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特開2015-132099小便器システム及び小便器システムの洗浄方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-132099(P2015-132099A)
(43)【公開日】2015年7月23日
(54)【発明の名称】小便器システム及び小便器システムの洗浄方法
(51)【国際特許分類】
   E03D 13/00 20060101AFI20150630BHJP
【FI】
   E03D13/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-3804(P2014-3804)
(22)【出願日】2014年1月11日
(71)【出願人】
【識別番号】591047970
【氏名又は名称】共立製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101742
【弁理士】
【氏名又は名称】麦島 隆
(72)【発明者】
【氏名】池田 大
【テーマコード(参考)】
2D039
【Fターム(参考)】
2D039AA04
2D039CB01
2D039CB02
2D039DA00
2D039DA01
(57)【要約】
【課題】 簡易な構成で、横引き管内での異物の堆積を防止できる節水型に適した小便器システムを提供する。
【解決手段】小便器10〜12を洗浄する洗浄水として洗浄水供給管20より中水を供給する構成である。中水を供給する洗浄水供給管20と横引き管40とをバイパス管60により直接連結している。そのため、適宜のタイミングで、横引き管40内に直接所定量の中水を流し、それにより、横引き管40内で溜まっている体毛等の異物を流出させることができる。しかも、横引き管40に中水を供給するにはバイパス管60に弁機構61を介在させた構成で済み、中途にタンクを配設する必要がなくなるため、構成が簡易で低コストのシステムとすることができる。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
小便器と、
前記小便器の排水部が接続され、前記小便器を通過した排水が流れる横引き管と
を備えてなる小便器システムであって、
前記小便器に洗浄水として中水を供給する洗浄水供給管と、
前記横引き管と前記洗浄水供給管とを接続するバイパス管と、
前記バイパス管に設けられる弁機構と
を有し、前記弁機構を開弁して前記洗浄水供給管から前記バイパス管を経由して前記横引き管に、前記中水を直接供給可能であることを特徴とする小便器システム。
【請求項2】
前記バイパス管は、前記横引き管のうち、その最も上流側で接続されている前記小便器のさらに上流側に接続されている請求項1記載の小便器システム。
【請求項3】
前記バイパス管に設けられる弁機構よりも下流に、前記横引き管に薬液を供給する薬液供給手段が設けられている請求項1又は2記載の小便器システム。
【請求項4】
前記洗浄水供給管に、前記小便器に薬液を供給する薬液供給手段が設けられている請求項1〜3のいずれか1に記載の小便器システム。
【請求項5】
前記横引き管に、前記横引き管内を流れる前記薬液を含む排水の一部を一時的に滞留可能な排水滞留手段が設けられている請求項3又は4記載の小便器システム。
【請求項6】
前記排水滞留手段は、前記横引き管のうち、その最も下流側で接続されている前記小便器のさらに下流側に配設され、前記横引き管内を流れる排水が通常時に通過する通常時経路と、排水滞留時に通過する滞留時経路とを有している請求項5記載の小便器システム。
【請求項7】
洗浄水供給管から小便器に洗浄水としての中水を供給して洗浄し、前記各小便器を通過した排水を横引き管に排出する中水を利用した小便器システムにおける洗浄方法において、
前記洗浄水供給管を流れる中水を、前記横引き管内の異物を除去するため、所定のタイミングで前記横引き管に直接供給することを特徴とする小便器システムの洗浄方法。
【請求項8】
前記小便器システムが、前記横引き管と前記洗浄水供給管とを接続するバイパス管と、前記バイパス管に設けられる弁機構とを有し、かつ、前記バイパス管が、前記横引き管のうち、その最も上流側で接続されている前記小便器のさらに上流側に接続されており、
前記弁機構を開弁して、前記中水を、前記バイパス管を介して、前記最も上流側で接続された前記小便器のさらに上流側から供給する請求項7記載の小便器システムの洗浄方法。
【請求項9】
薬液を所定のタイミングで前記バイパス管を介して前記横引き管に供給する請求項7又は8記載の小便器システムの洗浄方法。
【請求項10】
