【実施例1】
【0020】
図1は、本発明の給水加温システム1の実施例1を示す概略図である。
図1において、実線および破線で示す構成が実施例1に対応し、二点鎖線で示す構成が後述する実施例3での追加構成に対応する。
【0021】
本実施例の給水加温システム1は、ボイラ2の給水タンク3への給水をヒートポンプ4で加温できるシステムであり、ボイラ2への給水を貯留する給水タンク3と、この給水タンク3への給水を貯留する補給水タンク5と、この補給水タンク5から給水タンク3への給水を加温するヒートポンプ4と、このヒートポンプ4の熱源としての熱源水(たとえば廃温水)を貯留する熱源水タンク6とを備える他、さらに第一熱交換器7と第二熱交換器8とを備える。
【0022】
ボイラ2は、蒸気ボイラであり、給水タンク3からの給水を加熱して蒸気にする。ボイラ2は、典型的には、蒸気の圧力を所望に維持するように、燃焼量を調整される。また、ボイラ2は、缶体内の水位を所望に維持するように、給水タンク3からボイラ2への給水路またはボイラ2の内部に設けたポンプ9が制御される。ボイラ2からの蒸気は、各種の蒸気使用設備(図示省略)へ送られるが、蒸気使用設備からのドレン(蒸気の凝縮水)を給水タンク3へ戻してもよい。あるいは、蒸気使用設備からのドレンは、熱源水タンク6へ供給してもよい。
【0023】
給水タンク3は、補給水タンク5から、ヒートポンプ4を介して給水路10により給水可能であると共に、ヒートポンプ4を介さずに補給水路11により給水可能である。給水路10に設けた給水ポンプ12と、補給水路11に設けた補給水ポンプ13との作動を制御することで、給水路10と補給水路11との内、一方または双方を介して、補給水タンク5から給水タンク3へ給水可能である。
【0024】
給水ポンプ12は、本実施例では、インバータにより回転数を制御可能とされる。給水ポンプ12の回転数を変更することで、給水路10を介した給水タンク3への給水流量を調整することができる。一方、補給水ポンプ13は、本実施例では、オンオフ制御される。
【0025】
補給水タンク5は、給水タンク3への給水を貯留する。補給水タンク5への給水として、本実施例では軟水が用いられる。すなわち、軟水器(図示省略)にて水中の硬度分を除去された軟水は、補給水タンク5に供給され貯留される。補給水タンク5の水位に基づき軟水器からの給水を制御することで、補給水タンク5の水位は所望に維持される。
【0026】
ヒートポンプ4は、蒸気圧縮式のヒートポンプであり、圧縮機14、凝縮器15、膨張弁16および蒸発器17が順次環状に接続されて構成される。そして、圧縮機14は、ガス冷媒を圧縮して高温高圧にする。また、凝縮器15は、圧縮機14からのガス冷媒を凝縮液化する。さらに、膨張弁16は、凝縮器15からの液冷媒を通過させることで、冷媒の圧力と温度とを低下させる。そして、蒸発器17は、膨張弁16からの冷媒の蒸発を図る。
【0027】
従って、ヒートポンプ4は、蒸発器17において、冷媒が外部から熱を奪って気化する一方、凝縮器15において、冷媒が外部へ放熱して凝縮することになる。これを利用して、本実施例では、ヒートポンプ4は、蒸発器17において、熱源水から熱をくみ上げ、凝縮器15において、給水路10の水を加温する。
【0028】
ヒートポンプ4は、さらに、凝縮器15と膨張弁16との間に、過冷却器18を備えるのが好ましい。過冷却器18は、凝縮器15より上流側の給水路10の水と、凝縮器15から膨張弁16への冷媒との間接熱交換器である。過冷却器18により、凝縮器15への給水で、凝縮器15から膨張弁16への冷媒を過冷却することができると共に、凝縮器15から膨張弁16への冷媒で、凝縮器15への給水を加温することができる。ヒートポンプ4の冷媒は、好適には、凝縮器15において潜熱を放出し、過冷却器18において顕熱を放出する。
【0029】
つまり、凝縮器15において、ガス冷媒は凝縮して液冷媒となり、その液冷媒が過冷却器18に供給されて、過冷却器18において、液冷媒はさらに冷却(過冷却)される。冷媒の凝縮用と過冷却用とで熱交換器を分けることで、熱交換器の設計が容易となり、熱交換器を簡易な構造で小型化でき、コスト削減を図ることができる。また、汎用の熱交換器の利用も可能となる。
