【課題】噛み合わせ時に人工歯根と義歯との間で生じる応力を効果的に緩和できることで、義歯の損傷を防止でき、これによって耐久性を効果的に向上させることができ、また嵌合部の取り換えを容易に行うことができる義歯及び該義歯を用いた義歯ユニットの提供を課題とする。
【解決手段】口腔内に当接する人工歯基底2と、人工歯基底2に植設される人工歯3とを備え、人工歯基底2に設ける嵌合部20を口腔内に設ける相手方嵌合部50に嵌め合わせて使用するアタッチメント式の義歯1であって、人工歯基底2に設ける嵌合部20に、相手方嵌合部50と義歯1との間で生じる応力を緩和する応力緩和部材22を備える。
口腔内に当接する人工歯基底と、該人工歯基底に植設される人工歯とを備え、前記人工歯基底に設ける嵌合部を口腔内に設ける相手方嵌合部に嵌め合わせて使用するアタッチメント式の義歯であって、前記人工歯基底に設ける嵌合部に、前記相手方嵌合部と義歯との間で生じる応力を緩和する応力緩和部材を備えることを特徴とする義歯。
嵌合部は、相手方嵌合部の凸部に対応する凹部と、該凹部に着脱自在に取り付けられる第1のハウジング部材と、該第1のハウジング部材の内面に設ける応力緩和部材とで形成されていることを特徴とする請求項1に記載の義歯。
請求項2〜5の何れか1項に記載の義歯と、該義歯の凹部と嵌合する凸部を備える人工歯根とからなるアタッチメント式の義歯ユニットであって、前記凸部が、前記凹部の内面と接する側の端部が平面である御椀型の半球状体であることを特徴とする義歯ユニット。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1、2に示すような従来のアタッチメント式の義歯は、着脱が容易であるというメリットがある。
【0006】
しかし、このような従来のアタッチメント式の義歯においては、噛み合わせ時に人工歯根と義歯との間で生じる応力が、人工歯根に対応する位置(人工歯根の直上位置)に植設される人工歯に局所的に負荷されることから、人工歯に割れ等の損傷が発生し易いという不都合があった。このような不都合は、特に固い食べ物を食する場合により顕著であった。
【0007】
そこで本願発明は上記従来の不都合を解決し、噛み合わせ時に人工歯根と義歯との間で生じる応力を効果的に緩和できることで、義歯の損傷を防止でき、これによって耐久性を効果的に向上させることができ、また嵌合部の取り換えを容易に行うことができる義歯及び該義歯を用いた義歯ユニットの提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明の義歯は、口腔内に当接する人工歯基底と、該人工歯基底に植設される人工歯とを備え、前記人工歯基底に設ける嵌合部を口腔内に設ける相手方嵌合部に嵌め合わせて使用するアタッチメント式の義歯であって、前記人工歯基底に設ける嵌合部に、前記相手方嵌合部と義歯との間で生じる応力を緩和する応力緩和部材を備えることを第1の特徴としている。
【0009】
上記第1の特徴による義歯の場合、人工歯基底に設ける嵌合部に応力緩和部材を設けることで、噛み合わせ時に口腔内に設ける相手方嵌合部と義歯との間で生じる応力を効果的に緩和できる。よって義歯の損傷を防止でき、義歯の耐久性を効果的に向上させることができる。
【0010】
本発明の義歯は、上記第1の特徴に加えて、嵌合部は、相手方嵌合部の凸部に対応する凹部と、該凹部の内面に設ける応力緩和部材とで形成されていることを第2の特徴としている。
【0011】
第2の特徴による義歯の場合、上記第1の特徴による作用効果に加えて、口腔内に設ける相手方嵌合部と義歯との嵌合を容易なものとすることができ、装着容易な義歯とすることができる。
【0012】
本発明の義歯は、上記第1の特徴に加えて、嵌合部は、相手方嵌合部の凸部に対応する凹部と、該凹部に着脱自在に取り付けられる第1のハウジング部材と、該第1のハウジング部材の内面に設ける応力緩和部材とで形成されていることを第3の特徴としている。
【0013】
