特開2015-133276(P2015-133276A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社オートネットワーク技術研究所の特許一覧 ▶ 住友電装株式会社の特許一覧 ▶ 住友電気工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特開2015133276-コネクタ 図000003
  • 特開2015133276-コネクタ 図000004
  • 特開2015133276-コネクタ 図000005
  • 特開2015133276-コネクタ 図000006
  • 特開2015133276-コネクタ 図000007
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-133276(P2015-133276A)
(43)【公開日】2015年7月23日
(54)【発明の名称】コネクタ
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/42 20060101AFI20150630BHJP
【FI】
   H01R13/42 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-4799(P2014-4799)
(22)【出願日】2014年1月15日
(71)【出願人】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(71)【出願人】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】特許業務法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】増田 健志
【テーマコード(参考)】
5E087
【Fターム(参考)】
5E087EE02
5E087FF06
5E087FF13
5E087GG15
5E087GG24
5E087GG31
5E087HH04
5E087LL03
5E087LL04
5E087LL12
5E087MM05
5E087RR06
(57)【要約】
【課題】両ハウジングを離脱させる際のフロント部材の脱落を防ぐ。
【解決手段】機器側ハウジング92と嵌合可能な電線側ハウジング30を有する電線側コネクタ10であって、電線側ハウジング30には、機器側ハウジング92内に前方から嵌合可能な端子収容部32と、端子収容部32に後方から収容される雌端子20と、端子収容部32の前端部に前方から組み付けられるフロントリテーナ50とを備え、フロントリテーナ50には、機器側ハウジング92と電線側ハウジング30とを離脱させる際に、雌端子20の係止部25と前後方向に係止する抜け止め部57が設けられているところに特徴を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
相手側ハウジングと嵌合可能なハウジングを有するコネクタであって、
前記ハウジングには、前記相手側ハウジング内に前方から嵌合可能な端子収容部と、
前記端子収容部内に保持される端子と、
前記端子収容部の前端部に前方から組み付けられるフロント部材とを備え、
前記フロント部材には、前記相手側ハウジングと前記ハウジングとを離脱させる際に前記端子と前後方向に係止する抜け止め部が設けられているコネクタ。
【請求項2】
前記端子には、同端子の外面から嵌合方向と交差する方向に突出する係止部が設けられており、
前記抜け止め部は、前記係止部が嵌合方向と交差する方向に嵌まり込む凹状に形成されている請求項1記載のコネクタ。
【請求項3】
前記係止部は、同係止部の突出する方向と反対方向に向けて弾性変位可能に設けられている請求項2記載のコネクタ。
【請求項4】
前記抜け止め部における前記端子側とは反対側の位置には、前記抜け止め部が前記端子から離れる方向に向けて弾性変位可能な撓み空間が設けられている請求項2記載のコネクタ。
【請求項5】
前記フロント部材と前記相手側ハウジングとの間には、前記相手側ハウジングと前記ハウジングとが嵌合した際に、前記フロント部材と前記相手側ハウジングとの間のがたつきを抑制するがた詰め部が設けられている請求項1から請求項4の何れか一項に記載のコネクタ。
【請求項6】
前記ハウジングには、前記端子の挿入過程において、前記端子に押圧されることでランス撓み空間に向かって弾性変位し、前記端子が正規の挿入位置に至ると、弾性復帰して前記端子を抜け止めするランスが設けられ、