【0030】
その他、ヒートポンプ4には、圧縮機14の入口側にアキュムレータを設置したり、圧縮機14の出口側に油分離器を設置したり、凝縮器15の出口側(凝縮器15と過冷却器18との間)に受液器を設置したりしてもよい。
【0031】
ところで、ヒートポンプ4は、その出力を変更可能とされてもよい。たとえば、圧縮機14のモータの電源周波数ひいては回転数をインバータで変更することで、ヒートポンプ4の出力を変更することができる。但し、以下においては、ヒートポンプ4は、圧縮機14のモータの電源周波数が一定に維持され、一定出力で運転される例について説明する。
【0032】
給水路10には、第一熱交換器7が設けられる一方、補給水路11には、第二熱交換器8が設けられる。第一熱交換器7は、過冷却器18より上流側の給水路10の水と、蒸発器17を通過後の熱源水との間接熱交換器である。一方、第二熱交換器8は、補給水路11の水と、第一熱交換器7を通過後の熱源水との間接熱交換器である。
【0033】
従って、補給水タンク5から給水路10を介した給水タンク3への給水は、第一熱交換器7、過冷却器18および凝縮器15に順に通される。また、補給水タンク5から補給水路11を介した給水タンク3への給水は、第二熱交換器8に通される。一方、熱源水タンク6からの熱源水は、熱源供給路19を介して、蒸発器17、第一熱交換器7および第二熱交換器8に順に通される。
【0034】
熱源水タンク6は、ヒートポンプ4の熱源としての熱源水を貯留する。熱源水とは、たとえば廃温水(工場などから排出される温水)である。なお、熱源水タンク6には、熱源水の供給路20が設けられると共に、所定以上の水をあふれさせるオーバーフロー路21が設けられている。
【0035】
熱源水タンク6の熱源水は、前述したとおり、熱源供給路19を介して、ヒートポンプ4の蒸発器17に通された後、第一熱交換器7と第二熱交換器8とに順に通される。熱源供給路19には、蒸発器17より上流側に熱源供給ポンプ22が設けられており、この熱源供給ポンプ22を作動させることで、熱源水タンク6からの熱源水を、蒸発器17、第一熱交換器7および第二熱交換器8に順に通すことができる。
【0036】
蒸発器17を先に通した後に第一熱交換器7に熱源水を通すことで、第一熱交換器7を先に通した後に蒸発器17に熱源水を通す場合と比較して、蒸発器17における冷媒の蒸発温度(つまり蒸発圧力)を高めることができ、圧縮機14の圧力比を小さくすることができ、省エネルギーを図ることができる。また、第一熱交換器7を通過後の熱源水を、第二熱交換器8に通すことで、第一熱交換器7を通過後の熱源水の廃熱を用いて、補給水路11を介した給水タンク3への給水の加温を図ることができる。
【0037】
給水タンク3には、水位検出器23が設けられる。この水位検出器23は、その構成を特に問わないが、本実施例では電極式水位検出器とされる。この場合、給水タンク3には、長さの異なる複数の電極棒24〜27が、その下端部の高さ位置を互いに異ならせて差し込まれて保持されている。本実施例では、給水ポンプ12制御用の給水開始電極棒24と給水停止電極棒25の他、補給水ポンプ13制御用の補給水開始電極棒26と補給水停止電極棒27が、給水タンク3に挿入されている。この際、詳細は後述するが、給水停止電極棒25、補給水停止電極棒27、給水開始電極棒24、補給水開始電極棒26の順に、下端部の高さ位置を低くして、給水タンク3に挿入されている。
【0038】
各電極棒24〜27は、その下端部が水に浸かるか否かにより、下端部における水位の有無を検出する。以下において、給水開始電極棒24が検出する水位を給水開始水位H1、給水停止電極棒25が検出する水位を給水停止水位H2、補給水開始電極棒26が検出する水位を補給水開始水位H3、補給水停止電極棒27が検出する水位を補給水停止水位H4という。
【0039】
熱源水タンク6には、熱源水の有無を確認するために、水位検出器28が設けられる。この水位検出器28は、その構成を特に問わないが、本実施例では電極式水位検出器とされる。この場合、熱源水タンク6には、低水位検出電極棒29が差し込まれており、熱源水の水位が設定を下回っていないかを監視する。
【0040】
