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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-134627(P2015-134627A)
(43)【公開日】2015年7月27日
(54)【発明の名称】飲料製品の製造方法及び製造装置
(51)【国際特許分類】
   B65B 63/00 20060101AFI20150701BHJP
【FI】
   B65B63/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-6949(P2014-6949)
(22)【出願日】2014年1月17日
(71)【出願人】
【識別番号】303040183
【氏名又は名称】サッポロビール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(72)【発明者】
【氏名】坂榮 宏幸
(72)【発明者】
【氏名】壁下 守
【テーマコード(参考)】
3E056
【Fターム(参考)】
3E056AA12
3E056AA15
3E056BA01
3E056BA14
3E056DA05
3E056FG03
3E056FG10
3E056FH20
3E056GA05
(57)【要約】
【課題】コスト上昇を抑制しつつ搬送中の容器破損を抑制する。
【解決手段】炭酸飲料が封入されて搬送される容器の内圧を目標内圧以上に制御する内圧制御工程を有し、目標内圧とは、容器の凹み発生を防止することが可能となる容器の内圧である飲料製品の製造方法。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭酸飲料が封入されて搬送される容器の内圧を目標内圧以上に制御する内圧制御工程を有し、
前記目標内圧とは、前記容器の凹みの発生を防止することが可能となる前記容器の内圧である飲料製品の製造方法。
【請求項2】
前記目標内圧は、
搬送後の前記容器における前記凹みの有無と、
前記搬送後の容器の内圧と、に基づいて決定される請求項1記載の飲料製品の製造方法。
【請求項3】
前記内圧制御工程は、前記容器が目標温度以上になるように加温する工程を含み、
前記目標温度とは、少なくとも前記容器の内圧が前記目標内圧となるような前記容器の第1の温度に基づいて決定される請求項1又は2記載の飲料製品の製造方法。
【請求項4】
前記加温する工程は、前記容器が前記目標温度以上になるように、温水を用いて前記容器を加温する工程を含む請求項3記載の飲料製品の製造方法。
【請求項5】
前記第1の温度は、前記炭酸飲料の種類を考慮して求められる請求項4記載の飲料製品の製造方法。
【請求項6】
前記温水の温度は以下の式
温水の温度=(第1の温度−b)/a
ここで、a,bは定数であり、
定数a:温水の温度を1度上昇した場合の容器の上昇温度に対応する値
定数b:加温前の容器の特性を示す値
により求められる、請求項4又は5に記載の飲料製品の製造方法。
【請求項7】
前記目標温度は、前記第1の温度と、露点に基づいて求められる第2の温度と、のいずれか高い方の温度である請求項4〜6のいずれか一項に記載の飲料製品の製造方法。
【請求項8】
前記第2の温度が前記目標温度となる場合、前記温水の温度は以下の式
温水の温度=(第2の温度−b)/a
定数a:温水の温度を1度上昇した場合の容器の上昇温度に対応する値
定数b:加温前の容器の特性を示す値
により求められる、請求項7に記載の飲料製品の製造方法。
【請求項9】
前記内圧制御工程は、前記容器を振動させる工程を含む請求項1〜8のいずれか一項に記載の飲料製品の製造方法。
【請求項10】
炭酸飲料が封入された容器を搬送する搬送手段と、
前記搬送手段により搬送される前記容器の内圧を目標内圧以上に制御する内圧制御手段と、
を備え、
前記目標内圧とは、前記容器の凹みの発生を防止することが可能となる前記容器の内圧である飲料製品の製造装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飲料製品の製造方法及び製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
