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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-133676(P2015-133676A)
(43)【公開日】2015年7月23日
(54)【発明の名称】無線センサネットワークシステム
(51)【国際特許分類】
   H04W 4/04 20090101AFI20150630BHJP
【FI】
   H04W4/04 190
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
【全頁数】40
(21)【出願番号】特願2014-5422(P2014-5422)
(22)【出願日】2014年1月15日
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成25年度、総務省 戦略的情報通信研究開発推進事業(SCOPE)「環境認知型超高効率無線センサネットワークの研究開発」、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】504133110
【氏名又は名称】国立大学法人電気通信大学
(74)【代理人】
【識別番号】100102864
【弁理士】
【氏名又は名称】工藤 実
(74)【代理人】
【識別番号】100117617
【弁理士】
【氏名又は名称】中尾 圭策
(72)【発明者】
【氏名】藤井 威生
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 朋実
【テーマコード(参考)】
5K067
【Fターム(参考)】
5K067AA21
5K067BB27
5K067DD20
5K067DD30
5K067EE02
5K067EE16
5K067FF03
5K067HH22
(57)【要約】
【課題】複数の情報源から送信される情報をサーバで収集する際に、送信時間を短縮し、かつ、受信した情報の推定精度を向上する、無線センサネットワークシステムおよびこれを用いた情報一括収集方法を提供する。
【解決手段】複数の送信端末のそれぞれが、サーバから送信される情報送信要求信号のタイミングおよび内容に応じて、自身の位置情報と、その位置における観測値との組み合わせを、複数の時刻および周波数の組み合わせに変換し、その周波数を有する単位信号をそれらの時刻に送信する。サーバは、これらの単位信号の集合体を受信して、情報送信要求信号の内容に対応させて蓄積する。サーバは、蓄積された受信信号を利用して、観測値について精度の高い推定を行う。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに独立してそれぞれに観測情報の測定を行う複数の端末と、
前記測定の結果を収集するサーバと
を具備し、
前記サーバは、前記複数の端末に向けて情報送信要求信号を一斉送信するサーバ側送受信回路
を具備し、
前記情報送信要求信号は、前記サーバから送信される度に異なるコード番号を、受信する前記複数の端末が読み取り可能な所定の形式で含み、
前記複数の端末のそれぞれは、
前記測定を行う測定部と、
前記情報送信要求信号を受信する端末側送受信回路と、
受信した前記情報送信要求信号に応じて、かつ、前記コード番号に応じた変換式を用いて、前記測定した観測情報を複数の無線物理量の組み合わせに変換する変換部と
を具備し、
前記それぞれの端末において、前記端末側送受信回路は、前記組み合わせに含まれる時刻において、前記組み合わせに含まれる周波数を有する単位信号を生成して前記サーバに向けて送信し、
前記サーバ側送受信回路は、前記単位信号の集合体を受信信号として受信し、
前記サーバは、
受信した前記受信信号を、対応する前記情報送信要求信号ごとに格納するデータベースと、
複数の前記情報送信要求信号にそれぞれ対応して格納した複数の前記受信信号に基づいて、かつ、前記コード番号に応じた逆変換式を用いて、前記複数の端末の配置と、前記測定された観測情報との組み合わせを推定する復元回路と
をさらに具備する
無線センサネットワークシステム。
【請求項2】
請求項1に記載の無線センサネットワークシステムにおいて、
前記観測情報は、
前記それぞれの端末の位置を示す第1座標値および第2座標値と、
前記それぞれの端末が前記位置で所定の観測対象を測定した観測値と
を含み、
前記無線物理量の組み合わせは、
第1時刻と、
第2時刻と、
1つの周波数と
を含み、
前記変換部は、
前記第1座標値および前記第2座標値を、前記第1時刻および前記第2時刻にそれぞれ変換する時間軸マッピング回路と、
前記観測値を前記1つの周波数に変換する周波数軸マッピング回路と
を具備する
無線センサネットワークシステム。
【請求項3】
請求項2に記載の無線センサネットワークシステムにおいて、
前記周波数軸マッピング回路は、
変換前の前記観測値と、変換後の前記1つの周波数との対応関係を、前記コード番号に応じて変動する周波数軸シフト回路
を具備し、
前記復元回路は、
前記変換後の周波数を、前記コード番号に応じた前記変動の逆変換を行って前記変換前の測定値を算出する
無線センサネットワークシステム。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の無線ネットワークシステムにおいて、
前記復元回路は、
前記単位信号が検出される確率が所定の検出確率閾値に満たない座標から検出された前記単位信号を、前記推定の対象から除外する
無線センサネットワークシステム。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の無線ネットワークシステムにおいて、
前記復元回路は、情報送信要求回数が所定の閾値に達した後、前記推定を開始する
無線センサネットワークシステム。
【請求項6】
請求項5に記載の無線センサネットワークシステムにおいて、
前記コード番号として、前記情報送信要求回数を用いる
無線センサネットワークシステム。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の無線センサネットワークシステムにおいて、
前記受信サーバは、
前記複数の端末の位置情報を予め記憶しているメモリ
をさらに具備し、
前記復元回路は、前記メモリに記憶された前記位置情報を参照して前記推定を行う
無線センサネットワークシステム。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の無線センサネットワークシステムにおいて、
前記端末側送受信回路は、前記単位信号を、OFDM(Orthogonal Frequency−Division Multiplexing:直交周波数分割多重)方式で生成して送信し、
前記サーバ側送受信回路は、前記受信信号を前記OFDM方式で受信する
無線センサネットワークシステム。
【請求項9】
複数の端末が互いに独立してそれぞれに観測情報の測定を行うことと、
サーバが前記複数の端末に向けて情報送信要求信号を一斉送信することと、
前記複数の端末のそれぞれが、前記情報送信要求信号を受信することと、
前記複数の端末のそれぞれが、前記情報送信要求信号に応じて、前記測定した観測情報を複数の無線物理量の組み合わせに変換することと、
前記複数の端末が、前記組み合わせに含まれる時刻において、前記組み合わせに含まれる周波数を有する単位信号を、前記サーバに向けて送信することと、
前記サーバが、前記単位信号の集合体を受信信号として受信することと、
前記サーバが、受信した前記受信信号を、対応する前記情報送信要求信号ごとに格納することと、
前記サーバが、複数の前記情報送信要求信号にそれぞれ対応して格納した複数の前記受信信号に基づいて、前記複数の端末の配置と、前記測定された観測情報との組み合わせを推定することと
を具備し、
前記情報送信要求信号を一斉送信することは、
送信するたびに異なるコード番号を、前記情報要求信号に所定の形式で含めること
を具備し、
前記情報要求信号を受信することは、
前記コード番号を前記情報要求信号から読み取ること
を具備し、
前記変換することは、
前記コード番号に応じた変換式を用いて前記変換を行うこと
を具備し、
前記推定することは、
前記コード番号に応じた逆変換式を用いて前記推定を行うこと
を具備する
情報一括収集方法。
【請求項10】
請求項9に記載の情報一括収集方法のうち、前記サーバが実行する各ステップを、前記サーバに実行させるための
サーバ側情報一括収集プログラム。
【請求項11】
請求項9に記載の情報一括収集方法のうち、前記それぞれの端末が実行する各ステップを、前記それぞれの端末に実行させるための
端末側情報一括収集プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サーバと、複数の端末とが無線ネットワークを介して通信する無線センサネットワークシステムと、この無線センサネットワークシステムを用いて行う情報一括収集方法とに係る。
【背景技術】
【0002】
近年、無線センサネットワークに係る技術の研究開発が活発に行われている。無線センサネットワークとは、センサなどを備える端末を、無線通信によって構成されたネットワークを介して制御したり、位置や環境に係る情報の収集に利用したりする無線ネットワークである。
【0003】
無線センサネットワークは、モニタリングシステムや、ホーム・オートメーションなど、様々な分野での活用が期待されている。センサネットワークを無線通信で構築することによって、コストダウンや、センシング範囲の拡大や、ネットワークの変更における柔軟性などのメリットが期待出来る。
【0004】
現在、無線センサネットワークにおいていわゆるアドホック通信を行う際には、既存の小規模ネットワーク向けの無線通信方式およびプロトコルが使用されている。このような場合に、主にZigBee(登録商標)と呼ばれるIEEE802.15.4規格や、その他の特定小電力無線システムなどが、事実上の標準技術として活用されている。
【0005】
図1は、従来技術による無線センサネットワークの全体的な構成を示す概念図である。図1に示した無線センサネットワークは、受信サーバとして機能する受信サーバSと、送信端末として機能する複数のセンサノードSN1〜SN5とを含んでいる。
【0006】
このような従来技術では、それぞれのセンサノードSN1〜SN5が、観測情報や、観測位置情報などの情報をパケットにまとめて送信する。このとき、異なるセンサノードSN1〜SN5が送信する複数の信号が互いに干渉しないように、各信号を時系列的に並べて送信する。
【0007】
上記に関連して、特許文献1(特開2010−14604号公報)には、振動測定システムに係る記載が開示されている。この振動測定システムは、センサノードと、管理ノードとを含んで構成されており、測定対象物の振動を測定する。ここで、センサノードは、測定対象物の所定位置に設けられている。管理ノードは、センサノードとの間で無線通信を行う。センサノードは、センサ側検出手段と、センサ側通信手段と、センサ側制御手段とを備える。ここで、センサ側検出手段は、測定対象物の所定位置の振動の度合を検出する。センサ側通信手段は、管理ノードとの間で、無線通信を行う。センサ側制御手段は、センサ側検出手段に対して、振動の度合の検出を所定の周期で実行するように制御すると共に、センサ側通信手段に対して、振動の度合の検出の実行されるタイミングには無線通信を禁止する制御を行う。
【0008】
また、特許文献2(特開2013−187552号公報)には、ワイヤレスセンサネットワークシステムに係る発明が開示されている。このワイヤレスセンサネットワークシステムは、複数の送信端末と、受信サーバとを具備する。ここで、複数の送信端末は、複数の送信信号群を送信する。受信サーバは、無線ネットワークを介して複数の送信信号群を受信する。複数の送信信号群は、複数の送信端末のそれぞれが送信する送信信号群を具備する。それぞれの送信端末は、第1回路部と、第2回路部と、変換部と、送信部とを具備する。第1回路部は、第1情報群を生成する。第2回路部は、第2情報群を生成する。変換部は、第1情報群および第2情報群の組み合わせを、送信周波数群および送信時刻群の組み合わせに変換する。受信サーバは、受信部と、復元部とを具備する。受信部は、複数の送信信号群を受信する。復元部は、複数の送信信号群が示す送信周波数群および送信時刻群から第1情報群および第2情報群を復元する。なお、本願発明は、特許文献2の発明者が、同発明をさらに発展させたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2010−14604号公報