薬液を所定のタイミングで前記洗浄水供給管を介して前記小便器に供給する請求項7〜9のいずれか1に記載の小便器システムの洗浄方法。
【請求項11】
前記横引き管内を流れる前記薬液を含む排水の一部を一時的に滞留させる請求項9又は10記載の小便器システムの洗浄方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、小便器システム及び小便器システムの洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
尿中のカルシウム分は、細菌の働きによって水に溶けない成分に変化し、これに腐敗有機物が複雑に混ざり合うことで、小便器排水管系にスケール(尿石)として強固に付着する。特に、ホテル、オフィスビル、百貨店、駅などのように多数の小便器が併設される場所では、各小便器を、床スラブ下に設けた共通の横引き管に連通し、この横引き管を経由させて排水竪管へと排水を導いている。しかるに横引き管の勾配は1/50〜1/100程度であるため、小便器排水管系の中でも、排水竪管に至るまでの横引き管において尿石の付着量が多い。従来、横引き管を初めとする小便器排水管系の洗浄は、高圧洗浄水を供給し、水圧によって、付着した尿石を排水管内壁から剥離させるか、これに加え、あるいはこれに代えて、尿石を溶かす専用の管洗浄用の薬液や殺菌効果の高い薬液(殺菌水)などを供給して洗浄している。
【0003】
しかし、近年、洗浄水の節水化により、各小便器1回あたりの給水量がそれまでの3.5〜5リットルから1〜2リットル程度に減少している。そのため、横引き管内の尿石の付着量の増加のほか、体毛などの異物が流れずに横引き管内に留まってしまうことが多くなっている。
【0004】
この点に鑑み、特許文献1では、小便器より上流側に洗浄水を溜めるタンクを配設すると共に、このタンクの出口管を横引き管に連結し、所定の時刻に、例えば、利用頻度が少ない夜間などに、このタンクから洗浄水を横引き管に放水し、その流れにより異物を流す技術が開示されている。また、必要に応じて、放水後殺菌水を流すことも特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−121276号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1では、洗浄水として水道水(上水)を使用している。上水を供給する給水管は、横引き管と直接連結することは、バルブを介したとしても逆流のおそれがあるため法律で禁止されている。そのため、特許文献1では、両者間にタンクを配置し、上水(洗浄水)をタンクに一旦貯留し、貯留した上水(洗浄水)を横引き管に放水する構成としている。しかし、このようなタンクを設けることは設備が複雑化し、設置費用が嵩む。
【0007】
一方、節水型の場合、洗浄水の量が少ないことから、洗浄水で流しても尿が薄まらず、高濃度のまま横引き管に流れる。小便器と横引き管との間のトラップも、洗浄水量が少ないため、あまり大きな容量とすることはできない。しかも、洗浄水量が少ないため横引き管内に高濃度の尿が滞留しやすい。これらの要因により、節水型の小便器システムは排水管系が詰まりやすいばかりでなく、臭気の点でも改善の余地が大きい。特許文献1は、この点に鑑み、横引き管内に上水を直接流し、その後に殺菌水を直接流すことを提案している。しかし、上記したタンクを設けた上で、このような殺菌水を供給する設備を設けることは構造の複雑化、コストアップにつながる。これに対し、節水型でない従来の小便器システムでは、小便器と横引き管との間のトラップに0.5リットル前後の洗浄水が常に溜まっている。そのため、尿が確実に押し流され、かつ、トラップにおいてしっかり封水され、また、洗浄水と共に小便器に薬液を流せば、洗浄水と共にトラップにおいて薬液が滞留し、所定の殺菌効果が期待できる。
【0008】
本発明は上記に鑑みなされたものであり、横引き管を洗浄するためのタンクを不要とし、簡易な構成とすることができ、望ましくは、小便器に流す洗浄水と共に薬液を供給した場合でも、所定の薬液効果を期待でき、特に節水型として適する小便器システム及び該小便器システムの洗浄方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明の小便器システムは、小便器と、前記小便器の排水部が接続され、前記小便器を通過した排水が流れる横引き管とを備えてなる小便器システムであって、前記小便器に洗浄水として中水を供給する洗浄水供給管と、前記横引き管と前記洗浄水供給管とを接続するバイパス管と、前記バイパス管に設けられる弁機構とを有し、前記弁機構を開弁して前記洗浄水供給管から前記バイパス管を経由して前記横引き管に、前記中水を直接供給可能であることを特徴とする。