炭酸飲料等の発泡性の飲料を封入した飲料製品を製造する場合、低温に保たれた飲料を例えば缶容器に封入した後には、外気温との差によって結露が生じる可能性がある。そこで、飲料が充填された容器を露点以上に加温することを目的として、例えば特許文献1記載のように、容器に対して温水を吹き付ける装置が用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−12798号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1記載の加温装置等を用いて飲料が封入された容器を露点以上に加温をした場合、容器の結露を防止することができるものの、容器が凹む場合がある。この容器の凹みは、容器の加温が不十分なために外部からの圧力に容器が耐えられない場合に発生する。ここで、容器の凹みを防止するために、飲料が封入された容器を十分に高い温度まで加温をすることも考えられるが、加温のためのエネルギーが大量に必要となるためコストが上昇する可能性がある。
【0005】
本発明は上記を鑑みてなされたものであり、コスト上昇を抑制しつつ搬送中の容器破損が抑制された飲料製品の製造方法及び製造装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、炭酸飲料が封入されて搬送される容器の内圧を目標内圧以上に制御する内圧制御工程を有し、前記目標内圧とは、前記容器の凹みの発生を防止することが可能となる前記容器の内圧であることを特徴とする。
【0007】
上記の飲料製品の製造方法によれば、炭酸飲料が封入されて搬送される容器の内圧が目標内圧となるように内圧を制御する工程を備えるため、容器の内圧が低いために他の容器や製造装置等との衝突によって容器が破損することを防止することができる。また、容器の破損を防止するためには、単純に容器の内圧が高くなるように十分に加温するという方法も考えられる。しかしながら、必要以上に容器の温度を高くした場合には不要なエネルギーを使用することになりコスト上昇に直結することが考えられる。これに対して、容器の凹みの発生を防止することが可能となる目標内圧を設定し、容器の内圧が目標内圧以上となるように制御を行うことで、できるだけ少ないエネルギーを利用して容器の破損を防止することができるため、コスト上昇を抑制することができる。なお、本発明において、「炭酸飲料」とは、炭酸ガスが含まれる発泡性の清涼飲料水及びアルコール飲料をいう。
【0008】
ここで、上記作用を効果的に奏する構成として、具体的には、前記目標内圧は、搬送後の前記容器における前記凹みの有無と、前記搬送後の容器の内圧と、に基づいて決定される態様が挙げられる。このように、搬送後の容器における凹みの有無と、当該搬送後の容器の内圧とに基づいて目標内圧を決定する態様とすることで、搬送後の容器における凹みの有無に対応してより適切な目標内圧を設定することができる。
【0009】
また、前記内圧制御工程は、前記容器が目標温度以上になるように加温する工程を含み、前記目標温度とは、少なくとも前記容器の内圧が前記目標内圧となるような前記容器の第1の温度に基づいて決定される態様とすることができる。
【0010】
このように、容器を加温することで容器を目標温度以上に加温して内圧を制御する構成とすることで、容器の内圧を目標内圧よりも高めることができ、内圧の制御を簡便に行うことができる。なお、本発明において、「加温」とは、加熱対象である容器に対して熱を加えること全般をいい、特に手段を問わない。加温手段としては、例えば、容器の温度よりも高温の温水をかけること、温水に浸すこと、熱風を吹き付けること、ストーブや床暖房等により容器が配置された室内を加温すること等が挙げられる。
【0011】
また、前記加温する工程は、前記容器が目標温度以上になるように、温水を用いて前記容器を加温する工程を含む態様とすることができる。
【0012】
このように、温水を用いて容器を目標温度以上に加温して内圧を制御する構成とした場合、内圧の制御をより簡便に行うことができる。なお、本発明において、「温水」とは、加温する前の容器の温度よりも高温の液体のことをいい、特に加温された液体をいう。
【0013】
また、前記第1の温度は、前記炭酸飲料の種類を考慮して求められる態様とすることができる。このように、炭酸飲料の種類に基づいて第1の温度を導出する態様とし、これを目標温度とすることで、飲料製品の種類に応じたより好適な目標温度を設定することができる。
【0014】
ここで、前記温水の温度は、以下の式
温水の温度=(第1の目標温度−b)/a
ここで、a,bは定数であり、
定数a:温水の温度を1度上昇した場合の容器の上昇温度に対応する値
