各ウェルに24,000個となるように播種し、0.1mM MEM非必須アミノ酸、0.5mg/ml G418、10% 牛胎児血清を含むHam’s F−12培地(以上インビトロジェン)で、37℃、5% CO2の条件下で16時間培養した。培地を除去後、0.5μM Fluo−3AM エステル(同仁)を含むアッセイ用緩衝液(25mM HEPES(同仁)、Hanks’ balanced salt solution(インビトロジェン)、0.1% 牛血清アルブミン、2.5mM プロベネシド、200μg/ml Amaranth(以上Sigma−Aldrich)、pH7.4)を100μL添加し60分間、37℃、5% CO2にインキュベートした。Fluo−3AM エステルを含むアッセイ用緩衝液を除去したのち、試験化合物は10mMとなるようにジメチルスルホキシドで溶解してアッセイ用緩衝液で希釈後、150μLを添加し、30分間インキュベートした。
リガンドであるヒトオレキシン−Aの2アミノ酸を置換したペプチド(Pyr−Pro−Leu−Pro−Asp−Ala−Cys−Arg−Gln−Lys−Thr−Ala−Ser−Cys−Arg−Leu−Tyr−Glu−Leu−Leu−His−Gly−Ala−Gly−Asn−His−Ala−Ala−Gly−Ile−Leu−Thr−Leu−NH2;ペプチド研究所)はhOX1Rに対しては終濃度500pM、hOX2Rに対しては1nMとなるようにアッセイ用緩衝液で希釈し、このリガンド溶液50μLを添加して反応を開始した。反応はFunctional Drug Screening System(FDSS;浜松ホトニクス社製)を用いて各wellの蛍光値を1秒毎に3分間測定し、最大蛍光値を細胞内Ca2+濃度の指標として拮抗活性を求めた。試験化合物の拮抗活性は希釈緩衝液のみを添加したウェルの蛍光値を100%、リガンドおよび化合物を含まない緩衝液を添加したウェルの蛍光値を0%として算出し、種々の濃度の試験化合物を添加した際の蛍光値から、50%阻害濃度(IC50値)を求めた。
本発明の化合物(A)の、ヒトオレキシン1型受容体に対する拮抗活性はIC50=0.8nM、オレキシン2型受容体に対する拮抗活性はIC50=9.5nMであった。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明により、N−エチル−N−{(2S)−1−[5−(5−フルオロピリジン−2−イル)−1,2,4−オキサジアゾール−3−イル]プロパン−2−イル}−5−メチル−2−(2H−1,2,3−トリアゾール−2−イル)ベンズアミドは、OX受容体拮抗作用を有することが示された。従って、本発明化合物は、OX受容体拮抗作用によって調節される病気、例えば、睡眠障害、うつ病、不安障害、パニック障害、統合失調症、薬物依存症、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン舞踏病、摂食障害、頭痛、片頭痛、疼痛、消化器疾患、てんかん、炎症、免疫関連疾患、内分泌関連疾患、高血圧等の治療又は予防薬として使用することが可能である。また、本発明により、N−エチル−N−{(2S)−1−[5−(5−フルオロピリジン−2−イル)−1,2,4−オキサジアゾール−3−イル]プロパン−2−イル}−5−メチル−2−(2H−1,2,3−トリアゾール−2−イル)ベンズアミドのA形結晶は、優れた保存安定性、その他の物性を有しており、医薬品原体として有用である。
図1
図2
図3