(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-132578(P2015-132578A)
(43)【公開日】2015年7月23日
(54)【発明の名称】放射線防護機能付き視認装置
(51)【国際特許分類】
G21F 7/00 20060101AFI20150630BHJP
G21F 3/00 20060101ALI20150630BHJP
【FI】
G21F7/00 Z
G21F3/00 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-5236(P2014-5236)
(22)【出願日】2014年1月15日
(71)【出願人】
【識別番号】501193218
【氏名又は名称】株式会社 清原光学
(74)【代理人】
【識別番号】100087446
【弁理士】
【氏名又は名称】川久保 新一
(72)【発明者】
【氏名】清原 元輔
(72)【発明者】
【氏名】清原 耕輔
(57)【要約】 (修正有)
【課題】観察者の人体を放射線から防護しつつ、観察者の周囲を視認する装置において、その装置の構成が簡素であり、かつ、安価に製造することができる放射線防護機能付き視認装置を提供する。
【解決手段】人間H1を収容可能なコックピットCP1と、上記コックピットCP1をその前後、左右、上下の方向で囲み、少なくとも一部が透明材で構成されている第1の透明壁10と、上記コップピットCP1から見て上記第1の透明壁10の外側に設けられ、上記第1の透明壁10をその前後、左右、上下の方向で囲み、少なくとも一部が透明材で構成されている第2の透明壁20と、上記第1の透明壁10と上記第2の透明壁20とを接続する接続手段CN1とを有し、第1、2の透明壁の間に充分な水W1を注入して使用する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
人間を収容可能なコックピットと;
上記コックピットをその前後、左右、上下の方向で囲み、少なくとも一部が透明材で構成されている第1の透明壁と;
上記コップピットから見て上記第1の透明壁の外側に設けられ、上記第1の透明壁をその前後、左右、上下の方向で囲み、少なくとも一部が透明材で構成されている第2の透明壁と;
上記第1の透明壁と上記第2の透明壁とを接続する接続手段と;
を有することを特徴とする放射線防護機能付き視認装置。
【請求項2】
請求項1において、
上記第1の透明壁と上記第2の透明壁との間は、水を収容するスペースであることを特徴とする放射線防護機能付き視認装置。
【請求項3】
請求項2において、
上記第1の透明壁と上記第2の透明壁との間に収容されている水の厚さは、その前後、左右、上下の全ての方向において、上記人間に放射線の影響が出ない程度の厚さであることを特徴とする放射線防護機能付き視認装置。
【請求項4】
請求項1において、
上記人間が上記放射線防護機能付き視認装置の外から、上記コップピットに出入りする開口が、上記第1の透明壁、上記第2の透明壁に設けられていることを特徴とする放射線防護機能付き視認装置。
【請求項5】
請求項1において、
上記第1の透明壁と上記第2の透明壁との間、または、上記第2の透明壁の外側に、他の透明壁が設けられていることを特徴とする放射線防護機能付き視認装置。
【請求項6】
請求項1において、
上記放射線防護機能付き視認装置をクレーンで引き揚げ、移動する際に、上記放射線防護機能付き視認装置と係合する係合手段が、上記放射線防護機能付き視認装置に設けられていることを特徴とする放射線防護機能付き視認装置。
【請求項7】
請求項1において、
上記放射線防護機能付き視認装置を移動するために走行する走行装置を有することを特徴とする放射線防護機能付き視認装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射能汚染から観察者の人体を守りながら、その観察者の周囲を視認する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、放射能汚染区域に人が進入する場合、その人が防護服を着用し、その人の胸等に線量計を取り付ける。そして、その人の周囲の放射線量が所定の値以上になると、線量計が警告音を発する。この警告音が発せられると、直ちに、その区域から退去する。この場合、着用している防護服の放射線に対する防護力はそれほど高くはない。
【0003】
放射線に対する防護力を高くする場合、α線、β線、中性子線、X線、γ線の透過量を下げるために、ガドリニウム、硼素、リチウム、インジウムを含む放射線遮蔽素材を具備する放射線遮蔽機器が知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−242288号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記従来例では、ガドリニウム等の放射線遮蔽素材を、防護服内に均一に分布させることが困難であるので、放射線防護用衣料の製造が困難であるという問題がある。また、上記従来例では、放射線遮蔽素材が比較的高価であるので、放射線防護用衣料が高価であるという問題がある。
【0006】
