【解決手段】化学線硬化性インク10が、化学線の透過が可能な可撓性膜10の第1の表面に選択的に適用され、次いで硬化性インク12が適用されている可撓性膜10の側が三次元基体16の表面と接触するように可撓性膜10を適用し、三次元基体16上でのインクの硬化を生じさせる化学線18が、可撓性膜10に第1の表面の反対側から適用される。可撓性膜10は取り外されて、硬化したインク20をこの基体16上に残すことを含む方法。更に、硬化したレジスト組成物20で覆われていない三次元基体16のセクションをエッチングすることをさらに含む、方法。
a)1種以上のワックス、酸基を含まない1種以上のアクリレート官能性モノマー、および1種以上のラジカル光開始剤を含むレジスト組成物を、化学線透過可撓性膜の第1の表面の隣に選択的にインクジェットする工程、
b)前記レジスト組成物を伴う前記化学線透過可撓性膜を三次元基体の表面に適用し、前記レジスト組成物を伴う前記化学線透過可撓性膜の第1の表面が前記三次元基体の前記表面の隣にあり、および前記化学線透過可撓性膜は前記三次元基体の前記表面の輪郭に従う工程、
c)前記レジスト組成物を伴う前記第1の表面とは反対側の前記化学線透過可撓性膜の第2の表面に化学線を適用して、前記レジスト組成物を硬化させる工程、並びに
d)前記硬化したレジスト組成物が前記三次元基体の前記表面に付着したまま、前記硬化したレジスト組成物から前記化学線透過可撓性膜を分離させる工程
を含む方法。
前記化学線透過可撓性膜が、ポリビニルアルコール、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、ポリイミド、ポリオレフィン、ポリカーボネート、ポリアクリレートおよびエチルビニルアセテートから選択されるポリマーである請求項1に記載の方法。
前記非芳香族環式(アルキル)アクリレートが、橋かけ骨格を有する単環式、二環式、三環式および四環式脂環式(アルキル)アクリレート、並びに橋かけ骨格を有しない脂環式炭化水素基から選択される請求項6に記載の方法。
前記0mgKOH/g以上の酸価を有する1種以上のワックスがカンデリラワックス、パラフィンワックス、エステル化モンタンワックス、オゾケライトワックス、セレシンワックス、合成炭化水素ワックス、モンタンワックス、カルボン酸末端化ポリエチレンワックス、末端官能化カルボン酸を有する線状飽和脂肪族ワックス、および水素化ワックスから選択される請求項8に記載の方法。
【背景技術】
【0002】
ある種の基体は像形成が困難な三次元表面を有する。例えば、グラビア印刷産業においては、通常はスチールまたはアルミニウムベースのシリンダーからなる特有の像キャリアが使用されている。このシリンダーは銅で電気めっきされ、次いで印刷領域がこのシリンダーの表面より下であるように、化学的にエッチングされるか、または電気機械的に彫り込まれている。この像領域においては、シリンダーにエッチングされるかまたは彫り込まれるべき数千の微小サイズのセルが存在する。
【0003】
化学エッチングプロセスにおいては、シリンダーはフォトレジストの感光性エマルションでコーティングされる。フォトグラフィックアートワーク膜がこのフォトレジスト塗膜に直接接触するように配置される。このフォトレジストは、次いで、フォトグラフィック膜を通して投影された紫外光で露光される。次いで、シリンダーは水または水ベースの化学物質で現像され、その表面から未露光の材料を除去するようにすすがれ、剛性で硬質のエッジのレジストを残す。このセルはきれいに現像され、かつこのレジストが除去されている露出した銅金属を残す。次の工程は露出した銅をエッチング除去する化学エッチングプロセスである。このプロセスは像形成グラビアシリンダーにおいて広く使用されているが、それは長時間かかり、高価でかつ材料の無駄が多い。
【0004】
別のプロセスである、電気機械的彫り込みは今日では非常に一般的である。セルを切り込むこの物理的プロセスは、一定のパターンの非常に小さなダイヤモンド形状の穴を均一な様式で銅シリンダーに切り込むように設計された特に構築された金属旋盤において行われる。彫り込みヘッドはセルのパターンおよびセルサイズを制御する。彫り込み装置(engraver)のベッド上の独特の駆動メカニズムおよび高品質のベアリングがシリンダーの回転の均一な動きおよび彫り込みヘッド輸送の側方運動を制御する。しかし、この技術を使用するシリンダーのための処理時間は、シリンダーサイズおよびセルサイズの組み合わせに応じて数日間続く場合がある。
【0005】
レーザー彫り込みはシリンダーを像形成するのに使用される別の方法であり、その方法においては、電気機械方法のようにコンピュータ管理されたレーザーが様々な深さおよびサイズのセルを切り込む。オリジナルはコンピュータにスキャンされ、様々な像密度が決定され、そしてレーザーがシリンダーをエッチングする。この方法は、銅の高い光反射率およびこのプロセスの複雑さのせいで像を形成するのが困難なので限界がある。
【0006】
過去においては、シリンダーのような三次元(3D)物体上に像を形成するための印刷技術も提案されており、かつ実用化されている。これら印刷方法の中で、インクジェット印刷が、その高速印刷ターンアラウンドおよび廃棄物発生がほとんどないせいで好まれた。過去においてインクジェット印刷を用いて円筒形物体上に像を形成するのに使用される2つの一般的な方法は直接印刷方法および転写方法であった。
【0007】
直接印刷方法においては、プリントヘッドまたは物体を動かすことによって、3Dまたは円筒形物体上でのインクジェット印刷が達成されうるが、しかし、動かないプリントヘッド配置は、そのプリントヘッドの下で都合よく動かされる物体のサイズおよび形状を制限する。移動するプリントヘッドの場合には、物体の形状に従った経路をたどるように、このプリントヘッドは物体の上を動かされる(すなわち、この物体はプリントヘッドの下にある)ことを必要とする。ここでの課題は、像または複数のドット、すなわち、プリントスワス(swathes)を整列させるのを可能にするのに充分な正確さおよび再現性でプリントヘッドを動かすことができる正確なロボットモーションシステムを見いだすことである。ほとんどのロボットシステムは、それが印刷に必要とされる経路をトレースすることができる正確さおよび均一性よりも、三次元的に特定の点まで動くことができる正確さを確定する。
