【課題】被写体から放射されるミリ波帯の熱雑音を受信することにより、隠匿物検出用の画像を撮像するミリ波撮像装置において、検査台上で被写体の向きを変化させることなく、被写体を前後左右から見た周囲画像を撮像できるようにする。
【解決手段】ミリ波撮像装置は、被写体2から放射されるミリ波帯の熱雑音を受信するための複数の受信素子20を一列に配置してなるラインセンサ10を備え、モータ18の回転により、ラインセンサ10を、検査台4の周囲で回動させることができる。この結果、被写体2の撮像時に、ラインセンサ10を被写体2の周りで回動させつつ、ラインセンサ10からの検出信号を順次取り込むことで、被写体2の周囲画像(ミリ波画像)を撮像することができる。なお、ラインセンサは、円環状に構成し、上下動させることによって、被写体2の周囲画像(ミリ波画像)を撮像するようにしてもよい。
前記ラインセンサは、前記複数の受信素子を隣接する所定数毎にグループ分けしたグループ毎に、前記被写体から放射された前記ミリ波帯の熱雑音を各受信素子に導く凸レンズを備えたことを特徴とする請求項1〜請求項5の何れか1項に記載のミリ波撮像装置。
前記アクチュエータを介して前記ラインセンサによる前記被写体の撮像位置を変化させて、前記ラインセンサの各受信素子から受信信号を取り込むことで、前記周囲画像の画像データを生成し、該画像データに基づき、前記被写体の周囲画像を表示装置に表示する制御装置を備えたことを特徴とする請求項1〜請求項8の何れか1項に記載のミリ波撮像装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この提案のミリ波撮像装置は、被写体が乗る検査台周囲に位置決め固定され、その固定位置から見える被写体の画像(ミリ波画像)を撮像するように構成されている。
このため、被写体が隠し持った物品(隠匿物)を検出するには、検査台上で、被写体である人に向きを変えてもらい、ミリ波撮像装置を介して、少なくとも前後左右の4方向から被写体を撮像する必要がある。従って、上記提案のミリ波撮像装置においては、隠匿物の検査に手間がかかるという問題があった。
【0005】
本発明は、こうした問題に鑑みなされたものであり、人体などの被写体から放射されるミリ波帯の熱雑音を受信することにより、隠匿物検出用の画像を撮像するミリ波撮像装置において、検査台上で被写体の向きを変化させることなく、被写体を前後左右から見た画像を撮像できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる目的を達成するためになされた請求項1に記載のミリ波撮像装置は、
被写体から放射されるミリ波帯の熱雑音を受信するための複数の受信素子を一列に配置してなるラインセンサと、
前記ラインセンサを、前記被写体が載置される検査台周囲で変位可能に支持する支持台と、
前記支持台に支持された前記ラインセンサを前記検査台周囲で変位させることで、前記ラインセンサによる前記被写体の撮像位置を変化させて、前記ラインセンサに、前記被写体の周囲画像を撮像させるアクチュエータと、
を備えたことを特徴とする。
【0007】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のミリ波撮像装置において、
前記ラインセンサは、前記複数の受信素子を直線状に配置することにより構成されており、
前記支持台は、
前記ラインセンサにおける受信素子の配列方向が、前記検査台に載置される前記被写体の上下方向となるよう、前記ラインセンサを前記検査台周囲で支持する第1支持部と、
該第1支持部を、前記ラインセンサが前記検査台の外周に沿って移動可能に支持する第2支持部と、
を備え、
前記アクチュエータは、前記第2支持部を介して前記ラインセンサを前記検査台周囲で変位させることを特徴とする。
【0008】
また、請求項3に記載の発明は、請求項2に記載のミリ波撮像装置において、
前記第2支持部は、前記検査台の中心位置を通る中心軸周りに回動可能な回転板にて構成されており、
前記第1支持部は、前記ラインセンサを前記回転板の外周部分に位置決め固定することを特徴とする。
【0009】
また、請求項4に記載の発明は、請求項2に記載のミリ波撮像装置において、
前記第2支持部は、前記検査台の周囲に設けられた環状のレールにて構成されており、
前記第1支持部は、前記ラインセンサを、前記第2支持部を構成する前記レールに対し、当該レール上を走行可能に固定することを特徴とする。
【0010】
また、請求項5に記載の発明は、請求項1に記載のミリ波撮像装置において、
前記ラインセンサは、前記検査台を包囲可能な環状のケース内に前記複数の受信素子を収納することにより構成されており、
前記支持台は、前記ラインセンサの環状のケースを、前記検査台周囲で上下動可能に支持する支柱にて構成されており、
前記アクチュエータは、前記ラインセンサの環状のケースを、前記支柱に沿って上下方向に変位させることを特徴とする。
