【解決手段】1つ以上の翻訳後修飾を有し、リンカー、ポリマーまたは生物学的に活性な分子と連結されており、あるいは、二官能性ポリマー、二官能性リンカーまたは少なくとも1つの追加のレプチンポリペプチドと連結されており、また天然にコードされていないアミノ酸は水溶性ポリマーと連結され、水溶性ポリマーは二官能性ポリマーのポリ(エチレングリコール)部分を含んでおり、水溶性ポリマーと連結されているアミノ酸を少なくとも2つ含んでおり、当該水溶性ポリマーがポリ(エチレングリコール)部分を含んでいるレプチンポリペプチド。
請求項4に記載のレプチンポリペプチドであって、上記水溶性ポリマーが、当該レプチンポリペプチドに存在している天然にコードされていないアミノ酸と連結されている、レプチンポリペプチド。
請求項1に記載のレプチンポリペプチドであって、レプチン受容体に対する当該レプチンポリペプチドの親和性を調節するアミノ酸置換、アミノ酸付加またはアミノ酸欠失を1つ以上有している、レプチンポリペプチド。
請求項1に記載のレプチンポリペプチドであって、当該レプチンポリペプチドの安定性または可溶性を高めるアミノ酸置換、アミノ酸付加またはアミノ酸欠失を1つ以上有している、レプチンポリペプチド。
請求項1に記載のレプチンポリペプチドであって、当該レプチンポリペプチドの組換え宿主細胞における発現またはインビトロにおける合成を向上させるアミノ酸置換、アミノ酸付加またはアミノ酸欠失を1つ以上有している、レプチンポリペプチド。
請求項1に記載のレプチンポリペプチドであって、当該レプチンポリペプチドのプロテアーゼ耐性を向上させるアミノ酸置換、アミノ酸付加またはアミノ酸欠失を1つ以上有している、レプチンポリペプチド。
上記天然にコードされていないアミノ酸がリンカー、ポリマーまたは生物学的に活性な分子に対して反応性であり、当該リンカー、ポリマー、または生物学的に活性な分子がレプチンポリペプチドにおける一般的な20個のアミノ酸のいずれに対しても非反応性である、請求項1に記載のレプチンポリペプチド。
上記天然にコードされていないアミノ酸が、カルボニル基、アミノオキシ基、ヒドラジン基、ヒドラジド基、セミカルバジド基、アジド基、またはアルキン基を含んでいる、請求項1に記載のレプチンポリペプチド。
カルボニル含有アミノ酸を含んでいる4HBポリペプチドを、アミノオキシ基、ヒドラジン基、ヒドラジド基またはセミカルバジド基を含んでいる水溶性ポリマーと反応させることによって製造されている、請求項4に記載のレプチンポリペプチド。
上記アミノオキシ基、ヒドラジン基、ヒドラジド基またはセミカルバジド基が、アミド結合を介して上記水溶性ポリマーと連結されている、請求項28に記載のレプチンポリペプチド。
カルボニル基を含んでいる水溶性ポリマーを、天然にコードされていないアミノ酸を含んでいるポリペプチドと反応させることによって製造されており、当該天然にコードされていないアミノ酸が、アミノオキシ基、ヒドラジン基、ヒドラジド基またはセミカルバジド基を含んでいる、請求項4に記載のレプチンポリペプチド。
アルキン含有アミノ酸を含んでいるレプチンポリペプチドを、アジド部分を含んでいる水溶性ポリマーと反応させることによって製造されている、請求項4に記載のレプチンポリペプチド。
アジド含有アミノ酸を含んでいるレプチンポリペプチドを、アルキン部分を含んでいる水溶性ポリマーと反応させることによって製造されている、請求項4に記載のレプチンポリペプチド。
請求項3に記載のレプチンポリペプチドであって、上記リンカー、ポリマーまたは生物学的に活性な分子が、糖部分を介して当該レプチンポリペプチドと連結されている、レプチンポリペプチド。
上記セレクターコドンが、アンバーコドン、オーカーコドン、オパールコドン、ユニークコドン、レアコドンおよび4塩基コドンからなる群から選択される、請求項43に記載の単離された核酸。
天然にコードされていないアミノ酸を含んでいる単離されたレプチンポリペプチドを、当該天然にコードされていないアミノ酸と反応する部分を含んでいるリンカー、ポリマーまたは生物学的に活性な分子と接触させることを包含している、請求項3に記載のレプチンポリペプチドを製造する、方法。
上記天然にコードされていないアミノ酸が、カルボニル基、アミノオキシ基、ヒドラジド基、ヒドラジン基、セミカルバジド基、アジド基またはアルキン基を含んでいる、請求項45に記載の方法。
上記天然にコードされていないアミノ酸がカルボニル部分を含んでおり、上記リンカー、ポリマーまたは生物学的に活性な分子が、アミノオキシ部分、ヒドラジン部分、ヒドラジド部分またはセミカルバジド部分を含んでいる、請求項45に記載の方法。
上記アミノオキシ部分、ヒドラジン部分、ヒドラジド部分またはセミカルバジド部分が、アミド結合を介して上記リンカー、ポリマーまたは生物学的に活性な分子と連結されている、請求項48に記載の方法。
上記天然にコードされていないアミノ酸残基がアルキン部分を含んでおり、上記リンカー、ポリマーまたは生物学的に活性な分子がアジド部分を含んでいる、請求項45に記載の方法。
上記天然にコードされていないアミノ酸残基がアジド部分を含んでおり、上記リンカー、ポリマーまたは生物学的に活性な分子がアルキン部分を含んでいる、請求項46に記載の方法。
レプチンによって調節される疾患にかかっている患者を処置する方法であって、治療有効量の請求項55に記載の組成物を当該患者に投与することを包含している、方法。
レプチンポリペプチドをコードしており、セレクターコドンを含んでいる単一または複数のポリヌクレオチドと、直交性のRNA合成酵素と、直交性のtRNAとを含んでいる細胞を、天然にコードされていないアミノ酸を含んでいる当該レプチンポリペプチドの発現を可能にする条件下において培養すること;ならびに当該レプチンポリペプチドを精製することを包含している、天然にコードされていないアミノ酸を含んでいるレプチンポリペプチドを製造する方法。
レプチンポリペプチドにおける天然に存在する任意のアミノ酸の1つ以上を、天然にコードされていないアミノ酸の1つ以上に置換することを包含している、レプチンポリペプチドの血清半減期または循環時間を増大させる方法。
ポリヌクレオチドによってコードされるレプチンポリペプチドであって、当該ポリヌクレオチドがセレクターコドンを含んでおり、当該レプチンポリペプチドが天然にコードされていないアミノ酸を少なくとも1つ含んでいる、レプチンポリペプチド。
上記天然にコードされていないアミノ酸が、リンカー、ポリマー、水溶性ポリマーまたは生物学的に活性な分子と連結されている、請求項62に記載のレプチンポリペプチド。
上記天然にコードされていないアミノ酸が、カルボニル基、アミノオキシ基、ヒドラジド基、ヒドラジン基、セミカルバジド基、アジド基またはアルキン基を含んでいる、請求項64に記載のレプチンポリペプチド。
水溶性ポリマーを含んでいるレプチンポリペプチドであって、当該水溶性ポリマーが、単一のアミノ酸において当該レプチンポリペプチドと共有結合によって連結されている、レプチンポリペプチド。
少なくとも1つのリンカー、ポリマーまたは生物学的に活性な分子を含んでいるレプチンポリペプチドであって、当該リンカー、ポリマーまたは生物学的に活性な分子が、当該レプチンポリペプチド内にリボソームによって組み込まれている天然にコードされていないアミノ酸の官能基を介して、当該レプチンポリペプチドと結合されている、レプチンポリペプチド。
天然にコードされていないアミノ酸に結合されているリンカー、ポリマーまたは生物学的に活性な分子を含んでいるポリペプチドであって、当該天然にコードされていないアミノ酸が、あらかじめ選択された部位において当該ポリペプチド内にリボソームによって組み込まれている、ポリペプチド。
請求項1に記載のレプチンポリペプチドであって、当該レプチンポリペプチドの免疫原性を調節するアミノ酸置換、アミノ酸付加またはアミノ酸欠失を1つ以上有している、レプチンポリペプチド。
請求項1に記載のレプチンポリペプチドであって、当該レプチンポリペプチドの血清半減期または循環時間を調節するアミノ酸置換、アミノ酸付加またはアミノ酸欠失を1つ以上有している、レプチンポリペプチド。
レプチンポリペプチドの免疫原性を調節する方法であって、当該レプチンポリペプチドにおける天然に存在する任意のアミノ酸の1つ以上を、天然にコードされていないアミノ酸の1つ以上に置換することを包含している、方法。
【発明を実施するための形態】
【0073】
〔定義〕
本発明は、本明細書に記載されている特定の方法論、手順、細胞株、構築物、および試薬に制限されず、よって変更可能であることが、理解されるべきである。また、本明細書において使用される専門用語は、特定の実施形態のみを説明することを目的としており、添付の特許請求の範囲によってのみ制限される本発明の範囲を制限することを意図しないことが、理解されるべきである。
【0074】
本明細書および添付の特許請求の範囲において使用されるときに、単数形“a”、“an”、および“the”は、前後関係から1つのものを明確に示している場合を除いて、複数を指すことを含む。したがって例えば、“レプチン”、“hGH”、“hIFN”、 “G−CSF”または“hEPO”に対する言及は、1つ以上の当該タンパク質に対する言及であり、当業者に知られるこれらの等価物などを含んでいる。
【0075】
他に明示されていない限り、本明細書において使用される技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者に通常に理解されるような、同じ意味を有する。任意の方法、装置および物質、本明細書に記載されているそれらの類似物または等価物が、本発明の実施または試験に使用され得るが、好ましい方法、装置および材料は、これから説明される。
【0076】
本明細書に述べられている公報および特許は、例えば、現在、説明されている本発明と関連して使用され得る公報に説明されている構築物および方法論を説明し、開示することを目的として、参照によって本明細書に援用される。本明細書において議論される公報において、本願の出願日の前における開示内容が単に規定される。本明細書において、先の発明によって当該開示に先立つために、または任意の他の理由によって、発明者に権利が与えられないことの承認として解釈されるべきではない。
【0077】
“実質的に精製された”という用語は、天然に存在する環境(すなわち、天然の細胞、またはレプチンポリペプチドが組換え的に産生される場合における宿主細胞)に見られるような、レプチンタンパク質と付随するか、または相互作用する化合物を実質的にまたはほとんど含み得ない、レプチンポリペプチドを指す。細胞性物質を実質的に含み得ないレプチンポリペプチドとしては、混入しているタンパク質が、(乾燥重量として)約30%未満、約25%未満、約20%未満、約15%未満、約10%未満、約5%未満、約4%未満、約3%未満、約2%未満、または約1%未満である、タンパク質の調製物が挙げられる。レプチンポリペプチドまたはこれらのバリアントが、宿主細胞において組換え的に産生される場合に、タンパク質は、細胞の乾燥重量の約30%、約25%、約20%、約15%、約10%、約5%、約4%、約3%、約2%、または約1%もしくはそれ未満において存在し得る。レプチンポリペプチドまたはこれらのバリアントが、宿主細胞において組換え的に産生される場合に、タンパク質は、細胞の乾燥重量の約5g/l、約4g/l、約3g/l、約2g/l、約1g/l、約750mg/l、約500mg/l、約250mg/l、約100mg/l、約50mg/l、約10mg/l、または約1mg/lもしくはそれ未満において培養培地に存在し得る。したがって、本発明の方法によって産生される“実質的に精製された”レプチンポリペプチドは、適切な方法(例えば、SDS/PAGE分析、RP−HPLC、SEC、およびキャピラリー電気泳動)によって決定されるときに、少なくとも約30%、少なくとも35約%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%の純度、詳細には少なくとも約75%、80%、85%の純度、そしてより詳細には少なくとも約90%の純度、少なくとも約95%の純度、少なくとも約99%またはそれ以上の純度を有している。
【0078】
“組換え宿主細胞”または“宿主細胞”は、挿入に使用される方法(例えば、直接的な取り込み、形質導入、f−交配(f-mating)、または組換え宿主細胞を作り出すために使用される他の公知の方法)にかかわらず、外来性のポリヌクレオチドを含んでいる細胞を指す。外来性のポリヌクレオチドは、宿主のゲノムに組み込まれないベクター(例えば、プラスミド)として維持され得るか、または宿主のゲノムに組み込まれ得る。
【0079】
本明細書において使用されるときに、“培地”または“培養液”という用語は、任意の宿主細胞(細菌宿主細胞、酵母宿主細胞、昆虫宿主細胞、植物宿主細胞、真核生物宿主細胞、哺乳類宿主細胞、CHO細胞、原核生物宿主細胞、またはE. coliが挙げられる)、および細胞内容物を保持し得るか、または含有し得る任意の培養培地、溶液、固体、半固体、または固定担体を含む。したがって、当該用語は、宿主細胞が培養されている培地(例えば、レプチンポリペプチドが分泌されている培地(増殖段階の前または後のいずれかにおける培地))を包含し得る。また、当該用語は、“レプチン”ポリペプチドが細胞内において産生され、宿主細胞が溶解されるか、または崩壊させられてレプチンポリペプチドを放出する場合に、宿主細胞溶解液を含有する緩衝液または試薬を包含し得る。
【0080】
タンパク質のフォールディングに関して本明細書において使用されるときに、“還元剤”は、還元状態においてスルフィドリル基を維持し、分子内または分子間のジスルフィド結合を還元する、任意の化合物または物質として定義づけされる。好適な還元剤としては、ジチオスレイトール(DTT)、2−メルカプトエタノール、ジチオエリスリトール、システイン、システアミン(2−アミノエタンチオール)、および還元グルタチオンが挙げられるが、これらに限定されない。広範な還元剤が本発明の方法および組成物における使用に好適であることは、当業者にとって直ちに明らかになる。
【0081】
タンパク質のフォールディングに関して本明細書において使用されるときに、“酸化剤”は、酸化される化合物から電子を除去できる、任意の化合物または物質として定義づけされる。好適な酸化剤としては、酸化グルタチオン、シスチン、シスタミン、酸化ジチオスレイトール、酸化エリスレイトール、および酸素が挙げられるが、これらに限定されない。広範な酸化剤が本発明の方法における使用に好適であることは、当業者にとって直ちに明らかになる。
【0082】
本明細書において使用されるときに、“変性剤(denaturing agent)”“変性剤(denaturant)”は、タンパク質の可逆的な変性を引き起こす、任意の化合物または物質として定義づけされる。変性剤または変性剤の強さは、特定の変性剤または変性剤の性質および濃度の両方によって決定される。好適な変性剤または変性剤は、カオトロープ、界面活性剤、有機溶媒、水混和性溶媒、リン脂質、または当該試薬の2つ以上の組合せであり得る。好適なカオトロープとしては、尿素、グアジニン、およびチオシアン酸ナトリウムが挙げられるが、これらに限定されない。有用な界面活性剤としては、ドデシル硫酸ナトリウム、またはポリオキシエチレンエーテル(例えば、TweenまたはTriton界面活性剤)といった強力な界面活性剤、サルコシル(Sarkosyl)、穏やかな非イオン性界面活性剤(例えば、ジギトニン)、N−>2,3−(ジオレイオキシ)−プロピル−N,N,N−トリメチルアンモニウムといった穏やかなカチオン性界面活性剤、穏やかなイオン性界面活性剤(例えば、コール酸ナトリウムまたはデオキシコール酸ナトリウム)または両性イオン性界面活性(これらに限定されないが、スルホベタイン(ツヴァイッタージェント)、3−(3−クロルアミドプロピル)ジメチルアンモニオ−1−プロパン硫酸塩(CHAPS)、3−(3−クロルアミドプロピル)ジメチルアンモニオ−2−ヒドロキシ−1−プロパンスルホン酸塩(CHAPSO)が挙げられる)が挙げられ得るが、これらに限定されない。アセトニトリル、低級アルカノール(特にエタノールまたはイソプロパノールといったC
2−C
4アルカノール)、または低級アルカンジオール(特にエチレングリコールといったC
2−C
4アルカンジオール)といった、水混和性の有機溶媒が、変性剤として使用され得る。本発明において有用なリン脂質は、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルコリン、ホスファチジルセリン、およびホスファチジルイノシトールといった天然に存在するリン脂質であり得るか、またはジヘキサノイルホスファチジルコリンもしくはジヘプタノイルホスファチジルコリンといった合成リン脂質誘導体またはバリアントであり得る。
【0083】
本明細書において使用されるときに“リフォールディング”は、ジスルフィド結合を含んでいるポリペプチドを、不適切に折りたたまれた状態または変性された状態から、ジスルフィド結合に関して本来の立体構造または適切に折りたたまれた立体構造に変形させる、任意の過程、反応または方法を説明する。
【0084】
本明細書において使用されるときに“コフォールディング(cofolding)”は、お互いに相互作用する少なくとも2つのポリペプチドを用いて、変性されたポリペプチドまたは不適切に折りたたまれたポリペプチドを本来の適切に折りたたまれたポリペプチドに変形させる、リフォールディングの過程、反応、または方法を特に指す。
【0085】
本明細書において使用されるときに“レプチン(leptin)”、“複数のレプチン(leptins)”、“レプチンポリペプチド(leptin polypeptide)”、および“複数のレプチンポリペプチド(leptin polypeptides)”は、公知のレプチンファミリーのポリペプチドまたはタンパク質のいずれかを指し、広く知られるところとなるそれらである。これらの用語は、アミノ酸置換、アミノ酸付加またはアミノ酸欠失を1つ以上有するレプチンファミリーのポリペプチドまたはタンパク質、ならびにバリアント、融合、突然変異、断片、アゴニスト、アンタゴニスト、ダイマー、マルチマー、ポリマーと共有結合しているポリペプチド、レプチンファミリーのメンバーと90%以上同一のアミノ酸配列を共有しているポリペプチド、および4つのらせん束(helical bundle)構造を有するポリペプチドを含んでいる、他のレプチンファミリーのメンバーを包含しているが、これらに限定されない。当該用語は、他に明示されていない限り、複数の言及を包含している。
【0086】
本明細書において使用されるときに“成長ホルモン”または“GH”は、ヒト成長ホルモンの少なくとも1つの生物活性を有しているこれらのポリペプチドおよびタンパク質だけでなく、同じ生物活性であるか否かに関わらず、さらにこれらの合成または製造の方法に関わらず、GH類似物、GHアイソフォーム、GH模倣物、GH断片、ハイブリッドGHタンパク質、これらの融合タンパク質のオリゴマーおよびマルチマー、相同物、糖鎖型バリアント、ならびに突然変異タンパク質を包含している。これらの合成または製造の方法としては、組換え法(cDNA、ゲノムDNA、合成DNAまたは核酸の他の形態から産生される)、合成法、遺伝子導入法、および遺伝子活性化法が挙げられるが、これらに限定されない。
【0087】
“hGHポリペプチド”という用語は、アミノ酸置換、アミノ酸付加またはアミノ酸欠失を1つ以上有しているhGHポリペプチドを包含する。例示的な置換としては、例えば、係属中の米国特許出願公開第20060189529号明細書に記載のそれらであり、またさらなる置換は、例えば、参照によって本明細書に援用される米国特許第6,143,523号明細書が挙げられる。
【0088】
また、“hGHポリペプチド”という用語は、天然に存在するhGHの薬学的に受容可能な塩およびプロドラッグ、ならびに天然に存在するhGHの塩、多形体、水和物、溶媒和物、生物学的に活性な断片、生物学的に活性なバリアントおよび立体異性体のプロドラッグだけでなく、天然に存在するhGHのアゴニストバリアント、模倣物バリアントおよびアンタゴニストバリアントならびにこれらのポリペプチド融合物を包含する。アミノ末端、カルボキシル末端またはその両方に追加のアミノ酸を有する融合物は、“hGHポリペプチド”という用語に包含される。例示的な融合物としては、例えば、メチオニル成長ホルモン、精製用の融合物(ポリヒスチジンまたはアフィニティーエピトープとの融合物が挙げられる)、血清アルブミン結合ペプチドとの融合物、および血清タンパク質(例えば、血清アルブミン)との融合物が挙げられるが、これらに限定されない。上記メチオニル成長ホルモンにおいて、メチオニンは組換え発現から生じるhGHのN末端に連結されている。
【0089】
本明細書において使用されるときに“インターフェロン”または“IFN”は、ヒトインターフェロンの生物活性を少なくとも1つ有しているこれらのポリペプチドおよびタンパク質を包含し、これらとしては、IFNα、IFNβ、IFNγ、IFNω、IFNεまたはIFNτだけでなく、同じ生物活性であるかに関わらず、さらにこれらの合成または製造の方法に関わらず、IFN類似物、IFNアイソフォーム、IFN模倣物、IFN断片、ハイブリッドIFNタンパク質、これらの融合タンパク質のオリゴマーおよびマルチマー、相同物、糖鎖型バリアントならびに突然変異タンパク質が挙げられるが、これらに限定されない。これらの合成または製造の方法としては、組換え法(cDNA、ゲノムDNA、合成DNAまたは核酸の他の形態から産生される)、合成法、遺伝子導入法、および遺伝子活性化法が挙げられるが、これらに限定されない。当該IFNα、IFNβ、IFNγ、IFNω、IFNεまたはIFNτは、例えば、参照によって本明細書に援用される、米国特許第4,414,150号明細書;米国特許第4,456,748号明細書;米国特許第4,727,138号明細書;米国特許第4,762,791号明細書;米国特許第4,929,554号明細書;米国特許第5,096,705号明細書;米国特許第4,695,623号明細書;米国特許第4,614,651号明細書;米国特許第4,678,751号明細書;米国特許第4,925,793号明細書;米国特許第5,460,811号明細書;米国特許第5,120,832号明細書;米国特許第4,780,530号明細書;米国特許第4,908,432号明細書;米国特許第4,970,161号明細書;米国特許第4,973,479号明細書;米国特許第4,975,276号明細書;米国特許第5,098,703号明細書;米国特許第5,278,286号明細書;米国特許第5,661,009号明細書;米国特許第6,372,206号明細書;米国特許第6,433,144号明細書;米国特許第6,472,512号明細書;米国特許第6,572,853号明細書;米国特許第6,703,225号明細書;米国特許第6,200,780号明細書;米国特許第6,299,869号明細書;米国特許第6,300,475号明細書;米国特許第6,323,006号明細書;米国特許第6,350,589号明細書;米国特許第5,705,363号明細書;米国特許第5,738,845号明細書;米国特許第5,789,551号明細書;米国特許第6,117,423号明細書;米国特許第6,174,996号明細書;米国特許第5,540,923号明細書;米国特許第5,541,293号明細書;米国特許第5,541,312号明細書;米国特許第5,554,513号明細書;米国特許第5,593,667号明細書に記載されているそれらである。IFNの特定の例としては、IFNγ−1b(アクトイミューン(登録商標))、IFNβ−1a(アボネックス(登録商標)およびレビフ(登録商標)、IFNβ−1b(ベータセロン(登録商標))、コンセンサスIFN、IFNアルファコン−1、(インファージェン(登録商標))、IFNα−2(イントロン A(登録商標))、IFNα−2a(ロフェロン−A(登録商標))、ペグインターフェロンα−2a(ペガシス(登録商標))、ペグインターフェロンα−2b(PEG−イントロン(登録商標))、IFN類似物、IFN突然変異体、改変された糖鎖付加ヒトIFNおよびPEG抱合IFN類似物が挙げられるが、これらに限定されない。内因性のヒトIFNの発現に関して修飾された細胞の特定の例が、参照によって本明細書に援用されるDevlin et al., J. Leukoc. Biol. 41:306(1987);米国特許第6,716,606号明細書;米国特許第6,610,830号明細書;米国特許第6,482,613号明細書;米国特許第6,489,144号明細書;米国特許第6,159,712号明細書;米国特許第5,814,485号明細書;米国特許第5,710,027号明細書;米国特許第5,595,888号明細書;米国特許第4,966,843号明細書;米国特許第6,379,661号明細書;米国特許第6,004,548号明細書;米国特許第5,830,705号明細書;米国特許第5,582,823号明細書;米国特許第4,810,643号明細書;および米国特許第6,242,218号明細書に記載されている。
【0090】
“ヒトIFN(hIFN)”または“hIFNポリペプチド”という用語は、上述したインターフェロンまたはIFNだけでなく、天然に存在するhIFNの生物活性を少なくとも1つ保持しているポリペプチドが意図される。hIFNポリペプチドは、薬学的に受容可能な塩およびプロドラッグ、ならびに天然に存在するヒトIFNの塩、多形体、水和物、溶媒和物、生物学的に活性な断片、生物学的に活性なバリアントおよび立体異性体のプロドラッグだけでなく、天然に存在するヒトIFNのアゴニストバリアント、模倣物バリアントおよびアンタゴニストバリアントならびにこれらのポリペプチド融合物を含んでいる。hIFNポリペプチドの例としては、参照によって本明細書に援用される米国特許第4,604,284号明細書;米国特許第5,582,824号明細書;米国特許第6,531,122号明細書;米国特許第6,204,022号明細書;米国特許第6,120,762号明細書;米国特許第6,046,034号明細書;米国特許第6,036,956号明細書;米国特許第5,939,286号明細書;米国特許第5,908,626号明細書;米国特許第5,780,027号明細書;米国特許第5,770,191号明細書;米国特許第5,723,125号明細書;米国特許第5,594,107号明細書;米国特許第5,378,823号明細書;米国特許第4,898,931号明細書;米国特許第4,892,743号明細書に記載のそれらが挙げられるが、これらに限定されない。アミノ末端、カルボキシル末端またはその両方に追加のアミノ酸を有する融合物は、“hIFNポリペプチド”という用語に包含される。例示的な融合物としては、例えば、メチオニルIFN、精製用の融合物(ポリヒスチジンまたはアフィニティーエピトープとの融合物が挙げられる)、血清アルブミン結合ペプチドとの融合物、および血清タンパク質(例えば、血清アルブミン)との融合物が挙げられるが、これらに限定されない。上記メチオニルIFNにおいて、メチオニンは、分泌シグナルペプチドまたはそれらの一部を欠いているhIFNの成熟形態の組換え発現から生じるhIFNのN末端に連結されている。天然に存在するhIFNの核酸配列の全長およびアミノ酸配列の全長ならびに成熟形態は、単一のアミノ酸バリアントまたはそれらのスプライシングバリアントとして知られている。
【0091】
本明細書において使用されるときに“顆粒球コロニー刺激因子”または“G−CSF”は、ヒトhG−CSF(例えば、参照によって本明細書に援用される米国特許第6,716,606号明細書;米国特許第6,689,351号明細書;米国特許第6,565,841号明細書;米国特許第6,162,426号明細書;米国特許第5,811,301号明細書;米国特許第5,776,895号明細書;米国特許第5,718,893号明細書;米国特許第5,536,495号明細書;米国特許第5,202,117号明細書;米国特許第5,043,156号明細書;米国特許第4,999,291号明細書;米国特許第4,810,643号明細書;および米国特許第4,968,618号明細書に記載されているそれらである)の生物活性を少なくとも1つ有しているこれらのポリペプチドおよびタンパク質だけでなく、同じ生物活性であるかに関わらず、さらにこれらの合成または製造の方法に関わらず、G−CSF類似物、G−CSFアイソフォーム、G−CSF模倣物、G−CSF断片、ハイブリッドG−CSFタンパク質、融合タンパク質のオリゴマーおよびマルチマー、相同物、糖鎖型バリアント、および突然変異タンパク質を包含する。これらの合成または製造の方法としては、組換え法(cDNA、ゲノムDNA、合成DNAまたは核酸の他の形態から産生される)、合成法、遺伝子導入法、および遺伝子活性化法が挙げられるが、これらに限定されない。G−CSFの特定の例としては、ペグフィルグラスチム(ネウラスタ(登録商標))、フィルグラスチム(ネウポジェン(登録商標))、G−CSF類似物、G−CSF突然変異体、改変された糖鎖付加ヒトG−CSFおよびPEG抱合G−CSF類似物が挙げられるが、これらに限定されない。内因性のG−CSFの発現に関して修飾された細胞の特定の例が、参照によって本明細書に援用されるDevlin et al., J. Leukoc. Biol. 41:306(1987);米国特許第6,716,606号明細書;米国特許第6,379,661号明細書;米国特許第6,004,548号明細書;米国特許第5,830,705号明細書;米国特許第5,582,823号明細書;米国特許第4,810,643号明細書;米国特許第6,242,218号明細書に記載されている。
【0092】
“ヒトG−CSF(hG−CSF)”または“hG−CSFポリペプチド”という用語は、上述した顆粒球コロニー刺激因子またはG−CSFだけでなく、天然に存在するhG−CSFの生物活性を少なくとも1つ保持しているポリペプチドを意図している。hG−CSFポリペプチドは、薬学的に受容可能な塩およびプロドラッグ、ならびに天然に存在するヒトG−CSFの塩、多形体、水和物、溶媒和物、生物学的に活性な断片、生物学的に活性なバリアントおよび立体異性体のプロドラッグだけでなく、天然に存在するヒトG−CSFのアゴニストバリアント、模倣物バリアントおよびアンタゴニストバリアントならびにこれらのポリペプチド融合物を含んでいる。hG−CSFポリペプチドおよび模倣物の例としては、参照によって本明細書に援用される米国特許第6,716,606号明細書;米国特許第6,689,351号明細書;米国特許第6,565,841号明細書;米国特許第6,162,426号明細書;米国特許第5,824,784号明細書;米国特許第5,811,301号明細書;米国特許第5,776,895号明細書;米国特許第5,718,893号明細書;米国特許第5,202,117号明細書;米国特許第5,043,156号明細書;米国特許第4,968,618号明細書;米国特許第6,630,470号明細書;米国特許第6,346,531号明細書に記載されるそれらが挙げられる。アミノ末端、カルボキシル末端またはその両方に追加のアミノ酸を有する融合物は、“hG−CSFポリペプチド”という用語に包含される。例示的な融合物としては、例えば、メチオニルG−CSF、精製用の融合物(ポリヒスチジンまたはアフィニティーエピトープとの融合物が挙げられる)、血清アルブミン結合ペプチドとの融合物、および血清タンパク質(例えば、血清アルブミン)との融合物が挙げられるが、これらに限定されない。上記メチオニルG−CSFにおいて、メチオニンは、分泌シグナルペプチドを欠いているhG−CSFの成熟形態の組換え発現から生じるhG−CSF(例えば、配列番号29のポリペプチド)のN末端に連結されている。配列番号29において1位に位置しているメチオニンのアラニンとの置き換えが、天然に存在する成熟形態のhG−CSFに見られる。天然に存在するhG−CSFの核酸配列の全長およびアミノ酸配列の全長ならびに成熟形態は、単一のアミノ酸バリアントまたはそれらのスプライシングバリアントとして知られている。本明細書において、天然に存在するhG−CSFの完全な全長のアミノ酸配列、成熟したメチオニルhG−CSFの完全な全長のアミノ酸配列、およびスプライシングバリアントはそれぞれ配列番号28、配列番号29および配列番号30を参照すればよい。本明細書において、天然に存在するhG−CSFの単一のアミノ酸配列のバリアントは配列番号35および配列番号36を参照すればよい。いくつかの実施形態において、本発明のhG−CSFポリペプチドは、配列番号28、配列番号29、配列番号30、配列番号35、配列番号36と実質的に同一である。hG−CSFの突然変異体をコードする核酸分子およびhG−CSFポリペプチドの変異体はよく知られている。hG−CSFの突然変異体の例としては、参照によって本明細書に援用される米国特許第6,489,293号明細書;米国特許第6,153,407号明細書;米国特許第6,048,971号明細書;米国特許第5,614,184号明細書;米国特許第5,416,195号明細書;米国特許第5,399,345号明細書;および米国特許第5,457,089号明細書に記載されるそれらである。
【0093】
顆粒球コロニー刺激因子またはhG−CSFは、これらに限定されないが、その受容体との結合、その受容体を二量体化させること、好中球産生の刺激、ならびに刺激細胞の増殖および分化を含んでいる種々の生物活性を有している。顆粒球コロニー刺激因子およびhG−CSFのいくつかの生物活性の例が、上述されており、参照によって本明細書に援用される米国特許第6,676,947号明細書;米国特許第6,579,525号明細書;米国特許第6,531,121号明細書;米国特許第6,521,245号明細書;米国特許第6,489,293号明細書;米国特許第6,368,854号明細書;米国特許第6,316,254号;米国特許第6,268,336号明細書;米国特許第6,239,109号明細書;米国特許第6,165,283号明細書;米国特許第5,986,047号;米国特許第5,830,851号明細書;米国特許第5,043,156号明細書;および米国特許第5,773,569号明細書に記載されている。
【0094】
hG−CSFの生物学的活性の断片/バリアントは、これらに限定されないが、207のアミノ酸または204のアミノ酸(V66、S67およびE68を欠いているスプライシングバリアント)を含み、その最初の30のアミノ酸は分泌中に開裂されるアミノ酸である遺伝子産物を含む(Nagata et al. Nature 319:415(1986);Souza et al., Science 232:61(1986))。
【0095】
本明細書において使用されるときに“エリスロポエチン”または“EPO”は、EPOの生物活性を少なくとも1つ有しているポリペプチドおよびタンパク質だけでなく、同じ生物活性であるか否かに関わらず、さらにこれらの合成または製造の方法に関わらず、ヒトEPO(hEPO)、エリスロポエチン類似物、エリスロポエチンアイソフォーム(例えば、参照によって本明細書に援用される米国特許第5,856,298号明細書に記載されるそれらである)、エリスロポエチン模倣物(例えば、参照によって本明細書に援用される米国特許第6,310,078号明細書に記載されるそれらである)、エリスロポエチン断片、ハイブリッドエリスロポエチンタンパク質、融合タンパク質のオリゴマーおよびマルチマー、相同物、糖鎖型バリアント、および突然変異タンパク質を包含する。これらの合成または製造の方法としては、組換え法(cDNAまたはゲノムDNAから産生される)、合成法(参照によって本明細書に援用される米国特許第6,552,167号明細書、米国特許第6,001,364号明細書、米国特許第6,174,530号明細書、米国特許第6,217,873号明細書、米国特許第6,663,869号明細書、米国特許第6,673,347号明細書;国際公開第00/12587号パンフレット)、遺伝子導入法、および遺伝子活性化法が挙げられるが、これらに限定されない。非ヒトEPOの特定の例としては、ウシEPO、イヌEPO(米国特許第6,696,411号明細書)、ネコEPO、霊長類EPO(米国特許第6,555,343号明細書および米国特許第6,831,060号明細書)、ブタEPOおよびウマEPOが挙げられるが、これらに限定されない。また、ウマ、ブタ、ネコおよびヒツジを含む種々の哺乳類から得られるEPO配列の分析のためにWen et al. “Erythropoictin structure-function relationships: high degree of sequence homology among mammals,”Blood,(1993)82: 1507-1516およびLin et al. “Monkey eryshropoietin gene: cloning, expression and comparison with the human erythropoietin gene,”Gene, (1986) 44(2-3):201-9を参照すればよい。すべての引用文献は、参照によって本明細書に援用される。エリスロポエチンの特定の例としては、エポエチンアルファ(例えば、参照によって本明細書に援用される米国特許第4,667,016号明細書;米国特許第4,703,008号明細書;米国特許第5,441,868号明細書;米国特許第5,547,933号明細書;米国特許第5,618,698号明細書;米国特許第5,621,080号明細書;米国特許第5,756,349号明細書;および米国特許第5,955,422号明細書に記載のそれら)、ダーベポエチンアルファ(欧州特許出願公開第640619号明細書に記載される)、DYNEPO(商標)(エポエチンデルタ)、ヒトエリスロポエチン類似物(例えば、参照によって本明細書に援用される国際公開第099/66054号パンフレットおよび米国特許第6,548,653号明細書;および米国特許第5,888,772号明細書に記載のヒト血清アルブミン融合タンパク質)、エリスロポエチン突然変異体(例えば、参照によって本明細書に援用される国際公開第099/38890号パンフレットならびに米国特許第6,489,293号明細書;米国特許第5,888,772号明細書;米国特許第5,614,184号明細書;および米国特許第5,457,089号明細書に記載のそれら)、エリスロポエチンオメガ(参照によって本明細書に援用される米国特許第5,688,679号明細書;米国特許第6,099,830号明細書;米国特許第6,316,254号明細書;および米国特許第6,682,910号明細書に記載のヒトエリスロポエチン遺伝子のApaI制限断片から産生し得る)、改変された糖鎖付加ヒトエリスロポエチン(国際公開第099/11781号パンフレットおよび欧州特許出願公開第1064951号明細書に記載されるそれら)、およびPEG抱合エリスロポエチン類似物(参照によって本明細書に援用される国際公開第098/05363号パンフレットならびに米国特許第5,643,575号明細書;米国特許第6,583,272号明細書;米国特許第6,340,742号明細書;および米国特許第6,586,398号明細書に記載されるそれら)が挙げられるが、これらに限定されない。内因性のヒトエリスロポエチンの発現に関して修飾された細胞の特定の例が、参照によって本明細書に援用される国際公開第099/05268号パンフレットおよび国際公開第094/12650号パンフレットならびに米国特許第6,376,218号明細書に記載されている。