【0010】
前記バイパス管は、前記横引き管のうち、その最も上流側で接続されている前記小便器のさらに上流側に接続されていることが好ましい。前記バイパス管に設けられる弁機構よりも下流に、前記横引き管に薬液を供給する薬液供給手段が設けられていることが好ましい。前記洗浄水供給管に、前記小便器に薬液を供給する薬液供給手段が設けられていることが好ましい。前記横引き管に、前記横引き管内を流れる前記薬液を含む排水の一部を一時的に滞留可能な排水滞留手段が設けられていることが好ましい。前記排水滞留手段は、前記横引き管のうち、その最も下流側で接続されている前記小便器のさらに下流側に配設され、前記横引き管内を流れる排水が通常時に通過する通常時経路と、排水滞留時に通過する滞留時経路とを有していることが好ましい。
【0011】
本発明の小便器システムの洗浄方法は、洗浄水供給管から小便器に洗浄水としての中水を供給して洗浄し、前記各小便器を通過した排水を横引き管に排出する中水を利用した小便器システムにおける洗浄排水方法において、前記洗浄水供給管を流れる中水を、前記横引き管内の異物を除去するため、所定のタイミングで前記横引き管に直接供給することを特徴とする。
【0012】
前記小便器システムが、前記横引き管と前記洗浄水供給管とを接続するバイパス管と、前記バイパス管に設けられる弁機構とを有し、かつ、前記バイパス管が、前記横引き管のうち、その最も上流側で接続されている前記小便器のさらに上流側に接続されており、前記弁機構を開弁して、前記中水を、前記バイパス管を介して、前記最も上流側で接続された前記小便器のさらに上流側から供給する構成とすることが好ましい。薬液を所定のタイミングで前記バイパス管を介して前記横引き管に供給することが好ましい。また、薬液を所定のタイミングで前記洗浄水供給管を介して前記小便器に供給する構成とすることもできる。前記横引き管内を流れる前記薬液を含む排水の一部を一時的に滞留させる構成とすることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、小便器を洗浄する洗浄水として中水を供給する構成である。これにより、中水を供給する洗浄水供給管と横引き管とをバイパス管により直接連結して、適宜のタイミングで、横引き管内に直接所定量の中水を流し、それにより、横引き管内で溜まっている体毛等の異物を流出させることができる。しかも、横引き管に中水を供給するにはバイパス管に弁機構を介在させた構成で済み、中途にタンクを配設する必要がなくなるため、構成が簡易で低コストのシステムとすることができる。
【0014】
また、尿石付着防止効果や殺菌効果等の高い薬液を、バイパス管を介して供給する構成とすることが好ましく、その薬液効果により、横引き管内への尿石の付着等を防止できる。従来の小便器システムでは、小便器に薬液を供給していただけであるが、本発明によれば、バイパス管を介して直接横引き管に薬液を供給でき、高い薬液効果が得られる。従って、本発明は、節水型の小便器システムの課題であった早期に横引き管が異物や尿石の付着により詰まったり、あるいは異臭が漂ったりすることを解決するのに適している。もちろん、洗浄水供給管から小便器に薬液を供給する手段を併用してもよい。
また、横引き管内を流れる排水の一部を一時的に滞留可能な排水滞留手段を設けた構成とすることにより、上記のように供給される薬液が含まれる排水を横引き管内で一時的に滞留させることができ、その薬液効果により、横引き管内への尿石付着防止効果や殺菌効果等をさらに高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、本発明の一の実施形態に係る小便器システムの概要を示した模式図である。
図2図2は、小便器のトラップの構造を説明するための図である。
図3図3は、排水滞留手段の例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を用いて、本発明の実施形態を説明する。
図1は、本実施形態に係る小便器システムの概略構成を示した図である。この図に示したように、例えば、本実施形態では、まず、小便器10〜12が壁面に並列に配置されている。小便器10〜12には、洗浄水供給管20がそれぞれに接続されており、フラッシュバルブ10a〜12aの作動によって、洗浄水供給管20を介して各小便器10〜12に洗浄水が供給される。洗浄水供給管20は、中水(排水の再利用水)の供給源に接続され、中水を供給する。
【0017】
