【課題】エンドデフレクタのガタつきが抑えられ、かつナットに対するエンドデフレクタの組み付け性が向上するボールねじおよびこれを備えたパワーステアリング装置を提供する。
【解決手段】エンドデフレクタ2と、エンドデフレクタ2を収容する収容部27が形成されたナット21とを有するボールねじ1であって、エンドデフレクタ2は2つ以上の部材に分割され、分割された部材の少なくとも1つと収容部27を形成する壁面との間に、分割された部材を相互に密着させるように弾性部材43が介設されている。弾性部材43は、屈曲部を有する略矩形状の板ばね部材44から構成される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
エンドデフレクタは、ナットに形成された収容部に収容されることによりナットに取り付けられる。このとき、エンドデフレクタと収容部との間や、エンドデフレクタが分割構造の場合において分割部品間にガタつきが存在すると、そのガタつきに起因した異音が生じたり、ボールとのフリクションが大きくなるおそれがある。
エンドデフレクタを収容部に圧入により収容させる構造においてガタつきを抑えるためには、収容部に対してエンドデフレクタをきつめに圧入して収容することが考えられる。しかし、この場合、組み付け時の作業性が悪くなりやすいという問題がある。
【0005】
本発明は、このような課題を解決するために創作されたものであり、エンドデフレクタのガタつきが抑えられ、かつナットに対するエンドデフレクタの組み付け性が向上するボールねじおよびこれを備えたパワーステアリング装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、本発明は、エンドデフレクタと、前記エンドデフレクタを収容する収容部が形成されたナットとを有するボールねじであって、前記エンドデフレクタは2つ以上の部材に分割され、分割された部材の少なくとも1つと前記収容部を形成する壁面との間に、分割された部材を相互に密着させるように弾性部材が介設されていることを特徴とする。
【0007】
このボールねじによれば、弾性部材と収容部の壁面とを接触させることによりエンドデフレクタのガタつきを低減できる。そして、弾性部材と収容部の壁面との間の接触部分を小さくすることで、組み付け時の挿入抵抗を減らし、収容部へのエンドデフレクタの組み付け性を良好にできる。
【0008】
また、本発明は、前記弾性部材は、屈曲部を有する板ばね部材から構成されるとしてもよい。
【0009】
また、本発明は、前記収容部の壁面は、前記ナットの螺旋溝の端部に連なる第2側壁面と、この第2側壁面に対向する第1側壁面とを備え、前記エンドデフレクタは、少なくとも、前記第1側壁面に対向する第1部材と、前記ナットの螺旋溝に臨む通路が形成され、前記第2側壁面に対向する第2部材とに分割され、前記弾性部材は、前記第1部材と前記第1側壁面との間に介設され、前記第2部材を前記第2側壁面に押し付けるとしてもよい。
【0010】
また、本発明は、前記ボールねじと、ステアリングホイールに加えられた運転者の操作力を補助するアシスト用のモータと、を備え、前記モータにより前記ナットを回転させてねじ軸を軸移動させることを特徴とするパワーステアリング装置とした。
【0011】
このパワーステアリング装置によれば、弾性部材と収容部の壁面とを接触させることによりエンドデフレクタのガタつきを低減できる。そして、弾性部材と収容部の壁面との間の接触部分を小さくすることで、組み付け時の挿入抵抗を減らし、収容部へのエンドデフレクタの組み付け性を良好にできる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、エンドデフレクタのガタつきが抑えられ、かつナットに対するエンドデフレクタの組み付け性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】パワーステアリング装置の一例を示す概略構成図である。
【
図2】第1実施形態に係る図面であり、本発明に係るボールねじの外観斜視図であり、エンドデフレクタを組み付ける前の状態を示す。
【
図3】第1実施形態に係る図面であり、本発明に係るボールねじの外観斜視図であり、エンドデフレクタを組み付ける前の状態を示す。
【
図4】第1実施形態に係る図面であり、エンドデフレクタの説明図であり、(a)は第1部材と第2部材とを組み付けた状態の斜視図、(b)は第1部材と第2部材とを組み付ける前の状態の斜視図、(c)は第1部材と第2部材とを組み付けた状態の平面図である。
【
図5】第1実施形態に係る図面であり、ナットの軸方向から見たナットとエンドデフレクタの平面説明図である。