【0008】
転写方法においては、紙のような中間媒体上に像が印刷され、次いで、熱、圧力を用いて、および/または放出層を用いることによって、最終的な基体上に像が移される。像形成された転写紙は円筒形物体上に、像のある面を下にして配置される。次いで、ハンドアイロンによってこの紙の裏面が加熱されるか、または押しつけられて、この紙からシリンダー上に像を放出させる。像をシリンダー上に完全に移した後で、この紙は取り除かれる。ある場合には、容易に剥離されることができ、最終的な基体上に像を残すように、放出層と称される追加のコーティングが塗布される。このアプローチの弱点はインク上への熱および圧力の使用が像の解像度に影響を及ぼすことである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本明細書を通して使用される場合、文脈がほかのことを示さない限りは、以下の略語は以下の意味を有する:℃=摂氏度、g=グラム、L=リットル、mL=ミリリットル、cm=センチメートル、μ=μm=ミクロン、dm=デシメートル、m=メートル、W=ワット=アンペア×ボルト、mJ=ミリジュール、A/dm
2=アンペア/平方デシメートル、DI=脱イオン、重量%=重量パーセント、cP=センチポアズ、UV=紫外、rpm=回転数/分、2.54cm=1インチ、PCB=プリント回路板またはプリント配線板、3D=三次元、KOH=水酸化カリウム、ASTM=米国標準試験方法(American Standard Testing Method)、kV=キロボルト、およびpsi=ポンド/インチ
2=0.06805気圧=1.01325×10
6ダイン/cm
2。
【0014】
「化学線」とは、光化学反応を生じさせうる電磁放射線を意味する。「粘度」=内部流体摩擦、または流体の剪断の速度に対する剪断応力の比率。「酸価」=1gmの遊離酸を中和するのに必要な水酸化カリウムのミリグラム数、物質中に存在する遊離酸を測定するためのものである。「部分」とは、分子中の原子の特定のグループを意味する。「隣」とは、隣接しているかまたは接触していることを意味する。ほかに示されない限りは、すべてのパーセンテージは重量基準である。すべての数値範囲は包括的であり、かつそのような数値範囲が合計で100%になることに制約されることが論理的である場合以外は任意に組み合わせ可能である。
【0015】
1種以上のワックス、酸基を含まない1種以上のアクリレート官能性モノマー、および1種以上のラジカル開始剤を含むレジスト組成物が、インクジェットによって、化学線透過可撓性膜の一方の面に選択的に適用される。この透過可撓性膜はインクジェット適用の際は平坦である。インクジェットされたレジスト組成物を伴うこの可撓性膜は、次いで、その膜のレジスト組成物を含む面が三次元基体の表面の隣となり、かつレジスト組成物が基体の表面に接触し、この可撓性膜とレジスト組成物とがこの基体の輪郭に従うように、三次元基体の表面に適用される。化学線がこの可撓性膜に対して、レジスト組成物がない側に適用され、そしてレジスト組成物は硬化しかつ基体の表面に付着する。この膜は取り外され、そして硬化したレジスト組成物が三次元基体の表面上に留まる。レジスト組成物の実質的にすべてが三次元基体の表面に移される。化学線透過可撓性膜と硬化性レジスト組成物との組み合わせは、レジストを三次元基体に素早く適用し、硬化し、そして三次元基体の輪郭との緊密な接触を形成する三次元基体上のパターンを形成するのを可能にする。よって、この基体は様々な形状およびサイズのものであってよく、これには、限定されないが、概して曲がった物体、シリンダー、中実および中空の双方の錐体、三角形形状の物体、球体のような楕円体、多面物品、および他の不規則形状の物体が挙げられる。さらに、三次元基体の表面はその表面上に、多くの従来のプロセスを用いた場合にパターンの連続性のようなパターン形成を悪化させる不規則性を有していてもよい。膜の可撓性と透明性およびレジストの接着特性の組み合わせは、パターンの崩壊の可能性を低減させつつ表面の輪郭に従った、不規則な表面上での連続したパターンの形成を可能にする。よって、この方法は、不規則な形状の基体上での電子デバイスの電流パターンおよび他の部品の形成に有用である。エレクトロニクス産業が電子デバイスの小型化に焦点を合わせるにつれて、回路を収容する基体は必然的に小型化される。基体がより小さくなると、表面不規則さがより強調されることとなる。言い換えれば、小型化された基体の表面は平坦さがより低い。また、基体自体は従来型の形状のパネル(典型的には、従来のプリント回路板)ではないので、不規則形状の基体上に回路を形成する能力は、スペースが限定されかつ不規則の双方である場合があるような電子デバイスのための一般的とはいえない形状の基体を使用するエレクトロニクス産業のための追加の柔軟性を提供する。
【0016】
化学線透過性でかつ可撓性の膜には、これに限定されないが、ポリマー材料、例えば、ポリビニルアルコール、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、ポリイミド、ポリオレフィン、ポリカーボネート、ポリアクリレート、およびエチルビニルアセテートが挙げられる。好ましいこのような膜は、UV光に対して透明である。この膜は、様々な形状およびサイズの3D物体を覆う可撓性および寸法を有する。
【0017】
1種以上のアクリレートモノマー、1種以上のワックスおよび1種以上のラジカル開始剤の組み合わせは、硬化される場合に、エッチングレジストまたはメッキレジストのようなレジストとして使用されることができ、かつ同時に、実質的に全ての硬化レジスト組成物が基体から除去されるような、塩基剥離剤を使用して三次元基体から剥離可能である組成物を提供する。この組成物の正味(net)の酸価は0mgKOH/g以上、典型的には、0〜170mgKOH/g、好ましくは0〜100mgKOH/g、より好ましくは0〜30mgKOH/g、最も好ましくは0〜20mgKOH/gの範囲である。硬化した組成物はフッ化水素酸、硝酸、硫酸、リン酸、カルボン酸のような有機酸、およびその混合物のような酸エッチング剤に、かつ工業用エッチング剤、例えば、塩化第二銅(CuCl