前記フロント部材には、前記ランス撓み空間に進入することで前記ランスが弾性変位することを防ぐ変位防止部が設けられている請求項1から請求項5の何れか一項に記載のコネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、雄ハウジング内に嵌合可能なタワー部を有する雌ハウジングを備えたコネクタとして、下記特許文献に記載のものが知られている。タワー部の前端部には、がた詰めリブを有する前壁部材が装着可能とされている。雄ハウジングと雌ハウジングとが嵌合されると、タワー部に装着された前壁部材のがた詰めリブが雄ハウジングに食い込むことで、両ハウジング間のがたつきが低減されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−166046号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、タワー部の前端部に装着される前壁部材などのフロント部材は、タワー部に対して前方から組み付けられ、フロント部材とタワー部とが前後方向に係止することで、フロント部材がタワー部に固定されている。
【0005】
ところが、がた詰めリブによって両ハウジング間がより強固にがた詰めされると、雄ハウジングと雌ハウジングとを離脱させる際に、フロント部材が雄ハウジングに連れられて前方に向けて引っ張られ、フロント部材とタワー部との係止が外れることで、フロント部材がタワー部から脱落してしまうことが懸念される。
【0006】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、両ハウジングを離脱させる際のフロント部材の脱落を防ぐことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するための手段として本発明は、相手側ハウジングと嵌合可能なハウジングを有するコネクタであって、前記ハウジングには、前記相手側ハウジング内に前方から嵌合可能な端子収容部と、前記端子収容部内に保持される端子と、前記端子収容部の前端部に前方から組み付けられるフロント部材とを備え、前記フロント部材には、前記相手側ハウジングと前記ハウジングとを離脱させる際に前記端子と前後方向に係止する抜け止め部が設けられているところに特徴を有する。
このような構成のコネクタによると、相手側ハウジングとハウジングとを離脱させる際に、フロント部材が相手側ハウジングに連れられて前方に向けて引っ張られると、フロント部材の抜け止め部と端子とが前後方向に係止し、フロント部材が端子収容部から脱落することを防ぐことができる。
【0008】
本発明の実施の形態として、以下の構成が望ましい。
前記端子には、同端子の外面から嵌合方向と交差する方向に突出する係止部が設けられており、前記抜け止め部は、前記係止部が嵌合方向と交差する方向に嵌まり込む凹状に形成されている構成としてもよい。
このような構成によると、係止部と抜け止め部とが嵌合方向と交差する方向に凹凸嵌合することになるから、フロント部材が端子収容部から脱落することを確実に防ぐことができる。
【0009】
前記係止部は、同係止部の突出する方向と反対方向に向けて弾性変位可能に設けられている構成としてもよい。
このような構成によると、フロント部材を着脱する際に、係止部が抜け止め部に乗り上げるように係止部の突出する方向と反対方向に弾性変位するから、フロント部材を容易に着脱することができる。
【0010】
前記抜け止め部における前記端子側とは反対側の位置には、前記抜け止め部が前記端子から離れる方向に向けて弾性変位可能な撓み空間が設けられている構成としてもよい。
このような構成によると、フロント部材を着脱する際に、抜け止め部が撓み空間に向けて弾性変位するから、フロント部材を容易に着脱することができる。
【0011】
前記フロント部材と前記相手側ハウジングとの間には、前記相手側ハウジングと前記ハウジングとが嵌合した際に、前記フロント部材と前記相手側ハウジングとの間のがたつきを抑制するがた詰め部が設けられている構成としてもよい。
がた詰め部によってフロント部材と相手側ハウジングとの間をがた詰めすると、両ハウジングを離脱させる過程において、フロント部材が相手側ハウジングに連れられて前方に向けて引っ張られ、フロント部材が端子収容部から脱落してしまう虞がある。ところが、フロント部材が端子に係止され、フロント部材が端子収容部から脱落することが防がれるので、フロント部材に両ハウジングのがたを抑制するがた詰めリブなどが形成されている場合に非常に有効である。