給水路10には、凝縮器15の出口側に、出湯温度センサ30が設けられる。出湯温度センサ30は、凝縮器15を通過後の水温を検出する。出湯温度センサ30の検出温度に基づき、給水ポンプ12が制御される。ここでは、給水ポンプ12は、出湯温度センサ30の検出温度を設定温度に維持するようにインバータ制御される。これにより、給水路10を介した給水タンク3への給水は、出湯温度センサ30の検出温度を設定温度に維持するように、流量が調整される。
【0041】
熱源供給路19には、蒸発器17の入口側に、第一熱源温度センサ31が設けられる。第一熱源温度センサ31は、蒸発器17へ供給される熱源水の温度を検出する。但し、第一熱源温度センサ31は、場合により、熱源水タンク6に設けられてもよい。詳細は後述するが、第一熱源温度センサ31の検出温度に基づき、ヒートポンプ4(より具体的には圧縮機14)の発停と、前記設定温度の変更が可能とされる。
【0042】
ところで、第一熱交換器7を通過後の熱源水の温度(言い換えれば第二熱交換器8への熱源水の温度)が、補給水タンク5の水温(言い換えれば第二熱交換器8への給水温度)よりも低くなった場合にまで、第二熱交換器8において熱源水と給水とを熱交換させると、補給水路11による給水を第二熱交換器8において却って冷却してしまうことになる。そこで、これを防止するために、次のように構成しておくのが望ましい。
【0043】
すなわち、
図1において破線で示すように、第二熱交換器8への熱源供給路に排水路32を分岐して設け、その分岐部に三方弁33を設けるなどして、第一熱交換器7を通過後の熱源水を、第二熱交換器8に通すか、第二熱交換器8に通さずに排水路32から排水するかを切替可能とする。また、第二熱交換器8への熱源供給路19には、三方弁33よりも上流側に第二熱源温度センサ34が設けられる一方、第二熱交換器8への補給水路11(または補給水タンク5)には、水温センサ35が設けられる。
【0044】
そして、熱源供給ポンプ22および補給水ポンプ13の作動中、第二熱源温度センサ34の検出温度と、水温センサ35の検出温度とに基づき三方弁33を制御して、第一熱交換器7を通過後の熱源水を第二熱交換器8に通すか否かを切り替えればよい。具体的には、第二熱源温度センサ34の検出温度が水温センサ35の検出温度を超える場合、つまり第二熱交換器8への熱源水温度が第二熱交換器8への給水温度を超える場合、第一熱交換器7を通過後の熱源水を第二熱交換器8に通せばよい。一方、第二熱源温度センサ34の検出温度が水温センサ35の検出温度以下の場合、つまり第二熱交換器8への熱源水温度が第二熱交換器8への給水温度以下の場合、第一熱交換器7を通過後の熱源水を第二熱交換器8に通さずに排水路32から排水すればよい。
【0045】
後述するように、給水ポンプ12を作動して給水路10を介した給水タンク3への給水中、熱源供給ポンプ22を作動して熱源供給路19に熱源水が通されるが、この間、補給水ポンプ13を作動して補給水路11を介した給水タンク3への給水がなされるとは限らない。しかしながら、蒸発器17や第一熱交換器7に通された熱源水は、もともと廃棄されるものであるため、補給水路11の通水の有無に関わらず第二熱交換器8に通水させても無駄とはいえない。また、前記三方弁33の切替制御は、補給水路11を介した給水タンク3への給水中(つまり補給水ポンプ13の作動中)にのみ実行すれば足りる。
【0046】
次に、本実施例の給水加温システム1の制御(運転方法)について説明する。以下に説明する一連の制御は、図示しない制御器を用いて自動でなされる。
【0047】
給水タンク3への給水は、給水タンク3に設けた水位検出器23の検出信号に基づき、給水ポンプ12と補給水ポンプ13とを制御することでなされる。つまり、給水路10を介した給水タンク3への給水は、給水タンク3内の水位が給水開始水位H1を下回ると開始し、この給水開始水位H1よりも高い給水停止水位H2を上回ると停止する。また、補給水路11を介した給水タンク3への給水は、給水タンク3内の水位が補給水開始水位H3を下回ると開始し、この補給水開始水位H3よりも高い補給水停止水位H4を上回ると停止する。ここで、補給水開始水位H3は、給水開始水位H1よりも低く設定され、補給水停止水位H4は、給水開始水位H1よりも高いが給水停止水位H2よりも低く設定される。