定数b:加温前の容器の特性を示す値
により求められる態様とすることができる。このような構成とすることで、加温に用いられる温水の温度を目標温度に基づいて好適に導出することができる。
【0015】
また、前記内圧制御工程は、前記容器を振動させる工程を含む態様とすることができる。容器を振動させることで内圧を制御した場合でも、コスト上昇を抑制しつつ搬送中の容器破損が抑制された飲料製品を得ることができる。
【0016】
また、前記目標温度は、第1の温度と、露点に基づいて求められる第2の温度と、のいずれか高い方の温度である態様とすることができる。
【0017】
このように、第1の温度及び第2の温度のうちの高い方の温度を目標温度として、加温制御が行われる態様とすることで、容器の内圧が低いために発生する他の容器や製造装置等との衝突による容器の破損を防止することができるだけでなく、容器の結露を防ぐことが可能となる。また、容器の破損防止と結露防止との両方の効果を得るための容器温度となる目標温度を設定し、容器温度が目標温度以上となるように加温制御を行うことから、できるだけ少ないエネルギーを利用して容器の結露及び容器の破損を防止することができるため、コスト上昇を抑制することができる。
【0018】
また、前記第2の温度が前記目標温度となる場合、前記温水の温度は以下の式
温水の温度=(第2の温度−b)/a
定数a:温水の温度を1度上昇した場合の容器の上昇温度に対応する値
定数b:加温前の容器の特性を示す値
により求められる態様とすることができる。このような構成とすることで、加温に用いられる温水の温度を目標温度に基づいて好適に導出することができる。
【0019】
また、本発明に係る飲料製品の製造方法は、飲料製品の製造装置の発明として記述することができる。すなわち、本発明に係る飲料製品の製造装置は、炭酸飲料が封入された容器を搬送する搬送手段と、前記搬送手段により搬送される前記容器の内圧を目標内圧以上に制御する内圧制御手段と、を備え備え、前記目標内圧とは、前記容器の凹みの発生を防止することが可能となる前記容器の内圧であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、コスト上昇を抑制しつつ搬送中の容器破損が抑制された飲料製品の製造方法及び製造装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】第1実施形態に係る飲料製品製造装置の構成を説明する概略構成図である。
図2】飲料製品製造装置を構成する加温装置の構成を説明するブロック図である。
図3】温水温度と容器温度との対応関係の例を示すグラフである。
図4】飲料製品製造装置において保持する情報の例を示す図である。
図5】目標温度の決定方法を説明するフローチャートである。
図6】第2実施形態に係る飲料製造装置における目標温度の決定方法を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための形態を詳細に説明する。なお、図面の説明においては同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0023】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係る飲料製品の製造装置の概略構成図である。図1に示す飲料製品製造装置1は、搬送部10(搬送手段)と、加温装置20(内圧制御手段)と、を備える。搬送部10は、炭酸飲料が封入された容器30を矢印で示すA方向に搬送し、例えば飲料製品の包装装置まで容器30を搬送する機能を有する。この搬送部10は、容器30のA方向への移動をガイドするガイド部12を備えていてもよい。また、加温装置20は、搬送部10による容器30の搬送路に沿って設けられ、搬送部10上を搬送される容器30に対して温水を散水する機能を有する。図1では、加温装置20が容器30の上方から温水を散水しているが、散水方向は、特に限定されない。なお、図1では、加温装置20のうち、温水を散水するための散水ノズルを図示している。
【0024】
第1実施形態に係る飲料製品製造装置1は、炭酸飲料が封入された容器からなる飲料製品を製造する装置である。なお、飲料製品製造装置1において製造される炭酸飲料とは、炭酸ガスが含まれる発泡性の清涼飲料水及びアルコール飲料をいう。また、炭酸飲料が封入される容器としては、アルミ缶、スチール缶、ペットボトル等が挙げられる。以降の実施形態においては、容器がアルミ缶である場合について説明する。飲料製品製造装置1は、加温装置20より前段に空の容器に対して炭酸飲料を封入する装置が設けられると共に、加温装置20より後段に飲料製品の包装を行う装置が設ける態様とすることができる。