【特許文献2】特開2013−187552号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1のような従来技術は、少数のセンサノードが送信する情報を正確に収集するには有効である。しかし、多数のセンサノードが送信する情報をリアルタイムに収集しようとすると、全情報の収集に時間がかかりすぎてしまうので、このような標準技術は不向きである。
【0011】
そこで、本願の発明者は、特許文献2記載の発明で、複数の情報源から送信される情報を効率よく収集することを重視したワイヤレスセンサネットワークシステムおよびその通信方法を提案した。しかし、特許文献2記載の発明では、通信時間の圧縮効果と、収集される情報を受信サーバが推定する精度とが、トレードオフの関係にあり、改善の余地があった。
【0012】
本願発明では、特許文献2発明をさらに発展させて、情報収集時間を短縮し、かつ、推定精度を向上するための無線センサネットワークシステムと、この無線センサネットワークシステムを用いて行う情報一括収集方法とを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
以下に、(発明を実施するための形態)で使用される番号を用いて、課題を解決するための手段を説明する。これらの番号は、(特許請求の範囲)の記載と(発明を実施するための形態)との対応関係を明らかにするために付加されたものである。ただし、それらの番号を、(特許請求の範囲)に記載されている発明の技術的範囲の解釈に用いてはならない。
【0014】
本願による無線センサネットワークシステムは、複数の端末(SN)と、サーバ(S)とを具備する。ここで、複数の端末(SN)は、互いに独立してそれぞれに観測情報の測定を行う。サーバ(S)は、測定の結果を収集する。サーバ(S)は、サーバ側送受信回路(34)を具備する。ここで、サーバ側送受信回路(34)は、複数の端末(SN)に向けて情報送信要求信号を一斉送信する。複数の端末(SN)のそれぞれは、測定部(16、17)と、端末側送受信回路(14)と、変換部(18、19、191)とを具備する。ここで、測定部(16、17)は、測定を行う。端末側送受信回路(14)は、情報送信要求信号を受信する。変換部(18、19、191)は、受信した情報送信要求信号に応じて、測定した観測情報を複数の無線物理量の組み合わせに変換する。それぞれの端末(SN)において、端末側送受信回路(14)は、組み合わせに含まれる時刻において、組み合わせに含まれる周波数を有する単位信号を生成してサーバ(S)に向けて送信する。サーバ側送受信回路(34)は、単位信号の集合体を受信信号として受信する。サーバ(S)は、データベース(333)と、復元回路(37)とをさらに具備する。ここで、データベース(333)は、受信した受信信号を、対応する情報送信要求信号ごとに格納する。復元回路(37)は、複数の情報送信要求信号にそれぞれ対応して格納した複数の受信信号に基づいて、複数の端末(SN)の配置と、測定された観測情報との組み合わせを推定する。
【0015】
本願発明による情報一括収集方法は、複数の端末(SN)が互いに独立してそれぞれに観測情報の測定を行うことと、サーバ(S)が複数の端末(SN)に向けて情報送信要求信号を一斉送信すること(S1)と、複数の端末(SN)のそれぞれが、情報送信要求信号を受信すること(S2)と、複数の端末のそれぞれが、情報送信要求信号に応じて、測定した観測情報を複数の無線物理量の組み合わせに変換すること(S3)と、複数の端末(SN)が、組み合わせに含まれる時刻において、組み合わせに含まれる周波数を有する単位信号を、サーバに向けて送信すること(S4)と、サーバ(S)が、単位信号の集合体を受信信号として受信すること(S5)と、サーバ(S)が、受信した受信信号を、対応する情報送信要求信号ごとに格納することと、サーバ(S)が、複数の情報送信要求信号にそれぞれ対応して格納した複数の受信信号に基づいて、複数の端末(SN)の配置と、測定された観測情報との組み合わせを推定すること(S10)とを具備する。
【発明の効果】
【0016】
本発明の無線センサネットワークシステムおよび情報一括収集方法によれば、多数のセンサノードから受信サーバへの信号送信時間を大幅に短縮しつつ、センサノードが測定した観測値を受信サーバ側で推定する精度を向上することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、従来技術による無線センサネットワークの全体的な構成を示す概念図である。
図2A図2Aは、本発明による無線センサネットワークの全体的な構成の一例を示す概念図である。
図2B図2Bは、本発明によるセンサノードの構成の一例を示すブロック回路図である。
図2C図2Cは、本発明による受信サーバの構成の一例を示すブロック回路図である。
図3図3は、本発明の無線センサネットワークシステムを用いた情報一括収集方法における処理の流れを示すフローチャートである。
図4図4は、図4は、本願による時間軸マッピング処理の一例を示す図である。
図5A図5Aは、本発明による周波数軸マッピングの原理を概略的に示す図である。
図5B図5Bは、本発明による周波数軸マッピングの具体例を示す図である。
図6A図6Aは、本願の周波数軸シフト処理の一例について、第1の状態を示す図である。
図6B図6Bは、本願の周波数軸シフト処理の一例について、第2の状態を示す図である。
図6C図6Cは、本願の周波数軸シフト処理の一例について、第3の状態を示す図である。
図7A図7Aは、図6Aに示した第1の状態から得られる共通サブキャリアの一例を示す図である。
図7B図7Bは、図6Bに示した第2の状態から得られる共通サブキャリアの一例を示す図である。
図7C図7Cは、図6Cに示した第3の状態から得られる共通サブキャリアの一例を示す図である。
図8図8は、図7A図7Bおよび図7Cに示した例による共通サブキャリアの検出確率を示す図である。
図9A図9Aは、図7Cに示した共通サブキャリアから、図8に示した検出確率が検出確率閾値に届かなかったセルを除外した状態を示す図である。
図9B図9Bは、図9Aから、除外されずに残った共通サブキャリアを抜き出した状態を示す図である。
図9C図9Cは、図9Bで抜き出された共通サブキャリアに対して、周波数軸シフト処理の逆変換を行った結果の一例を示す図である。
図9D図9Dは、図9Cに示した共通サブキャリアに対して周波数軸マッピング処理の逆変換を行った結果の一例を示す図である。
図10A図10Aは、複数のセンサノードが送信する複数の単位信号が有する周波数の一例を示す分布図である。
図10B図10Bは、図10Aの例に基づいて行った、共通するサブキャリア周波数の存在判定の結果を示す判定図である。
図10C図10Cは、受信信号からの判定結果を示す図10Bのうち、送信信号の分布を示す図10Aとの差異を示す比較図である。
図11A図11Aは、本発明の第4の実施形態による復元方法を説明する具体例における2度目の検索で該当したセルと、その共通するサブキャリア周波数との組み合わせを示す図である。
図11B図11Bは、本発明の第4の実施形態を説明する具体例における3度目の検索で該当するセルが無い状態を示す図である。
図12A図12Aは、本発明の第5の実施形態による復元方法を説明するための具体例における、送信単位信号が有するサブキャリア周波数の分布図である。
図12B図12Bは、本発明の第5の実施形態による復元方法を説明する具体例において、図12Aの例に基づいて行った、共通するサブキャリア周波数の存在判定の結果を示す判定図である。
図12C図12Cは、本発明の第5の実施形態による復元方法を説明する具体例において、表8に対応する状態におけるセルと、その共通するサブキャリア周波数との組み合わせを示す図である。
図12D図12Dは、本発明の第5の実施形態による復元方法を説明する具体例における2度目の検索で該当したセルと、その単独候補となるサブキャリア周波数との組み合わせを示す図である。
図13A図13Aは、本発明の第6の実施形態による復元方法を説明するための具体例における、センサノードの配置と、各センサノードが送信する単位信号が有するサブキャリア周波数とを示す分布図である。
図13B図13Bは、本発明の第6の実施形態による復元方法を説明するための具体例において、共通するサブキャリア周波数の存在判定の結果を示す判定図である。
図13C図13Cは、本発明の第6の実施形態による復元方法を説明するための具体例において、推定範囲外領域NZの設定結果を示す図である。
図13D図13Dは、本発明の第6の実施形態による復元方法を説明するための具体例において、1度目の検索で推定値が得られたセルに関わるデータを削除した状態を示す図である。
図13E図13Eは、本発明の第6の実施形態による復元方法を説明するための具体例において、配置されたセンサノードの数と、共通するサブキャリア周波数の数とが一致するセルがもはや存在しない状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
添付図面を参照して、本発明による無線センサネットワークと、情報一括収集方法とを実施するための形態を以下に説明する。
【0019】
(第1の実施形態)
図2Aは、本発明による無線センサネットワークの全体的な構成の一例を示す概念図である。図2Aに示した無線センサネットワークの構成要素について説明する。この例では、無線センサネットワークは、受信サーバSと、送信端末として機能する複数のセンサノードSN1〜SN3とを含んでいる。なお、図2Aに示した複数のセンサノードSN1〜SN3の総数は、あくまでも一例であって、本発明を限定するものではない。
【0020】
図2Aに示した無線センサネットワークの構成要素の位置関係および接続関係について説明する。受信サーバSと、複数のセンサノードSN1〜SN3とは、無線ネットワークを介して通信を行う。複数のセンサノードSN1〜SN3は、後述するように、所定の場所にそれぞれ固定されていても良いし、移動可能であっても構わない。なお、受信サーバSは、所定の場所に固定されていることが好ましいが、この条件は本発明を限定しない。
【0021】
図2Aに示した無線センサネットワークの動作について概略的に説明する。まず、受信サーバSが、全てのセンサノードSN1〜SN3に向けて、図示しない情報送信要求信号を送信する。第1のセンサノードSN1は、情報送信要求信号に応答して、第1の単位信号TS1を送信する。同様に、第2のセンサノードSN2は第2の信号単位TS2を送信し、第3のセンサノードSN3は第3の単位信号TS3を送信する。送信されたこれらの単位信号TS1〜TS3の集合体は、無線空間で合成された1つの受信信号TS0として受信サーバSによって受信される。
【0022】
図2Bは、本発明によるセンサノードSNの構成の一例を示すブロック回路図である。なお、図2Aに示した第1〜第3のセンサノードSN1〜SN3は、図2Bに示したセンサノードSNと同じように構成されているものとする。
【0023】
図2Bに示したセンサノードSNの構成要素について説明する。図2Bに示したセンサノードSNは、バス11と、CPU12と、メモリ13と、送受信回路14と、アンテナ15と、センサ16と、位置情報取得回路17と、時間軸マッピング回路18と、周波数軸マッピング回路19とを具備している。周波数軸マッピング回路19は、周波数軸シフト回路191を具備している。メモリ13は、プログラム131およびデータ132を格納している。ただし、後述するように、位置情報取得回路17と、時間軸マッピング回路18と、周波数軸マッピング回路19と、周波数軸シフト回路191との一部または全ては、CPU12と、メモリ13と、CPU12がメモリ13から読み出して実行するプログラム131とで代用可能な場合があり、その場合は省略可能であるものとする。反対に、位置情報取得回路17と、時間軸マッピング回路18と、周波数軸マッピング回路19と、周波数軸シフト回路191とを残して、CPU12と、メモリ13とを省略可能な場合もある。なお、このプログラム131は、これを格納する所定の記録媒体からメモリ13にコピーまたはインストールしてからそれぞれのセンサノードSNに実行させても良い。また、この所定の記録媒体は、例えばCD−ROMなどの非一過性の記録媒体であっても良い。