【0048】
このような構成であるから、いま、給水停止電極棒25が水位を検知しているとすると、給水タンク3の水位が十分にあるとして、給水ポンプ12を停止すると共に、補給水ポンプ13も停止している。給水タンク3からボイラ2への給水により、給水タンク3の水位が下がり、給水開始電極棒24が水位を検知しなくなると、給水ポンプ12を作動させる。これにより、給水路10を介して給水タンク3に給水されるが、給水停止電極棒25が水位を検知すると、給水ポンプ12を停止する。一方、給水ポンプ12を作動させても、給水タンク3の水位を回復できず、給水タンク3の水位がさらに下がり、補給水開始電極棒26が水位を検知しなくなると、補給水ポンプ13も作動させる。これにより、補給水路11を介しても給水タンク3に給水されるが、給水タンク3の水位が回復して、補給水停止電極棒27が水位を検知すると、補給水ポンプ13を停止し、さらに水位が回復して、給水停止電極棒25が水位を検知すると、給水ポンプ12を停止する。なお、給水ポンプ12を作動させて、給水路10を介した給水タンク3への給水中、熱源供給ポンプ22も作動させる。
【0049】
本実施例では、補給水停止水位H4は、給水開始水位H1よりも高いが給水停止水位H2よりも低く設定される。その結果、給水開始水位H1と給水停止水位H2との間の水位域と、補給水開始水位H3と補給水停止水位H4との間の水位域とは、一部が重複することになる。そのため、給水開始水位H1と給水停止水位H2との水位差や、補給水開始水位H3と補給水停止水位H4との水位差を、それぞれ確保し易い。これに伴い、給水ポンプ12や補給水ポンプ13の発停回数を従来技術に比べて少なくすることができる。さらに、従来技術と比べて補給水停止水位H4が比較的高いので、給水タンク3への給水速度を速めることができると共に、給水タンク3には比較的多めの水を貯留できる。よって、給水タンク3内の貯水量が不足するおそれはなく、最も重要なボイラ2やその蒸気使用設備の稼働を優先することができる。また、給水タンク3を空の状態から満水にするまでの時間を短縮することができる。
【0050】
ところで、給水開始水位H1と補給水開始水位H3との水位差は、給水開始水位H1と給水停止水位H2との水位差よりも小さく設定するのが好ましい。給水開始水位H1と補給水開始水位H3とを近づけることで、給水路10を介した給水と補給水路11を介した給水との双方を実行させ易くすることができる。これにより、給水タンク3への給水速度を速めることができる。
【0051】
ヒートポンプ4は、後述するように、所定の場合に作動する。ヒートポンプ4は、その圧縮機14の作動の有無により、運転と停止が切り替えられる。ヒートポンプ4の運転中、圧縮機14は、モータの電源周波数が一定に維持され、一定出力を維持される。
【0052】
給水ポンプ12は、作動中、出湯温度センサ30の検出温度を設定温度に維持するように、回転数をインバータ制御される。後述するように、状況に応じて、設定温度は変更される。
【0053】
前述したように、本実施例の給水加温システム1では、給水タンク3内の水位に基づき、給水路10を介した給水タンク3への給水が制御されるが、給水路10を介した給水タンク3への給水中、第一熱源温度センサ31により蒸発器17への熱源水温度を監視し、その温度が規定温度以上になると、ヒートポンプ4を停止させるのがよい。その場合でも、給水タンク3内の水位に基づく給水条件が満たされる限りは、給水路10を介して給水タンク3へ給水する。
【0054】
より詳細には、本実施例では、次のように制御される。すなわち、給水路10を介した給水タンク3への給水中、第一熱源温度センサ31の検出温度が規定温度(たとえば60℃)未満であれば、ヒートポンプ4を作動させた状態で、出湯温度センサ30の検出温度を第一設定温度(たとえば75℃)に維持するように、給水ポンプ12をインバータ制御して、給水路10を介した給水タンク3への給水流量を調整する(第一制御)。なお、ここでは、第一設定温度は、前記規定温度よりも高い温度とされる。
【0055】