【0012】
前記ハウジングには、前記端子の挿入過程において、前記端子に押圧されることでランス撓み空間に向かって弾性変位し、前記端子が正規の挿入位置に至ると、弾性復帰して前記端子を抜け止めするランスが設けられ、前記フロント部材には、前記ランス撓み空間に進入することで前記ランスが弾性変位することを防ぐ変位防止部が設けられている構成としてもよい。
このような構成によると、変位防止部が設けられたフロント部材の脱落を防止することができるので、ランスが弾性変位することを防ぐフロントリテーナとしてフロント部材を使用する場合に非常に有効である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、両ハウジングを離脱させる際のフロント部材の脱落を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施形態1にかかる電線側コネクタが機器側コネクタと嵌合した状態を示す断面図
図2】電線側コネクタと機器側コネクタとが離脱した状態を示す断面図
図3】電線側コネクタの分解断面図
図4】実施形態2にかかる電線側コネクタが機器側コネクタと嵌合した状態を示す断面図
図5】実施形態3にかかる電線側コネクタが機器側コネクタと嵌合した状態を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0015】
<実施形態1>
本発明の実施形態1について図1から図3を参照して説明する。
本実施形態は、車両の機器91に設けられた機器側コネクタ90に嵌合される電線側コネクタ10を例示している。なお、以下の説明において、前後方向とは、図1および図2の左右方向を基準とし、両コネクタ10,90が互いに嵌合する側を前側として説明する。
【0016】
機器側コネクタ90は、図1または図2に示すように、機器91と一体に形成された機器側ハウジング92と、機器側ハウジング92に保持されたタブ状の雄端子93を備えて構成されている。
機器側ハウジング92は、フード状をなしており、機器側ハウジング92の奥壁から雄端子93が突出している。
機器側ハウジング92の上部には、ロック部94が突設されており、ロック部94の前面は前方に向かうほど機器側ハウジング92に向かって傾斜する傾斜面95とされている。
【0017】
電線側コネクタ10は、図1または図2に示すように、電線Wの端末に接続される雌端子20と、雌端子20を収容して機器側ハウジング92に嵌合される合成樹脂製の電線側ハウジング30とを備えて構成されている。
雌端子20は、図3に示すように、導電性に優れた金属板材をプレス加工することにより形成されている。雌端子20は、図1に示すように、雄端子93と接続可能な接続筒部21と、電線Wの端末に接続される電線接続部22とを前後方向に繋いだ形態とされている。
【0018】
接続筒部21は前後方向に長い角筒状をなしており、接続筒部21内に雄端子93が進入することで接続筒部21と雄端子93とが電気的に接続されるようになっている。
電線接続部22は、電線Wの端末において露出された芯線W1と、芯線W1を覆う絶縁被覆W2とにかしめ圧着されることで、電線Wの端末に雌端子20を接続している。また、電線Wの端末にはゴム栓24が外嵌されており、このゴム栓24と絶縁被覆W2とに電線接続部22がかしめ圧着されることで、電線Wの端末にゴム栓24が固定されている。
【0019】
電線側ハウジング30は、図1から図3に示すように、電線側フード部31の内側に端子収容部32が設けられた形態とされており、電線側フード部31と端子収容部32との間に機器側ハウジング92が嵌合されるようになっている。
電線側フード部31の上部には、前後方向に長いロックアーム33が設けられている。このロックアーム33は、前後方向略中央部を支点に前後両端部を上下させるように弾性的に傾動可能とされている。
【0020】
ロックアーム33の前端部には、ロック部94と前後方向に係止するロック爪34が設けられている。このロック爪34は、機器側ハウジング92と電線側ハウジング30との嵌合過程において、機器側ハウジング92のロック部94の傾斜面95に乗り上げ、ロックアーム33を弾性変位させる。そして、機器側ハウジング92と電線側ハウジング30とが正規の嵌合状態に至ると、ロック爪34がロック部94を乗り越えてロックアーム33が弾性復帰し、ロックアーム33のロック爪34とロック部94とが前後方向に係止することで、図1に示すように、両ハウジング30,92が正規の嵌合状態に保持されるようになっている。