【0024】
図2Bに示したセンサノードSNの構成要素の接続関係について説明する。アンテナ15は、送受信回路14に接続されている。バス11は、CPU12と、メモリ13と、送受信回路14と、センサ16と、位置情報取得回路17と、時間軸マッピング回路18と、周波数軸マッピング回路19とに接続されている。
【0025】
図2Bに示したセンサノードSNの構成要素の動作について概略的に説明する。バス11は、接続された各構成要素の間で信号の送受信を可能にする。メモリ13は、各種のデータ132やプログラム131を入力、記憶、出力する。CPU12は、メモリ13に記憶された各種のプログラム131を実行し、メモリ13に記憶された各種のデータ132を用いて演算し、演算の結果をメモリ13に格納する。
【0026】
センサ16は、各種測定を行い、その結果を観測情報として出力する。ここでは、一例として、センサ16が温度計であって、温度の計測を行うものとする。ただし、この温度計はあくまでもセンサ16の一例にすぎず、本発明を限定するものではない。所定の観測対象としては、その他、速度、湿度、雨量、気圧、濃度、などのスカラー量も適用可能であり、センサ16は速度計、湿度計、雨量計、気圧計、濃度計のように他の如何なる測定器であっても良い。
【0027】
なお、観測対象は、温度のようなスカラー量以外にも、速度のように方向およびノルムを有するベクトル量であっても良い。ベクトル量を扱う場合は、その方向と、そのノルムとを、それぞれ量子化することで疑似的に2つのスカラー量として扱えば良い。その上で、方向に対応するスカラー量と、ノルムに対応するスカラー量とを、各センサノードSNから受信サーバSに向けて交互に送信する。
【0028】
位置情報取得回路17は、位置情報を取得する。位置情報は、例えばGPS(Global Positioning System:全地球測位システム)などの装置を用いて、要求されるたびに測定することで取得しても良い。この例では、位置情報は、緯度情報および経度情報で構成された2軸座標の情報であるものとする。ただし、これはあくまでも一例であって、位置情報は他の座標系を用いて構成されても良い。
【0029】
時間軸マッピング回路18は、位置情報を時間軸上にマッピングし、マッピング後の時間情報を出力する。この例では、時間軸マッピング回路18は、2軸座標の情報である位置情報を、時間軸上の2つの異なる時刻に変換する。同様に、周波数軸マッピング回路19は、観測情報を周波数軸にマッピングし、マッピング後の周波数情報を出力する。この例では、スカラー量である観測情報を、周波数軸上の1つの周波数に変換する。これらのマッピング動作は、物理的にそれぞれ独立した回路を用いて行っても良いし、代わりに、これらのマッピング動作をCPU12に実行させるプログラム131を予め格納しておいたメモリ13から読み取ってCPU12に実行させることで行っても良い。
【0030】
送受信回路14と、アンテナ15とは、受信サーバSから送信された情報送信要求信号を受信し、また、受信サーバSへの単位信号を送信する。この単位信号は、一例としてトーン信号であって、周波数情報に含まれる周波数を有し、かつ、時間情報に含まれる各時刻に送信される。
【0031】
図2Cは、本発明による受信サーバSの構成の一例を示すブロック回路図である。図2Cに示した受信サーバSの構成要素について説明する。図2Cに示した受信サーバSは、バス31と、CPU32と、メモリ33と、送受信回路34と、アンテナ35と、出力回路36と、復元回路37とを具備している。メモリ33は、プログラム331と、データ332と、データベース333とを格納している。ただし、後述するように、復元回路37は、CPU32と、メモリ33と、CPU32がメモリ33から読み出して実行するプログラム331とで代用可能な場合があり、その場合は省略可能であるものとする。なお、このプログラム331は、これを格納する所定の記録媒体からメモリ33にコピーまたはインストールしてから受信サーバSに実行させても良い。また、この所定の記録媒体は、例えばCD−ROMなどの非一過性の記録媒体であっても良い。
【0032】
図2Cに示した受信サーバSの構成要素の接続関係について説明する。アンテナ35は、送受信回路34に接続されている。バス31は、CPU32と、メモリ33と、送受信回路34と、出力回路36と、復元回路37とに接続されている。
【0033】
図2Cに示した受信サーバSの構成要素の動作について概略的に説明する。バス31は、接続された各構成要素の間で信号の送受信を可能にする。メモリ33は、各種のデータ332やプログラム331を入力、記憶、出力し、センサノードSNから受信した受信信号をデータベース333に格納する。CPU32は、メモリ33に記憶された各種のプログラム331を実行し、メモリ33に記憶されたデータ332およびデータベース333の内容を用いて演算し、演算の結果をメモリ33のデータ332またはデータベース333に格納する。
【0034】
送受信回路34は、全てのセンサノードSNに向けて情報送信要求信号を送信し、また、これらのセンサノードSNから送信された単位信号が無線空間で合成された受信信号を受信する。
【0035】
復元回路37は、受信信号を解析して、周波数軸マッピングおよび時間軸マッピングをされる前の観測情報および位置情報を復元する。この復元動作は、復元回路37の代わりに、この復元動作をCPU32に実行させるプログラム331をメモリ33に記録しておき、CPU32と、メモリ33とを用いて行っても良い。
【0036】
出力回路36は、復元された観測情報および位置情報を出力する。この出力回路36は、例えば、復元された情報を視覚的に出力するディスプレイや印刷装置であっても良いが、これらはあくまでも一例であって、本発明を限定するものではない。
【0037】
図3は、本発明の無線センサネットワークシステムを用いた情報一括収集方法における処理の流れを示すフローチャートである。図3を参照して、本発明の無線センサネットワークシステムの動作、すなわち本発明の情報一括収集方法について説明する。
【0038】
図3に示したフローチャートは、第1のステップS1〜第11のステップS11を含んでいる。以下、図3に示したフローチャートの各ステップを実行する一例について説明する。
【0039】
図3に示したフローチャートを実行する前に、無線センサネットワークシステムの初期状態を整える。この例では、受信サーバSが情報収集回数nの値を1にリセットする。情報収集回数nとは、その情報収集が何度目かを示す変数であり、一例としてここではその値を、情報収集を行うたびに1つずつ増加する。リセットされた情報収集回数nは、メモリ33に格納される。その後、受信サーバSでは第1のステップS1が実行される。
【0040】
第1のステップS1において、受信サーバSは、複数の端末SNの全てに向けて、情報送信要求信号を一斉送信する。情報送信要求信号は、コード番号として、この例ではメモリ33から読みだされた情報収集回数nの値を含んでいる。なお、情報収集回数nの値が情報送信要求信号に含まれる形式には特段の制限は無く、例えば、任意の変換方式に従って得られる波形や周波数などの形式を有していても良い。また、情報送信要求信号のコード番号は、情報収集回数nに限定されず、例えば、所定のテーブルに順番があらかじめ定義された任意の数列などを用いても良い。第1のステップS1の次に、複数のセンサノードSNでは第2のステップS2が実行される。
【0041】
第2のステップS2において、複数のセンサノードSNは、それぞれに、情報送信要求信号を受信する。情報送信要求信号を受信した複数のセンサノードSNのそれぞれは、情報送信要求信号が有する周波数と、情報送信要求信号を受信した時刻と、情報送信要求信号に含まれるコード番号としての情報収集回数nとを、受信サーバSが用いた変換方式の逆変換などによって取得して、それぞれのメモリ13に格納する。言い換えれば、複数のセンサノードSNは、互いに独立していながら、同じ情報送信要求信号を受信することによって、周波数と、時間と、コード番号とを同期することが出来る。厳密には、受信サーバSからの距離や電波状況などに応じて、それぞれのセンサノードSNが情報送信要求信号を受信するタイミングに誤差が発生し得るが、全てのセンサノードSNが分布する現実的な範囲を考慮すれば、このような誤差は十分に無視できる。
【0042】
なお、電波環境をはじめとする種々の理由によって、センサノードSNの一部が情報送信要求信号を受信出来ない場合もある。情報送信要求信号を受信出来なかったセンサノードSNは以降各ステップの動作を行なわず、その後の情報送信要求信号を受信するまでは事実上の待機状態になる。第2のステップS2の次に、情報送信要求信号を受信出来た複数のセンサノードSNでは第3のステップS3が実行される。
【0043】
第3のステップS3において、複数のセンサノードSNは、それぞれに独立して、自身の位置情報と、所定の観測対象とを測定し、これらの測定結果の組み合わせを複数の無線物理量の組み合わせに変換する。
【0044】
位置情報および観測対象の測定は、情報送信要求信号に応じて行うことが好ましい。例えば、情報送信要求信号を受信してから測定を開始しても良い。または、常時定期的に測定を継続しながら、情報送信要求信号を受信した直前の測定結果を採用しても良い。この意味において、複数のセンサノードSNのそれぞれによる各種の測定は、厳密には第3のステップS3とは独立したタイミングで、待機状態の期間も含めて、いつ行われていても良い。また、いずれの場合も、位置情報および観測対象の測定結果は、それぞれのセンサノードSNにおいてメモリ13に一旦格納されても良い。
【0045】
複数のセンサノードSNのそれぞれは、時間軸マッピング回路18および周波数軸マッピング回路19を用いて、スカラー量である観測対象の測定結果と、2軸座標である位置情報の測定結果とを、最後に受信した情報収集回数nの値に応じて、複数の無線物理量の組み合わせに変換する。この変換方式を、ここでは「無線物理量変換」と呼び、その詳細については後述するが、この例では結果として1つの周波数および2つの時刻の組み合わせが得られる。ここで、無線物理量変換の結果として得られる周波数および時刻の総数は、あくまでも一例であって本願を限定するものではなく、適用される場面に応じて適宜に変更することも可能である。第3のステップS3の次に、複数のセンサノードSNでは第4のステップS4が実行される。
【0046】
第4のステップS4において、複数のセンサノードSNのそれぞれは、第2のステップS2で得られた組み合わせに含まれる無線物理量に基づいて単位信号を受信サーバSに向けて送信する。この例では、それぞれのセンサノードSNが、変換によって得られた2つの時刻において、変換によって得られた周波数を有する単位信号を、受信サーバSに向けて送信する。言い換えれば、この例では、それぞれのセンサノードSNが、同じ周波数を有する単位信号を、受信サーバSに向けて2回送信する。第4のステップS4の次に、受信サーバSでは第5のステップが実行される。
【0047】
第5のステップS5において、受信サーバSは、複数のセンサノードSNから送信された一連の単位信号が無線空間で結合された集合体である受信信号を受信し、それぞれの時刻における周波数成分についてその電力を検出する。また、受信サーバSは、受信信号またはその電力の検出結果を、情報収集回数nごとに、データベース333に格納する。第5のステップS5の次に、受信サーバSでは、第6のステップS6が実行される。
【0048】