【0011】
次に、請求項6に記載の発明は、請求項1〜請求項5の何れか1項に記載のミリ波撮像装置において、
前記ラインセンサは、前記複数の受信素子を隣接する所定数毎にグループ分けしたグループ毎に、前記被写体から放射された前記ミリ波帯の熱雑音を各受信素子に導く凸レンズを備えたことを特徴とする。
【0012】
また、請求項7に記載の発明は、請求項6に記載のミリ波撮像装置において、
前記ラインセンサにおいて、前記グループを構成する所定数の受信素子は、前記凸レンズの中心軸から離れる程、前記凸レンズとの間隔が短くなるよう配置されていることを特徴とする。
【0013】
また、請求項8に記載の発明は、請求項6又は請求項7に記載のミリ波撮像装置において、
前記ラインセンサに設けられる凸レンズは、一方のレンズ面が平面状に形成された平凸レンズにて構成され、
前記平凸レンズの前記平面状のレンズ面には、前記ミリ波帯の熱雑音を反射する反射板が積層されていることを特徴とする。
【0014】
次に、請求項9に記載の発明は、請求項1〜請求項8の何れか1項に記載のミリ波撮像装置において、
前記アクチュエータを介して前記ラインセンサによる前記被写体の撮像位置を変化させて、前記ラインセンサの各受信素子から受信信号を取り込むことで、前記周囲画像の画像データを生成し、該画像データに基づき、前記被写体の周囲画像を表示装置に表示する制御装置を備えたことを特徴とする。
【0015】
また、請求項10に記載の発明は、請求項9に記載のミリ波撮像装置において、
前記制御装置は、
前記ラインセンサによる前記被写体の撮像位置を変化させて、前記ラインセンサの各受信素子から受信信号を取り込むことにより生成した、前記熱雑音の受信レベルからなる前記被写体の画像データと、
前記表示装置の表示画面を仮想空間として、前記被写体を前記表示装置に3D表示するための3Dデータと、
に基づき、前記表示装置に、前記被写体表面から放射される前記熱雑音の信号レベルを識別可能な、前記被写体の3D画像を表示すること、
を特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
請求項1に記載のミリ波撮像装置によれば、被写体の画像を撮像するためのラインセンサが、支持台を介して、検査台周囲で変位可能に支持されている。そして、アクチュエータが、支持台に支持されたラインセンサを検査台周囲で変位させることで、ラインセンサによる被写体の撮像位置を変化させて、ラインセンサに、被写体の周囲画像を撮像させる。
【0017】
このため、本発明のミリ波撮像装置によれば、上述した従来のミリ波撮像装置のように、被写体の周囲画像を撮像するために、検査台上で、ミリ波撮像装置に対する被写体の向きを変えさせる必要がない。
【0018】
従って、本発明のミリ波撮像装置によれば、被写体が隠し持った物品(隠匿物)を検出するために行う被写体の撮像を、簡単且つ短時間で行うことができ、延いては、空港等で多数の乗客を検査するのに好適なミリ波撮像装置を提供することが可能となる。
【0019】
ここで、ラインセンサは、請求項2に記載のように、複数の受信素子を直線状に配置することにより構成してもよく、或いは、請求項5に記載のように、検査台を包囲可能な環状のケース内に複数の受信素子を収納することにより構成してもよい。
【0020】
そして、ラインセンサを請求項2に記載のように構成した場合には、支持台を、ラインセンサにおける受信素子の配列方向が、検査台に載置される被写体の上下方向となるようにラインセンサを支持する第1支持部と、この第1支持部を、ラインセンサが検査台の外周に沿って移動可能に支持する第2支持部とにより構成し、アクチュエータが、第2支持部を介してラインセンサを検査台周囲で変位させるようにすればよい。
【0021】
また、この場合、請求項3に記載のように、第2支持部を、検査台の中心位置を通る中心軸周りに回動可能な回転板にて構成し、第1支持部が、ラインセンサを、第2支持部を構成する回転板の外周部分に位置決め固定するようにするとよい。
【0022】
つまり、このようにすれば、アクチュエータを介して、第2支持部を中心軸周りに回動させることで、ラインセンサを検査台周囲(換言すれば被写体周囲)で回転させて、被写体の周囲画像を撮像させることが可能となる。
【0023】
また、このように被写体の周囲画像を撮像させるには、請求項4に記載のように、第2支持部を、検査台の周囲に設けられた環状のレールにて構成し、第1支持部が、ラインセンサを、レール上を走行可能に固定するようにすればよい。
【0024】
つまり、このようにすれば、アクチュエータを介して、ラインセンサをレールに沿って走行させることができ、その走行時に、ラインセンサを介して被写体を撮像させることで、被写体の周囲画像を撮像することが可能となる。
【0025】