本発明は、観察者の人体を放射線から防護しつつ、観察者の周囲を視認する装置において、その装置の構成が簡素であり、かつ、安価に製造することができる放射線防護機能付き視認装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の放射線防護機能付き視認装置は、人間を収容可能なコックピットと、上記コックピットをその前後、左右、上下の方向で囲み、少なくとも一部が透明材で構成されている第1の透明壁と、上記コップピットから見て上記第1の透明壁の外側に設けられ、上記第1の透明壁をその前後、左右、上下の方向で囲み、少なくとも一部が透明材で構成されている第2の透明壁と、上記第1の透明壁と上記第2の透明壁とを接続する接続手段とを有し、第1、2の透明壁の間に充分な水を注入して使用する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、第1の透明壁と第2の透明壁との間に、充分な水を収容すれば、観察者の人体を放射線から防護することができ、また、その装置の構成が簡素であり、かつ、安価に製造することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施例1である放射線防護機能付き視認装置100を示す縦断面図である。
【
図2】放射線防護機能付き視認装置100を示す横断面図である。
【
図3】実施例2である放射線防護機能付き視認装置200を示す縦断面図である。
【
図4】放射線防護機能付き視認装置200を示す横断面図である。
【
図5】実施例3である放射線防護機能付き視認装置300を示す縦断面図である。
【
図6】放射線防護機能付き視認装置300を示す横断面図である。
【
図7】実施例4である放射線防護機能付き視認装置400を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
発明を実施するための形態は、以下の実施例である。
【実施例1】
【0011】
図1は、本発明の実施例1である放射線防護機能付き視認装置100を示す縦断面図である。
【0012】
図2は、放射線防護機能付き視認装置100を示す横断面図である。
【0013】
放射線防護機能付き視認装置100は、コックピットCP1と、第1の透明壁10と、第2の透明壁20と、接続手段CN1と、開閉ブロックB1とを有する。
【0014】
コックピットCP1は、観察者である人間H1を収容可能な領域である。
【0015】
第1の透明壁10は、コップピットCP1を囲み、強化プラスチック等の透明材で構成されている。
【0016】
第2の透明壁20は、コップピットCP1から見て第1の透明壁10の外側に設けられ、強化プラスチック等の透明材で構成されている。
【0017】
接続手段CN1は、第1の透明壁10と第2の透明壁20とを接続し、両者の間隔を一定に維持する手段である。
【0018】
視認装置100を使用する場合、第1の透明壁10と第2の透明壁20との間に水W1が収容される。つまり、第1の透明壁10と第2の透明壁20との間は、水W1を収容するスペースである。
【0019】
なお、第1の透明壁10と第2の透明壁20との間に収容される水W1の厚さは、人間H1に放射線の影響が出ない程度の厚さであり、少なくとも1mは必要である。また、第1の透明壁10と第2の透明壁20との間に収容されている水W1の厚さは、上下、左右、前後の全ての方向において、人間H1に放射線の影響が出ない程度の厚さである。
【0020】
開閉ブロックB1は、人間H1が視認装置100に出入りするに充分な穴HL1を埋めるブロックである。また、開閉ブロックB1は、第1の透明壁10に対応する第1の透明壁11と、第2の透明壁20に対応する第2の透明壁21とを有する。また、第1の透明壁11と、第2の透明壁21と、その他の壁とによって、水W1が開閉ブロックB1から漏れ出ないようにしている。
【0021】
フックF1は、第2の透明壁20の上部に設けられ、図示しないクレーンによって、視認装置100を吊り上げたり、移動する場合に使用するクレーン等との係合手段の例である。
【0022】
次に、実施例1の動作について説明する。
【0023】
まず、人間H1がコップピットCP1に存在していない場合、視認装置100には、水W1が収容されていない。また、開閉ブロックB1は、視認装置100の穴HL1に嵌め込まれていない。ここで、人間H1が視認装置100に入る場合、視認装置100の穴HL1から、人間H1がコップピットCP1に入り、開閉ブロックB1を穴HL1に嵌め込み、図示しない部位から水W1を注入する。これによって、コップピットCP1の周囲が水W1で覆われる。なお、水W1を注入してから、人間H1がコップピットCP1に入るようにしてもよい。
【0024】
したがって、水W1によって、放射線が人間H1の人体へ進入することを阻止することができる。よって、コップピットCP1内では、放射線を被ばくすることが少ない。
【0025】
また、視認装置100を移動するには、図示しないクレーンを使用する。すなわち、クレーンの先端部分に、フックF1を引っ掛け、フックF1を介して、視認装置100を吊り上げ、所望の位置に移動する。
【0026】
透明壁10、20に使用する強化プラスチックとして、板状、シート状のものを使用するようにしてもよく、強化プラスチック以外に、ガラス、プラスチック以外の合成樹脂を使用するようにしてもよい。
【0027】
透明壁10、20は、全ての部位で透明である必要がなく、その一部が透明であれば足りる。
【0028】
上記実施例において、開閉ブロックB1を除去し、第1の透明壁10、第2の透明壁20に、それぞれ開閉扉を設けるようにしてもよい。