第3の特徴による義歯の場合、上記第1の特徴に記載の作用効果に加えて、第1のハウジング部材と応力緩和部材とで着脱可能な嵌合部を形成することができる。よって嵌合部だけの取り換えを容易に行うことができ、義歯の耐久性を一段と向上させることができると共に、取り扱い容易な義歯とすることができる。
【0014】
本発明の義歯は、上記第3の特徴に加えて、凹部と第1のハウジング部材との間に、前記第1のハウジング部材を着脱自在に取り付け可能な第2のハウジング部材を備えることを第4の特徴としている。
【0015】
第4の特徴による義歯の場合、上記第3の特徴に記載の作用効果に加えて、人工歯基底の損傷を一段と防止でき、一段と耐久性に優れた義歯とすることができる。
【0016】
本発明の義歯は、上記第1〜第4の特徴の何れか1つに加えて、応力緩和部材は、シリコーン樹脂で形成されることを第5の特徴としている。
【0017】
第5の特徴による義歯の場合、上記第1〜第4の特徴の何れか1つに記載の作用効果に加えて、弾性に優れると共に、耐水性に優れた応力緩和部材とすることができる。
【0018】
また本発明の義歯ユニットは、上記第2〜第5の特徴の何れか1つに記載の義歯と、該義歯の凹部と嵌合する凸部を備える人工歯根とからなるアタッチメント式の義歯ユニットであって、前記凸部が、前記凹部の内面と接する側の端部が平面である御椀型の半球状体であることを第6の特徴としている。
【0019】
この場合、嵌合式の義歯ユニットにおいて口腔内に義歯を装着した際の高さを効果的に抑えることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の義歯によれば、噛み合わせ時に口腔内に設ける嵌合部と義歯との間で生じる応力を効果的に緩和できることで、義歯の損傷を防止でき、これによって耐久性を効果的に向上させることができる。また嵌合部の取り換えを容易に行うことができる。
また本発明の義歯ユニットによれば、嵌合式の義歯ユニットにおいて口腔内に義歯を装着した際の高さを効果的に抑えることができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照して、本発明の第1の実施形態に係る義歯及び該義歯を用いてなるアタッチメント式の義歯ユニットを説明し、本発明の理解に供する。しかし、以下の説明は本発明の実施形態であって、特許請求の範囲に記載の内容を限定するものではない。
【0023】
図1を参照して、本発明の第1の実施形態に係る義歯1は、下顎の口腔内に装着して使用する義歯である。より具体的には、
図2に示す歯肉5に備える相手方嵌合部50に、義歯1に備える嵌合部20を嵌め合わすことで使用する義歯である。なお本発明の第1の実施形態においては、歯肉5に備える相手方嵌合部50を雄型(凸状)で形成すると共に、義歯1に備える嵌合部20を雌型(凹状)で形成する構成としてある。勿論、このような構成に限るものではなく、歯肉5に備える相手方嵌合部50を雌型で形成すると共に、義歯1に備える嵌合部20を雄型で形成する構成としてもよい。
【0024】
また以下の説明において、「左右」とは義歯を下顎側の口腔内に装着した装着者に正対する観察者から見て、観察者の右手側を「右」とし、左手側を「左」とするものである。また「上下」とは、義歯を下顎側の口腔内に装着した装着者に正対する観察者から見て、義歯を装着した者の頭側を「上」とし、足側を「下」とするものである。
【0025】
図1〜
図3に示すように、前記義歯1は、歯肉5に当接する人工歯基底2と、人工歯基底2に植設される人工歯3とで構成される。
【0026】
前記人工歯基底2は、歯肉5の形状に沿って略円弧状に形成されている部材である。この人工歯基底2は、歯肉5の下部を被覆すると共に、人工歯3が植設される上部基底2aと、歯肉5の外側を被覆する外側基底2bと、歯肉5の内側を被覆する内側基底2cとから構成され、断面略半楕円状又は凹状に形成されている。なお人工歯基底2の材質としては、アクリルレジン等、人工歯基底として通常使用されるものであれば如何なるものを用いてもよい。が、アクリルレジンを用いることが望ましい。