一方、ラインセンサを請求項5に記載のように構成した場合には、支持台を、ラインセンサの環状のケースを検査台周囲で上下動可能に支持する支柱にて構成し、アクチュエータを、ラインセンサの環状のケースを支柱に沿って上下方向に変位させるように構成すればよい。
【0026】
つまり、このようにすれば、環状のラインセンサを被写体周囲で上下動させることで、被写体の周囲画像を撮像することができる。
また、ラインセンサは、複数の受信素子を直線状若しくは環状に配置するだけで構成してもよいが、請求項6に記載のように、複数の受信素子を、隣接する所定数毎にグループ分けし、そのグループ毎に、被写体から放射されたミリ波帯の熱雑音を各受信素子に導く凸レンズを設けることで、構成してもよい。
【0027】
つまり、このようにすれば、凸レンズを介して結像される被写体画像の位置に、複数の受信素子を配置することができ、被写体をより鮮明に撮像することが可能となる。
なお、この場合、所定数の受信素子と凸レンズとの間の距離を一致させると、凸レンズの収差によって、得られる画像が不鮮明になることが考えられる。
【0028】
そこで、この場合には、請求項7に記載のように、ラインセンサにおいて、グループを構成する所定数の受信素子は、凸レンズの中心軸から離れる程、凸レンズとの間隔が短くなるように配置するとよい。
【0029】
また、ラインセンサに設けられる凸レンズは、請求項8に記載のように、一方のレンズ面が平面状に形成された平凸レンズにて構成し、その平凸レンズの平面状のレンズ面には、ミリ波帯の熱雑音を反射する反射板を積層するようにしてもよい。
【0030】
そして、このようにすれば、平凸レンズのレンズ面から入射した熱雑音を、反射板にて反射させることで、受信素子に導くことができるようになり、凸レンズを、両方のレンズ面が凸条に形成された両凸レンズにて構成した場合に比べて、被写体の撮像性能を低下させることなく、凸レンズの体積及び重量を低減して、ミリ波撮像装置の小型・軽量化を図ることができる。
【0031】
次に、請求項9に記載のミリ波撮像装置においては、アクチュエータを介してラインセンサによる被写体の撮像位置を変化させて、ラインセンサの各受信素子から受信信号を取り込むことで、周囲画像の画像データを生成する制御装置が備えられている。
【0032】
そして、制御装置は、その生成した画像データに基づき、被写体の周囲画像を表示装置に表示する。
このため、請求項9に記載のミリ波撮像装置によれば、被写体に物品が隠されている場合に、使用者は、表示装置に表示された被写体の画像から、その旨を簡単に検知することができるようになる。
【0033】
つまり、被写体に物品が隠されている場合、その物品により、被写体から放射される熱雑音が遮断される。
従って、制御装置が、上記のように生成した被写体の画像データを用いて、被写体の周囲画像を表示装置に表示するようにすれば、その表示画面上で、物品が隠されている部分と隠されていない部分とで表示が異なるようになり、使用者は、その表示画面から、被写体に物品が隠されていることを簡単に検知することができるようになるのである。
【0034】
また、請求項10に記載のミリ波撮像装置においては、制御装置が、ラインセンサによる被写体の撮像位置を変化させて、ラインセンサの各受信素子から受信信号を取り込むことにより生成した被写体の画像データをそのまま用いて、表示装置に被写体の周囲画像を表示するのではなく、その画像表示に、被写体の3Dデータを用いる。
【0035】
この3Dデータは、表示装置の表示画面を仮想空間として、被写体を表示装置に3D表示するためのデータであり、制御装置は、この3Dデータと、アクチュエータとラインセンサとを用いて生成した画像データとに基づき、被写体表面から放射される熱雑音の信号レベルを識別可能な、被写体の3D画像を、表示装置に表示する。
【0036】
つまり、制御装置にて生成されるミリ波による撮像画像(周囲画像)は、被写体を、その周囲の異なる方向から撮像した1ライン分の画像を繋ぎ合わせたものであり、被写体の表面を平面に展開した展開図となる。
【0037】
このため、その撮像画像(展開図)をそのまま表示装置に表示すると、その表示画像から、被写体に物品が隠されていることを確認できても、その隠し場所が被写体のどこであるのかを識別するのは難しい。
【0038】
そこで、請求項10に記載のミリ波撮像装置においては、表示装置の表示画面上で被写体の表面から放射されるミリ波のミリ波の信号レベルを識別できるように、制御装置が、表示装置に、被写体の3D画像を表示するようにしている。
【0039】
従って、請求項10に記載のミリ波撮像装置によれば、使用者は、表示装置に表示された被写体の3D画像から、被写体に隠されている物品の位置を簡単に特定できるようになり、使用者にとって、より使い勝手の良いミリ波撮像装置を提供できることになる。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下に本発明の実施形態を図面と共に説明する。
