【実施例】
【0016】
次に、本発明の実施例に係る電子システムの一例として車載装置について図面を参照して説明する。
図1は、車載装置の構成例を示すブロック図である。車載装置10は、CD、DVD、ブルーレイディスク、ハードディスク装置や地上波デジタルテレビ放送などから得られたオーディオデータやビデオデータを再生するマルチメディア再生部20と、自車位置周辺の道路地図を表示したり、目的地までの誘導経路を案内するナビゲーション部40と、メディア再生画面、ナビゲーション画面、ユーザー入力画面などを表示するディスプレイ60と、ユーザーの指や手の接近や動きを入力操作として検出する入力操作検出部80と、車内の各部に配置され、ユーザーによる接触を検知する接触検知部100と、車速やギア位置情報など車両情報を取得するため、車両の制御バスに接続されるバス接続部120と、自車位置を検出する自車位置算出部140と、プログラムやデータ等を記憶する記憶部160と、マイクロコントローラやマイクロプロセッサ等を含みプログラムを実行することで各部を制御する制御部180を含んで構成される。
【0017】
ディスプレイ60は、例えば、車載装置10の前面に位置し、メディア再生画面、ナビゲーション画面において、ユーザー操作の指示を要求するユーザー入力画面などを表示することができる。ユーザーは、表示されるユーザー入力画面に基づき入力操作を行い、目的地を選択したり、再生する音楽データを変更したりすることができる。
【0018】
入力操作検出部80は、ディスプレイ60の周辺において、ユーザーの指や手などの物体の接近や動きを入力操作として検出することができる。入力操作検出部80は、制御部180の制御により、ディスプレイ60の周辺に入力操作を検出可能な検出範囲を設定し、この検出範囲内における物体の位置や移動を検出することができる。このような物体の検出には、例えば、複数の赤外線センサが用いられ、照射された物体から反射する赤外光の光量変化等により、検出範囲内にある物体の有無や位置が検出される。
【0019】
図2は、入力操作検出部と検出範囲との関係を示す概略図であり、
図2(a)は、入力操作検出部の配置を示し、
図2(b)は、入力操作検出部による入力操作の検出範囲を示す。入力操作検出部80は、例えば、
図2(a)に示すように、直線状に配列された複数の赤外線センサLD1〜5からなり、ディスプレイ60の下端部に配置される。1つの赤外線センサは、例えば、1つの発光素子とそれに対応する受光素子とを備える。また、
図2(b)に示すように、指や手の接近を検出する検出範囲Rは、入力操作検出部80によって生成される。検出範囲Rの大きさや形状は、発光素子の出力強度、受光素子の受光感度等によって適宜設定することができる。例えば、中央の赤外線センサLD3の出力強度を赤外線センサLD1、LD5よりも大きくしたり、その感度を良くすることで、中央の検出距離Lが大きくなるように検出範囲Rが設定される。図の例では、赤外線センサLD1〜LD5が一列(X方向)に配置されているが、赤外線センサをディスプレイ60をX、Y方向の2次元に配置することで、検出範囲Rによる検出空間を設定することも可能である。また、赤外線センサLD1〜5の配置や取付角度により、検出範囲Rの検出幅Wの範囲も適宜設定することができる。
【0020】
接触検知部100は、車内各部に配置された複数の接触センサを含み、例えば、ハンドル、シフトレバー、ウィンカーレバー、ワイパーレバー、アクセルペダル、ブレーキペダルなど、運転操作時に使用される各部への接触を検出することができる。接触検知部100は、運転操作に関するもの以外にも、ハザードランプ、エアコン、サイドミラーの角度調整、ウィンドウの開閉の操作ボタンなど、入力操作を意図しない状況を判定可能な各種部位への接触を検知してもよい。接触検知部100の検知結果は、制御部180へ提供され、ユーザーの入力操作の意図を判定するために利用される。
【0021】
図3は、ハンドルに設けられた接触センサを示す図である。ハンドル190には、その表面上に静電容量型センサ192a〜cが形成され、運転手の手との間に生じる静電容量の変化を検出することができる。アクセルペダル、ブレーキペダルなど静電容量の検出が難しい部位においては、歪みゲージなど接触による圧力を検出可能な圧電センサが利用される。