第6のステップS6において、受信サーバSは、第5のステップS5で得られた電力検出結果から、共通サブキャリアを判定する。ここで、共通サブキャリアとは、受信信号から位置情報および観測情報の対応関係を推定するために生成する中間データである。第6のステップS6の次に、受信サーバSでは、第7のステップS7が実行される。
【0049】
第7のステップS7において、受信サーバSは、トレーニング期間が完了しているかどうか、すなわち、共通サブキャリアの検出確率を算出するために十分な回数の測定結果をすでに収集出来ているかどうか、を判定する。ここで、共通サブキャリアの検出確率を算出するために使用する収集信号の数を、収集回数閾値Nと置く。判定の結果、n≦Nが確認された場合(Yes)は、第7のステップS7の次に、受信サーバSでは第8のステップS8が実行される。反対に、判定の結果、n>Nが確認された場合(No)は、受信サーバSでは第8のステップS8〜第10のステップS10を飛ばして第11のステップS11が実行される。
【0050】
第8のステップS8において、受信サーバSは、各セルの共通サブキャリアの検出確率を算出する。ここで、共通サブキャリアの検出確率とは、データベース333に累積した過去の受信信号に基づいて得られる、共通サブキャリアごとの信頼性を示す中間データである。第8のステップS8の次に、受信サーバSでは、第9のステップS9が実行される。
【0051】
第9のステップS9において、受信サーバSは、共通サブキャリアの検出確率が高いセルを推定対象として選択する。言い換えれば、全体的な観測情報の推定精度を向上するために、信頼性が比較的低い共通サブキャリアに係るデータを演算の対象から除外する。第9のステップS9の次に、受信サーバSでは、第10のステップS10が実行される。
【0052】
第10のステップS10において、受信サーバSは、第9のステップS9で選択されたセルのみの観測情報を推定する。ここで、受信サーバSは、観測情報を推定した結果を出力回路36から出力しても良いし、メモリ33に格納しても良い。第10のステップS10の次に、受信サーバSでは、第11のステップS11が実行される。
【0053】
第11のステップS11において、受信サーバSは、情報収集回数nの値を更新する。より具体的には、この例では情報収集回数nの値を1つ増加するが、これはあくまでも一例であって、増加分の数値は1以外であっても良いし、情報収集回数nの値を所定のテーブルにしたがって変動しても良い。第11のステップS11の次に、受信サーバSは、第1のステップS1を実行し、以下繰り返す。
【0054】
第3のステップS3で行われる時間軸マッピング処理について詳細に説明する。
【0055】
図4は、本願による時間軸マッピング処理の一例を示す図である。図4は、縦4列、横4行、合計16セルからなる格子と、前半が左から右への横方向、後半が下から上への縦方向に伸びる時間軸とを含んでいる。
【0056】
図4に示した格子は、本願の無線センサネットワークシステムで観測情報を測定する領域を示している。この例では、この領域は、縦4列、横4行、合計16のセルに分かれている。通常は、これら16のセルを縦横の2軸の第1座標および第2座標で表現するが、本願では、この2軸座標を、2つの時刻に変換する。図4に示した例では、左から右に向かって、第0列を時刻tに対応させ、第1列を時刻tに対応させ、第2列を時刻tに対応させ、第3列を時刻tに対応させる。また、下から上に向かって、第0行を時刻tに対応させ、第1行を時刻tに対応させ、第2行を時刻tに対応させ、第3行を時刻tに対応させる。
【0057】
このような対応関係によって、本来は2次元の情報である2軸の座標値を、1次元の情報である時間軸上の2つの時刻に変換する処理を、本願では時間軸マッピング処理と呼ぶ。このような時間軸マッピング処理を行うことで、複数のセンサノードSNから受信サーバSに向けて信号を送信するために必要な合計時間が短縮される。従来技術では、16のセルにセンサノードが1つずつ配置されていれば、16のセンサノードが順番に信号の送信を行い、全ての送信が完了するまでに合計16単位時間が必要となる。本願の時間軸マッピング処理では、同じ列に配置された全てのセンサノードは、その列に対応する時刻に一斉に信号を送信し、また、同じ行に配置された全てのセンサノードも、その行に対応する時刻に一斉に信号を送信するので、全ての送信を合計8単位時間の間に完了出来る。
【0058】
また、ここでは説明を簡単にするために4列×4行=16セルの領域を例に挙げたが、当然ながら、数十列×数十列=数百〜数千セル、またはそれ以上、のいかなる領域にも適用可能である。そのような場合には、送信時間の短縮率はさらに向上する。ただし、送信時間の短縮と、受信信号から観測情報を推定する精度の向上とは、トレードオフの関係にある。
【0059】
なお、以上はあくまでも一例であって、他にも、2軸の座標値の片方と、別の観測情報との組み合わせを、時間軸上の2つの時刻に変換しても良い。
【0060】
第3のステップS3で行われる周波数軸マッピングと、続く第4のステップS4で行われる単位信号の送信とについて、詳細に説明する。本発明では、複数のセンサノードSNの各々から受信サーバSに向けて送信される単位信号の周波数を、予め用意した複数の観測値と周波数とのマッピングに基づき、そのセンサノードSNでの観測値に応じて割り当てる。より具体的には、OFDM(Orthogonal Frequency−Division Multiplexing:直交周波数分割多重)方式を用いて、観測値に応じたサブキャリア周波数の単位信号が割り当てられる。OFDM方式では、あるサブキャリアの中心周波数付近で信号が強くなるが、他のサブキャリアの中心周波数付近では強度がゼロなので、同時刻に各センサノードSNから受信された複数のサブキャリア周波数の単位信号をサブキャリアごとに容易に分離することが可能となる。なお、本実施形態では、観測値とサブキャリア周波数は1対1で対応づけがなされていることを前提とする。したがって、同じ時間タイミングに各センサノードSNは、その観測値に対応する1つのサブキャリア周波数に変換を行う。これに対して、1つの観測値に対して複数のサブキャリア周波数を割り当てるようにマッピングを行ってもよい。この場合、同じ時間タイミングに各センサノードSNは、その観測値に対応する複数のサブキャリア周波数に変換を行う。
【0061】
このような周波数軸マッピングは、例えば、再表2009−084464号公報に記載の「無線通信方法、無線通信装置、無線通信用プログラムおよび無線通信システム」に係る発明でも使用されている。
【0062】
図5Aは、本発明による周波数軸マッピングの原理を概略的に示す図である。図5Aは、観測値を示す第1の軸と、サブキャリア周波数番号を示す第2の軸とが示されている。
【0063】
まず、観測値をkと置き、観測範囲の最小値をKminと置き、同じく最大値をKmaxと置き、中心値をKmidと置く。ここで、観測範囲中心値Kmidは、観測範囲の最大値および最小値の中心値であり、次の式で定義されるものとする。
mid=(Kmax+Kmin)/2
【0064】
なお、観測範囲の幅の半分の値Wは、以下のように定義される。
W=(Kmax−Kmin)/2
【0065】
次に、サブキャリア周波数番号をnと置き、サブキャリア周波数番号の最小値をNminと置き、同じく最大値をNmaxと置き、中心値をNmidと置く。ここで、サブキャリア周波数中心番号Nmidは、サブキャリア周波数番号の最大値と、最小値との中心値であり、次の式で定義されるものとする。
mid=(Nmax+Nmin)/2
【0066】
なお、このようなサブキャリア周波数中心番号Nmidが存在するためには、サブキャリアの総数は奇数である必要があり、以下のように定義される整数Aが存在するものとする。
max−Nmin=2W/A
【0067】
周波数軸マッピングの具体的な計算方法について説明する。観測値kが観測範囲最小値Kmin以下であれば、サブキャリア周波数最小番号Nminを割り当てる。同様に、観測値kが観測範囲最大値Kmax以上であれば、サブキャリア周波数最大番号Nmaxを割り当てる。
【0068】
観測値kが上記以外の、すなわち
min<k<Kmax
の場合は、観測値kを整数2Aで刻んでサブキャリア周波数番号nに割り当てる。このとき、割り当てられるサブキャリア周波数番号nは以下の式で算出される。
【数1】
すなわち、観測値kと、観測範囲中心値Kmidとの差を、整数2Aの逆数で離散化し、小数点以下を切り捨てた上で、対応するサブキャリア周波数番号nと、サブキャリア周波数中心番号Nmidとの差に置き換えることが出来る。
【0069】
図5Bは、本発明による周波数軸マッピングの具体例を示す図である。この例では、温度を20〜30°Cの範囲で測定し、サブキャリア周波数番号0〜100番の範囲でマッピングする。図5Aに対応させて考えると、
min=20
max=30
mid=25
W=5
min=0
max=100
mid=50
A=50
となり、より具体的には、周波数軸マッピングは以下の式を演算することに等しくなる。
【数2】
【0070】
表1は、上記のマッピング方法を用いて、6つのセンサノードで取得された観測情報から周波数サブキャリア番号を算出した例を示す。
【表1】
表1の例において、第1のセンサノードが観測した温度は20.0°Cだったので、0番のサブキャリア周波数が割り当てられる。同様に、第2のセンサノードが観測した温度は18.9°Cだったので、0番のサブキャリア周波数が割り当てられる。第3のセンサノードが観測した温度は23.4°Cだったので、34番のサブキャリア周波数が割り当てられる。第4のセンサノードが観測した温度は28.2°Cだったので、82番のサブキャリア周波数が割り当てられる。第5のセンサノードが観測した温度は30.1°Cだったので、100番のサブキャリア周波数が割り当てられる。第6のセンサノードが観測した温度は31.3°Cだったので、100番のサブキャリア周波数が割り当てられる。
【0071】
ここまでは、前回特許文献2記載の発明でも提案したとおりであるが、本願発明では、さらに、周波数軸シフト回路191を用いて、変換前の観測値と、変換後の周波数との対応関係を、情報収集回数nに応じて変動させる周波数軸シフト処理を行う。また、本実施形態では、さらに、変換前の観測値と、変換後の周波数との対応関係を、センサノードSNの観測位置情報にも応じて変動させている。
【0072】
周波数軸シフト回路191が行う周波数軸シフト処理について説明する。ここでは、一例として、まず、センサノードSNごとに、その観測位置情報である第1座標値xおよび第2座標値yのどちらか一方または両方と、情報収集回数nとに応じて、シフト量nshiftを算出する。この例では、第1座標値xだけを用いて、以下のような変換式を利用する。
shift=x×(n−1)
【0073】
次に、変換前の観測値と、変換後の周波数との対応関係を、算出されたシフト量nshiftに応じてずらす。この例では、以下のような変換式を利用する。
n’car=(ncar+nshift) mod Ncar
ここで、「n’car」はシフト後の周波数サブキャリア番号を示し、「ncar」はシフト前の周波数サブキャリア番号を示し、「Ncar」は周波数軸マッピングに使用する周波数サブキャリアの総数を示す。また、「mod」はモジュロ計算を意味する記号である。
【0074】
以上に説明した周波数軸シフト処理を導入した本願の周波数マッピング処理について、具体例を用いてさらに詳細に説明する。
【0075】
図6Aは、本願の周波数軸シフト処理の一例について、第1の状態を示す図である。図6Aに示した例では、第1のセンサノードA〜第7のセンサノードGが、縦4列×横4行の合計16セルに配置されている。第1のセンサノードAは、縦第0列、横第3行のセルに配置されており、観測値は「1」である。第2のセンサノードBは、縦第2列、横第3行のセルに配置されており、観測値は「1」である。第3のセンサノードCは、縦第1列、横第2行のセルに配置されており、観測値は「2」である。第4のセンサノードDは、縦第0列、横第1行のセルに配置されており、観測値は「2」である。第5のセンサノードEは、縦第2列、横第1行のセルに配置されており、観測値は「3」である。第6のセンサノードFは、縦第2列、横第0行のセルに配置されており、観測値は「4」である。第7のセンサノードGは、縦第3列、横第0行のセルに配置されており、観測値は「3」である。