[第1実施形態]
図1に示すように、本実施形態のミリ波撮像装置は、空港などで乗客が危険物を隠し持っていないかどうかをチェックするためのものであり、被写体2である撮像対象者が乗る検査台4を備える。
【0042】
検査台4は、円板形状であり、その外周縁一端を、支持部6を介して、支持台8に固定することで、支持台8の上に間隔を空けて固定されている。なお、支持台8は、ミリ波撮像装置全体を支持するためのものであり、キャスタ(図示せず)を介して任意の場所に移動できるようにされている。
【0043】
支持台8と検査台4との間には、撮像用のラインセンサ10を支持する回転板12が設けられている。回転板12は、その外周縁一端から突出された支持部12aにより、ラインセンサ10を、検査台4の周囲で回転移動可能に支持するためのものである。そして、回転板12は、ボールベアリング等からなる上下一対の軸受14、15を介して、支持台8と検査台4との間に回転可能に固定されている。
【0044】
また、支持台8は、中空の箱状に形成されており、中空部には、回転板12の回転軸12bが突出されている。つまり、回転板12には、回転板12の下方に配置された軸受15の中心部分を通って、支持台8の中空部に突出された回転軸12bが設けられている。
【0045】
そして、支持台8の中空部には、この回転軸12bに減速ギヤ16を介して出力軸18aが接続された、モータ18が設けられている。
このため、本実施形態のミリ波撮像装置においては、モータ18を正方向又は逆方向に駆動することで、回転板12を回転軸12b周りに回転させて、ラインセンサ10を検査台4周囲で移動させることができる。
【0046】
次に、ラインセンサ10は、検査台4の上に乗った被写体2の画像を撮像するためのものであり、回転板12の板面に対し直交する方向(通常、鉛直方向)に配列されたミリ波受信用の複数の受信素子20と、複数の凸レンズ22とを備える。
【0047】
凸レンズ22は、誘電体レンズ等からなる電波レンズであり、被写体2から放射されたミリ波帯の熱雑音を透過させることで、自身の焦点距離に対応した所定位置に被写体像を結像させる。
【0048】
そして、受信素子20は、一つの凸レンズ22に対し、複数個(図では5個)割り当てられており、その割り当てられた複数個のグループ毎に、対応する凸レンズ22による被写体像の結像位置に配置されている。
【0049】
このため、ラインセンサ10を構成する各グループの受信素子20からの出力を取り込むことで、被写体2の上下方向1ライン分の熱雑音を検出することができる。
そして、上記のようにモータ18を駆動することにより、ラインセンサ10を検査台4の周囲で変位させつつ、ラインセンサ10を利用した熱雑音の検出動作を連続的に実施すれば、被写体2の周囲画像(ミリ波画像)を撮像することができる。
【0050】
このため、本実施形態のミリ波撮像装置には、こうした撮像動作を実行するための制御装置30が設けられている。
図2に示すように、この制御装置30は、画像処理機能を有するコンピュータにて構成されている。
【0051】
また、制御装置30には、上述したラインセンサ10及びモータ18に加えて、回転板12の回転位置(換言すれば、ラインセンサ10による被写体2の撮像位置)を検出する位置センサ24が接続されている。
【0052】
そして、制御装置30は、位置センサ24からの検出信号に基づき、モータ18を駆動することにより、
図1(a)に一点鎖線の矢印で示すように、ラインセンサ10を検査台4の周りで略一周させ、その間にラインセンサ10からの検出信号を繰り返し取り込むことで、被写体2の周囲画像を撮像する。
【0053】
また、制御装置30には、被写体2の撮像指令や撮像画像の表示条件等を入力するための操作部32、撮像画像等を表示するための表示装置34、及び、撮像画像の画像データや撮像画像の表示に用いる人体モデルの3Dデータ等を記憶するための記憶装置36も接続されている。
【0054】
なお、人体モデルの3Dデータは、
図5に例示するように、表示装置34の表示画面内の仮想空間に、標準的な人体モデルMを3D(三次元)表示するためのデータである。
そして、制御装置30は、ラインセンサ10を介して撮像した被写体2の周囲画像(詳しくは被写体各部から放射されるミリ波の信号レベル)を、人体モデルMにマッピングすることで、表示装置34に被写体2の撮像画像を3D表示する。
【0055】
以下、このように被写体2を撮像して表示装置34に3D表示するために、制御装置20にて実行される撮像・表示処理について説明する。
この撮像・表示処理は、制御装置30が、内蔵メモリ若しくは記憶装置36に格納された制御プログラムを実行することにより、繰り返し実行される処理である。
【0056】