【0021】
ロックアーム33の後端部には、上方から押圧してロックアーム33を弾性変位させることで、ロック爪34とロック部94との係止状態を解除する解除操作部35が設けられている。この解除操作部35を押圧操作して、ロック爪34とロック部94との係止状態を解除し、両ハウジング30,92を互いに反対方向に変位させることで、図2に示すように、両コネクタ10,90が離脱するようになっている。
【0022】
端子収容部32は、図1から図3に示すように、前後方向に長い筒状をなし、機器側ハウジング92内に嵌合可能とされている。端子収容部32内には、雌端子20が後方から収容されるキャビティ36が前後方向に貫通して形成されている。キャビティ36の底部には、雌端子20の接続筒部21を後方から係止することで雌端子20を抜け止めする弾性変位可能なランス37が形成されている。ランス37は、前方に向かって片持ち状に延出された形態をなしている。
【0023】
ランス37の下方には、ランス撓み空間38が設けられており、雌端子20がキャビティ36内へ挿入されると、ランス37が雌端子20の接続筒部21に後方から押圧され、ランス37がランス撓み空間38に進入して弾性変位するようになっている。そして、雌端子20がキャビティ36内において正規の挿入位置に至ると、ランス37と接続筒部21との当接状態が解除され、ランス37が弾性復帰してランス撓み空間38から退避する。
【0024】
ランス37が弾性復帰すると、接続筒部21がランス37によって後方から係止され、雌端子20が端子収容部32のキャビティ36内に保持されるようになっている。また、雌端子20がキャビティ36内の正規の位置に収容されると、雌端子20の電線接続部22によって固定されたゴム栓24が電線Wの外周面とキャビティ36の内周面とに密着し、電線Wと端子収容部32との間が止水される。
【0025】
端子収容部32の前端部には、図1から図3に示すように、前方から合成樹脂製のフロントリテーナ50が組み付け可能とされている。フロントリテーナ50が端子収容部32に組み付けられると、フロントリテーナ50によりキャビティ36の前端部が構成され、雌端子20における接続筒部21の前端部および接続筒部21の下面がフロントリテーナ50によって覆われるようになっている。
【0026】
フロントリテーナ50は、端子収容部32の前端部を前方から包み込むようなキャップ状に形成されている。フロントリテーナ50の前壁には、端子挿通孔51が設けられており、この端子挿通孔51を通して雄端子93がキャビティ36および雌端子20の接続筒部21内に進入するようになっている。
【0027】
フロントリテーナ50の後端外周縁部は、端子収容部32の後端外周面に外嵌された環状のシールリング39を前方から係止することで、端子収容部32からシールリング39を抜け止めするシール押さえ部52とされている。
シールリング39は、機器側ハウジング92と電線側ハウジング30とが嵌合され、機器側ハウジング92内に端子収容部32が嵌合されると、機器側ハウジング92の内周面92Aと端子収容部32の外周面とに全周に亘って密着し、機器側ハウジング92と端子収容部32との間を止水するようになっている。
【0028】
フロントリテーナ50における幅方向両側の内側壁50Aには、図3に示すように、係止突起53が設けられている。係止突起53は、端子収容部32における幅方向両側の側壁32Aに設けられた係止孔40に嵌まり込み可能とされており、フロントリテーナ50が端子収容部32に前方から組み付けられると、係止孔40に係止突起53が嵌まり込むことで、フロントリテーナ50が端子収容部32に保持固定されるようになっている。
【0029】
フロントリテーナ50の前壁における端子挿通孔51の下方には、図1から図3に示すように、上下方向に肉厚な形態の肉厚部54が設けられており、この肉厚部54が雌端子20の接続筒部21における下面を覆うようになっている。肉厚部54の後端部には、後方に向けて真っ直ぐ延びる板状の変位防止部55が設けられている。変位防止部55は、ランス撓み空間38内に進入可能とされており、フロントリテーナ50が端子収容部32に前方から組み付けられると、ランス撓み空間38に前方から進入し、ランス37がランス撓み空間38内に進入することを防ぐようになっている。つまり、雌端子20は、図1または図2に示すように、ランス37とフロントリテーナ50の変位防止部55とによって二重に係止されている。
