【課題を解決するための手段】
【0009】
アルミニウム合金の露出面積に対する銅や銅合金の露出面積の割合が小さいほど、電食を低減することができる。本発明者らが更に検討したところ、アルミニウム合金からなる導体と、銅といったアルミニウムよりも貴な金属からなる端子部材との間に、アルミニウムよりも貴な金属、具体的には錫又は錫合金からなる層を存在させると、腐食電流を小さくすることができることから、電食を効果的に低減することができるとの知見を得た。特に、導体の断面積が特定の範囲である場合に、電食の低減効果が大きいとの知見を得た。本発明は、上記知見に基づくものである。
【0010】
本発明のアルミニウム合金線(以下、Al合金線と呼ぶ)は、自動車用電線の導体に用いられるものであって、断面積が8mm
2以下である。このAl合金線の外面の少なくとも一部に被覆層を具えており、この被覆層の最外層は、錫又は錫合金から構成されている。
【0011】
本発明Al合金線は、外面(表面)の少なくとも一部に錫層又は錫合金層を具えることで、異種の金属、特に、アルミニウムよりも貴な銅や銅合金といった金属からなる端子部材が接続されても、この端子部材とAl合金線との間に、アルミニウムよりも貴な錫や錫合金からなる層を存在させることできる。この錫層や錫合金層の存在により、本発明Al合金線は、腐食速度を遅くすることができ、端子部材との間で生じる電食を効果的に低減することができる。特に、本発明Al合金線では、断面積を8mm
2(8sq)以下に限定している。ここで、断面積が8mm
2超である太いAl合金線では、銅や銅合金からなる端子部材が取り付けられる端部において、銅や銅合金の露出面積に対するAl合金の露出面積の比(以下、Al露出比と呼ぶ)が相対的に大きくなることから、電食が生じ難くなる。しかし、断面積が8mm
2(8sq)以下である細いAl合金線では、Al露出比が小さくなる(銅などの露出面積が多くなる)ことから、電食が比較的進行し易い。
図3は、黄銅に対するアルミニウム合金の面積比と腐食電流の密度との関係を示すグラフである。面積が異なる複数の黄銅板及びアルミニウム合金板(1.05質量%Fe-0.15質量%Mg-Al)を用意し、両板の一端を導線で繋ぐと共に、両板を0.5質量%濃度のNaCl水溶液に含浸する。この状態で、上記導線に電流計を取り付けて腐食電流を測定する。測定した電流値をアルミニウム合金板の面積で除して電流密度を求めた。そして、黄銅に対するアルミニウム合金の面積比(Al露出比)と上記電流密度との関係を
図3に示す。
図3から、面積比(Al露出比)が大きいほど、即ち、銅合金に対してアルミニウム合金の露出面積が大きいほど、電流密度が小さくなっていることが分かる。また、
図3から、この面積比と電流密度との関係は比例的な関係ではなく、当該面積比が小さくなると電流密度が急激に大きくなることが分かる。従って、本発明Al合金線で規定するように、断面積が8mm
2以下といった細いAl合金線の外面に上記被覆層を具えることで、電食をより効果的に低減することができると言える。そのため、本発明Al合金線は、耐食性に優れることが望まれる自動車用電線の導体に好適に利用することができる。以下、本発明をより詳細に説明する。
【0012】
[Al合金線及びAl合金撚り線]
《組成》
本発明Al合金線を構成するAl合金は、添加元素を含有し、残部がAl及び不可避的不純物からなる種々の組成のものが利用できる。添加元素は、例えば、Fe、Mg、Si、Cu、Zn、Ni、Mn、Ag、Cr及びZrから選択される1種以上が挙げられる。添加元素の好ましい合計含有量は0.005質量%以上5.0質量%以下、より好ましくは0.1質量%以上2.0質量%以下である。各元素の好ましい含有量は、質量%で、Fe:0.005%以上2.2%以下、Mg:0.05%〜1.0%、Mn,Ni,Zr,Zn,Cr及びAg:合計で0.005%以上0.2%以下、Cu:0.05%以上0.5%以下、Si:0.04%以上1.0%以下である。これらの添加元素は、1種でも2種以上を組み合わせて含有していてもよい。このような合金として、例えば、Al-Fe合金、Al-Fe-Mg合金、Al-Fe-Si合金、Al-Fe-Mg-(Mn,Ni,Zr,Ag)合金、Al-Fe-Cu合金、Al-Fe-Cu-(Mg,Si)合金、Al-Mg-Si-Cu合金などが挙げられる。