【0096】
“ヒトエリスロポエチン(hEPO)”または“hEPOポリペプチド”という用語は、上述したエリスロポエチンまたはEPOだけでなく、天然に存在するhEPOの生物活性を少なくとも1つ保持するポリペプチドを意図している。hEPOポリペプチドは、薬学的に受容可能な塩およびプロドラッグ、ならびに天然に存在するヒトエリスロポエチンの塩、多形体、水和物、溶媒和物、生物学的に活性な断片、生物学的に活性なバリアントおよび立体異性体のプロドラッグだけでなく、天然に存在するヒトエリスロポエチンのアゴニストバリアント、模倣物バリアントおよびアンタゴニストバリアントならびにこれらのポリペプチド融合物を包含する。hEPOポリペプチドおよび模倣物の例としては、参照によって本明細書に援用される米国特許第6,310,078号明細書;米国特許第5,106,954号明細書;米国特許第6,703,480号明細書;米国特許第6,642,353号明細書;米国特許第5,986,047号明細書;および米国特許第5,712,370号明細書に記載されるそれらが挙げられる。アミノ末端、カルボキシル末端またはその両方に追加のアミノ酸を有する融合物は、“hEPOポリペプチド”という用語に包含される。例示的な融合物としては、例えば、メチオニルエリスロポエチン、精製用の融合物(ポリヒスチジンまたはアフィニティーエピトープとの融合物が挙げられる)、血清アルブミン結合ペプチドとの融合物、および血清タンパク質(例えば、血清アルブミン)との融合物が挙げられるが、これらに限定されない。上記メチオニルエリスロポエチンにおいて、メチオニンはhEPOのN末端に連結されている。天然に存在するhEPOの核酸配列およびアミノ酸配列は公知である。本明細書において、天然に存在するhEPOの完全なアミノ酸配列、ならびに成熟した天然に存在するhEPOのアミノ酸配列および成熟したEPOのバリアントは、配列番号37、配列番号38、配列番号39をそれぞれ参照すればよい。いくつかの実施形態において、本発明のhEPOポリペプチドは配列番号37、配列番号38または配列番号39と実質的に同一である。hEPO突然変異体をコードする核酸分子および突然変異のhEPOポリペプチドはよく知られている。hEPO突然変異体の例としては、参照によって本明細書に援用される米国特許第6,489,293号明細書;米国特許第6,153,407号明細書;米国特許第6,048,971号明細書;米国特許第5,614,184号明細書;および米国特許第5,457,089号明細書に記載のそれらが挙げられる。
【0097】
エリスロポエチンまたはhEPOは、その受容体との結合、その受容体を二量体化すること、赤血球産生の刺激、ならびに刺激細胞の増殖を含む種々の生物活性を有している。エリスロポエチンおよびhEPOのいくつかの生物活性の例が、参照によって本明細書に援用される米国特許第6,676,947号明細書;米国特許第6,579,525号明細書;米国特許第6,531,121号明細書;米国特許第6,521,245号明細書;米国特許第6,489,293号明細書;米国特許第6,368,854号明細書;米国特許第6,316,254号;米国特許第6,268,336号明細書;米国特許第6,239,109号明細書;米国特許第6,165,283号明細書;米国特許第5,986,047号;米国特許第5,830,851号明細書;および米国特許第5,773,569号明細書に記載されている。
【0098】
種々の文献に、ポリマー抱合または糖鎖付加によるポリペプチドの修飾について開示されている。“レプチンポリペプチド”という用語は、PEGといったポリマーに対して抱合されるポリペプチドを包含し、システイン残基、リジン残基または他の残基の付加的な誘導体を1つ以上包含し得る。さらに、レプチンポリペプチドは、リンカーまたはポリマーを含み得、ここで、リンカーまたはポリマーが抱合されるアミノ酸が、本発明に係る非天然アミノ酸であり得るか、またはリジンもしくはシステインに対する結合といった当該技術において公知の技術を利用して、天然にコードされるアミノ酸に対して抱合され得る。
【0099】
レプチンポリペプチドのポリマー抱合について報告されており、PEG−OBタンパク質またはレプチンを用いた多くの研究の総説についてK.G.Hofbauer's book pharmacotherapy of Obesity. Options and Alternatives,(2004)におけるセクション16.12に報告されている。4HBポリペプチド用いたポリマー抱合に関して、他の事例が豊富にある。例えば、参照によって本明細書に援用される米国特許第5,849,535号明細書;米国特許第6,136,563号明細書;および米国特許第6,608,183号明細を参照すればよい。天然のIFNβまたはC17sのバリアントのポリマー修飾が、報告されている(参照によって本明細書に援用される欧州特許出願公開第229108号明細書、米国特許第5,382,657号明細書;欧州特許出願公開第593868号明細書;米国特許第4,917,888号明細書;および国際公開第99/55377号パンフレット)。米国特許第4,904,584号明細書には、PEG付加のリジン減少ポリペプチドが開示されている。ここで、タンパク質における少なくとも1つのリジン残基が、欠失されているか、または任意の他のアミノ酸残基に置換されている。国際公開第99/67291号パンフレットには、PEGを用いてタンパク質を抱合する処理について開示されている。ここで、当該タンパク質における少なくとも1つのアミノ酸残基が欠失されており、当該タンパク質に対する抱合を実現するために十分な条件において、当該タンパク質がPEGと接触させられる。国際公開第99/03887号パンフレットには、成長ホルモンスーパーファミリーに属するポリペプチドのPEG付加バリアントが開示されている。ここで、当該ポリペプチドの特定の領域における非必須なアミノ酸が、システイン残基によって置換されている。PEG付加IFNの例としては、参照によって本明細書に援用される米国特許第6,524,570号明細書;米国特許第6,250,469号明細書;米国特許第6,180,096号明細書;米国特許第6,177,074号明細書;米国特許第6,042,822号明細書;米国特許第5,981,709号明細書;米国特許第5,951,974号明細書;米国特許第5,908,621号明細書;米国特許第5,738,846号明細書;米国特許第5,711,944号明細書;米国特許第5,382,657号明細書に開示されているそれらが挙げられる。IFNβは成長ホルモンスーパーファミリーに属するポリペプチドの一例として述べられている。国際公開第00/23114号パンフレットには、糖鎖付加IFNβおよびPEG付加IFNβが開示されている。国際公開第00/23472号パンフレットには、IFNβ融合タンパク質が開示されている。国際公開第00/26354号パンフレットには、付加的な糖鎖付加部位を少なくとも1つ含んでいる糖鎖付加ポリペプチドバリアントであって、対応する親ポリペプチドと比べて、低下したアレルゲン性を有している糖鎖付加ポリペプチドバリアントの製造方法が開示されている。米国特許第5,218,092号明細書には、顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)および他のポリペプチドの修飾について開示されており、当該修飾が、未処理のポリペプチドと比べて少なくとも1つの付加的な炭化水素鎖の導入を可能にしている。米国特許第5,218,092号明細書に記載の技術にしたがって修飾され得る多くのポリペプチドのうちの1つとして、IFNβが開示されている。
【0100】
また、“レプチンポリペプチド”という用語は、当該ポリペプチドのN結合型またはO結合型の糖鎖が付加された形態を包含する。これらの形態としては、配列番号2に存在するアミノ酸配列における任意の位置もしくは配列番号1の対応する位置;または配列番号4に存在するアミノ酸配列における任意の位置もしくは配列番号3の対応する位置にO結合型の糖鎖付加部位を有しているポリペプチドが挙げられるが、これらに限定されない。また、“レプチンポリペプチド”という用語は、糖鎖付加形態のポリペプチド(配列番号2に存在するアミノ酸配列における任意の位置もしくは配列番号1の対応する位置;または配列番号4に存在するアミノ酸配列における任意の位置もしくは配列番号3の対応する位置にO結合型の糖鎖付加部位を有しているポリペプチドが挙げられるが、これらに限定されない)を包含する。また、単一のヌクレオチド変更を含むバリアントは、レプチンポリペプチドの生物学的に活性なバリアントとみなされる。さらに、スプライシングバリアントも含まれる。また、“レプチンポリペプチド”という用語は、レプチンポリペプチドのヘテロダイマー、ホモダイマー、ヘテロマルチマーまたはホモマルチマーを包含する。レプチンポリペプチドのヘテロダイマー、ホモダイマー、ヘテロマルチマーまたはホモマルチマーは、1つ以上の任意のレプチンポリペプチド、および任意の他のポリペプチド、タンパク質、含水炭素、ポリマー、小分子、リガンドもしくは任意の種類の他の生物学的に活性な分子から構成される。レプチンポリペプチドのヘテロダイマー、ホモダイマー、ヘテロマルチマーまたはホモマルチマーを構成する分子は、化学的手法によって連結されるか、または融合タンパク質として発現される。レプチンポリペプチドのヘテロダイマー、ホモダイマー、ヘテロマルチマーまたはホモマルチマーは、例えば、生物活性をまだ維持している特定の欠失または他の修飾を有しているポリペプチド類似物を含み得る。アミノ末端、カルボキシル末端またはその両方に追加のアミノ酸を有している融合物は、“レプチンポリペプチド”という用語に包含される。例示的な融合物としては、例えば、メチオニルレプチン、精製用の融合物(ポリヒスチジンまたはアフィニティーエピトープとの融合物が挙げられる)、血清アルブミン結合ペプチドとの融合物、および血清タンパク質(例えば、血清アルブミン)との融合物が挙げられるが、これらに限定されない。上記メチオニルレプチンにおいて、メチオニンは、分泌シグナルペプチドまたはそれらの一部を欠いているレプチンの成熟形態の組換え発現から生じるhIFNのN末端に連結されている。天然に存在するレプチンの核酸配列の全長およびアミノ酸配列の全長ならびに成熟形態が知られている。また、単一のヌクレオチド変更を含むバリアントは、レプチンの生物学的に活性なバリアントとみなされる。
【0101】
配列番号2、4または任意の他のレプチン配列における位置と対応するアミノ酸位置が、任意の他のレプチン分子(例えば、レプチンの融合体、バリアント、断片など)において容易に同定され得ることを、当業者であれば十分に理解する。例えば、BLASTといった配列整列化プログラムは、配列番号2、4または他のレプチン配列における位置と対応する、タンパク質における特定の位置を整列化および同定するために使用され得る。また、配列番号2、4または任意のレプチン配列を参照して本明細書に記載されているアミノ酸の置換、欠失または付加は、本明細書に記載されているか、または当該技術において公知であるレプチンの融合体、バリアント、断片などにおける対応する位置にある置換、欠失または付加を指すことを意図している。そして、このようなアミノ酸の置換、欠失または付加は、本発明によって明白に包含される。レプチンポリペプチドは、分泌シグナル配列を含み得る。分泌シグナル配列の例としては、原核生物の分泌シグナル配列、真核生物の分泌シグナル配列、細菌発現用の5’が最適化された真核生物の分泌シグナル配列、新規な分泌シグナル配列、ペクチン酸塩リアーゼ分泌シグナル配列、Omp A分泌シグナル配列、およびファージの分泌シグナル配列が挙げられるが、これらに限定されない。分泌シグナル配列の例としては、STII(原核生物)、Fd GIIIおよびM13(ファージ)、Bgl2(酵母)、ならびにトランスポゾンから得られるシグナル配列blaが挙げられるが、これらに限定されない。
【0102】
“レプチンポリペプチド”という用語は、1つ以上のアミノ酸の置換、付加または欠失を有しているレプチンポリペプチドを包含する。本発明のレプチンポリペプチドは、1つ以上の非天然アミノ酸修飾とともに、1つ以上の天然アミノ酸を用いた修飾を含み得る。天然に存在するレプチンポリペプチドにおける多種多様なアミノ酸位置における例示的な置換が記載されている。当該置換としては、レプチンポリペプチドの1つ以上の生物活性を調節する置換が挙げられるが、これに限定されない。レプチンポリペプチドの1つ以上の生物活性を調節する置換としては、例えばアゴニスト活性を増強させる置換、ポリペプチドの溶解性を向上させる置換、ポリペプチドをアンタゴニストに転換する置換であるが、これらに限定されない。これらの置換を含むレプチンポリペプチドが、“レプチンポリペプチド”という用語に包含される。また、“レプチンポリペプチド”という用語は、薬学的に受容可能な塩およびプロドラッグ、ならびに天然に存在するレプチンの塩、多形体、水和物、溶媒和物、生物学的に活性な断片、生物学的に活性なバリアントおよび立体異性体のプロドラッグだけでなく、天然に存在するレプチンのアゴニストバリアント、模倣物バリアントおよびアンタゴニストバリアントならびにこれらのポリペプチド融合物を包含する。アミノ末端、カルボキシル末端またはその両方に追加のアミノ酸を有する融合物は、“レプチンポリペプチド”という用語に包含される。例示的な融合物としては、例えば、メチオニル成長ホルモン、精製用の融合物(ポリヒスチジンまたはアフィニティーエピトープとの融合物が挙げられる)、血清アルブミン結合ペプチドとの融合物、および血清タンパク質(例えば、血清アルブミン)との融合物が挙げられるが、これらに限定されない。上記メチオニル成長ホルモンにおいて、メチオニンは組換え発現から生じるレプチンのN末端に対して連結されている。
【0103】
1−3(N末端)、4−26(Aヘリックス)、27−50(AヘリックスとBヘリックスとの間の領域であるA−Bループ)、51−67(Bヘリックス)、68−70(BヘリックスとCヘリックスとの間の領域であるB−Cループ)、71−93(Cヘリックス)、94−120(CヘリックスとDヘリックスとの間の領域であるC−Dループ)、121−142(Dヘリックス)、143−146(C末端)は、配列番号2または配列番号1にコードされる対応するアミノ酸に由来する。いくつかの実施形態において、天然にコードされていないアミノ酸の1つ以上は、レプチンにおける以下の二次構造に対する以下の領域:配列番号4または配列番号3にコードされる対応するアミノ酸に由来する1−4(N末端)、5−27(Aヘリックス)、28−51(AヘリックスとBヘリックスとの間の領域であるA−Bループ)、52−68(Bヘリックス)、69−71(BヘリックスとCヘリックスとの間の領域であるB−Cループ)、72−94(Cヘリックス)、95−121(CヘリックスとDヘリックスとの間の領域であるC−Dループ)、122−143(Dヘリックス)、144−148(C末端)の1つ以上における任意の位置に組み込まれている。
【0104】
いくつかの実施形態において、レプチンアンタゴニストは、レプチンをアンタゴニストとして機能させる以下の領域:配列番号2に由来する1−3(N末端)、4−26(Aヘリックス)、27−50(AヘリックスとBヘリックスとの間の領域であるA−Bループ)、51−67(Bヘリックス)、68−70(BヘリックスとCヘリックスとの間の領域であるB−Cループ)、71−93(Cヘリックス)、94−120(CヘリックスとDヘリックスとの間の領域であるC−Dループ)、121−142(Dヘリックス)、143−146(C末端)の領域、または配列番号4に由来する1−4(N末端)、5−27(Aヘリックス)、28−51(AヘリックスとBヘリックスとの間の領域であるA−Bループ)、52−68(Bヘリックス)、69−71(BヘリックスとCヘリックスとの間の領域であるB−Cループ)、72−94(Cヘリックス)、95−121(CヘリックスとDヘリックスとの間の領域であるC−Dループ)、122−143(Dヘリックス)、144−148(C末端)の領域に少なくとも1つの置換を含んでいる。他の実施形態において、レプチンポリペプチドにおける天然にコードされていないアミノ酸配列の例示的な組込み部位としては、ヘリックスAのアミノ末端領域およびヘリックスCの部分に含まれる残基が挙げられる。別の実施形態において、(1)配列番号2に由来する120位および/または121位のアミノ酸、または(2)配列番号4に由来する121位および/または122位のアミノ酸は、p−アジド−L−フェニルアラニンまたはO−プロパルギル−L−チロシンといった天然にコードされていないアミノ酸と置換される。他の実施形態において、上記置換は、レプチンポリペプチドをレプチンアンタゴニストにする付加的な置換と組合せられる。いくつかの実施形態において、レプチンアンタゴニストは、レプチン分子の受容体結合領域に存在しており、水溶性ポリマーと連結されている天然にコードされていないアミノ酸を含んでいる。
【0105】
いくつかの実施形態において、レプチンポリペプチドは、レプチンポリペプチドの生物活性を調節する付加、置換または欠失をさらに含んでいる。例えば、上記付加、置換または欠失は、レプチンポリペプチド受容体に対する親和性を調節するか、受容体ダイマー形成を調節するか(増強または低減が挙げられるが、これらに限定されない)、受容体ダイマーを安定化するか、循環半減期を調節するか、治療半減期を調節するか、ポリペプチドの安定性を調節するか、投与量を調節するか、放出もしくは生物学的利用性を調節するか、精製を容易にするか、または特定の投与経路の改善もしくは変更し得る。同様に、レプチンポリペプチドは、プロテアーゼ切断配列、反応性基、抗体結合ドメイン(FLAGもしくはポリ−Hisが挙げられるが、これらに限定されない)もしくは他の親和性に基づく配列(FLAG、ポリ−His、GSTなどが挙げられるがこれらに限定されない)または連結分子(これに限定されないがビオチン)を含み得る。当該連結分子は、検出を向上させる分子(これに限定されないがGFP)、精製もしくは他のポリペプチドの特色を向上させる分子である。
【0106】
また、“レプチンポリペプチド”という用語は、連結されているホモダイマー、ヘテロダイマー、ホモマルチマーおよびヘテロマルチマー(天然にコードされていないアミノ酸の側鎖を介して直接的、またはリンカーを介して間接的に連結されているこれらが挙げられるが、これらに限定されない)を包含する。ここで、これらが直接的に連結される場合、天然にコードされていないアミノ酸の側鎖は、天然アミノ酸の側鎖、または同じか、もしくは異なる天然にコードされていないアミノ酸の側鎖に対して連結されている。例示的なリンカーとしては、ポリ(エチレングリコール)もしくはポリデキストランといった水溶性ポリマー、またはポリペプチドが挙げられるが、これらに限定されない。
【0107】
“天然にコードされていないアミノ酸”は、一般的な20のアミノ酸の1つ、ピロールリジンまたはセレノシステインではないアミノ酸を指す。“天然にコードされていないアミノ酸”という用語と同意語として使用される他の当該用語は、“非天然アミノ酸(non-natural amino acid)”、“非天然アミノ酸(unnatural amino acid)”、“天然に存在しないアミノ酸”、ならびに種々のこれらのハイフンで結んだ様式およびハイフンで結んでいない様式である。また、“天然にコードされていないアミノ酸”という用語は、天然にコードされるアミノ酸(一般的な20のアミノ酸、ピロールリジンまたはセレノシステインが挙げられるが、これらに限定されない)の修飾(例えば、翻訳後修飾)によって生じるが、翻訳複合体によって伸張するポリペプチド鎖に天然には組み込まれないアミノ酸を包含するが、これらに限定されない。当該天然にコードされていないアミノ酸の例としては、N−アセチルグルコサミニル−L−セリン、N−アセチルグルコサミニル−L−スレオニン、およびO−ホスホチロシンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0108】
“アミノ末端修飾基”は、ポリペプチドのアミノ末端に結合され得る任意の分子を指す。同様に、“カルボキシル末端修飾基”は、ポリペプチドのカルボキシル末端に対して結合され得る任意の分子を指す。末端修飾基としては、種々の水溶性ポリマー、ペプチドまたはタンパク質(例えば、血清アルブミン、またはペプチドの血中半減期を増加させる他の分子)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0109】
“官能基”、“活性部分”、“活性化基”、“切断基”、“反応性部分”、“化学反応性基”、および“化学反応性部分”という用語は、当該技術において用いられており、本明細書において、ある分子における明確に識別可能な部分または単位を指す。当該用語は、化学の分野において幾分同義語であり、本明細書において、いくつかの機能もしくは活性を担い、他の分子と反応性を示す分子の部分を指すために用いられる。
【0110】
本明細書において使用されるとき“連結”または“リンカー”という用語は、通常、化学反応の結果として形成されるグループまたは結合を指し、典型的には共有結合を指す。加水分解に安定な結合とは、長期間(おそらく永久にでさえ)にわたって、生理学的環境において当該結合が水において実質的に安定であり、有用なpH値において水と反応しないことを意味する。加水分解に不安定な結合または分解可能な結合とは、当該結合が水または水性溶液(例えば、血液が挙げられる)において分解可能であることを意味する。酵素的に不安定な結合または分解可能な結合とは、当該結合が1つ以上の酵素によって分解され得る結合であることを意味する。PEGおよび関連するポリマーが、ポリマー骨格、またはポリマー骨格とポリマー分子の1つ以上の末端官能基との間のリンカー基における分解可能な結合を含み得ることは、当該技術分野において理解されている。例えば、PEGカルボキシル酸または活性化されたPEGカルボキシル酸と、生物学的に活性な作用物におけるアルコール基との反応によって形成されるエステル結合は、一般に、当該作用物を放出するための生物学的環境において加水分解する。他の加水分解可能な結合は、これらに限定されないが、炭酸結合;アミンとアルデヒドとの反応から生じるイミン結合;アルコールとリン酸基との反応によって形成されるリン酸エステル結合;ヒドラジドおよびアルデヒドの反応産物であるヒドラゾン結合;アルデヒドとアルコールとの反応産物であるアセタール結合;ギ酸とアルコールとの反応産物であるオルトエステル結合;アミン基によって形成されるペプチド結合(これらに限定されないが、PEGといったポリマーの末端における結合);およびホスホラミダイト基におって形成されるオリゴヌクレオチド結合(オリゴヌクレオチドの5’ヒドロキシル基が挙げられるが、これに限定されない)が挙げられる。
【0111】
本明細書において使用される場合に、“生物学的に活性な分子”、“生物学的に活性な部分”または“生物学的に活性な作用物”という用語は、生体(ウイルス、細菌、菌類、植物、動物およびヒトが挙げられるが、これらに限定されない)の任意の物理的または生化学的な特性に影響を及ぼし得る、任意の物質を意味する。特に、本明細書に使用されるときの、生物学的に活性な分子としては、ヒトもしくは他の動物における疾患の診断、治療、鎮静、処置もしくは予防、またはそうでなければヒトまたは他の動物の肉体的もしくは精神的な健康を増進することを対象にした任意の物質が挙げられるが、これらに限定されない。生物学的に活性な分子の例としては、ペプチド、タンパク質、酵素、小分子薬、色素、脂質、ヌクレオシド、オリゴヌクレオチド、細胞、ウイルス、リポソーム、微小粒子、およびミセル体が挙げられるが、これらに限定されない。本発明をともなった使用に好適な生物学的に活性な作用物の分類としては、抗生物質、殺真菌剤、抗ウイルス薬、抗炎症誘発因子、抗腫瘍薬、心血管作動薬、抗不安薬、ホルモン、成長因子、ステロイド剤などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0112】
“二官能性ポリマー”は、他の部分と特異的に反応して、共有的または非共有的な結合を形成可能な2つの別個の官能基を含んでいるポリマーを指す。当該部分としては、アミノ酸側鎖基が挙げられるが、これに限定されない。二官能性リンカーは、特定の生物学的に活性な成分における官能基との反応性を示す1つの官能基、および第2の生物学的成分における官能基と反応性を示す他の官能基を有している。よって、当該二官能性リンカーは、第1の生物活性成分、二官能性リンカーおよび第2の生物活性成分を包含する抱合物の形成に使用され得る。ペプチドに対して種々の化合物を結合させる多くの手法およびリンカー分子が知られている。例えば、参照によって本明細書に援用される、欧州特許出願公開第188,256号明細書;米国特許第4,671,958号明細書、米国特許第4,659,839号明細書、米国特許第4,414,148号明細書、米国特許第4,699,784号明細書;米国特許第4,680,338号明細書;米国特許第4,569,789号明細書;および米国特許第4,589,071号明細書を参照すればよい。“多官能性リンカー”は、他の部分と特異的に反応して、共有的または非共有的な結合を形成可能な2つ以上の別個の官能基を備えるポリマーを指す。当該部分としては、これに限定されないが、アミノ酸側鎖基が挙げられる。
【0113】
置換基が左から右に書かれる従来の化学式によって特定される場合に、それらは、右から左に構造を記載することによって生じる化学的に同一な置換基を等しく包含する(例えば、構造−CH
2O−は構造−OCH
2−と等価である)。
【0114】
“置換基”という用語は、“非干渉性の置換基”を包含するが、これに限定されない。“非干渉的な置換基”は、安定な化合物を生じるこれらの基である。安定な非干渉的な置換基またはラジカルとしては、ハロ、C
1−C
10アルキル、C
2−
10アルケニル、C
2−
10アルキニル、C
1−C
10アルコキシ、C
1−C
12アラルキル、C
1−C
12アルカリル、C
3−C
12シクロアルキル、C
3−C
12シクロアルケニル、フェニル、置換フェニル、トルオイル、キシレニル、ビフェニル、C
2−C
12アルコキシアルキル、C
2−C
12アルコキシアリール、C
7−C
12アリールオキシアルキル、C
7−C
12オキシアリール、C
1−C
6アルキルスルフィニル、C
1−C
10アルキルスルフォニル、−−(CH
2)
m−−O−−(C
1−C
10アルキル)(ここで、mは1から8である)、アリール、置換アリール、置換アルコキシ、フルオロアルキル、ヘテロ環ラジカル、置換ヘテロ環ラジカル、ニトロアルキル、−−NO
2、−−CN、−−NRC(O)−−(C
1−C
10アルキル)、−−C(O)−−(C
1−C
10アルキル)、C
2−C
10アルキルチオアルキル、−−C(O)O−−(C
1−C
10アルキル)、−−OH、−−SO
2、=S、−−COOH、−−NR
2、カルボニル、−−C(O)−−(C
1−C
10アルキル)−CF3、−−C(O)−CF3、−−C(O)NR2、−−(C
1−C
10アリール)−S−−(C
6−C
10アリール)、−−C(O)−−(C
1−C
10アリール)、−−(CH
2)
m−−O−−(−−(CH
2)
m−−O−−(C
1−C
10アルキル)(ここで、mのそれぞれは1から8までである)、−−C(O)NR
2、−−C(S)NR
2、−−SO
2NR
2、−−NRC(O)NR
2、−−NRC(S)NR
2、これらの塩などが挙げられるが、これらに限定されない。本明細書において使用されるときに、Rのそれぞれは、H、アルキルもしくは置換アルキル、アリールもしくは置換アリール、アラルキル、またはアルカリルである。
【0115】
“ハロゲン”という用語は、フッ素、塩素、ヨウ素、および臭素を含む。
【0116】
それ自身によってか、または他の置換基の一部として“アルキル”という用語は、特に断りがない限り、完全に飽和され得るか、一価不飽和され得るか、または多価不飽和され得る、直鎖状もしくは分枝状の鎖、または環状炭化水素ラジカル、またはこれらの組合せを意味し、所望の炭素原子数(すなわち、C
1−C
10は1から10の炭素を意味する)を有している2価または多価のラジカルを含み得る。飽和炭化水素ラジカルの例としては、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、t−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、シクロヘキシル、(シクロヘキシル)メチル、シクロプロピルメチル、例えばn−ペンチル、n−ヘキシル、n−ヘプチル、およびn−オクチルなどの、類似物および異性体といった基が挙げられるが、これらに限定されない。不飽和アルキル基は1つ以上の2重結合または3重結合を有するアルキル基である。不飽和アルキル基の例としては、ビニル、2−プロペニル、クロチル、2−イソペンテニル、2−(ブタジエニル)、2,4−ペンタジエニル、3−(1,4−ペンタジエニル)、エチニル、1−および3−プロピニル、3−ブチニル、ならびにより高級な類似物および異性体が挙げられるが、これらに限定されない。また、“アルキル”という用語は、特に断りがない限り、“ヘテロアルキル”といった以下においてより詳細に定義づけされるアルキルの誘導体を含むことを意図している。炭化水素基に限定されるアルキル基は、“ホモアルキル”と称される。
【0117】
それ自身によってか、または他の置換基の一部として“アルキレン”という用語は、構造−CH
2CH
2−および−CH
2CH
2CH
2CH
2−によって例示されるような、アルカンから得られる2価のラジカルを意味し、“ヘテロアルキル”として以下に記載されているこれらの基をさらに包含するが、これらに限定されない。典型的に、アルキル(またはアルキレン)基は、1から24の炭素原子を有しており、本発明においてこれらの基は、10以下の炭素原子を有するものであることが好ましい。“低級アルキル”または“低級アルキレン”は、8以下の炭素原子を一般的に有している、より短い鎖状のアルキル基またはアルキレン基である。
【0118】
“アルコキシ”、“アルキルアミノ”および“アルキルチオ”(またはチオアルコキシ)という用語は、それらの従来の意味において使用され、酸素原子、アミノ基、または硫黄原子をそれぞれ介して分子の残余部分に対して連結されているこれらのアルキル基を指す。
【0119】
それ自身によってか、または他の用語との組合せにおいて、“ヘテロアルキル”という用語は、特に断りがない限り、一定の数の炭素原子、ならびにO、N、SiおよびSからなる群から選択される少なくとも1つの異種原子(ここで、窒素原子および硫黄原子は任意に酸化され、窒素異種原子は任意に4級化される)から構成される安定な直鎖状、分枝鎖状、または環状の炭化水素ラジカルを意味する。(複数の)異種原子であるO、NおよびSおよびSiは、ヘテロアルキル基の任意の内部位置、またはアルキル基が分子の残余部に対して連結される位置に配置され得る。例としては、−CH
2−CH
2−O−CH
3、−CH
2−CH
2−NH−CH
3、−CH
2−CH
2−N(CH
3−)CH
3、−CH
2−S−CH
2−CH
3、−CH
2−CH
2−S(O)−CH
3、−CH
2−CH
2−S(O)
2−CH
3、−CH=CH−O−CH
3、−Si(CH
3)
3、−CH
2−CH=N−OCH
3および−CH=CH−N(CH
3)−CH
3が挙げられるが、これらに限定されない。最大で2つの異種原子が、例えば、−CH
2−NH−OCH
3および−CH
2−O−Si(CH
3)
3といったように連続し得る。同様に、それ自身によってか、または他の置換基の一部として、“ヘテロアルキレン”という用語は、−CH
2−CH
2−S−CH
2−CH
2−および−CH
2−S−CH
2−CH
2−NH−CH
2−に例示されるような、ヘテロアルキルから得られる2価のラジカルを意味するが、これらに限定されない。また、ヘテロアルキレン基に関して、同じかまたは異なる異種原子は、鎖の末端のいずれかまたは両方を占有し得る(これらに限定されないが、アルキレンオキシ、アルキレンジオキシ、アルキレンアミノ、アルキレンジアミノ、およびアミノオキシアルキレンなどが挙げられる)。また、アルキレン連結基およびへテロアルキレン連結基に関して、連結基の方向は、連結基の式が書かれている方向によって意味されない。例えば、式−C(O)
2R’は、−C(O)
2R’およびR’C(O)
2−の両方を意味する。
【0120】
それら自身によってか、または他の用語との組合せにおいて、“シクロアルキル”および“ヘテロシクロアルキル”という用語は、特に断りがない限り、“アルキル”および“ヘテロアルキル”ぞれぞれの環状の型を表す。したがって、シクロアルキルまたはヘテロシクロアルキルは、飽和環結合および不飽和の環結合を含んでいる。さらに、ヘテロシクロアルキルに関して、異種原子は、複素環が分子の残余部に対して連結されている位置を占有し得る。シクロアルキルの例としては、シクロペンチル、シクロヘキシル、1−シクロヘキセニル、3−シクロヘキセニル、およびシクロヘプチルなどが挙げられるが、これらに限定されない。ヘテロシクロアルキルの例としては、1−(1,2,5,6−テトラヒドロピリジル)、1−ピペリジニル、2−ピペリジニル、3−ピペリジニル、4−モルホリニル、3−モルホリニル、テトラヒドロフラン−2−イル、テトラヒドロフラン−3−イル、テトラヒドロチエン−2−イル、テトラヒドロチエン−3−イル、1−ピペラジニル、および2−ピペラジニルなどが挙げられるが、これらに限定されない。さらに、当該用語は、二環式環構造および三環式環構造を包含する。同様に、それ自身によってか、または他の置換基の一部として、“ヘテロシクロアルキレン”という用語は、ヘテロシクロアルキルから得られる2価のラジカルを意味し、それ自身によってか、または他の置換基の一部として、“シクロアルキレン”という用語は、シクロアルキルから得られる2価のラジカルを意味する。
【0121】
本明細書において使用されるときに、“水溶性ポリマー”という用語は、水性溶媒に可溶性を示す任意のポリマーを指す。レプチンポリペプチドに対する水溶性ポリマーの連結は、変化(非修飾形態と比べて増強されたかもしくは調節された血中半減期または増強されたかもしくは調節された治療半減期、調節された免疫原性、調節された物理的な会合特性(例えば、凝集および多量体形成)、変更された受容体結合、ならびに変更された二量体化もしくは多量体化が挙げられるが、これらに限定されない)を生じ得る。水溶性ポリマーは、特有の生物活性を有し得るか、または有し得ない。好適なポリマーとしては、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールプロピオンアルデヒド、モノC1−C10アルコキシ誘導体もしくはモノC1−C10アリールオキシ誘導体(参照によって本明細書に援用される米国特許第5,252,714号明細書に記載されている)、モノメトキシポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリアミノ酸、ジビニルエーテルマレイン酸無水物、N−(2−ヒドロキシプロピル)−メタクリルアミド、デキストラン、デキストラン誘導体(硫化デキストランが挙げられる)、ポリプロピレングリコール、ポリプロピレンオキシド/エチレンオキシドコポリマー、ポリオキシエチル化ポリオール、ヘパリン、ヘパリン断片、多糖、オリゴ糖、グリカン、セルロースおよびセルロース誘導体(これらに限定されないが、メチルセルロースおよびカルボキシメチルセルロースが挙げられる)、スターチおよびスターチ誘導体、ポリペプチド、ポリアルキレングリコールおよびこれらの誘導体、ポリアルキレングリコールおよびこれらの誘導体、ポリビニルエチルエーテル、ならびにアルファ−ベータ−ポリ[(2−ヒドロキシエチル)−DL−アスパルトアミドなどのコポリマー、あるいはこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。当該水溶性ポリマーの例としては、ポリエチレングリコールおよび血清アルブミンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0122】
本明細書において使用されるときに、“ポリアルキレングリコール”または“ポリ(アルキレングリコール)”という用語は、ポリエチレングリコール(ポリ(エチレングリコール))、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール、およびこれらの誘導体を指す。“ポリアルキレングリコール”という用語は、0.1kDaから100kDaの間の平均分子量を有している、直鎖状および分枝状のポリマーの両方を包含する。他の例示的な実施形態は、例えば、株式会社シェアーウォーター(Shearwater)のカタログ“Polyethylene Glycol and Derivatives for Biomedical Applications”(2001)といった商業的な業者のカタログに挙げられている。
【0123】
“アリール”という用語は、特に断りがない限り、ともに融合されるか、または共有的に結合される単環または多環(1から3つの環が挙げられるが、これらに限定されない)であり得る、多価不飽和の芳香族炭化水素置換基を意味する。“ヘテロアリール”という用語は、N、O、およびSから選択される1から4つの異種原子を含んでいるアリール基(または環)を指す。ここで、窒素原子および硫黄原子は任意に酸化され、(複数の)窒素原子は任意に4級化されている。ヘテロアリール基は、異種原子を介して分子の残余部に対して連結され得る。アリール基またはヘテロアリール基の非限定的な例としては、フェニル、1−ナフチル、2−ナフチル、4−ビフェニル、1−ピロリル、2−ピロリル、3−ピロリル、3−ピラゾリル、2−イミダゾリル、4−イミダゾリル、ピラジニル、2−オキサゾリル、4−オキサゾリル、2−フェニル−4−オキサゾリル、5−オキサゾリル、3−イソキサゾリル、4−イソキサゾリル、5−イソキサゾリル、2−チアゾリル、4−チアゾリル、5−チアゾリル、2−フリル、3−フリル、2−チエニル、3−チエニル、2−ピリジル、3−ピリジル、4−ピリジル、2−ピリミジル、4−ピリミジル、5−ベンゾチアゾリル、プリニル、2−ベンズイミダゾリル、5−インドリル、1−イソキノリル、5−イソキノリル、2−キノキサリニル、5−キノキサリニル、3−キノリル、および6−キノリルが挙げられる。上述のアリール環系およびヘテロアリール環系のそれぞれに関する置換基は、以下に記載される受容可能な置換基の群から選択される。
【0124】