【0022】
バス接続部120は、車両の制御バスに接続することができる。バス制御部120が車両の制御バスに接続されると、車載装置10は、車両各部を制御する制御信号や車両各部の状態をチェックするモニタリング信号など車両情報を取得することができる。車両情報は、例えば、車両の速度、ハンドルの切れ角、シフトレバーまたはギアの位置などに関する情報を含む。
【0023】
自車位置検出部140は、例えば、GPS衛星から送信される信号を利用して自車の絶対位置を検出するもの、ジャイロセンサや加速度センサなど車両に搭載された種々のセンサから自車の相対位置を検出するものであることができる。また、自車位置検出部140は、ネットワークを介して位置情報配信サイト(または配信サーバー)にアクセスし、そこから自車位置を検出することもできる。この場合、ネットワークへの接続は、搭載されたデータ通信機能や接続された通信機器を介して行われる。
【0024】
記憶部160は、ナビゲーション動作に必要な道路地図データや、メディア再生動作に必要な楽曲データなどを記憶することができる。一つの例では、記憶部160は、大容量の記憶装置を含み、ここに道路地図データや施設データなどのデータベースを蓄積することができる。また、記憶部160は、各種プログラムを格納したり、プログラム以外にも、検出範囲のパターンに関する情報等を記憶することができる。また、車載装置が外部のネットワーク等に通信する機能を備えている場合には、情報配信サーバーなどから地図データ等を取得し、これを記憶部160に蓄積するものであってもよい。
【0025】
制御部180は、好ましい態様では、ROM、RAMなどを含むマイクロコントローラから構成され、ROMまたはRAMは、車載装置の各部の動作を制御するための種々のプログラムを格納することができる。さらに本実施例では、制御部180は、ユーザーの運転操作等の検知結果に基づきユーザーが入力操作を意図しているか否かを判定し、入力操作を意図しないと判定されたとき、入力操作の検出範囲を縮小するように制御する検出範囲制御プログラムを保持する。
【0026】
本実施例による検出範囲制御プログラムの機能的な構成を
図4に示す。検出範囲制御プログラム200は、ユーザーからの入力を受け取るときに、メニュー画面、メディア再生画面やナビゲーション画面など、ユーザー入力画面をディスプレイ60に表示する画面表示手段202と、入力操作を検出するための検出範囲を生成する検出範囲生成部204と、接触検知部100による出力に基づき、車内各部へのユーザー接触に関する情報を取得する接触情報取得手段206と、バス接続部120を介して、車両の制御バスから車両情報を取得する車両情報取得手段208と、自車位置検出部140の出力に基づき、道路地図データを用いて、車両の現在位置に関する情報を取得する位置情報取得手段210と、取得された接触情報、車両情報、位置情報の少なくとも1つに基づき、入力操作が意図される状況であるか否かを判定する状況判定手段212と、入力操作が意図されていない状況であると判定されたとき、入力操作の検出範囲が縮小または変更されるように検出範囲生成部204を制御する検出範囲制御手段214とを備えている。
【0027】
画面表示手段202は、メディア再生やナビゲーションなどのアプリケーションの実行に応じてユーザーに入力を促すユーザー入力画面を表示する。ユーザー入力画面は、いずれの態様であってもよく、例えば、入力を指示するもの、選択を指示するもの、スクロールを指示するもの、ドラッグを指示するもの、拡大や縮小などを示すものであり、これらの指示は、タッチパネルや操作ボタンら入力することが可能である他、指や手の接近や移動によっても入力が可能である。例えば、メニューリストがユーザー入力画面として表示されたとき、ユーザーは、指を接近させることによってメニューから所望の項目を選択することができる。
【0028】
検出範囲生成部204は、画面表示手段202によって表示された内容がユーザー入力画面であったとき、入力操作を検出するための検出範囲を生成する。検出範囲生成部204は、入力操作検出部80によって、
図2(b)に示すような検出範囲を生成することができる。
【0029】