【0013】
Al合金の具体的な組成として、例えば、以下の(1)〜(6)が挙げられる。
(1) 質量%で、Feを0.90%以上1.20%以下、Mgを0.10%以上0.25%以下含有し、残部がAl及び不可避的不純物。
(2) 質量%で、Feを1.01%以上2.2%以下、Mgを0.05%以上0.5%以下、Mn,Ni,Zr,及びAgから選択される1種以上の元素を合計で0.005%以上0.2%以下含有し、残部がAl及び不可避的不純物。
(3) 質量%で、Feを1.01%以上2.2%以下、Cuを0.05%以上0.5%以下含有し、残部がAl及び不可避的不純物。
(4) 質量%で、Feを1.0%以上2.2%以下、Cuを0.05%以上0.5%以下含有し、更にMgを0.1%以上0.5%以下及びSiを0.04%以上0.3%以下の少なくとも1種を含有し、残部がAl及び不可避的不純物。
(5) 質量%で、Mgを0.2%以上1.0%以下、Siを0.1%以上1.0%以下、Cuを0.1%以上0.5%以下含有し、残部がAl及び不可避的不純物。
(6) 質量%で、Mgを0.2%以上1.0%以下、Siを0.1%以上1.0%以下、Cuを0.1%以上0.5%以下含有し、残部がAl及び不可避的不純物。但し、Mg及びSiの質量比Mg/Siが0.8≦Mg/Si≦2.7を満たす。
【0014】
Feは、強度に優れるAl合金線が得られ、含有量が高いほどAl合金の強度が高まるが、導電率や靭性が低下し易く、伸線加工時などで断線が生じ易くなるため、Fe:2.2質量%以下が好ましい。Mn,Ni,Zr,Crは、導電率の低下が大きいものの、強度の向上効果が高い元素であり、Ag,Znは、導電率の低下が少なく、強度の向上効果をある程度有する。Cuは、導電率の低下が少なく、強度を向上することができる。Mgは、導電率の低下が大きいものの、強度の向上効果が高く、特にSiと同時に含有することで、強度をより向上できる。また、MgとSiを含有する場合に時効を行うと、時効硬化による強度の向上が期待できる。
【0015】
更に、上記Al合金は、Ti及びBの少なくとも一方を含有すると、鋳造時のAl合金の結晶組織を微細にする効果があり、微細な結晶組織による強度の向上が期待できる。この微細化効果を十分に得るには、質量割合で、Tiを100ppm以上500ppm以下、Bを10ppm以上50ppm以下含有することが好ましい。
【0016】
《特性》
上記組成のAl合金から構成されると共に後述するように伸線後に適宜軟化処理を施すことで、導電率:58%IACS以上、伸び:10%以上といった導電性及び靭性に優れるAl合金線とすることができる。添加元素の種類や量、軟化条件にもよるが、本発明Al合金線は、導電率:59%IACS以上、伸び:25%以上を満たすこともできる。靭性に優れることで、導体における端子部材との境界近傍で導体が破断し難く、本発明Al合金線は、端子付き電線の導体に好適に利用することができる。また、本発明Al合金線は、引張強さが110MPa以上200MPa以下であると、高靭性と高強度とを両立することができて好ましい。添加元素(種類や含有量)、製造条件(伸線加工時の加工度(断面減少率)、軟化条件など)を適宜調整することで、導電率、伸び、引張強さが上記特定の範囲を満たすAl合金線が得られる。
【0017】