簡潔に言うと、他の用語との組合せにおいて使用される場合の、“アリール”という用語(アリールオキシ、アリールチオキシ、アリールアルキルが挙げられるが、これらに限定されない)は、上記定義づけのようなアリール環およびヘテロアリール環の両方を包含する。したがって、“アリールアルキル”という用語は、アリール基がアルキル基に対して連結されている、これらのラジカル(ベンジル、フェネチル、およびピリジルメチルなどが挙げられるが、これらに限定されない)であって、当該アルキル基が、炭素原子が例えば、酸素原子によって置換されているこれらのアルキル基(メチレン基が挙げられるが、これに限定されない)を含んでいるこれらのラジカル(フェノキシメチル、2−ピリジルオキシメチル、および3−(1−ナフチルオキシ)プロピルなどが挙げられるが、これらに限定されない)を包含することを意図している。
【0125】
上述の用語のそれぞれ(“アルキル”、“ヘテロアルキル”、“アリール”および“ヘテロアリール”が挙げられるが、これらに限定されない)は、示されているラジカルの置換形態および非置換形態の両方を包含することを意図している。それぞれの種類のラジカルにとっての例示的な置換基が以下に規定される。
【0126】
アリールラジカルおよびへテロアリールラジカル(アルキレン、アルケニル、ヘテロアルキレン、ヘテロアルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、シクロアルケニル、およびへテロシクロアルケニルとしばしば呼ばれるこれらの基が挙げられる)にとっての置換基は、0から(2m’+1)の範囲の数における(ここで、m’は当該ラジカルにおける炭素原子の総数である)、−OR’、=O、=NR’、=N−OR’、−NR’R’’、−SR’、−ハロゲン、−SiR’R’’R’’’、−OC(O)R’、−C(O)R’、−CO
2R’、−CONR’R’’、−OC(O)NR’R’’、−NR’’C(O)R’、−NR’−C(O)NR’’R’’’、−NR’’C(O)
2R’、−NR−C(NR’R’’R’’’)=NR’’’’、−NR−C(NR’R’’)=NR’’’、−S(O)R’、−S(O)
2R’、−S(O)
2NR’R’’、−NRSO
2R’、−CNおよび−NO
2から選択される多様な群の1つ以上であり得るが、これらに限定されない。R’、R’’、R’’’およびR’’’’はそれぞれ独立して、水素、置換もしくは非置換のヘテロアルキル、置換もしくは非置換のアリール(1−3のハロゲンに置換されたアリールが挙げられるが、これに限定されない)、置換もしくは非置換のアルキル、アルコキシもしくはチオアルコキシ基、またはアリールアルキル基を指す。本発明の化合物が1つ以上のR基を含む場合に、例えば、R基はそれぞれ独立して、1つ以上のこれらの基が存在する場合に、R’、R’’、R’’’およびR’’’’基のそれぞれであるように、選択される。R’およびR’’が、同じ窒素原子に連結される場合に、それらは、5−、6−、7−員環を形成するために窒素原子と組み合せられ得る。例えば、−NR’R’’は、1−ピロリジニルおよび4−モルホリニルを含むことを意図しているが、これらに限定されない。置換基の上述の議論から、当業者は、“アルキル”という用語が、水素基以外の基(例えば、ハロアルキル基(−CF
3および−CH
2CF
3が挙げられるが、これらに限定されない)およびアシル(−C(O)CH
3、−C(O)CF
3、および−C(O)CH
2OCH
3などが挙げられるが、これらに限定されない))に対して結合される炭素原子を含むことを意図していることを理解する。
【0127】
アルキルラジカルに関して記載される置換基と同様に、アリール基およびへテロアリール基にとっての置換基は、変更され、0から芳香族環系における空いている原子価の総数の範囲の数において、ハロゲン、−OR’、=O、=NR’、=N−OR’、−NR’R’’、−SR’、−ハロゲン、−SiR’R’’R’’’、−OC(O)R’、−C(O)R’、−CO
2R’、−CONR’R’’、−OC(O)NR’R’’、−NR’’C(O)R’、−NR’−C(O)NR’’R’’’、−NR’’C(O)
2R’、−NR−C(NR’R’’R’’’)=NR’’’’、−NR−C(NR’R’’)=NR’’’、−S(O)R’、−S(O)
2R’、−S(O)
2NR’R’’、−NRSO
2R’、−CNおよび−NO
2、−R’、−N
3、−CH(Ph)
2、フルオロ(C
1−C
4)アルコキシ、ならびにフルオロ(C
1−C
4)アルキルから選択されるが、これらに限定されない。ここで、R’、R’’、R’’’およびR’’’’が独立して、水素、アルキル、ヘテロアルキル、アリールおよびヘテロアリールから選択される。本発明の化合物が、1つ以上のR基を含む場合に、例えば、R基のそれぞれは独立して、1つ以上のこれらの基が存在する場合に、R’、R’’、R’’’およびR’’’’のそれぞれであるように、選択される。
【0128】
本明細書において使用されるときに、“調節された血中半減期”という用語は、その非修飾形態に比べて、修飾された生物学的に活性な分子の循環半減期における正または負の変化を意味する。血中半減期は、生物学的に活性な分子の投与後における種々の時点において血液試料を採取すること、および試料のそれぞれにおける分子の濃度を決定することによって測定される。時間と血清濃度との相関関係によって、血中半減期の算出が可能になる。増強された血中半減期は、少なくとも約2倍を好ましく有するが、例えば、十分な投与計画を可能にするか、または毒作用を避ける場合には、より小さな増強が有用であり得る。いくつかの実施形態において、増強は少なくとも約3倍、少なくとも約5倍または少なくとも約10倍である。
【0129】
本明細書において使用されるときに、“調節された治療半減期”という用語は、その非修飾形態に比べて、治療有効量の修飾された生物学的に活性な分子の半減期における正または負の変化を意味する。治療半減期は、投与後における種々の時点において分子の薬物動態特性および/または薬理学的特性を測定することによって測定される。増強された治療半減期は、特に利益をもたらす投与計画または特に利益をもたらす総投与量を好ましく可能にするか、または好ましくない影響を好ましく回避する。いくつかの実施形態において、増強された治療半減期は、増強された有効性、修飾された分子のその標的に対する増強されたかもしくは低減された結合、または非修飾分子の作用の他の要素もしくは機作の増強もしくは減弱を生じる。
【0130】
核酸またはタンパク質に対して適用される場合に“単離された”という用語は、核酸またはタンパク質が、天然の状態において会合される他の細胞性構成要素から遊離していることを表す。それは、均質な状態にあり得る。単離された物質は、乾燥状態もしくは半乾燥状態、または溶液(水性溶液が挙げられるが、これに限定されない)内のいずれかにあり得る。純度および均質性は、ポリアクリルアミドゲル電気泳動または高速液体クロマトグラフィーといった分析化学的技術を用いて、典型的に決定される。調製物に存在する優勢種であるタンパク質は、実質的に精製されている。特に、単離された遺伝子は、遺伝子に隣接し、所定の遺伝子以外のタンパク質をコードするオープンリーディングフレームから分離されている。“精製されている”という用語は、核酸またはタンパク質が電気泳動ゲルにおいて実質的に1つのバンドを生じることを表す。特に、それは、核酸またはタンパク質が、少なくとも85%の純度、少なくとも90%の純度、少なくとも95%の純度、少なくとも99%かそれ以上の純度であることを意味し得る。
【0131】
“核酸”という用語は、1本鎖の形態または2本鎖の形態のいずれかにおける、デオキシリボヌクレオチド、デオキシリボヌクレオシド、リボヌクレオシド、またはリボヌクレオチド、ならびにこれらのポリマーを指す。特に断りがない限り、当該用語は、基準の核酸と同様の結合特性を有しており、天然に存在するヌクレオチドと同様の様式において代謝される天然ヌクレオチドの公知の類似物を含んでいる核酸を包含する。また、特に断りがない限り、当該用語は、オリゴヌクレオチド類似物(PNA(ペプチド核酸)、アンチセンス技術において使用されるDNAの類似物(ホスホロチオエート、およびホスホロアミデートなど)が挙げられる)を指す。また、特に断りがない限り、特定の核酸配列は、これらの保存的に修飾されたバリアント(変性コドン置換が挙げられるが、これに限定されない)および相補的な配列、これらと同様に明確に示されている配列を暗に包含する。特に、変性コドン置換は、1つ以上の選択された(またはすべての)コドンの3番目の位置が、混合塩基および/またはデオキシイノシン残基に置換される配列を生成することによって達成され得る(Batzer et al., Nucleic Acid Res. 19:5081 (1991); Ohtsuka et al., J. Biol. Chem. 260:2605-2608 (1985) ;Rossolini et al., Mol. Cell. Probes 8:91-98 (1994))。
【0132】
“ポリペプチド”、“ペプチド”および“タンパク質”という用語は、本明細書において交換可能に使用されて、アミノ酸残基のポリマーを指す。すなわち、ポリペプチドを対象とする記載は、ペプチドの記載およびタンパク質の記載に等しく適用され、逆の場合も同様である。当該用語は、天然に存在するアミノ酸ポリマーおよび1つ以上の残基が天然にコードされていないアミノ酸であるアミノ酸ポリマーに対して適用される。本明細書において使用されるときに、当該用語は、任意の長さ(全長のタンパク質(例えば抗原)が挙げられる)のアミノ酸鎖を包含し、ここでアミノ酸残基は、共有的なペプチド結合によって連結されている。
【0133】
“アミノ酸”という用語は、天然に存在するアミノ酸および天然に存在しないアミノ酸、ならびに天然に存在するアミノ酸と類似の様式に機能するアミノ酸類似物およびアミノ酸模倣物を指す。天然にコードされるアミノ酸は、一般的な20のアミノ酸(アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン、グルタミン酸、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、スレオニン、トリプトファン、チロシン、およびバリン)およびピロールリジンおよびセレノシステインである。アミノ酸類似物は、天然に存在するアミノ酸と同じ基本の化学構造を有する化合物(すなわち、水素、カルボキシル基、アミノ基、およびR基(例えば、ホモセリン、ノルロイシン、メチオニンスルフォキシド、メチオニンメチルスルフォニウム)に対して結合されているα炭素)を指す。当該類似物は、修飾されたR基(例えば、ノルロイシン)または修飾されたペプチド骨格を有するが、天然に存在するアミノ酸と同じ基本の化学構造を維持している。
【0134】
アミノ酸は、本明細書において、国際純正および応用化学連合−国際生化学連合生化学命名委員会によって推奨される、一般的に知られる3文字表記、または1文字表記のいずれかによって示される。同様に、ヌクレオチドは、それらの一般的に受け容れられている1文字符号によって示される。
【0135】
“保存的に修飾されたバリアント”は、アミノ酸配列および核酸配列の両方に対して適用される。特定の核酸配列に関して、“保存的に修飾されたバリアント”は、同一もしくは本質的に同一なアミノ酸配列をコードしているか、または核酸がアミノ酸配列をコードしない場合に実質的に同一な、それらの核酸を指す。遺伝暗号の縮重のために、非常に多数の機能的に同一な核酸が、所定のタンパク質のいずれかをコードする。実際に、コドンGCA、GCC、GCGおよびGCUのすべては、アミノ酸のアラニンをコードする。したがって、アラニンがコドンによって特定されるすべての位置において、コドンは、コードされるポリペプチドを変更せずに、記載されている対応するコドンのうちいずれかのコドンに変更され得る。このような核酸の変異は、保存的に修飾される変異の1種である、“サイレント変異である”。また、ポリペプチドをコードする本明細書におけるすべての核酸配列は、核酸のすべての見込みのあるサイレント変異について説明している。当業者は、核酸におけるコドンのそれぞれ(通常、メチオニンに対する唯一のコドンであるAUG、および通常、トリプトファンに対する唯一のコドンであるTGGを除いて)が修飾されて、機能的に同一な分子を産生し得ることを認識する。したがって、ポリペプチドをコードする核酸のサイレント変異のそれぞれは、記載されている配列のそれぞれにおいて暗に示されている。
【0136】
アミノ酸配列については、当業者は、コードされるアミノ酸における単一のアミノ酸または低い割合のアミノ酸を変更するか、付加するかもしくは欠失する核酸配列、ペプチド配列、ポリペプチド配列またはタンパク質配列に対する個々の置換、欠失または付加が、変更が化学的に類似のアミノ酸とのアミノ酸の置換を結果として生じる場合に、“保存的に修飾されるバリアント”であることを認識する。機能的に類似のアミノ酸を規定する保存的な置換の表は、当業者に公知である。当該保存的に修飾されたバリアントは、加えて、本発明の多形バリアント、種間相同物、および対立因子を除外しない。
【0137】
以下の8つの群のそれぞれ:
(1)アラニン(A)、グリシン(G);
(2)アスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E);
(3)アスパラギン(N)、グルタミン(Q);
(4)アルギニン(R)、リジン(K);
(5)イソロイシン(I)、ロイシン(L)、メチオニン(M)、バリン(V);
(6)フェニルアラニン(P)、チロシン(Y)、トリプトファン(W);
(7)セリン(S)、スレオニン(T);および
(8)システイン(C)、メチオニン(M)
は、他の1つのアミノ酸に対して保存的な置換であるアミノ酸を含む(例えば、Creighton, Proteins: Structures and Molecular Properties (W H Freeman & Co.; 2nd edition (December 1993)を参照すればよい。
【0138】
2つ以上の核酸配列またはポリペプチド配列の文脈における、“同一の”または“同一性の”割合は、同じである2つ以上の配列または部分配列を指す。配列は、以下の配列比較演算手順(または当業者に利用可能な他の演算手順)の1つを用いてか、もしくは手動の整列化および目視検査によって測定されるような比較領域または所望の領域の全体にわたって最大の一致に関して比較され、整列される場合に同じである割合(すなわち、特定の領域の全体にわたって、約60%の同一性、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、または約95%の同一性)であって、それらがアミノ酸残基またはヌクレオチドの当該割合を有する場合に、“実質的に同一”である。また、この定義は、試験配列の相補性を指す。同一性は、少なくとも約50のアミノ酸もしくはヌクレオチドの長さである領域の全体にわたってか、または75−100のアミノ酸もしくはヌクレオチドの長さである領域の全体にわたってか、または特に特定されないが、ポリヌクレオチドもしくはポリペプチドの全体の配列にわたって存在し得る。
【0139】
配列比較に関して、1つの配列は、比較される試験配列に対して基準配列としての役目を典型的に果たす。配列比較演算手順を用いる場合に、試験配列および基準配列はコンピュータに入力され、配列座標が指定され、必要に応じて配列演算手順のプログラム変数が指定される。初期設定のプログラム変数が使用され得るか、または代替の変数が指示され得る。それから、配列比較演算手順は、プログラム変数に基づいて基準配列と比較した、試験配列に関する配列同一性の割合を算出する。
【0140】
本明細書において使用されるときに、“比較領域”は、配列が、2つの配列が最適に整列化された後における連続する位置の同じ数の基準領域に対して比較され得る、20から600、通常には約50から約200、より通常には約100から約150からなる群から選択される多くの連続する位置のいずれか1つの区分に対する言及を包含する。比較に関する配列の整列化の方法は、当業者にとって公知である。比較に関する配列の最適な整列化は、これらに限定されないが、Smith and Waterman (1970) Adv. Appl. Math. 2:482cの局部的な相同性演算手順、Needleman and Wunsch (1970) J. Mol. Biol. 48:443の相同性整列化演算手順、Pearson and Lipman (1988) Proc. Nat’l. Acad. Sci. USA 85:2444の類似性に関する検索方法、これらの演算手順のコンピュータ化された実施(the Wisconsin Genetics Software Package, Genetics Computer Group, 575 Science Dr., Madison, WIにおけるGAP、BESTFIT、FASTA、およびTFASTA)、または手動の整列化および目視検査(例えば、Ausubel et al., Current Protocols in MolecularBiology (1995 supplement) を参照すればよい)が挙げられる演算方法によって、実施
され得る。
【0141】
配列同一性および配列類似性の割合の決定に好適な演算手順の一例は、BLASTおよびBLAST2.0演算手順である(それぞれ、Altschul et al. (1997) Nuc. Acids Res. 25:3389-3402、およびAltschul et al. (1990) J. Mol. Biol. 215:403-410に記載されている)。BLAST分析を実施するソフトウェアは、全米バイオテクノロジー情報センターを通して公然に利用可能である。BLAST演算手順の変数W、TおよびXは、整列化の感度および速度を決定する。BLASTNプログラム(ヌクレオチド用)には、11のワード長(W)、期待値(E)または10、M=5、N=−4を初期設定として、両方の鎖の比較を使用する。アミノ酸配列に関して、BLASTPプログラムは、3のワード長、および10の期待値(E)を初期設定として、BLOSUM62 採点マトリクス(Henikoff and Henikoff (1992) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:10915を参照すればよい)50の位置合わせ(B)、10の期待値(E)、M=5、N=−4および両方の鎖の比較を使用する。BLAST演算手順は、無効にされる“低い複雑性”のフィルタを用いて典型的に実施される。
【0142】
また、BLAST演算手順は、2つの配列間の類似性の統計的な分析を実施する(例えば、Karlin and Altschul (1993) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:5873-5787を参照すればよい)。BLAST演算手順によって与えられる類似性の指標の1つは、2つのヌクレオチド配列またはアミノ酸配列の間の適合が偶然に生じる確率の指標を提供する、最小の総和確率(P(N))である。例えば、核酸は、基準核酸に対する試験核酸の比較において最小の総和確率が約0.2未満、より好ましくは約0.01未満、最も好ましくは約0.001未満である場合に、基準配列に対して類似であると見做される。
【0143】
“〜に対して選択的に(または特異的に)ハイブリダイズする”という表現は、配列が複合混合物(全体の細胞またはライブラリのDNAまたはRNAが挙げられるが、これらに限定されない)内に存在する場合に、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件において、特定のヌクレオチド配列に対してのみ結合すること、2重鎖化すること、またはハイブリダイズすることを指す。
【0144】
“ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件”という表現は、当該技術において知られるように、低いイオン強度および高い温度の条件を指す。典型的に、ストリンジェントな条件において、プローブは、核酸の複合混合物(全体の細胞またはライブラリのDNAまたはRNAが挙げられるが、これらに限定されない)においてその標的配列に対してハイブリダイズするが、複合混合物における他の配列とはハイブリダイズしない。ストリンジェントな条件は、配列依存的であり、異なる環境において異なる。より長い配列は、より高い温度において特異的にハイブリダイズする。核酸のハイブリダイゼーションに対する広範にわたる指針は、Tijssen, Laboratory Techniques in Biochemistry and Molecular Biology--Hybridization with Nucleic Probes, “Overview of principles of hybridization and the strategy of nucleic acid assays” (1993)に見られる。一般的に、ストリンジェントな条件は、規定のイオン強度 pHにおける、特定の配列に関する熱溶融点(T
m)よりも約5−10℃低く選択される。T
mは、標的に対して相補的なプローブの50%が、平衡状態において標的配列とハイブリダイズする(標的配列がT
mにおいて過剰に存在し、プローブの50%が平衡状態にあるような)、温度である(規定のイオン強度、pH、および核酸の濃度の条件下)。ストリンジェントな条件は、塩濃度がpH7.0から8.3において約1.0M未満のナトリウムイオン濃度、典型的に約0.01から1.0Mのナトリウムイオン濃度(または他の塩)であり、短いプローブ(10から50のヌクレオチドが挙げられるが、これらに限定されない)に関して温度が少なくとも約30℃、および長いプローブ(これらに限定されないが、50を超えるヌクレオチドが挙げられる)に関して少なくとも約60℃である条件であり得る。また、ストリンジェントな条件は、ホルムアミドといった不安定化剤の添加を伴って達成され得る。選択的または特異的なハイブリダイゼーションに関して、正のシグナルは、バックグラウンドの少なくとも2倍の、任意にバックグラウンドの10倍のハイブリダイゼーションであり得る。例示的なストリンジェントなハイブリダイゼーション条件は、以下のとおり:65℃において0.2×SSC、および0.1%のSDSにおける洗浄を伴う、42℃においてインキュベートする50%のホルムアミド、5×SSC、および1%のSDSか、または65℃においてインキュベートする5×SSC、1%SDSであり得る。当該洗浄は、5、15、30、60、120分、またはそれ以上にわたって実施され得る。
【0145】
本明細書において使用されるときに、“真核生物”という用語は、動物(哺乳類、昆虫、爬虫類、鳥類などが挙げられるが、これらに限定されない)、繊毛虫類、植物(単子葉植物、双子葉植物、藻類などが挙げられるが、これらに限定されない)、菌類、酵母、鞭毛虫、微胞子虫、原生生物といった、真核生物界の系統学的な領域に属する生体を指す。
【0146】
本明細書において使用されるときに、“非真核生物”という用語は、非真核生物の生体を指す。例えば、非真核生物の生体は、系統学的な領域の真正細菌(エシェリキア コリ、テルムス テルモフィルス、バチルス ステアロテルモフィルス、シュードモナス フルオレセンス、シュードモナス アエルギノーザ、シュードモナス プティダなどが挙げられるが、これらに限定されない)、または系統学的な領域の古細菌(メタノコッカス ジャンナスキー、メタノバクテリウム テムモアウトトゥロフィクム、ハロバクテリウム(例えば、ハロフェラックス ボルカニーおよびハロバクテリウム種のNRC−1)、アルカエオグロブス フルギダス、ピロコッカス フリオスス、ピロコッカス ホリコシー、アエウロピルム ペルニクスなどが挙げられるが、これらに限定されない)に属することができる。
【0147】
本明細書において使用されるときに、“対象”という用語は、処置、観察または実験の対象である動物、好ましくは哺乳類、最も好ましくはヒトを指す。
【0148】
本明細書において使用されるときに、“有効量”という用語は、処置されるべき疾患、健康状態または不調の症状の1つ以上をある程度まで和らげる、投与される(修飾された)非天然アミノ酸ポリペプチドの量を指す。本明細書に記載されている(修飾された)非天然アミノ酸ポリペプチドを含有している組成物は、予防処置、処置の促進および/または治療処置を目的として投与され得る。
【0149】
“増強”または“増強すること”は、所望の効果を、有効性または持続期間に関して向上するか、または延ばすことを意味する。したがって、治療薬の効果を増強することに関して、“増強すること”という用語は、系における他の治療薬の効果を、有効性または持続期間に関して、向上させるか、または延ばすことを指す。本明細書において使用されるときに、“増強有効量”は、所望の系におけるもう1つの治療薬の効果を十分に増強する量を指す。患者に使用される場合に、この使用に有効な量は、疾患、不調もしくは健康状態の重篤度および経過、以前の治療、患者の健康状態および薬物に対する応答、ならびに処置する医師の判断に依存する。
【0150】
本明細書において使用されるときに、“修飾”という用語は、ポリペプチドの翻訳後修飾があることを指す。ポリペプチドについて議論されている“(修飾)”形態という用語は、任意に修飾されており、すなわち、議論の項目におけるポリペプチドが修飾され得るか、または修飾され得ない。
【0151】
“翻訳後修飾”および“修飾”という用語は、ポリペプチド鎖に組み込まれた後に当該アミノ酸に生じる、天然または非天然のアミノ酸の任意の修飾を指す。当該用語は、ほんの一例として、インビボにおける翻訳同時修飾、インビボにおける翻訳後修飾、およびインビトロにおける翻訳後修飾を包含する。
【0152】
予防的な用途において、(修飾された)非天然のアミノ酸ポリペプチドを含有する組成物は、特定の疾患、不調または健康状態に影響を受けやすいか、またはさもなければその危険性が高い患者に対して投与される。そのような量は、“予防有効量”と定義づけされる。また、この利用において、正確な量は、患者の健康状態および体重などに依存する。日常的な実験による当該予防有効量(例えば、用量の段階的増大の臨床試験)の決定は、当業者の範囲内にあると十分に見做される。
【0153】
“保護”という用語は、ある反応条件における化学的に反応性の官能基の反応を防ぐ“保護基”または保護部分の存在を指す。保護基は、保護される化学的に反応性の基の種類に依存して変わる。例えば、化学的に反応性を示す基がアミンまたはヒドラジドである場合に、保護基は、tert−ブチルオキシカルボニル(t−Boc)および9−フルオレニルメトキシカルボニル(Fmoc)からなる群から選択され得る。化学的に反応性を示す基がチオールである場合に、保護基はオルトピリジルジスルフィドであり得る。化学的に反応性を示す基がブタン酸もしくはプロピオン酸といったカルボキシル酸、またはヒドロキシル基である場合に、保護基は、ベンジル基またはメチル、エチルもしくはtert−ブチルといったアルキル基であり得る。また、当該分野において公知の他の保護基が、本明細書に記載される方法および組成物においてか、またはともに使用され得る。
【0154】
ほんの一例として、封鎖基/保護基は、
【0157】
他の保護基は、参照によってその全体が本明細書に援用される、Greene and Wuts, Protective Groups in Organic Synthesis, 3rd Ed., John Wiley & Sons, New York, NY, 1999に記載されている。
【0158】
治療的適用において、(修飾された)非天然アミノ酸ポリペプチドを含有している組成物は、すでに疾患、健康状態または不調になっている患者に対して、疾患、不調または障害の症状を治療するか、または少なくとも部分的に進行を押さえるために十分な量が、患者に投与される。当該量は、“治療有効量”であると定義され、疾患、不調もしくは障害の重篤度および経過、以前の治療、患者の健康状態および薬物に対する応答、ならびに処置する医師の判断に依存する。日常的な実験によって当該治療有効量を(例えば、用量の段階的増大の臨床試験)を決定することは、当業者の範囲内にあると十分に見做される。
【0159】
また、いわゆるケトレ数(Quetelet number)またはケトレ指数(Quetelet index)と呼ばれる肥満度指数(“BMI”)は、現在、ヒトにとって過剰な体脂肪の算出に最も広く受け入れられている。アドルフ ケトレ(Adolphe Quetelet)によって開発されたBMIは、彼/彼女の身長の2乗によって対象者の体重を割ることによって算出される(BMI=W/h.sup.2)。SI単位において、BMIは典型的にkg/m
2として示され;英語圏諸国単位において、BMIはlb/in
2として示される。例えば、体重75キログラム、身長1.8メートルの人は75/(1.82)=23.148のBMIを有しており、したがって減量の必要はない。一方、体重100キログラム、身長1.8メートルの人は100/(1.8)
2=30.864のBMIを有している。それゆえ“肥満”の範囲にあり、したがって、減量の必要がある。
【0160】
本発明の方法は、推奨される肥満度指数を超えるBMIを有している(すなわち、少なくとも“太りすぎ”の範囲または少なくとも“肥満”の範囲にある)ヒトを処置するために使用され得る。1つの実施形態において、彼または彼女のBMIが25以上である場合、ヒト被験者は減量の必要があると見做される。他の実施形態において、本発明の方法は、少なくとも約25の、25を超える、少なくとも約30の、または30を超える肥満度指数を有しているヒトの処置を目的として使用され得る。
【0161】
本明細書において使用されるときに“肥満”という用語は、哺乳類がその理想的な体重を少なくとも20%超える場合である。他の実施形態において、彼または彼女の肥満度指数(BMI)が約30以上である場合、ヒトの対象者は肥満である。開示された方法のいずれかのうちの別の実施形態において、肥満の対象者は約30から約35までのBMIを有する。代替可能に、肥満の対象者は約35またはそれ以上のBMIを有する。腰回りが40インチを超える男性は、危険性があると見做される。腰回りが35インチ以上の女性は危険性がある。
【0162】
本明細書において使用されるときに“肥満”という用語は、上記において定義づけされるすべての肥満を包含することが意図される。
【0163】
肥満によって誘発されるか、または肥満と関連する合併症としては、糖尿病、非インスリン依存性II(2)型糖尿病、耐糖能異常、空腹時血糖値の異常、インスリン抵抗性症候群、異常脂質血症、高血圧、高尿酸血、通風、冠動脈疾患、心筋梗塞、狭心症、睡眠時無呼吸症候群、ピックウィック症候群、代謝症候群、脂肪肝;脳梗塞、脳血栓症、一過性脳虚血発作、骨関節疾患、変形性関節炎、腰痛、月経異常、および不妊症が挙げられる。特に、合併症としては、高血圧、高脂血症、異常脂質血症、耐糖能異常、心疾患、睡眠時無呼吸、糖尿病、および他の肥満と関連する障害が挙げられる。
【0164】
本発明のレプチンポリペプチドは、体重の再増加の予防、体重増加の予防、および体重維持のために使用され得る。体重の再増加の予防、体重増加の予防、および体重維持のための使用とは、本発明の化合物または組合せの投与によって、肥満の危険性がある患者の体重を減少させるか、または維持することを意味する。予防の成果の1つは、食餌療法、運動または薬物療法によって過去に減少した体重の体重の再増加を予防することであり得る。別の予防の成果は、肥満の危険性がある対象に肥満が現れる前に処置が施される場合に、肥満の発症を予防することであり得る。別の予防の成果は、肥満の危険性がある対象に肥満が現れる前に処置が施される場合、肥満と関連する疾患の発症の抑制および/または重篤度の低下であり得る。さらに、例えば、すでに肥満の対象に処置が開始される場合に、当該処置によって、肥満と関連する疾患の発生、進行または重篤化が回避され得る。
【0165】
肥満、および肥満と関連する疾患の“処置”は、本発明のレプチンポリペプチドまたは本発明の組合せの投与によって食物摂取量を減少させて、肥満の対象者の体重を減少させるか、または体重を維持することを指す。一つの処置の成果は、本発明の化合物または組合せの投与直前の対象者の体重と比べて、肥満の対象者の体重を減少させることであり得る。別の処置の成果は、食餌療法、運動または薬物療法によって減少する前の体重の体重の再増加を予防することであり得る。別の処置の成果は、肥満と関連する疾患の発症および/または重症度を減少させることであり得る。別の処置の成果は、減量した体重を維持することであり得る。処置は、対象者による食物もしくはカロリーの摂取量の低減(すべての食物摂取量または特定の成分(例えば、炭水化物または脂質)の摂取量の低減);および/または栄養吸収の抑制;および/または代謝率の低下の抑制;および減量が必要な患者における体重減少を適切にもたらし得る。また、処置は、代謝率の低下の抑制;および/または減量によって一般的に生じる代謝抵抗性の最小化ではないか、またはこれに加えて、代謝率の変化(例えば、代謝率の上昇)をもたらし得る。
【0166】
肥満、および肥満と関連する疾患の“予防”は、体重を減少させるか、または肥満の危険性のある対象者の体重を維持するために、本発明のレプチンポリペプチドまたは組合せを投与することを指す。予防の成果の1つは、本発明の化合物またはその組合せの投与直前における当該対象者の体重と比べて、肥満の危険性のある対象者の体重を減少させることであり得る。予防の他の成果は、体重が、食餌療法、運動または薬物療法によって減量する前の体重に戻ることを防ぐことであり得る。肥満の危険性のある対象者において肥満になる前に処置を施す場合、予防の別の成果は、肥満の発生を防止することであり得る。肥満の危険性のある対象者において肥満になる前に処置を施す場合、予防の別の成果は、肥満と関連する疾患の発症の抑制および/または重篤度の軽減であり得る。予防の別の成果は、体重増加に対する抵抗を長引かせることであり得る。予防の別の成果は、体重が元に戻ることを防止することであり得る。さらに、すでに肥満体の対象者に処置を開始する場合、当該処置は肥満と関連する疾患の発症、進行または重篤化を抑制することであり得る。当該肥満と関連する疾患としては、例えば、動脈硬化、II型糖尿病、多嚢胞卵巣、心疾患、変形性関節炎、皮膚病、高血圧、インスリン抵抗性、代謝症候群、高コレステロール血症、トリグリセリド過剰血、および胆石症が挙げられるが、これらに限定されない。
【0167】
本明細書において肥満と関連する疾患は、肥満に付随するか、肥満によって引き起こされるか、または肥満によってもたらされる。肥満と関連する疾患の例としては、過食および過食症、高血圧、糖尿病、血漿中インスリン濃度の上昇およびインスリン抵抗性、異常脂質血症、高脂質血症、子宮内膜癌、乳癌、前立腺癌および大腸癌、変形性関節症、閉塞型睡眠時無呼吸症候群、胆石症、胆石、心臓病、心調律動の異常および不整脈、心筋梗塞、鬱血性心不全、冠状動脈性心臓病、突然死、脳卒中、多嚢胞性卵巣、頭蓋咽頭腫、プラダーウィリ症候群、フレーリッヒ症候群、GH−不全の対象者、正常変位小人症、ターナー症候群、ならびに除脂肪体重の割合としての代謝活性の低下または安静時エネルギー消費の減少を示す他の病的な状態(例えば、急性リンパ芽球性リンパ腫を患う小児)が挙げられる。また、肥満と関連する疾患のさらなる例としては、代謝症候群(シンドロームXとしても知られている)、インスリン抵抗性症候群、生殖ホルモンの異常、性的機能不全および生殖機能障害(例えば、受精率の低下、不妊症、男性における性腺機能低下症および女性における多毛)、妊婦の肥満に伴う胎児の異常、胃腸の運動障害(例えば、肥満に関連する胃食道逆流)、呼吸障害(例えば、肥満換気過小症候群(ピックウィック症候群))、息切れ、心臓血管疾患、炎症(例えば、脈管構造の全身性炎症)、動脈硬化、高コレステロール血症、高尿酸血、腰の痛み、胆嚢疾患、通風、腎臓癌、ならびに無感覚症の危険性の増大が挙げられる。また、本発明の組合せは、左心室肥大の危険性を減じるといった、肥満の二次的な転帰の危険性の低下に有用である。また、本発明の組合せは、アルツハイマー病の処置に有用である。
【0168】
“処置”という用語は、予防的処置および/または治療的処置のいずれかを指して使用される。
【0169】
特に断りがない限り、当業者の範囲内にある質量分析、NMR、HPLC、タンパク質化学、生化学、組換えDNA技術および薬理学の従来の方法が採用される。
【0170】
〔詳細な説明〕
<I.序文>
非天然アミノ酸を少なくとも1つ含んでいるレプチン分子が、本発明において提供される。本発明のある実施形態において、非天然アミノ酸を少なくとも1つ有しているレプチンポリペプチドは、少なくとも1つの翻訳後修飾を包含する。1つの実施形態において、少なくとも1つの翻訳後修飾は、分子(標識、色素、ポリマー、水溶性ポリマー、ポリエチレングリコールの誘導体、光架橋剤、細胞毒性化合物、薬物、親和性標識、光親和性標識、反応性化合物、樹脂、第2のタンパク質もしくはポリペプチドもしくはポリペプチド類似物、抗体もしくは抗体断片、金属キレート剤、補助因子、脂肪酸、含水炭素、ポリヌクレオチド、DNA、RNA、アンチセンスポリヌクレオチド、抑制性リボ核酸、生体適合物質、ナノ粒子、スピン標識、蛍光団、金属を含有する部分、放射性部分、新規な官能基、他の分子と共有的もしくは非共有的に相互作用する基、光ケージド部分、光異性体化可能な部分、ビオチン、ビオチンの誘導体、ビオチン類似物、重元素を組み込んでいる部分、化学的に切断可能な基、光切断可能な基、延長された側鎖、炭素結合型の糖、酸化還元活性のある物質、アミノチオ酸、毒性部分、同位体によって標識された部分、生物物理学的なプローブ、燐光性の基、化学発光性の基、電子密度の高い基、磁性基、インターカレートする基、発色団、エネルギー転移物質、生物学的に活性な物質、検出可能な標識、小分子、または上述のものの任意の組合せもしくは特定の反応性にとって好適であることが当業者に知られている化学方法論に利用される第1の反応性基を備える少なくとも1つの非天然アミノ酸に対して反応性の第2の基を含んでいる、他に所望する任意の化合物もしくは物質が挙げられるが、これらに限定されない)の連結を含んでいる。例えば、第1の反応性基が、アルキニル部分(非天然アミノ酸p−プロパルギルオキシフェニルアラニン(ここで、プロパルギル基は、ときにアセチレン部分とも呼ばれる)における、が挙げられるが、これに限定されない)であり、第2の反応性基がアジド部分であり、[3+2]付加環化化学方法論が利用される。他の例において、第1の反応性基が、アジド部分(非天然アミノ酸p−アジド−L−フェニルアラニンが挙げられるが、これに限定されない)であり、第2の反応性基がアルキニル部分である。本発明の修飾された4HBポリペプチドのある特定の実施形態において、少なくとも1つの翻訳後修飾を含んでいる、少なくとも1つの非天然アミノ酸(ケト官能基を含有する非天然アミノ酸が挙げられるが、これに限定されない)が、使用される(ここで、少なくとも1つの翻訳語後修飾が、糖鎖部分を含んでいる)。ある特定の実施形態において、翻訳後修飾は、真核細胞または非真核細胞のインビボにおいてなされる。