図3に示すように、撮像・表示処理においては、まずS110(Sはステップを表す)にて、操作部32から撮像指令が入力されたか否かを判断することにより、撮像指令が入力されるのを待つ。
【0057】
そして、操作部32から撮像指令が入力されると、S120に移行して、位置センサ24を介してラインセンサ10による被写体2の撮像位置を検出しつつモータ18を駆動することにより、ラインセンサ10を予め設定された基準位置へ移動させる。
【0058】
なお、この基準位置は、例えば、被写体2である撮像対象者が検査台2の中央に所定方向を向いて乗っているとき、ラインセンサ10が撮像対象者の真正面に配置される位置として予め設定されている。
【0059】
S120にて、ラインセンサ10を基準位置へ移動させると、S130に移行して、ラインセンサ10を構成する全ての受信素子20から、順に受信信号を取り込むことで、被写体2の上下方向1ライン分の熱雑音を検出する。
【0060】
そして、続くS140では、モータ18を一方向に所定量だけ回転させることで、ラインセンサ10による被写体2の撮像位置(被写体2に対する撮像角度)を、予め設定された1画素分移動させ、S150に移行する。
【0061】
S150では、S140によるラインセンサ10の移動によって、ラインセンサ10による被写体2の撮像位置が、基準位置まで戻ったか否か(換言すれば、S120にてラインセンサ10を基準位置へ位置決めしてから、ラインセンサ10が被写体2の周りを360°若しくはそれ以上移動したか否か)を判断することで、被写体2の撮像が完了したか否かを判断する。
【0062】
そして、S120の処理実行後、ラインセンサ10が被写体2の周りを360°以上移動していて、S150にて、被写体2の撮像が完了したと判断されると、S160に移行し、S150にて、被写体2の撮像は完了していないと判断されると、S130に移行する。
【0063】
この結果、S130の処理は、ラインセンサ10が被写体2の周りを一回転する間、撮像画像のラインセンサ10に直交する横方向の分解能を決める一画素分ずつ繰り返し実行されることになる。
【0064】
従って、S150にて、被写体2の撮像が完了したと判定されたときには、
図4に例示するように、ラインセンサ10の高さを縦軸、ラインセンサ10による撮像位置(0°〜360°までの回転角度)を横軸とし、受信素子20の数と、S140でのラインセンサ10の移動量(回転角度)とで決まる、所定分解能の撮像画像(ミリ波画像)が得られることになる。
【0065】
ところで、この撮像画像は、被写体2を周囲の全方向から撮像した周囲画像であり、被写体2の表面を平面に展開した展開図となる。
このため、撮像画像をそのまま表示装置34に表示した場合には、
図4に例示するように、撮像対象者が隠し持っている物品P1が映っていても、その物品P1の位置が撮像対象者のどこに隠されているかを識別するのが難しい。
【0066】
つまり、撮像対象者が物品P1を隠し持っている場合、撮像対象者自身から放射される熱雑音が物品P1にて遮断されて、ラインセンサ10でのミリ波の受信レベルが低レベルとなる。このため、撮像画像を表示装置34に表示すれば、使用者は、その表示画面上で物品P1の存在を識別できる。
【0067】
しかし、表示装置34には、被写体2の表面を平面に展開した画像が表示されるので、その表示画面から、物品P1の位置が撮像対象者のどの位置であるのかを特定するのが難しく、使用者がミリ波撮像装置の利用に不慣れな場合、物品P1の位置を特定するのに時間がかかる。
【0068】
そこで、S150にて、被写体2の撮像が完了したと判定されると、S160〜S210の表示処理を実行する。
この表示処理では、
図5に例示するように、撮像画像の画像データに基づき、仮想空間内の人体モデルMの表面に、被写体2から放射されている熱雑音(ミリ波)の信号レベルに対応した色若しくは色の濃さ(所謂グレースケール)をマッピングし、そのマッピングした人体モデルMを、特定方向の方向から見た表示用の画像データに変換して、表示装置34に表示する。
【0069】
なお、
図5は、表示装置34に表示された人体モデルMの3D画像を例示しているが、撮像画像のマッピング状態を分かり易くするため、人体モデルMの正面に向かって右側半分の領域に、点線にて、撮像画像1画素毎のマッピング領域を記載している。
【0070】
また、表示処理では、表示装置34の表示画面の下方には、人体モデルMを表示する際の視点を、ラインセンサ10の基準位置(0°)から最大回転位置(360°)までの間で任意に設定できるように、クロールバーBを表示する。
【0071】
そして、使用者が操作部32を操作して、スクロールバーB内でカーソルKを移動させると、表示装置34の表示画面内で、人体モデルMを上下方向の中心軸周りに回転させる。
【0072】
すなわち、S160では、記憶装置36から人体モデルMの3Dデータを読み込む。