【0025】
飲料製品製造装置1において、加温装置20は、炭酸飲料を封入した後の容器30に結露が生じないように加温をする機能を有する。炭酸飲料が封入された容器30に対して温水を散水することによって、容器30内の炭酸飲料を加温して容器30の温度を露点以上とすれば、容器30の表面の結露を防止することができる。
【0026】
ただし、容器30の温度を露点以上として容器30表面の結露を防ぐことができたとしても、容器30内の内圧が十分に高くない場合、容器30は外部からの圧力によって容易に凹みが生じることがある。凹みが生じ得る例としては、搬送中における他の容器30やガイド部12との衝突が挙げられる。凹みの発生は、容器30の内圧を高めることで回避しやすくなる。そこで、以下の説明では、飲料製品製造装置1において、容器30の内圧を制御することで、搬送中の凹みの発生を防ぐ方法について説明する。
【0027】
次に、飲料製品製造装置1に含まれる加温装置20を構成する各機能部について図2を用いて説明する。図2に示すように、加温装置20は、目標内圧決定部21と、温度条件導出部22と、加温部23と、を含んで構成される。このうち、温度条件導出部22及び加温部23は、容器30の内圧を容器30への加温によって制御する場合に用いられる温度制御手段25として機能する。
【0028】
目標内圧決定部21は、容器30の凹みの発生を防止するために好ましい内圧(目標内圧)を決定する機能を有する。
【0029】
容器30の凹み発生を防止することが可能となる目標内圧とは、凹みが生じにくくなる容器30の内圧である。この目標内圧は一律ではなく、主に容器30の種類に依存する。ここでの容器30の種類とは、材質毎や容積毎によって区別されるものである。また、容器の形状等に応じて細かく目標内圧を定めることもできる。目標内圧の決定方法としては、搬送部10において炭酸飲料が封入された容器30を搬送させた場合に、搬送後の容器30に凹みが生じない条件での容器30の内圧を公知の容器内圧測定器を用いて測定して、その内圧を目標内圧として決定する方法が挙げられる。最適な目標内圧を求める場合には、例えば、以下の方法を用いることができる。同じ内圧を有する複数の容器30を飲料製品の製造時と同様に搬送部10により搬送させた後に凹みの有無を確認する。搬送後の容器30群の中に凹みを有する容器30が一定の割合以上含まれる場合には、容器30の内圧を上昇させた後に再度同じ試験を行う。一方、容器30群に凹みがない場合には、容器30の内圧を低下させた後に再度同じ試験を行う。これらの試験を繰り返して最適な目標内圧を決定することができる。
【0030】
このように、容器30の種類と当該容器の種類に対応した目標内圧との対応関係を求めたものを予め準備して目標内圧決定部21に格納しておくことで、目標内圧決定部21で適切な目標内圧を決定することができる。
【0031】
また、上記の目標内圧を決定する方法に代えて、加温装置20よりも前段で容器30の内圧を測定した上で、当該容器30に凹みが発生しない目標内圧を適宜設定する方法でもよい。一定の製造条件で飲料製品を製造した場合、容器30の内圧は所定の変動範囲となっていると考えられる。また、内圧が所定の変動範囲に含まれる容器30は、凹みが生じない条件が類似すると考えられる。この場合には、容器30の内圧を測定しこれに基づいて目標内圧を設定する方法を用いることができる。この方法としては、例えば、測定された内圧から所定の値だけ内圧を上昇させる方法が挙げられる。このように、目標内圧を決定する方法は適宜変更することができる。
【0032】
温度条件導出部22は、容器30の内圧を目標内圧決定部21によって導出された目標内圧以上に制御するために必要な容器30の温度(第1の温度)を導出する機能を有する。また、温度条件導出部22は、容器30を目標温度に加温するために必要な温水の温度や加温時間等を導出する機能も備える。
【0033】
本実施形態に係る飲料製品製造装置1では、容器30の内圧を目標内圧以上に制御するために容器30の温度を所定の温度以上となるように加温する。このときの所定の温度のことを目標温度という。
【0034】