【
図6】第1実施形態に係る図面であり、ナットの収容部にエンドデフレクタを収容する様子を示す側面説明図である。
【
図7】第2実施形態に係る図面であり、板ばね部材の両面にゴム材を付設した構成の弾性部材の斜視図である。
【
図8】第3実施形態に係る図面であり、屈曲部が断面三角形に形成された弾性部材の斜視図である。
【
図9】第4実施形態に係る図面であり、屈曲部が球面状に突設された弾性部材の斜視図である。
【
図10】第5実施形態に係る図面であり、ナットの軸方向から見たナットとエンドデフレクタの平面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明のボールねじ1は、たとえば
図1に示すようにラックアシスト型のパワーステアリング装置50に使用される。一例としてのパワーステアリング装置50は、運転者が操作するステアリングホイール51と、ステアリングホイール51に一体的に連結されるステアリングシャフト52と、ステアリングシャフト52と自在継手53を介して連結される上部連結シャフト54と、上部連結シャフト54と自在継手55を介して連結される下部連結シャフト56と、下部連結シャフト56とトーションバー57を介して連結され、下部にピニオンが形成されたピニオンシャフト58と、ピニオンに噛合するラック歯が形成され、両端にタイロッド60を介して左右の前輪61が連結されるラック軸59と、を備えている。
【0015】
ラック軸59と一方のタイロッド60との間には、ねじ軸62がラック軸59と一体となるように取り付けられており、ボールねじ1がこのねじ軸62に取り付けられている。ボールねじ1のナット21の外周には従動プーリ63が軸着され、アシスト用の電動式のモータ64の出力軸に軸着された駆動プーリ65と従動プーリ63との間に伝達ベルト66が掛け回されている。
【0016】
以上の構成からなるパワーステアリング装置50は、ステアリングホイール51に加えられたトルクが図示しないトルクセンサで検出され、その検出したトルクに応じて図示しない制御装置によりモータ64が駆動制御される。これにより、モータ64の発生トルクは、駆動プーリ65,伝達ベルト66,従動プーリ63からなるベルト伝達機構およびボールねじ1を介して、ラック軸59に、ステアリングホイール51に加えられた運転者の操作力に対する補助力として伝達される。
【0017】
なお、運転者にステアリングホイール操作時の操作感を与える反力アクチュエータと、アシスト用のモータとを電気的に接続したいわゆるステアバイワイヤ方式の電動パワーステアリング装置にも本発明のボールねじ1を使用できる。
【0018】
以下、ボールねじ1について詳細に説明する。
「第1実施形態」
図2において、ボールねじ1は、エンドデフレクタ2と、エンドデフレクタ2を収容する収容部27が形成されたナット21と、外周面に螺旋溝が形成されたねじ軸62とを有する。
【0019】
「ナット21」
ナット21は、ねじ軸62(
図1)の螺旋溝36(
図5)との間でボール41を収容する螺旋溝22を備える。ナット21の端部周りは、ねじ軸62が挿通される開口部の縁周りに形成される環状の内端面23と、内端面23の外縁からナット軸方向(
図5に示す軸O方向)外側に向けて形成される段壁面24と、段壁面24の外端から軸Oの径外方向に形成される環状の外端面25とが形成されていることにより、段差状に形成されている。段壁面24には全周にわたり後記するスナップリング42を係止するための溝26が形成されている。符号35は螺旋溝22の山部を示している。なお、以下の説明において、軸O方向外側とは、ナット21の軸O方向中央部から軸O方向に沿って遠ざかる方向をいい、軸O方向内側とは、ナット21の軸O方向中央に近づく方向をいう。
【0020】
「収容部27」
収容部27は、ナット21の端部に形成されており、ナット21において、外端面25および内端面23から軸O方向内側に切欠き形成された空間からなる。収容部27は、ナット21の内周面から外周面側に向けて形成され互いに対向する第1側壁面28、第2側壁面29と、第1側壁面28におけるナット21の外周面寄り端部と第2側壁面29におけるナット21の外周面寄り端部とにわたって形成される底壁面30と、第1側壁面28、第2側壁面29、底壁面30の各軸O方向内側寄りの端部にかけて形成される突当て面31とによって画成されている。
【0021】
