(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-134166(P2015-134166A)
(43)【公開日】2015年7月27日
(54)【発明の名称】カテーテル編組ワイヤを使用する信号伝送
(51)【国際特許分類】
A61B 5/05 20060101AFI20150701BHJP
A61B 19/00 20060101ALI20150701BHJP
【FI】
A61B5/05 A
A61B19/00 502
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
【外国語出願】
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-6484(P2015-6484)
(22)【出願日】2015年1月16日
(31)【優先権主張番号】14/157,739
(32)【優先日】2014年1月17日
(33)【優先権主張国】US
(71)【出願人】
【識別番号】511099630
【氏名又は名称】バイオセンス・ウエブスター・(イスラエル)・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Biosense Webster (Israel), Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】アサフ・ゴバリ
(72)【発明者】
【氏名】クリストファー・トーマス・ビークラー
【テーマコード(参考)】
4C027
【Fターム(参考)】
4C027AA10
4C027BB05
4C027CC01
4C027KK03
(57)【要約】 (修正有)
【課題】体内に挿入するカテーテルプローブの位置決めを行う磁気センサを持つプローブを提供する。
【解決手段】プローブは、挿入管、磁界センサ、磁界センサに隣接して取り付けられた擬似負荷、及び編組を含む。編組は、挿入管の長さを横断する複数の編組ワイヤを含む。編組ワイヤの第1の対は磁界センサの両端に接続され、編組ワイヤの第2の対は擬似負荷の両端に接続される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プローブであって、
挿入管と、
磁界センサと、
前記磁界センサに隣接して取り付けられた擬似負荷と、
前記挿入管の長さを横断する複数の編組ワイヤを備える編組であって、前記編組ワイヤの第1の対が前記磁界センサの両端に接続され、前記編組ワイヤの第2の対が前記擬似負荷の両端に接続される、編組と、を備える、プローブ。
【請求項2】
前記磁気センサが単軸センサを含む、請求項1に記載のプローブ。
【請求項3】
前記プローブが心臓カテーテルを含む、請求項1に記載のプローブ。
【請求項4】
前記プローブが心臓ガイドワイヤを含む、請求項1に記載のプローブ。
【請求項5】
前記挿入管に収容される細長い可撓性部材を備え、前記編組が前記挿入管と前記細長い可撓性部材との間に位置するようになっている、請求項1に記載のプローブ。
【請求項6】
前記第1及び第2の対の前記編組ワイヤのそれぞれが、他の編組ワイヤから電気的に絶縁される、請求項1に記載のプローブ。
【請求項7】
前記第2の対を通じて伝送される第2の信号を使用して、前記第1の対を通じて伝送される第1の信号における干渉を相殺するように構成された回路機構を備える、請求項1に記載のプローブ。
【請求項8】
前記回路機構が前記第2の信号を前記第1の信号から減ずるように構成された、請求項7に記載のプローブ。
【請求項9】
プローブを作製する方法であって、
磁界センサ及び擬似負荷を挿入管内で互いに隣接させて取り付けることと、
前記挿入管の長さを横断するように、複数の編組ワイヤを備える編組を前記挿入管に沿って配置することと、
前記編組ワイヤの第1の対を前記磁界センサの両端に接続し、前記編組ワイヤの第2の対を前記擬似負荷の両端に接続することと、を含む、方法。
【請求項10】
前記磁気センサが単軸センサを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記プローブが心臓カテーテルを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記プローブが心臓ガイドワイヤを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