【0076】
この例では、1回目の情報収集において、すなわち情報収集回数n=1の場合に、シフト量nshiftは常に0となり、したがって周波数軸シフト処理は行わなかった場合と同じ結果が得られる。各センサノードにおいて、観測値から周波数マッピング処理によって得られる周波数サブキャリア番号は、表2に示すとおりである。表2において、網掛け線で強調した部分は、実際に送信される信号に含まれる周波数成分を示している。
【0077】
【表2】
【0078】
図6Aおよび表2に示したように、情報収集回数n=1の場合には、時刻tにおいて、第1のセンサノードAは観測値「1」に対応する周波数fを有する単位信号を送信し、第4のセンサノードDは観測値「2」に対応する周波数fを有する単位信号を送信する。時刻tにおいて、第3のセンサノードCは観測値「2」に対応する周波数fを有する単位信号を送信する。時刻tにおいて、第2のセンサノードBは観測値「1」に対応する周波数fを有する単位信号を送信し、第5のセンサノードEは観測値「3」に対応する周波数fを有する単位信号を送信し、第6のセンサノードFは観測値「4」に対応する周波数fを有する単位信号を送信する。時刻tにおいて、第7のセンサノードGは観測値「3」に対応する周波数fを有する単位信号を送信する。
【0079】
さらに、時刻tにおいて、第6のセンサノードFは観測値「4」に対応する周波数fを有する単位信号を送信し、第7のセンサノードGは観測値「3」に対応する周波数fを有する単位信号を送信する。時刻tにおいて、第4のセンサノードDは観測値「2」に対応する周波数fを有する単位信号を送信し、第5のセンサノードEは観測値「3」に対応する周波数fを有する単位信号を送信する。時刻tにおいて、第3のセンサノードCは観測値「2」に対応する周波数fを有する単位信号を送信する。時刻tにおいて、第1のセンサノードAは観測値「1」に対応する周波数fを有する単位信号を送信し、第2のセンサノードBは観測値「1」に対応する周波数fを有する単位信号を送信する。
【0080】
本発明によれば、上記のように、観測情報をサブキャリア周波数に変換し、観測位置情報を送信タイミングに変換して送信を行うことにより、従来技術におけるパケットを用いた送信方法と比べて、きわめて高速な送信が可能になる。これは、センサノード数が多い場合に特に顕著となる。例えば、センサノード数を2500とすると、従来のZigBeeに準拠した送信方法の場合、観測情報と観測位置情報を含みうる最小のパケットサイズ(例えば、127バイト=1016ビット)、パケット送信速度を250キロビット毎秒とし、各センサノードからのパケットの衝突が一切発生しない理想的な環境を想定したとしても、全ノードの情報の送信に10秒程度要する。一方、本発明の送信方法の場合、1回の送信タイミングを表す1スロットを、一般的な無線LANの10倍程度の余裕を見て40マイクロ秒とし、1グループに1セル(すなわち、上記α=1)として、送信タイミングが一切集約されずに各ノードの情報が送信される(すなわち2500回の送信が行われる)としても、100ミリ秒程度で済む。
【0081】
図6Bは、本願の周波数軸シフト処理の一例について、第2の状態を示す図である。図6Bにおける第1のセンサノードA〜第7のセンサノードGの配置は、図6Aの場合と同様であるので、さらなる詳細な説明を省略する。図6Bは、2回目の情報収集において、すなわち情報収集回数n=2の場合を示している。このとき、シフト量nshiftは、横軸の座標値xに応じて算出されて、その結果は表3に示すとおりである。表3において、網掛け線で強調した部分は、実際に送信される信号に含まれる周波数成分を示している。一例として、第2のセンサノードBでは、横軸座標xの値が2であるので、観測値「1」に対応付けられる周波数が、表2に示したfからfに、2サブキャリアだけシフトされている。同様に、第7のセンサノードGでは、横軸座標xの値が3であるので、観測値「3」に対応付けられる周波数が、表2に示したfからfに、−2サブキャリアだけ、すなわちモジュロ5で3サブキャリアだけ、シフトされている。
【0082】
【表3】
【0083】
図6Bおよび表3に示したように、情報収集回数n=2の場合には、時刻tにおいて、第1のセンサノードAは観測値「1」に対応する周波数fを有する単位信号を送信し、第4のセンサノードDは観測値「2」に対応する周波数fを有する単位信号を送信する。時刻tにおいて、第3のセンサノードCは観測値「2」に対応する周波数fを有する単位信号を送信する。時刻tにおいて、第2のセンサノードBは観測値「1」に対応する周波数fを有する単位信号を送信し、第5のセンサノードEは観測値「3」に対応する周波数fを有する単位信号を送信し、第6のセンサノードFは観測値「4」に対応する周波数fを有する単位信号を送信する。時刻tにおいて、第7のセンサノードGは観測値「3」に対応する周波数fを有する単位信号を送信する。
【0084】
さらに、時刻tにおいて、第6のセンサノードFは観測値「4」に対応する周波数fを有する単位信号を送信し、第7のセンサノードGは観測値「3」に対応する周波数fを有する単位信号を送信する。時刻tにおいて、第4のセンサノードDは観測値「2」に対応する周波数fを有する単位信号を送信し、第5のセンサノードEは観測値「3」に対応する周波数fを有する単位信号を送信する。時刻tにおいて、第3のセンサノードCは観測値「2」に対応する周波数fを有する単位信号を送信する。時刻tにおいて、第1のセンサノードAは観測値「1」に対応する周波数fを有する単位信号を送信し、第2のセンサノードBは観測値「1」に対応する周波数fを有する単位信号を送信する。
【0085】
図6Cは、本願の周波数軸シフト処理の一例について、第3の状態を示す図である。図6Cにおける第1のセンサノードA〜第7のセンサノードGの配置は、図6Aおよび図7Aの場合と同様であるので、さらなる詳細な説明を省略する。図6Cは、3回目の情報収集において、すなわち情報収集回数n=3の場合を示している。このとき、シフト量nshiftは、横軸の座標値xに応じて算出されて、その結果は表4に示すとおりである。表4において、網掛け線で強調した部分は、実際に送信される信号に含まれる周波数成分を示している。一例として、第2のセンサノードBでは、横軸座標xの値が2であるので、観測値「1」に対応付けられる周波数が、表2に示したfからfに、4サブキャリアだけシフトされている。同様に、第7のセンサノードGでは、横軸座標xの値が3であるので、観測値「3」に対応付けられる周波数が、表2に示したfからfに、1サブキャリアだけ、すなわちモジュロ5で6サブキャリアだけ、シフトされている。
【0086】
【表4】
【0087】
図6Cおよび表4に示したように、情報収集回数n=3の場合には、時刻tにおいて、第1のセンサノードAは観測値「1」に対応する周波数fを有する単位信号を送信し、第4のセンサノードDは観測値「2」に対応する周波数fを有する単位信号を送信する。時刻tにおいて、第3のセンサノードCは観測値「2」に対応する周波数fを有する単位信号を送信する。時刻tにおいて、第2のセンサノードBは観測値「1」に対応する周波数fを有する単位信号を送信し、第5のセンサノードEは観測値「3」に対応する周波数fを有する単位信号を送信し、第6のセンサノードFは観測値「4」に対応する周波数fを有する単位信号を送信する。時刻tにおいて、第7のセンサノードGは観測値「3」に対応する周波数fを有する単位信号を送信する。
【0088】
さらに、時刻tにおいて、第6のセンサノードFは観測値「4」に対応する周波数fを有する単位信号を送信し、第7のセンサノードGは観測値「3」に対応する周波数fを有する単位信号を送信する。時刻tにおいて、第4のセンサノードDは観測値「2」に対応する周波数fを有する単位信号を送信し、第5のセンサノードEは観測値「3」に対応する周波数fを有する単位信号を送信する。時刻tにおいて、第3のセンサノードCは観測値「2」に対応する周波数fを有する単位信号を送信する。時刻tにおいて、第1のセンサノードAは観測値「1」に対応する周波数fを有する単位信号を送信し、第2のセンサノードBは観測値「1」に対応する周波数fを有する単位信号を送信する。
【0089】
このように、本願発明による周波数軸シフト処理を導入した周波数軸マッピング処理によれば、情報収集回数nの値を、情報送信要求信号を送信する度に変更することによって、情報収集の各回においてセンサノードでの観測情報が同じであったとしても、異なる受信信号を生成することが可能となる。
【0090】
第5のステップS5で行われる、単位信号の集合体の受信およびその電力検出について詳細に説明する。受信サーバSは、単位信号を受信する時刻毎に、かつ、サブキャリア周波数毎に、受信した単位信号の電力を検出し、所定の閾値と比較し、有効な単位信号と、無効な単位信号とを選別する。有効と選別された単位信号は、受信サーバSのデータベース333などに格納される。
【0091】
第6のステップS6で行われる共通サブキャリアの判定について、より詳細に説明する。
【0092】
図7Aは、図6Aに示した第1の状態から得られる共通サブキャリアの一例を示す図である。図7Aは、図6Aの場合と同様に、縦4列、横4行、合計16のセルからなる格子を示している。図7Aに示した16のセルは、センサノードから送信された観測情報を受信サーバSが推定するために生成する中間データを示している。
【0093】
図7Aに示した16のセルのうち、一番左、かつ、一番上のセルに注目する。図6Aに示したとおり、このセルには時刻tと、時刻tとが対応している。そして、受信サーバSは、時刻tには周波数成分としてfおよびfだけを含む単位信号を受信しており、また、時刻tにはfだけを含む単位信号を受信している。これらの事実から、受信サーバSの復元回路37は、両時刻に共通して受信した周波数成分、すなわち共通サブキャリア周波数であるfが、このセルから送信されたと推定する。実際、このセルには第1のセンサノードAが配置されており、かつ、第1のセンサノードAは周波数fに変換された観測値「1」を測定しているので、受信サーバSの復元回路37による上記の推定は正しい観測情報に到達している。
【0094】
次に、図7Aに示した16のセルのうち、左から2番目、かつ、上から3番目の、太枠で示したセルに注目する。図6Aに示したとおり、このセルには時刻tと、時刻tとが対応している。そして、受信サーバSは、時刻tには周波数成分としてfだけを含む単位信号を受信しており、また、時刻tにはfおよびfだけを含む単位信号を受信している。これらの事実から、受信サーバの復元回路37は、共通サブキャリア周波数であるfがこのセルから送信されたと推定する。しかし、実際にはこのセルにはセンサノードが配置されておらず、受信サーバSの復元回路37は存在しない観測情報を検出してしまっている。
【0095】
また、図7Aに示した16のセルのうち、左から3番目、且つ、一番下のセルに注目する。図6Aに示したとおり、このセルには時刻tと、時刻tとが対応している。そして、受信サーバSは、時刻tには周波数成分としてf、fおよびfだけを含む単位信号を受信しており、また、時刻tにはfおよびfだけを含む単位信号を受信している。これらの事実化は、受信サーバSの復元回路37は、共通サブキャリア周波数であるfおよびfの両方が、このセルから送信されたと推定する。しかし、実際には、このセルには第6のセンサノードFが配置されており、第6のセンサノードFは周波数fに変換された観測値「4」だけを測定している。このように、受信サーバSの復元回路37は、部分的に正しく、部分的に誤った観測情報を検出してしまっている。
【0096】
図7Aに示した例では、その他、薄い網掛け線で示したセルでは正しい観測情報を検出しており、濃い網掛け線で示したセルでは存在しない観測情報を検出している。第6のステップS6の段階では、検出した観測情報の正誤に関係無く、図7Aに示した共通サブキャリアの情報を、情報収集回数n=1の値に対応付けて、受信サーバSのデータベース333に格納する。
【0097】