一方、第一熱源温度センサ31の検出温度が規定温度(たとえば60℃)以上になると、第二制御に切り替える。第二制御では、ヒートポンプ4を停止させる。その場合でも、給水タンク3内の水位に基づく給水条件が満たされる限りは、給水路10を介して給水タンク3へ給水するが、凝縮器15の出口側水温の制御設定温度を下げるのが好ましい。つまり、出湯温度センサ30の検出温度を第一設定温度よりも低い第二設定温度(たとえば60℃)に維持するように、給水ポンプ12をインバータ制御して、給水路10を介した給水タンク3への給水流量を調整する。なお、ここでは、第二設定温度は、前記規定温度と同一温度とされるが、場合により、前記規定温度よりも低い温度とされてもよい。
【0056】
このように、蒸発器17への熱源水温度が規定温度未満であれば、ヒートポンプ4を作動させた状態で、凝縮器15の出口側水温を第一設定温度に維持するように、給水路10を介した給水タンク3への給水流量を調整することで、給水源の水温や熱源水の温度に拘わらず、所望温度の温水を得ることができる。一方、蒸発器17への熱源水温度が規定温度以上になると、ヒートポンプ4を停止させるので、圧縮機14の保護を図ることができる。但し、その場合でも、第一熱交換器7において、給水と熱源水とを熱交換して、熱源水からの熱回収を図ることができる。しかも、凝縮器15の出口側水温の制御目標温度を、第一設定温度よりも低い第二設定温度に切り替えることで、給水路10を介した給水タンク3への給水流量をある程度以上に確保して、熱源水からの熱回収を有効に図ることができる。
【0057】
第二制御から第一制御への切替えは、次のように行われる。すなわち、ヒートポンプ4を停止した状態で、出湯温度センサ30の検出温度を第二設定温度に維持するように、給水路10を介した給水タンク3への給水流量を調整中(つまり第二制御中)、第一熱源温度センサ31の検出温度が規定温度未満を設定時間(たとえば60秒)継続した場合には、第一制御に戻される。つまり、ヒートポンプ4を再起動して、出湯温度センサ30の検出温度を第一設定温度に維持するように、給水路10を介した給水タンク3への給水流量を調整する制御に切り替えればよい。
【0058】
但し、第二制御から第一制御への切替えは、次のように行ってもよい。すなわち、ヒートポンプ4を停止した状態で、出湯温度センサ30の検出温度を第二設定温度に維持するように、給水路10を介した給水タンク3への給水流量を調整中(つまり第二制御中)、第一熱源温度センサ31の検出温度が規定温度よりも低い所定温度(たとえば58℃)未満になった場合には、第一制御に戻される。つまり、ヒートポンプ4を再起動して、出湯温度センサ30の検出温度を第一設定温度に維持するように、給水路10を介した給水タンク3への給水流量を調整する制御に切り替えればよい。
【0059】
いずれにしても、蒸発器17への熱源水温度が所定に下がると、ヒートポンプ4を停止させた第二制御から、ヒートポンプ4を稼働させた第一制御に戻すことができる。このようにして、蒸発器17への熱源水温度に応じて、第一制御と第二制御との切り替えが行われる。
【0060】
但し、給水路10を介した給水タンク3への給水中、第一熱源温度センサ31の検出温度が前記規定温度よりも高い上限温度(たとえば65℃)以上になると、給水加温システム1の稼働を停止するのがよい。具体的には、ヒートポンプ4を停止すると共に、熱源供給ポンプ22を停止して蒸発器17への熱源水の供給も停止する。さらに、給水ポンプ12も停止するのがよい。このようにして、蒸発器17への熱源水温度が過度に上昇した場合には、給水加温システム1の稼働を停止することで、給水加温システム1の保護を図ることができる。なお、ここでは、上限温度は、前記規定温度よりも高いが、前記第一設定温度よりも低い温度とされる。
【0061】
その他、ヒートポンプ4の運転中、熱源水タンク6の水位が下がり、低水位検出電極棒29が水位を検知しなくなると、ヒートポンプ4の運転を停止すると共に、熱源供給ポンプ22を停止して蒸発器17への熱源水の供給を停止するのがよい。これにより、ヒートポンプ4を無駄に運転するのが防止される。また、同様に、給水路10を介した給水タンク3への給水中、万一、給水路10を通る給水の量が設定を下回ると、ヒートポンプ4の運転を停止すると共に、熱源供給ポンプ22を停止して蒸発器17への熱源水の供給を停止するのがよい。