前記挿入管内に細長い可撓性部材を配置し、前記編組が前記挿入管と前記細長い可撓性部材との間に位置するようにすることを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項14】
前記第1及び第2の対の前記編組ワイヤのそれぞれが、他の編組ワイヤから電気的に絶縁される、請求項9に記載の方法。
【請求項15】
前記第2の対を通じて伝送される第2の信号を使用して、前記第1の対を通じて伝送される第1の信号における干渉を相殺する回路機構を提供することを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項16】
前記回路機構が前記第2の信号を前記第1の信号から減ずる、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
位置追跡の方法であって、
挿入管、磁界センサ、前記磁界センサに隣接して取り付けられた擬似負荷、及び前記挿入管の長さを横断する複数の編組ワイヤを備える編組を備える、プローブを、生体に挿入することであって、前記編組ワイヤの第1の対が前記磁界センサの両端に接続され、前記編組ワイヤの第2の対が前記擬似負荷の両端に接続される、ことと、
磁界を前記生体に印加することと、
前記第1の対にわたる第1の信号を測定することと、
前記第2の対にわたる第2の信号を測定することと、
前記第1の信号から干渉を除去するため、前記第2の信号を前記第1の信号に当てはめることと、
前記生体内における前記磁界センサの位置を、前記干渉を除去した後の前記第1の信号から算出することと、を備える、方法。
【請求項18】
前記第2の信号を前記第1の信号に当てはめることが、前記第2の信号を前記第1の信号から減ずることを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
位置追跡システムであって、
挿入管、磁界センサ、前記磁界センサに隣接して取り付けられた擬似負荷、及び前記挿入管の長さを横断する複数の編組ワイヤを備える編組を備える、生体に挿入されるプローブであって、前記編組ワイヤの第1の対が前記磁界センサの両端に接続され、前記編組ワイヤの第2の対が前記擬似負荷の両端に接続される、プローブと、
磁界を前記生体に印加し、前記第1の対にわたる第1の信号を測定し、前記第2の対にわたる第2の信号を測定し、前記第1の信号から干渉を除去するために前記第2の信号を前記第1の信号に当てはめ、前記干渉を除去した後の前記第1の信号から前記生体内における前記磁界センサの位置を算出するように構成された、外部サブシステムと、を備える、システム。
【請求項20】
前記外部サブシステムが、前記第2の信号を前記第1の信号から減ずることによって、前記第2の信号を前記第1の信号に当てはめるように構成された、請求項19に記載の位置追跡システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、体内プローブに関し、特に、体内プローブ内において電気信号を伝送するための方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
カテーテルの遠位端付近に設置される磁界検出器は、医用位置決めシステムで、患者の体内におけるカテーテル遠位端の位置を特定するのに使用される。カテーテル遠位端のセンサは、一般的に、カテーテル管腔を横断するケーブル布線を介して医用位置決めシステムに接続される。
【0003】
その開示を参照により本明細書に援用する米国特許第7,881,769号は、生体管腔に対して医療手術を行うためのカテーテルであって、細長い部材と、細長い部材の遠位端に位置する医療手術要素と、遠位端に位置する電磁界検出器と、電磁界検出器を医用位置決めシステムと連結する配線とを含み、医用位置決めシステムが遠位端の位置及び配向を判断する、カテーテルについて記載している。
【0004】