図7Bは、図6Bに示した第2の状態から得られる共通サブキャリアの一例を示す図である。図7Bに示した、情報収集回数n=2の場合も、図7Aに示した、情報収集回数n=1の場合と同様に、薄い網掛け線で示したセルでは正しい観測情報を検出しており、濃い網掛け線で示したセルでは存在しない観測情報を検出している。ここでも、検出した観測情報の正誤に関係無く、図7Aに示した共通サブキャリアの情報を、情報収集回数n=2の値に対応付けて、受信サーバSのデータベース333に格納する。
【0098】
図7Cは、図6Cに示した第3の状態から得られる共通サブキャリアの一例を示す図である。図7Cに示した、情報収集回数n=3の場合も、図7Aに示した、情報収集回数n=1の場合と同様に、薄い網掛け線で示したセルでは正しい観測情報を検出しており、濃い網掛け線で示したセルでは存在しない観測情報を検出している。ここでも、検出した観測情報の正誤に関係無く、図7Aに示した共通サブキャリアの情報を、情報収集回数n=3の値に対応付けて、受信サーバSのデータベース333に格納する。
【0099】
ただし、正しい観測情報を検出たセルの配置が、図7A図7Bおよび図7Cでほぼ一致しているのに対して、存在しない観測情報を検出したセルとの配置が、図7A図7Bおよび図7Cではそれぞれ異なる。これは、本願による周波数軸シフト処理による効果である。
【0100】
第8のステップS8で行われる共通サブキャリアの検出確率を算出することについて詳細に説明する。第7のステップS7で情報収集回数nが収集回数閾値Nに達した際、すなわち、第6のステップS6で得られた共通サブキャリアに関する中間データが十分に蓄積された際に、受信サーバSの復元回路37は、セルごとに共通サブキャリアが検出された確率を算出する。言い換えれば、情報収集回数nが収集回数閾値N未満である間は、推定精度を上げるためのトレーニング期間であり、推定動作を開始しない。
【0101】
この例では、収集回数閾値Nの値を3と置く。なお、本願発明者は、縦400列、横400行、合計16万セルの大規模な領域の半分程度にセンサノードをランダムに配置した場合でも、収集回数閾値Nの値は4程度で実用的な推定結果が得られることを確認した。
【0102】
図8は、図7A図7Bおよび図7Cに示した例による共通サブキャリアの検出確率を示す図である。図8も、縦4列、横4行、合計16のセルからなる格子を示している。図8に示した16のセルは、図6A図6B図6C図7A図7Bおよび図7Cに示した16のセルにそれぞれ対応している。16のセルのそれぞれについて、受信サーバSの復元回路37は、第6のステップS6で共通サブキャリアが検出されたか否かについて、データベース333に蓄積されたデータを読み取り、検出された確率を算出する。この例では、各セルにおいて共通サブキャリアが検出された確率として、0、1/3、2/3または1の合計4種類のいずれかが算出されている。
【0103】
第9のステップS9で行われるセルの選択について詳細に説明する。この例では、検出確率閾値を1と置く。すなわち、図8に示した16のセルのうち、共通サブキャリアが検出された確率が1未満であったセルについては、第6のステップS6において正しい観測情報が検出されていないと推定して、今後の復元処理から除外する。図8の場合は、検出確率が1に等しいセルに注目すると、実際に第1のセンサノードA〜第7のセンサノードGが配置されているセルに一致する。また、検出確率が1未満のセルに注目すると、実際にセンサノードが配置されていないセルに一致する。
【0104】
ただし、電波環境などの影響により、実際にはセンサノードが配置されているセルでも共通サブキャリアの検出確率が1に達しない場合も十分考えられる。そこで、本願の無線センサネットワークシステムおよび情報一括収集方法を実際に運用する諸条件に合わせて、検出確率閾値を適宜に調節することが望ましい。なお、このような調節を適宜に行うことで、複数のセンサノードSNの一部がセルを跨いで移動したり、途中で動作を停止したり、反対に途中から動作を開始した場合に、そのようなイレギュラーなセンサノードから送信された単位信号を、受信サーバSによる推定処理から除外することも可能となる。
【0105】
第10のステップS10で行われる観測情報の推定について詳細に説明する。この例では、情報収集回数n=収集回数閾値n=3の場合について説明する。第6のステップS6で検出してデータベース333に蓄積した共通サブキャリア情報のうち、最新のもの、すなわち図7Cに示した共通サブキャリア情報に注目する。ここから、第9のステップS9で検出確率閾値に届かなかったセルを除外する。
【0106】
図9Aは、図7Cに示した共通サブキャリアから、図8に示した検出確率が検出確率閾値に届かなかったセルを除外した状態を示す図である。この例では、左から2列目、かつ、一番下の行のセルと、一番右の列、且つ、上から2番目の行のセルとが除外されていることを、「×」印で示している。
【0107】
図9Bは、図9Aから、除外されずに残った共通サブキャリアを抜き出した状態を示す図である。
【0108】
その後、除外されずに残ったセルの共通サブキャリア、すなわち実際に存在するセンサノードから送信されたと推定される共通サブキャリアについて、受信サーバSの復元回路37は、周波数軸シフト処理の逆変換を行うことで、周波数軸シフト処理を行う前のサブキャリア周波数を算出する。この逆変換は、例えば、以下の逆変換式を用いて行う。
com=(n’com−nshift) mod Ncar
ここで、「ncom」は逆変換後の共通サブキャリアを示し、「n’com」は逆変換前の共通サブキャリアを示す。
【0109】
図9Cは、図9Bで抜き出された共通サブキャリアに対して、周波数軸シフト処理の逆変換を行った結果の一例を示す図である。
【0110】
最後に、周波数軸シフト処理の逆変換を行った結果として得られる共通サブキャリアに対して、周波数軸マッピング処理の逆変換を行って、周波数軸マッピング処理を行う前の観測情報を推定する。この逆変換は、例えば、以下の逆変換式を用いて行う。
est(x,y)=A×ncom−W+Kmid
ここで、「kest」は座標(x,y)のセルで測定された観測値を受信サーバSで推定した値を示し、「A」は観測値の刻み幅を示し、「W」は観測値の下限から上限までの幅の半値を示し、「Kmid」は観測値の中央値を示している。なお、刻み幅Aと、半値Wと、中央値Kmidについては、受信サーバSのデータ332と、各センサノードSNのデータ132とに、予め記憶されている。
【0111】
図9Dは、図9Cに示した共通サブキャリアに対して周波数軸マッピング処理の逆変換を行った結果の一例を示す図である。この例では、受信サーバSによる推定結果が図6Cに示した各セルの観測値に一致していることが確認できる。
【0112】
以上に説明したように、本願発明による無線センサネットワークシステムおよびこれを利用した情報一括収集方法は、時間軸マッピングおよび周波数軸マッピングによってセンサノードSNから受信サーバSへの信号送信に必要な時間を大幅に短縮しながら、周波数軸シフトおよび過去の受信信号の蓄積によって推定精度の向上を実現する。
【0113】
なお、本願発明による無線センサネットワークシステムおよび情報一括収集方法では、受信サーバSも、複数のセンサノードSNのそれぞれも、使用者に至るまで、複数のセンサノードSNの総数も、どのセルにセンサノードSNが配置されているのかも、知る必要が無いので、自由度の高い運用が可能であるとも言える。
【0114】
(第2の実施形態)
上述した第1の実施形態では、各セルに高々1つのセンサノードしか配置されていないことを前提に、検出確率が高い共通サブキャリアの選択と、観測情報の推定とを行った。しかし、実際の運用では、同じセルに複数のセンサノードが存在したり、一部のセンサノードがセルを跨いで移動したり、一部のセンサノードが一連の情報収集の途中で受信サーバとの通信が途絶えたり、などの様々なイレギュラーが考えられる。そこで、第1の実施形態で行った各処理に、特許文献2で提案した判定、推定、補間などの各動作を組み合わせることで、さらなる推定精度の向上が可能となる。
【0115】
図10Aは、複数のセンサノードが送信する複数の単位信号が有する周波数の一例を示す分布図である。本実施形態では、例として縦3列、横3行の合計9セルの領域に複数のセンサノードを配置した場合について説明する。
【0116】
本実施形態では、第1の実施形態における第8のステップS8と組み合わせて、またはその代わりに、共通するサブキャリア周波数の存在判定を行う。また、本実施形態では、前提条件として、1つのセルCに配置されたセンサノードSNは1個以下で、かつ、受信サーバSはこの配置を把握していないものとする。
【0117】
図10Bは、図10Aの例に基づいて行った、共通するサブキャリア周波数の存在判定の結果を示す判定図である。図10Bの判定図は、図10Aの分布図と同じ9つのセルCを表しており、横軸に時刻t〜tが、縦軸に時刻t〜tが、それぞれ割り当てられている。
【0118】
図10Bの、時刻tと、時刻tとが交差するセルCに注目する。受信サーバSのCPU32は、受信結果をまとめた表5を参照し、時刻tと、時刻tとで共通するサブキャリア周波数を検索する。共通するサブキャリア周波数は、第1のサブキャリア周波数fと、第2のサブキャリア周波数fとであるので、この結果が図10Bの、時刻tと、時刻tとが交差するセルCに対応付けられて、受信サーバSのメモリ33に記録される。
【0119】
同様に、時刻tと、時刻tとが交差するセルCに対応して、共通するサブキャリア周波数fおよびfが記録される。時刻tと、時刻tとが交差するセルCに対応して、共通するサブキャリア周波数fが記録される。時刻tと、時刻tとが交差するセルCに対応して、共通するサブキャリア周波数fが記録される。時刻tと、時刻tとが交差するセルCに対応して、共通するサブキャリア周波数fおよびfが記録される。時刻tと、時刻tとが交差するセルCに対応して、共通するサブキャリア周波数fが記録される。時刻tと、時刻tとが交差するセルCに対応して、共通するサブキャリア周波数fが記録される。時刻tと、時刻tとが交差するセルCに対応して、共通するサブキャリア周波数fが記録される。なお、時刻tと、時刻tとが交差するセルCには共通するサブキャリア周波数が無いので、その記録は空白のままとなる。
【0120】
図10Cは、受信信号からの判定結果を示す図10Bのうち、送信信号の分布を示す図10Aとの差異を示す比較図である。図10Cでは、実際の分布とは判定結果が異なる4つのセルCを、不確定領域UZとして示している。ここで、不確定領域UZは、時刻tおよび時刻tの組み合わせに対応するセルCと、時刻tおよび時刻tの組み合わせに対応するセルCと、時刻tおよび時刻tの組み合わせに対応するセルCと、時刻tおよび時刻tの組み合わせに対応するセルCとを含んでいる。
【0121】
本実施形態では、それぞれのセルCについて、判定結果であるサブキャリア周波数を観測情報に逆変換し、複数のサブキャリア周波数が候補として挙がっている場合は逆変換値の平均値を算出して、観測情報の推定値とする。この演算は、以下の式で一般化される。
【数3】
ここで、x’は対象となるセルCの横方向の座標を表し、y’は対象となるセルCの縦方向の座標を表し、kestは座標x’,y’の対象となるセルCにおける観測情報の推定値を表し、Nは対象となるセルCで候補として挙がっているサブキャリア周波数の総数を表し、Ncomはi番目の候補となるサブキャリア周波数を表す。
【0122】
この式を図10Bに当てはめると、以下のような推定結果が得られる。
est(t,t)=不明
est(t,t)=Af−W+Kmid
est(t,t)=(1/2){(Af−W+Kmid)+(Af−W+Kmid)}
est(t,t)=Af−W+Kmid
est(t,t)=(1/2){(Af−W+Kmid)+(Af−W+Kmid)}
est(t,t)=(1/2){(Af−W+Kmid)+(Af−W+Kmid)}
est(t,t)=Af−W+Kmid
est(t,t)=Af−W+Kmid
est(t,t)=Af−W+Kmid
【0123】
このとき、推定値が不明のまま残ったセルCについては、周囲のセルCの推定値に基づく補間を行っても良い。
【0124】