【0062】
本実施例の給水加温システム1によれば、給水路10を介した給水タンク3への給水は、第一熱交換器7とヒートポンプ4との内、少なくとも第一熱交換器7で加温される。一方、補給水路11を介した給水タンク3への給水は、第一熱交換器7を通過後の熱源水の廃熱を用いて第二熱交換器8において加温される。補給水路11を介した給水タンク3への給水も加温できるので、給水タンク3に補給水路11からの給水がなされても、給水タンク3内の水温の低下を抑制することができる。また、上述したように、第二熱源温度センサ34と水温センサ35の検出温度に基づき三方弁33を制御して、第二熱交換器8への熱源水の供給の有無を切り替えれば、第二熱交換器8において、補給水路11を介した給水タンク3への給水を冷却してしまうという不都合もない。
【0063】
次に、本実施例1の給水加温システム1の変形例について説明する。上述した実施例1では、補給水路11を介した給水タンク3への給水中、第二熱交換器8における熱交換の有無を切り替えるために、第二熱交換器8への熱源水の供給の有無を切り替えたが、場合により、補給水タンク5から給水タンク3への給水を第二熱交換器8に通水するか否かを切り替えてもよい。つまり、
図1において、第一熱交換器7を通過後の熱源水を、常に第二熱交換器8に通し、その代わりに、補給水タンク5から補給水路11を介した給水タンク3への給水を、第二熱交換器8に通すか否かを切り替えてもよい。具体的には、補給水タンク5から第二熱交換器8を介した給水タンク3への補給水路11には、第二熱交換器8の前後を接続するようにバイパス路を設けておき、第二熱交換器8への補給水路11とバイパス路との分岐部に三方弁を設けるなどして、補給水タンク5からの給水を第二熱交換器8に通して給水タンク3へ供給するか、第二熱交換器8を介さずにバイパス路を介して給水タンク3へ供給するかを切替可能とすればよい。この場合も、第二熱交換器8への熱源水温度を第二熱源温度センサ34で監視する一方、補給水タンク5から第二熱交換器8への給水温度(三方弁よりも上流の水温)を水温センサ35で監視し、第二熱交換器8への熱源水温度が給水温を超える場合、補給水タンク5からの給水を第二熱交換器8に通して給水タンク3へ供給し、第二熱交換器8への熱源水温度が給水温以下の場合、補給水タンク5からの給水を第二熱交換器8に通さずバイパス路を介して給水タンク3へ供給すればよい。
【実施例3】
【0070】
図1において、実線および破線で示す構成に、二点鎖線で示す構成も付加したものが、本発明の給水加温システム1の実施例3である。本実施例3の給水加温システム1は、実施例1と実施例2とを併合した構成に相当する。
【0071】
つまり、本実施例3では、補給水タンク5から給水タンク3への補給水路11には、実施例1の第二熱交換器8と、実施例2の第三熱交換器36との双方が設けられる。この際、補給水路11には、補給水タンク5から給水タンク3へ行くに従って、第二熱交換器8と第三熱交換器36とが順に配置されるのが好ましい。第三熱交換器36に供給される熱源水は、第二熱交換器8に供給される熱源水よりも高温になることを考慮したものである。従って、本実施例3の給水加温システム1によれば、補給水路11を介した給水タンク3への給水を段階的に加温することができる。その他の構成は、前記各実施例と同様であるため、説明を省略する。
【0072】
本発明の給水加温システム1は、前記各実施例の構成に限らず、適宜変更可能である。たとえば、前記各実施例において、過冷却器18の設置を省略してもよい。
【0073】
また、前記各実施例において、補給水停止水位H4は、給水開始水位H1よりも低く設定されてもよい。つまり、前記各実施例では、給水停止水位H2、補給水停止水位H4、給水開始水位H1、補給水開始水位H3の順に水位が低くなるようにしたが、場合により、給水停止水位H2、給水開始水位H1、補給水停止水位H4、補給水開始水位H3の順に水位が低くなるようにしてもよい。
【0074】