容器30の温度と容器30の内圧との関係は、主に容器30に封入される飲料の種類に依存する。具体的には、目標内圧が0.20MPaである容器に対して互いに異なる2つの飲料がそれぞれ封入されている場合、一方の飲料では容器を20℃に加温すると内圧が0.20MPa以上となるが、他方の飲料では容器を25℃に加温しないと内圧が0.20MPa以上とならないことがある。したがって、容器30に封入される飲料の種類毎に目標内圧に対応する第1の温度を導出する必要がある。第1の温度の決定方法としては、容器30を加温しながら容器30の内圧を測定することで目標内圧を超えた容器30の温度の下限値を求めた上で、容器30の温度が下限値を下回らないように第1の温度を決定する方法が挙げられる。飲料種類毎に第1の温度を求めたものを予め準備して温度条件導出部22に格納しておくことで、温度条件導出部22ではこれらの情報に基づいて適切な目標温度を決定することができる。
【0035】
さらに、温度条件導出部22では、容器30を目標温度以上に加温するために必要な加温条件を導出する機能を有する。飲料製品製造装置1では、加温装置20によって温水を容器30に対して散水することで容器30が加温されるが、加温前の容器30の温度、温水の温度、散水時間、散布量等によって上昇温度は変動する。また、容器30の種類及び容器30に封入される飲料の種類に応じて容器30の温度を1度上昇させるための加温条件が異なるため、容器30に封入される飲料に応じて、加温条件を設定する必要がある。
【0036】
ここで、加温条件の導出について一例を示す。容器30を加温するために用いられる温水の温度と、加温後の容器30の温度との対応関係を評価した結果、例えば、図3に示すような対応関係を得ることができた。図3に示すように、温水の温度と加温後の容器30の温度とは所謂一次関数に近似することができる。なお、直線の傾きは、容器30の種類及び当該容器30に封入される炭酸飲料の種類によって変動する。
【0037】
上記の結果に基づいて、温水の散水時間及び散布量が一定である場合、第1の温度と温水の温度との関係は、以下の数式(1)に近似することができる。
温水の温度=(第1の温度−b)/a …(1)
ここで、式中のa,bはそれぞれ定数である。定数aは、温水の温度を1度上昇した場合に上昇する容器30の温度に対応する値であり、上記の図3のグラフに示す容器30を加温するために用いられる温水の温度と、加温後の容器30の温度との対応関係を表す近似一次関数の傾きに相当する。定数bは、加温前の容器の特性を示す値であり、上記の図3に示す近似一次関数の切片に相当する。定数a,bは、容器30の種類(容積、材質、形状など)又は当該容器30に封入される炭酸飲料の種類(ビール、発泡酒、清涼炭酸飲料等)に応じて求められる。上記数式(1)における定数を予め求めておき、これに基づいて第1の温度から温水の温度を導出する構成とすることができる。
【0038】
なお、加温装置20による加温条件と容器30の温度上昇との対応関係は、容器30の種類、容積及び飲料製品製造装置1の設置状況等によって異なるため、予め対応関係を取得しておくことが好ましい。
【0039】
以上のように、容器30の種類毎に目標内圧が求められ、目標内圧に対応する第1の温度が飲料の種類毎に導出される。さらに、第1の温度を目標温度とした場合、飲料の種類毎に、第1の温度にまで加温するための加温条件が導出される。これらをまとめたものの例を図4に示す。図4では、容器種類(例えば、アルミ缶、350ml)と目標内圧(0.18MPa)とが対応付けられている。さらに、この目標内圧に対応付けて、飲料種類(A,B)毎に、目標温度及び当該目標温度に加温条件が対応付けられている。ここでは、加温条件として、飲料製品製造装置1の通常運転時に容器30を第1の温度に加温するための条件を示している。このように、飲料製品製造装置1では、容器種類に対して目標内圧が設定されると共に、当該容器に封入される飲料の種類毎に第1の温度及び加温条件が求められる。加温装置20において、図4に示す情報を予め保持しておき、目標内圧決定部21及び温度条件導出部22は、この情報を参照して目標内圧及び温度条件をそれぞれ求める構成とすることができる。また、容器の種類と目標内圧との対応関係については目標内圧決定部21において保持し、目標内圧と飲料の種類とに対応付けた第1の温度及び第1の温度を目標温度としたときの加温条件に係る情報は温度条件導出部22において保持する構成としてもよい。
【0040】