2)、および塩化第二鉄(FeCl
3)、並びにアルカリエッチング剤、例えば、アンモニア性エッチング剤、水酸化アンモニウム、塩化アンモニウムおよび硫酸アンモニウムに耐性である。この組成物は、アルカノールアミンをはじめとする有機アミン、カリウム、ナトリウムおよびこれらの混合物を含むアルカリ金属水酸化物、並びにアルカリ炭酸塩およびアルカリ重炭酸塩のような塩基剥離剤を用いて、三次元基体から容易に剥離される。この塩基のpHは8以上の範囲であり得る。好ましくはこのpHは11以上である。
【0018】
レジスト組成物は実質的にホットメルトインクであり、かつ有機溶媒および水を含まない。このことは、追加の溶媒または水が組成物中に含まれないこと、および微量の溶媒または水のみが、組成物を製造するために使用される様々な成分の製造における不純物としてまたは副生成物として存在していてもよいことを意味する。好ましくは、この組成物は100重量%固形分である。これは低流動性であり、よって、これは0.05〜0.25、またはたとえば0.08〜0.18の範囲のアスペクト比(幅に対する高さ)の印刷されたドットを形成する。これは、良好な像鮮明度を有する像も形成する。
【0019】
組成物の粘度は、それが多くの従来のインクジェット装置で使用されうるものである。典型的には、組成物の粘度は、40℃〜150℃で4cPs〜80cPsの範囲である。好ましくは、粘度は85℃〜90℃で8cPs〜12cPsの範囲である。粘度は従来の方法によって測定されることができるが、典型的にはブルックフィールド粘度計を用いて、回転するルピンドル、例えば、ナンバー18スピンドルまたはCP−42スピンドルで測定される。
【0020】
1種以上のアクリレートは酸基を含まず、そしてこれに限定されないが、Sartomer
(商標)、Actilane
(商標)、およびPhotomer
(商標)商標の下で市販されているもの、例えば、Sartomer
(商標)306(トリプロピレングリコールジアクリレート)、Actilane
(商標)430(トリメチロールプロパンエトキシレートトリアクリレート)、Actilane
(商標)251(三官能性アクリレートオリゴマー)、Actilane
(商標)411(CTFアクリレート)、Photomer
(商標)4072(トリメチロールプロパンプロポキシレートトリアクリレート)、Photomer
(商標)5429(ポリエステルテトラアクリレート)、およびPhotomer
(商標)4039(フェノールエトキシレートモノアクリレート)が挙げられる。Sartomer
(商標)、Actilane
(商標)およびPhotomer
(商標)は、それぞれCray Valley Inc.,Akros BVおよびCognis Inc.,の商標である。モノマーの他の例はアクリル酸ラウリル、アクリル酸イソデシル、アクリル酸イソオクチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、アクリル酸2−エチルヘキシル、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ブタンジオールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、1,3−ブチレングリコールジアクリレート、1,4−ブチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、およびテトラヒドロフルフリルアクリレートである。酸基を含まないさらなるアクリレートは、非芳香族環式(アルキル)アクリレートであり、これには、限定されないが、アダマンチン、ノルボルナン、トリシクロデカン、およびテトラシクロドデカンのような橋かけ骨格を有する単環式、二環式、三環式および四環式脂環式(アルキル)アクリレート、並びに橋かけ骨格を有さない脂環式炭化水素基が挙げられ、これには、限定されないが、シクロアルカン、例えば、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタンおよびシクロオクタンが挙げられる。環式構造には、非芳香族複素環式基、例えば、フランも挙げられる。市販の環式(アルキル)アクリレートの例は、トリシクロデカンアクリレート、イソボルニルシクロヘキシルアクリレート、イソボルニルシクロヘキシルメタクリレート、3,3,5−トリメチルシクロヘキシルメタクリレート、ジシクロペンタジエニルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、環式トリメチルプロパンジメチルアクリレート、シクロヘキサンジメタノールジメタクリレート、環式トリメチロールプロパンホルマールアクリレート、2−ノルボルニルアクリレート、およびトリシクロデカンジメタノールジアクリレートである。多くの市販の環式(アルキル)アクリレートがCray Valley Inc., Akros BVまたはCognis Inc.から得られうる。好ましくは、このアクリレートは非芳香族環式(アルキル)アクリレートの1種以上である。
【0021】
このアクリレートは、レジスト組成物中に組成物の30重量%以上、好ましくは30重量%〜80重量%の量で含まれる。より好ましくは、このアクリレートは、レジスト組成物中に40重量%〜60重量%の量で含まれる。1種以上の非芳香族環式(アルキル)アクリレートが、非芳香族環式(アルキル)アクリレートでない1種以上のアクリレートモノマーと一緒にされる場合には、この1種以上の非芳香族環式(アルキル)アクリレートは好ましくは、組成物中に40重量%〜60重量%の量で含まれる。
【0022】