【0027】
前記人工歯3は、人工歯基底2の上部基底2a上に植設されるものである。本発明の第1の実施形態においては、義歯1を装着する者の歯肉5に天然歯が一本も存在しないものとして、全ての歯を人工歯3で形成する構成としてある。なお人工歯3の材質としては、アクリルレジン等、人工歯として通常使用されるものであれば、如何なるものを用いてもよい。
【0028】
また本発明の第1の実施形態においては、凸部を有する相手方嵌合部50と嵌め合わされる凹部を有する嵌合部20を、人工歯基底2の内側基底2cに備える構成としてある。より具体的には、本発明の第1の実施形態においては
図3に示すように、人工歯根51に備える凸状の頭部51aと嵌合する凹状溝21と、凹状溝21の内面に設ける応力緩和部材22とで嵌合部20を形成する構成としてある。なお本実施形態においては、
図3、
図4に示すように、凹状溝21の内面に御椀型の断面形状からなる嵌合用空間Kが形成されるような構成で応力緩和部材22を設ける構成としてある。言い換えれば、開口部が幅狭で奥部に向かって幅広となる御椀型の断面形状からなる嵌合用空間Kが形成されるような構成で応力緩和部材22を設ける構成としてある。また本実施形態においては、凹状溝21を矩形状に形成する構成としてある。勿論、凹状溝21の形状は本実施形態のものに限るものではなく、適宜変更可能である。また本実施形態においては、応力緩和部材22として、シリコーン樹脂を用いる構成としてある。
【0029】
なお、
図4に示す凹状溝21の深さDは、凹状溝21に頭部51aを嵌合させた状態で頭部51aの上側に一定の隙間を確保できる深さであることが必要である。また凹状溝21の幅Eは、凹状溝21に頭部51aを嵌合させた状態で頭部51aの左右に一定の隙間を確保できる長さであることが必要である。具体的には、頭部51aの高さFが2mm程度、幅Gが3mm程度である場合、凹状溝21の深さDは2.5mm〜3mm程度、幅Eは4.5mm〜5mm程度とすることが望ましい。また本発明の実施形態においては、嵌合部20を2箇所に設ける構成としたが、必ずしもこの数に限るものではなく、嵌合部20の数、大きさ、配置位置等は、義歯を装着する者の歯の欠損状態によって適宜変更可能である。
【0030】
なお、嵌合部20の形成方法としては、まず凸状の嵌合部に嵌め合わされる凹状の嵌合部を備える義歯を制作する通常の工程と同様の工程(印象を作成する工程、印象に石膏を流して模型を製作する工程、模型上で義歯を制作する工程等)を用いて凹状溝21を形成する。その後、予めシリコーン樹脂を用いて形成しておいた所定の形状・大きさ(人工歯根51の頭部51aと同じ形状・大きさ)の嵌合用空間Kを有するシリコーン体を凹状溝21に接着剤を介して嵌め込み、加熱、加圧することで、応力緩和部材22を形成することができる。勿論、嵌合部20の形成方法はこのような工程に限るものではなく、内側基底2cにおける相手方嵌合部50と対応する位置に、所定形状、所定大きさの凹状溝21を形成し、その凹状溝21の内周に頭部51aの大きさに対応する嵌合用空間Kを有する応力緩和部材22を設けることができるものであれば、如何なる工程を用いてもよい。
【0031】
前記歯肉5は、いわゆる義歯1を装着する土台となるものである。この歯肉5の内部には、
図3に示すように、歯根6と、歯槽骨7とがある。また本発明の第1の実施形態においては、
図2に示すように、歯肉5の所定箇所に義歯1の嵌合部20と嵌め合わされる相手方嵌合部50を2箇所設ける構成としてある。この相手方嵌合部50は、
図3に示すように、歯根6を土台として、歯肉5を通って歯根6に設けられる所定深さの凹状溝6aに、頭部51aを備える人工歯根51を取り付けることで形成されている。つまり本発明の第1の実施形態に係る人工歯根51は、歯の根が残っている、いわゆる根面板タイプの人工歯根である。なお、相手方嵌合部50の数、大きさ、配置位置等は、義歯を装着する者の歯の欠損状態によって適宜変更可能である。また詳しくは図示していないが、歯肉5における義歯1と接触する面は、義歯1の底面の形状(断面略半楕円状又は凹状)に対応する断面凸状に形成されている。