【0171】
ある特定の実施形態において、タンパク質は、1つの宿主細胞によってインビボにおいてなされる少なくとも1つの翻訳後修飾を含んでおり、ここで、当該翻訳後修飾は他の宿主によって通常になされない。ある特定の実施形態において、タンパク質は、真核細胞によってインビボにおいてなされる少なくとも1つの翻訳修飾を含んでおり、ここで、当該翻訳後修飾は非真核細胞によって通常になされない。翻訳後修飾の例としては、糖鎖付加、アセチル化、アシル化、脂質修飾、パルミトイル化、パルミチン酸付加、リン酸化、および糖脂質結合修飾などが挙げられるが、これらに限定されない。ある実施形態において、翻訳後修飾は、GlcNAc−アスパラギン酸結合によるアスパラギン酸に対するオリゴ糖(オリゴ糖が(GlcNAc−Man)
2−Man−GlcNAc−GlcNAcなどを包含する場合が挙げられるが、これに限定されない)の連結を含んでいる。他の実施形態において、翻訳後修飾は、GalNAc−セリン、GalNAc−スレオニン、GlcNAc−セリン、またはGlcNAc−スレオニン結合による、セリンまたはスレオニンに対するオリゴ糖(Gal−GalNAc、Gal−GlcNAcなどが挙げられるが、これらに限定されない)の連結を含んでいる。ある特定の実施形態において、本発明のタンパク質またはポリペプチドは、分泌シグナル配列もしくは局在配列、エピトープタグ、FLAGタグ、ポリヒスチジンタグ、および/またはGST融合などを含み得る。
【0172】
所定のタンパク質またはポリペプチドは、少なくとも1つの、少なくとも2つの、少なくとも3つの、少なくとも4つの、少なくとも5つの、少なくとも6つの、少なくとも7つの、少なくとも8つの、少なくとも9つの、または10もしくはそれ以上の非天然アミノ酸を含有し得る。非天然アミノ酸は、同じであるか、または異なり得る(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10またはそれ以上の異なる非天然アミノ酸を含んでいるタンパク質における1、2、3、4、5、6、7、8、9、10またはそれ以上の異なる部位にあり得る)。ある特定の実施形態において、タンパク質の天然に存在する型に存在する特定のアミノ酸のすべてではないが、少なくとも1つが、非天然アミノ酸に置換されている。
【0173】
本発明は、天然にコードされていないアミノ酸を少なくとも1つ含んでいるレプチンポリペプチドを用いた方法および組成物を提供する。レプチンポリペプチドに対する天然にコードされていないアミノ酸の少なくとも1つの導入は、通常に存在する20のアミノ酸と反応しないが、1つ以上の天然にコードされていないアミノ酸と反応する(これが挙げられるが、これに限定されない)、特定の化学反応を含む抱合化学的性質の適用を可能にする。いくつかの実施形態において、天然にコードされていないアミノ酸を含んでいるレプチンポリペプチドは、ポリエチレングリコール(PEG)といった水溶性ポリマーに対して、天然にコードされていないアミノ酸の側鎖を介して連結される。本発明は、PEG誘導体を用いてタンパク質を選択的に修飾する高効率な方法を提供する。当該方法は、遺伝的にコードされないアミノ酸のセレクターコドンに応じたタンパク質への効率的な組込み、および好適な反応性のPEG誘導体を用いたこれらのアミノ酸の一連の修飾に関する。ここで、遺伝的にコードされないアミノ酸としては、天然に組み込まれる20のアミノ酸に見られない官能基または置換基(ケトン、アジドまたはアセチレン部分が挙げられるが、これらに限定されない)が挙げられるが、これらに限定されない。組み込まれると、それから、アミノ酸側鎖は、天然にコードされるアミノ酸に存在する特定の官能基または置換基にとって好適であると当業者に知られる、化学方法論を利用することによって修飾され得る。多種多様な公知の化学方法論が、水溶性ポリマーをタンパク質に組み込むために、本発明における使用にとって好適である。当該方法論としては、ヒュイゲン[3+2]付加環化反応(これらに限定されないが、アセチレン誘導体またはアジド誘導体のそれぞれとの、ヒュイゲン[3+2]付加環化反応が挙げられる)が挙げられるが、これらに限定されない(例えば、Padwa, A. in Comprehensive Organic Synthesis, Vol. 4, (1991) Ed. Trost, B. M., Pergamon, Oxford, p. 1069-1109;およびHuisgen, R. in 1,3-Dipolar Cycloaddition Chemistry, (1984) Ed. Padwa, A., Wiley, New York, p. 1-176を参照すればよい)。
【0174】
ヒュイゲン[3+2]付加環化法は求核置換反応よりむしろ付加環化に関するので、タンパク質は非常に高い選択性をともなって修飾され得る。反応は、室温および水性条件において、非常に良好な位置選択性(1,4>1,5)をともなって、反応混合物に触媒量のCu(I)塩を添加することによって実施され得る。例えば、Tornoe, et al., (2002) Org. Chem. 67:3057-3064; and, Rostovtsev, et al., (2002) Angew. Chem. Int. Ed. 41:2596-2599および国際公開第03/101972号パンフレットを参照すればよい。[3+2]付加環化を介して本発明のタンパク質に加えられ得る分子としては、好適な官能基または置換基(アジド誘導体またはアセチレン誘導体が挙げられる)を有する実質的に任意の分子が挙げられるが、これらに限定されない。これらの分子は、アセチレン基またはアジド基を有している非天然アミノ酸のそれぞれに対して加えられ得る。アセチレン基を有している非天然アミノ酸としては、p−プロパルギルオキシフェニルアラニンが挙げられるが、これに限定されない。アジド基を有する非天然アミノ酸としては、p−アジド−フェニルアラニンが挙げられるが、これに限定されない。
【0175】
ヒュイゲン[3+2]付加環化から生じる5員環は、還元性環境において一般的に不可逆的であり、水性環境において長期間にわたって加水分解に対して安定である。結果として、多種多様な物質の物理的および化学的な特性が、本発明の活性PEG誘導体をともなう厳しい水性条件において修飾され得る。さらに重要なことに、アジド部分およびアセチレン部分が互いに特異的である(そして、例えば遺伝的にコードされる一般的な20のアミノ酸のいずれとも反応しない)ので、タンパク質は非常に高い選択性をともなって1つ以上の特定の部位において修飾され得る。
【0176】
また、本発明は、PEG誘導体の加水分解に対して安定な水溶性の誘導体を提供し、1つ以上のアセチレン部分またはアジド部分を有している親水性ポリマーに関する。アセチレン部分を含有しているPEGポリマー誘導体は、セレクターコドンに応じてタンパク質に選択的に導入されているアジド部分と結合する高い選択性を有している。同様に、アジド部分を含有するPEGポリマー誘導体は、セレクターコドンに応じてタンパク質に選択的に導入されているアセチレン部分と結合する高い選択性を有している。
【0177】
より詳細には、アジド部分は、アルキルアジド、アリールアジドおよびこれらのアジドの誘導体を包含するが、これらに限定されない。アルキルアジドおよびアリールアジドの誘導体は、アセチレン特異的な反応性が維持される限り、他の置換基を含み得る。アセチレン部分は、アルキルアセチレン、アリールアセチレンおよびそれぞれの誘導体を包含するが、これらに限定されない。アルキルアセチレンおよびアリールアセチレンの誘導体は、アジド特異的な反応性が維持される限り、他の置換基を含み得る。
【0178】
本発明は、他の物質(標識;色素;ポリマー;水溶性ポリマー;ポリエチレングリコールの誘導体;光架橋剤;細胞毒性化合物;薬物;親和性標識;光親和性標識;反応性化合物;樹脂;第2のタンパク質もしくはポリペプチドもしくはポリペプチド類似物;抗体もしくは抗体断片;金属キレート剤;補助因子;脂肪酸;含水炭素;ポリヌクレオチド;DNA;RNA;アンチセンスポリヌクレオチド;抑制性リボ核酸;生体適合物質;ナノ粒子;スピン標識;蛍光団;金属を含有する部分;放射性部分;新規な官能基;他の分子と共有的もしくは非共有的に相互作用する基;光ケージド部分;光異性体化可能な部分;ビオチン;ビオチン類似物;ビオチン類似物;重元素を組み込んでいる部分;化学的に切断可能な基;光切断可能な基;延長された側鎖;炭素結合型の糖;酸化還元活性のある物質;アミノチオ酸;毒性部分;同位体によって標識された部分;生物物理学的なプローブ;燐光性の基;化学発光性の基;電子密度の高い基;磁性基;インターカレートする基;発色団;エネルギー転移物質;生物学的に活性な物質;検出可能な標識;小分子;または上述のものの任意の組合せ、もしくは他に所望される任意の化合物もしくは物質が挙げられるが、これらに限定されない)との、多種多様な官能基、置換基または部分を有する物質の抱合物を提供する。また、本発明は、対応するアセチレンまたはアジド部分を有しているPEGポリマー誘導体との、アジドまたはアセチレン部分を有している物質の抱合物を包含する。例えば、アジド部分を含んでいるPEGポリマーは、アセチレン官能性基を有している遺伝的にコードされないアミノ酸を含んでいるタンパク質における位置において、生物学的に活性な分子に連結され得る。PEGおよび生物学的に活性な分子が連結される結合としては、ヒュイゲン[3+2]付加環化産物が挙げられるが、これに限定されない。
【0179】
PEGを用いて生体材料の表面を修飾し得ることは、当該技術において十分に確立されている。例えば、参照によって本明細書に援用される、米国特許第6,610,281号明細書;Mehvar, R., J. Pharm Pharm ScL, 3(1):125-136 (2000)を参照すればよい。また、本発明は、1つ以上のアジド反応性部位もしくはアセチレン反応性部位を有している表面、およびヒュイゲン[3+2]付加環化結合を介して当該表面に結合されている本発明のアジドもしくはアセチレン含有ポリマーを含んでいる生体材料を包含する。また、生体材料および他の物質は、アジド結合またはアセチレン結合以外の結合を介してアジドまたはアセチレン活性化ポリマーに対して結合され得る。当該結合は、例えば、後の反応に利用可能なアジド部分またはアセチレン部分を残しておくための、カルボン酸、アミン、アルコールまたはチオール部分を含んでいる結合である。
【0180】
本発明は、本発明のアジド含有ポリマーおよびアセチレン含有ポリマーを合成する方法を包含する。アジド含有PEG誘導体の場合には、アジドは、ポリマーの炭素原子に対して直接に結合され得る。他の方法として、アジド含有PEG誘導体は、生成されるポリマーがその末端にアジド部分を有するように、1つの末端にアジド部分を有している連結剤を従来の活性化ポリマーに連結させることによって調製され得る。アセチレン含有PEG誘導体の場合には、アセチレンは、ポリマーの炭素原子に対して直接に結合され得る。他の方法として、アセチレン含有PEG誘導体は、生成されるポリマーがその末端にアセチレン部分を有するように、1つの末端にアセチレン部分を有している連結剤を従来の活性化ポリマーに連結させることによって調製され得る。
【0181】
より詳細には、アジド含有PEG誘導体の場合には、少なくとも1つの活性ヒドロキシ部分を有する水溶性ポリマーは、より反応性の高い部分を有している置換ポリマーを生成するための反応を受ける。より反応性の高い部分は、例えば、水溶性ポリマー上にあるメシレート基、トレシレート基、トシレート基またはハロゲン離脱基である。ハロゲン化スルフォニル酸、ハロゲンおよび他の離脱基を含んでいるPEG誘導体の調製および使用は、当業者にとって公知である。それから、生成される置換ポリマーは、ポリマーの末端においてアジド部分をより反応性の高い部分に置換するための反応を受ける。他の方法としては、少なくとも1つの活性な求核部分または求電子部分を有している水溶性ポリマーは、1つの末端にアジド部分を有している連結剤との反応を受ける。当該連結剤は、1つの末端にアジド部分を有しているので、PEGポリマーと連結剤との間に共有結合が形成され、アジド部分がポリマーの末端に配置される。求核部分および求電子部分は当業者に公知であり、これらとしては、アミン、チオール、ヒドラジド、ヒドラジン、アルコール、カルボン酸塩、アルデヒド、ケトンおよびチオエステルなどが挙げられる。
【0182】
より詳細には、アセチレン含有PEG誘導体の場合には、少なくとも1つの活性なヒドロキシ部分を有している水溶性ポリマーは、アセチレン部分を含んでいる前駆体からハロゲンまたは活性な離脱基を置換するための反応を受ける。他の方法としては、少なくとも1つの活性な求核部分または求電子部分を有している水溶性ポリマーは、1つの末端にアセチレン部分を有している連結剤との反応を受ける。当該連結剤は、1つの末端にアセチレン部分を有しているので、PEGポリマーと連結剤との間に共有結合が形成され、アセチレン部分がポリマーの末端に配置されることを可能にする。PEG誘導体の有機合成、調製および使用に関する、ハロゲン部分、活性化脱離基、求核部分および求電子部分の使用は、当該分野において十分に確立されている。
【0183】
また、本発明は、修飾されたタンパク質に他の物質を加えるためにレプチンタンパク質を選択的に修飾する方法を提供する。他の物質としては、水溶性ポリマー(例えば、アジド部分もしくはアセチレン部分を含有するPEGおよびPEG誘導体)が挙げられるが、これに限定されない。アジド含有PEG誘導体およびアセチレン含有PEG誘導体を使用して、表面を修飾し得、分子の特性を調節し得る。ここで、当該特性としては、生体利用効率、安定性、溶解性および欠失した免疫原性が重要である。同時に、タンパク質に対してPEG誘導体をより選択的に連結させる手段は、当該技術において以前から公知であった。
【0184】
<II.成長ホルモンスーパージーンファミリー>
レプチンは、成長ホルモンスーパージーンファミリーのメンバーである。以下のタンパク質は、成長ホルモン(GH)スーパージーンファミリーの遺伝子にコードされるそれらを含んでいる(Bazan, F. Immunology Today 11 : 350-354 (1991); Bazan, J. F. Science 257 : 410-411 (1992); Mott, H. R. and Campbell, I. D. Current Opinion in Structural Biology 5: 114-121 (1995); Silvennoinen, O. and IhIe, J. N. SIGNALLING BYTHE HEMATOPOIETIC CYTOKINE RECEPTORS (1996))。この遺伝子にコードされるタンパク質としては、成長ホルモン、プロラクチン、胎盤性ラクトゲン、エリスロポエチン(EPO)、トロンボポエチン(TPO)、インターロイキン−2(IL−2)、IL−3、IL−4、IL−5、IL−6、IL−7、IL−9、IL−10、IL−11、IL−12(p35サブユニット)、IL−13、IL−15、オンコスタチン M、毛様体神経栄養因子(CNTF)、白血病抑制因子(LIF)、αインターフェロン、βインターフェロン、εインターフェロン、γインターフェロン、ωインターフェロン、τインターフェロン、顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)、マクロファージコロニー刺激因子(M−CSF)およびカーディオトロピン−1(CT−1)が挙げられる(“GHスーパージーンファミリー”)。このジ
ーンファミリーのさらなるメンバーは、今後、遺伝子クローニングおよび遺伝子配列解読技術によって同定され得ることが予測される。GHスーパージーンファミリーのメンバーは、それらがアミノ酸配列同一性またはDNA配列同一性を僅かしか有していないにもかかわらず、類似の二次構造および三次構造を有する。共通の構造的特徴によって、ジーンファミリーの新たなメンバーを容易に同定できる。また、本明細書に記載される非天然のアミノ酸の方法および組成物が同様に適用される。GHスーパージーンファミリーのメンバーに共通する構造相同性の程度を鑑みると、天然にコードされていないアミノ酸は、本発明によってGHスーパージーンファミリーのいずれかのメンバーに組み込まれ得る。タンパク質におけるこのファミリーの各々のメンバーは4つのらせん束を含んでおり、その一般構造は
図1に示される。ファミリーメンバーであるhGH、EPO、IFNα−2、およびG−CSFの一般構造は、それぞれ
図2、3、4、および5に示される。
【0185】
サイトカインの多くの構造は、X線回折およびNMR調査によって決定されており、一次配列の相同性を著しく欠いているにも関わらず、GH構造とともに際立った保存を示す。このサイトカインとしては、G−CSF(Zink et al, FEBS Lett. 314:435 (1992); Zink et al, Biochemistry 33:8453 (1994); Hill et al., Proc. Nati. Acad. Sci.USA 90:5167 (1993))、GM−CSF(Diederichs, K., el al. Science 154: 1779-1782 (1991); Walter el al , J. Mol Biol. 224:1075-1085 (1992))、IL−2(Bazan, J. F. Science 257: 410-411 (1992); McKay, D. B. Science 257: 412 (1992))、IL−4(Redfield et al., Biochemistry 30: 11029-11035 (1991); Powers et al., Science 256:1673-1677 (1992))、およびIL−5(Milburn et al., Nature 363: 172-176 (1993))が挙げられる。IFNは、モデルおよび他の研究に基づきこのファミリーのメンバーであると考えられている(Lee et al., J. Growth hormone Cytokine Res. 15:341 (1995); Murgolo et al., Proteins 17:62 (1993); Radhakrishnan et al., Structure 4: 1453 (1996); Klaus et al., J. MoI. Biol. 274:661 (1997))。EPOは、モデルおよび突然変異の研究に基づきこのファミリーのメンバーであると考えられている(Boissel et al, JBiol, Chem 268: 15983-15993 (1993); Wen et al., J. Biol. Chem. 269: 22839-22846 (1994))。現在、上記のすべてのサイトカインおよび成長因子は、1つの大きなジーンファミリーを構成していると考えられている。
【0186】
共通する類似の二次構造および三次構造に加え、このファミリーのメンバーは、細胞表面の受容体を細胞内シグナル伝達経路に対してオリゴマー形成せざるを得ないという特性を共有する。いくつかのGHファミリーメンバー(GHおよびEPOが挙げられるが、これらに限定されない)は、1種類の受容体を結合させて、それをホモダイマーの形態にする。他のファミリーメンバー(IL−2、IL−4、およびIL−6が挙げられるが、これらに限定されない)は、2種類以上の受容体を結合させて、当該受容体をヘテロダイマーまたは高次の集合体の形態にする(Davis et al., (1993), Science 260: 1805-1808; Paonessa et al., (1995), EMBO J. 14: 1942-1951 ; Mott and Campbell, Current Opinion in Structural Biology 5: 114-121 (1995))。突然変異生成の研究によって、GHと同様に、これら他のサイトカインおよび成長因子が複数(典型的には2つ)の受容体結合部位を有しており、それらの同族受容体を順次結合することが示されている(Mott andCampbell, Current Opinion in Structural Biology 5: 114-123 (1995); Matthews et al., (1996) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 93: 9471 -9476)。GHと同様に、主として4つのαヘリックスおよびA−Bループにおいて、これら他のファミリーメンバーに関する第1の受容体結合部位が現れる。受容体結合に関与するらせん束において特異的なアミノ酸は、ファミリーメンバーごとに異なる。GHスーパージーンファミリーのメンバーと相互に作用する細胞表面の受容体の多くは、構造的に関連しており、2番目の大きい複数の遺伝子ファミリーを含んでいる(例えば、参照によって本明細書に援用される米国特許第6,608,183号明細書)。
【0187】
GHスーパージーンファミリーの多様なメンバーの突然変異生成の研究から達した一般的な結論は、概して、αヘリックスと結合しているループは受容体結合に関与しない傾向にあるということである。特に、短いB−Cループでは、すべてではないがほとんどのファミリーメンバーが受容体結合にとって必要ではないことが明らかである。この理由のため、B−Cループは、GHスーパージーンファミリーのメンバーにおいて、本明細書に記載されているような天然にコードされていないアミノ酸と置換され得る。また、A−Bループ、C−Dループ(およびGHスーパーファミリーのインターロイキン/IL−10などのメンバーのD−Eループ)は、天然に存在しないアミノ酸と置換され得る。また、ヘリックスAに近接している、最後のヘリックスに対して末端側のアミノ酸は、受容体結合に関与しない傾向にあり、天然に存在しないアミノ酸を導入するための部位であり得る。いくつかの実施形態において、非天然にコードされるアミノはループ構造内の任意の位置において置換される。任意の位置としては、A−Bループ、B−Cループ、C−Dループ、またはD−Eループの初めの1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つまたはそれ以上の位置が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、1つ以上の天然にコードされていないアミノ酸は、A−Bループ、B−Cループ、C−Dループ、またはD−Eループの最後の1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つまたはそれ以上の範囲内において置換されるが、これらに限定されない。
【0188】
GHファミリーのあるメンバーは(これらに限定されないが、EPO、IL−2、IL−3、IL−4、IL−6、G−CSF、GM−CSF、TPO、IL−10、IL−12 p35、IL−13、IL−15およびβインターフェロン)、N結合型の糖および/またはO結合型の糖を含んでいる。タンパク質における糖鎖付加部位はループ領域にほぼ例外なく存在しており、αらせん束に存在していない。一般的に、ループ領域が受容体結合に関与しておらず、それらが糖類の共有結合に関する部位であるので、ループ領域は、天然に存在しないアミノ酸置換をタンパク質に組み込むために有用な部位であり得る。タンパク質において、N結合型の糖鎖付加部位およびO結合型の糖鎖付加部位を有するアミノ酸は、これらのアミノ酸が表面に露出されるという理由から、天然に存在しないアミノ酸置換のための部位であり得る。したがって、天然のタンパク質は、これらの部位においてタンパク質と結合される大型の糖類、および受容体結合部位から比較的に離れて位置される糖鎖付加部位を許容できる。
【0189】
GHスーパージーンファミリーのさらなるメンバーが将来において発見されると思われる。GHスーパージーンファミリーの新たなメンバーは、予想されるタンパク質配列のコンピュータ支援の二次および三次構造分析を介して同定され得る。GHスーパージーンファミリーは、典型的に、らせん状ではないアミノ酸(ループ領域)によって結合される4つまたは5つの両親媒性のヘリックスを有している。タンパク質は、細胞から分泌を促進するために、それらのN末端に疎水性シグナル配列を含み得る。また、そのような最近発見されたGHスーパージーンファミリーのメンバーは、本発明の範囲に含まれる。
【0190】
したがって、成長ホルモンスーパージーンファミリーの記載は、例示的な目的およびほんの一例として与えられており、本明細書に記載の方法、組成物、戦略および技術の範囲を制限するものではない。さらに、本願におけるGH、IFN、G−CSF、およびEPOに対する言及は、GHスーパージーンファミリー任意のメンバーの例のような総称を使用することを意図している。したがって、hGH、hIFN、hG−CSF、もしくはhEPOポリペプチドまたはタンパク質への言及とともに本明細書に記載されている修飾および化学的性質は、GHスーパージーンファミリーメンバーのいずれ(本明細書に特に記載のものが挙げられる)に対しても等しく適用されることが理解される。
【0191】
<III.本発明とともに使用する一般的な組換え核酸法>
本発明の多くの実施形態において、所定のレプチンポリペプチドをコードする核酸は、単離され、クローン化され、しばしば組換え法を用いて変更される。当該実施形態は、これらに限定されないが、レプチンポリペプチドから得られるバリアント、誘導体、発現カセット、または他の配列の、タンパク質発現または生成の間を含めて使用される。いくつかの実施形態において、本発明のポリペプチドをコードする配列は、異種のプロモータに対して作動可能に連結されている。他の実施形態において、本発明は、宿主細胞におけるレプチンの単離およびレプチンの産生を包含する。
【0192】
天然にコードされていないアミノ酸を含んでいるレプチンポリペプチドをコードするヌクレオチド配列は、親ポリペプチドのアミノ酸配列に基づいて合成され得る(配列番号2または4に示されるアミノ酸配列を有し、それから関連する(複数の)アミノ酸残基の導入(すなわち、組み込みまたは置換)または除去(すなわち、欠失または置換)をもたらすようにヌクレオチド配列を変えている、が挙げられるが、これらに限定されない)。ヌクレオチド配列は、従来の方法に従った部位特異的な変異生成によって簡便に修飾され得る。代替可能に、ヌクレオチド配列は、化学合成(オリゴヌクレオチド合成機を用いること、および好ましくは組換えポリペプチドが産生される宿主細胞に好まれるこれらのコドンを選択することが挙げられるが、これらに限定されない)によって調製され得る(ここで、オリゴヌクレオチドは、所望のポリペプチドのアミノ酸配列に基づいて設計される)。例えば、所望のポリペプチドの部分をコードする種々の小さなオリゴヌクレオチドが、合成され得、PCR、ライゲーションまたはライゲーション鎖反応によって集められ得る。例えば、参照によって本明細書に援用される、Barany, et al., Proc. Natl. Acad. Sci. 88: 189-193 (1991) ;米国特許第6,521,427号明細書を参照すればよい。
【0193】
本発明は、組換え遺伝学の分野における通常の技術を利用している。本発明に使用する一般的な方法を開示する基本的な教科書としては、Sambrook et al., Molecular Cloning, A Laboratory Manual (3rd ed. 2001);Kriegler, Gene Transfer and Expression: ALaboratory Manual (1990);およびCurrent Protocols in Molecular Biology (Ausubelet al., eds., 1994))が挙げられる。
【0194】
分子生物学的な技術について記載している一般的な教科書としては、Berger and Kimmel, Guide to Molecular Cloning Techniques, Methods in Enzymology volume 152 Academic Press, Inc., San Diego, CA (Berger);Sambrook et al., Molecular Cloning - A Laboratory Manual (2nd Ed.), Vol. 1-3, Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, New York, 1989 (“Sambrook”)およびCurrent Protocols in Molecular Biology, F.M. Ausubel et al., eds., Current Protocols, a joint venture between Greene Publishing Associates, Inc. and John Wiley & Sons, Inc., (supplemented through 1999) (“Ausubel”))が挙げられる。これらの教科書は、変異生成、ベクター、プロモータおよび他の関連性のある多くの原理(非天然アミノ酸、直交性のtRNA、直交性の合成酵素、およびこれらの対を含むタンパク質産生用のセレクターコドンを含む、遺伝子またはポリヌクレオチドの生成と関連性のあるものが挙げられるが、これらに限定されない)の利用について記載している。
【0195】
多様な種類の変異生成が、本発明において種々の目的に使用される。当該目的としては、tRNAのライブラリを産生すること、合成酵素のライブラリを産生すること、セレクターコドンを産生すること、所定のタンパク質またはポリペプチドにおける非天然アミノ酸をコードするセレクターコドンを挿入することが挙げられるが、これらに限定されない。変異生成としては、部位特異的変異生成、無作為点変異生成、相同性組換え、DNAシャッフリングもしくは他の反復的な変異生成法、キメラ構築、鋳型を含有するウラシルを用いた変異生成、オリゴヌクレオチド特異的変異生成、ホスホロチオネート修飾DNA変異生成、もしくはギャップ2本鎖DNAを用いた変異生成など、またはこれらの任意の組合わせが挙げられるが、これらに限定されない。付加的な好適な方法としては、点不一致対、修復欠失宿主株を用いた変異生成、制限選択および制限精製、欠失変異生成、全体の遺伝子合成による変異生成、ならびに2本鎖切断修復などが挙げられるが、これらに限定されない。また、キメラ構築に関する変異生成が本発明に包含されるが、これに限定されない。1つの実施形態において、変異生成は、天然に存在する分子、または変更されるかもしくは変異された天然に存在する分子の公知の情報(配列、配列比較、物理的性質、または結晶構造などが挙げられるが、これらに限定されない)よって導かれ得る。
【0196】
本明細書に見られる教科書および例は、これらの手法について記載している。付加的な情報は、以下の公刊物および引用文献:Ling et al., Approaches to DNA mutagenesis: an overview, Anal Biochem. 254(2): 157-178 (1997);Dale et al., Oligonucleotide-directed random mutagenesis using the phosphorothioate method, Methods Mol. Biol. 57:369-374 (1996) ;Smith, In vitro mutagenesis, Ann. Rev. Genet. 19:423-462 (1985);Botstein & Shortle, Strategies and applications of in vitro mutagenesis, Science 229:1193-1201 (1985);Carter, Site-directed mutagenesis, Biochem. J. 237:1-7 (1986) ;Kunkel, The efficiency of oligonucleotide directed mutagenesis, inNucleic Acids & Molecular Biology (Eckstein, F. and Lilley, D.M.J. eds., Springer Verlag, Berlin) (1987);Kunkel, Rapid and efficient site-specific mutagenesiswithout phenotypic selection, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 82:488-492 (1985);Kunkel et al., Rapid and efficient site-specific mutagenesis without phenotypic selection, Methods in Enzymol. 154, 367-382 (1987);Bass et al., Mutant Trp repressors with new DNA-binding specificities, Science 242:240-245 (1988);Methods in Enzymol. 100:468-500 (1983);Methods in Enzymol. 154:329-350 (1987);Zollcr & Smith, Oligonucleotide-directed mutagenesis using M13-derived vectors: an efficientand general procedure for the production of point mutations in any DNA fragment, Nucleic Acids Res. 10:6487-6500 (1982); Zoller & Smith, Oligonucleotide-directed mutagenesis of DNA fragments cloned into M13 vectors, Methods in Enzymol. 100:468-500 (1983); Zollcr & Smith, Oligonucleotide-directed mutagenesis: a simple method using two oligonucleotide primers and a single-stranded DNA template, Methods in Enzymol. 154:329- 350 (1987);Taylor et al., The use of phosphorothioate-modified DNA in restriction enzyme reactions to prepare nicked DNA, Nucl. Acids Res. 13: 8749-8764 (1985) ;Taylor et al., The rapid generation of oligonucleotide-directed mutations at high frequency using phosphorothioate-modified DNA, Nucl. Acids Res. 13: 8765-8787 (1985) ;Nakamaye & Eckstein, Inhibition of restriction endonuclease Nci I cleavage by phosphorothioate groups and its application to oligonucleotide-directed mutagenesis, Nucl. Acids Res. 14: 9679-9698 (1986) ;Sayers et al, Y-T Exonucleases in phosphorothioaie-based oligonucleotide-directed mutagenesis, Nucl. Acids Res, 16:791-802 (1988);Sayers et al., Strand specificcleavage of phosphorothioate-containing DNA by reaction with restriction endonucleases in the presence of ethidium bromide, (1988) Nucl. Acids Res. 16: 803-814;Kramer et al., The gapped duplex DNA approach to oligonucleotide-directed mutation construction, Nucl. Acids Res. 12: 9441-9456 (1984) ;Kramer & Fritz Oligonucleotide-directed construction of mutations via gapped duplex DNA, Methods in Enzymol. 154:350-367 (1987);Kramer et al., Improved enzymatic in vitro reactionsin the gapped duplex DNA approach to oligonucleotide-directed construction of mutations, Nucl. Acids Res. 16: 7207 (1988) ;Fritz et al., Oligonucleotide-directed construction of mutations: a gapped duplex DNA procedure without enzymatic reactions in vitro, Nucl. Acids Res. 16: 6987-6999 (1988) ;Kramer et al., Point Mismatch Repair, Cell 38:879-887 (1984); Carter et al., Improved oligonucleotidesite-directed mutagenesis using M13 vectors, Nucl. Acids Res. 13: 4431 -4443 (1985);Carter, Improved oligonucleotide-directed mutagenesis using M13 vectors, M