所望の耐エッチング性または耐めっき性、流動、鮮明度および剥離能力を提供する1種以上のワックスが組成物中に含まれる。酸ワックスおよび非酸ワックスの双方が含まれうる。組成物の酸官能性は実質的にこの酸ワックスに限定される。酸官能性はワックスのmgKOH/gで測定される。0〜1mgKOH/gの酸価を有するワックスは典型的には、非酸ワックスと見なされる。高酸ワックスおよび低酸ワックス、並びにこれらの混合物が使用されうる。用語「高酸ワックス」とは、50mgKOH/g以上の酸含有量を有し、かつ50%以上が酸官能化されているワックスを意味する。好ましくは、高酸ワックスは100mgKOH/g以上の酸含有量、より好ましくは120mgKOH/g〜170mgKOH/gの酸含有量を有する。用語「低酸ワックス」とは、50mgKOH/g以下の酸価を有し、かつ50%未満が酸官能化されているワックスを意味する。この「低酸ワックス」は、非酸ワックスを含むが、その理由は、この非酸ワックスの酸価が典型的には、0〜1mgKOH/g付近またはその範囲内に入るからである。1種以上の酸ワックスおよび非酸ワックスは一緒にブレンドされることができ、所望の酸価を達成することができる。
【0023】
酸ワックスは典型的には、酸含有結晶性ポリマー系ワックスである。用語「結晶性ポリマー系ワックス」とは、結晶融点転移(crystalline melting point transition)温度(T
m)によって特徴付けられうるポリマーマトリックス内のポリマー鎖の秩序化された配列を含むワックス材料を意味する。結晶融解温度はポリマーサンプルの結晶性ドメインの融解温度である。これは、ポリマー内の非晶質領域について、ポリマー鎖がその温度で流動し始める温度を特徴付けるガラス転移温度(T
g)とは対照的である。
【0024】
組成物中に使用されうるカルボン酸末端ポリエチレンワックスには、これに限定されないが、構造CH
3−(CH
2)
n−2−COOHを有する炭素鎖(ここで、鎖長nの混合物が存在しており、平均鎖長が16〜50である)および類似の平均鎖長の線状低分子量ポリエチレンの混合物が挙げられる。このようなワックスの例には、これに限定されないが、UNICID
(登録商標)550(nは40に等しい)、およびUNICID
(登録商標)700(nは50に等しい)が挙げられる。両方ともBaker Petrolite(米国)から入手可能である。UNICID
(登録商標)550は80%のカルボン酸官能基を含み、残りは類似の鎖長の線状低分子量ポリエチレンであり、72mgKOH/gの酸価および101℃の融点を有する。ワックスの他の例は、CH
3−(CH
2)
n−COOH、例えば、n=16のヘキサデカン酸またはパルミチン酸、n=17のヘプタデカン酸またはマルガリン酸またはダツリン酸(daturic acid)、n=18のオクタデカン酸またはステアリン酸、n=20のエイコサン酸またはアラキジン酸、n=22のドコサン酸またはベヘン酸、n=24のテトラコサン酸またはリグノセリン酸、n=26のヘキサコサン酸またはセロチン酸、n=27のヘプタコサン酸またはカルボセリン酸、n=28のオクタコサン酸またはモンタン酸、n=30のトリアコンタン酸またはメリシン酸、n=32のドトリアコンタン酸またはラセロイン酸(lacceroic acid)、n=33のトリトリアコンタン酸またはセロメリシン酸またはプシリン酸(psyllic acid)、n=34のテトラトリアコンタン酸またはゲジン酸(geddic acid)、n=35のペンタトリアコンタン酸またはセロプラスチン酸(ceroplastic acid)の構造を有する。
【0025】
組成物に含まれる他の高酸ワックスの例は、16以上の炭素原子の線状脂肪族鎖を有する高酸ワックスである。典型的には、末端官能化カルボン酸を有する線状飽和脂肪族ワックスが使用される。このようなワックスは50mgKOH/gより大きい酸価を有する。より典型的には、このような高酸ワックスはモンタンワックス、n−オクタコサン酸、CH
3−(CH
2)
26−COOH、100%酸官能化である。このようなワックスには、これに限定されないが、Licowax
(登録商標)S(127〜160mgKOH/gの酸価を有する)、Clariant GmbH(ドイツ国)により製造、Licowax
(登録商標)SW(115〜135mgKOH/gの酸価を有する)、Licowax
(登録商標)UL(100〜115mgKOH/gの酸価を有する)、およびLicowax
(登録商標)X101(130〜150mgKOH/gの酸価を有する)が挙げられる。他の適する高酸ワックスには、酸末端のいくつかがエステル化されている部分的にエステル化されたモンタン酸ワックス、例えば、72〜92mgKOH/gの酸価を有するLicowax
(登録商標)Uが挙げられる。
【0026】
50mgKOH/g未満、好ましくは0〜30mgKOH/gの酸価を有するワックスには、これに限定されないが、植物由来のワックス、例えば、カンデリラワックスおよびカルナウバワックス、石油ワックス、例えば、パラフィンワックス、またはマイクロクリスタリンワックス、鉱物ワックス、例えば、エステル化モンタンワックス、オゾケライト、蜜蝋およびセレシンワックス、合成炭化水素ワックス、例えば、フィッシャー−トロプシュワックス、水素化ワックス、例えば、硬化ヒマシ油および脂肪酸エステルが挙げられる。このようなワックスは典型的には、主として炭化水素またはエステル化ワックスを含む。概して、このようなワックスは、40重量%〜80重量%の炭化水素もしくはエステル化ワックス、またはこれらの混合物を含むことができる。このようなワックスの市販の例はStrahl&Pitsch,Inc.からのSP−75(カンデリラワックス)、SP1026およびSP319(これらもStrahl&Pitsch,Inc.から、セレシンワックス)、パラフィンワックス1250(The International Group,Inc.から)、およびLICOWAX
(登録商標)EフレークおよびLICOLUB
(登録商標)WM31(両方ともClariantから、エステル化モンタンワックス)である。好ましくは、50mgKOH/g未満の酸価を有するワックスがレジスト組成物中に使用され、より好ましくは0〜30mgKOH/gの酸価を有するワックスが使用される。
【0027】