より具体的には、推定値が不明であるセルCに隣接するセルCのうち、推定値が確定しているセルCを検出して、これらのセルCにおける推定値の平均値を演算して、不明な推定値を補間しても良い。その一連の手順の一例を、以下に示す。
手順1:隣接セルのうち、1つ以外のセルの観測情報が推定されているセルの観測情報を補間する。観測情報を補間したいセルに隣接するセルの推定観測情報の平均値を、そのセルの観測情報とする。
手順2:隣接セルのうち、1つ以外のセルの観測情報が推定されているセルが無くなるまで、手順1を繰り返す。
手順3:隣接セルのうち、1つでも推定観測情報が決定しているセルの観測情報を補間する。観測情報を補間したいセルに隣接するセルの推定観測情報の平均値を、そのセルの観測情報とする。
手順4:全セルの観測情報が補間されるまで、手順1〜3を繰り返す。
以上の補間方法を、便宜的に、第1の補間方法と呼ぶ。
【0125】
または、逆距離加重法を用いた補間を行っても良い。逆距離加重法とは、推定値が不明なセルCから、推定値が確定しているセルCまでの距離を求め、この距離の逆数で推定値に重み付けを行い、その加重平均値で不明な推定値を補間する手法である。この計算は、例えば以下の式で表すことが出来る。
【数4】
ここで、k’は補間対象セルの推定値を示し、k’は推定値が確定しているi番目のセルの推定値を示し、wはi番目の推定値に対応する重みを示す。
【0126】
この重みwは、例えば以下の式で表すことが出来る。
【数5】
ここで、dは推定値が確定しているi番目のセルから補間対象セルまでの距離を示し、Dは逆距離加重乗数を示す。
【0127】
このとき、推定値が不明なセルCに隣接するセルCのみならず、より離れたセルCをも含めても構わない。また、距離の逆数を演算する際に用いる逆距離加重定数Dは、1のみならず、例えば2など他の数値を、理論的・経験的・実験的に予め得られた観測属性の分布特性(空間相関等)に応じて適宜に選んでも構わない。以上の補間方法を、便宜的に、第2の補間方法と呼ぶ。
【0128】
本実施形態による復元方法を用いた無線センサネットワーク通信方法では、センサノードSNが送信した情報とは異なる推定値が得られる場合があっても、この推定値と、実際の値との差はある程度の精度が保たれることが期待される。また、復元の途中で得られる判定結果が正解とは異なっていたとしても、その後の平均値算出によって、誤差は小さくなることが期待される。この復元方法は、観測対象の分布に空間相関がある場合に特に有効となる。
【0129】
(第3の実施形態)
本実施形態では、本発明の第2の実施形態よりもさらに精度の高い復元を行える場合について説明する。ここでは、前提条件として、本発明の第2の実施形態の場合と同様に観測対象に空間相関があり、さらに、受信サーバSが全てのセンサノードSNの配置を予め把握しているものとする。
【0130】
本実施形態では、受信サーバSがセンサノードSNの配置を全て把握しているので、本発明の第1の実施形態において時刻tおよび時刻tに対応するセルCのようにセンサノードSNが配置されていない場合には、その観測情報を「不明」と正しく判定することが可能となる。
【0131】
その後は、本発明の第1の実施形態の場合と同様の推定方法を行い、すなわち、同じセルCにサブキャリア周波数の候補が複数ある場合にはそれぞれの逆変換値を平均する。
【0132】
本実施形態による推定方法を図10Bに当てはめると、以下のような推定結果が得られる。
est(t,t)=不明
est(t,t)=Af−W+Kmid
est(t,t)=(1/2){(Af−W+Kmid)+(Af−W+Kmid)}
est(t,t)=Af−W+Kmid
est(t,t)=(1/2){(Af−W+Kmid)+(Af−W+Kmid)}
est(t,t)=(1/2){(Af−W+Kmid)+(Af−W+Kmid)}
est(t,t)=Af−W+Kmid
est(t,t)=不明
est(t,t)=Af−W+Kmid
【0133】
本実施形態による復元方法を用いた無線センサネットワーク通信方法でも、本発明の第1の実施形態の場合と同様の効果が得られる。すなわち、センサノードSNが送信した情報とは異なる推定値が得られる場合があっても、この推定値と、実際の値との差はある程度の精度が保たれることが期待される。この復元方法は、観測対象の分布に空間相関がある場合に特に有効となる。
【0134】
(第4の実施形態)
本実施形態では、本発明の第2の実施形態よりもさらに精度の高い復元を行える場合について説明する。ここでは、前提条件として、本発明の第2の実施形態の場合と同様に、観測対象に空間相関があり、さらに、各セルCに最大でも1つまでのセンサノードSNしか配置されていないことが保証されているものとする。
【0135】
本実施形態による復元方法では、本発明の第2の実施形態で行った複数候補の平均化の前段階として、サブキャリア周波数の候補が1つだけあるセルCのサブキャリア周波数をこの候補で確定する。確定された候補は、その後の平均化の対象から除外するものとする。この工程は、確定可能な候補が無くなるまで繰り返すことが望ましい。
【0136】
本実施形態による復元方法を、具体例を用いてより詳細に説明する。ここでまず、複数のセンサノードSNによって単位信号が図10Aに示したとおりに送信され、また、受信サーバSによって単位信号は表5に示したとおりに受信された場合を考える。
【0137】
【表5】
【0138】
次に、表5を参照して、サブキャリア周波数の候補が1つだけであるセルCを検索する。表5の例では、時刻tおよび時刻tの組み合わせに対応するセルCの候補が、第2のサブキャリア周波数fだけとなっている。同様に、時刻tおよび時刻tの組み合わせに対応するセルCの候補が、第4のサブキャリア周波数fだけとなっている。時刻tおよび時刻tの組み合わせに対応するセルCの候補が、第5のサブキャリア周波数fだけとなっている。時刻tおよび時刻tの組み合わせに対応するセルCの候補が、第3のサブキャリア周波数fだけとなっている。時刻tおよび時刻tの組み合わせに対応するセルCの候補が、第3のサブキャリア周波数fだけとなっている。これらの単独候補を、それぞれのセルCにおける観測情報の推定値として確定する。
【0139】
確定された推定値は、次の方程式による逆変換で得られる。
【数6】
【0140】
その結果、5つのセルCについて観測情報の推定値が次のように確定する。
est(t,t)=Af−W+Kmid
est(t,t)=Af−W+Kmid
est(t,t)=Af−W+Kmid
est(t,t)=Af−W+Kmid
est(t,t)=Af−W+Kmid
【0141】
次に、確定された単独候補に関わるデータを、表5から削除する。その結果、表6が得られる。
【表6】
表6において、表5から削除されたデータは「0」で上書きしているが、これはあくまでも一例であって、本発明を限定するものではない。
【0142】
次に、表6を参照して、サブキャリア周波数の候補が1つだけであるセルCの検索を繰り返す。今回は、時刻tおよび時刻tの組み合わせに対応するセルCの候補が、第1のサブキャリア周波数fだけとなっている。同様に、時刻tおよび時刻tの組み合わせに対応するセルCの候補が、第2のサブキャリア周波数fだけとなっている。
【0143】
図11Aは、本発明の第4の実施形態による復元方法を説明する具体例における2度目の検索で該当したセルCと、その共通するサブキャリア周波数との組み合わせを示す図である。これらの単独候補を、それぞれのセルCにおける観測情報の推定値として確定する。
【0144】
確定された推定値は、上記の方程式で逆変換されて、次のように算出される。
est(t,t)=Af−W+Kmid
est(t,t)=Af−W+Kmid
【0145】
次に、確定された単独候補に関わるデータを表6から削除すると、時刻tの列と、サブキャリア周波数fの行との交差点にデータが1つ残るだけとなる。このデータは、さらなる検索を繰り返すには不十分であるので、推定値の確定はこれ以上行わない。図11Bは、本発明の第4の実施形態を説明する具体例における3度目の検索で該当するセルCが無い状態を示す図である。
【0146】
この時点で、時刻tおよび時刻tの組み合わせに対応するセルCについては、推定値が確定されていない。そこで、このセルCについては、本発明の第1の実施形態の場合と同様の方法で平均値を求める。
est(t,t)=(1/2){(Af−W+Kmid)+(Af−W+Kmid)}
【0147】
この例では、時刻tおよび時刻tの組み合わせに対応するセルCの推定値が得られない。そこで、このセルCについては周囲のセルの推定値を用いて第1または第2の補間方法を、第1の実施形態の場合と同様に行っても良い。
【0148】
本実施形態による復元方法を用いた無線センサネットワーク通信方法でも、本発明の第1の実施形態の場合と同様の効果が得られる。すなわち、センサノードSNが送信した情報とは異なる推定値が得られる場合があっても、この推定値と、実際の値との差はある程度の精度が保たれることが期待される。この復元方法は、観測対象の分布に空間相関があり、かつ、各セルCに最大でも1つまでのセンサノードSNしか配置されていないことが保証されている場合に特に有効となる。
【0149】
(第5の実施形態)
本実施形態では、本発明の第4の実施形態よりもさらに精度の高い復元を行える場合について説明する。ここで、前提条件として、本発明の第4の実施形態の場合と同様に、観測対象に空間相関があり、さらに、各セルCに最大でも1つまでのセンサノードSNしか配置されていないことが保証されているものとする。
【0150】
本実施形態による復元方法では、各セルCのサブキャリア周波数の候補のうち、グループ内で単独であるものを検索し、これをそのセルCにおける観測情報の推定値として確定する。この復元方法について、図を参照して詳細に説明する。
【0151】
図12Aは、本発明の第5の実施形態による復元方法を説明するための具体例における、送信単位信号が有するサブキャリア周波数の分布図である。図12Aの例と、図10Aに示した例とでは、以下の点が異なる。すなわち、図12Aの例では、時刻tおよび時刻tの組み合わせに対応するセルCから送信される単位信号が有するサブキャリア周波数が、第5のサブキャリア周波数fではなく、第4のサブキャリア周波数fとなっている。図12Aのその他のセルCについては、図10Aの場合と同様であるので、さらなる詳細な説明を省略する。
【0152】
本実施形態による復元方法では、まず、図12Aに示した単位信号の分布に基づいて、本発明の第1の実施形態の場合と同様に、共通するサブキャリア周波数の存在判定を行うと、表7が得られる。
【表7】
表7と、表5とでは、以下の点が異なる。すなわち、表5にあった第5のサブキャリア周波数fに対応する単位信号の存在判定が表7には無く、また、表5には無かった、時刻tの列と、第4のサブキャリア周波数fの行との交点における単位信号の存在判定が、表7にはある。表7の、その他の部分は、表5の場合と同様であるので、さらなる詳細な説明を省略する。
【0153】
図12Bは、本発明の第5の実施形態による復元方法を説明する具体例において、図12Aの例に基づいて行った、共通するサブキャリア周波数の存在判定の結果を示す判定図である。図12Bの判定図と、図10Bの判定図とでは、以下の点が異なる。すなわち、時刻tおよび時刻tの組み合わせに対応するセルCの共通するサブキャリア周波数が、図12Bでは第4のサブキャリア周波数fである。図12Bの、他のセルCについては、図10Bの場合と同様であるので、さらなる詳細な説明を省略する。
【0154】
次に、各セルCのサブキャリア周波数の候補のうち、グループ内で単独であるものを検索する。表7を検索した結果、第1のサブキャリア周波数fが、時刻tおよび時刻tの組み合わせに対応するセルCだけに登場することが分かる。そこで、このセルCのサブキャリア周波数を第1のサブキャリア周波数fと判定し、逆変換式によってこのセルCの観測情報を推定する。
est(t,t)=Af−W+Kmid
【0155】
また、表7から、第1のサブキャリア周波数fに関わるデータを削除する。この状態を、表8に表す。
【表8】
【0156】