ethods in Enzymol. 154: 382-403 (1987);Eghtedarzadeh & Henikoff, Use of oligonucleotides to generate large deletions, Nucl. Acids Res. 14: 5115 (1986) ;Wells et al., Importance of hydrogen-bond formation in stabilizing the transition state of subtilisin, Phil. Trans. R. Soc. Lond. A 317: 415-423 (1986);Nambiar et al., Total synthesis and cloning of a gene coding for the ribonuclease S protein, Science 223: 1299-1301 (1984);Sakmar and Khorana, Total synthesis and expression of a gene for the a-subunit of bovine rod outer segment guanine nucleotide-binding protein (transducin), Nucl. Acids Res. 14: 6361-6372 (1988) ;Wells et al., Cassette mutagenesis: an efficient method for generation of multiple mutations at defined sites, Gene 34:315-323 (1985) ;Grundstrom et al., Oligonucleotide-directed mutagenesis by microscale 'shot-gun' gene synthesis, Nucl. Acids Res. 13: 3305-3316 (1985) ;Mandecki, Oligonucleotide-directed double-strand break repair in plasmids of Escherichia coli: a method for site-specific mutagenesis, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 83:7177-7181 (1986) ;Arnold, Protein engineering for unusual environments, Current Opinion in Biotechnology 4:450-455 (1993) ;Sieber, et al., Nature Biotechnology, 19:456-460 (2001) ;W. P. C. Stemmer, Nature 370, 389-91 (1994) ;およびI. A. Lorimer, I. Pastan, Nucleic Acids Res. 23, 3067-8 (1995) に見出される。上述の方法に関する付加的な詳細は、種々の変異生成方法に伴う問題を解決する有用な管理についても記載しているMethods in Enzymology Volume 154に見出され得る。
【0197】
また、本発明は、直交性のtRNA/RS対を介した非天然アミノ酸のインビボにおける組み込み用の、真核生物宿主細胞、非真核生物宿主細胞、および生体に関する。宿主細胞は、本発明のポリヌクレオチドまたは本発明のポリヌクレオチドを含んでいる構築物(クローニングベクターまたは発現ベクターであり得る本発明のベクターが挙げられるが、これらに限定されない)を用いて、遺伝的に改変される(形質転換されるか、形質導入されるか、またはトランスフェクトされる、が挙げられるが、これらに限定されない)。ベクターは、例えば、プラスミド、細菌、ウイルス、裸のポリヌクレオチド、または抱合されたポリヌクレオチドの形態であり得る。ベクターは、標準的な方法(エレクトロポレーション(From et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 82, 5824 (1985) )、ウイルスベクターによる感染、小さなビーズもしくは粒子のマトリクスの内部、または表面のいずれかに核酸を有する小粒子による高速弾丸侵入(high velocity ballistic penetration)(Klein et al., Nature 327, 70-73 (1987) )などが挙げられる)によって細胞および/または微生物に導入される。
【0198】
改変された宿主細胞は、例えば、スクリーニング段階、プロモータの活性化または形質転換体の選択といった活性に適するように改変された、従来の培養液において培養され得る。これらの細胞は、遺伝子導入生体において任意に培養され得る。他の有用な参考文献(細胞の単離および培養にとって(例えば、後の核酸単離にとって)の、が挙げられるが、これに限定されない)としては、Freshney (1994) Culture of Animal Cells, a Manual of Basic Technique, third edition, Wiley- Liss, New York およびこれに引用されている参考文献;Payne et al. (1992) Plant Cell and Tissue Culture in Liquid Systems John Wiley & Sons, Inc. New York, NY;Gamborg and Phillips (eds.) (1995) Plant Cell, Tissue and Organ Culture;Fundamental Methods Springer Lab Manual, Springer-Verlag (Berlin Heidelberg New York)ならびにAtlas and Parks (eds.) The Handbook of Microbiological Media (1993) CRC Press, Boca Raton, FLが挙げられる。
【0199】
標的の核酸を細胞に導入する種々のよく知られる方法が、本発明に使用される任意の方法に利用可能である。これらとしては、DNAを含有する細菌の原形質体との受容細胞の融合、エレクトロポレーション、粒子衝撃法(projectile bombardment)、およびウイルスベクターを用いた感染(以下にさらに論じられている)などが挙げられる。細菌細胞は、本発明のDNA構築物を含有するプラスミドの数を増幅するために使用され得る。細菌は、対数期まで増殖され、細菌内におけるプラスミドは、当該技術において公知の種々の方法(例えば、実際には、Sambrookを参照すればよい)によって単離され得る。さらに、細菌からのプラスミドの精製にとってのキットは、市販されている(例えば、いずれもファルマシア バイオテック(Pharmacia Biotech)から得られるイージープレップ(EasyPrep)(商標)、フレキシプレップ(FlexiPrep)(商標);ストラタジーン(Stratagene)から得られるストラタクリーン(StrataClean)(商標);およびキアゲン(Qiagen)から得られるキアプレップ(QIAprep)(商標))。それから、単離され、精製されたプラスミドは、さらに操作されて他のプラスミドを産生するか、細胞のトランスフェクトに使用されるか、または関連するベクターに組み込まれて生体に感染させられる。典型的なベクターは、特定の標的核酸の発現の制御に有用な、転写ターミネータおよび翻訳ターミネータ、転写開始配列および翻訳開始配列、ならびにプロモータを含んでいる。ベクターは、少なくとも1つの独立したターミネータ配列を含んでいる遺伝的な発現カセット、真核生物もしくは原核生物もしくはこの両方におけるカセットの複製を可能にする配列(シャトルベクターが挙げられるが、これに限定されない)、および原核生物系もしくは真核生物系の両方にとっての選択マーカーを任意に含んでいる。ベクターは、原核生物、真核生物または両方における複製および組み込みに好適である。例えば、Gillam & Smith, Gene 8:81 (1979);Roberts, et al., Nature, 328:731 (1987); Schneider, B., et al., Protein Expr. Purif. 6435:10 (1995);Ausubel, Sambrook, Berger (すべて上述されている)を参照すればよい。クローニングに有用な細菌およびバクテリオファージのカタログは、例えば、ATCCによって提供される(例えば、ATCCによって公開されるThe ATCC Catalogue of Bacteria and Bacteriophage (1992) Gherna et al. (eds))。また、配列決定、クローニング、および分子生物の他の局面に関する付加的な基本的な手法ならびに基礎になる論理的な考察は、Watson et al. (1992) Recombinant DNA Second Edition Scientific American Books, NYに見出される。さらに、実質的に任意の核酸(および、らせん構造であるか否かにかかわらず、実質的に任意の標識核酸)は、任意の多様な販売元(例えば、ザ ミッドランド サーティファイド リエージェント カンパニー(the Midland Certified Reagent Company)(ミッドランド(Midland)、TX、ワールドワイドウェブのmcrc.comにおいて利用可能である)、ザ グレート アメリカン ジーン カンパニー(The Great American Gene Company)(ロマーナ(Ramona)、CA、ワールドワイドウェブのgenco.comにおいて利用可能である)、エクスプレスジーン インク(ExpressGen Inc.)(シカゴ(Chicago)、IL、ワールドワイドウェブのexpressgen.comにおいて利用可能である)、オペロン テクノロジーズ インク(Operon Technologies Inc.)(アラメダ(Alameda)、CA)および多くの他社)から、特別または通常に注文して提供され得る。
【0200】
(セレクターコドン)
本発明のセレクターコドンは、タンパク質の生合成機構の遺伝学的なコドンの枠組みを拡張する。例えば、セレクターコドンとしては、固有の3塩基コドン、ナンセンスコドン(例えば、ストップコドン(アンバーコドン(UAG)、またはオパールコドン(UGA)が挙げられるが、これらに限定されない))、非天然コドン、4塩基以上のコドン、またはレアコドン(rare codon)などが挙げられるが、これらに限定されない。所望の遺伝子またはポリヌクレオチドに導入され得るセレクターコドンの数は広範囲に及ぶ(少なくともレプチンポリペプチドの部分を少なくともコードする単一のポリヌクレオチドにおける1以上、2以上、3以上、4、5、6、7、8、9、10以上が挙げられるが、これらに限定されない)ことは、当業者にとってただちに明らかである。
【0201】
1つの実施形態において、方法は、真核細胞のインビボにおける非天然アミノ酸の組み込み用のストップコドンである、セレクターコドンの使用に関する。例えば、ストップコドン(UAGが挙げられるが、これに限定されない)を認識するO−tRNAが産生され、所望の非天然アミノ酸と共にO−RSによってアミノアシル化される。このO−tRNAは、天然に存在する宿主のアミノアシル−tRNA合成酵素によって認識されない。従来の部位特異的な突然変異生成は、所定のポリペプチドにおける所定の部位に対するストップコドン(TAGが挙げられるが、これに限定されない)の導入に使用され得る。例えば、Sayers, J.R.,ら (1988), 5'-3' Exonuclease in phosphorothioate-based oligonucleotide-directed mutagenesis. Nucleic Acids Res. 791-802を参照すればよい。O−RS、O−tRNAおよび所定のポリペプチドをコードする核酸がインビボにおいて組み合せられると、非天然アミノ酸がUAGコドンに応じて組み込まれて、特定の位置に非天然アミノ酸を含んでいるポリペプチドを生じさせる。
【0202】
非天然アミノ酸のインビボにおける組込みは、宿主細胞を大きく乱すことなくなされ得る。例えば、UAGコドンの抑制効率が、O−tRNA(アンバーサプレッサtRNAが挙げられるが、これらに限定されない)と、(ストップコドンに対して結合し、リボソームからの成長しつつあるペプチドの放出を開始する)真核細胞放出因子(eRFが挙げられるが、これに限定されない)との間の競合に依存するので、抑制効率は、O−tRNAおよび/またはサプレッサtRNAの発現レベルを増強することによって調節され得るが、これらに限定されない。
【0203】
また、セレクターコドンは、拡張されたコドン(4以上の塩基コドン(例えば、4、5、6以上の塩基コドン)が挙げられるが、これらに限定されない)を包含する。4塩基コドンの例としては、AGGA、CUAG、UAGA、およびCCCUなどが挙げられるが、これらに限定されない。5塩基コドンの例としては、AGGAC、CCCCU、CCCUC、CUAGA、CUACU、およびUAGGCなどが挙げられるが、これらに限定されない。本発明の特徴は、フレームシフト抑圧に基づいて延長されたコドンの使用を包含する。4以上の塩基コドンは、同じタンパク質に1つまたは複数の非天然アミノ酸(例として挙げられるが、これらに限定されない)を挿入可能である。例えば、突然変異されたO−tRNA(特別なフレームシフトサプレッサtRNAが挙げられるが、これに限定されない)の存在下において、アンチコドンループ(少なくとも8−10ntのアンチコドンループが挙げられるが、これらに限定されない)を用いて、4以上の塩基コドンが単一のアミノ酸として解読される。他の実施形態において、アンチコドンループは、少なくとも4塩基コドン、少なくとも5塩基コドン、または少なくとも6塩基コドン(例として挙げられるが、これらに限定されない)を翻訳可能である。見込みのある4塩基コドンが256あるので、複数の非天然アミノ酸は、4以上の塩基コドンを用いて、同じ細胞においてコードされ得る。Anderson et al, (2002) Exploring the Limits of Codon and Anticodon Size, Chemistry and Biology. 9:237-244;Magliery, (2001) Expanding the Genetic Code: Selection of Efficient Suppressors of Four-base Codons and Identification of "Shifty" Four-base Codons with a Library Approach in Escherichia coli, J. MoI. Biol. 307: 755-769を参照すればよい。
【0204】
例えば、4塩基コドンは、インビトロ生合成方法を用いた、タンパク質への非天然アミノ酸の組込みに使用されている。例えば、Ma et al, (1993) Biochemistry. 32:7939、およびHohsaka et al, (1999) L Am. Chem. Soc. 121: 34を参照すればよい。CGGGおよびAGGUは、化学的にアシル化された2つのフレームシフトサプレッサtRNAを用いて、インビトロにおいて、ストレプトアビジンに2−ナフチルアラニンおよびリジンNBD誘導体を同時に組み込むために使用された。例えば、Hohsaka et al, (1999) J. Am. Chem. Soc. 121: 12194を参照すればよい。インビボにおける研究において、Moore et alは、NCUAアンチコドンを有するtRNALeu誘導体のUAGNコドン(NはU、A、GまたはCであり得る)を抑圧する能力を試験し、クワドルプレットUAGAが、0または−1フレームの状態に少なく翻訳して、13から26%効率において、UCUAアンチコドンを有するtRNALeuによって翻訳され得ることを見出した。例えば、Moore et al, (2000) J. MoI. Biol., 298:195を参照すればよい。1つの実施形態において、レアコドンまたはナンセンスコドンに基づいて延長されたコドンは、読み過ごしのミスセンス、および他の不要な部位におけるフレームシフト抑圧を低減し得る本発明に、使用され得る。
【0205】
また、所定の系に関して、内在性の系が天然塩基コドンを使用しない(またはまれにしか使用しない)場合に、セレクターコドンは、天然の3塩基コドンの1つを包含し得る。例えば、これとしては、天然の3塩基コドンを認識するtRNAを欠如している系、および/または3塩基コドンがレアコドンである系が挙げられる。
【0206】
セレクターコドンは非天然塩基対を任意に包含する。これらの非天然塩基対は、存在する遺伝子アルファベットをさらに拡張する。追加の塩基対の1つは、64から125までトリプレットの数を増加させる。第3の塩基対の性質としては、安定かつ選択的な塩基対形成、ポリメラーゼによる高い忠実度を伴ったDNAへの効率的な酵素的組み込み、および新生の非天然塩基対の合成後における効率的な連続するプライマー伸張が挙げられる。方法および組成物に適合し得る非天然塩基対の記述の例としては、例えば、Hirao et al, (2002) An unnatural base pair for incorporating amino acid analogues into protein, Nature Biotechnology, 20:177-182が挙げられる。他の関連する刊行物は、以下に載せられている。
【0207】
インビボにおける使用法に関して、非天然ヌクレオシドは、膜透過性であり、リン酸化されて対応する3リン酸塩を形成する。その上に、増加した遺伝情報は、安定であり、細胞性の酵素によって破壊されない。Bennerおよびその他によるこれまでの試みは、もっとも注目すべき例であるイソ−C:イソ−G対という、基準のWatson-Crick対における水素結合様式とは異なる、水素結合様式を巧く活用した。例えば、Switzer et al, (1989) J. Am. Chem. Soc, 111 :8322;およびPiccirilli et al, (1990) Nature, 343:33;Kool, (2000) Curr. Opin. Chem. Biol., 4:602を参照すればよい。これらの塩基は、通常、ある程度まで天然塩基と誤対合し、酵素的に修復され得ない。Koolおよび共同研究者らは、塩基間の疎水性パッキング相互作用(hydrophobic packing interactions)が水素結合と入れ替わって、塩基対の形成を生じることができることを証明した。例えば、Kool, (2000) Curr. Opin. Chem. Biol., 4:602、およびGuckian and Kool, (1998) Angew. Chem. Int. Ed. Engl., 36, 2825を参照すればよい。上述した条件のすべてを満たす非天然塩基対を開発する試みにおいて、Schultz、Romesbergおよび共同研究者らは、一連の非天然疎水性塩基を体系的に合成し、研究している。PICS:PICS自己対は、天然塩基対より安定であることが見出されており、Escherichia coliのDNAポリメラーゼ Iのクレノー酵素(Klenow fragment)(KF)によって、DNAに効率的に組み込まれ得る。例えば、McMinn et al, (1999) J. Am. Chem. Soc. 121: 11586;およびOgawa et al, (2000) J. Am. Chem. Soc. 122:3274;を参照すればよい。3MN:3MN自己対は、生物学的機能に対して十分な効率性および選択性を伴って、KFによって合成され得る。例えば、Ogawa et al, (2000) J. Am. Chem. Soc, 122:8803を参照すればよい。しかし、両方の塩基は、さらなる複製に対して連鎖ターミネータとして作用する。近年、突然変異体DNAポリメラーゼは、PICS自己対の複製に使用され得るように、発展されている。さらに、7AI自己対は複製され得る。例えば、Tae et al, (2001) J. Am. Chem. Soc. 123:7439を参照すればよい。また、Cu(II)との結合によって安定な対を形成する新規な金属塩基対であるDipic:Pyが、開発されている。例えば、Meggers et al, (2000) J. Am. Chem. Soc 122:10714を参照すればよい。拡張されたコドンおよび非天然コドンが、天然コドンに対して本来的に直交性であるので、本発明の方法は、この性質を活かして非天然アミノ酸用の直交性のtRNAを生成し得る。
【0208】
また、翻訳回避系(translational bypassing system)が、所望のポリペプチドにおける非天然アミノ酸の組み込みに使用され得る。翻訳回避系において、大きな配列が遺伝子に組み込まれるが、タンパク質に翻訳されない。当該配列は、リボソームに当該配列を跳び越えさせ、挿入の下流にある翻訳を再開させる合図としての機能を果たす構造を含んでいる。
【0209】
ある種の実施形態において、本発明の方法および/または組成物における所定のタンパク質またはポリペプチド(またはこれらの一部)は、核酸によってコードされている。典型的に、核酸は、少なくとも1つのセレクターコドン、少なくともつ2のセレクターコドン、少なくとも3つのセレクターコドン、少なくとも4つのセレクターコドン、少なくとも5つのセレクターコドン、少なくとも6つのセレクターコドン、少なくとも7つのセレクターコドン、少なくとも8つのセレクターコドン、少なくとも9つのセレクターコドン、少なくとも10またはそれ以上のセレクターコドンを含んでいる。
【0210】
所定のタンパク質またはポリペプチドをコードする遺伝子は、例えば、非天然アミノ酸を組込むための1つ以上のセレクターコドンを含めるために、当業者に公知の方法、および本明細書に記載されている方法を用いて、突然変異生成され得る。例えば、所定のあるタンパク質に関する核酸は、1つ以上の非天然アミノ酸の組み込みを提供する1つ以上のセレクターコドンを含めるために、突然変異される。本発明は、そのようなバリアント(例えば非天然アミノ酸を少なくとも1つ含んでいる突然変異体、任意のタンパク質の型が挙げられるが、これらに限定されない)のいずれかを包含する。また同様に、本発明は、対応する核酸(すなわち、1つ以上の非天然アミノ酸をコードする1つ以上のセレクターコドンを有する任意の核酸)を包含する。
【0211】
所定のタンパク質(例えば、レプチンポリペプチド)をコードする核酸分子によって、ポリペプチドの所望される任意の位置にシステインを導入する突然変異が容易になされ得る。システインは、反応性分子、水溶性ポリマー、タンパク質、または多種多様な他の分子を、所定のタンパク質に導入するために広く使用されている。レプチンポリペプチドの所望の位置へのシステインの組み込みに好適な方法は、当業者に公知であり(例えば、引用によって本明細書に援用される米国特許第6,420,339号明細書に記載の方法)、標準的な技術である。
【0212】
<IV.天然にコードされていないアミノ酸>
非常に広範囲に及ぶ天然にコードされていないアミノ酸が、本発明における使用に好適である。任意の多様な天然にコードされていないアミノ酸が、レプチンポリペプチドに導入され得る。一般的に、導入された天然にコードされていないアミノ酸は、一般的な20の遺伝的にコードされるアミノ酸(すなわち、アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン、グルタミン酸、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、スレオニン、トリプトファン、チロシン、およびバリン)に対して化学的に、実質的に不活性である。いくつかの実施形態において、天然にコードされていないアミノ酸は、一般的な20のアミノ酸に見られない官能基と効率的かつ選択的に反応して安定な抱合物を形成する側鎖官能基(アジド、ケトン、アルデヒドおよびアミノオキシ基が挙げられるが、これらに限定されない)を含んでいる。例えば、アジド官能基を含んでいる天然にコードされていないアミノ酸を含んでいるレプチンポリペプチドは、ポリマー(ポリ(エチレングリコール)が挙げられるが、これに限定されない)と反応してか、または代替可能に、アルキン部分を含有する第2のポリペプチドと反応して、ヒュイゲン[3+2]付加環化産物を形成するためのアジドおよびアルキン官能基の選択的な反応によって生じる安定な抱合物を形成し得る。
【0213】
α−アミノ酸の一般的な構造は、以下の式I:
【0216】
天然にコードされていないアミノ酸は、典型的に、上述の式を有する構造のいずれかであり(ここで、R基は20の天然アミノ酸に用いられている官能基以外の任意の置換基である)、本発明における利用に好適であり得る。本発明の天然にコードされていないアミノ酸が、側鎖の構造においてのみ天然アミノ酸と典型的に異なるので、天然にコードされていないアミノ酸は、それらが天然に存在するポリペプチドにおいて形成される同じ様式において、他のアミノ酸(天然または天然にコードされていないアミノ酸が挙げられるが、これらに限定されない)とアミド結合を形成する。しかし、天然にコードされていないアミノ酸は、これらを天然のアミノ酸と区別する側鎖基を有する。例えば、Rは、アルキル−、アリール−、アシル−、ケト−、アジド−、ヒドロキシル−、ヒドラジン、シアノ−、ハロ−、ヒドラジド、アルケニル、アルキル、エーテル、チオール、セレノ−、スルフォニル−、ボレート、ボロネート、ホスホ、ホスホノ、ホスフィン、ヘテロ環、エノン、イミン、アルデヒド、エステル、チオ酸、ヒドロキシルアミン、もしくはアミノ基、またはこれらの組合わせを、任意に含んでいる。本発明における使用に好適であり得る他の所定の天然に存在しないアミノ酸としては、光活性化架橋を含んでいるアミノ酸、スピン標識されたアミノ酸、蛍光性のアミノ酸、金属が結合しているアミノ酸、金属を含有しているアミノ酸、放射性のアミノ酸、新規な官能基を有するアミノ酸、他のと共有的または非共有的に相互作用するアミノ酸、光ケージドおよび/または光異性体化アミノ酸、ビオチンまたはビオチン類似体を含んでいるアミノ酸、糖鎖付加されたアミノ酸(例えば、糖置換化セリン)、他の炭水化物によって修飾されたアミノ酸、ケト含有アミノ酸、ポリエチレングリコールまたはポリエーテルを含んでいるアミノ酸、重元素によって置換されたアミノ酸、化学的に切断可能および/または光によって切断可能なアミノ酸、天然アミノ酸と比べて延長された側鎖(ポリエーテルまたは長鎖炭化水素(約5または約10を超える炭素が挙げられるが、これらに限定されない)が挙げられるが、これらに限定されない)を有しているアミノ酸、炭素結合型の糖を含有しているアミノ酸、酸化還元活性のアミノ酸、アミノチオ酸含有アミノ酸、ならびに1つ以上の毒性部分を含んでいるアミノ酸が挙げられる。
【0217】
本発明における使用に好適であり得、水溶性ポリマーとの反応に有用である例示的な天然にコードされていないアミノ酸としては、カルボニル反応性基、アミノオキシ反応性基、ヒドラジン反応性基、ヒドラジド反応性基、セミカルバジド反応性基、アジド反応性基およびアルキン反応性基を有するアミノ酸が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、天然にコードされていないアミノ酸は、糖鎖部分を含んでいる。そのようなアミノ酸の例としては、N−アセチル−L−グルコサミニル−L−セリン、N−アセチル−L−ガラクトサミニル−L−セリン、N−アセチル−L−グルコサミニル−L−スレオニン、N−アセチル−L−グルコサミニル−L−アスパラギンおよびO−マンノサミニル−L−セリンが挙げられるが、これらに限定されない。また、そのようなアミノ酸の例としては、アミノ酸と糖鎖との間に天然に存在するN型またはO型の結合が、自然には通常は見られない共有結合(アルケン、オキシム、チオエーテルおよびアミドなどが挙げられるが、これらに限定されない)によって置換されている場合の例が挙げられる。また、そのようなアミノ酸の例としては、2−デオキシ−グルコース、および2−デオキシガラクトースといった、天然に存在するタンパク質に通常は見られない糖鎖が挙げられる。
【0218】
本明細書に規定される天然にコードされていないアミノ酸の多くは、市販されている(例えば、シグマアルドリッチ(Sigma-Aldrich)(セントルイス(St.Louis)、MO、USA)、ノババイオケム(Novabiochem)(EMD Biosciences部門、ダームシュタット(Darmstadt)、ドイツ)、またはペプテック(Peptech)(バーリントン(Burlington)、MA、USA)から得られる)。市販されていない天然にコードされていないアミノ酸は、本明細書に規定されているようにか、または当業者にとって公知の標準的な方法を用いて任意に合成される。有機合成技術に関しては、例えば、Organic Chemistry by Fessendonand Fessendon, (1982, Second Edition, Willard Grant Press, Boston Mass.);Advanced Organic Chemistry by March (Third Edition, 1985, Wiley and Sons, New York);およびAdvanced Organic Chemistry by Carey and Sundberg (Third Edition, Parts A and B, 1990, Plenum Press, New York)を参照すればよい。また、参照によって本明細書
に援用される、米国特許出願公開第2003/0082575号明細書および米国特許出願公開第2003/0108885号明細書を参照すればよい。また、新規な側鎖を含有する非天然アミノ酸に加えて、本発明における使用に好適であり得る非天然アミノ酸は、これらに限定されないが、式IIおよびIII:
【0221】
(ここで、Zは、OH、NH
2、SH、NH−R’、またはS−R’を典型的に備え;同じかまたは異なり得るXおよびYは、SまたはOを典型的に備え、任意に同じであるか、または異なるRおよびR’は、水素だけでなく式Iを有する非天然アミノ酸に関して上述したR基にとっての置換基の同じ一覧から任意に選択される)
の構造が挙げられる修飾された骨格構造を任意に含んでいる。例えば、本発明の非天然アミノ酸は、式IIおよびIIIによって示されるようなアミノ基またはカルボキシル基において置換基を任意に含んでいる。この種の非天然アミノ酸としては、一般的な20の天然アミノ酸または非天然アミノ酸に対応する側鎖を有する(限定されないが、これらが挙げられる)、α−ヒドロキシ酸、α−チオ酸、α−アミノチオカルボキシレートが挙げられるが、これらに限定されない。さらに、α−炭素における置換基としては、D−グルタメート、D−アラニン、D−メチル−O−チロシン、およびアミノブチル酸などといったL、D、またはα−α−2置換アミノ酸が任意に挙げられるが、これらに限定されない。他の構造的な代替物としては、プロリン類似物ならびに3、4、5、6、7、8および9員環のプロリン類似物といった環状アミノ酸、これらと同様に置換β−アラニンおよびγ−アミノブチル酸といったβおよびγアミノ酸が挙げられる。
【0222】
多くの非天然アミノ酸は、チロシン、グルタミンおよびフェニルアラニンといった天然アミノ酸に基づいており、本発明における使用に好適である。チロシン類似物としては、置換チロシンが、ケト基(これに限定されないが、アセチル基が挙げられる)、ベンゾイル基、アミノ基、ヒドラジン基、ヒドロキシアミン基、チオール基、カルボキシ基、イソプロピル基、メチル基、C
6−C
20の直鎖状または分枝状の炭化水素、飽和もしくは不飽和の炭化水素、O−メチル基、ポリエーテル基、ニトロ基、またはアルキニル基など(限定されないが、これらが挙げられる)を含んでいる場合の、パラ位置換チロシン、オルト位置換チロシン、およびメタ位置換チロシンが挙げられるが、これらに限定されない。さらにまた、多置換アリール環が意図される。本発明における利用に好適なグルタミン類似物としては、α−ヒドロキシ誘導体、γ−置換誘導体、環状誘導体、およびアミド置換グルタミン誘導体が挙げられるが、これらに限定されない。本発明における利用に好適なフェニルアラニン類似物の例としては、置換基が、ヒドロキシ基、メトキシ基、メチル基、アリル基、アルデヒド、アジド、ヨード、ブロモ、ケト基(アセチル基が挙げられるが、これに限定されない)、ベンゾイル、またはアルキニル基など(限定されないが、これらが挙げられる)を含んでいる場合の、パラ位置換フェニルアラニン、オルト位置換フェニルアラニン、およびメタ位置換フェニルアラニンが挙げられるが、これらに限定されない。本発明における利用に好適な非天然アミノ酸の特定の例としては、p−アセチル−L−フェニルアラニン、O−メチル−L−チロシン、L−3−(2−ナフチル)アラニン、3−メチル−フェニルアラニン、O−4−アリル−L−チロシン、4−プロピル−L−チロシン、トリ−O−アセチル−GlcNAcβ−セリン、L−ドーパ、フッ化フェニルアラニン、イソプロピル−L−フェニルアラニン、p−アジド−L−フェニルアラニン、p−アシル−L−フェニルアラニン、p−ベンゾイル−L−フェニルアラニン、L−ホスホセリン、ホスホノセリン、ホスホノチロシン、p−ヨード−フェニルアラニン、p−ブロモフェニルアラニン、p−アミノ−L−フェニルアラニン、イソプロピル−L−フェニルアラニン、およびp−プロパルギルオキシ−フェニルアラニンなどが挙げられるが、これらに限定されない。本発明における使用に好適な非天然アミノ酸の変形の構造の例は、例えば、“In vivo incorporation of unnatural amino acids”と表題が付けられた国際公開第2002/085923号パンフレットに規定されている。また、付加的なメチオニン類似物に関しては、参照によって本明細書に援用される、Kiick et al., (2002) Incorporation of azides into recombinant proteins for chemoselective modification by the Staudinger ligation, PNAS 99:19-24を参照すればよい。
【0223】
1つの実施形態において、非天然アミノ酸(例えば、p−(プロパルギルオキシ)−フェニルアラニン)を含んでいるレプチンポリペプチドの組成物が提供される。また、p−(プロパルギルオキシ)−フェニルアラニンを含んでいる種々の組成物(タンパク質および/または細胞が挙げられるが、これらに限定されない)が、提供される。1つの局面において、p−(プロパルギルオキシ)−フェニルアラニン非天然アミノ酸を備える組成物は、直交性のtRNAをさらに含んでいる。非天然アミノ酸は、直交性のtRNAに対して共有結合的に(限定されないが、これが挙げられる)結合され得る(アミノアシル結合を介して直交性のtRNAに対して共有結合的に結合される、直交性のtRNAの末端リボース糖の3’OHまたは2’OHに対して共有結合的に結合されるなど、が挙げられるが、これらに限定されない)。
【0224】
タンパク質に組み込まれ得る非天然アミノ酸を介する化学部分は、タンパク質の種々の利点および操作を提供する。例えば、ケト官能基の固有の反応性は、多くのヒドラジン含有試薬またはヒドロキシアミン含有試薬のいずれかを用いた、インビボおよびインビトロにおけるタンパク質の選択的な修飾を可能にする。
【0225】
重原子非天然アミノ酸は、例えば、X線構造データの位相合わせに有用であり得る。また、非天然アミノ酸を用いた重原子の部位特異的な導入は、重原子のための位置の選択に選択性および自由度を提供する。光反応性非天然アミノ酸(ベンゾフェノンおよびアリールアジド(フェニルアジドが挙げられるが、これらに限定されない)側鎖を有するアミノ酸が挙げられるが、これらに限定されない)は、例えば、タンパク質のインビボおよびインビトロにおける効率的な光架橋を可能にする。光反応性アミノ酸の例としては、p−アジド−フェニルアラニンおよびp−ベンゾイル−フェニルアラニンが挙げられるが、これらに限定されない。光反応性アミノ酸を有するタンパク質は、その結果、光反応性基を供給する一時的な制御の励起によって、自由自在に光架橋され得る。1つの例において、非天然アミノ酸のメチル基は、核磁気共鳴および振動顕微鏡の利用を伴う(限定されないが、これらが挙げられる)、局所的な構造および動態のプローブとして、放射線標識されたメチル基(限定されないが、これが挙げられる)に置換され得る。アルキニル官能基またはアジド官能基は、例えば、[3+2]付加環化反応を介したタンパク質の選択的な修飾を可能にする。
【0226】
アミノ末端においてレプチンポリペプチドに組み込まれる非天然アミノ酸は、20の天然のアミノ酸に用いられる官能基以外の任意の置換基であるR基、およびα−アミノ酸に通常に存在するNH
2基とは異なる第2の反応性基から構成され得る(式Iを参照すればよい)。類似の非天然アミノ酸が、カルボキシル末端において、α−アミノ酸に通常に存在するCOOH基と異なる第2の反応性基を用いて、組み込まれ得る(式1を参照すればよい)。
【0227】
(非天然アミノ酸の化学合成)