レジスト組成物が100mgKOH/g以上の酸価を有する1種以上のワックスと、0〜30mgKOH/gの酸価を有する1種以上のワックスとを含む場合には、好ましくは、高酸ワックスは110mgKOH/g〜250mgKOH/gの酸価を有する。このようなワックスは60%以上、好ましくは70%以上酸官能化されている。0〜30mgKOH/gの酸価を有するワックス:100mgKOH/g以上の酸価を有するワックスの重量比が1:1〜5:1、好ましくは1:1〜2:1であるように、このようなワックスはレジスト組成物中に含まれる。好ましくは、このようなレジスト組成物は100mgKOH/g以上の酸価を有する1種以上のワックスを含む。このようなワックスには、これに限定されないが、Clariant GmbH(ドイツ国)によって製造され、127〜160mgKOH/gの酸価を有するLICOWAX
(登録商標)S、115〜135mgKOH/gの酸価を有するLICOWAX
(登録商標)SW、100〜115mgKOH/gの酸価を有するLICOWAX
(登録商標)UL、および130〜150mgKOH/gの酸価を有するLICOWAX
(登録商標)X101が挙げられる。このようなワックスは高酸含有モンタンワックスまたはn−オクタコサン酸、CH
3−(CH
2)
26−COOH、100%酸官能化である。また、244〜248mgKOH/gの酸価を有するミリスチン酸、215〜233mgKOH/gの酸価を有するヘキサデカン酸およびパルミチン酸、並びに205〜210mgKOH/gの酸価を有するオクタデカン酸およびステアリン酸のようなカルボン酸末端化ポリエチレンワックスが好ましい配合物中に含まれうる。
【0028】
上述のワックスはレジスト組成物中に、レジスト組成物の0.5重量%〜40重量%の量で、好ましくは5重量%〜30重量%の量で、より好ましくは組成物の5重量%〜25重量%の量で含まれる。
【0029】
一般的には、上述のワックスの融点は65℃〜150℃の範囲である。典型的には、融点は80℃〜110℃である。
【0030】
ラジカル開始剤は、アクリレート官能性モノマーの重合を開始させるための、産業界において典型的に使用される開始剤であることができ、任意成分の相乗剤(synergists)を含むことができる。開始剤と相乗剤(存在する場合には)は化学線によって活性化されうる。化学線のソースには、これに限定されないが、水銀ランプ、キセノンランプ、カーボンアークランプ、タングステンフィラメントランプ、発光ダイオード(LED)、レーザー、電子ビームおよび太陽光が挙げられる。好ましくは、ラジカル開始剤はUV光によって活性化される光開始剤である。
【0031】
ラジカル開始剤および相乗剤の例はアントラキノン、置換アントラキノン、例えば、アルキルおよびハロゲン置換アントラキノン、例えば、2−ターシャリーブチルアントラキノン、1−クロロアントラキノン、p−クロロアントラキノン、2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、オクタメチルアントラキノン、および2−アミルアントラキノン、場合によって置換された多核キノン、例えば、1,4−ナフタキノン、9,10−フェナントラキノン、1,2−ベンゾアントラキノン、2,3−ベンゾアントラキノン、2−メチル−1,4−ナフトキノン、2,3−ジクロロナフタキノン、1,4−ジメチルアントラキノン、2,3−ジメチルアントラキノン、2−フェニルアントラキノン、2,3−ジフェニルアントラキノン、3−クロロ−2−メチルアントラキノン、レテネキノン、7,8,9,10−テトラヒドロナフタアントラキノン、1,2,3,4−テトラヒドロベンゾアントラセン−7,2−ジオン、アセトフェノン類、例えば、アセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1,1−ジクロロアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、および2−メチル−1−(4−メチルチオ)フェニル−2−モルフォリン−プロパン−1−オン、チオキサントン類、例えば、2−メチルチオキサントン、2−デシルチオキサントン、2−ドデシルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、および2,4−ジイソプロピルチオキサントン、ケタール類、例えば、アセトフェノンジメチルケタール、およびジベンジルケタール、ベンゾイン類およびベンゾインアルキルエーテル、例えば、ベンゾイン、ベンジルベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、およびベンゾインイソブチルエーテル、アゾ化合物、例えば、アゾビスイソバレロニトリル、ベンゾフェノン類、例えば、ベンゾフェノン、メチルベンゾフェノン、4,4−ジクロロベンゾフェノン、4,4−ビス−ジエチルアミノベンゾフェノン、ミヒラー(Michler’s)ケトン、およびキサントン、並びにこれらの混合物である。市販の開始剤および相乗剤の例はSpeedcure
(商標)ITX、EHAおよび3040、Irgacure
(商標)184、369、907および1850、Daracure
(商標)1173である。Speedcure
(商標)、Irgacure
(商標)およびDaracure
(商標)は、それぞれ、Lambson PlcおよびCiba GmbHの登録商標である。
【0032】
ラジカル開始剤は化学線に対する露光の際に組成物を硬化可能にするのに充分な量で含まれる。典型的には、このようなラジカル開始剤は、組成物の0.1重量%〜10重量%、好ましくは組成物の1重量%〜5重量%の量で含まれる。
【0033】
場合によっては、1種以上の着色剤がレジスト組成物中に含まれてもよい。このような着色剤には、顔料および染料、例えば、蛍光染料が挙げられる。着色剤は所望の色コントラストを提供する様に従来の量で組成物中に含まれうる。適する顔料には、これに限定されないが、二酸化チタン、プルシアンブルー、硫化カドミウム、酸化鉄、バーミリオン、ウルトラマリンおよびクロム顔料、例えば、鉛、亜鉛、バリウム、カルシウムのクロム酸塩、モリブデン酸塩、並びにクロム酸塩と硫酸塩との混合、並びにこれらの混合物および修飾体が挙げられ、これらはプリムローズ、レモン、ミドルオレンジ、スカーレットおよびレッドクロムの名称で、黄緑色から赤色顔料として商業的に入手可能である。
【0034】