その開示を参照により本明細書に援用する米国特許出願公開第US 2012/0182014号は、近位端、遠位端、及び近位端と遠位端との間で延在する管腔を有する細長い可撓性部材と、細長い可撓性部材の遠位端に固着されたソレノイドコイルとを含み、ソレノイドコイルが複数のワイヤ巻回を有し、ソレノイドコイルが可撓性部材の長さに沿って近位側に延在するリード線の撚線対に接続された、磁気共鳴イメージング装置について記載している。コネクタが細長い可撓性部材の近位端に配設され、コネクタは、リード線の撚線対に動作可能に連結される。代替実施形態では、管腔を含む細長い可撓性部材の代わりに同軸ケーブルを用いる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一実施形態は、挿入管、磁界センサ、磁界センサに隣接して取り付けられた擬似負荷、及び編組を含むプローブを提供する。編組は、挿入管の長さを横断する複数の編組ワイヤを含む。編組ワイヤの第1の対は磁界センサの両端に接続され、編組ワイヤの第2の対は擬似負荷の両端に接続される。
【0006】
いくつかの実施形態では、磁気センサは単軸センサを含む。他の実施形態では、プローブは心臓カテーテルを含む。更に他の実施形態では、プローブは心臓ガイドワイヤを含む。他の実施形態では、第1及び第2の対の編組ワイヤのそれぞれが、他の編組ワイヤから電気的に絶縁される。
【0007】
いくつかの実施形態では、プローブは、挿入管内に収容された細長い可撓性部材を含み、編組が挿入管と細長い可撓性部材との間に位置するようになっている。他の実施形態では、プローブは、第2の対を通じて伝送される第2の信号を使用して、第1の対を通じて伝送される第1の信号における干渉を相殺するように構成された回路機構を含む。更に他の実施形態では、回路機構は、第2の信号を第1の信号から減ずるように構成される。
【0008】
また、本発明の一実施形態によれば、磁界センサ及び擬似負荷を挿入管内で互いに隣接させて取り付けることを含む、プローブを作製する方法が提供される。編組は挿入管に沿って位置し、編組は、挿入管の長さを横断するように、複数の編組ワイヤを含む。編組ワイヤの第1の対は磁界センサの両端に接続され、編組ワイヤの第2の対は擬似負荷の両端に接続される。
【0009】
また、本発明の一実施形態によれば、挿入管、磁界センサ、磁界センサに隣接して取り付けられた擬似負荷、及び挿入管の長さを横断する複数の編組ワイヤを含む編組を含むプローブを、生体に挿入することを含む、位置追跡の方法が提供される。編組ワイヤの第1の対は磁界センサの両端に接続され、編組ワイヤの第2の対は擬似負荷の両端に接続される。磁界は生体に印加される。第1の信号は第1の対にわたって測定される。第2の信号は第2の対にわたって測定される。第2の信号は、第1の信号から干渉を除去するため、第1の信号に当てはめる。生体内における磁界センサの位置は、干渉を除去した後の第1の信号から算出される。
【0010】
いくつかの実施形態では、第2の信号を第1の信号に当てはめることは、第2の信号を第1の信号から減ずることを含む。
【0011】
また、本発明の一実施形態によれば、プローブ及び外部サブシステムを含む、位置追跡システムが提供される。プローブは、生体に挿入され、挿入管、磁界センサ、磁界センサに隣接して取り付けられた擬似負荷、及び挿入管の長さを横断する複数の編組ワイヤを含む編組を含む。編組ワイヤの第1の対は磁界センサの両端に接続され、編組ワイヤの第2の対は擬似負荷の両端に接続される。外部サブシステムは、磁界を生体に印加し、第1の対にわたる第1の信号を測定し、第2の対にわたる第2の信号を測定し、第1の信号から干渉を除去するために第2の信号を第1の信号に当てはめ、干渉を除去した後の第1の信号から生体内における磁界センサの位置を算出するように構成される。
【0012】
本発明は、以下の詳細な実施形態の説明を、図面と併せ読むことによって、より十分に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施形態による、カテーテル追跡システムの概略絵画図である。
【
図2】本発明の一実施形態による、信号伝送に使用されるカテーテル編組の複数のワイヤを概略的に示す図である。
【
図3】本発明の一実施形態による、耐干渉性磁気位置追跡の方法を概略的に示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