接触情報取得手段206は、接触検知部100からの出力に基づき、入力操作が意図されない状況または意図されている状況を判定するために用いる接触情報を取得することができる。接触情報は、接触があった部位に関する情報を含み、例えば、ハンドル、シフトレバーなど運転操作に関する部位への接触、ハザードランプ、エアコンなどの操作ボタンへの接触など、車内各部位への接触に関する情報である。
【0030】
車両情報取得手段208は、バス接続部120を介して、車両の制御バスから車両情報を取得することができる。車両情報は、例えば、車両の走行速度、ギアの位置情報、グローブボックスの開閉情報など、入力操作が意図されない状況を判定するために用いられる車両状態に関する情報である。
【0031】
位置情報取得手段210は、自車位置検出部140の出力に基づき、車両の現在位置に関する位置情報を取得することができる。また、位置情報取得手段210は、ナビゲーション部40から、例えば、「交差点周辺」、「急カーブの道路付近」など道路地図データに基づいた車両の現在位置を位置情報として取得してもよい。
【0032】
状況判定手段212は、接触情報、車両情報、位置情報に基づき、表示画面への入力操作が意図されている状況であるか否かを判定することができる。例えば、ハンドルなど、運転操作に必要な部位への接触がない場合、入力操作される可能性が高いため、入力操作が意図される状況であると判定される。また、シフトレバーが「P(パーキング)」の位置にある場合、入力操作が意図されている状況であると判定される。これ以外にも、車両の位置情報に基づき、車両が移動していないと判断される場合、入力操作が意図される状況であると判定される。
【0033】
これに対し、状況判定手段212は、運転操作に必要なハンドル等に接触している場合、シフトレバーが「D(ドライブ)」、「B(バック)」にある場合、ハンドルの切れ角が大きい場合、車両が交差点周辺にある場合など、運転動作をしている可能性が高いと推定される場合には、入力操作が意図されていない状況であると判定する。このような判定には、予め記憶された判定条件を用いるが、適宜更新することも可能である。なお、状況判定手段212は、接触情報、車両情報、位置情報いずれか1つの情報に基づき、状況を判定することができるが、それぞれの情報を組み合わせたものを判定条件としてもよい。
【0034】
検出範囲制御手段214は、状況判定手段212により入力操作が意図されていない状況であると判定されたとき、入力操作を意図しない運転動作などが検出されないように、検出範囲Rを縮小することができる。また、検出範囲制御手段214は、利用した判定条件からユーザーの動作を推定することができ、その推定される判定内容に応じて、検出範囲Rの縮小パターンを選択してもよい。
【0035】
図5は、検出範囲制御手段による検出範囲の変更例を示す図である。
図5(a)では、運転手がハンドルを握り、運転操作をしている例について説明する。状況判定手段212は、接触情報に基づき、入力操作が意図されていない状況であると判定する。また、検出範囲制御手段214は、その判定内容によりハンドル操作が推定されることから、通常時の検出範囲Rのうち、運転手側を削減して検出範囲R1に変更することができる。これにより、運転手の運転動作が検出範囲に入り込むことを防止することができる。なお、検出範囲R1は、入力操作検出部80において、例えば、運転手側の端部にある赤外線センサLD5を無効にすることにより生成することができる。
【0036】
図5(b)では、助手席S2の手前にあるグローブボックス300が開いている例について説明する。状況判定手段212は、グローブボックス300が開いているとき、入力操作が意図されていない状況であると判定する。これは、運転手がグローブボックス300の中から何かを取り出す取出動作が推定されるためであり、検出範囲制御手段214は、このような判定内容に応じて、運転手の取出操作を入力操作として検出しないように、検出範囲Rを検出範囲R2に縮小することができる。なお、検出範囲R2は、入力操作検出部80において、複数の赤外線センサLD1〜5の感度を低減することで生成することができる。
【0037】
次に、