【0032】
なお本発明の第1の実施形態においては、
図3に一部を示すように、凸部を形成する頭部51aの形状を、凹部を形成する凹状溝21の内面と接する側の端部が平面Hである御椀型の半球状体として構成してある。このような頭部51aは、球体状の頭部に研磨等の加工を施すことで形成することができる。また人工歯根51の材質としては、メタル等、人工歯根として通常使用される剛性のあるものであれば如何なるものを用いてもよい。勿論、頭部51aの形状はこのような形状に限るものではなく、球状体等、適宜変更可能である。が、御椀型の半球状体とすることが望ましい。
【0033】
以上の構成からなる義歯1は、
図3(b)に示すように、口腔内に備える人工歯根51の頭部51aに嵌め合わせることで使用することができる。また義歯1と人工歯根51とで本発明のアタッチメント式の義歯ユニットが構成されている。
【0034】
このような構成からなる本発明の第1の実施形態に係る義歯1及び義歯ユニットは、以下の効果を奏する。
【0035】
人工歯基底2に設ける嵌合部20に応力緩和部材22を設けることで、噛み合わせ時に相手方嵌合部50と義歯1との間で生じる応力を効果的に緩和できる。よって義歯1の損傷を防止でき、これによって義歯1の耐久性を効果的に向上させることができる。
【0036】
つまり、例えば義歯1を装着した状態で食事をする場合、歯肉5と義歯1との間で噛み合わせに伴う応力が発生する。この応力は、他の部分よりも小さな面積で接している相手方嵌合部50と嵌合部20との間において最も大きく生じることになる。本発明の第1の実施形態に係る義歯1においては、頭部51aと嵌合する嵌合部20に応力緩和部材22を備える構成とすることで、噛み合わせ時に応力緩和部材22がいわばクッション材として働くこととなる。これによって、噛み合わせ時に義歯1全体が歯肉5側へ沈み込み、口腔内に設ける相手方嵌合部50と義歯1との間で発生する応力を効果的に分散させ、義歯1の底面全体に負荷させることができる。つまり、噛み合わせ時に相手方嵌合部50と義歯1との間に過大な応力が局所的に負荷されることを効果的に防止することができる。いわば相手方嵌合部50と義歯1との間に疑似粘膜を形成することができ、噛み合わせ時に相手方嵌合部50と義歯1との間に発生する応力を、相手方嵌合部50と嵌合部20に対応する位置(嵌合部20の上方)に植設される人工歯3との間のいわゆる点接触から、相手方嵌合部50と義歯1全体との間のいわゆる面接触へと変換させることができる。
【0037】
また応力緩和部材22をシリコーン樹脂で形成することで、弾性に優れると共に、耐水性に優れる応力緩和部材とすることができる。
【0038】
また凹状溝21に頭部51aを嵌合させた状態で頭部51aの上側に一定の隙間を確保できると深さと、頭部51aの左右に一定の隙間を確保できる長さを備える凹状溝21とすることで、義歯1を歯肉5に装着させた際に、頭部51aの外周全体に応力緩和部材22を効果的に配置することができる。よって義歯1から歯肉5の方向へ向かって生じる、どの方向の応力に対しても効果的に応力緩和作用を生じさせることができる。従って、使用時において一段と効率的に義歯1の損傷を防止できると共に、義歯1の耐久性を一段と効果的に向上させることができる。
【0039】
また凹状溝21の内面と接する側(嵌合部20と接する側)の端部が平面Hである御椀型の半球状体で頭部51aを形成すると共に、開口部が幅狭で奥部に向かって幅広となる御椀型の断面形状からなる嵌合用空間Kが形成されるような構成で応力緩和部材22を設ける構成とすることで、口腔内に義歯を装着した際の高さを効果的に抑えることができる義歯1及び義歯ユニットとすることができる。加えて、応力緩和部材22として弾性力に富むシリコーン樹脂を用いる構成とすることで、開口部が幅狭で奥部に向かって幅広となる御椀型の断面形状からなる嵌合用空間Kを設ける構成であっても、頭部51aに嵌合部20を嵌合させる際には、頭部51aの形状に追従して開口部を一時的に広げることができ、嵌合作業を容易に行う事ができる。また頭部51aに嵌合部20を嵌合させた後においては、義歯1が頭部51aから外れることを効果的に防止することができる。