第1側壁面28、第2側壁面29、底壁面30は軸O方向に沿って形成され、突当て面31は軸O方向と直交する面に沿って形成されている。第1側壁面28、第2側壁面29は互いに対向しているが、互いに平行である必要はない。本実施形態では、第1側壁面28は軸Oの径外方向に対して傾斜して形成され、第2側壁面29はそれよりもさらに軸Oの径外方向に対して傾斜するように形成されている。これにより、第2側壁面29の幅寸法L2の方が第1側壁面28の幅寸法L1よりも大きくなっている。第2側壁面29は螺旋溝22の端部22aに滑らかに連なるように形成されている。突当て面31には循環路32の開口部33が臨む。循環路32はナット21において軸O方向に沿って形成され、ナット21の反対側の端部にも開口部33が形成されている。また、第1側壁面28における内端面23との角部には、軸O方向に対して傾斜するガイド傾斜面34(
図6)が形成されている。
【0022】
「エンドデフレクタ2」
エンドデフレクタ2は、ボール41(
図5)の螺旋溝22での螺旋移動と循環路32での軸O方向移動とを整流させる機能、すなわち螺旋溝22の端部と循環路32の開口部33との間でボール41を行き来させる機能を有する部材である。
【0023】
図4において、エンドデフレクタ2の内部にはボール41を通す通路18が形成されており、主にこの通路の成型性の点からエンドデフレクタ2は少なくとも2つに分割された部材により構成されている。本実施形態では、エンドデフレクタ2を第1部材3および第2部材4の2つの部材から構成している。エンドデフレクタ2の材質は特に限定されず、金属材料や合成樹脂材料等である。エンドデフレクタ2をたとえば亜鉛材料から構成した場合、ダイキャスト法により部品を形成できる。第1部材3は、収容部27に収容された際に第1側壁面28に対向する部材であり、ねじ軸62の螺旋溝内に位置するガイド突部5が形成された部材である。「第1側壁面28に対向する」とは、第1部材3が、収容部27への収容時に第1側壁面28と向かい合う面(後記する第1側面6)を有することを意味する。第2部材4は、収容部27に収容された際に第2側壁面29に対向する部材である。「第2側壁面29に対向する」とは、第2部材4が、収容部27への収容時に第2側壁面29と向かい合う面(後記する第2側面12)を有することを意味する。
【0024】
第1部材3は、軸O方向に概ね沿う外郭面として、第1側壁面28に対向する第1側面6と、ねじ軸62に対向する内面7と、第2部材4と接面される面である分割面8とを有しており、軸O方向から見て概ね略三角形状を呈している。第1部材3の軸O方向内側寄りの端面は突当て面31に突き当たる底面9として構成され、第1部材3の軸O方向外側寄りの端面はスナップリング42により押さえられる上面10として構成される。内面7の一部は径内方向に膨出して前記ガイド突部5が形成されている。第1部材3の分割面8には、第2部材4と組み付けられることでボール41の通路18をなす第1半通路11が形成されている。第1半通路11は、ねじ軸62の螺旋溝36に臨む通路である。
【0025】
第2部材4は、軸O方向に概ね沿う外郭面として、第2側壁面29に対向する第2側面12と、底壁面30に対向する外面13と、第1部材3と接面される面である分割面14とを有しており、軸O方向から見て概ね略三角形状を呈している。第2部材4の軸O方向内側寄りの端面は突当て面31に突き当たる底面15として構成され、第2部材4の軸O方向外側寄りの端面はスナップリング42により押さえられる上面16として構成される。第2部材4の分割面14には、第1部材3と組み付けられることでボール41の通路18をなす第2半通路17が形成されている。第2半通路17は、ナット21の螺旋溝22に臨む通路である。ナット21の螺旋溝22がゴシックアーク形状の場合には、第2半通路17の面もゴシックアーク形状にすることで、螺旋溝22と通路18との間でボール41をスムーズに移動させることができる。
【0026】
第2部材4の分割面14には係合突起部19が形成されているとともに、第1部材3の分割面8には係合凹部20が形成されている。第1部材3と第2部材4とは、係合突起部19が係合凹部20にたとえばスナップ係合することで分割面8,14同士が接面し、両者が一体となってエンドデフレクタ2を構成する。上面10,16同士は面一状に連なり、底面9,15同士も面一状に連なる。そして、エンドデフレクタ2の内部には、第1半通路11と第2半通路17とが合わさることで、ナット21の螺旋溝22およびねじ軸62の螺旋溝と連通する第1通路18Aと、この第1通路18Aから滑らかに略90度方向転換して軸O方向に沿って形成され循環路32の開口部33に連通する第2通路18Bと、からなる通路18が形成される。なお、第1部材3と第2部材4とを一体化させる構造は係合突起部19,係合凹部20の係合方法に特に限定されるものではない。また、第1部材3と第2部材4とを一体化させる構造はなくてもよい。また、分割面8,14としては軸O方向に対して傾斜した面であってもよい。