【0030】
フロントリテーナ50の前半分における上下両面には、図1から図3に示すように、がた詰め部56が形成されている。これらのがた詰め部56は、フロントリテーナ50の外面から外方に突出し、かつフロントリテーナ50の前端から後方に向けて前後方向に延びたリブ状に形成されている。
がた詰め部56は、機器側ハウジング92と電線側ハウジング30とが正規の嵌合状態に至ると、図1に示すように、機器側ハウジング92の内周面92Aに食い込んだ状態となって、両ハウジング30,92間のがたつきが低減されるようになっている。
【0031】
さて、雌端子20の接続筒部21の下面には、図3に示すように、電線側ハウジング30の嵌合方向と交差する方向である下方に向かって突出する係止部25が設けられている。係止部25は、接続筒部21の前端よりもやや後方の位置に配されている。係止部25の前面は後方に向かうほど下方に向かって傾斜するテーパ面26とされており、係止部25の後面は、電線側ハウジング30の嵌合方向と直交する端子側係止面27とされている。
【0032】
一方、フロントリテーナ50における肉厚部54の上部には、図1から図3に示すように、接続筒部21の係止部25と前後方向に係止可能な抜け止め部57が設けられている。抜け止め部57は、接続筒部21の係止部25が上方から嵌まり込み可能な凹状に形成されており、抜け止め部57の後端部が係止部25と前後方向に係止可能な係止爪58とされている。
【0033】
係止爪58の前面は電線側ハウジング30の嵌合方向と直交するリテーナ側係止面59とされ、係止爪58の後面は前方に向かうほど下方に向けて緩やかに傾斜した形態とされている。したがって、端子収容部32に対してフロントリテーナ50を前方から組み付けると、係止爪58が接続筒部21の係止部25のテーパ面26に乗り上げる。そして、係止爪58が係止部25を乗り越えることで係止部25が抜け止め部57に無理に嵌まり込む、いわゆる無理嵌めにより、図1または図2に示すように、係止部25と抜け止め部57とが上下方向に凹凸嵌合した状態となる。
そして、係止部25の端子側係止面27と係止爪58のリテーナ側係止面59とが前後方向に対向することで、係止部25と抜け止め部57の係止爪58とが前後方向に係止可能な状態となるように構成されている。
【0034】
本実施形態の電線側コネクタ10は、以上のような構成であって、続いて、電線側コネクタ10の組み立て手順の一例を簡単に説明すると共に、電線側コネクタ10と機器側コネクタ90とを離脱させる際の作用および効果について説明する。
電線側コネクタ10の組み立てでは、まず、電線側ハウジング30の端子収容部32にシールリング39を前方から組み付け、図3に示すように、端子収容部32の後端外周面にシールリング39を装着する。
【0035】
次に、端子収容部32の後方から電線Wの端末に接続された雌端子20を挿入する。この挿入過程では、ランス37が雌端子20の接続筒部21に後方から押圧され、ランス37がランス撓み空間38に進入して弾性変位する。そして、雌端子20がキャビティ36内において正規の挿入位置に至ると、ランス37と接続筒部21との当接状態が解除され、ランス37が弾性復帰してランス撓み空間38から退避する。これにより、接続筒部21がランス37によって後方から係止され、雌端子20が端子収容部32のキャビティ36内に保持される。
【0036】
次に、端子収容部32の前端部に前方からフロントリテーナ50を組み付ける。このフロントリテーナ50の組み付け過程では、変位防止部55がランス撓み空間38に前方から進入する。これにより、ランス37がランス撓み空間38に進入することが防がれ、雌端子20がランス37とフロントリテーナ50の変位防止部55とによって二重に係止される。また、この組み付け過程では、抜け止め部57の係止爪58が雌端子20の接続筒部21における係止部25のテーパ面26に乗り上げる。そして、端子収容部32に対するフロントリテーナ50の組み付けが完了すると、係止爪58が係止部25を乗り越えることで係止部25が抜け止め部57に無理嵌めされ、係止部25と抜け止め部57の係止爪58とが前後方向に係止可能となる。
【0037】
また、端子収容部32に対するフロントリテーナ50の組み付けが完了すると、フロントリテーナ50の係止突起53が端子収容部32の係止孔40に嵌まり込むことで、フロントリテーナ50が端子収容部32に保持固定され、フロントリテーナ50のシール押さえ部52によってシールリング39が抜け止めされる。これにより、電線側コネクタ10が完成する。