概要
カテーテルは、様々な治療的及び診断的医療処置で使用される。カテーテルは、一般的には内科患者である、生体の心臓血管系に経皮的に挿入される。カテーテル遠位端は、医療処置を行うため、一般的には心臓腔である、身体の器官内の標的領域へと進められる。
【0015】
カテーテルは、磁気位置感知などの技術によって生体内で追跡されてもよい。磁気位置感知を使用する場合、磁界センサがカテーテルの遠位端付近に設置される。磁界は、カテーテル位置追跡システムによって身体の外部で発生し、遠位端のセンサ内において電気信号を誘導する。誘導電気信号は、システムのプロセッサによって磁気センサの位置を算出するのに使用され、それにより、身体内のカテーテルの遠位端が追跡される。電気信号は、一般的に、カテーテルを横断する電線を使用して、遠位端のセンサからプロセッサに伝送される。
【0016】
本明細書に記載する本発明の実施形態は、カテーテルなどの体内プローブを通して電気信号を伝送するための改善された方法及びシステムを提供する。いくつかの実施形態では、カテーテルは、可撓性、構造強度、及び耐キンク性を提供する電線の編組を備える。編組ワイヤのうち2つは、遠位端のセンサが感知した電気信号を、外部のプロセッサに至る途中でカテーテルに沿って伝送するのに使用される。
【0017】
いくつかの実施形態では、擬似負荷は遠位端のセンサに隣接して装着され、編組ワイヤの追加の対が、擬似負荷内で誘導された信号を伝送するのに使用される。擬似負荷は、抵抗器を含んでもよく、又は対のワイヤの両方を電気的に接続することによって形成されてもよい。二対のワイヤを通じて受け取った信号を減ずることによって、位置測定をひずませることがあるノイズ及び干渉、例えばワイヤにおける誘導性ピックアップを相殺することが可能である。
【0018】
開示する技術は、遠位端に装着される位置センサに限定されない。例えば、アブレーション電極に対するアブレーション電流の伝送、及び/又は電気生理学的(EP)マッピング電極によって測定される信号の伝送に、編組ワイヤを使用することができる。かかる電極は、遠位端付近に、又はカテーテルに沿った他の任意の好適な場所に取り付けられてもよい。EPマッピング信号はまた、擬似負荷メカニズムを使用して干渉から保護することができる。
【0019】
本明細書に記載する方法及びシステムは、カテーテルセンサが感知する信号におけるノイズ及び干渉を相殺するのに非常に有効であり、したがって、厳しい電磁環境であっても正確な位置感知及びEPマッピングが可能になる。開示する技術は信号伝送用に既存の編組ワイヤを再使用するので、カテーテル管腔を横断する追加のケーブル布線、並びに追加の遮蔽が不要になる。このような体積の削減は、他の目的のためにカテーテル管腔を空けるため、又はカテーテルの直径を低減するために使用することができる。
【0020】
システムの説明
図1は、本発明の一実施形態による、カテーテル追跡システム20の概略絵画図である。システム20は、本実施例では心臓カテーテルであるプローブ22と、制御コンソール24とを含む。本明細書に記載する実施形態では、カテーテル22は、心臓26内の組織のアブレーション、及び、例えば心臓不整脈など、心臓の機能不全を診断するための心電信号のマッピングなど、任意の好適な治療及び/又は診断目的に使用されてもよい。
【0021】
コンソール24は、カテーテル22から信号(後述するような差分信号など)を受け取ると共に、本明細書に記載するシステム20の他の構成要素を制御するための、好適なフロントエンド及びインターフェース回路を備えた、一般的には汎用コンピュータであるプロセッサ42を備える。プロセッサ42は、システムによって使用される機能を実行するためにソフトウェアにプログラムされてもよく、プロセッサはソフトウェアのためのデータをメモリ50に記憶する。このソフトウェアは、例えば、ネットワークを介して電子的形態でコンソール24にダウンロードするか、又は光学的、磁気的若しくは電子的記録媒体など、持続性の有形媒体上に提供されてもよい。あるいは、プロセッサ42の機能の一部又は全てが、専用の又はプログラム可能なデジタルハードウェア構成要素によって実行されてもよい。
【0022】
一般的には医師であるオペレータ30は、テーブル29に横たわった患者28の脈管系を通してカテーテル22を挿入する。オペレータ30は、