【0040】
つまり従来のアタッチメント式の義歯及び該義歯を用いた義歯ユニットとしては、まず
図9(a)に示すように、メタル等の金属やチタンで構成される人工歯根91の頭部91aと、レジン等の合成樹脂で構成される人工歯基底81に設ける凹状溝81aとを嵌め合わせる構成のものがあった。
また
図9(b)に示すように、着脱操作が容易なことから、人工歯根91に備える永久磁石91bと、レジン等の合成樹脂で構成される人工歯基底81に設ける凹状溝81aに備える永久磁石83とを接着させる構成を備えるものがあった。
なお
図9(a)においては、義歯8aと人工歯根91とで義歯ユニットが構成されている。また
図9(b)においては、義歯8bと人工歯根91とで義歯ユニットが構成されている。
ここで、歯肉90は義歯8a、8bを装着する土台となるもので、内部に歯根92と歯槽骨93があり、人工歯根91は歯根92に設けられている。
【0041】
このような従来のアタッチメント式の義歯8a、8b及び義歯8a、8bを用いた義歯ユニットにおいては、使用時に義歯8aの凹状溝81aと頭部91a、義歯8bの永久磁石83と歯肉90側の永久磁石91bとがそれぞれ密着することになる。従って噛み合わせ時に義歯8a、8bと歯肉90との間で発生する応力は、逃げ場なく人工歯根91に対応する位置(人工歯根の直上位置)に植設される人工歯82に局所的に負荷されることになる。よって人工歯根に対応する位置に植設される人工歯に割れ等の損傷が発生し易いという不都合があった。
【0042】
従って本発明の第1の実施形態に係る義歯1及び義歯1を用いた義歯ユニットの構成とすることで、噛み合わせ時に人工歯根51と義歯1との間で発生する応力を効果的に緩和でき、義歯1の損傷を防止できる。これによって耐久性を効果的に向上させることができる義歯1とすることができる。更に噛み合わせ時の局所的な応力の発生によって義歯(人工歯)が損傷することを防止するための構成として、従来、義歯の内部に配置してあった補強用の金属部材を用いる必要がない。よって省コスト化、軽量化が可能な義歯1とすることができる。また本発明の義歯ユニットによれば、
図9(a)に示すような嵌合式の義歯ユニットにおいて、口腔内に義歯を装着した際の高さを効果的に抑えることができる。更に 装着が容易であると共に、装着後においては外れ難い義歯1及び義歯ユニットとすることができる。
【0043】
次に
図5を参照して、本発明の第2の実施形態に係る義歯10及び義歯10を用いた義歯ユニットを説明する。本発明の第2の実施形態に係る義歯10及び義歯ユニットは、既述した本発明の第1の実施形態に係る義歯1及び義歯ユニットに対して、義歯に設ける嵌合部の構成の一部を異なる構成としたものである。その他の構成は既述した本発明の第1の実施形態に係る義歯1及び義歯1を用いた義歯ユニットと同一であることから、同一部材、同一機能を果たすものには同一番号を付し、以下の詳細な説明は省略するものとする。
【0044】
具体的には、
図5に示すように、相手方嵌合部50の人工歯根51(凸部)に対応する凹部を形成する凹状溝21と、凹状溝21に着脱自在に取り付けられる第1のハウジング部材23と、第1のハウジング部材23の内面に設ける応力緩和部材22とで嵌合部20を形成する構成としてある。より具体的には、外面側で人工歯基底2に設ける凹状溝21に着脱自在に取り付けられると共に、内面側に人工歯根51の頭部51aと嵌合する凹所23aを備える第1のハウジング部材23と、頭部51aの大きさに対応する嵌合用空間Kを有する応力緩和部材22とで嵌合部20を形成する構成としてある。