【0029】
なお、水W1の中に、ガドリニウム、硼素、リチウム、インジウム等を含む放射線遮蔽素材を混入するようにしてもよい。このようにすれば、水W1の厚みを少なくすることができる。
【実施例2】
【0030】
図3は、本発明の実施例2である放射線防護機能付き視認装置200を示す縦断面図である。
【0031】
図4は、放射線防護機能付き視認装置200を示す横断面図である。
【0032】
放射線防護機能付き視認装置200は、基本的には、放射線防護機能付き視認装置100と同じであるが、第3の透明壁30と、これに付随する部材が追加されている点が、放射線防護機能付き視認装置100とは異なる。
【0033】
第3の透明壁30は、コックピットCP1から見て、第2の透明壁20の外側に設けられている透明壁である。接続手段CN2は、第2の透明壁20と第3の透明壁30とを接続する手段である。フックF2は、第3の透明壁30の上部に設けられ、図示しないクレーンによって、視認装置200を吊り上げたり、移動する場合に使用するクレーン等との係合手段の例である。
【0034】
視認装置200では、第2の透明壁20または第3の透明壁30が損傷した場合でも、残りの2つの壁によって、必要量の水を保持することができ、つまり、第2の壁20、第3の透明壁30は、放射線防護機能を確保する上で、視認装置200の安全弁としての機能を有する。
【0035】
視認装置200は、第2の透明壁20の外側に第3の透明壁30を設けているが、第1の透明壁10と第2の透明壁20との間に、第3の透明壁30を設けるようにしてもよい。
【0036】
また、上記各実施例は、透明壁を2つまたは3つ設ける実施例であるが、同芯上に透明壁を4つ以上設け、これら透明壁の間に水を満たすようにしてもよい。
【実施例3】
【0037】
図5は、本発明の実施例3である放射線防護機能付き視認装置300を示す縦断面図である。
【0038】
図6は、放射線防護機能付き視認装置300を示す横断面図である。
【0039】
視認装置300は、基本的には、視認装置100と同じであるが、全体の形状を立方体に変化させた点が、視認装置100とは異なる。
【0040】
つまり、視認装置300は、コックピットCP1aと、第1の透明壁10aと、第2の透明壁20aと、接続手段CN1aと、開閉ブロックB1aとを有する。
【0041】
コックピットCP1a、第1の透明壁10a、第2の透明壁20a、接続手段CN1a、開閉ブロックB1aは、立方体の形状を有する点以外は、それぞれ、第1の透明壁10、第2の透明壁20、接続手段CN1、開閉ブロックB1と同様である。
【0042】
実施例3においても、観察者の人体を放射線から防護しつつ、観察者の周囲を視認する装置において、その装置の構成が簡素であり、かつ、安価に製造することができる。
【0043】
実施例3において、透明壁10a、20aの他に、同様の透明壁を追加し、透明壁を3重以上の構成にしてもよい。
【0044】
実施例1、2は、その全体形状が球であり、実施例3は、その全体形状が立方体であるが、他の形状であってもよい。つまり、放射線防護機能付き視認装置の全体の形状が、直方体、三角柱、五角柱等の角柱、三角錐等の角錐、三角錐台等の角錐台、半円球であってもよい。
【実施例4】
【0045】
図7は、本発明の実施例4である放射線防護機能付き視認装置400を示す斜視図である。
【0046】
放射線防護機能付き視認装置400は、放射線防護機能付き視認装置100を移動するために走行する走行装置D1を設けた実施例である。
【0047】
走行装置D1は、
図1に示す放射線防護機能付き視認装置100を載置し、図示しないモータ、バッテリー、タイヤ、方向制御装置等を有する。バッテリーは、上記モータを駆動する電源であり、タイヤは、上記モータで駆動され、走行装置D1を駆動する。方向制御装置は、走行装置D1の進行方向を制御する。なお、人間H1は、リモコンR1を操作し、リモコンR1を介して、走行装置D1の進行方向、前進、後退、停止を制御する。リモコンR1は、無線または有線を介して、走行装置D1と接続される。
【0048】
これによって、前進、後退、方向変更、停止を自由に制御することができる。
【0049】
なお、走行装置D1の少なくとも一部を透明にすれば、人間H1は、自分から見て下の周囲状況を肉眼で視認することができる。
【0050】
実施例2、3において、走行装置D1を設けるようにしてもよい。この場合、走行装置D1の少なくとも一部を透明にすれば、人間H1は、自分から見て下の周囲状況を肉眼で視認することができる。
【0051】
上記各実施例を使用すれば、水中、特に放射能に汚染されている水の近傍またはその中でも、安全に作業することができる。つまり、放射能に汚染されている汚染水のうちで人体に影響が出る高濃度汚染水に人間が近づいて作業することは問題であり、また、その高濃度汚染水中で、通常の潜水服を着用して作業することも問題がある。しかし、上記実施例を使用すれば、高濃度汚染水の近くで作業しても安全であり、また、高濃度汚染水中で作業しても安全である。
【符号の説明】
【0052】
100、200、300、400…放射線防護機能付き視認装置、
H1…人間、
CP1…コックピット、
10…第1の透明壁、
20…第2の透明壁、
30…第3の透明壁、
W1、W2…水、
CN1、CN2…接続手段、
B1、B2…ブロック、
D1…走行装置、
R1…リモコン。