図1の挿入図に示されるように、カテーテルの近位端付近にあるマニピュレータ32を用いてカテーテル22を操作することによって、カテーテル22の遠位端40を心臓26の標的領域の近傍で動かす。カテーテル22の近位端はプロセッサ42のインターフェース回路に接続される。
【0023】
心臓腔内におけるプローブの遠位端の位置は、一般的に、カテーテル追跡システム20の磁気位置感知によって測定される。この場合、コンソール24は駆動回路34を備え、この駆動回路34は、テーブル29に横たわった患者28の体外における既知の位置、例えば患者の胴体の下に位置する、磁界発生器36を駆動する。
【0024】
磁界センサは、遠位端40付近でカテーテル22内に装着される(
図1には図示されないが、以下の
図2には示される)。センサは、コイルからの磁界に応答して電気位置信号を発生し、それによってプロセッサ42が、心臓腔内におけるカテーテル遠位端40の位置(例えば、場所及び配向)を判断することができる。カテーテル22の管腔内のケーブル布線は、カテーテル遠位端40にある磁気センサをカテーテル近位端にあるプロセッサ42のインターフェース回路に接続する。オペレータ30は、ユーザディスプレイ46上の心臓26の画像44で、カテーテル遠位端40の位置を見ることができる。
【0025】
この位置感知法は、例えば、Biosense Webster Inc.(Diamond Bar,Calif.)が製造するCARTO(商標)システムにおいて実現されており、その詳細は、米国特許第5,391,199号、同第6,690,963号、同第6,484,118号、同第6,239,724号、同第6,618,612号、及び同第6,332,089号、PCT出願公開第WO 96/05768号、並びに米国特許出願公開第2002/0065455 A1号、同第2003/0120150 A1号、及び同第2004/0068178 A1号に開示されており、それらの開示を全て参照により本明細書に援用する。
【0026】
信号伝送のためのカテーテル編組ワイヤの再使用
いくつかの実施形態では、患者の心臓血管系を通して案内されるときの機械的可撓性及び耐キンク性を向上させるため、カテーテル編組は、カテーテルの長さに沿って近位端から遠位端まで配設されてもよい。カテーテル編組は、一般的に、所望の編組構成に織成された複数のワイヤから形成される。編組は、カテーテルの長さに沿ったカテーテル管腔内の任意の好適な位置に配置されてもよい。以下で本明細書に示される実施形態の場合、複数のワイヤは、一般的に、細長い部材の長さに沿ってコイル状に巻かれて、カテーテル編組を形成する。
【0027】
カテーテル編組ワイヤは、メッシュ状、らせんコイル状、又は他の好適なパターン状に織成されてもよい。本特許出願の文脈において、また請求項において、「編組」及び「編組ワイヤ」という用語は、様々なメッシュ状及びコイル状の構成を含む、ワイヤの任意の好適な構成を指す。
【0028】
本発明の実施形態では、カテーテル編組を形成する複数のワイヤの中から選択されたワイヤ対は、カテーテルの遠位端付近の要素と近位端にある医療機器との間で信号を中継する電気的相互接続を形成するのに使用される。
【0029】
図2は、本発明の一実施形態による、信号伝送に使用されるカテーテル編組100の複数のワイヤ103を概略的に示す図である。
図2の上部において、オペレータのマニピュレータ32は、カテーテル近位端でカテーテル22に接続されている。カテーテル編組100は、一般的には金属ワイヤである複数のカテーテル編組ワイヤ103から形成され、
図2の上部では、金属コイル編組として示されている。
【0030】
カテーテル22は、挿入管105と、細長い可撓性部材110の長さの周りにコイル状に巻かれた複数のワイヤ103とを備える。細長い可撓性部材110は挿入管105に挿入されるように構成される。二対のワイヤを
図2で見ることができる。第1のワイヤ対130(太線として示される)は遠位端40で単軸磁気センサ115に接続され、第2のワイヤ対125(点線として示される)はセンサ115に隣接した擬似負荷120に接続される。擬似負荷120は、抵抗器、誘導器、コンデンサ、短絡、又は第2のワイヤ対125を終端するための任意の好適な電子的要素の任意の好適な組み合わせを含んでもよい。