【0038】
次に、電線側コネクタ10と機器側コネクタ90とを離脱させる手順を説明する。
電線側コネクタ10と機器側コネクタ90とが正規に嵌合した状態では、図1に示すように、ロック部94とロックアーム33のロック爪34とが前後方向に係止することで機器側ハウジング92と電線側ハウジング30とが正規の嵌合状態に保持され、雄端子93と雌端子20とが電気的に接続された状態となっている。また、機器側ハウジング92と電線側ハウジング30とが正規に嵌合された状態では、フロントリテーナ50のがた詰め部56が機器側ハウジング92の内周面92Aに食い込んだ状態となって両ハウジング30,92間のがたつきが低減されている。
【0039】
機器側コネクタ90と電線側コネクタ10とを離脱させるためには、まず、ロックアーム33の解除操作部35を上方から押圧してロックアーム33を弾性変位させることでロック部94とロック爪34との係止を解除する。そして、電線側ハウジング30と機器側ハウジング92とを互いに反対方向に引き離し、図2に示すように、機器側コネクタ90と電線側コネクタ10とを離脱させる。
【0040】
ところで、がた詰め部56が機器側ハウジング92の内周面92Aに深く食い込んで両ハウジング30,92間が強固にがた詰めされていると、機器側ハウジング92と電線側ハウジング30との離脱過程において、フロントリテーナ50が機器側ハウジング92に連れられて前方に向けて引っ張られ、フロントリテーナ50の係止突起53が端子収容部32の係止孔40から外れることで、フロントリテーナ50が端子収容部32から脱落しまうことが懸念される。
【0041】
ところが、本実施形態のフロントリテーナ50によると、係止突起53と係止孔40の周縁部との係止に加えて、抜け止め部57と雌端子20の係止部25とが上下方向に凹凸嵌合状態となって抜け止め部57における係止爪58のリテーナ側係止面59と係止部25の端子側係止面27とが前後方向に係止し、端子収容部32からのフロントリテーナ50の脱落を防ぐことができる。すなわち、例えば、係止突起と係止孔の周縁部との係止のみで端子収容部にフロントリテーナを保持させる場合に比べて、端子収容部32からのフロントリテーナ50の脱落をより強固に防ぐことができる。
また、接続筒部21の外面から突出する係止部25と肉厚部54に凹状に設けられた抜け止め部57とが電線側ハウジング30の嵌合方向と交差する方向である上下方向にしっかりと凹凸嵌合しているから、例えば、フロントリテーナに設けた突起状の抜け止め部を雌端子の接続筒部に対して係止させる場合に比べて、抜け止め部57と係止部25との係止力を向上させることできる。
【0042】
以上のように、両ハウジング30,92が強固にがた詰めされるなどして、両ハウジング30,92を離脱させる過程においてフロントリテーナ50が機器側ハウジング92に連れられて前方に向けて引っ張られるような場合、本実施形態によると、係止突起53と係止孔40の周縁部との係止に加えて、肉厚部54の抜け止め部57と雌端子20の係止部25とが上下方向に凹凸嵌合状態となって抜け止め部57の係止爪58と係止部25とが前後方向に係止するから、端子収容部32からのフロントリテーナ50の脱落を防ぐことができる。
すなわち、ランス37が弾性変位することを防ぐと共に、シールリング39を抜け止めするフロントリテーナ50が、両ハウジング30,92の離脱過程で機器側ハウジング92に連れられて引っ張られるような場合に、フロントリテーナ50の抜け止め部57と雌端子20の係止部25とを前後方向に係止させることは、非常に有効である。
【0043】
<実施形態2>
次に、本発明の実施形態2について図4を参照して説明する。
実施形態2の電線側コネクタ110は、実施形態1における雌端子20の係止部25の形状を変更したものであって、実施形態1と共通する構成、作用、および効果については重複するため、その説明を省略する。また、実施形態1と同じ構成については同一の符号を用いるものとする。
【0044】
実施形態2の雌端子120における係止部125は、接続筒部21の下面から斜め下後方に向けて延出された後、その後方下端部から後方に真っ直ぐ延出され、その後端部から斜め上後方に向けて延出された形態をなしている。そして、係止部125は、接続筒部21に対する同係止部125の付け根部分を支点に接続筒部21内に進入するように弾性変位可能とされている。
【0045】