また、続くS170では、S120〜S150の撮像処理にてラインセンサ10から取得した撮像画像の画像データから、被写体2から放射された熱雑音(ミリ波)の領域(
図4に示す被写体2の領域)を、マッピング用画像データとして抽出する。
【0073】
そして、S180では、その抽出したマッピング用画像データの画素毎に、ミリ波の信号レベルに対応した色又は色の濃さ(グレースケール)を設定し、人体モデルM表面の対応位置に割り当てることで、人体モデルMの表示用3Dデータを生成する。
【0074】
また、S190では、S180にて生成した表示用3Dデータに基づき、仮想空間内で人体モデルMを特定方向から見た表示用画像データに変換し、その画像データに基づき表示装置34に人体モデルMを表示する。
【0075】
次に、S200では、表示画面の仮想空間内で人体モデルMを回転させる視点変更指令が、操作部32を介して入力されたか否かを判断する。なお、この指令入力は、上述したように、使用者が、操作部32を操作することよって、表示画面上でスクロールバーB内のカーソルKを移動させることにより行われる。
【0076】
そして、S200にて、視点変更指令が入力されたと判断されると、S190に移行して、表示画面に表示されている人体モデルMが、その視点変更指令に対応した方向から見た状態となるように、人体モデルM表示用の画像データを更新して、人体モデルMの表示を変更する。
【0077】
また、S200にて、視点変更指令は入力されていないと判断されると、S210に移行し、表示装置34への人体モデルMの表示(換言すればラインセンサ10による撮像画像の表示)を終了させる表示終了指令が、操作部32を介して入力されたか否かを判断する。
【0078】
そして、S210にて、表示終了指令は入力されていないと判断されると、S190に移行して、S190、S200の処理を実行し、S210にて、表示終了指令が入力されたと判断されると、当該撮像・表示処理を一旦終了する。
【0079】
なお、S210の判定処理後、当該撮像・表示処理を一旦終了した後は、制御装置30は、所定の待機時間経過後、再度S110に移行し、上記一連の処理を再度実行する。
以上説明したように、本実施形態のミリ波撮像装置においては、ラインセンサ10を、検査台4の周囲で移動させることで、ラインセンサ10による被写体2の撮像位置を変化させて、被写体2の周囲画像を撮像するように構成されている。
【0080】
このため、本実施形態のミリ波撮像装置によれば、上述した従来装置のように、撮像対象者となる被写体2を周囲から見た周囲画像を撮像するために、検査台4上で被写体2の向きを変えさせる必要がない。
【0081】
よって、本実施形態のミリ波撮像装置によれば、被写体2である検査対象者が隠し持った危険物等を検出するために行う被写体2の撮像を、簡単且つ短時間で行うことができ、延いては、空港等で多数の乗客を検査するのに好適なミリ波撮像装置を提供することが可能となる。
【0082】
また、本実施形態では、ラインセンサ10を介して撮像した被写体2の周囲画像を表示装置34に表示する際、撮像結果(つまり、被写体2の表面の展開図となる周囲画像)を、表示装置34の表示画面に表示するのではなく、表示画面の仮想空間内に3D表示可能な人体モデルMを用いる。
【0083】
そして、その人体モデルMを3D表示する際に、人体モデルMの表面各部に、ラインセンサ10を介して得られた被写体2の表面からの熱雑音(ミリ波)の放射レベルに応じた色又は色の濃さを割り当てることで、撮像結果を3D表示する。
【0084】
このため、使用者は、その表示画像から、撮像対象者が危険物等の物品P1を隠し持っている場所を簡単に特定できるようになり、不慣れな使用者にとって使い勝手のよいミリ波撮像装置を提供できる。
【0085】
なお、本実施形態においては、支持部12aが本発明の第1支持部に相当し、回転板12が本発明の第2支持部に相当し、モータ18が本発明のアクチュエータに相当する。
[第2実施形態]
図6に示すように、第2実施形態のミリ波撮像装置は、第1実施形態のミリ波撮像装置と同様、被写体2が乗る検査台4、及び、検査台4を支持する支持台8を備える。
【0086】
そして、支持台8には、検査台4の周囲でラインセンサ10を移動させるための円環状のレール40が設けられており、このレール40には、第1実施形態と同様に構成されたラインセンサ10を走行可能に支持する支持部42が設けられている。
【0087】
支持部42は、ラインセンサ10を載置するための枠体44と、この枠体44をレール40に沿って走行させるために、枠体44に軸受45を介して回転自在に固定された車輪46とから構成されている。そして、車輪46には、モータ48により回転駆動できるように、減速ギヤ49を介して、モータ48の出力軸48aが接続されている。
【0088】
従って、本実施形態のミリ波撮像装置においても、第1実施形態のミリ波撮像装置と同様、