【0031】
編組100は、センサ115及び擬似負荷120の両端に接続された二対、例えば細長い部材110の周りにコイル状に巻かれて編組100を形成する4つのワイヤが存在するものとして示される。しかしながら、編組100は任意の好適な数のワイヤから形成されてもよい。編組100の複数のワイヤの中から、カテーテル遠位端40にある任意の数の要素をカテーテル近位端にある医療機器に接続する、任意の好適な数のワイヤ対が選択されてもよい。一般的に、信号伝送に使用される編組ワイヤは、互いに、また他の編組ワイヤから電気的に絶縁されている。
【0032】
図2に示されるカテーテル構造は、概念を明確にするためのものであり、本発明の実施形態を限定しようとするものではない。上述したような医療処置に応じて使用することができる、カテーテルの多くの構造及び構成がある。例えば、
図2は、ワイヤがコイル状に巻かれた、即ちらせん状に巻き付けられた編組を示しているが、代替実施形態では、ワイヤは、交差編組(cross-braiding)構成など、他の任意の好適な形で編組されてもよい。
【0033】
更に、開示される技術は、他の様々な種類のプローブと共に使用することができる。いくつかの実施形態では、プローブは、センサ115に類似した磁気センサ(例えば、単軸センサ)、及び擬似負荷120に類似した擬似負荷を備えたガイドワイヤを備える。
【0034】
いくつかの実施形態では、カテーテル22は挿入管105を備える。編組100は細長い部材110の周りにコイル状に巻かれ、細長い部材は、挿入管105の管腔内の任意の好適な位置に挿入され、挿入管に収容される。いくつかの実施形態では、細長い部材は挿入管に埋め込まれ、その中で堅く保持されてもよい。
【0035】
他の実施形態では、カテーテルは、外層、編組、及びカテーテル管腔の内壁を形成する内層から形成される、多層の挿入管を備えてもよい。
図2に示される実施形態に関して、細長い部材110は第2の可撓性管を備える。第2の可撓性管は、挿入管105内に収容され、挿入管の長さに沿って挿入管に接続され、それによってカテーテル管腔の内壁を形成する。編組100は、挿入管102と第2の可撓性管との間に挟まれる。
【0036】
挿入管及び細長い可撓性部材は、一般的にポリマーから形成されるが、押出しなどの任意の好適な方法によって、任意の好適な材料から形成されてもよい。同様に、複数のワイヤ103の任意の種類の編組パターンが実施されてもよいので、編組100は
図2に示されるようなコイルに限定されない。ワイヤ103は、金属、又はカテーテルに機械的可撓性を提供する任意の好適な導電性材料から形成されてもよい。複数のワイヤは絶縁されてもよい。センサ及び/又は任意の好適な要素は、絶縁体に形成された開口部を通してワイヤに接続されてもよい。遠位端40にある磁気センサは単軸センサに限定されず、任意の好適なセンサ構造であってもよい。
【0037】
カテーテル編組ワイヤの総合接続部におけるノイズ除去
カテーテル22が患者の体内に入れられると、遠位端付近の接続電極及び/又はセンサから近位端にある医療機器までカテーテルの長さを横断するワイヤは、様々な擬似ノイズ源に晒される。例えば、磁気源36によって発生する磁界に応答して誘導されるセンサ115からの差分電気信号は、差分信号が編組100の対130を横断するにつれて、異なるノイズ源によって乱されることがある。特に、遮蔽されていない対130の磁気源36からの誘導性ピックアップは、磁気源36からの擬似信号を生じさせる可能性がある。誘導性ピックアップはまた、RF発生器(例えば、磁界発生器36を駆動するドライバ回路34)から起こる可能性がある。
【0038】
いくつかの実施形態では、擬似負荷120はセンサ115の隣に位置する。第2のワイヤ対125は擬似負荷120の両端に接続される。2つのワイヤ対(130及び125)は、カテーテル22の遠位端から近位端までカテーテル22の長さに沿って、ほぼ同じノイズ環境を経験する。結果として、擬似負荷120を有する第2の対125において誘導されるあらゆる擬似ノイズピックアップを使用して、単軸センサ115からの信号を乱す、第1の対130の差分信号における擬似ノイズピックアップを除去することができる。
【0039】