図6のフローチャートに従って、本実施例の車載装置における入力操作の検出範囲制御動作について説明する。車載装置10にて、ナビゲーション機能が起動されるものとする。ナビゲーション機能が実行されると、画面表示手段202は、ディスプレイ60にナビゲーション画面を表示するが、その動作の中で、目的地検索画面や施設検索画面など、ユーザーからの入力を受け付けるユーザー入力画面を表示する(S101)。
【0038】
ユーザー入力画面が表示されると、検出範囲生成手段204は、入力操作検出部80によりディスプレイ60の周辺に、
図2(b)に示すような検出範囲Rを生成する(S102)。ユーザーは、表示されたユーザー入力画面に対して、当該検出範囲R内で指や手を接近させたり、移動させることで、目的地や施設などを選択することができる。
【0039】
このように、ユーザー入力画面が表示されたとき、あるいは、ユーザー入力画面が表示されている期間、接触情報取得手段206、車両情報取得手段208、位置情報取得手段210は、それぞれ接触情報、車両情報、位置情報を取得する(S103)。これらの情報は、入力操作が意図される状況であるか否かを判定する判定要因となるものであり、少なくともいずれか1つの情報が取得される。
【0040】
接触情報、車両情報、位置情報など、いずれか1つの情報が取得されたとき、状況判定手段212は、取得した情報に基づき、入力操作を意図している状況であるか否かを判定する(S104)。状況判定手段212は、予め設定された判定条件に従い、ハンドルやシフトレバーへの接触がある場合、車速が一定速度以上である場合、ギア位置が「D」または「B」である場合、グローブボックスが開いている場合など、入力操作が行われる可能性が低い状況である場合、入力操作を意図していないと判定する。
【0041】
入力操作を意図していないと判定された場合、検出範囲制御手段214は、該当した判定条件から判定内容を推定することができ、例えば、その判定内容に応じて、検出範囲の縮小パターンを選択する(S105)。例えば、その判定内容が運転操作を推定するものである場合、
図5(a)に示すように、運転手側の一部エリアを削減するような検出範囲R1を選択する。一方、判定内容がグローブボックスの開状態であることを推定するものである場合、
図5(b)に示すように、検出範囲を全体的に縮小するような検出範囲R2を選択する。好ましくは、判定内容とこれに対応する縮小パターンとの関係を予め記憶部160に記憶しておき、検出範囲制御手段214は、該当する縮小パターン情報を記憶部160から読出し、検出範囲を制御する。
【0042】
検出範囲制御手段214は、入力操作を意図していないと判定された場合、選択された縮小パターンに基づき、検出範囲生成手段204を制御して、検出範囲Rの大きさや形状を変更し、その範囲を縮小する(S106)。これにより、車載装置10は、ユーザーによる運転操作やグローブボックスの中から何かを取り出す行為を入力操作として誤検出することを防止することができる。
【0043】
上記実施例では、入力操作検出部は、直線状に配列された複数の赤外線センサにより構成される例を示したが、2次元状に配列された複数の赤外線センサであってもよい。その取付配置は、ディスプレイの下部に限定されず、ディスプレイ周辺に検出範囲を生成可能な位置であればよい。また、入力操作検出部が赤外線センサにより構成される例を示したが、入力操作検出部は、車載装置周辺を撮像する車内カメラであってもよい。この場合、撮像される領域のうち、その一部が検出領域に設定され、指や手の認識処理が行われる。
【0044】
上記実施例では、検出範囲制御手段は、推定される判定内容に基づき、検出範囲の縮小パターンを選択したが、車載装置は、更に、各座席シートに着座センサを含み、検出範囲制御手段は、運転手や搭乗者の有無に応じて、検出範囲の縮小パターンを選択してもよい。
【0045】
このように本実施例によれば、入力操作を意図しないと判定される場合、入力操作の検出範囲を変更することができる。これにより、入力操作が意図されない場面では、検出範囲が縮小されるため、運転手の運転動作などが入力操作として検出されることを防ぐことができる。
【0046】
本発明の好ましい実施の形態について詳述したが、本発明は、特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の要旨の範囲において、種々の変形・変更が可能である。