図2に示した制御装置30を介して、モータ48を駆動することにより、ラインセンサ10による被写体2の撮像位置を変化させて、被写体2の周囲画像を撮像することができ、延いては、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0089】
なお、本実施形態においては、支持部42が本発明の第1支持部に相当し、レール40が本発明の第2支持部に相当し、モータ38が本発明のアクチュエータに相当する。
[第3実施形態]
図7に示すように、第3実施形態のミリ波撮像装置は、合成樹脂製の円環状のケース52内に複数の受信素子20を略等間隔で放射状に配置することにより、ケース52の内側に存在する被写体2の周囲画像を撮像するラインセンサ50を備える。
【0090】
ラインセンサ50のケース52には、その中心軸を挟んで互いに対向する位置にて外方向に突出された一対の突出部54、55が形成されている。そして、この一対の突出部54、55は、それぞれ、円形の支持台8に立設された一対の支柱56、57に上下動可能に装着されている。
【0091】
また、支持台8において、支柱56、57の内側には、被写体2である検査対象者が乗るための検査台4が設けられている。また、上記一対の支柱56、57の内、一方の支柱57の上端には、滑車58が設けられている。
【0092】
この滑車58には、一端がラインセンサ50のケース52に固定されたワイヤ59が通されている。そして、ワイヤ59の他端は、支柱57の下方に取り付けられた巻取装置60に装着されている。
【0093】
このため、本実施形態のミリ波撮像装置によれば、
図2に示した制御装置30を介して、巻取装置60によるワイヤ59の巻取量を調整することで、ラインセンサ50を、支柱56、57に沿って上下動させることができる。
【0094】
なお、本実施形態では、位置センサ24として、ラインセンサ50の高さ位置を検出するものが使用される。
つまり、このようにすることで、制御装置30は、位置センサ24からの検出信号に基づき、巻取装置60を駆動することにより、ラインセンサ10の高さ位置を確認しつつ、ラインセンサ10を上方若しくは下方に移動させることができる。
【0095】
そして、制御装置30は、その移動時に、ラインセンサ10からの検出信号を繰り返し取り込むことで、ラインセンサ50の内側に位置する被写体2の周囲画像を撮像する。
従って、本実施形態のミリ波撮像装置においても、第1、第2実施形態のミリ波撮像装置と同様、
図2に示した制御装置30を介して、被写体2の周囲画像を撮像することができ、延いては、第1、第2実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0096】
なお、本実施形態においては、巻取装置60が本発明のアクチュエータに相当する。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内にて種々の態様をとることができる。
(変形例1)
例えば、上記実施形態のミリ波撮像装置は、被写体2の周囲にはラインセンサ10、50が配置され、ラインセンサ10、50が、被写体2の周りで回動若しくは上下動することにより、被写体2の周囲画像を撮像するが、その撮像時に、受信素子20に外部ノイズが侵入すると、被写体2を良好に撮像することができなくなる。
【0097】
このため、ミリ波撮像装置の周囲に、ラインセンサ10、50の受信素子20に侵入するのを阻止する遮蔽板を設けるとよい。
また、この遮蔽板としては、外部ノイズを反射する金属板若しくは導電性シートを設けるようにしてもよいが、このようにすると、金属板や導電性シートにて外部ノイズが反射されるので、その反射した外部ノイズが受信素子20に侵入することも考えられる。
【0098】
このため、より好ましくは、遮蔽板として、外部ノイズを吸収可能なものを設けるとよい。
具体的には、
図8に例示するように、ラインセンサ10の周囲に、ラインセンサ10前方の被写体2側及びラインセンサ10の後方側から入射するミリ波帯の電波を吸収可能な冷却板70を設けるとよい。
【0099】
なお、
図8に示す冷却板70は、板面に沿って内部空間が形成された合成樹脂製の板状ケース内に、電波吸収体としての水を充填することにより構成されている。
そして、冷却板70の下方及び上方には、内部空間に連通した開口が形成されており、その開口にパイプ72を介して水の循環装置74を接続することで、冷却板70内に冷却した水を循環させるようになっている。
【0100】
このため、
図8に示すミリ波撮像装置においては、ラインセンサ10周囲の不要なノイズを冷却板70内の水にて吸収することができ、しかも、その水を循環装置74にて冷却しつつ循環させることで、冷却板70自身が熱雑音を発生するのを抑制することができる。
【0101】
なお、
図8に示すミリ波撮像装置は、