適する染料には、これに限定されないが、アゾ染料、金属錯体染料、ナフトール染料、アントラキノン染料、インジゴ染料、カルボニウム染料、キノンイミン染料、キサンテン染料、シアニン染料、キノリン染料、ニトロ染料、ニトロソ染料、ベンゾキノン染料、ナフトキノン染料、ペノリン染料、フタロシアニン染料およびロイコ染料が挙げられる。蛍光染料の例は、キサンテン類、例えば、ローダミンおよびフルオレセイン、ビマン類、クマリン類、例えば、ウンベリフェロン、芳香族アミン、例えば、ダンシル、スクアレート染料、ベンゾフラン、シアニン、メロシアニン、希土類キレートおよびカルボゾールである。
【0035】
追加の任意成分の従来の添加剤には、これに限定されないが、界面活性剤、例えば、非イオン性、カチオン性、アニオン性および両性、滑り改変剤(slip modifier)、チキソトロープ剤、発泡剤、消泡剤、可塑剤、増粘剤、バインダー、酸化防止剤、光開始剤安定化剤、光沢剤、殺真菌剤、殺バクテリア剤、有機および無機フィラー粒子、レベリング剤、不透明化剤、帯電防止剤、および金属接着剤が挙げられる。このような任意成分の添加剤は従来の量で含まれうる。
【0036】
レジスト組成物は当該技術分野において知られている任意の適する方法によって製造されうる。組成物中に含まれるワックス、アクリレートモノマーおよびラジカル開始剤は、典型的には、室温で固体または半固体である。これらは任意の順に一緒にされうる。これらは一緒にまたは任意の追加の成分と共に容易に混合されうるように、これらを軟化させるまたは液化させるためにこれらは加熱されてもよい。成分は任意の順で従来の混合または均質化装置において一緒にされうる。これら成分を混合するために、25℃より高く150℃までの温度が典型的に使用される。これら成分が均質に混合された後で、この混合物は25℃以下まで冷却されて固体ホットメルト組成物を形成することができる。
【0037】
レジスト組成物はインクジェットによって適用される。インクジェット装置は基体に適用される選択的なレジスト設計について、そのメモリ内に情報をデジタル的に記憶しうる。適するコンピュータプログラムの例は、ツーリングデータの発生のための標準CAD(コンピュータ支援設計)プログラムである。作業者は、インクジェット装置にデジタル的に記憶されたプログラムを変えることによって、容易に組成物の選択的堆積を変えることができる。さらに、レジストレーション問題も容易に対処されうる。インクジェット装置は、多層PCBの製造におけるような、基体間の潜在的に不正確な整列に気付くようにプログラムされうる。この装置が板間のミスレジストレーションを感知する場合に、このプログラムは、隣り合う板間でのミスレジストレーションを回避するかまたはこれを正すように、レジストマスクパターンのインクジェット適用を変更する。板から板でパターンを再設計する能力は、板間でのミスレジストレーションの可能性を低減させ、そして複数の固定フォトツールを製造するコスト高かつ非効率的な仕事をなくする。よって、このレジストの選択的な堆積および像形成の効率は、多くの従来の方法よりも向上されている。
【0038】
インクジェット印刷の2つの主要なカテゴリー、「ドロップオンデマンド」インクジェットおよび「連続」インクジェットが存在する。ドロップオンデマンドインクジェット技術を用いる場合には、レジスト組成物はリザーバ内に貯蔵され、そしてプリンターのプリントヘッド内のノズルに送達される。組成物の一滴をノズルから出して基体上に向かわせる手段が存在する。典型的には、これは液滴をノズルの外に「ポンプ移送する」チャンバー内の隔壁の圧電駆動であるか、またはチャンバー内の圧力を増大させ、それにより液滴を排出させるための流体の局所的加熱である。
【0039】
「連続」インクジェット印刷においては、ホットメルトレジスト組成物の連続流れがプリンターのプリントヘッド内のノズルに送達される。ノズルを出て行く前に、加圧された組成物流れは、電流がかけられたセラミック結晶を通って進む。この電流はAC(交流)電流の周波数に等しい圧電振動を引き起こす。この振動は、ひいては、連続した流れから組成物の液滴を生じさせる。この組成物は離散して、等しく間隔を開け、かつ等しいサイズである複数の液滴の連続した一連のものとなる。帯電電極内で液体流れから液滴が分離する点でこの噴射を取り囲んで、その帯電電極と液滴流れとの間に電圧が印加される。液滴が流れから分離する場合に、各液滴は、それが離れる瞬間に印加される電圧に比例した電荷を運ぶ。帯電電極を変化させることにより、液滴と同じ比率で電圧が生じさせられ、各液滴は所定のレベルまで帯電させられうる。液滴流れはその飛行を続け、そして±0.1kV〜±5kV、または例えば、±1kV〜±3kVのような一定の電位に維持されている2枚の偏向版の間を通過する。この場の存在下で、液滴は運んでいる電荷に比例した量で、これら板の一方に向かって偏向させられる。帯電していない液滴は偏向されず、そしてガターに集められ、インクノズルにリサイクルされる。帯電しそれにより偏向した液滴は、液滴偏向の方向に対して直角に移動する放射エネルギー感受性材料上に衝突する。個々の液敵上の電荷を変えることによって、望まれるパターンが適用されうる。液滴サイズは直径30μm〜100μm、または例えば、40μm〜80μm、または例えば、50μm〜70μmの範囲であり得る。
【0040】
インクジェットプロセスは連続可変データの高速適用のためのコンピュータ制御に適合性がある。インクジェット印刷方法は、3つの一般的なカテゴリーに分けられうる:高圧(10psi以上)、低圧(10psi未満)および真空技術。全ては当該技術分野において知られており、または文献に記載されており、かつ基体へのレジスト組成物の適用に使用されうる。
【0041】
レジスト組成物はエッチングレジストとしてまたはメッキレジストとして使用されうる。図は、UV透過膜上にパターンをインクジェットし、その後そのパターンを有する膜を基体上に適用した図である。工程1においては、UV透過可撓性膜10が提供され、そして平坦にされる。工程2においては、インクジェット装置(図示せず)からインクジェットノズル14を用いて、このUV透過可撓性膜10にUV硬化性ホットメルトインクレジストパターン12が適用される。工程3においては、このホットメルトインクレジストを伴う膜は、この膜のパターン形成されたレジストを有する面が基体の表面に接触するように、三次元曲面基体16に適用される。工程4においては、この膜を穏やかに押し付けることにより、または真空によって、膜10と基体16との間の空気が除かれる。工程5においては、UV透過膜に対して、UV硬化性レジストを含まない面上にUV光18が適用され、このレジストは硬化されそして三次元曲面基体16に接着する。工程6において、ホイルが取り外され、基体16上の曲がったレジスト20を残す。