加温部23は、温度条件導出部22において導出された加温条件に基づいて容器30を加温する機能を有する。具体的には、図1に示すノズルのように、容器30に対して温水を散水することで容器30を加温する。これにより、容器30が目標温度以上に加温され、すなわち、容器30の内圧を目標内圧以上に制御することが可能となる。
【0041】
次に、図5を参照しながら、本実施形態に係る飲料製品製造装置1による飲料製品の製造方法のうち、特に内圧制御に係る工程(内圧制御工程)について説明する。
【0042】
まず、容器30の内圧の測定を行う(S01)。この工程は、飲料製品の製造毎に行う必要はない。例えば、目標内圧決定部21において目標内圧を決定する場合(例えば、飲料製品に用いられる容器30の種類とその目標内圧との対応関係を求めたものを予め準備する場合)には、事前に行われる。
【0043】
次に、目標内圧決定部21において、目標内圧が決定される(S02)。この工程では、例えば、目標内圧決定部21において、容器30の種類に係る情報を取得し、容器30の種類毎に対応付けられた目標内圧の値を参照することで目標内圧が決定される。
【0044】
続いて、温度条件導出部22において、第1の温度が導出され、これを目標温度とする(S03)。第1の温度は、S02で決定された目標内圧と飲料の種類に基づいて導出される。
【0045】
そして、加温制御が行われる(S04:加温する工程)。この工程では、まず、導出された目標温度に基づいて、温度条件導出部22において加温条件が決定される。このときの加温条件とは、上述のように加温部23から散水される温水の温度や散布量等のことをいう。これらの加温条件に係る情報が予め図4に示すように目標温度に対応付けてまとめられていて、この情報を利用した制御が可能な場合にはこれを利用する。
【0046】
そして、温度条件導出部22によって決定された加温条件に基づいて、加温部23により加温作業が行われる。これにより、容器30が目標温度以上に加温される。また、容器30が目標温度以上に加温されることにより、容器30の内圧は目標内圧以上となる。なぜならば、容器30の目標温度とは、その容器30の温度が目標温度である場合に容器30の内圧が目標内圧となるような温度であり、容器30の温度を目標温度以上となるように加温すれば容器30の内圧も目標内圧以上となるためである。なお、目標温度とは別に、容器30の温度の上限値を別途設定して、上限値を超えないように加温を制御する構成としてもよい。このように上限を設定した場合には、過剰な加温を防ぐことができ、エネルギーコストの低減を図ることができる。上限値の設定方法としては、例えば目標温度との温度幅が所定の値となるように設定する方法を用いることができる。
【0047】
なお、加温制御を経た加温後の容器30の内圧を測定し、その結果と目標内圧とに差がある場合には、加温条件を修正するようなフィードバック制御を備える構成としてもよい。例えば、加温制御(S04)により加温をした後に、容器の外観を確認し容器に凹みが発生した場合には、当該状況での容器内圧を測定し(S01)、再び目標内圧を新たに決めた(S02)上で、第1の温度を導出して目標温度を設定し(S03)、加温制御する(S04)という構成とすることができる。このように、加温制御と内圧測定とを繰り返すことができる。
【0048】
また、他のフィードバック制御方法としては、加温制御(S04)により加温をした後に、容器30の温度を測定する工程を設け、測定された容器30の温度が目標温度には到達していない場合には、容器30を目標温度以上に加温するための加温条件を変更するような構成とすることもできる。なお、上記の過程において、目標内圧と目標温度との対応関係、又は、目標温度と加温条件との対応関係を更新する構成としてもよい。
【0049】
以上のように、本実施形態に係る飲料製品の製造装置及び製造方法によれば、搬送部10によって搬送される容器30の内圧が目標内圧となるように加温装置20によって内圧を制御する工程を備える。したがって、他の容器や製造装置等との衝突による容器30の破損を防止することができる。また、容器30の破損を防止するためには、単純に容器30の内圧が高くなるように十分に加温するという方法も考えられる。しかしながら、必要以上に容器30の温度を高くするということは、不要なエネルギーを使用することになりコスト上昇に直結する。これに対して、容器30の凹みの発生を防止することが可能となる目標内圧を設定し、容器30の内圧が目標内圧以上となるように制御を行うことで、できるだけ少ないエネルギーを利用して容器30の破損を防止することができるため、コスト上昇を抑制することができる。また、容器30の温度を過度に高くする場合には、コスト上昇のみならず容器30内の炭酸飲料が変質する可能性も考えられるが、できるだけ少ないエネルギーによって容器30の破損を防止することにより、容器30内の炭酸飲料の変質も抑制することができる。