いくつかの実施形態では、差動増幅器回路機構135を使用して、任意の好適な方法によって、第1の対130及び第2の対125それぞれから、センサ115及び擬似負荷120からの個々の信号を測定し増幅することができる。本実施例では、第1の差動増幅器140は、第1の対130のセンサ115からの差分信号を増幅する。増幅器140の単一端信号出力はSで表される。
【0040】
同様に、第2の差動増幅器145は、第2の対125の擬似負荷120からの信号を増幅する。増幅器145の単一端信号出力は、第2の対125のワイヤ内へと結合される擬似(共通モード)誘導性ピックアップノイズに対して、Nで表される。差動増幅器回路機構135は別個のユニットであってもよく、又はカテーテル22の近位端にあるプロセッサユニット42内に統合されてもよい。
【0041】
上述したように、信号Sは、擬似ピックアップノイズによって乱されるセンサ信号である。プロセッサ42は、ノイズNを使用して、センサ信号からのノイズを除去するように構成される。いくつかの実施形態では、プロセッサ42は、信号SからノイズNを減ずるなど、任意の好適なデジタル及び/又はアナログ技術を使用することによって、第1の対130の長さに沿って伝送されるセンサ信号SからノイズNを除去するため、第2の対125のノイズNを使用してもよい。あるいは、SからのNのアナログ減算は、回路機構135の内部で行うことができる。いずれの場合も、プロセッサ42は、干渉のない信号S−Nに基づいて、センサ115の(及びひいては遠位端40の)位置座標を推定する。
【0042】
図3は、本発明の一実施形態による、耐干渉性カテーテル位置追跡の方法を概略的に示すフローチャートである。挿入ステップ200で、磁気センサ115及び擬似負荷120をカテーテル遠位端40付近に有するカテーテル22を患者の身体28に挿入する。印加ステップ210で、磁気源36から磁界を患者の身体28に印加する。第1の測定ステップ220で、回路機構135が、カテーテル遠位端40付近のセンサ115の両端に接続された第1のワイヤ対130にわたる誘導信号Sを測定する。第2の測定ステップ230で、回路機構135が、カテーテル遠位端40付近の擬似負荷120の両端に接続された第2のワイヤ対125にわたる信号Nを測定する。
【0043】
算出ステップ240で、プロセッサ42が、印加磁界に応答して、遠位端のセンサ115において誘導された元の信号Sから不必要なノイズNを除去するため、信号S−Nを算出する。位置計算ステップ250で、プロセッサ42が、算出した信号S−Nを使用して、患者の身体28内におけるカテーテル遠位端40の位置を計算する。
【0044】
「外部サブシステム」という用語は、本発明の実施形態による、本明細書に記載するカテーテル追跡システム20の機能を行うのに必要な、プロセッサ42、差動増幅器回路機構135、又は他の任意の医療機器回路機構の任意の好適な組み合わせを指す。
【0045】
本明細書に記載する実施形態は主に心臓カテーテルを扱っているが、本明細書に記載の方法及びシステムは、他の身体器官で使用されるカテーテル又は位置情報取得可能なガイドワイヤ、及び他の種類の体内プローブなど、他の用途にも使用することができる。
【0046】
したがって、上述の実施形態は一例として引用したものであり、また本発明は上記に具体的に図示し記載したものに限定されないことが認識されるであろう。それよりもむしろ、本発明の範囲には、上述した様々な特徴の組み合わせ及び下位の組み合わせの両方、並びに上述の説明を読むことによって当業者には想到されるであろう、先行技術において開示されていない変形例及び改変例が含まれる。参照により本特許出願に援用する文書は本出願の不可欠な一部をなすものと見なされるべきであるが、これらの援用する文書において、いずれかの用語が、本明細書において明示的又は暗示的になされる定義と矛盾するように定義される限りは、本明細書における定義のみが考慮されるべきである。
【0047】
〔実施の態様〕
(1) プローブであって、
挿入管と、
磁界センサと、
前記磁界センサに隣接して取り付けられた擬似負荷と、
前記挿入管の長さを横断する複数の編組ワイヤを備える編組であって、前記編組ワイヤの第1の対が前記磁界センサの両端に接続され(connected across the magnetic field sensor)、前記編組ワイヤの第2の対が前記擬似負荷の両端に接続される、編組と、を備える、プローブ。