《断面積》
本発明Al合金線の断面積は、伸線加工時の加工度を適宜調整することで変化させることができる。本発明Al合金線では、特に断面積を8mm
2以下とする。例えば、Al合金線の断面形状を円形状とする場合、線径(直径)を3.2mm以下とする。断面積が8mm
2超の線材では、上記Al露出比が十分に大きいことから、被覆層が存在することによる電食の低減効果が得られ難い。特に断面積が3mm
2以下、更には断面積が1mm
2以下のAl合金線の場合、被覆層が存在することによる電食の低減効果が顕著である。
【0018】
《断面形状》
本発明Al合金線は、伸線加工時のダイス形状によって種々の断面形状を有することができる。断面円形状が代表的であり、その他、楕円形状、矩形や六角形などの多角形状などの断面形状が挙げられる。形状は特に問わない。
【0019】
《線材の形態》
<単線>
上記本発明Al合金線は、単線のまま利用することができる。
<撚り線>
上記本発明Al合金線を複数用意して撚り合わせた撚り線とすることもできる。細径のAl合金線(単線)であっても撚り合わせることで、強度の高い線材とすることができる。撚り合わせ本数は、特に問わない。例えば、7,11,19,37本が挙げられる。また、本発明Al合金撚り線は、撚り合わせた後、圧縮成形した圧縮線材とすると、単に撚り合わせた状態よりも線径が小さい線材とすることができる。この撚り線や圧縮線材は、撚り線や圧縮線材の断面積が8mm
2以下となるように、撚り合せる各Al合金線の断面積を調整したり、圧縮度合いを調整する。
【0020】
[被覆層]
《組成》
本発明Al合金線の外面に具える被覆層は、少なくとも最外層が錫(Sn)又は錫合金からなる。Snは、Alよりも貴な金属であり、Al合金と銅や銅合金との間に存在させることで、Alの腐食電流を低減することができるため、Al合金と銅や銅合金との間での電食を低減できる。錫合金は、Cu-Sn合金などが挙げられ、錫よりも腐食電流を低減し易い傾向にある。
【0021】
被覆層は、錫又は錫合金のみからなる単層でもよいし、錫又は錫合金からなる最外層とAl合金線との間に別の材質からなる中間層を具える多層構造、即ち、Al合金線の直上に設けられた中間層と、この中間層の上に設けられた上記最外層とを具える構成でもよい。中間層の構成材料は、ニッケル(Ni)、ニッケル合金、銅(Cu)、銅合金、亜鉛(Zn)、及び亜鉛合金から選択される少なくとも1種の金属が挙げられる。これらの金属は、Al合金と錫や錫合金との双方になじみがよく、Al合金と錫や錫合金との間に存在されることで、最外層とAl合金線との間を密着させ易い。中間層は、1層でも2層以上でもよい。ニッケル合金は、Zn-Ni合金、銅合金は、Cu-Sn合金、Cu-Zn合金、亜鉛合金は、Zn-Sn合金が挙げられる。
【0022】
なお、上記Al合金線の外面に上記金属による被覆層に加えて樹脂層を具えることでも、Al合金の露出面積自体を無くすことができるため、電食を低減できる。例えば、Al合金線の周面に上記被覆層を具え、端面に樹脂層を具える構成とすることができる。或いは、上記被覆層を具えていないAl合金線であっても、端子部材の表面においてAl合金線と直接接触しない箇所の少なくとも一部、好ましくは当該箇所の全域に錫、錫合金から選択される少なくとも1種からなる層を設けたり、Al合金線の端部と端子部材との間に錫又は錫合金からなる薄板を存在させたり、Al合金線の端部を錫又は錫合金からなる有底筒状体で覆ってもよい。上記被覆層を具えるAl合金線に対して、更に、表面に上記錫などからなる層を具える端子部材を利用すると、Al合金線の電食をより効果的に低減することができる。
【0023】
《厚さ》