本発明における使用に好適な非天然アミノ酸の多くは、例えば、シグマ(USA)またはアルドリッチ(Aldrich)(ミルウォーキー(Milwaukee)、WI、USA)から市販されている。市販されていない非天然アミノ酸は、本明細書に規定されているように、または多様な公開物に規定されているように、または当業者に公知の標準的な方法を用いて、任意に合成される。有機合成技術に関しては、例えば、Organic Chemistry by Fessendonand Fessendon, (1982, Second Edition, Willard Grant Press, Boston Mass.);Advanced Organic Chemistry by March (Third Edition, 1985, Wiley and Sons, New York);およびAdvanced Organic Chemistry by Carey and Sundberg (Third Edition, Parts A andB, 1990, Plenum Press, New York)を参照すればよい。非天然アミノ酸の合成について記載している付加的な公開物としては、例えば、“In vivo incorporation of UnnaturalAmino Acids”と題される国際公開第2002/085923号パンフレット;Matsoukaset al, (1995) J. Med. Chem., 38, 4660-4669;King, F.E. & Kidd, D.A.A. (1949) A New Synthesis of Glutamine and of γ- Dipeptides of Glutamic Acid from PhthylatedIntermediates. J. Chem. Soc. 3315-3319;Friedman, O.M. & Chatterrji, R. (1959) Synthesis of Derivatives of Glutamine as Model Substrates for Anti- Tumor Agents. J. Am. Chem. Soc. 81, 3750-3752;Craig, J.C. et al. (1988) Absolute Configuration of the Enantiomers of 7-Chloro-4 [[4-(diethylamino)-l-methylbutyl]amino]quinolim (Chloroquine). J. Org. Chem. 53, 1167-1170;Azoulay, M., Vilmont, M. & Frappier, F. (1991) Glutamine analogues as Potential Antimalarials, Eur. J. Med. Chem. 26, 201-5;Koskinen, A.M.P. & Rapoport, H. (1989) Synthesis of 4-Substituted Prolines as Conformationally Constrained Amino Acid Analogues. J. Org. Chem. 54, 1859-1866;Christie, B.D. & Rapoport, H. (1985) Synthesis of Optically Pure Pipecolates from L-Asparagine. Application to the Total Synthesis of (+)-Apovincamine through Amino Acid Decarbonylation and Iminium Ion Cyclization. J. Org. Chem. 1989:1859-1866;Barton et al, (1987) Synthesis of Novel alpha-Amino-Acids and Derivatives Using Radical Chemistry: Synthesis of L- and D-alpha-Amino-Adipic Acids, L-alpha- aminopimelic Acid and Appropriate Unsaturated Derivatives. Tetrahedron Lett 43:4297-4308;およびSubasinghe et al, (1992) Quisqualic acid analogues: synthesis of beta-heterocyclic 2- aminopropanoic acid derivatives and their activity at a novel quisqualate-sensitized site. J. Med. Chem. 35:4602-7が挙げられる。また、参照によって本明細書に援用される“Protein Arrays”と題された特許出願(2003年12月22日に出願された出願番号10/744,899および2002年12月22に出願された出願番号60/435,821)を参照すればよい。
【0228】
(A.カルボニル反応性基)
カルボニル反応性基を有しているアミノ酸は、求核性の付加を介して分子(PEGまたは他の水溶性分子が挙げられるが、これらに限定されない)を連結するための多様な反応、または特にアルドール縮合反応を可能にする。
【0229】
例示的なカルボニル含有アミノ酸は、以下のように表され得る:
【0231】
(ここで、nは0−10であり;R
1は、アルキル、アリール、置換アルキル、または置換アリールであり;R
2は、H、アルキル、アリール、置換アルキル、および置換アリールであり;R
3は、H、アミノ酸、ポリペプチド、またはアミノ末端修飾基であり、R
4は、H、アミノ酸、ポリペプチド、またはカルボキシ末端修飾基である)。いくつかの実施形態において、nは1であり、R
1はフェニルであり、R
2は単純アルキル(すなわち、メチル、エチルまたはプロピル)であり、ケトン部分は、アルキル側鎖に対してパラ位に位置している。いくつかの実施形態において、nは1であり、R
1はフェニルであり、R
2は単純アルキル(すなわち、メチル、エチルまたはプロピル)であり、ケトン部分は、アルキル側鎖に対してメタ位に位置している。
【0232】
p−アセチル−(+/−)−フェニルアラニンおよびm−アセチル−(+/−)−フェニルアラニンの合成は、参照によって本明細書に援用される、Zhang, Z.et al, Biochemistry 42: 6735-6746 (2003)に記載されている。他のカルボニル含有アミノ酸は、当業者によって同様に調製され得る。
【0233】
いくつかの実施形態において、天然にコードされていないアミノ酸を含むポリペプチドは、化学的に修飾されて、反応性のカルボニル官能基を生成する。例えば、抱合反応に有用なアルデヒド官能性基は、隣接するアミノ基とヒドロキシル基とを有する官能性基から生成され得る。生物学的に活性な分子がポリペプチドである場合に、例えば、N末端のセリンまたはスレオニン(通常に存在し得るか、または化学的もしくは酵素的な消化を介して露出され得る)は、過ヨウ素酸塩を用いた穏やかな酸化切断条件においてアルデヒド官能性基を生成するために使用され得る。例えば、Gaertner, et ah, Bioconjug. Chem. 3: 262-268 (1992) ;Geoghegan, K. & Stroh, J., Bioconjug. Chem. 3:138-146 (1992) ;Gaertner et al, J. Biol. Chem. 269:7224-7230 (1994) を参照すればよい。しかし、当該技術において公知の方法は、ペプチドまたはタンパク質のN末端におけるアミノ酸に制限される。
【0234】
本発明において、隣接するヒドロキシル基とアミノ基とを有する天然にコードされていないアミノ酸アミノ酸は、“マスクされた”アルデヒド官能性基としてポリペプチドに組み込まれ得る。例えば、5−ヒドロキシリジンは、イプシロンアミンと隣接するヒドロキシル基を有している。アルデヒドを生成する反応条件は、典型的に、ポリペプチド内の他の部位における酸化を回避するための穏やかな反応条件における、過剰なモル濃度のメタ過ヨウ素酸ナトリウムの添加に関する。酸化反応のpHは、典型的に約7.0である。典型的な反応は、ポリペプチド緩衝化溶液に対する、1.5モル濃度を超えるメタ過ヨウ素酸ナトリウムの添加に続いて、暗所における約10分間のインキュベーションに関する。例えば、参照によって本明細書に援用される米国特許第6,423,685号明細書を参照すればよい。
【0235】
カルボニル官能性基は、水性溶液における穏やかな条件の下に、ヒドラジン含有試薬、ヒドラジド含有試薬、ヒドロキシルアミン含有試薬、またはセミカルバジド含有試薬と選択的に反応して、生理学的条件においてそれぞれに対して安定な対応するヒドラゾン、オキシム、またはセミカルバゾン連結を形成し得る。例えば、Jencks, W. P., J. Am. Chem. Soc. 81, 475-481 (1959) ;Shao, J. and Tam, J. P., J. Am. Chem. Soc. 117:3893-3899 (1995) を参照すればよい。さらに、カルボニル基の固有な反応性は、他のアミノ酸側鎖の存在下において選択的な修飾を可能にする。例えば、Cornish, V. W., et al, J. Am. Chem. Soc. 118:8150-8151 (1996) ;Geoghegan, K. F. & Stroh, J. G., Bioconjug. Chem. 3:138-146 (1992) ;Mahal, L. K., et al, Science 276:1125-1128 (1997) を参照すればよい。
【0236】
(B.ヒドラジン反応性基、ヒドラジド反応性基またはセミカルバジド反応性基)
求核性基(例えば、ヒドラジン、ヒドラジドまたはセミカルバジド)を含んでいる天然にコードされていないアミノ酸は、PEGまたは他の水溶性ポリマー(限定されないが、これらが挙げられる)との抱合物を形成するための多様な求電子基との反応を可能にする。
【0237】
例示的なヒドラジン含有アミノ酸、ヒドラジド含有アミノ酸、またはセミカルバジド含有アミノ酸は、以下のように表され得る:
【0239】
(ここで、nは0−10であり;R
1は、アルキル、アリール、置換アルキル、または置換アリールであるか、または存在しないかであり;Xは、O、NまたはSであるか、または存在しないかであり;R
2は、H、アミノ酸、ポリペプチド、またはアミノ末端修飾基であり、R
3は、H、アミノ酸、ポリペプチド、またはカルボキシ末端修飾基である)。
【0240】
いくつかの実施形態において、nは4であり、R
1は存在せず、XはNである。いくつかの実施形態において、nは2であり、R
1は存在せず、Xは存在しない。いくつかの実施形態において、nは1であり、R
1はフェニルであり、XはOであり、酸素原子は、アリール環上における脂肪族基に対してパラ位に位置している。
【0241】
ヒドラジド含有アミノ酸、ヒドラジン含有アミノ酸、またはセミカルバジド含有アミノ酸は、市販の供給元から入手可能である。例えば、L−グルタミン酸−γ−ヒドラジドは、シグマケミカル(Sigma Chemical)(セントルイス(St. Louis)、MO)から入手可能である。市販されていない他のアミノ酸は、当業者によって調製され得る。例えば、参照によって本明細書に援用される米国特許第6,281,211号明細書を参照すればよい。
【0242】
ヒドラジド、ヒドラジンまたはセミカルバジド反応性基を有している天然にコードされていないアミノ酸を含んでいる、ポリペプチドは、アルデヒドまたは類似の化学反応性を有する他の官能基を含んでいる多様な分子と効率的かつ選択的に反応し得る。例えば、Shao, J. and Tam, J., J. Am. Chem. Soc. 117:3893-3899 (1995)を参照すればよい。ヒドラジド、ヒドラジンおよびセミカルバジド官能基の固有な反応性は、一般的な20のアミノ酸に存在する求核性基(セリンもしくはスレオニンのヒドロキシ基、またはリジンとN末端とのアミノ基が挙げられるが、これらに限定されない)と比較して、アルデヒド、ケトンおよび他の求電子性基に対してより著しい反応を起こさせる。
【0243】
(C.アミノオキシ含有アミノ酸)
アミノオキシ(ヒドロキシアミンとも呼ばれる)基を含んでいる天然にコードされていないアミノ酸は、PEGまたは他の水溶性ポリマー(限定されないが、これらが挙げられる)との抱合物を形成するための求電子性基との反応を可能にする。ヒドラジン、ヒドラジドおよびセミカルバジドと同様に、アミノオキシ基の増強された求核性は、アミノオキシ基がアルデヒドまたは類似の化学反応性を有している他の官能基と効率的かつ選択的に反応することを可能にする。例えば、Shao, J. and Tam, J., J. Am. Chem. Soc. 117:3893-3899 (1995);H. Hang and C. Bertozzi, Acc. Chem. Res. 34: 727-736 (2001) を参照すればよい。ヒドラジン基との反応の結果として生じるのは、対応するヒドラゾンであるが、これに対してオキシムは、一般的にカルボニル含有基(例えば、ケトン)とアミノオキシ基の反応から生じる。
【0244】
例示的なアミノオキシ基を含むアミノ酸は、以下のように表され得る:
【0246】
(ここで、nは0−10であり、R
1は、アルキル、アリール、置換アルキル、または置換アリールであるか、または存在せず;Xは、O、N、またはSであるか、または存在せず;mは0−10であり;YはC(O)であるか、または存在せず;R
2は、H、アミノ酸、ポリペプチド、またはアミノ末端修飾基であり、R
3は、H、アミノ酸、ポリペプチド、またはカルボキシ末端修飾基である)。いくつかの実施形態において、nは1であり、R
1はフェニルであり、XはOであり、mは1であり、Yは存在する。いくつかの実施形態において、nは2であり、R
1およびXは存在せず、mは0であり、Yは存在しない。
【0247】
アミノオキシ含有アミノ酸は、容易に入手可能なアミノ酸前駆体(ホモセリン、セリンおよびスレオニン)から調製され得る。例えば、M. Carrasco and R. Brown, J. Org. Chem. 68: 8853-8858 (2003) を参照すればよい。ある種のアミノオキシ含有アミノ酸(例えば、L−2−アミノ−4−(アミノオキシ)ブチル酸)は、天然の供給源から単離されている(Rosenthal, G, Life Sci. 60: 1635-1641 (1997))。他のアミノオキシ含有アミノ酸は、当業者によって調製され得る。
【0248】
(D.アジド反応性基およびアルキン反応性基)
アジド官能基およびアルキン官能基の固有な反応性は、ポリペプチドおよび他の生体分子の選択的な修飾にとって、それらを極めて有効にさせる。有機アジド、特にアルファティックアジド、およびアルキンは、通常の反応性の化学的条件に対して一般的に安定である。特に、アジド官能基およびアルキン官能基の両方は、天然に存在するポリペプチドに見られる一般的な20のアミノ酸の側鎖(すなわち、R基)に対して不活性である。しかし、非常に近づくと、アジド基およびアルキン基の“ばね荷重”性質が現れ、それらは、ヒュイゲン(Huisgen)[3+2]付加環化反応を介して選択的かつ効率的に反応して、対応するトリアゾールを生成する。例えば、Chin J., et al, Science 301 :964-7 (2003);Wang, Q,, et al, J. Am. Chem. Soc. 125, 3192-3193 (2003) ;Chin, J. W., et al, J. Am. Chem. Soc. 124:9026-9027 (2002) を参照すればよい。
【0249】
ヒュイゲン付加環化反応が、求核置換よりむしろ選択的な付加環化反応に関与するので(例えば、Padwa, A., in COMPREHENSIVE ORGANIC SYNTHESIS, Vol. 4, (ed. Trost, B. M., 1991), p. 1069-1109;Huisgen, R. in 1,3-DIPOLAR CYCLOADDITION CHEMISTRY, (ed. Padwa, A., 1984), p. 1-176を参照すればよい)、アジド含有側鎖およびアルキン含有側鎖を有している天然にコードされていないアミノ酸の組み込みによって、結果として生じるポリペプチドが、天然にコードされていないアミノ酸の位置において選択的に修飾されることが可能になる。アジド含有レプチンポリペプチドまたはアルキン含有レプチンポリペプチドに関する付加環化反応は、室温における水性条件の下に、Cu(II)(触媒量のCuSO
4の形態が挙げられるが、これに限定されない)の付加によって、インシチュ(in situ)においてCu(II)をCu(I)に還元する触媒量の還元物質の存在下において、達成され得る。例えば、Wang, Q., et al, J. Am. Chem. Soc. 125, 3192-3193 (2003) ;Tornoe, C. W., et al, J. Org. Chem. 67:3057-3064 (2002) ;Rostovtsev, et al, Angew. Chem. Int. Ed. 41:2596-2599 (2002) を参照すればよい。例示的な還元物質としては、アスコルビン酸塩、金属銅、キニーネ、ヒドロキノン、ビタミンK、グルタチオン、システイン、Fe
2+、Co
2+および印加された電位が挙げられるが、これらに限定されない。
【0250】
いくつかの場合において、アジドとアルキンとの間におけるヒュイゲン[3+2]付加環化反応が所望される場合に、レプチンポリペプチドは、アルキン部分を含んでいる天然にコードされていないアミノ酸を含んでおり、当該アミノ酸に連結されるべき水溶性ポリマーはアジド部分を含んでいる。また代替可能に、逆反応(すなわち、アミノ酸上におけるアジド部分および水溶性ポリマー上に存在するアルキン部分を用いる)が達成され得る。
【0251】
また、アジド官能基は、アリールエステルを含んでいる水溶性ポリマーと選択的に反応し、アリールホスフィン部分を用いて適切に機能付与されて、アミド連結を生成する。アリールホスフィン基はインシチュにおいてアジドを還元し、それから結果として生じたアミンは近接するエステル結合と効率的に反応して、対応するアミドを生成する。例えば、E. Saxon and C. Bertozzi, Science 287, 2007-2010 (2000) を参照すればよい。アジド含有アミノ酸は、アルキルアジド(2−アミノ−6−アジド−1−ヘキサン酸が挙げられるが、これに限定されない)またはアリールアジド(p−アジド−フェニルアラニン)のいずれかであり得る。
【0252】
アリールエステルおよびホスフィン部分を含んでいる例示的な水溶性ポリマーは、以下のように表され得る:
【0254】
(ここで、Xは、O、N、またはSであり得るか、または存在しない場合があり得、Phはフェニルであり、Wは水溶性ポリマーであり、Rは、H、アルキル基、アリール基、置換アルキル基および置換アリール基であり得る)。例示的なR基としては、−CH
2、−C(CH
3)
3、−OR’、−NR’R’’、−SR’、−ハロゲン、−C(O)R’、−CONR’R’’、−S(O)
2R’、−S(O)
2NR’R’’、−CN、および−NO
2が挙げられるが、これらに限定されない。R’、R’’、R’’’およびR’’’’のそれぞれは独立して、水素基、置換もしくは非置換のヘテロアルキル基、置換もしくは非置換のアリール基(1−3のハロゲンと置換されたアリールが挙げられるが、これに限定されない)、置換もしくは非置換のアルキル基、アルコキシ基もしくはチオアルコキシ基、またはアリールアルキル基を指す。本発明の化合物が2つ以上のR基を含む場合に、例えば、2つ以上のこれらの基が存在する場合に、R基のそれぞれは、R’、R’’、R’’’およびR’’’’のそれぞれであるように、独立して選択される。R’およびR’’が同じ窒素原子に結び付けられている場合に、それらは窒素原子と組み合わさって、5員環、6員環、または7員環を形成し得る。例えば、−NR’R’’は、1−ピロリジニルおよび4−モルホリニルが挙げられるが、これらに限定されないことが意図される。置換体の上述の議論から、当業者は、“アルキル”という用語が、水素基以外の基(例えば、ハロアルキル(−CF
3および−CH
2OCH
3が挙げられるが、これらに限定されない)およびアシル(−C(O)CH
3、−C(O)CF
3、および−C(O)CH
2OCH
3などが挙げられるが、これらに限定されない))と結合された炭素原子を含むことを意図されることを理解する。
【0255】
また、アジド官能基は、チオエステルを含む水溶性ポリマーと選択的に反応し、アリールホスフィン部分を用いて適切に機能付与されて、アミド結合を生成し得る。アリールホスフィン基は、インシチュにおいてアジドを還元し、それから結果として生じるアミンは、チオエステル結合と効率的に反応して、対応するアミドを生成する。チオエステル部分およびホスフィン部分を含んでいる例示的な水溶性ポリマーは、以下のように表され得る:
【0257】
(ここで、nは1−10であり、XはO、N、またはSであり得るか、または存在しない場合があり得、Phはフェニルであり、Wは水溶性ポリマーである)。
【0258】
例示的なアルキン含有アミノ酸は、以下のように表され得る:
【0260】
(ここで、nは0−10であり;R
1は、アルキル、アリール、置換アルキルまたは置換アリールであるか、または存在せず;Xは、O、NまたはSであるか、存在せず;mは0−10であり、R
2は、H、アミノ酸、ポリペプチド、またはアミノ末端修飾基であり、R
3は、H、アミノ酸、ポリペプチド、またはカルボキシ末端修飾基である)。いくつかの実施形態において、nは1であり、R
1はフェニルであり、Xは存在せず、mは0であり、アセチレン部分はアルキル側鎖に対してパラ位に位置している。いくつかの実施形態において、nは1であり、R
1はフェニルであり、XはOであり、mは1であり、プロパルギルオキシ基は、アルキル側鎖に対してパラ位に位置している(すなわち、O−プロパルギル−チロシン)。いくつかの実施形態において、nは1であり、R
1およびXは存在せず、mは0である(すなわち、プロパリルグリシン)。
【0261】
アルキン含有アミノ酸は市販されている。例えば、プロパルギルグリシンは、ペプテック(Peptech)(バーリントン(Burlington)、MA)から市販されている。代替可能に、アルキン含有アミノ酸は、標準的な方法にしたがって調製され得る。例えば、p−プロパルギルオキシフェニルアラニンは、例えば、Deiters, A.et al, J. Am. Chem. Soc. 125: 11782-11783 (2003) に記載されているように合成され得、4−アルキニル−L−フェニルアラニンは、Kayser, B., et al, Tetrahedron 53(7): 2475-2484 (1997) に記載されているように、合成され得る。他のアルキン含有アミノ酸は、当業者によって調製され得る。
【0262】
例示的なアジド含有アミノ酸は、以下のように表され得る:
【0264】
(ここで、nは0−10であり;R
1は、アルキル、アリール、置換アルキルまたは置換アリールであるか、または存在せず;Xは、O、NまたはSであるか、または存在せず;mは0−10であり;R
2は、H、アミノ酸、ポリペプチド、またはアミノ末端修飾基であり、R
3は、H、アミノ酸、ポリペプチドまたはカルボキシ末端修飾基である)。いくつかの実施形態において、nは1であり、R
1はフェニルであり、Xは存在せず、mは0であり、アジド部分は、アルキル側鎖に対してパラに位置している。いくつかの実施形態において、nは0−4であり、R
1およびXは存在せず、m=0である。いくつかの実施形態において、nは1であり、R
1はフェニルであり、XはOであり、mは2であり、β−アジドエトキシ部分は、アルキル側鎖に対してパラ位に位置している。
【0265】
アジド含有アミノ酸は、商業的な供給元から入手可能である。例えば、4−アジドフェニルアラニンは、ケム−インペックスインターナショナル(Chem-Impex International)、(ウッドデール(Wood Dale)、IL)から入手され得る。市販されていないこれらのアジド含有アミノ酸に関して、アジド基は、適切な脱離基(ハロゲン化物、メシラート、トシレートが挙げられるが、これらに限定されない)の排除を介した、または適切に保護されたラクトンの開環を介した(限定されないが、これらが挙げられる)、当業者に公知の標準的な方法を用いて、比較的容易に調製され得る。例えば、Advanced Organic Chemistry by March (Third Edition, 1985, Wiley and Sons, New York)を参照すればよい。
【0266】
(E.アミノチオール反応性基)
ベータ置換アミノチオール官能基の固有な反応性は、チアゾリジンの形成を介した、アルデヒド基を含んでいるポリペプチドおよび他の生体分子の選択的な修飾にとって、それらを極めて有効にする。例えば、J.Shao and J. Tam, J. Am. Chem. Soc. 1995, 117 (14) 3893-3899を参照すればよい。いくつかの実施形態において、ベータ置換アミノチオールアミノ酸は、レプチンポリペプチドに組み込まれ得、それからアルデヒド官能性基を含んでいる水溶性ポリマーと反応し得る。いくつかの実施形態において、水溶性ポリマー、薬剤抱合物または他のペイロード(payload)は、チアゾリジンの形成を介したベータ置
換アミノチオールアミノ酸を含んでいるレプチンポリペプチドに連結され得る。
【0267】
(非天然アミノ酸の細胞取り込み)
真核細胞による非天然アミノ酸の取り込みは、タンパク質への取り込みを目的として(限定されないが、これが挙げられる)、非天然アミノ酸を設計および選択するときに典型的に考慮される1つの課題である。例えば、α−アミノ酸の高い電荷密度は、これらの化合物が細胞透過性ではあり得ないことを意味する。天然アミノ酸は、タンパク質に基づく輸送系の収集を介して真核細胞に取り込まれる。非天然アミノ酸が少しでも細胞によって取り込まれるならば、これを評価する急速なふるいが行われ得る。例えば、“Protein Arrays”と題される出願(出願番号10/744,899(2003年12月22日出願)および出願番号60/435,821(2002年12月22日出願));ならびにLiu, D.R. & Schultz, P.G. (1999) Progress toward the evolution of an organism with an expanded genetic code. PNAS United States 96:4780-4785 における、例えば、毒性アッセイを参照すればよい。取り込みは、多様なアッセイを用いて容易に分析されるが、細胞性の取り込み経路に受け容れられる非天然アミノ酸の設計ための代替案は、インビボにおいてアミノ酸を作り出す生合成経路を提供することである。
【0268】
(非天然アミノ酸の生合成)
多くの生合成経路が、アミノ酸および他の化合物を産生するために細胞にすでに存在している。特定の非天然アミノ酸のための生合成方法が、天然(真核細胞内が挙げられるが、これに限定されない)には存在し得ない一方において、本発明は、そのような方法を提供する。例えば、非天然アミノ酸のための生合成経路は、新しい酵素の添加、または存在する宿主細胞経路の改変によって宿主細胞において生成され得る。追加の新しい酵素は、任意で、天然に存在する酵素または人工的に発展させた酵素である。例えば、p−アミノフェニルアラニンの生合成(“In vivo incorporation of unnatural amino acids”と題される国際公開第2002/085923号パンフレットにおける一例に示されるように)は、他の生物に由来する公知の酵素の組合わせの追加を基にしている。これらの酵素に関する遺伝子は、当該遺伝子を備えるプラスミドを用いた真核細胞の形質転換によって、当該細胞に導入され得る。細胞において発現される場合に、当該遺伝子は、所望の化合物を合成する酵素経路を提供する。任意に添加されるこの種の酵素の例は、以下の実施例において与えられる。追加の酵素の配列は、例えば、ジーンバンクに見出される。また、人工的に発展させた酵素は、同様の方法において細胞の中に加えられ得る。この方法において、細胞性機構および細胞資源は、非天然アミノ酸を産生するために操作される。
【0269】
多様な方法が、生合成経路に使用するための新規な酵素の産生、または存在する経路の発展に利用可能である。例えば、マキシゲン(Maxygen)(maxigen.comにおけるワールドワイドウェブ上において利用可能である)によって開発されたような(限定されないが、これが挙げられる)、反復的な組換えは、新規の酵素および経路の開発に使用され得る。例えば、Stemmer (1994), Rapid evolution of a protein in vitro by DNA shuffling, Nature 370(4):389- 391、およびStemmer, (1994), DNA shuffling by random fragmentation and reassembly: In vitro recombination for molecular evolution, Proc. Natl. Acad. Sci. USA., 91:10747-10751を参照すればよい。同様に、ジェネンコア(Genencor)(genencor.comにおけるワールドワイドウェブ上において利用可能である)によって開発されたデザインパス(DesignPath)(商標)は、代謝経路操作(細胞においてO−メチリル−L−チロシンを作り出す経路の操作が挙げられるが、これに限定されない)に任意に使用される。この技術は、新しい遺伝子(機能的なゲノミクスを介して同定された遺伝子が挙げられるが、これに限定されない)、ならびに分子進化および設計の組合わせを用いて、宿主生物に存在する経路を再構築する。また、ディバーサコーポレーション(Diversa Corporation)(diversa.comにおけるワールドワイドウェブ上において利用可能である)は、新しい経路を作り出すための(限定されないが、これが挙げられる)、遺伝子および遺伝子経路のライブラリを迅速にスクリーニングする技術を提供する。
【0270】
典型的に、本発明の設計された生合成経路を用いて産生された非天然アミノ酸は、タンパク質の効率的な生合成に十分な濃度(天然の細胞における量が挙げられるが、これに限定されない)に産生されるが、他のアミノ酸の濃度に影響するか、または細胞性の資源を使い果たす程ではない。この方法においてインビボにおいて生成される典型的な濃度は、約10mMから0.05mMである。特定の経路に関して所望される酵素の生成に使用される遺伝子を含んでいるプラスミドを用いて、細胞が形質転換され、非天然アミノ酸が生成されると、インビボにおける選択は、リボソームタンパク質の合成および細胞増殖の両方に対して、非天然アミノ酸の産生をさらに最適化するために、任意に使用される。
【0271】
(非天然アミノ酸を有するポリペプチド)
非天然アミノ酸の組込みは、多様な目的(タンパク質構造および/または機能の変化の修正、大きさの変更、酸性度の変更、求核性の変更、水素結合の変更、疎水性の変更、プロテアーゼ標的部位の接触性の変更、部分に対する標的化の変更(タンパク質アレイ用が挙げられるが、これらに限定されない)などが挙げられるが、これらに限定されない)のためになされ得る。非天然アミノ酸を含んでいるタンパク質は、増強されたかもしくはまったく新しい触媒的、または生物学的な性質を有し得る。例えば、以下の性質:毒性、体内分布、構造的性質、分光性質、化学的および/または光化学的な性質、触媒能、半減期(血中半減期が挙げられるが、これに限定されない)、ならびに他の分子との共有結合的または非共有結合的な(限定されないが、これらが挙げられる)反応能などは、タンパク質への非天然アミノ酸の含有によって任意に調節される。少なくとも1つの非天然アミノ酸を含んでいるタンパク質を含有している組成物は、新規の治療、診断、触媒酵素、産業的な酵素、結合タンパク質(抗体が挙げられるが、これに限定されない)、ならびにタンパク質の構造および機能に関する研究(限定されないが、これらが挙げられる)に有用である。例えば、Dougherty, (2000) Unnatural Amino Acids as Probes of Protein Structure and Function, Current Opinion in Chemical Biology, 4:645-652を参照すればよい。
【0272】
本発明の1つの局面において、組成物は、少なくとも1(少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、または少なくとも10以上が挙げられるが、これらに限定されない)の非天然アミノ酸を有している少なくとも1つのタンパク質を含んでいる。非天然アミノ酸は、同じであり得るか、または異なり得る(1、2、3、4、5、6、7、8、9、10もしくはそれ以上の異なる、または同じ非天然アミノ酸を含んでいるレプチンポリペプチドにおける、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10もしくはそれ以上の異なる部位があり得ることが挙げられるが、これらに限定されない)。他の局面において、タンパク質に存在する特定のアミノ酸のすべてではないが、少なくとも1つが非天然アミノ酸と置換されているレプチンタンパク質を含んでいる。2つ以上の非天然アミノ酸を有している所定のタンパク質に関して、当該非天然アミノ酸は、同一であり得るか、または異なり得る(タンパク質が2つ以上の異なる種類の非天然アミノ酸を含み得るか、または2つの同じ非天然アミノ酸を含み得ることが挙げられるが、これらに限定されない)。3つ以上の非天然アミノ酸を有している所定のタンパク質に関して、当該非天然アミノ酸は、同じであり得るか、異なり得るか、または少なくとも1つの非天然アミノ酸と複数の同種の非天然アミノ酸との組合せであり得る。
【0273】
少なくとも1つの非天然アミノ酸を有する所定のレプチンタンパク質またはレプチンポリペプチドは、本発明の特徴である。また、本発明は、本発明の組成物および方法を用いて産生された少なくとも1つの非天然アミノ酸を有しているレプチンポリペプチドまたはタンパク質を包含する。また、賦形剤(薬学的に受容可能な賦形剤が挙げられるが、これに限定されない)は、レプチンタンパク質と共に存在し得る。
【0274】
少なくとも1つの非天然アミノ酸を有している所定のレプチンポリペプチドを、真核細胞において産生することによって、タンパク質またはポリペプチドは、真核細胞翻訳後修飾を典型的に含んでいる。ある特定の実施形態において、レプチンポリペプチドは、少なくとも1つの非天然アミノ酸、および真核細胞によってインビボにおいてなされた少なくとも1つの翻訳後修飾を含んでおり、ここで、当該翻訳後修飾は、原核細胞によってなされない。例えば、翻訳後修飾としては、アセチル化、アシル化、脂質修飾、パルミトイル化、パルミチン酸付加、リン酸化、糖脂質結合修飾、および糖鎖形成などが挙げられるが、これらに限定されない。1つの局面において、翻訳後修飾としては、GlcNAc−アスパラギン連結による、アスパラギンに対するオリゴ糖((GlcNAc−Man)
2−Man−GlcNAc−GlcNAcが挙げられるが、これに限定されない)の付加が挙げられる。真核細胞タンパク質のN結合型オリゴ糖のいくつかの例を載せている表1を参照すればよい(付加的な残基が存在し得るが、示されていない)。他の局面において、翻訳後修飾としては、GalNAc−セリン連結もしくはGalNAc−スレオニン連結、またはGlcNAc−セリン連結もしくはGlcNAcスレオニン連結による、セリンまたはスレオニンに対するオリゴ糖(Gal−GalNAc、Gal−GlcNAcなどが挙げられるが、これらに限定されない)の付加が挙げられる。
【0276】
さらにもう1つの局面において、翻訳後修飾としては、前駆体(カルシトニン前駆体、カルシトニン遺伝子関連ペプチド前駆体、プレプロ副甲状腺ホルモン(preproparathyriod hormone)、プレプロインシュリン、プロインシュリン、プレプロオピオメラノコルチン、およびプロオピオメラノコルチンなどが挙げられるが、これらに限定されない)のタンパク質分解性のプロセシング、多サブユニットタンパク質への集合もしくは巨大分子への集合、細胞における他の部位への移動(細胞小器官(例えば、小胞体、ゴルジ装置、核、リソソーム、ペルオキシソーム、ミトコンドリア、葉緑体、液胞など)または分泌経路の通過が挙げられるが、これらに限定されない)が挙げられる。ある特定の実施形態において、レプチンポリペプチドは、分泌配列または局在化配列であるエピトープタグ、FLAGタグ、ポリヒスチジンタグ、またはGST融合などを含んでいる。hGHポリペプチドの分泌を改善するために設計される構築物については、参照によって本明細書に援用される、米国特許第4,963,495号明細書および米国特許第6,436,674号明細書に記載されている。
【0277】
非天然アミノ酸の利点の1つは、非天然アミノ酸が付加的な分子の付加に使用され得る付加的な化学部分を与えるということである。これらの修飾は、真核細胞もしくは原核細胞のインビボまたはインビトロにおいてなされ得る。したがって、ある特定の実施形態において、翻訳後修飾は非天然アミノ酸を介する。例えば、翻訳後修飾は、求核−求電子反応を介し得る。タンパク質の選択的な修飾に現在、使用されるほとんどの反応は、求核反応パートナーと求電子反応パートナーとの間における共有結合(α−ハロケトンのヒスチジン側鎖またはシステイン側鎖との反応が挙げられるが、これらに限定されない)の形成に関する。これらの場合における選択性は、タンパク質における求核性残基の数および接触性によって決定される。本発明のレプチンポリペプチドにおいて、より選択的な他の反応は、例えば、インビボおよびインビトロにおける、非天然ケトアミノ酸の、ヒドラジドまたはアミノオキシ化合物との反応に使用され得る。例えば、すべてが参照によって本明細書に援用される、Cornish et al, (1996) Am. Chem. Soc. 118:8150-8151;Mahal et al, (1997) Science. 276:1125-1128;Wang et al, (2001) Science 292:498-500;Chin et al, (2002) Am. Chem. Soc. 124:9026-9027;Chin et al, (2002) Proc. Natl. Acad. Sci., 99: 11020-11024;Wang et al, (2003) Proc. Natl. Acad. Sci 100:56-61;Zhang et al, (2003) Biochemistry. 42:6735-6746;および近刊のChin et al, (2003) Science.を参照すればよい。これは、多くの試薬(蛍光団、架橋剤、糖誘導体および細胞毒性分子が挙げられるが、これらに限定されない)を用いた実質的に任意のタンパク質の選択的な標識を可能にする。また、参照によって本明細書に援用される、2003年1月16日に出願された“Glycoprotein synthesis”と題される米国特許出願公開第10/686,944号明細書を参照すればよい。また、アジドアミノ酸を介した(限定されないが、これが挙げられる)翻訳後修飾は、トリアリールホスフィン試薬を用いた(限定されないが、これが挙げられる)シュタウディンガー連結を介してなされ得る。例えば、Kiick et al, (2002) Incorporation of azides into recombinant proteins for chemoselective modification by the Staudinger ligation, PNAS 99: 19-24を参照すればよい。
【0278】