【0045】
なお本実施形態においては、第1のハウジング部材23を凹状溝21に着脱自在に取り付ける構成として、第1のハウジング部材23の外周に設ける一対の嵌合用凸部23bを、凹状溝21に設ける嵌合用凹部21aに嵌め合わす構成を採用している。勿論、このような構成に限るものではなく、第1のハウジング部材23を凹状溝21に着脱自在に取り付けることができる構成であれば、如何なる構成を用いてもよい。
【0046】
なお、
図5(b)に示す第1のハウジング部材23の上下方向の長さJは凹状溝21の深さと同じであると共に、左右方向の長さLは凹状溝21の幅と同じであることが必要である。また嵌合用凸部23bの上下方向の長さMは0.5mm程度、左右方向の長さNは0.2mm程度であることが望ましい。また第1のハウジング部材23は、アクリルレジン等の樹脂で形成することができる。
【0047】
このような本発明の第2の実施形態に係る義歯10の構成とすることで、第1のハウジング部材23と応力緩和部材22とで着脱可能な嵌合部20を形成することができる。よって、嵌合部20だけの取り換えを容易に行うことができ、義歯1の耐久性を一段と向上させることができると共に、取り扱いが容易な義歯10とすることができる。
【0048】
つまり、使用による消耗で嵌合部20(特に応力緩和部材22)の取り換えが必要となる場合であっても、義歯10を歯科技工所に持ち込むことなく、歯科医院にて歯科医師が専用の器具を用いて人工歯基底2から嵌合部20を取り外し、新しい嵌合部20を取り付ける事が可能となる。よって義歯10の使用者にとっては、義歯10を歯科医院に預けて帰ることなく、歯科医院を訪れた即日に嵌合部20の取り換えを終了して家に帰ることができる。従って、義歯がないことで不自由な生活を送る心配を義歯の使用者に与えることがなく、積極的に歯科医院に訪れる環境を生み出すことができる。また歯科医師にとっては、迅速な処置が可能となり、効率の良い診察を実現することができる。
【0049】
次に
図6を参照して、本発明の第3の実施形態に係る義歯100及び義歯100を用いた義歯ユニットを説明する。本発明の第3の実施形態に係る義歯100及び義歯100を用いた義歯ユニットは、既述した本発明の第1、第2の実施形態に係る義歯1、10及び義歯1、10を用いた義歯ユニットに対して、義歯に設ける嵌合部の構成の一部を異なる構成としたものである。その他の構成は既述した本発明の第1、第2の実施形態に係る義歯1、10及び義歯1、10を用いた義歯ユニットと同一であることから、同一部材、同一機能を果たすものには同一番号を付し、以下の詳細な説明は省略するものとする。
【0050】
具体的には、
図6に示すように、既述した本発明の第2の実施形態に係る義歯10の構成に加えて、凹部を構成する凹状溝21と第1のハウジング部材23との間に、外面側で人工歯基底2に設ける凹状溝21に接着剤を介して取り付けられると共に、内面側に第1のハウジング部材23を着脱自在に取り付け可能な凹所24aを備える第2のハウジング部材24を備える構成としてある。
【0051】
なお本実施形態においては、
図6(b)に示すように、第1のハウジング部材23を第2のハウジング部材24に着脱自在に取り付ける構成として、第1のハウジング部材23の外周に設ける一対の嵌合用凸部23bを、第2のハウジング部材24に設ける嵌合用凹部24bに嵌め合わせる構成を採用している。勿論、このような構成に限るものではなく、第1のハウジング部材23を第2のハウジング部材24に着脱自在に取り付けることができる構成であれば、如何なる構成を用いてもよい。
【0052】
なお、
図6(b)に示す第2のハウジング部材24の上下方向の長さPは凹状溝21の深さと同じであると共に、左右方向の長さQは凹状溝21の幅と同じであることが必要である。また第2のハウジング部材24は、アクリルレジン等の樹脂で形成することができる。
【0053】