【0027】
「弾性部材43」
以上のエンドデフレクタ2において、分割された部材(第1部材3,第2部材4)の少なくとも1つと収容部27を形成する壁面との間に、分割された部材(第1部材3,第2部材4)を相互に密着させるように、
図2、
図4に示す弾性部材43が弾性変形した状態で介設される。本実施形態では、弾性部材43は、第1部材3の第1側面6と収容部27の第1側壁面28との間に介設される。
【0028】
弾性部材43は、たとえば屈曲部45を有する板ばね部材44から構成される。板ばね部材44の材質は、金属材料、合成樹脂材料等である。板ばね部材44が金属材料である場合、屈曲部45はプレス加工により容易に形成できる。本実施形態の板ばね部材44は、エンドデフレクタ2の軸O方向寸法と略同じ寸法の一辺44Aと、この一辺44Aと隣接する他辺44Bとを有した略矩形状の板材から構成されている。屈曲部45は、他辺44B中央において一辺44A方向に沿って延びるように形成されている。屈曲部45は断面円弧状を呈するように板ばね部材44の一面側に向けて突設形成される。板ばね部材44の他辺方向両端には平板部46,46が形成されている。
【0029】
「作用」
先ず、係合突起部19を係合凹部20に係合させて第1部材3と第2部材4とを一体化し単体のエンドデフレクタ2とする。このエンドデフレクタ2と板ばね部材44とを
図6に示すようにナット21の収容部27に軸O方向に沿って挿入する。板ばね部材44は、屈曲部45が収容部27の第1側壁面28に当接し、平板部46,46がエンドデフレクタ2の第1側面6に当接する状態として挿入される。挿入初期では、屈曲部45がガイド傾斜面34にガイドされることでエンドデフレクタ2および板ばね部材44はスムーズに収容部27に挿入される。
【0030】
挿入過程で、板ばね部材44の屈曲部45は、エンドデフレクタ2の第1部材3と第2部材4とを相互に密着させるように弾性変形する。エンドデフレクタ2の第1側面6は第1側壁面28に接触することなく、屈曲部45の先端のみが第1側壁面28に線接触にて接触するため、挿入抵抗が小さくなって組み付け作業が容易となる。底面9,15が突当て面31に突き当たり挿入作業が完了した状態において、エンドデフレクタ2の通路8は螺旋溝22と循環路32の開口部33とを連通する。エンドデフレクタ2の外面13は収容部27の底壁面30に接面する。上面10,16はナット21の内端面23と面一状に位置する。そして、スナップリング42を溝26に嵌め込み上面10,16を抑えることでエンドデフレクタ2の軸O方向の抜け止めとする。その後、ナット21にねじ軸62を通す。なお、第1部材3のガイド突部5はねじ軸62の螺旋溝に位置するため、ねじ軸62の螺旋溝の山部と干渉しないようにナット21を回しながらねじ軸62を通す。
【0031】
収容部27に収容されたエンドデフレクタ2は、板ばね部材44を通して第1側壁面28から反力を受け、当該反力は分割面8,14同士を密着させるとともに、第2側面12を第2側壁面29に押し付けるように作用する。これにより、エンドデフレクタ2は、ナット21の収容部27にガタつきなく位置決め収容される。第1側面6、第2側面12をそれぞれ第1側壁面28、第2側壁面29に接面させる圧入方式とした場合には、エンドデフレクタ2および収容部27の製作誤差によりガタつきが生じるおそれがあるが、板ばね部材44を利用することで前記製作誤差を吸収してガタつきを抑えることができる。
【0032】
板ばね部材44は、エンドデフレクタ2の軸O方向寸法と略同じ寸法の一辺44Aを有した略矩形状の板材から構成され、屈曲部45が他辺44B中央において一辺44A方向に沿うように形成されているので、屈曲部45の弾性変形力をエンドデフレクタ2に対して軸O方向に均一に作用させることができる。
【0033】
ここで、組み付け方法としては、ナット21にねじ軸62を通した後にエンドデフレクタ2および板ばね部材44を取り付けることも可能である。この場合、板ばね部材44はガイド凸部5が形成されていない第2部材4の第2側面12と収容部27の第2側壁面29との間に介設する。また、第1部材3と第2部材4との一体化手段は、無しとするか、或いは軸O方向にスライド係合可能な凸部および凹部(たとえば特許文献1に記載の定位部および定位凹み等)を第1部材3、第2部材4のそれぞれどちらかに設ける構造とする。組み付け方法は、先ずねじ軸62が通された状態のナット21の収容部27に対し、第1部材3をそのガイド突部5がねじ軸62と干渉しないように差し入れる。そして、第1部材3を内向きにずらしてガイド突部5がねじ軸62の螺旋溝内に突出するように位置修正する。次いで第2部材4および板ばね部材44を残りスペースの収容部27に軸O方向に沿って挿入させる。挿入過程において、第2部材4の第2側面12は第2側壁面29に接触することなく、屈曲部45の先端のみが第2側壁面29に線接触にて接触するため、挿入抵抗が小さくなって組み付け作業が容易となる。次いで、スナップリング42等を用いてエンドデフレクタ2(第1部材3および第2部材4)の軸O方向の抜け止めとする。