その後は、本発明の第3の実施形態と同様に復元を行う。すなわち、サブキャリア周波数の候補が1つだけあるセルCのサブキャリア周波数をこの候補で確定する。確定された候補は、その後の平均化の対象から除外するものとする。この工程は、確定可能な候補が無くなるまで繰り返す。
【0157】
図12Cは、本発明の第4の実施形態による復元方法を説明する具体例において、表8に対応する状態におけるセルCと、その共通するサブキャリア周波数との組み合わせを示す図である。図12Cは、図12Bに以下の変更を加えたものに等しい。すなわち、時刻tおよび時刻tの組み合わせに対応するセルCの候補であるサブキャリア周波数を削除する。図12Cのその他のセルCについては、図12Bの場合と同様であるので、さらなる詳細な説明を省略する。
【0158】
表8を参照して、サブキャリア周波数の候補が1つだけであるセルCを検索すると、5つのセルCが該当するので、これらセルCに逆変換式を用い、観測情報が次のように推定される。
est(t,t)=Af−W+Kmid
est(t,t)=Af−W+Kmid
est(t,t)=Af−W+Kmid
est(t,t)=Af−W+Kmid
est(t,t)=Af−W+Kmid
【0159】
次に、推定された単独候補に関わるデータを表8から削除すると、表9が得られる。
【表9】
【0160】
表9に示したように、残るデータは、時刻tの列および第2のサブキャリア周波数fの行の交点と、時刻tの列および第2のサブキャリア周波数fの行の交点と、時刻tの列および第3のサブキャリア周波数fの行の交点との、合計3つだけである。この中から、サブキャリア周波数の候補が1つだけであるセルCを再度検索すると、時刻tおよび時刻tの組み合わせに対応するセルCが見つかるので、その観測情報を逆変換式で推定する。
est(t,t)=Af−W+Kmid
図12Dは、本発明の第4の実施形態による復元方法を説明する具体例における2度目の検索で該当したセルCと、その単独候補となるサブキャリア周波数との組み合わせを示す図である。
【0161】
次に、推定された単独候補に関わるデータを表9から削除するが、これ以降は本発明の第3の実施形態で説明したとおりであるので、さらなる詳細な説明を省略する。
【0162】
本実施形態による復元方法を用いた無線センサネットワーク通信方法でも、本発明の第3の実施形態の場合と同様の効果が得られる。すなわち、センサノードSNが送信した情報とは異なる推定値が得られる場合があっても、この推定値と、実際の値との差はある程度の精度が保たれることが期待される。この復元方法は、観測対象の分布に空間相関があり、かつ、各セルCに最大でも1つまでのセンサノードSNしか配置されていないことが保証されている場合に特に有効となる。
【0163】
(第6の実施形態)
本実施形態では、1つのセルCに複数のセンサノードSNが存在する場合の復元方法について、具体例を用いて説明する。ここでは、前提条件として、観測対象の空間相関は低くても良いが、受信サーバSはセンサノードSNの配置を予め把握しているものとする。
【0164】
図13Aは、本発明の第6の実施形態による復元方法を説明するための具体例における、センサノードSNの配置と、各センサノードSNが送信する単位信号が有するサブキャリア周波数とを示す分布図である。図13Aに示した例の、センサノードSNの配置と、各センサノードSNが送信する単位信号が有するサブキャリア周波数とは、以下のとおりである。時刻tおよび時刻tの組み合わせに対応するセルCには、第1のサブキャリア周波数fを有する単位信号を送信するセンサノードSNと、第2のサブキャリア周波数fを有する単位信号を送信するセンサノードSNとが配置されている。時刻tおよび時刻tの組み合わせに対応するセルCには、第2のサブキャリア周波数fを有する単位信号を送信するセンサノードSNと、第3のサブキャリア周波数fを有する単位信号を送信するセンサノードSNとが配置されている。時刻tおよび時刻tの組み合わせに対応するセルCには、第3のサブキャリア周波数fを有する単位信号を送信するセンサノードSNが配置されている。時刻tおよび時刻tの組み合わせに対応するセルCには、第2のサブキャリア周波数fを有する単位信号を送信するセンサノードSNが配置されている。時刻tおよび時刻tの組み合わせに対応するセルCには、第3のサブキャリア周波数fを有する単位信号を送信するセンサノードSNと、第4のサブキャリア周波数fを有する単位信号を送信するセンサノードSNとが配置されている。時刻tおよび時刻tの組み合わせに対応するセルCには、センサノードSNが配置されていない。時刻tおよび時刻tの組み合わせに対応するセルCには、第3のサブキャリア周波数fを有する単位信号を送信するセンサノードSNが配置されている。時刻tおよび時刻tの組み合わせに対応するセルCには、第4のサブキャリア周波数fを有する単位信号を送信するセンサノードSNが配置されている。時刻tおよび時刻tの組み合わせに対応するセルCには、第4のサブキャリア周波数fを有する単位信号を送信するセンサノードSNと、第5のサブキャリア周波数fを有する単位信号を送信するセンサノードSNとが配置されている。
【0165】
センサノードSNが、図13Aに示されたとおりに単位信号を送信すると、受信サーバSはこれらの単位信号を表10に示すとおりに受信する。
【表10】
すなわち、時刻tには第1、第2および第3のサブキャリア周波数f、fおよびfを有する単位信号が受信される。同様に、時刻tには第2、第3および第4のサブキャリア周波数f、fおよびfを有する単位信号が受信される。時刻tには第3、第4および第5のサブキャリア周波数f、fおよびfを有する単位信号が受信される。時刻tには第3、第4および第5のサブキャリア周波数f、fおよびfを有する単位信号が受信される。時刻tには第2、第3および第4のサブキャリア周波数f、fおよびfを有する単位信号が受信される。時刻tには第1、第2および第3のサブキャリア周波数f、fおよびfを有する単位信号が受信される。
【0166】
次に、表10を参照して、セルCごとに共通するサブキャリア周波数を検索すると、図13Bが得られる。図13Bは、本発明の第6の実施形態による復元方法を説明するための具体例において、共通するサブキャリア周波数の存在判定の結果を示す判定図である。
【0167】
図13Bに得られた判定結果は、以下のとおりである。すなわち、時刻tおよび時刻tの組み合わせに対応するセルCには、サブキャリア周波数の候補として、第1、第2および第3のサブキャリア周波数f、fおよびfがある。同様に、時刻tおよび時刻tの組み合わせに対応するセルCには、サブキャリア周波数の候補として、第2および第3のサブキャリア周波数fおよびfがある。時刻tおよび時刻tの組み合わせに対応するセルCには、サブキャリア周波数の候補として、第3のサブキャリア周波数fがある。時刻tおよび時刻tの組み合わせに対応するセルCには、サブキャリア周波数の候補として、第2および第3のサブキャリア周波数fおよびfがある。時刻tおよび時刻tの組み合わせに対応するセルCには、サブキャリア周波数の候補として、第2、第3および第4のサブキャリア周波数f、fおよびfがある。時刻tおよび時刻tの組み合わせに対応するセルCには、サブキャリア周波数の候補として、第3および第4のサブキャリア周波数fおよびfがある。時刻tおよび時刻tの組み合わせに対応するセルCには、サブキャリア周波数の候補として、第3のサブキャリア周波数fがある。時刻tおよび時刻tの組み合わせに対応するセルCには、サブキャリア周波数の候補として、第3および第4のサブキャリア周波数fおよびfがある。時刻tおよび時刻tの組み合わせに対応するセルCには、サブキャリア周波数の候補として、第3、第4および第5のサブキャリア周波数f、fおよびfがある。
【0168】
ここで、時刻tおよび時刻tの組み合わせに対応するセルCには、実際にはセンサノードSNが配置されておらず、このことを受信サーバSは予め把握している。したがって、本実施形態では、受信サーバSはこのセルCを推定範囲外領域NZに設定する。図13Cは、本発明の第5の実施形態による推定方法を説明するための具体例において、推定範囲外領域NZの設定結果を示す図である。
【0169】
本実施形態では、次に、推定範囲外領域NZを除外して、配置されたセンサノードSNの数と、共通するサブキャリア周波数の数とが一致しているセルCを検索する。この検索で当てはまったセルCについては、配置されたセンサノードSNによる観測情報を、共通するサブキャリア周波数の逆変換値の平均値と推定する。この例では、以下の推定値が得られる。
est(t,t)=(1/2){(Af−W+Kmid)+(Af−W+Kmid)}
est(t,t)=Af−W+Kmid
est(t,t)=Af−W+Kmid
【0170】
本実施形態では、次に、推定値が得られたセルCをさらに除外して、かつ、除外されたセルCに対応するサブキャリア周波数の候補を残るセルCから除外する。図13Dは、本発明の第6の実施形態による復元方法を説明するための具体例において、1度目の検索で推定値が得られたセルCに関わるデータを削除した状態を示す図である。この状態から、上記と同じ検索および推定を再度実行すると、以下の推定値が追加で得られる。
est(t,t)=Af−W+Kmid
est(t,t)=Af−W+Kmid
est(t,t)=(1/2){(Af−W+Kmid)+(Af−W+Kmid)}
【0171】
本実施形態では、再度、推定値が得られたセルCをさらに除外して、かつ、除外されたセルCに対応するサブキャリア周波数の候補を残るセルCから除外する。しかし、今回は、配置されたセンサノードSNの数と、共通するサブキャリア周波数の数とが一致するセルCがもはや存在しない。そこで、以降は本発明の第3または第4の実施形態の場合と同様に、最初の判定時に存在していたサブキャリア周波数の候補から逆変換値の平均化を行う。
【0172】
図13Eは、本発明の第6の実施形態による復元方法を説明するための具体例において、配置されたセンサノードSNの数と、共通するサブキャリア周波数の数とが一致するセルCがもはや存在しない状態を示す図である。最初の判定時に存在していたサブキャリア周波数の候補から逆変換値の平均化を実行することで、以下の推定値が得られる。
est(t,t)=(1/3){(Af−W+Kmid)+(Af−W+Kmid)+(Af−W+Kmid)}
est(t,t)=(1/3){(Af−W+Kmid)+(Af−W+Kmid)+(Af−W+Kmid)}
【0173】
本実施形態による復元方法を用いた無線センサネットワーク通信方法では、以下のような効果が得られる。すなわち、観測対象の分布に空間相関が低くても、受信サーバSはセンサノードSNの配置を予め把握しているなら、推定値と、実際の値との差はある程度の精度が保たれることが期待される。
【0174】
以上、本発明の無線センサネットワークシステムと、このシステムを用いる通信方法について説明した。受信サーバSが行う復元方法については、第1〜第6の実施形態として複数の手法を説明したが、これらの手法が、技術的に矛盾しない範囲において自由に組み合わせることが可能であることは言うまでもない。例えば、推定値が得られなかったセルについては、第2の実施形態として説明した第1または第2の補間方法を、どの実施形態でも併用することが望ましい。
【符号の説明】
【0175】
11 バス
12 CPU
13 メモリ
131 プログラム
132 データ
14 送受信回路
15 アンテナ
16 センサ
17 位置情報取得回路
18 時間軸マッピング回路
19 周波数軸マッピング回路
191 周波数軸シフト回路
31 バス
32 CPU
33 メモリ
331 プログラム
332 データ
333 データベース
34 送受信回路
35 アンテナ
36 出力回路
37 復元回路
C セル
G、G1〜G16 セルグループ
NZ 推定範囲外領域
S 受信サーバ
SN、SN1〜SN5 センサノード(送信端末)
TS0 信号
TS1〜TS3 単位信号
UZ 不確定領域
図1
図2A
図2B
図2C
図3
図4
図5A
図5B
図6A
図6B
図6C
図7A
図7B
図7C
図8
図9A
図9B
図9C
図9D
図10A
図10B
図10C
図11A
図11B
図12A
図12B
図12C
図12D
図13A
図13B
図13C
図13D
図13E