各小便器10〜12には、尿石除去効果や殺菌効果等の高い薬液を供給する薬液供給手段が付設されている。本実施形態では、図1に示したように、最も上流側に設置されている小便器12のさらに上流側に位置する洗浄水供給管20に薬液供給手段としての薬液供給装置(以下、「小便器用薬液供給装置」という)30を配設している。小便器用薬液供給装置30は、薬液貯留タンク31、ポンプ32、洗浄水供給管20に連結される薬液供給管33及び洗浄水供給管20内を流れる洗浄水の流量を計測する流量計34を有して構成され、流量計34により計測された洗浄水の流量に応じてポンプ32が動作し、所定量の薬液が薬液貯留タンク31から薬液供給管33を介して洗浄水供給管20に混入される。この小便器用薬液供給装置30は、1台で、全ての小便器10〜12に薬液を供給できるものであり、例えば、日本カルミック株式会社製「サニタイザーMK111」(商品名)を用いることができる。
【0018】
小便器用薬液供給装置30は、上記した構成のものに限らず、例えば、小便器10〜12の設置数に対応して一つずつ設ける構造のもの(例えば、日本カルミック株式会社製「サニタイザーMK7」(商品名))を使用することもできる。
【0019】
各小便器10〜12は、横引き管40及び排水竪管50を有する小便器排水管系に接続される。横引き管40は、床スラブ下に、1/50〜1/100程度の勾配で敷設されており、この横引き管40の先端に排水竪管50が接続されている。
【0020】
具体的には、各小便器10〜12は、その排水管10c〜12cが横引き管40に接続されて配設される。各小便器10〜12の下部の排水口には、図2に示したように、目皿タイプのトラップ10b〜12bが設けられている。これは、いわゆる節水型の小便器10〜12において多く採用される排水トラップであり、各小便器10〜12に放出される洗浄水量が少ないため、通常の管トラップと比較して、トラップ10b〜12bの容量が小さい構造となっている。
【0021】
横引き管40には、本実施形態のように排水滞留手段400を設けることが好ましい。この排水滞留手段400は、横引き管40のうち、その最も下流側で接続されている小便器(図1では符号10の小便器)のさらに下流側に設けられる。排水滞留手段400は、横引き管40内を流れる排水を一時的に滞留する機能を有する。小便器10〜12には、上記のように小便器用薬液供給装置30から尿石付着防止効果や殺菌効果の高い薬液が供給されるが、本実施形態のような節水型の小便器システムではトラップ10b〜12bの容量が小さく、短い滞留時間で排水されてしまい、薬液効果を十分には発揮できない場合がある。
【0022】
そこで、排水滞留手段400によって横引き管40内を流れる薬液を含む排水を一時的に滞留させるようにすれば、薬液の滞留時間が長くなり、薬液効果を高めることができる。排水滞留手段400は、排水を一時的に滞留させることができる限りその構造は限定されるものではない。但し、排水を常時滞留させる構造のものは通常時の速やかな排水を妨げるため好ましくなく、通常時は滞留させずに、所定の時間帯のみ、あるいは、必要なタイミングのみ、一時的に滞留機能を果たす構造である必要がある。
【0023】
図3は、排水滞留手段400の一例を示したものであり、直線状に形成された通常時経路410と、一端420aが通常時経路410の上流側で連絡し、他端420bが通常時経路410における一端420aとの連絡位置よりも下流で連絡する迂回路となっている滞留時経路420とを有している。通常時経路410における、滞留時経路420の一端420a及び他端420bとの各連絡位置の間に切替弁430が設けられている。そして、横引き管40に、滞留時経路420が上側となるように介在配設する。切替弁430を通常時経路410に沿った方向(図3の二点鎖線の向き)に調整すると、排水は、この通常時経路410を通過するが、切替弁430を通常時経路410に直交する方向(図3の実線の向き)ように調整すると、排水は、通常時経路410を通過できずに滞留時経路420に迂回しようとする。従って、排水は、切替弁430で止まって、滞留時経路420に迂回可能な高さになるまで、横引き管40内で滞留することになる。横引き管40内で滞留可能な排水の滞留量は、通常時経路410を中心とした場合に、滞留時経路420をどの程度の角度で配置するかによって変わり、通常時経路410の直上に位置するように調整すると最も滞留量が多くなる。
【0024】
ここで、本実施形態の小便器システムは、洗浄水供給管20と横引き管40とを直接接続するバイパス管60が配設されていることを特徴とする。バイパス管60は、具体的には、洗浄水供給管20のうち、最も上流側で接続されている小便器12のさらに上流側と、横引き管40のうち、その最も上流側で接続されている小便器12のさらに上流側、例えば、横引き管40の上流側端部40aに接続されている。また、バイパス管60には弁機構61が介在配設される。従って、弁機構61を開弁動作させると、中水が、洗浄水供給管20からバイパス管60に流れ、さらに、横引き管40に流れることになる。