(2) 前記磁気センサが単軸センサを含む、実施態様1に記載のプローブ。
(3) 前記プローブが心臓カテーテルを含む、実施態様1に記載のプローブ。
(4) 前記プローブが心臓ガイドワイヤを含む、実施態様1に記載のプローブ。
(5) 前記挿入管に収容される細長い可撓性部材を備え、前記編組が前記挿入管と前記細長い可撓性部材との間に位置するようになっている、実施態様1に記載のプローブ。
【0048】
(6) 前記第1及び第2の対の前記編組ワイヤのそれぞれが、他の編組ワイヤから電気的に絶縁される、実施態様1に記載のプローブ。
(7) 前記第2の対を通じて伝送される第2の信号を使用して、前記第1の対を通じて伝送される第1の信号における干渉を相殺するように構成された回路機構を備える、実施態様1に記載のプローブ。
(8) 前記回路機構が前記第2の信号を前記第1の信号から減ずるように構成された、実施態様7に記載のプローブ。
(9) プローブを作製する方法であって、
磁界センサ及び擬似負荷を挿入管内で互いに隣接させて取り付けることと、
前記挿入管の長さを横断するように、複数の編組ワイヤを備える編組を前記挿入管に沿って配置することと、
前記編組ワイヤの第1の対を前記磁界センサの両端に接続し、前記編組ワイヤの第2の対を前記擬似負荷の両端に接続することと、を含む、方法。
(10) 前記磁気センサが単軸センサを含む、実施態様9に記載の方法。
【0049】
(11) 前記プローブが心臓カテーテルを含む、実施態様9に記載の方法。
(12) 前記プローブが心臓ガイドワイヤを含む、実施態様9に記載の方法。
(13) 前記挿入管内に細長い可撓性部材を配置し、前記編組が前記挿入管と前記細長い可撓性部材との間に位置するようにすることを含む、実施態様9に記載の方法。
(14) 前記第1及び第2の対の前記編組ワイヤのそれぞれが、他の編組ワイヤから電気的に絶縁される、実施態様9に記載の方法。
(15) 前記第2の対を通じて伝送される第2の信号を使用して、前記第1の対を通じて伝送される第1の信号における干渉を相殺する回路機構を提供することを含む、実施態様9に記載の方法。
【0050】
(16) 前記回路機構が前記第2の信号を前記第1の信号から減ずる、実施態様15に記載の方法。
(17) 位置追跡の方法であって、
挿入管、磁界センサ、前記磁界センサに隣接して取り付けられた擬似負荷、及び前記挿入管の長さを横断する複数の編組ワイヤを備える編組を備える、プローブを、生体に挿入することであって、前記編組ワイヤの第1の対が前記磁界センサの両端に接続され、前記編組ワイヤの第2の対が前記擬似負荷の両端に接続される、ことと、
磁界を前記生体に印加することと、
前記第1の対にわたる第1の信号を測定することと、
前記第2の対にわたる第2の信号を測定することと、
前記第1の信号から干渉を除去するため、前記第2の信号を前記第1の信号に当てはめることと、
前記生体内における前記磁界センサの位置を、前記干渉を除去した後の前記第1の信号から算出することと、を備える、方法。
(18) 前記第2の信号を前記第1の信号に当てはめることが、前記第2の信号を前記第1の信号から減ずることを含む、実施態様17に記載の方法。
(19) 位置追跡システムであって、
挿入管、磁界センサ、前記磁界センサに隣接して取り付けられた擬似負荷、及び前記挿入管の長さを横断する複数の編組ワイヤを備える編組を備える、生体に挿入されるプローブであって、前記編組ワイヤの第1の対が前記磁界センサの両端に接続され、前記編組ワイヤの第2の対が前記擬似負荷の両端に接続される、プローブと、
磁界を前記生体に印加し、前記第1の対にわたる第1の信号を測定し、前記第2の対にわたる第2の信号を測定し、前記第1の信号から干渉を除去するために前記第2の信号を前記第1の信号に当てはめ、前記干渉を除去した後の前記第1の信号から前記生体内における前記磁界センサの位置を算出するように構成された、外部サブシステムと、を備える、システム。
(20) 前記外部サブシステムが、前記第2の信号を前記第1の信号から減ずることによって、前記第2の信号を前記第1の信号に当てはめるように構成された、実施態様19に記載の位置追跡システム。
【外国語明細書】