このような本発明の第3の実施形態の構成とすることで、第1のハウジング部材23と応力緩和部材22とで着脱可能な嵌合部20を形成することができる。よって、嵌合部20だけの取り換えを容易に行うことができ、義歯100の耐久性を一段と向上させることができると共に、取り扱いが容易な義歯100とすることができる。また、いわゆる取り換えユニットを構成する第1のハウジング部材23の外面と人工歯基底2とが接触することがない。よって嵌合部20の交換作業時等において、人工歯基底2が損傷することを効果的に防止することができ、一段と耐久性の高い義歯100とすることができる。
【0054】
次に
図7を参照して、本発明の実施形態に係る口腔内に設ける嵌合部の変形例を説明する。本変形例は、既述した本発明の第1の実施形態に対して、人工歯根の構成を変化させたものである。その他の構成は、既述した本発明の第1の実施形態に係る義歯1及び義歯1を用いた義歯ユニットと同様であることから、同一部材、同一機能を果たすものには同一番号を付し、以下の詳細な説明を省略するものとする。
【0055】
具体的には、本変形例は、人工歯根をいわゆるインプラントで形成するものである。つまり、歯根のない部分の歯槽骨7に凹状溝7aを形成して、この凹状溝7aに人工歯根としてのインプラント体51bを取り付けると共に、インプラント体51bの上方端部にメタルで形成される頭部51a(いわゆる上部構造)を連結させることで人工歯根51を形成する構成とするものである。このような構成とすることで、歯根の残っていない部分にも歯肉5側の相手方嵌合部50を形成することができる。このような構成の人工歯根に対しても本発明の第1の実施形態に係る義歯1は有効に使用することができる。なお、このようなインプラント体と頭部とで構成する人工歯根は、既述した本発明の第2、第3の実施形態に係る義歯に対しても有効に用いることができる。
【0056】
更に口腔内に設ける嵌合部を、いわゆるインプラントで形成する構成としては、本変形例の構成に限るものではない。例えば
図8(a)に示すように、インプラント体61b、その頭部61a、頭部連結用治具61cからなる人工歯根61で嵌合部60を形成してもよい。具体的には、複数本のインプラント体61bの頭部61aに頭部連結用治具61c(いわゆるドルダーバー)を装着して、複数の頭部61aを一体的に連結させることで、口腔内に設ける1つの嵌合部60を形成する構成としてもよい。本発明における「相手方嵌合部の凸部」とは、頭部61aに別体(頭部連結用治具61c)を装着した構成も含む概念である。この場合、
図8(b)に示すように、人工歯基底2には、頭部連結用治具61c(いわゆるドルダーバー)に対応する凹状溝25を設けると共に、頭部連結用治具61cの大きさに対応する嵌合用空間を有する応力緩和部材22を設ける。このような構成とすることで、噛み合わせ時に人工歯根と義歯との間で生じる応力を一段と効果的に緩和できると共に、使用時のズレを一段と防止できる義歯とすることができる。勿論、この構成の場合も既述した本発明の第2、第3の実施形態と同様に、第1のハウジング部材、第2のハウジング部材を人工歯基底の嵌合部に設ける構成としてもよい。
【0057】
なお本発明の実施形態においては、下顎の口腔内に装着して使用する義歯だけについて説明する構成としたが、本発明はこのような構成に限定されるものではなく、口蓋に装着して使用する義歯についても、勿論有効なものである。
【0058】
また本発明の実施形態においては、義歯1を装着する者の歯肉5に天然歯が一本も存在しないものとして、全ての歯を人工歯3で形成する構成としたが、勿論、このような構成に限るものではなく、本発明は部分的に天然歯が存在しない構成(いわゆる部分入れ歯)についても有効なものである。
【0059】
また本発明の第3の実施形態においては、接着剤を介して第2のハウジング部材24を凹状溝21に取り付ける構成としたが、必ずしもこのような構成に限るものではなく、第2のハウジング部材24を凹状溝21に着脱自在に取り付ける構成としてもよい。