【0025】
また、バイパス管60のうち、弁機構61の下流側には、横引き管に薬液を供給する薬液供給手段としての薬液供給装置(以下、「横引き管用薬液供給装置」という)70が設けられる。横引き管用薬液供給装置70は、尿石付着防止効果や殺菌効果等の高い薬液を貯留するタンク71と、タンク71から薬液を吸い上げるポンプ72と、バイパス管60に接続される薬液供給管73とを有している。バイパス管60を介して中水を流す際に、適宜のタイミングで横引き管用薬液供給装置70から薬液が混入され、横引き管40に直接供給される。そのため、高い薬液効果が期待できる。
【0026】
次に、本実施形態の作用を説明する。
通常使用時においては、バイパス管60の弁機構61は閉弁状態にしておく。また、本実施形態のように排水滞留手段400を備えている場合には、排水滞留手段400の切替弁430を通常時経路410に沿った方向となるように調整し、開弁状態としておく。これにより、小便器10〜12が使用され、フラッシュバルブ10a〜12aが開弁状態になると、洗浄水供給管20から洗浄水としての中水が各小便器10〜12に供給される。なお、この中水には、小便器用薬液供給装置30から供給された所定量の薬液が混入している。小便器10〜12を流れた中水は、トラップ10b〜12bから排水管10c〜12cを経由して横引き管40に排水される。横引き管40を流れる排水は排水滞留手段400の通常時経路410を通過し、滞留することなく、排水竪管50に排水される。もちろん、通常使用時におけるこの過程においても、尿石付着防止効果や殺菌効果を有する上記薬液が作用する。
【0027】
所定のタイミングで、例えば、タイマーによって数時間に1回等の設定した時間により、排水滞留手段400の切替弁430を、通常時経路410に直交する方向(図3の実線の向き)に切り替える。これにより、横引き管40内を流れる排水は、滞留時経路420に流れるまでは切替弁430で止まり、横引き管40内に滞留する。横引き管40内を流れる排水には、上記のように尿石付着防止効果や殺菌効果を有する薬液が含まれており、この滞留によって、通常使用時よりも高い薬液効果が得られる。
【0028】
また、所定のタイミングで、例えば、上記と同様にタイマーによって設定された数時間に1回のタイミングで、あるいは、使用者がほとんどいない時間帯(例えば深夜)において、バイパス管60の弁機構61を開弁する。このとき、排水貯留手段400は、通常時経路410を排水が通過可能に切り替えておく。
【0029】
弁機構61を開弁することにより、洗浄水供給管20の中水は、バイパス管60を経由して、上流側端部40aから横引き管40内に直接流れる。上記のように、節水型の小便器システムは、洗浄水量が少ないため、体毛や塵芥などの異物が流れにくく、小便器10〜12の排水管10a〜12aと横引き管40との接続部10d〜12dなどにおいて、それらが引っかかって溜まっていることが多い。しかし、本実施形態によれば、洗浄水供給管20の中水をバイパス管60を介して直接横引き管40内に供給できるため、その中水の流れの勢いにより、引っかかっている体毛などの異物を押し流すことができる。これにより、横引き管40内の詰まりを原因とする排水不良、悪臭などを低減することができる。また、洗浄水供給管20はあくまで洗浄水として中水を供給する構成となっているため、バイパス管60を介して横引き管40に接続しても問題がなく、実用性の点でも優れている。
【0030】
バイパス管60を介して中水を流す際に、適宜のタイミングで横引き管用薬液供給装置70から薬液を供給する。上記のように、バイパス管60を通じて勢いよく中水を流すことで、横引き管40内に留まっている異物を押し流す工程を実施する前又は後に、あるいは、その両方のタイミングにおいて、弁機構61によって流量を調整しながら、バイパス管60に所定量の中水を流す。この際、横引き管用薬液供給装置70から薬液を供給する。それにより、横引き管40内が薬液によって殺菌等される。また、横引き管用薬液供給装置70から薬液を供給するタイミングにおいても、排水滞留手段400を、滞留時経路420側に流れるように切り替えておくことが好ましい。これにより、薬液の滞留時間が長くなり、より高い薬液効果を期待できる。
【符号の説明】
【0031】
10,11,12 小便器
20 洗浄水供給管
30 小便器用薬液供給装置
40 横引き管
400 排水滞留手段
410 通常時経路
420 滞留時経路
430 切替弁
50 排水竪管
60 バイパス管
61 弁機構
70 横引き管用薬液供給装置
図1
図2
図3