【0050】
また、目標内圧は、搬送後の容器30における凹みの有無と、当該搬送後の容器39の内圧とに基づいて決定する態様とすることで、搬送後の容器30の内圧と、容器30の凹みの有無に基づいて適切な目標内圧を設定することができる。
【0051】
また、内圧制御工程は、容器30が目標温度以上になるように、温水を用いて容器30を加温する工程を含み、目標温度とは、容器30の内圧が目標内圧となるような容器30の第1の温度であるである態様とすることができる。特に、加温する工程として、容器30が目標温度以上になるように、加温装置20によって容器30に対して温水を用いることで容器を加温する工程が含まれる。このように目標内圧と目標温度との対応関係に基づいて、加温装置20によって容器30を目標温度以上に加温する構成とすることで、容器30の内圧を目標内圧よりも高めることができ、内圧の制御をより簡便に行うことができる。なお、加温する工程において用いられる加温の方法は、温水を用いる方法に限定されず、種々の方法を用いることができる。加温の方法・使用する装置によって具体的な加温条件は異なるため、加温の方法等を変更する場合には加温条件を適宜修正する必要がある。
【0052】
そして、第1の温度は、炭酸飲料の種類を考慮して求められる態様とすることで、飲料製品の種類に応じてより好適な目標温度を設定することができる。
【0053】
また、加温装置20に用いられる温水の温度を、上記の数式(1)に基づいて導出する構成とした場合、加温装置20にて散水に用いられる温水の温度を目標温度に基づいて好適に導出することができる。
【0054】
なお、上記実施形態では、加温装置20によって温水を散布することで容器30を目標温度以上に加温することで容器30の内圧を目標内圧以上に上昇させる構成について説明したが、容器30の内圧を上昇させる方法は加温に限定されない。
【0055】
加温以外の方法で容器30の内圧を制御する方法として、例えば、振動による制御が挙げられる。容器30に封入されているのは炭酸飲料であるから、振動によって飲料中に溶解している炭酸ガスを気化させることで容器30の内圧を上昇させる方法を用いることもできる。この場合、容器30の種類に応じて目標内圧が求められる点は、加温による内圧制御の場合と同じであり、容器30の内圧を目標内圧以上に高める方法として加温に代えて振動が用いられる。具体的には、容器30の内圧を目標内圧以上にするために必要な振動条件(周波数、振動回数等)を容器30の種類及び飲料の種類毎に予め求めておき、図3における第1の温度の導出(S03)及び加温制御(S04)の工程に代えて、目標内圧に対応する振動条件を導出して、振動制御を行う構成とすればよい。また、振動制御と加温制御とを組み合わせて内圧の制御を行う構成としてもよい。
【0056】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態に係る飲料製品の製造方法について説明する。第2実施形態に係る飲料製品の製造方法は、第1実施形態と同一の飲料製品製造装置1(図1参照)を用いて、容器30を加温することで容器30の内圧を目標内圧以上に制御するが、目標温度の導出(図5におけるS03)の方法が第1実施形態の飲料製品の製造方法と異なる。以下、第1実施形態との相違点について、図6を参照しながら説明する。図6におけるフローチャートは、図5におけるフローチャートのうち、目標温度の導出工程(S03)について説明している。
【0057】
図6に示すように、本実施形態に係る飲料製品の製造方法では、第1の温度と第2の温度とを求めた後、目標温度を求める。まず、目標内圧に対応する第1の温度を導出する(S11)。これは、第1実施形態において説明した目標温度の導出方法と同様に、容器30の種類等に基づいて決定される目標内圧に対応した第1の目標温度を導出する。
【0058】