つまり、係止部125は、端子収容部32に対して前方からフロントリテーナ50を組み付ける過程において、抜け止め部57の係止爪58に後方から当接すると、係止部125の前端部が係止爪58に乗り上げ、係止部125が同係止部125の付け根部分を支点に接続筒部21内に進入するように弾性変位する。そして、端子収容部32に対するフロントリテーナ50の組み付けが完了すると、係止部25が係止爪58を乗り越えて弾性復帰し、係止部25と抜け止め部57の係止爪58とが前後方向に係止可能な状態となる。
また、端子収容部32からフロントリテーナ50を取り外す際には、係止部125が係止爪58に前方から当接して乗り上げ、係止部125が上方に弾性変位することで係止爪58を乗り越え、係止部125と抜け止め部57との係止が解除される。
【0046】
すなわち、本実施形態によると、係止部125が抜け止め部57の係止爪58に乗り上げるようにして、係止部125が突出する方向と反対方向である上方に弾性変位するから、端子収容部32に対してフロントリテーナ50を容易に着脱することができる。
【0047】
<実施形態3>
次に、本発明の実施形態3について図5を参照して説明する。
実施形態3の電線側コネクタ210は、実施形態1におけるフロントリテーナ50の形状を変更したものであって、実施形態1と共通する構成、作用、および効果については重複するため、その説明を省略する。また、実施形態1と同じ構成については同一の符号を用いるものとする。
【0048】
実施形態3のフロントリテーナ250における抜け止め部57の下方(雌端子20側とは反対側)には、肉厚部254の一部を切り欠くことで撓み空間260が形成されており、この撓み空間260に進入するように抜け止め部57が下方に向けて弾性変位可能とされている。
つまり、抜け止め部57の係止爪58は、端子収容部32に対して前方からフロントリテーナ50を組み付ける過程において、雌端子20の係止部25に前方から当接して係止部25に乗り上げ、抜け止め部57が撓み空間260に進入するように下方に向けて弾性変位する。そして、端子収容部32に対するフロントリテーナ50の組み付けが完了すると、係止爪58が係止部25を乗り越えて抜け止め部57が弾性復帰し、係止部25と抜け止め部57の係止爪58とが前後方向に係止可能な状態となる。
また、端子収容部32からフロントリテーナ50を取り外す際には、係止爪58が係止部125に後方から当接して乗り上げ、抜け止め部57が下方に弾性変位することで、係止爪58が係止部25を乗り越え、係止部25と抜け止め部57との係止が解除される。
【0049】
すなわち、本実施形態によると、抜け止め部57の下方に抜け止め部57が進入可能な撓み空間260を設けることで、抜け止め部57が撓み空間260に進入するように下方に弾性変位するから、端子収容部32に対してフロントリテーナ50を容易に着脱することができる。
【0050】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施形態では、シールリング39を抜け止めするシール押さえ部52と、ランス37が弾性変位することを防ぐ変位防止部55とをフロントリテーナ50に設けた構成としたが、本発明はこのような態様に限定されるものではなく、例えば、シール押さえ部と変位防止部との何れか一方のみが設けられているフロントリテーナであってもよく、シール押さえ部や変位防止部の何れも有さずキャビティの前端部のみを構成するフロントリテーナであってもよい。
(2)上記実施形態では、フロントリテーナ50にリブ状のがた詰め部が形成された構成としたが、本発明はこのような態様に限定されるものではなく、例えば、がた詰め部がばね状であってもよく、機器側ハウジングの内周面にがた詰め部が形成されていてもよい。
(3)上記実施形態では、本発明を、機器に一体に設けられた機器側コネクタに嵌合可能な電線側コネクタ10に適用した構成としたが、本発明はこのような態様に限定されるものではなく、例えば、本発明は、電線の端末に設けられるコネクタに嵌合されるコネクタや非防水のコネクタなど各種コネクタに適用することもできる。
【符号の説明】
【0051】
10,110,210:電線側コネクタ(コネクタ)
20,120:雌端子(端子)
25,125:係止部
30:電線側ハウジング(ハウジング)
32:端子収容部
37:ランス
38:ランス撓み空間
50,250:フロントリテーナ(フロント部材)
55:変位防止部
56:がた詰め部
57:抜け止め部
92:機器側ハウジング(相手側ハウジング)
260:撓み空間
図1
図2
図3
図4
図5