本発明は、タンパク質にアジド部分またはアルキニル部分(限定されないが、これらが挙げられる)を含んでいる非天然アミノ酸の、セレクターコドンに応じた遺伝子的組み込みに関する、タンパク質の選択的な修飾のための他の高効率な方法を提供する。それから、これらのアミノ酸側鎖は、アジド誘導体またはアルキニル誘導体(限定されないが、これらが挙げられる)を別々に用いて、ヒュイゲン[3+2]付加環化反応(限定されないが、これが挙げられる)(例えば、Padwa, A. in Comprehensive Organic Synthesis. Vol. 4. (1991) Ed. Trost, B. M., Pergamon, Oxford, p. 1069-1109;およびHuisgen, R. in 1 ,3-Dipolar Cycloaddition Chemistry. (1984) Ed. Padwa, A., Wiley, New York, p. 1-176を参照すればよい)によって修飾され得る。この方法は、求核性置換よりむしろ付加環化に関するので、タンパク質は極めて高い選択性を有して修飾され得る。この反応は、反応混合物に対する触媒量のCu(I)塩の添加によって、室温の水性条件下において、優れた位置選択性(1,4>1,5)を有して達成され得る。例えば、Tornoe et al, (2002) J. Org. Chem. 67:3057-3064;およびRostovtsev et al, (2002) Angew. Chem. Int. Ed. 41: 2596-2599を参照すればよい。使用され得る他の方法は、テトラシステインモチーフを有しているビス砒素化合物におけるリガンド交換である(例えば、Griffin et al, (1998) Science 281 :269-272を参照すればよい)。
【0279】
[3+2]付加環化を介して本発明のレプチンポリペプチドに加えられ得る分子としては、アジド誘導体またはアルキニル誘導体を有する実質的に任意の分子が挙げられる。分子としては、色素、蛍光団、架橋剤、糖誘導体、ポリマー(ポリエチレングリコールの誘導体が挙げられるが、これに限定されない)、光架橋剤、細胞毒性化合物、親和性標識、ビオチンの誘導体、樹脂、ビーズ、第2のタンパク質もしくはポリペプチド(もしくはそれ以上)、ポリヌクレオチド(DNA、RNAなどが挙げられるが、これらに限定されない)、金属キレート剤、補助因子、脂肪酸、および炭水化物などが挙げられるが、これらに限定されない。これらの分子は、アルキニル基(p−プロパルギルオキシフェニルアラニンが挙げられるが、これに限定されない)またはアジド基(p−アジド−フェニルアラニンが挙げられるが、これに限定されない)を別々に有している非天然アミノ酸に加えられ得る。
【0280】
<V.非遺伝的にコードされるアミノ酸を含んでいるレプチンポリペプチドのインビボ生成>
本発明のレプチンポリペプチドは、天然に存在する系にコードされないアミノ酸を加えるか、または置換するために、修飾されたtRNAおよびtRNA合成酵素を用いてインビボにおいて生成され得る。
【0281】
天然に存在する系にコードされないアミノ酸を使用するtRNAおよびtRNA合成酵素を生成する方法は、参照によって本明細書に援用される、米国特許出願公開第2003/0082575号明細書(出願番号10/126,927)および米国特許出願公開第2003/0108885号明細書(出願番号10/126,931)に記載されている。これらの方法は、翻訳系に対して内在性の合成酵素およびtRNAと独立して機能する(そして、このためにときに“直交性の(orthogonal)”と呼ばれる)、翻訳機構の生成に関与する。典型的に、当該翻訳系は、直交性のtRNA(O−tRNA)および直交性のアミノアシルtRNA合成酵素(O−RS)を含んでいる。典型的に、O−RSは、翻訳系における少なくとも1つの天然に存在しないアミノ酸と共にO−tRNAを好ましくアミノアシル化し、O−tRNAは、当該系における他のtRNAによって認識されない少なくとも1つのセレクターコドンを認識する。したがって、当該翻訳系は、コードされたセレクターコドンに応じて、当該系において産生されるタンパク質に天然にコードされていないアミノ酸を挿入して、これによってコードされたポリペプチドにおける所定の位置にアミノ酸を“置換する”。
【0282】
広範な直交性のtRNAおよびアミノアシルtRNA合成酵素は、ポリペプチドに特定の合成アミノ酸を挿入する当該技術において説明されており、一般的に本発明における使用に好適である。例えば、ケト特異的O−tRNA/アミノアシルtRNA合成酵素は、Wang, L.et al, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 100:56-61 (2003) 、およびZhang, Z.et al, Biochem. 42(22):6735-6746 (2003)に記載されている。例示的なO−RSまたはこれらの一部は、米国特許出願公開第2003/0082575号明細書および米国特許出願公開第2003/0108885号明細書(それぞれ、参照によって本明細書に援用される)に開示されている、ポリヌクレオチド配列にコードされ、アミノ酸配列を含んでいる。また、O−RSと共に使用するための対応するO−tRNA分子は、参照によって本明細書に援用される、米国特許出願公開第2003/0082575号明細書(出願番号10/126,927)および米国特許出願公開第2003/0108885号明細書(出願番号10/126,931)に記載されている。
【0283】
アジド特異的なO−tRNA/アミノアシルtRNA合成酵素の系の例が、Chin, J. W., et al, J. Am. Chem. Soc. 124:9026-9027 (2002) に記載されている。p−アジド−L−Phe用の例示的なO−RS配列としては、参照によって本明細書に援用される、米国特許出願公開第2003/0108885号明細書(出願番号10/126,931)に記載されているように、配列番号14−16および29−32のヌクレオチド配列、ならびに配列番号46−48および61−64のアミノ酸配列が挙げられるが、これらに限定されない。本発明の使用に好適な例示的なO−tRNA配列としては、参照によって本明細書に援用される米国特許出願公開第2003/0108885号明細書(出願番号10/126,931)に開示されているように、配列番号1−3のヌクレオチド配列が挙げられるが、これらに限定されない。特定の天然にコードされていないアミノ酸に対して特異的なO−tRNA/アミノアシルtRNA合成酵素の他の例が、参照によって本明細書に援用される米国特許出願公開第2003/0082575号明細書(出願番号10/126,927)に記載されている。S.セレビジアエにおいてケト含有アミノ酸およびアジド含有アミノ酸の両方を組み込む、O−RSおよびO−tRNAについて、Chin, J. W.et al, Science 301 :964-967 (2003). に記載されている。
【0284】
O−tRNA/アミノアシルtRNA合成酵素の使用は、天然にコードされていないアミノ酸をコードする特異的なコドンの選択に関与する。任意のコドンが使用され得るが、一般的にO−tRNA/アミノアシルtRNA合成酵素が発現されている細胞において、まれにしか使用されないか、または決して使用されないコドンを選択することが好ましい。例えば、例示的なコドンとしては、ナンセンスコドン(例えば、ストップコドン(アンバー、オーカー、およびオパール))、4以上の塩基コドン、ならびにまれにしか使用されない、または使用されない他の天然の3塩基コドンが挙げられる。
【0285】
特異的なセレクターコドンは、当該技術において公知の突然変異生成方法(部位特異的突然変異生成法、カセット突然変異生成法、制限選択突然変異生成法などが挙げられるが、これらに限定されない)を用いて、4HBポリヌクレオチドのコード配列における適切な位置に導入され得る。
【0286】
タンパク質の生合成機構の構成要素(例えば、非天然アミノ酸を組み込むために使用され得るO−RS、O−tRNAおよび直交性のO−tRNA/O−RS対)を生成する方法は、Wang, L., et al Science 292: 498-500 (2001);Chin, J. W.et al, J. Am. Chem. Soc. 124:9026-9027 (2002) ;Zhang, Z.et al, Biochemistry 42: 6735-6746 (2003) に記載されている。天然にコードされていないアミノ酸のインビボにおける組み込みのための方法および組成物は、参照によって本明細書に援用される、米国特許出願公開第2003/0082575号明細書(出願番号10/126,927)に記載されている。また、生体のインビボにおける翻訳系に使用する、直交性のtRNA−tRNA合成酵素対を選択する方法は、参照によって本明細書に援用される、米国特許出願公開第2003/0082575号明細書(出願番号10/126,927)、および米国特許出願公開第2003/0108885号明細書(出願番号10/126,931)に記載されている。
【0287】
少なくとも1つの組換え直交性のアミノアシルtRNA合成酵素(O−RS)を産生する方法は:(a)第1の生物(原核生物(例えば、メタノコッカス ジャナスキー、メタノバクテリウム テルモアウトトゥロフィクム、ハロバクテリウム、エシェリキア コリ、A. フンギドゥス、P. フリオシス、P. ホリコシー、A. ペルニクス、またはT. テルモフィルスなど)または真核生物が挙げられるが、これらに限定されない)から、少なくとも1つのアミノアシルtRNA合成酵素から誘導体化された(任意に突然変異した)RSのライブラリを生成すること;(b)非天然アミノ酸および天然アミノ酸の存在下において直交性のtRNA(O−tRNA)をアミノアシル化する構成要素のためのRS(任意に突然変異したRS)のライブラリを選択(および/またはスクリーニング)し、これによって活性な(任意に突然変異した)RSのプールを提供すること;および/または(c)非天然アミノ酸の非存在下においてO−tRNAを好ましくアミノアシル化する活性なRS(突然変異体RSが挙げられるが、これに限定されない)のプールを、(任意にネガティブ選択を介して)選択し、これによって少なくとも1つの組換えO−RSを提供することを包含し;ここで、少なくとも1つの当該組換えO−RSは、非天然アミノ酸と共に当該O−tRNAを好ましくアミノアシル化する。
【0288】
1つの実施形態において、RSは不活性RSである。不活性RSは、活性なRSを突然変異させることによって生成され得る。例えば、不活性RSは、異なるアミノ酸(アラニンが挙げられるが、これに限定されない)に対して、少なくとも約1つ、少なくとも約2つ、少なくとも約3つ、少なくとも約4つ、少なくとも約5つ、少なくとも約6つ、または少なくとも約10以上のアミノ酸を突然変異させることによって生成され得る。
【0289】
突然変異体RSのライブラリは、当該分野において公知の多様な技術(三次元のRS構造に基づいた合理的な設計、または無作為のもしくは合理的な技術におけるRSヌクレオチドの突然変異生成法が挙げられるが、これらに限定されない)を用いて生成され得る。例えば、突然変異体RSは、部位特異的突然変異生成法、無作為の突然変異生成法、多様性生成組換え突然変異、キメラ構築、合理的な設計、ならびに本明細書に記載されているか、もしくは当該技術において公知の他の方法によって、生成され得る。
【0290】
1つの実施形態において、活性な構成要素(非天然アミノ酸および天然アミノ酸の存在下において直交性のtRNA(O−tRNA)をアミノアシル化する構成要素が挙げられるが、これに限定されない)のためのRS(任意に突然変異したRS)のライブラリを選択(および/またはスクリーニング)することは:ポジティブ選択またはスクリーニングマーカー(抗生物質耐性遺伝子などが挙げられるが、これに限定されない)、および(任意に突然変異した)RSのライブラリを、複数の細胞に導入すること(ここで、ポジティブ選択マーカーおよび/またはスクリーニングマーカーは、少なくとも1つのセレクターコドン(アンバーコドン、オーカーコドン、オパールコドンが挙げられるが、これらに限定されない)を含んでいる);選択薬剤の存在下において複数の細胞を成長させること;ポジティブ選択マーカーまたはスクリーニングマーカーにおける少なくとも1つのセレクターコドンを抑圧することによって、選択薬剤および/またはスクリーニング薬剤の存在下において、生存する(または特異的な反応を示す)細胞を同定し、これによって活性な(任意に突然変異した)RSのプールを含むポジティブに選択された細胞の一部を提供することを含む。任意に、選択薬剤および/またはスクリーニング薬剤の濃度は、変更され得る。
【0291】
1つの局面において、ポジティブ選択マーカーは、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)遺伝子であり、セレクターコドンは、CAT遺伝子におけるアンバーストップコドンである。任意に、ポジティブ選択マーカーはβ−ラクタマーゼ遺伝子であり、セレクターコドンはβ−ラクタマーゼ遺伝子におけるアンバーストップコドンである。他の局面において、ポジティブ選択マーカーは、蛍光もしくは発光のスクリーニングマーカー、または親和性に基づくスクリーニングマーカー(細胞表面マーカーが挙げられるが、これに限定されない)を含んでいる。
【0292】
1つの実施形態において、非天然アミノ酸の非存在下においてO−tRNAを好ましくアミノアシル化する活性なRS(任意に突然変異した)に関するプールの、ネガティブ選択またはネガティブスクリーニングは:ポジティブ選択またはスクリーニングマーカーからの活性な(任意に突然変異した)RSのプールと共に、ネガティブ選択マーカー、またはネガティブスクリーニングマーカーを、第2の生物の複数の細胞に導入すること(ここで、ネガティブ選択マーカー、またはネガティブスクリーニングマーカーは、少なくとも1つのセレクターコドン(抗生物質耐性遺伝子(クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)遺伝子が挙げられるが、これに限定されない)が挙げられるが、これに限定されない)を含んでいる);ならびに非天然アミノ酸、およびスクリーニング薬剤もしくは選択薬剤を補った第1の培地において生存するか、または特異的なスクリーニング反応を示すが、非天然アミノ酸およびスクリーニング薬剤もしくは選択薬剤を補っていない第2の培地において生存できないか、または特異的なスクリーニング反応を示さない細胞を同定し、これによって少なくとも1つの組換えO−RSを有する生存細胞または選別された細胞を提供することを包含する。例えば、CAT同定手順は、適切なO−RS組換え体の決定において、ポジティブ選択および/またはネガティブ選択として任意に役割を果たす。例えば、クローンのプールは、1つ以上の非天然アミノ酸を有しているか、または有していないCAT(少なくとも1つのセレクターコドンを含んでいる)を含んでいる成長プレート上において、任意に複製される。したがって、非天然アミノ酸を含んでいるプレート上において排他的に成長するコロニーは、組換えO−RSを含んでいるとみなされる。1つの局面において、選択(および/またはスクリーニング)薬剤の濃度は変更される。いくつかの実施形態において、第1および第2の生物は異なる。したがって、第1および/または第2の生物は、原核生物、真核生物、哺乳類、エシェリキア コリ、菌類、酵母、アルカエバクテリウム、ユウバクテリウム、植物、昆虫、原生生物などを任意に包含する。他の実施形態において、スクリーニングマーカーは、蛍光もしくは発光のスクリーニングマーカー、または親和性に基づくスクリーニングマーカーを含んでいる。
【0293】
他の実施形態において、活性な(任意に突然変異した)RSに関するプールのスクリーニングまたは選択(ネガティブ選択が挙げられるが、これに限定されない)は:ポジティブ選択の段階(b)から活性な突然変異体RSのプールを単離することと;ネガティブ選択マーカー、またはネガティブスクリーニングマーカー(ここで、ネガティブ選択マーカー、またはネガティブスクリーニングマーカーは、少なくとも1つのセレクターコドン(少なくとも1つのセレクターコドンを含んでいる毒性マーカー遺伝子(リボヌクレアーゼバルナーゼ(barnase)遺伝子が挙げられるが、これに限定されない)が挙げられるが、これに限定されない)を含んでいる)、ならびに活性な(任意に突然変異した)RSのプールを、第2の生物の複数の細胞に導入することと;非天然アミノ酸を補っていない第1の培地において生存するか、または特異的なスクリーニング反応を示すが、非天然アミノ酸を補った第2の培地において生存できないか、または特異的なスクリーニング反応を示さない細胞を同定し、これによって少なくとも1つの組換えO−RSを有する生存細胞、または選別細胞を提供することとを包含し、ここで、少なくとも1つの組換えO−RSは天然にコードされていないアミノ酸に特異的である。1つの局面において、少なくとも1つのセレクターコドンは、約2つ以上のセレクターコドンを含んでいる。そのような実施形態は、少なくとも1つのセレクターコドンが2つ以上のセレクターコドンを含んでいる場合、ならびに第1および第2の生物が異なる場合(それぞれの生物が、任意に原核生物、真核生物、哺乳類、エシェリキア コリ、菌類、酵母、アルカエバクテリウム、ユウバクテリウム、植物、昆虫、原生生物など(限定されないが、これらが挙げられる)である場合が挙げられるが、これらに限定されない)を任意に含み得る。また、いくつかの局面は、ネガティブ選択マーカーが、リボヌクレアーゼバルナーゼ遺伝子(少なくとも1つのセレクターコドンを含んでいる)を備える場合を含む。他の局面は、スクリーニングマーカーが蛍光もしくは発光のスクリーニングマーカー、または親和性に基づくスクリーニングマーカーを任意に含んでいる場合を包含する。本明細書における実施形態において、スクリーニングおよび/または選択は、スクリーニングおよび/または選択のストリンジェンシー(stringency)の変動を任意に包含する。
【0294】
1つの実施形態において、直交性の組換えアミノアシルtRNA合成酵素(O−RS)を少なくとも1つを産生する方法は:(d)少なくとも1つの組換えO−RSを単離すること;(e)少なくとも1つの組換えO−RSから誘導体化されたO−RS(任意に突然変異した)の第2のセットを生成すること;ならびに(f)O−tRNAを好ましくアミノアシル化する能力を備える突然変異したO−RSが得られるまで、段階(b)および(c)を繰り返すことをさらに包含する。段階(d)−(f)は、任意に繰り返される(少なくとも2回が挙げられるが、これに限定されない)。1つの局面において、少なくとも1つの組換えO−RSから誘導体化された突然変異したO−RSの第2のセットは、突然変異生成法(無作為の突然変異生成法、部位特異的突然変異生成法、組換え、またはこれらの組合せが挙げられるが、これらに限定されない)によって生成され得る。
【0295】
選択/スクリーニングの段階(上述した方法における、ポジティブ選択/スクリーニングの段階(b)か、ネガティブ選択/スクリーニングの段階(c)か、ポジティブおよびネガティブ選択/スクリーニングの段階(b)および(c)の両方かのいずれかが挙げられるが、これらに限定されない)のストリンジェンシーは、選択/スクリーニングのストリンジェンシーの変更を任意に包含する。他の実施形態において、ポジティブ選択/スクリーニングの段階(b)か、ネガティブ選択/スクリーニングの段階(c)か、ポジティブおよびネガティブ選択/スクリーニングの段階(b)および(c)の両方かのいずれかは、蛍光標示式細胞分取器(FACS)によって検出されるか、または発光によって検出されるレポーターを使用することを包含する。レポーターは、細胞表面、またはファージディスプレイなどに並び、非天然アミノ酸または類似体に関する親和性、または触媒活性に基づいて選択される。1つの実施形態において、突然変異した合成酵素は、細胞表面またはファージディスプレイなどに提示される。
【0296】
組換え直交性のtRNA(O−tRNA)を産生する方法は:(a)第1の生物に由来する少なくとも1つのtRNA(サプレッサtRNAが挙げられるが、これに限定されない)から誘導体化された突然変異体tRNAのライブラリを生成すること;(b)第1の生物に由来するRSの非存在下において、第2の生物に由来するアミノアシルtRNA合成酵素(RS)によってアミノアシル化される(任意に突然変異した)tRNAに関するライブラリを選択(ネガティブ選択が挙げられるが、これに限定されない)、またはスクリーニングし、これによってtRNA(任意に突然変異した)のプールを提供すること;ならびに(c)導入された直交性のRS(O−RS)によってアミノアシル化される構成要素に関するtRNA(任意に突然変異した)のプールを選択またはスクリーニングし、これによって少なくとも1つの組換えO−tRNAを提供することを包含し;ここで、少なくとも1つの組換えO−tRNAは、セレクターコドンを認識し、第2の生物に由来するRSによって効率的に認識されず、O−RSによって好ましくアミノアシル化される。いくつかの実施形態において、少なくとも1つのtRNAは、サプレッサtRNAであり、および/または、天然および/または非天然の塩基の固有な3塩基コドンを含んでいるか、ナンセンスコドン、レアコドン、非天然コドン、少なくとも4塩基を含んでいるコドン、アンバーコドン、オーカーコドン、もしくはオパールストップコドンである。1つの実施形態において、組換えO−tRNAは、向上した直交性を有している。いくつかの実施形態において、O−tRNAが修飾を必要とせずに、第2の生物から第1の生物に任意に取り込まれることが理解される。多様な実施形態において、第1および第2の生物は、同じであるか、または異なり、原核生物(メタノコッカス ジャナスキー、メタノバクテリウム テルモアウトトゥロフィクム、エシェリキア コリ、ハロバクテリウムなどが挙げられるが、これらに限定されない)、真核生物、哺乳類、菌類、酵母、アルカエバクテリウム、ユウバクテリウム、植物、昆虫、原生生物など(限定されないが、これらが挙げられる)から任意に選択される。付加的に、組換えtRNAは、遺伝子操作を介してインビボにおいてか、または天然に生合成される非天然アミノ酸によって、任意にアミノアシル化される。非天然アミノ酸は、少なくとも第1または第2の生物に使われる成長培地に任意に加えられる。
【0297】
1つの局面において、アミノアシルtRNA合成酵素によってアミノアシル化される(任意に突然変異した)tRNAに関するライブラリの選択(ネガティブ選択が挙げられるが、これに限定されない)またはスクリーニング(段階(b))は:毒性マーカー遺伝子(ここで、毒性マーカー遺伝子が、少なくとも1つのセレクターコドンを含んでいる(または少なくとも1つのセレクターコドンを含んでいる毒性マーカー遺伝子が、毒性薬剤もしくは静止薬剤の産生を導く遺伝子か、生物に必須の遺伝子を含んでいる))、および(任意に突然変異した)tRNAのライブラリを、第2の生物に由来する複数の細胞に導入すること;ならびに生存細胞を選択すること(ここで、生存細胞は、少なくとも1つの直交性のtRNAまたは非機能的tRNAを有している(任意に突然変異した)tRNAのプールを含んでいる)を包含する。例えば、生存細胞は、比較比率細胞密度アッセイ(comparison ratio cell density assay)を用いることによって選択され得る。
【0298】
他の局面において、毒性マーカー遺伝子は、2つ以上のセレクターコドンを含み得る。当該方法の他の実施形態において、毒性マーカー遺伝子は、少なくとも1つのアンバーコドンを含んでいるリボヌクレアーゼバルナーゼ遺伝子である。リボヌクレアーゼバルナーゼ遺伝子は、2つ以上のアンバーコドンを任意に含み得る。
【0299】
1つの実施形態において、導入された直交性のRS(O−RS)によってアミノアシル化される構成要素に関する(任意に突然変異した)tRNAのプールの選択またはスクリーニングは:ポジティブ選択マーカー遺伝子またはポジティブスクリーニングマーカー遺伝子(ここで、ポジティブマーカー遺伝子は、薬剤耐性遺伝子(少なくとも1つのセレクターコドン(例えば、少なくとも1つのアンバーストップコドン)を含んでいるβ−ラクタマーゼ遺伝子が挙げられるが、これに限定されない)、または生物に必須の遺伝子、またはO−RSと共に毒性薬剤の無毒化を導く遺伝子を含んでいる)、および(任意に突然変異した)tRNAのプールを、第2の生物に由来する複数の細胞に導入すること;ならびに選択薬剤またはスクリーニング薬剤(抗生物質が挙げられるが、これに限定されない)の存在下において成長された、生存細胞または選択細胞を同定し、これによって少なくとも1つの組換えtRNAを含んでいる細胞のプールを提供すること(ここで、少なくとも組換えtRNAは、O−RSによってアミノアシル化され、少なくとも1つのセレクターコドンに応じて、ポジティブマーカー遺伝子によってコードされる転写産物にアミノ酸を挿入する)を包含し得る。他の実施形態において、選択薬剤および/またはスクリーニング薬剤の濃度は変更される。
【0300】
特定のO−tRNA/O−RS対を生成する方法が提供される。方法は:(a)第1の生物に由来する少なくとも1つのtRNAから誘導体化された突然変異体tRNAのライブラリを生成すること;(b)第2の生物に由来するアミノアシルtRNA合成酵素(RS)によってアミノアシル化される(任意に突然変異した)tRNAに関するライブラリを、第1の生物に由来するRSの非存在下において、ネガティブ選択またはネガティブスクリーニングし、これによって(任意に突然変異した)tRNAのプールを提供すること;(c)導入された直交性のRS(O−RS)によってアミノアシル化される構成要素に関する(任意に突然変異した)tRNAのプールを選択またはスクリーニングし、これによって少なくとも1つの組換えO−tRNAを提供することを包含する。少なくとも1つの組換えO−tRNAは、セレクターコドンを認識し、第2の生物に由来するRSによって効率的に認識されず、O−RSによって好ましくアミノアシル化される。また、当該方法は、(d)第3の生物に由来する少なくとも1つのアミノアシルtRNA合成酵素(RS)から誘導体化された(任意に突然変異した)RSのライブラリを生成すること;(e)少なくとも1つの組換えO−tRNAを好ましくアミノアシル化する構成要素に関する突然変異体RSのライブラリを、天然にコードされていないアミノ酸および天然アミノ酸の存在下において選択またはスクリーニングし、これによって活性な(任意に突然変異した)RSのプールを提供すること;ならびに(f)少なくとも1つの組換えO−tRNAを好ましくアミノアシル化する活性な(任意に突然変異した)RSに関するプールを、天然にコードされていないアミノ酸の非存在下において、ネガティブ選択またはネガティブスクリーニングし、これによって少なくとも1つの特異的なO−tRNA/O−RS対を提供すること(ここで、少なくとも1つの特異的なO−tRNA/O−RS対は、天然にコードされていないアミノ酸および少なくとも1つの組換えO−tRNAに対して特異的な、少なくとも1つの組換えO−RSを含んでいる)を包含する。当該方法によって産生される特異的なO−tRNA/O−RS対が包含される。例えば、特異的なO−tRNA/O−RS対としては、mutRNATyr−mutTyrRS対(例えば、mutRNATyr−SS12TyrRS対)、mutRNALeu−mutLeuRS対、mutRNAThr−mutThrRS対、またはmutRNAGlu−mutGluRS対などが挙げることができるが、これらに限定されない。付加的に、そのような方法は、第1および第3の生物が同じ生物(メタノコッカス ジャナスキーが挙げられるが、これに限定されない)である場合を包含する。
【0301】
また、第2の生物のインビボにおける翻訳系に使用するための直交性のtRNA−tRNA合成酵素対を選択する方法が、本発明に包含される。当該方法は:マーカー遺伝子、第1の生物から単離されたか、誘導体化されたtRNAおよびアミノアシルtRNA合成酵素(RS)を、第2の生物に由来する第1の細胞のセットに導入すること;第2の生物に由来する二重の細胞セットにマーカー遺伝子およびtRNAを導入すること;ならびに二重の細胞セットにおいて生存することができない第1のセットにおける生存細胞を選択すること、または二重の細胞セットにおいて特異的なスクリーニング反応を示すことができないそのような反応を示す細胞を選択すること(ここで、第1のセットおよび二重の細胞セットは、選択薬剤またはスクリーニング薬剤の存在下において成長され、ここで、生存細胞または選択細胞は、第2の生物のインビボにおける翻訳系に使用するための直交性のtRNA−tRNA合成酵素対を含んでいる)を含んでいる。1つの実施形態において、比較、および選択もしくはスクリーニングは、インビボ相補的アッセイを包含する。選択薬剤またはスクリーニング薬剤の濃度は変更され得る。
【0302】
本発明の生物は、多様な生物および多様な組合せを包含する。例えば、本発明の方法の第1および第2の生物は、同じであり得るか、または異なり得る。1つの実施形態において、生物は、任意に原核生物(メタノコッカス ジャナスキー、メタノバクテリウム テルモアウトトゥロフィクム、ハロバクテリウム、エシェリキア コリ、A.フンギドゥス、P. フリオスス、P. ホリコシー、A. ペルニクス、またはT. テルモフィルスなどが挙げられるが、これらに限定されない)である。1つの実施形態において、第1の生物はエシェリキア コリである。もう1つの実施形態において、第2の生物はエシェリキア コリである。代替可能に、生物は、任意に真核生物(植物(複合体植物(例えば、単子葉植物または双子葉植物)が挙げられるが、これらに限定されない)、藻類、原生生物、菌類(酵母が挙げられるが、これに限定されない)、または動物(哺乳類、昆虫、節足動物などが挙げられるが、これらに限定されない)が挙げられるが、これらに限定されない)などである。他の実施形態において、第2の生物は、原核生物(メタノコッカス
ジャナスキー、メタノバクテリウム テルモアウトトゥロフィクム、ハロバクテリウム、エシェリキア コリ、A. フンギドゥス、ハロバクテリウム、P. フリオスス、P. ホリコシー、A. ペルニクス、またはT. テルモフィルスなどが挙げられるが、これらに限定されない)である。代替可能に、第2の生物は、真核生物(酵母、動物細胞、植物細胞、菌類、または哺乳類細胞などが挙げられるが、これらに限定されない)であり得る。多様な実施形態において、第1および第2の生物は異なる。
【0303】
<VI、レプチンポリペプチド内の天然に存在しないアミノ酸の位置>
本発明は、1つ以上の天然に存在しないアミノ酸をレプチンポリペプチドに組み込むことを意図している。1つ以上の天然に存在しないアミノ酸は、レプチンポリペプチドの活性を失活させない特定の位置に組み込まれ得る。これは、「保存的な」置換を行うことによって、および/または天然に存在しないアミノ酸を活性に必要とされない場所に挿入することによって、達成し得る。保存的な置換としては、疎水性アミノ酸と疎水性アミノ酸との置換、かさ高いアミノ酸とかさ高いアミノ酸との置換、親水性アミノ酸と親水性アミノ酸との置換が挙げられるが、これらに限定されない。
【0304】
レプチンの領域は、以下のように示され得る(配列番号2)。なお、アミノ酸の位置は中央の列にて示されている。
【0306】
配列番号4に関して、レプチンの領域は以下のように示され得る。なお、アミノ酸の位置は中央の列にて示されている。
【0308】
種々の生物化学的な手法および構造的な手法を採用して、天然にコードされていないアミノ酸によって置換するための、レプチンポリペプチド内の所望の部位を選択し得る。このポリペプチド鎖の任意の部位が、天然にコードされていないアミノ酸を組み込むための選択に好適であり、この選択が、任意の目的もしくは特に所望ではない目的に関して、合理的な設計、または無作為の選択に基づき得ることを、当業者は容易に理解する。所望の部位の選択は、任意の所望の性質、または活性を有している4ヘリックス束の分子を産生するためであり得る。当該任意の所望の性質または活性としては、アゴニスト、スーパーアゴニスト、インバースアゴニスト、アンタゴニスト、受容体結合の修飾物質、受容体活性の修飾物質、ダイマーもしくはマルチマーの形成、本来の分子と比較して活性もしくは性質に対して変化がないこと、またはポリペプチドの任意の物理的もしくは化学的な性質(例えば、溶解性、凝集または安定性)を操作することなどが挙げられる。例えば、4ヘリックス束のポリペプチドの生物活性に必要なポリペプチドにおける位置は、当該分野において公知のアラニンスキャニング法またはホモログスキャニング法を用いて同定され得る。例えば、Cunningham, B. and Wells, J., Science, 244: 1081 -1085 (1989)(hGHの生理活性に決定的である14の残基の同定)、およびCunningham, B., et al Science 243: 1330-1336 (1989)(ホモログスキャニングによる変異誘発法を用いた抗体および受容体のエピトープの同定)を参照すればよい。例えば、IFNに関し、Di Marco et al., Biochem Biophys Res Com 202:1445 (1994); Walter et al., Cancer Biotherapy & Radiopharm. 13 : 143 (1998); Runkel et al., J.B.C. 273:8003 (1998)を参照すればよい。G−CSFのアラニンスキャニングによる変異誘発法の研究は、Reidhaar-Olson JF et al., Biochemistry (1996) Jul 16;35(28):9034-41 , Young DC et al. Protein Sci. (1997) Jun;6(6): 1228-36、およびLayton et al. (1997) JBC 272(47):29735-29741に記載されている。例えば、Bittorf, T. et al. FEBS, 336: 133-136 (1993)(hEPOの活性に決定的な残基の同定)、Wen, D. et al. JBC, 269:22839-22846 (1994) (アラニンスキャニングによる変異誘発法を用いたhEPOの機能に重要なドメインの同定)、およびElliot, S. et al. Blood, 89:493-502 (1997)(hEPOとヒトのEPO受容体との間の重要な静電的相互作用の同定)を参照すればよい。アラニンスキャニングによる変異誘発法、またはホモログスキャニングによる変異誘発法によって、生物活性に重要であるとして同定されたもの以外の残基は、ポリペプチドに求められる所望の活性に依存して、天然にコードされていないアミノ酸を用いた置換にとって、良好な候補であり得る。また代替的に、生物活性に重要であるとして同定された部位は、この場合もやはり、ポリペプチドに求められる所望の活性に依存して、天然にコードされていないアミノ酸を用いた置換にとって、良好な候補であり得る。他の代替物は、レプチンポリペプチド鎖の各位置における、天然にコードされていないアミノ酸を用いた連続する置換を簡単に行い、ポリペプチドの活性に対する影響を観察するためのものである。非天然アミノ酸を用いた任意のポリペプチドへの置換に関する位置を選択する、任意の手段、技術または方法が本発明に好適に使用されることを、当業者は容易に理解する。
【0309】
また、欠失を含んでいるレプチンポリペプチドの天然に存在する変異体の構造および活性は、天然にコードされていないアミノ酸を用いた置換を許容できると思われるタンパク質の領域を決定するために試験され得る。例えば、hGHに関し、Kostyo et al, Biochem. Biophys, Acta, 925: 314 (1987); Lewis, U., et al, J. Biol Chem., 253:2679-2687 (1978) を参照すればよい。例えば、hEPOに関し、Bittorf et al, FEBS, 336: 133 (1993); Wen et al, JBC, 269:22839 (1994)を参照すればよい。同様の手法において、プロテアーゼ消化およびモノクロナル抗体が、4HBポリペプチドの受容体との結合を担っている4HBポリペプチドの領域を同定するために使用され得る。例えば、Cunningham, B., et al Science 243: 1330-1336 (1989); Mills, J., et al, Endocrinology, 107:391-399 (1980); Li, C, Mol Cell Biochem., 46:31-41 (1982)(hGHの活性を失うことなく、134〜149のアミノ酸残基を欠失し得ることを同定した。)を参照すればよい。Layton et al. (2001) JBC 276 (39) 36779-36787には、hG−CSFおよびその受容体を対象にした抗体の研究が記載されている。天然にコードされていないアミノ酸を用いた置換を許容できないと思われる残基が排除されると、残りの位置のそれぞれにおける提案されている置換の影響について、4HBおよびその結合タンパク質の三次元結晶構造から試験され得る。hGHに関し、de Vos, A., et al, Science, 255:306-312 (1992)を参照すればよい。hGHの全ての結晶構造(3HHR、1AXl、および1HWGが挙げられる)は、プロテインデータバンクにて利用することができる(PDB、rcsb.org上のワールドワイドウェブにおいて利用可能である)。プロテインデータバンクは、巨大分子のタンパク質および核酸の三次元構造のデータを含んでいる集中データベースである。また、hIFNのX線結晶構造およびNMRの構造も、プロテインデータバンク(1RH2およびHTF)だけでなく、米国特許第5,602,232号明細書、米国特許第5,460,956号明細書、米国特許第5,441,734号明細書、米国特許第4,672,108号明細書にて利用可能である(これらの文献は、参照によって本明細書に援用される)。hG−CSFのX線結晶構造およびNMRの構造は、プロテインデータバンク(PDBのIDは1CD9、1PGR、1RHG、1GNCである)や、米国特許第5,581,476号明細書、および米国特許第5,790,421号明細書にて利用可能である(これらの文献は、参照によって本明細書に援用される)。hEPOに関し、Syed et al, Nature, 395: 511 (1998) and Cheetham et al, Nature Structural Biology, 5:861 (1998)を参照すればよい。hEPOのX線結晶構造およびNMRの構造は、プロテインデータバンク(PDBのIDは1CN4、1EER、および1BUYである)にて利用可能である。このように、当業者は、天然にコードされていないアミノ酸を用いて置換され得るアミノ酸の位置を用意に同定することができる。
【0310】
いくつかの実施形態において、本発明のレプチンポリペプチドは、ポリペプチドの二次構造を破壊しないタンパク質の領域に位置される、天然にコードされていないアミノ酸を1つ以上含んでいる。いくつかの実施形態において、1つ以上の天然にコードされていないアミノ酸は、以下のレプチンの二次構造に対応する以下の1つ以上の領域内の任意の位置に組み込まれる:結合部位I(ヘリックスDのC末端によって形成される)、結合部位II(ヘリックスAおよびCにおける残基を含んでいる)、結合部位III(ヘリックスDのN末端における残基、ヘリックスCおよびDを接続するループにおける残基、およびヘリックスAおよびBを接続するループにおける残基)。