最外層の厚さは、0超10μm以下といった非常に薄くても、電食抑制に十分に効果がある。10μm超と厚いと、端子部材を取り付ける際に被覆層が剥離し易くなる。被覆層が多層構造である場合、合計厚さは15μm以下が好ましく、そのうち最外層は、上記厚さを満たすことが好ましい。被覆層が多層構造である場合、合計厚さが15μm超と厚いと、端子部材を取り付ける際に被覆層が剥離し易くなる。一方、被覆層が薄過ぎるとピンホールが出来易くなる。ピンホールが存在すると、ピンホール部分で電食が加速的に進む。そのため、被覆層が錫又は錫合金からなる単層の場合、厚さは0.5μm以上10μm以下が好ましい。被覆層が多層構造である場合、下層にピンホールが存在しても、その上の層によりピンホールが埋められるため、各層は薄くてもよく、合計厚さは0.5μm以上10μm以下がより好ましく、各層の厚さは0.2μm以上7μm以下が好ましい。
【0024】
《被覆領域》
上記被覆層は、Al合金線の外面の少なくとも一部、特に、端子部材が取り付けられるAl合金線の端部においてその周方向の領域の少なくとも一部に設けられていることが好ましい。Al合金線を絶縁電線の導体として利用する場合、絶縁電線の端部は絶縁層が除去され、露出されたAl合金線(導体)に端子部材が取り付けられる。この露出箇所のうち、端子部材で覆われる箇所(端子部材に直接接触する箇所)は、Al合金線が大気(特に、大気中の水分の溶存酸素など)に接触し難いことから、Al合金線が腐食し難い。一方、上記露出箇所のうち、端子部材に覆われず、かつ絶縁層にも覆われていない端子部材近傍の箇所(以下、導体露出箇所と呼ぶ)は、Al合金が腐食し易い。そのため、Al合金線の端部において、少なくとも導体露出箇所となり得る領域は、上記被覆層を具えることが好ましく、当該端部においてその周方向の全域に上記被覆層を具えていてもよい。他方、Al合金線において端子部材が取り付けられず、端子部材から十分に離れた箇所は、通常、絶縁層で覆われるため、上記被覆層が無くてもよい。また、端子部材が取り付けられるAl合金線の端部において、その周方向だけでなく、端面にも上記被覆層が設けられていると、Al合金の露出部分を無くすことができるため、電食の低減効果を更に高められる。
【0025】
《形成方法》
被覆層は、めっき法、CVD法やPVD法といった蒸着法などの種々の形成方法が利用できる。電気めっきや無電解めっき、溶融めっきといっためっき法は、被覆層を容易に形成することができる。また、中間層のZn層の形成には、ジンケート処理やダブルジンケート処理などを好適に利用することができる。被覆層の構成材料に応じて適宜形成方法を選択するとよい。被覆層の形成時期は、後述する。
【0026】
[絶縁電線]
上記Al合金線(単線)やAl合金撚り線、圧縮線材は、電線用導体に好適に利用することができる。用途に応じて、このまま導体として使用することもできるし、この導体の外周に絶縁材料により形成した絶縁層を具える絶縁電線として使用することもできる。絶縁材料は、適宜選択することができる。例えば、ポリ塩化ビニル(PVC)やノンハロゲン樹脂、難燃性に優れる材料などが挙げられる。絶縁層の厚さは、所望の絶縁強度を考慮して適宜選択することができ、特に限定されない。
【0027】
[端子付き電線]
Al合金線やAl合金撚り線、圧縮線材を導体とした絶縁電線であって、例えば、導体の全周(端面を含んでもよい)に亘って上記被覆層を具える場合、この絶縁電線の端部において絶縁層を剥がして導体部分を露出させ、この露出させた導体部分に、外部機器などの接続対象に接続できるように端子部材を取り付けることで、本発明端子付き電線が得られる。或いは、Al合金線やAl合金撚り線、圧縮線材であって、その外周に上記錫などの被覆層を具えていないものを導体とした絶縁電線の場合、この絶縁電線の端部において絶縁層を剥がして、導体部分を露出させ、この露出させた導体部分に上記被覆層を設けてから端子部材を取り付けることで、或いは露出させた導体部分に端子部材を取り付けてから、端子部材に覆われずに露出されている導体露出箇所を覆うように上記被覆層を設けることで、本発明端子付き電線が得られる。