また、前記各実施例では、給水路10を介した給水タンク3への給水流量を調整するために、給水ポンプ12をインバータ制御したが、給水ポンプ12をオンオフ制御しつつ、給水路10に設けた弁の開度を調整してもよい。つまり、出湯温度センサ30の検出温度などに基づき給水路10を介した給水の流量を調整可能であれば、その流量調整方法は適宜に変更可能である。
【0075】
また、前記各実施例の場合、給水タンク3に、給水路10により給水可能であると共に、補給水路11により給水可能であれば、給水路10や補給水路11の具体的構成は、前記各実施例の構成に限らず適宜変更可能である。たとえば、前記各実施例では、給水路10と補給水路11とは、それぞれ補給水タンク5と給水タンク3とを接続するように並列に設けたが、給水路10と補給水路11との一端部(補給水タンク5側の端部)と他端部(給水タンク3側の端部)の一方または双方は、共通の管路としてもよい。言い換えれば、補給水路11の一端部は、補給水タンク5に接続するのではなく、給水路10から分岐するように設けてもよいし、補給水路11の他端部は、給水タンク3に接続するのではなく、給水タンク3の手前において給水路10に合流するように設けてもよい。補給水路11の一端部を、補給水タンク5に接続するのではなく、給水路10から分岐するように設ける場合、その分岐部より下流において、給水路10に給水ポンプ12を設ける一方、補給水路11に補給水ポンプ13を設ければよいが、分岐部よりも上流側の共通管路にのみポンプを設けて、分岐部より下流の給水路10および/または補給水路11に設けた弁の開度を調整することで、給水路10や補給水路11を通る流量を調整してもよい。
【0076】
また、前記各実施例では、給水タンク3への給水を貯留するために補給水タンク5を設置したが、場合により補給水タンク5の設置を省略して、給水源から直接に給水路10および補給水路11に水を通してもよい。
【0077】
また、前記各実施例では、給水路10および/または補給水路11を介して、補給水タンク5から給水タンク3へ給水可能としたが、これら給水は、軟水器から直接に行ってもよい。たとえば、給水路10および補給水路11の基端部をまとめて軟水器に接続し、給水ポンプ12の設置を省略する代わりに給水路10に設けた電動弁(モータバルブ)の開度を調整し、補給水ポンプ13の設置を省略する代わりに補給水路11に設けた電磁弁の開閉を制御すればよい。
【0078】
また、前記各実施例では、ボイラ2の給水タンク3への給水をヒートポンプ4で加温できるシステムについて説明したが、給水タンク3の貯留水の利用先は、ボイラ2に限らず適宜に変更可能である。
【0079】
また、前記各実施例では、ヒートポンプ4の熱源として熱源水を用いた例について説明したが、ヒートポンプ4の熱源流体として、熱源水に限らず、空気や排ガスなど各種の流体を用いることができる。
【0080】
また、前記各実施例では、ヒートポンプ4を運転する際、圧縮機14のモータの電源周波数を一定に維持したが、場合により、圧縮機14の吐出圧を所定に維持するように制御してもよい。あるいは、給水タンク3内の水位または蒸発器17への熱源流体温度に基づき、圧縮機14の出力を調整してもよい。
【0081】
また、ヒートポンプ4は、単段に限らず複数段とすることもできる。ヒートポンプ4を複数段にする場合、隣接する段のヒートポンプ同士は、間接熱交換器を用いて接続されてもよいし、直接熱交換器(中間冷却器)を用いて接続されてもよい。後者の場合、低段ヒートポンプの圧縮機からの冷媒と高段ヒートポンプの膨張弁からの冷媒とを受けて、両冷媒を直接に接触させて熱交換する中間冷却器を備え、この中間冷却器が低段ヒートポンプの凝縮器であると共に高段ヒートポンプの蒸発器とされる。このように、複数段(多段)のヒートポンプには、一元多段のヒートポンプの他、複数元(多元)のヒートポンプ、あるいはそれらの組合せのヒートポンプが含まれる。
【0082】
さらに、前記各実施例では、ヒートポンプ4の圧縮機14は、電気モータにより駆動されたが、圧縮機14の駆動源は特に問わない。たとえば、圧縮機14は、電気モータに代えてまたはそれに加えて、蒸気を用いて動力を起こすスチームモータ(蒸気エンジン)に駆動されたり、ガスエンジンにより駆動されたりしてもよい。