ここで、第1実施形態では、容器30の内圧が、破損の抑制された内圧に対応する目標内圧以上となるように導出された第1の温度を目標温度として採用していた。ただし、一方で容器の結露という課題があり、容器30が目標内圧以上となるように容器を加温したとしても、容器30の温度が露点よりも低かった場合には容器の結露という問題が解消できない可能性がある。そのため、容器30が結露しない条件を考慮する必要がある。
【0059】
そこで、第1の温度を求めた(S11)後に、露点に対応する第2の温度を求める(S12)。第2の温度は、上述したように露点に基づいて導出される。具体的には、以下の数式(2)
第2の温度=露点+c …(2)
として求めることができる。ただし、cは定数であり、容器30の搬送環境(製造環境)の変動により、容器30に結露が生じない程度に定められる。なお、第1の温度の導出(S11)及び第2の温度の導出(S12)をこの順に行う必要はなく、第2の温度の導出(S12)を先に行ってもよい。
【0060】
第1の温度の導出(S11)及び第2の温度の導出(S12)に続いて、第1の温度及び第2の温度に基づいて目標温度が決定される(S13)。このとき、第1の温度及び第2の温度のうち高い方の温度が目標温度として用いられる。これにより、目標温度は第1の温度以上であることから、容器30は目標内圧以上とすることができ、容器30の凹み等の破損を防ぐことができる。同時に、目標温度は第2の温度以上であることから、容器30における結露を防ぐことができる。
【0061】
このように、図6のフローチャートに沿って求められた目標温度に基づいて、数式(1)等を用いて加温条件が求められ、さらに、加温の制御が行われる。この点は第1実施形態と同様である。なお、第2の温度が目標温度として用いられる場合、以下の数式(3)によって温水の温度が求められる。
温水の温度=(第2の温度−b)/a …(3)
ここで、式中のa,bはそれぞれ数式(1)と同様の定数であり、定数aは、温水の温度を1度上昇した場合に上昇する容器30の温度に対応する値であって、定数bは、加温前の容器の特性を示す値である。そして、上記の数式(3)に対して数式(2)を代入することで、以下の数式(4)が得られる。
温水の温度=(露点+c−b)/a …(4)
すなわち、温水の温度は、上記の数式(4)に基づいて求めることができる。
【0062】
以上のように、第2実施形態に係る飲料製品の製造方法によれば、第1の温度及び第2の温度のうちの高い方の温度を目標温度として、加温制御が行われる。したがって、容器30の内圧が低いために他の容器や製造装置等との衝突による容器30の破損を防止することができるだけでなく、容器30の結露を防ぐことが可能となる。さらに、第1実施形態に係る飲料製品の製造方法と同様に、下限値となる目標温度を設定して、この目標温度に基づいて加温制御を行うことから、できるだけ少ないエネルギーを利用して容器30の破損を防止することができるため、コスト上昇を抑制することができる。
【0063】
ここで、露点に応じた温度制御も行う第2実施形態に係る内圧制御方法を用いる場合、露点は周辺環境の温度や湿度によって変動するため、定期的に周辺環境の温度を測定し、これに基づいて第2の温度を求めて、第1の温度と比較して目標温度を決定する構成とすることもできる。
【0064】
なお、内圧に係る制御を要しない場合には、露点に基づいた第2の温度のみを利用した加温制御を実施することもできる。この場合、露点に基づいて上記の数式(2)に基づいて第2の温度を求めた後に、第2の温度をそのまま目標温度とする。そして、数式(1)等に基づいて加温条件を求めた後に、この加温条件に基づいて加温する。これにより、容器30の温度が露点よりも低下して容器30が結露することを防ぐことができると共に、過剰なエネルギーの消費を抑制して、コスト上昇を抑制することができる。
【0065】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明に係る飲料製品の製造方法及び製造装置は上記に限定されず、種々の変更を行うことができる。
【0066】
例えば、上記実施形態では、加温による内圧制御として、加温装置20が容器30に対して温水を散布する構成について説明をしたが、加温方法は温水散布に限定されない。また、上記実施形態では、加温装置20において目標内圧を決定すると共に目標温度を導出する構成について説明したが、互いに異なる複数の装置により構成されていてもよい。
【符号の説明】
【0067】
1…飲料製品製造装置、10…搬送部、20…加温装置、21…目標内圧決定部、22…温度条件導出部、23…加温部、30…容器。
図1
図2
図3
図4
図5
図6