図1に示した第1実施形態のミリ波撮像装置に冷却板70を設けたものを表しているが、第2実施形態或いは第3実施形態のミリ波撮像装置においても、ラインセンサ10、50の周囲に冷却板70を設けることで、不要なノイズを低減することができる。
(変形例2)
次に、第3実施形態のミリ波撮像装置においては、ラインセンサ50のケース52に接続されたワイヤ59を巻取装置60にて巻き取ることにより、ラインセンサ50を上下動させるものとして説明したが、ワイヤ59に代えて、歯車にて巻取可能なベルト若しくはチェーンを利用し、歯車によるベルトやチェーンの巻取量を調整することでラインセンサ50を上下動させるように構成してもよい。
【0102】
また、ラインセンサ50を上下動させるには、例えば、ラックとピニオンギヤとの組み合わせにより、モータの回転をラインセンサの上下動(直線の動き)に変換させるギヤ機構等、ラインセンサ50を上下動させるためのアクチュエータを、支柱56、57に内蔵するようにしてもよい。
(変形例3)
また、第3実施形態のミリ波撮像装置のラインセンサ50には、第1、第2実施形態のラインセンサ10のように、凸レンズ22は設けられていない。これは、ケース52内の受信素子20と被写体2との間の距離が短いためであり、第3実施形態のミリ波撮像装置においても、第1、第2実施形態と同様に、複数の受信素子20をグループ分けしたグループ毎に、凸レンズ22を設けるようにしてもよい。
(変形例4)
一方、第1、第2実施形態のミリ波撮像装置において、ラインセンサ10を構成する受信素子20は、全て、被写体2の方向を向けて一列に配置されるものとして説明したが、
図9に示すように、受信素子20は、対応する凸レンズ22との間の距離が、凸レンズ22の中心軸から離れる程、短くなり、しかも、受信方向が凸レンズ22の焦点に向けて放射状となるよう、配置するとよい。
【0103】
そして、このようにすれば、凸レンズ22の収差によって、撮像画像(ミリ波画像)が不鮮明になるのを防止できる。
(変形例5)
また、ラインセンサ10に設ける凸レンズ22は、
図1、
図6に示したように、両方のレンズ面が凸条に形成された両凸レンズにて構成する必要はなく、
図10に示すように、一方のレンズ面が平面状に形成された平凸レンズ80にて構成してもよい。
【0104】
そして、この場合、平凸レンズ80の平面状のレンズ面には、ミリ波帯の熱雑音を反射する反射板82(若しくは反射シート)を積層する。
この結果、平凸レンズ80のレンズ面から入射したミリ波帯の熱雑音を、反射板82にて反射させて、受信素子20に導くことができるようになり、第1、第2実施形態のように両凸レンズを用いた場合に比べて、凸レンズの体積及び重量を低減して、ミリ波撮像装置の小型・軽量化を図ることが可能となる。
(変形例6)
次に、第3実施形態では、円環状のケース52内の全周にわたって、複数の受信素子20を等間隔に設けることで、ラインセンサ50を構成するものとして説明したが、例えば、ケース52の略1/2の領域(つまり180度の領域)に複数の受信素子20を設けるようにしてもよい。
【0105】
そして、この場合、被写体2の撮像時には、ラインセンサ50を上方及び下方に往復動させ、移動方向を切り換える際に、ラインセンサ50を180度回転させるようにすれば、上記実施形態と同様、被写体2の周囲画像を撮像することができるようになる。
(変形例7)
また、上記各実施形態では、ラインセンサ10、50を、被写体2の周りで回動若しくは上下動させることで、被写体2の周囲画像を撮像することから、撮像時に、ラインセンサ10、50が被写体2若しくは他の障害物に当たって、ミリ波撮像装置が故障してしまうことが考えられる。
【0106】
このため、ラインセンサ10、50には、その移動方向に存在する障害物を検出するための障害物センサを設け、障害物センサにて、障害物が検出されたときには、制御装置30が、ラインセンサ10、50の移動を停止させるようにしてもよい。
(変形例8)
また、第1実施形態の説明では、被写体2の周囲画像を表示装置34に表示する際、仮想空間で3D表示可能な人体モデルMの表面に、被写体2の撮像結果(詳しくは被写体表面から放射される熱雑音(ミリ波)の信号レベル)に対応した色若しくは色の濃さ(グレースケール等)をマッピングすることで、表示装置34に被写体2の撮像画像を3D表示するものとして説明したが、この表示は一例であり、例えば、
図4に示した撮像画像(展開図)をそのまま表示するようにしてもよい。
【0107】
また、撮像画像を3D表示する場合、必ずしも、標準的な人体モデルMの3Dデータを記憶装置36に記憶する必要はなく、例えば、撮像対象者である被写体2を可視光にて3D撮像することで、被写体2の3Dデータを生成し、その生成した3Dデータと、ラインセンサ10、50を介して得られるミリ波の撮像画像とを用いて、その撮像画像を3D表示するようにしてもよい。