【0042】
硬化後、硬化したレジストを伴う三次元基体が所望の深さまで、または基体表面のセクションを除去するようにエッチングされることができ、下にある層を露出させて基体上にパターンを形成することができる。エッチングの際に、エッチング剤は硬化したレジストを基体から除去せず、よって硬化したレジスト組成物はエッチングレジストとして機能する。次いで、このエッチングレジストは基体から剥離されて、当該技術分野において知られている従来の方法によるさらなる処理のためのパターン形成された基体を残す。また、基体の被覆されていないセクションは金属でめっきされることができ、基体上にパターンを形成することができ、よって硬化したレジストはめっきレジストとして機能する。このめっきレジストは、次いで、基体から剥離されて、当該技術分野において知られている従来の方法によるさらなる処理のための金属パターンを伴う基体を残す。剥離は塩基を用いて、pH8以上で、好ましくはpH11以上で行われる。より好ましくは、剥離は塩基を用いて、pH11〜13で行われる。剥離温度は0℃〜100℃、典型的には40℃〜60℃の範囲である。
【0043】
エッチングは、基体が構成される材料に適した当該技術分野において知られている方法によって行われることができる。典型的には、エッチングは、酸、例えば、フッ化水素酸、硝酸、リン酸、塩酸、有機酸、例えば、カルボン酸、およびこれらの混合物、並びにアルカリエッチング剤、例えば、アンモニア性エッチング剤、水酸化アンモニウム、塩化アンモニウム、および硫酸アンモニウムを用いて行われる。工業用エッチング剤、例えば、塩化第二銅(CuCl
2)、および塩化第二鉄(FeCl
3)が使用されてもよい。
【0044】
エッチングは典型的には、20℃〜100℃、より典型的には25℃〜60℃の温度で行われる。エッチングには、垂直もしくは水平位置で、レジストコートされた基体にエッチング剤をスプレーするかまたはこの基体をエッチング剤に浸漬することが挙げられる。典型的には、基体が水平位置にある場合には、スプレーが行われる。これはエッチング剤のより素早い除去を可能にする。エッチングの速度は、エッチング剤を、例えば、超音波攪拌または振動スプレーを用いて攪拌することにより促進されうる。基体がエッチング剤で処理された後で、それは典型的には、水ですすがれて、微量のエッチング剤を除去する。
【0045】
基体上に形成されたパターンに1種以上の金属層が堆積されうる。金属は無電解的に、電解的に、浸漬もしくは光誘起(light induced)めっきによって堆積されうる。金属または金属合金層を堆積させるために、従来の無電解、電解、および浸漬浴および方法が使用されうる。多くのこのような浴が市販されており、または文献に記載されている。金属には、これに限定されないが、貴金属および非貴金属、並びにこれらの合金が挙げられる。適する貴金属の例は、金、銀、白金、パラジウムおよびこれらの合金である。適する非貴金属の例は、銅、ニッケル、コバルト、ビスマス、亜鉛、インジウム、スズおよびこれらの合金である。
【0046】
レジスト組成物はpH1から8未満のpHまで酸およびアルカリ耐性を有する。好ましくは、レジスト組成物はpH1から11未満のpHまで酸およびアルカリ耐性を有する。様々な三次元表面に付着したレジスト組成物は塩基剥離剤で基体から素早く剥離されうる。
【0047】
この方法は、三次元基体を像形成するのに使用された多くの従来の像形成プロセスと比較して、向上した解像度での三次元基体上の像形成を可能にする。よって、基体上のフィーチャはより微細であり、より小さく、かつ数がより多いことが可能である。表面フィーチャの形成のためにインクジェット像形成を使用する様々な産業が小型化を重視しているので、このことは非常に望ましい。像を変形させうる過剰な圧力の適用なしに、実質的にすべてのレジスト組成物が化学線透過可撓性膜から三次元基体の表面に放出される。さらに、多くの従来の方法におけるように、化学線透過可撓性膜上に離型剤が含まれない。この方法は、低減された処理工程および装置の使用のせいで、多くの従来のプロセスよりもより効率的な三次元基体の像形成を提供する。この方法は光起電力デバイス、光電子デバイス、プリント回路板およびリードフレームのような電子デバイスの部品の製造に、精密工具および部品の金属仕上げに使用されうる。
【0048】
以下の実施例は本発明をさらに説明することを意図しているが、発明の範囲を限定することを意図していない。
【実施例】
【0049】
実施例1〜4
以下のインクジェットエッチングレジスト組成物が調製された。
【0050】
【表1】
【0051】
1EBECRYL
(登録商標)8309アクリルエステル、Cytec Industriesより;
2STAYBELITE
(登録商標)A 典型的な組成および特性:アビエチン酸<3重量%、デヒドロアビエチン酸6〜10重量%、ジヒドロアビエチン酸60〜80重量%、テトラヒドロアビエチン酸5〜15重量%、他のレジン酸および中性物質10〜15重量%、軟化点、Ring&Ball,℃=65〜69、酸価158〜160;
3Hercolyn Floral AX−E、Pinova solutions incより;
4Hercolyn D 水素化ロジン酸メチル、Pinova solutions incより。
【0052】