【0028】
上記端子付き電線は、複数の絶縁電線に対して一つの端子部材を共有するような電線群を含んでいてもよい。複数の絶縁電線は、結束具などにより一纏まりに束ねることで、ハンドリング性に優れる。このような端子付き電線は、軽量化が望まれている種々の分野、特に、燃費の向上のために更なる軽量化が望まれている自動車に好適に利用することができる。端子部材は、電線の端部にかしめる(圧着する)ことで装着される圧着端子を好適に利用することができる。
【0029】
[製造方法]
上記被覆層を具える本発明Al合金線は、例えば、鋳造→熱間圧延→(ビレット鋳造材の場合:均質化処理)→冷間伸線加工→(適宜、軟化処理)→被覆層形成という工程により形成することができる。
【0030】
鋳造は、ビレット鋳造でもよいが、急冷凝固により結晶粒や晶析出物を微細化して微細組織を有する鋳造材が得られる連続鋳造が好ましい。連続鋳造により、結晶の微細化による強度の向上や、微細な晶析出物の分散による靭性の向上を図ることができる。急冷には、水冷銅鋳型や強制水冷機構などを利用するとよい。冷却速度は、600〜700℃において20℃/sec以上が好ましい。
【0031】
TiやBを添加する場合、溶湯を鋳型に注湯する直前に添加すると、Tiなどの局所的な沈降を抑制して、Tiなどが均等に混合された鋳造材を製造することができて好ましい。
【0032】
上記鋳造工程と圧延工程とは、連続的に行うと、鋳造材に蓄積される熱を利用して熱間圧延を容易に行えて、エネルギー効率がよい上に、バッチ式の鋳造方法と比較して、鋳造圧延材の生産性に優れる。
【0033】
伸線加工工程において、加工度は、所望の線径に応じて適宜選択することができる。得られた伸線材は、所望の本数を用意して撚り合わせ、撚り線とすることもできる。
【0034】
軟化処理は、結晶組織の微細化、及び加工硬化によって高めた線材の強度を極端に低下させることなく軟化して、線材の靭性を高めるために行う。軟化処理の条件は、適宜選択するとよく、例えば、処理後の線材(単線材又は撚り線)の伸びが10%以上となるような条件により行う。軟化処理には、連続処理又はバッチ処理のいずれも利用できる。
【0035】
撚り線は、複数の伸線材又は軟材を撚り合わせることで得られ、圧縮線材は、この撚り線を圧縮成形することで得られる。撚り線や圧縮線材の場合、上記軟化処理は、撚り合わせ前の線材のみに施してもよいし、撚り合わせ前後の双方で行ってもよいし、撚り合わせ前の伸線材に施さず、撚り線や圧縮線材にのみ施してもよい。
【0036】
伸線材や軟材、これらを撚り合わせた撚り線、圧縮線材に被覆層を形成することで、本発明Al合金線やAl合金撚り線が得られる。被覆層は、伸線材などの全長に亘って形成してもよいし、上述のように端子部材が取り付けられる端部のみに形成してもよい。撚り線や圧縮線材の場合、撚り合わされた状態で被覆層を形成してもよいが、撚り合わせる前の線材(伸線材、軟材)に被覆層を形成しておくと、撚り合せた線材間に被覆層が存在することにより、電食の低減効果を高められる。また、長尺な伸線材や軟材、これら撚り合わせた撚り線、圧縮線材を切断して、所定長のAl合金線やAl合金撚り線を作製する場合、Al合金線やAl合金線の端面に被覆層を有していないものが得られる。この場合、別途、端面に被覆層を設けてもよい。軟化処理を行う場合であって、軟化処理時の加熱温度よりも融点が低い材料からなる被覆層を具えるときには、軟化処理後に被覆層を形成する。軟化処理時の加熱温度よりも融点が高い材料からなる被覆層を具えるときには、軟化処理の前後のいずれでも、被覆層を形成することができる。