【0034】
以上のように、エンドデフレクタ2の分割された部材(第1部材3、第2部材4)の少なくとも1つと収容部27を形成する壁面との間に、分割された部材(第1部材3,第2部材4)を相互に密着させる弾性部材43を介設すれば、収容部27に対するエンドデフレクタ2のガタつきを低減でき、組み付け性も良好となる。
また、弾性部材43を、屈曲部45を有する板ばね部材44から構成することで、弾性部材43の形状の簡素化と組み付け性の向上を図ることができる。
【0035】
また、本実施形態のように、収容部27の壁面は、ナット21の螺旋溝22の端部22aに連なる第2側壁面29と、この第2側壁面29に対向する第1側壁面28とを備え、エンドデフレクタ2は、少なくとも、第1側壁面28に対向する第1部材3と、ナット21の螺旋溝22に臨む通路(第2半通路17)が形成され、第2側壁面29に対向する第2部材4とに分割され、弾性部材43は、第1部材3と第1側壁面28との間に介設されて、第2部材4を第2側壁面29に押し付ける構成とすれば、次のような効果が奏される。
【0036】
ボール41には遠心力が作用してねじ軸62の螺旋溝36よりもナット21の螺旋溝22の方に力がかかるため、収容部27に対する第1部材3および第2部材4の位置決めにおいては、ナット21の螺旋溝22に臨む通路(第2半通路17)が形成された第2部材4の位置決めが特に重要となる。したがって、弾性部材43が、第1部材3と第1側壁面28との間に介設されて、第2部材4の第2側面12を第2側壁面29に押し付ける構成とすることにより、第2部材の振れを効果的に抑制できる。これにより、エンドデフレクタ2と螺旋溝22,36との間でボール41をスムーズに移動させることができる。
【0037】
「第2実施形態」
図7は、弾性部材43を、第1実施形態の板ばね部材44の両面にゴム材47が付設された部材とした場合を示す。ゴム材47は焼付け等により板ばね部材44に付設される。この弾性部材43によれば、収容部27への挿入時において、エンドデフレクタ2と弾性部材43との間での滑りがゴム材によって抑制されるため、エンドデフレクタ2の組み付け性が良好となる。
【0038】
「第3実施形態」
図8は、屈曲部45として、断面三角形を呈するように板ばね部材44の一面側に向けて突設形成した場合を示す。この屈曲部45も一辺44A方向に沿うように形成されているので、屈曲部45の弾性変形力をエンドデフレクタ2に対して軸O方向に均一に作用させることができる。
【0039】
「第4実施形態」
図9は、屈曲部45として、平板部材の略中央に球面状の凸部を形成した場合を示す。このような凸部によっても、凸部が弾性変形することにより、エンドデフレクタ2のガタつきを抑制できる。
【0040】
「第5実施形態」
図10は、寸法L3(第1側壁面28におけるナット21の外周面寄り端部と第2側壁面29におけるナット21の外周面寄り端部との距離)と、寸法L4(第1側壁面28におけるナット21の内周面寄り端部と第2側壁面29におけるナット21の内周面寄り端部との距離)との関係について、寸法L4の方を寸法L3よりも小さく設定した形態を示している。この第5実施形態によれば、エンドデフレクタ2の径内方向への抜けを簡単に防止することができる。
【0041】
以上、本発明の好適な実施形態を説明した。エンドデフレクタ2は3つ以上の部材に分割構成されていてもよい。屈曲部45の個数も1つに限定されず複数設けてもよい。
また、板ばね部材44は、屈曲部45がエンドデフレクタ2側に当接し、平板部46がナット21の収容部27の壁面に当接するレイアウトで組み付けられてもよい。この場合、先に板ばね部材44を収容部27に組み入れておき、後からエンドデフレクタ2を組み入れることでエンドデフレクタ2の挿入抵抗を減らして組み付け性を良好にすることができる。
弾性部材43は、ゴム板部材等、ゴム材料からなる部材としてもよい。
また、弾性部材43は、第2部材4の第2側面12と収容部27の第2側壁面29との間に介設してもよい。