表1における全ての配合物は同じ方法で製造された。従来の実験室型ブレンド装置を室温で用いて、モノマー、ワックス、可塑剤および光開始剤が一緒にブレンドされた。この配合物は100%固形分であった。この混合物は、次いで、従来の対流オーブン内で85℃〜90℃の温度範囲内で加熱された。加熱されたレジストは、次いで、85℃〜90℃の温度範囲内に依然としてありつつ、従来の実験室型1.5μ金属フィルタを通して濾過された。サーモセルアタッチメントを伴うブルックフィールド粘度計を用いてCP−42スピンドルで各インクの粘度が測定された。レジストの粘度は8cPs〜12cPsの範囲であった。この4つのインクジェットレジストの正味の酸価は0〜20mgKOH/gの範囲であると計算された。
【0053】
実施例5
実施例1からのレジスト組成物が圧電ドロップオンデマンドプリントヘッド(Spectra
(商標)SE−128)からUV透過ポリビニルアルコール(PVA)膜上に選択的にインクジェットされて、4つの別個の直線パターンを形成した。このPVA膜は離型剤を含んでいなかった。インクジェット中の温度は85℃〜95℃であった。各ラインの厚さは15μm〜30μmの範囲であった。このラインパターンを有するPVA膜は、次いで、15μm〜30μmの厚さを有する4枚の銅クラッドFR4/ガラスエポキシ三次元曲面パネルに適用された。各銅パネルが4つのパターンの全てと接触するように、直線を有する膜の側がパネルの表面に適用されるように、このPVA膜はひっくり返された。この膜はパネルに穏やかに押し付けられ、そして膜の表面下の空気を除去し、レジストがパネルに固着するようにスキージーでぬぐわれた。一番上にPVAを伴うこのパネルは、次いで、フュージョンDランプを用いて120W/cmで稼働させて250〜1000mJ/cm
2で変化するUV光の下を通された。次いで、このPVA膜はこのパネルから剥離された。全てのレジストは硬化し、パネルに接着していた。PVA膜上にはレジストは観察されなかった。各パネルは光学顕微鏡下で5倍および10倍で観察された。これらラインの全てが直線に見え、ラインのエッジの周りに不鮮明さまたは広がりはなかった。
【0054】
実施例6
レジスト組成物が上記実施例2〜4で製造されたものである以外は、15μm〜30μmの厚さを有する複数の銅クラッドFR4/ガラスエポキシ三次元曲面パネルを用いて、実施例5に記載された方法が繰り返される。これら膜は、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリイミド(PI)、ポリオレフィン、ポリカーボネート、ポリアクリレートおよびエチルビニルアセテートから選択される。これら膜は離型剤を含んでいない。実施例5において上述した装置および方法を用いて、各配合物は各UV透過膜上にインクジェットされて、パターンを形成する。レジストがこの曲がったパネルに接触するように、レジスト組成物を伴う膜は、次いで、曲がったパネルに適用される。各膜は、このパネルに穏やかに押し付けられ、そして空気を除去しかつパネルにレジストを固着させるようにスキージーでぬぐわれる。この膜にUV光が適用され、そしてこの膜がパネルから剥離される。全てのレジストは硬化しかつパネルに固着すると予想される。膜上に認められるレジストはないと予想される。
【0055】
これらパネルは周囲条件で10%硫酸プレディップ中に2分間浸漬される。曲がったレジストを伴う各パネルは、80g/Lの硫酸銅五水和物、225g/Lの硫酸、50ppmの塩化物イオン、および1g/Lのポリエチレンオキシドを含む銅電気めっき浴中に配置される。電気めっきが1A/dm
2で行われる。パネル上のレジストで覆われていないセクションに銅金属が堆積することが予想される。銅堆積物が15μm〜25μmの厚さになるまで銅堆積が行われる。次いで、各パネルは、15%テトラメチルアンモニウムヒドロキシドおよび5%アンモニア溶液を含む剥離水溶液の浴中に浸漬される。このpHは45℃で11〜12の範囲である。剥離は1分間行われる。実質的に全てのレジストがパネルから除去され、パネルの表面の輪郭に従った銅回路パターンをパネル上に残すことが予想される。
【0056】
【表2】
【0057】
表2における7種類のレジスト配合物全ては同じ方法で製造される。従来の実験室型ブレンド装置を用いて、モノマー、酸ワックス、およびラジカル開始剤が一緒にブレンドされて、均質な混合物を形成する。他の成分とブレンドするには固すぎる成分を液化させるために、従来の対流オーブン内で50℃〜90℃で加熱が行われる。次いで、各成分を混合後、室温まで冷却して、100%固形分の組成物を形成する。この組成物は100mgKOH/gより大きな酸価を有すると予想される。
【0058】
実施例14
圧電ドロップオンデマンドプリントヘッド(Spectra
(商標)SE−128)を用いて、実施例7〜13のレジストのそれぞれが、離型剤を含まないポリエーテル、PET、PI、ポリオレフィン、ポリカートネート、ポリアクリレートおよびエチルビニルアセテートから選択されるUV透過膜の1つに選択的に適用されて、この膜上にラインのパターンを形成する。ラインの厚さは15μm〜30μmである。レジストを含む膜の側がパネルに接触するように、このレジストパターンを有する各膜は15μm〜30μmの厚さを有する三次元曲面銅クラッドFR4/ガラスエポキシパネルに適用される。この膜はパネルに穏やかに押し付けられ、そして膜の表面下の空気を除去し、レジストがパネルに固着するようにスキージーでぬぐわれる。一番上に膜を伴うこのパネルは、次いで、フュージョンDランプを用いて120W/cmで稼働させて250〜1000mJ/cm
2で変化するUV光の下を通される。次いで、この膜はこのパネルから剥離される。全てのレジストは硬化し、パネルに接着していると予想される。膜上にはレジストは観察されないと予想される。
【0059】
硬化したレジストを伴う各パネルは80g/Lの硫酸銅五水和物、225g/Lの硫酸、50ppmの塩化物イオン、および1g/Lのポリエチレンオキシドを含む銅電気めっき浴中に配置される。電気めっきが1A/dm
2で行われる。パネル上のレジストで覆われていないセクションに銅金属が堆積することが予想される。銅堆積物が15μm〜25μmの厚さになるまで銅堆積が行われる。次いで、各パネルは、2.5重量%水酸化ナトリウムの剥離水溶液の浴中に40℃〜50℃で1分間浸漬されて、パネルからレジストを剥離させる。実質的に全てのレジストがパネルから除去され、パネルの表面の輪郭に従った銅回路パターンをパネル上に残すことが予想される。