【0311】
天然にコードされていないアミノ酸を組み込む例示的な残基は、受容体結合領域(結合部位I、結合部位II、および結合部位IIIが挙げられるが、これらに限定されない)として見込のある領域から除外された残基であり得る。また、当該残基は、完全または部分的に溶媒にさらされ得る残基である。また、当該残基は、近傍の残基と最小の水素結合による相互作用を有するか、または近傍の残基と水素結合による相互作用を有していない残基である。また、当該残基は、近傍の反応性残基に対して最小にさらされ得る残基である。また、当該残基は、受容体を有する4ヘリックス束のポリペプチドの三次元結晶構造によって予測されるような、柔軟性の高い領域(C−Dループが挙げられるが、これに限定されない)、または構造的に堅固な領域(Bヘリックスが挙げられるが、これらに限定されない)にあり得る。
【0312】
いくつかの実施形態において、1つ以上の天然にコードされていないアミノ酸は、以下のレプチンにおける二次構造に対応する以下の1つ以上の領域内の任意の部位に組み込まれる:配列番号2のアミノ酸、または配列番号1によってコードされる対応するアミノ酸の、1〜3位(N末端)、4〜26位(Aヘリックス)、27〜50位(AヘリックスとBヘリックスとの間の領域、A−Bループ)、51〜67位(Bヘリックス)、68〜70位(BヘリックスとCヘリックスとの間の領域、B−Cループ)、71〜93位(Cヘリックス)、94〜120位(CヘリックスとDヘリックスとの間の領域、C−Dループ)、121〜142位(Dヘリックス)、143〜146位(C末端)。いくつかの実施形態において、1つ以上の天然にコードされていないアミノ酸は、以下のレプチンにおける二次構造に対応する以下の1つ以上の領域内の任意の部位に組み込まれる:配列番号4のアミノ酸、または配列番号によってコードされる対応するアミノ酸の、1〜3位(N末端)、4〜26位(Aヘリックス)、27〜50位(AヘリックスとBヘリックスとの間の領域、A−Bループ)、51〜67位(Bヘリックス)、68〜70位(BヘリックスとCヘリックスとの間の領域、B−Cループ)、71〜93位(Cヘリックス)、94〜120位(CヘリックスとDヘリックスとの間の領域、C−Dループ)、121〜142位(Dヘリックス)、143〜147位(C末端)。
【0313】
他の実施形態において、本発明のレプチンポリペプチドは、次の群より選択されるhGHの少なくとも1つの領域に位置するアミノ酸の少なくとも1つと置換されている、天然に存在しないアミノ酸を少なくとも1つ含んでいる:配列番号2のアミノ酸、または配列番号1によってコードされた対応するアミノ酸の、1〜3位(N末端領域)、4〜26位(Aヘリックス)、27〜50位(AヘリックスとBヘリックスとの間の領域、A−Bループ)、51〜67位(Bヘリックス)、68〜70位(BヘリックスとCヘリックスとの間の領域、B−Cループ)、71〜93位(Cヘリックス)、94〜120位(CヘリックスとDヘリックスとの間の領域、C−Dループ)、および121〜142位(Dヘリックス)、143〜146位(C末端)からなる群。他の実施形態において、本発明のレプチンポリペプチドは、次の群より選択されるhGHの少なくとも1つの領域に位置するアミノ酸の少なくとも1つと置換された、天然に存在しないアミノ酸を少なくとも1つ含んでいる:配列番号4のアミノ酸、または配列番号3によってコードされた対応するアミノ酸の、1〜3位(N末端領域)、4〜26位(Aヘリックス)、27〜50位(AヘリックスとBヘリックスとの間の領域、A−Bループ)、51〜67位(Bヘリックス)、68〜70位(BヘリックスとCヘリックスとの間の領域、B−Cループ)、71〜93位(Cヘリックス)、94〜120位(CヘリックスとDヘリックスとの間の領域、C−Dループ)、121〜142位(Dヘリックス)、143〜147位(C末端)。いくつかの実施形態において、1つ以上の天然にコードされていないアミノ酸は、レプチンの以下の位置の1つ以上に組み込まれる:配列番号2のhGH、または配列番号1によってコードされた対応するアミノ酸の、1〜5位、6〜10位、11〜15位、16〜20位、21〜25位、26〜30位、31〜35位、36〜40位、41〜45位、46〜50位、51〜55位、56〜60位、61〜65位、66〜70位、71〜75位、76〜80位、81〜85位、86〜90位、91〜95位、96〜100位、101〜105位、106〜110位、111〜115位、116〜120位、121〜125位、126〜130位、131〜135位、136〜140位、141〜146位。別の実施形態において、1つ以上の天然にコードされていないアミノ酸は、レプチンの以下の位置の1つ以上に組み込まれる:配列番号4のhGH、または配列番号3によってコードされた対応するアミノ酸の、1〜5位、6〜10位、11〜15位、16〜20位、21〜25位、26〜30位、31〜35位、36〜40位、41〜45位、46〜50位、51〜55位、56〜60位、61〜65位、66〜70位、71〜75位、76〜80位、81〜85位、86〜90位、91〜95位、96〜100位、101〜105位、106〜110位、111〜115位、116〜120位、121〜125位、126〜130位、131〜135位、136〜140位、141〜147。
【0314】
天然にコードされていないアミノ酸を1つ以上組み込む例示的な部位としては位、配列番号2のアミノ酸位、または配列番号1によってコードされた対応するアミノ酸の位、105位、41位、117位、100位、118位、40位、108位、71位、95位、5位、106位、112位、97位、92位、109位、23位、4位、119位、103位、102位、142位、69位、111位、22位、93位、116位、143位、67位、138位、99位、3位、115位、8位、141位、104位、24位、120位、66位、101位、70位、78位、39位、43位、19位、9位、94位、12位、96位、107位、74位、113位、15位、85位、49位、46位、145位、122位、81位、110位、またはそれらの任意の組合せが挙げられる。天然にコードされていないアミノ酸を1つ以上組み込む他の例示的な部位としては位、配列番号4のアミノ酸位、または配列番号3によってコードされた対応するアミノ酸の位、106位、42位、118位、101位、119位、41位、109位、72位、96位、6位、107位、113位、98位、93位、110位、24位、5位、120位、104位、103位、143,70位、112,23位、94位、117位、144位、68位、139位、100位、4位、116位、9位、142位、105位、25位、121位、67位、102,73位、79位、40位、44位、20位、10位、95位、13位、97位、108位、75位、114位、16位、86位、50位、47位、146位、123位、82位、111位またはそれらの任意の組合せ、あるいは配列番号2のアミノ酸、または配列番号1もしくは3によってコードされた対応するアミノ酸の上述した部位の任意の組合せが挙げられる。
【0315】
天然にコードされていないアミノ酸を1つ以上組み込む他の例示的な部位のサブセットとしては、配列番号2のアミノ酸、または配列番号1によってコードされた対応するアミノ酸の、105位、41位、117位、100位、118,40位、108位、71位、95位、5位、106位、112位、97位、92位、109位、23位、4位、119位、103位、102位、142位、69位、111位、22位、93位、116位、および143位、またはそれらの任意の組合せが挙げられる。レプチンの結晶構造およびレプチンとレプチン受容体との相互作用の試験は、これらのアミノ酸残基の側鎖が溶媒に完全にまたは部分的にアクセス可能であり、天然にコードされていないアミノ酸の側鎖が、タンパク質の表面から離れるように向けられ、溶媒中に露出されるように向けられ得ることを示している。いくつかの実施形態において、天然にコードされていないアミノ酸を1つ以上組み込む例示的な部位としては、45位、65位、66位、99位、104位、107位、110位(配列番号2のアミノ酸、または配列番号1によってコードされた対応するアミノ酸)が挙げられる。いくつかの実施形態において、天然にコードされていないアミノ酸を1つ以上組み込む例示的な部位としては、46位、66位、67位、100位、105位、108位、111位(配列番号4のアミノ酸、または配列番号3によってコードされた対応するアミノ酸)が挙げられる。
【0316】
多種多様な天然にコードされていないアミノ酸が、レプチンポリペプチド内の所定の位置のアミノ酸と置換され得るか、この所定の位置に組み込まれ得る。一般に、特定の天然にコードされていないアミノ酸は、(i)レプチン受容体を伴うレプチンポリペプチドの三次元結晶構造の調査、(ii)保存的置換(すなわち、アリールに基づく天然にコードされていないアミノ酸(p−アセチルフェニルアラニンまたはO−プロパルギルチロシンなど)をPhe、Tyr、またはTrpと置換すること)を優先させること、および(iii)レプチンポリペプチドに導入することが望まれる特異的な共役の化学的性質に基づいて組み込むために選択される(例えば、アルキン部分を有する水溶性ポリマーとのヒュイゲン[3+2]付加環化を引き起こしたい場合、4−アジドフェニルアラニンを導入する。また、アリールエステルを有し、次いでホスフィン部分を組み込む水溶性ポリマーとアミド結合を形成したい場合、4−アジドフェニルアラニンを導入する)。
【0317】
一実施形態において、本方法は、第1の反応性基を含んでいる非天然アミノ酸をタンパク質に組み込むこと、およびこのタンパク質を第2の反応性基を含んでいる分子と接触させることをさらに包含している。この分子としては、限定されないが、標識、色素、ポリマー、水溶性ポリマー、ポリエチレングリコールの誘導体、光架橋剤、細胞毒性化合物、薬物、親和性標識、光親和性標識、反応性化合物、樹脂、もう1つのタンパク質もしくはポリペプチドもしくはポリペプチド類似物、抗体もしくは抗体断片、金属キレート剤、補助因子、脂肪酸、炭水化物、ポリヌクレオチド、DNA、RNA、アンチセンスポリヌクレオチド、抑制性リボ核酸、生体材料、ナノ粒子、スピン標識、蛍光団、金属を含有する部分、放射性部分、新規な官能基、他の分子と共有結合的または非共有結合的に相互作用する基、光ケージド(photocaged)部分、化学線励起可能な部分、光異性化可能な部分、ビオチン、ビオチンの誘導体、ビオチン類似物、重原子を組み込みこんでいる部分、化学切断可能な基、光切断可能な基、延長された側鎖、炭素結合型の糖、酸化還元活性のある剤、アミノチオ酸、毒性部分、同位体によって標識された部分、生物物理学的なプローブ、燐光性の基、化学発光性の基、電子密度の高い基、磁性基、インターカレートする基、発色団、エネルギー転移剤、生物学的に活性な薬剤、検出可能な標識、小分子、または上述のものの任意の組合せ、あるいは他の所望の化合物または物質が挙げられる。第1の反応性基は、第2の反応性基と反応して、[3+2]付加環化を介して上記分子に上記非天然アミノ酸を付与する。一実施形態において、第1の反応性基はアルキニル部分またはアジド部分であり、第2の反応性基はアジド部分またはアルキニル部分である。例えば、第1の反応性基がアルキニル部分(非天然アミノ酸であるp−プロパルギルオキシフェニルアラニン内のアルキニル部分が挙げられる)であり、第2の反応性基はアジド部分である。他の例において、第1の反応性基はアジド部分(p−アジド−L−フェニルアラニン内のアジド部分が挙げられるが、これに限定されない)であり、第2の反応性基はアルキニル部分である。
【0318】
いくつかの場合において、天然にコードされていないアミノ酸の置換は、レプチンポリペプチドの他の生物学的特色に影響を及ぼすために、レプチンポリペプチド内の他の付加、置換または欠失と組み合せられる。いくつかの場合において、他の付加、置換または欠失は、レプチンポリペプチドの安定性(タンパク質分解に対する耐性が挙げられるが、これに限定されない)を増強し得るか、またはレプチン受容体に対するレプチンポリペプチドの親和性を増強し得る。いくつかの場合において、他の付加、置換または欠失は、レプチンポリペプチドの溶解性(E. coliまたは他の宿主細胞において発現される場合のレプチンポリペプチドの溶解性が挙げられるが、これらに限定されない)を増強し得る。いくつかの実施形態において、付加、置換または欠失は、E. coliの組換え宿主細胞における発現の後における、ポリペプチドの溶解性を増強し得る。いくつかの実施形態において、部位は、E. coliの組換え宿主細胞における発現の後における、ポリペプチドの溶解性の増強を生じる非天然アミノ酸の組込みに関する他の部位に加えて、天然にコードされるアミノ酸、または非天然アミノ酸を用いた置換に関して選択される。溶解性を増強するためのアミノ酸の置換に関し、hEPOにおけるこのような部位の例は、N36、Q86、G113、および/またはQ115であり、これらの部位は、Lys、Arg、Glu、または他の任意の電荷を有する天然にコードされているアミノ酸または天然にコードされていないアミノ酸で置換され得る(配列番号38)。いくつかの実施形態において、レプチンポリペプチドは、レプチンポリペプチドの受容体に対する親和性を調節するか、受容体のダイマー化を調節(低減または増強が挙げられるが、これらに限定されない)するか、受容体のダイマーを安定化するか、循環半減期を調節するか、放出もしくは生物学的利用性を調節するか、精製を容易にするか、または特定の投与経路を改善もしくは変更する、他の付加、置換または欠失を含んでいる。例えば、本明細書に記載されているような天然にコードされていないアミノ酸を1つ以上導入することに加えて、hGHバリアントのその受容体に対する親和性を増強させるために以下の置換を1つ以上導入する:F10A、F10HまたはF10I;M14W、M14QまたはM14G;H18D;H21N;R167N;D171S;E174S;F176YおよびI179T。例えば、本明細書に記載されているような天然にコードされていないアミノ酸を1つ以上導入することに加えて、hEPOバリアントのその受容体に対する親和性を増強させるために以下の置換を1つ以上導入する:S9A、F48S、Y49S、A50S、Q59A、A73G、G101A、T106A、L108A、T132A、R139A、K140A、R143A、S146A、N147A、R150A、およびK154A(Wen et al , (1994) JBC 269:22839-22846)。同様に、レプチンポリペプチドは、プロテアーゼが切断する配列、反応性基、抗体が結合するドメイン(FLAGまたはポリ−Hisが挙げられるが、これらに限定されない)もしくは他の親和性に基づく配列(FLAG、ポリ−His、GSTなど挙げられるが、これらに限定されない)、または連結分子(ビオチンが挙げられるが、これに限定されない)を含み得る。当該連結分子は、検出を向上させる分子(GFPが挙げられるが、これに限定されない)、精製またはポリペプチドの他の特色を向上させる分子である。
【0319】
いくつかの実施形態において、天然にコードされていないアミノ酸の置換は、レプチンのアンタゴニストを生成する。いくつかの実施形態において、レプチンのアンタゴニストは、配列番号2のアミノ酸、または配列番号1によってコードされた対応するアミノ酸の、領域である1〜3(N末端領域)、4〜26位(Aヘリックス)、27〜50位(AヘリックスとBヘリックスとの間の領域、A〜Bループ)、51〜67位(Bヘリックス)、68〜70位(BヘリックスとCヘリックスとの間の領域、B〜Cループ)、71〜93位(Cヘリックス)、94〜120位(CヘリックスとDヘリックスとの間の領域、C〜Dループ)、121〜142位(Dヘリックス)、143〜146位(C末端)における置換を少なくとも1つ含んでおり、この置換は、レプチンがアンタゴニストとしての役割を果たす原因となるものである。他の実施形態において、レプチンのアンタゴニストは、配列番号4のアミノ酸、または配列番号3によってコードされた対応するアミノ酸の、領域である1−4位(N末端領域)、5〜27位(Aヘリックス)、28〜51位(AヘリックスとBヘリックスとの間の領域、A〜Bループ)、52〜68位(Bヘリックス)、69〜71位(BヘリックスとCヘリックスとの間の領域、B〜Cループ)、72〜94位(Cヘリックス)、95〜121位(CヘリックスとDヘリックスとの間の領域、C〜Dループ)、122〜143位(Dヘリックス)、144〜148位(C末端領域)における置換を少なくとも1つ含んでおり、この置換は、レプチンがアンタゴニストとしての役割を果たす原因となるものである。他の実施形態において、天然にコードされていないアミノ酸を組み込む定時的な部位としては、ヘリックスAのアミノ末端領域内の残基、およびヘリックスCの一部の残基が挙げられる。別の実施形態において、120位のアミノ酸、121位のアミノ酸、122位のアミノ酸またはそれらの任意の組合せが、天然にコードされていないアミノ酸(p−アジド−L−フェニルアラニンまたはO−プロパルギル−L−チロシンなど)に置換される。他の実施形態において、上述した置換は、レプチンポリペプチドがレプチンのアゴニストとなる原因であるさらなる置換と組み合わせられる。いくつかの実施形態において、レプチンのアンタゴニストは、レプチン分子の受容体結合領域に存在する水溶性ポリマーに連結される天然にコードされていないアミノ酸を含んでいる。
【0320】
いくつかの場合において、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10またはそれ以上のアミノ酸が、1つ以上の天然にコードされていないアミノ酸を用いて置換される。いくつかの場合において、レプチンポリペプチドは、1つ以上の天然にコードされていないアミノ酸による天然に生じるアミノ酸の、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、またはそれ以上の置換をさらに含んでいる。例えば、いくつかの実施形態において、レプチンの以下の領域における少なくとも2つの残基が、1つ以上の天然にコードされていないアミノ酸によって置換される:配列番号2のアミノ酸、または配列番号1によってコードされた対応するアミノ酸の、1〜3位(N末端領域)、4〜26位(Aヘリックス)、27〜50位(AヘリックスとBヘリックスとの間の領域、A−Bループ)、51〜67位(Bヘリックス)、68〜70位(BヘリックスとCヘリックスとの間の領域、B−Cループ)、71〜93位(Cヘリックス)、94〜120位(CヘリックスとDヘリックスとの間の領域、C−Dループ)、121〜142位(Dヘリックス)、143〜146位(C末端)。いくつかの実施形態において、レプチンの以下の領域における少なくとも2つの残基が、1つ以上の天然にコードされていないアミノ酸によって置換される:配列番号4のアミノ酸、または配列番号3によってコードされた対応するアミノ酸の、1〜4位(N末端領域)、5〜27位(Aヘリックス)、28〜51位(AヘリックスとBヘリックスとの間の領域、A−Bループ)、52〜68位(Bヘリックス)、69〜71位(BヘリックスとCヘリックスとの間の領域、B−Cループ)、72〜94位(Cヘリックス)、95〜121位(CヘリックスとDヘリックスとの間の領域、C−Dループ)、122〜143位(Dヘリックス)、144〜148位(C末端領域)。いくつかの場合、2つ以上の天然にコードされていない残基は、1つ以上の低分子量(約5〜20kDa未満の質量)の直鎖状または分枝状のPEGに連結される。この連結によって、結合親和性が増強され、単一の高分子量のPEGに連結された種と比べて血清半減期が同等になる。
【0321】
いくつかの実施形態において、hGHの次の2つ以下の残基が、以下の位置において1つ以上の天然にコードされていないアミノ酸によって置換される:配列番号2の、105位、41位、117位、100位、118位、40位、108位、71位、95位、5位、106位、112位、97位、92位、109位、23位、4位、119位、103位、102位、142位、69位、111位、22位、93位、116位、143位、67位、138位、99位、3位、115位、8位、141位、104位、24位、120位、66位、101位、70位、78位、39位、43位、19位、9位、94位、12位、96位、107位、74位,113位、15位、85位、49位、46位、145位、122位、81位、110位、またはそれらの任意の組合せ。いくつかの実施形態において、hGHの次の2つ以下の残基が、以下の位置において1つ以上の天然にコードされていないアミノ酸によって置換される:配列番号4の、106位、42位、118位、101位、119位、41位、109位、72位、96位、6位、107位、113位、98位、93位、110位、24位、5位、120位、104位、103位、143位、70位、112位、23位、94位、117位、144位、68位、139位、100位、4位、116位、9位、142位、105位、25位、121位、67位、102位、71位、79位、40位、44位、20位、10位、95位、13位、97位、108位、75位、114位、16位、86位、50位、47位、146位、123位、82位、111位、またはそれらの任意の組合せ。
【0322】
<VII.非真核生物および真核生物における発現>
クローニングされたレプチンポリヌクレオチドを高レベルに発現させるために、一般的に、本発明のレプチンポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを、直接的に転写するための強力なプロモータ、転写/翻訳ターミネータを含んでいる、タンパク質をコードする核酸用であれば、翻訳開始用のリボソーム結合部位をさらに含んでいる発現ベクターにサブクローニングする。適切な細菌プロモータは、当業者に周知であり、Sambrook et alおよびAusubel et alにて説明されている。
【0323】
本発明のレプチンポリペプチドの発現を目的とした細菌発現系は、例えばE. coliにおいて、利用可能であるが、これらに限定されない。そのような発現系用のキットは市販されている。また、哺乳動物細胞、酵母、および昆虫細胞にとっての真核発現系は、当業者に周知であり、市販もされている。直交性のtRNAおよびアミノアシル化tRNA合成酵素(上述されている)を使用して、本発明のレプチンポリペプチドを発現する場合、発現用の宿主細胞は、直交性の構成要素を使用する該宿主細胞の能力に基づいて選択される。例示的な宿主細胞としては、グラム陽性細菌(B. ブレビス(B. brevis)、B. サブチリス(B. subtilis)、またはストレプトミセス(Streptomyces)が挙げられるが、これらに限定されない)、およびグラム陰性細菌(E. coli、シュードモナス フルオレセンス(Pseudomonas fluoresceins)、シュードモナス アエルギノーザ(Psendomonas aeruginosa)、シュードモナス プティダ(Pscudomonas putida))だけでなく、酵母および他の真核細胞が挙げられる。O−tRNA/O−RSの対を含む細胞は、本明細書に記載されているように使用され得る。
【0324】
本発明の真核生物の宿主細胞、または非真核生物の宿主細胞は、非常に有用な量の非天然アミノ酸を含んでいるタンパク質を合成する能力を有している。1つの局面において、組成物は、必要に応じて、少なくとも10マイクログラム、少なくとも50マイクログラム、少なくとも75マイクログラム、少なくとも100マイクログラム、少なくとも200マイクログラム、少なくとも250マイクログラム、少なくとも500マイクログラム、少なくとも1ミリグラム、少なくとも10ミリグラム、少なくとも100ミリグラム、少なくとも1グラム、もしくはそれ以上(これらに限定されない)の、非天然アミノ酸を含んでいるタンパク質を含んでいるか、またはインビボにおけるタンパク質の製造方法(組換えタンパク質の製造および精製についての詳細が本明細書に与えられている)を用いて達成され得る量のタンパク質を含んでいる。
【0325】
他の局面において、タンパク質は、(これに限定されないが、1nL〜100Lなどの任意の量の)細胞溶解液、緩衝液、薬学的緩衝液または他の液体懸濁液の中に、1リットルごとに少なくとも10マイクログラムのタンパク質、1リットルごとに少なくとも50マイクログラムのタンパク質、1リットルごとに少なくとも75マイクログラムのタンパク質、1リットルごとに少なくとも100マイクログラムのタンパク質、1リットルごとに少なくとも200マイクログラムのタンパク質、1リットルごとに少なくとも250マイクログラムのタンパク質、1リットルごとに少なくとも500マイクログラムのタンパク質、1リットルごとに少なくとも1ミリグラムのタンパク質、1リットルごとに少なくとも10ミリグラムのタンパク質、またはそれ以上の濃度(これらに限定されない)において、組成物中に必要に応じて存在する。少なくとも1つの非天然アミノ酸を含んでいるタンパク質の真核細胞での大量生産(典型的に限定されないが、インビボにおける翻訳を含む他の方法を用いて可能な量よりも多い量が挙げられるが、これに限定されない)は、本発明の1つの特徴である。
【0326】
本発明の真核生物の宿主細胞、または非真核生物の宿主細胞は、非天然アミノ酸を含んでいるタンパク質を非常に有用な量で生合成する能力を備えている。例えば、非天然アミノ酸を含んでいるタンパク質は、細胞抽出物、細胞溶解液、培地、および/または緩衝液などの中に、例えば、少なくとも10μg/リットル、少なくとも50μg/リットル、少なくとも75μg/リットル、少なくとも100μg/リットル、少なくとも200μg/リットル、少なくとも250μg/リットル、少なくとも500μg/リットル、少なくとも1mg/リットル、少なくとも2mg/リットル、少なくとも3mg/リットル、少なくとも4mg/リットル、少なくとも5mg/リットル、少なくとも6mg/リットル、少なくとも7mg/リットル、少なくとも8mg/リットル、少なくとも9mg/リットル、少なくとも10mg/リットル、少なくとも20、30、40、50、60、70、80、90、100、200、300、400、500、600、700、800、900mg/リットル、1g/リットル、5g/リットル、10g/リットル、またはそれ以上の濃度において、製造され得る。
【0327】
(I.発現系、培養、および単離)
任意の数の適切な発現系において、レプチンポリペプチドを発現させ得る。当該発現系としては、例えば、酵母、昆虫細胞、哺乳動物細胞および細菌が挙げられる。典型的な発現系の例を以下に示す。
【0328】
(酵母)
本明細書で用いられる場合、“酵母”という用語は、レプチンポリペプチドをコードする遺伝子を発現可能な、種々の酵母のいずれかを包含する。そのような酵母としては、限定されないが、子嚢胞子を生じる(ascosporogenous)酵母(エンドミセタレス(Endomycetales))、担子胞子を生じる(basidiosporogenous)酵母、および不完全真菌(ブラストミセス(Blastomycetes))の群に属する酵母などが挙げられるが、これらに限定されない。子嚢胞子を生じる酵母は、2のファミリー(スペルモフトラセアエ(Spermophthoraceae)およびサッカロミセタセアエ(Saccharomycetaceae))に分けられる。後者は、4のサブファミリー(シゾサッカロミコイデアエ(Schizosaccharomycoideae)(シゾサッカロミセス属(genus Schizosaccharomyces)など)、ナドソニオイデアエ(Nadsonioideae)、リポミコイダエ(Lipomycoideae)、およびサッカロミコイデアエ(Saccharomycoideae)(ピチア属(genus Pichia)、クリュイベロミセス属(genus Kluyveromyces)、およびサッカロミセス属(genus Saccharomyces)など)から構成されている。担子胞子を生じる酵母には、ロイコスポリディウム属(genus Leucosporidium)、ロードスポリディウム属(genus Rhodosporidium)、スポリディオボルス属(genus Sporidiobolus)、フィロバシディウム属(genus Filobasidium)、およびフィロバシディエラ属(genus Filobasidiella)が含まれる。不完全真菌(ブラストミセテス)の群に属する酵母は、2のファミリースポロボロミセタセアエ(Sporobolomycetaceae)(スポロボロミセス属(genus Sporobolomyces)およびブレラ属(genus Bullera)など)、およびクリプトコッカセアエ(Cryptococcaceae)(カンディダ属(genus Candida)など)に分けられる。
【0329】
本発明と一緒に使用するための特に所定のものとして、ピチア属(genus Pichia)、クリュイベロミセス属(genus Kluyveromyces)、サッカロミセス属(genus Saccharomyces)、シゾサッカロミセス属(genus Schizosaccharomyces)、ハンセヌラ属(genus Hansenula)、トルロプシス属(genus Torulopsis)、およびカンディダ属(genus Candida)に含まれる種であり、P. パストリス(P. pastoris)、P. グイレリモンディー(P. guillerimondii)、S.セレビジアエ(S. cerevisiae)、S.カルスベルジェニス(S. carlsbergensis)、S.ディアスタティクス(S. diastaticus)、S. ドウグラシイ(S. douglasii)、S. クリュイベリ(S. kluyveri)、S. ノルベンシス(S. norbensis)、S. オビフォルミス(S. oviformis)、K. ラクティス(K. lactis)、K. フラジリス(K. fragilis)、C. アルビカンス(C. albicans)、C. マルトーサ(C. maltosa)、およびH. ポリモルファ(H. polymorpha)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0330】
レプチンポリペプチドの発現に好適な酵母の選択は、当業者の技術範囲にある。発現用の酵母宿主の選択において、好適な宿主としては、例えば、良好な分泌能、低いタンパク質分解活性、良好な分泌能、良好な可溶化タンパク質産生、および総合的な強健さを有することが示されている酵母が挙げられ得る。酵母は、一般的に種々の供給源から入手でき、カリフォルニア大学生物物理学および医学物理学分野(Department of Biophysics andMedical Physics, University of California)のYeast Genetic Stock Center (バークレイ(Berkeley)、CA)、およびthe American Type Culture Collection(“ATCC”)(マナ
サス(Manassas)VA)などから入手できるが、これらに限定されない。
【0331】
“酵母宿主”または“酵母宿主細胞”という用語は、組換えベクターまたは他のトランスファーDNAの受容物として使用し得るか、または使用されている酵母を含む。この用語は、組換えベクターまたは他のトランスファーDNAを受け容れている元々の酵母宿主細胞の子孫を含んでいる。1つの親細胞の子孫が、形態において、またはゲノムDNAもしくは全DNAの補体(complement)において、偶発的な突然変異、もしくは計画的な突然変異に起因して、元々の親細胞と必ずしも完全に一致しなくてもよいことが理解される。関連する性質(例えば、レプチンポリペプチドをコードするヌクレオチド配列の存在)により特徴付けられる親細胞と十分に類似する、親細胞の子孫は、この定義によって意図される子孫に含まれる。
【0332】
発現ベクターおよび形質転換ベクター(染色体外レプリコンまたは組込みベクターが挙げられる)は、多くの酵母宿主を形質転換するために開発されている。例えば、S.セレビジアエ(Sikorski et al, GENETICS (1989) 122:19、Ito et al, J. BACTERIOL. (1983) 153:163、Hinnen et al, PROC. NATL. ACAD. SCI. USA (1978) 75:1929)、C. アルビカンス(Kurtz et al, MOL. CELL. BIOL. (1986) 6:142)、C. マルトーサ(Kunze et al, J. BASIC MICROBIOL. (1985) 25:141)、H. ポリモルファ(Gleeson et al, J. GEN. MICROBIOL. (1986) 132:3459、Roggenkamp et al, MOL. GENETICS AND GENOMICS (1986) 202:302)、K. フラジリス(Das et al, J. BACTERIOL. (1984) 158:1165)、K. ラクティス(De Louvencourt et al, J. BACTERIOL. (1983) 154:737、Van den Berg et al, BIOTECHNOLOGY (1990) 8:135)、P. グイレリモンディー(Kunze et al, J. BASIC MICROBIOL. (1985) 25:141)、P. パストリス(米国特許第5,324,639号明細書、米国特許第4,929,555号明細書、および米国特許第4,837,148号明細書、Cregg et al, MOL. CELL. BIOL. (1985) 5:3376、シゾサッカロミセス ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)(Beach et al, NATURE (1982) 300:706)、およびY. リポリティカ(Y. lipolytica)(Davidow et al, CURR. GENET. (1985) 10:380 (1985)、Gaillardin et al, CURR. GENET. (1985) 10:49)、A. ニドゥランス(A. nidulans)(Balance et al, BIOCHEM. BIOPHYS. RES. COMMUN. (1983) 112:284-89、Tilburn et al, GENE (1983) 26:205-221、およびYelton et al, PROC. NATL. ACAD. SCI. USA (1984) 81:1470-74)、A. ニガー(A. niger)(Kelly and Hynes, EMBO J. (1985) 4:475479)、T. レエシア(T. reesia)(欧州特許出願公開第0244234号明細書)、および糸状菌(例えば、ニューロスポラ(Neurospora)、ペニシリウム(Penicillium)、トリポクラディウム(Tolypocladium)(国際公開第91/00357号パンフレット)など)、のための発現ベクターが開発されている。なお、各文献は、参照によって本明細書に援用される。
【0333】
酵母ベクター用の制御配列は、当業者に周知であり、アルコールデヒドロゲナーゼ(ADH)(欧州特許出願公開第0284044号明細書)、エノラーゼ、グルコキナーゼ、グルコース−6リン酸イソメラーゼ、グリセルアルデヒド−3−リン酸−デヒドロゲナーゼ(GAPまたはGAPDH)、ヘキソキナーゼ、ホスホフルクトキナーゼ、3−ホスホグリセリン酸ムターゼ、およびピルビン酸キナーゼ(PyK)(欧州特許出願公開第0329203号明細書)といった遺伝子に由来するプロモータ領域などが挙げられるが、これに限定されない。また、酸性ホスファターゼをコードしている酵母のPHO5遺伝子は、有用なプロモータ配列を提供し得る(Miyanohara et al, PROC. NATL. ACAD. SCI. USA (1983) 80:1)。酵母宿主との使用に適切な他のプロモータ配列としては、3−ホスホグリセリン酸キナーゼ(Hitzeman et al, J. BIOL. CHEM. (1980) 255:2073)、および他の解糖系の酵素(例えば、ピルビン酸デカルボキシラーゼ、トリオースリン酸イソメラーゼ、およびホスホグルコースイソメラーゼ(例えば、Holland et al, BIOCHEMISTRY (1978) 17:4900、Hess et al, J. ADV. ENZYME REG. (1969) 7:149)が挙げられ得る。増殖条件によって制御される転写のさらなる利点を有している、酵母の誘導性プロモータとしては、アルコールデヒドロゲナーゼ2、イソチトクロームC、酸性ホスファターゼ、メタロチオネイン、グリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼ、窒素代謝に関連する分解酵素、ならびにマルトースおよびガラクトースの利用を担う酵素にとってのプロモータ領域が挙げられ得る。酵母発現における使用に適切なベクターおよびプロモータが、欧州特許出願公開第0073657号明細書に、さらに記載されている。
【0334】
また、酵母エンハンサーを、酵母プロモータと共に用いてもよい。さらに、合成プロモータもまた、酵母プロモータとして機能し得る。例えば、酵母プロモータの上流活性化配列(UAS)を別の酵母プロモータの転写活性化領域につないで、合成混成プロモータを作製し得る。混成プロモータとしては、例えば、GAPの転写活性化領域に連結されたADH調節配列が挙げられる。米国特許第4,880,734号明細書、および米国特許第4,876,197号明細書を参照すればよく、これらの文献は参照によって本明細書に援用される。混成プロモータの他の例としては、解糖系酵素の遺伝子(例えば、GAPまたはPyK)の転写活性化領域と組み合せたADH2、GAL4、GAL10、またはPHO5の遺伝子の調節配列からなるプロモータが挙げられる。欧州特許出願公開0164556号明細書を参照すればよい。さらに、酵母プロモータは、酵母のRNAポリメラーゼとの結合能および転写開始能を有している、非酵母由来の天然に存在するプロモータを含み得る。
【0335】
酵母発現ベクターの一部を構成し得る他の制御要素としては、例えば、GAPDHまたはエノラーゼ遺伝子に由来するターミネータ(Holland et al, J. BlOL. CHEM. (1981) 256:1385)が挙げられる。さらに、2μプラスミドの起点に由来する複製起点は、酵母にとって適切である。酵母に使用するための適切な選択遺伝子は、酵母プラスミドに存在するtrp1遺伝子である。Tschumper et al, GENE (1980) 10:157、Kingsman et al, GENE (1979) 7:141を参照すればよい。trp1遺伝子は、トリプトファン存在下において増殖能を欠如している酵母の突然変異株に対する選択マーカーを提供する。同様にLeu2欠損酵母株(ATCC20,622または38,626)は、Leu2遺伝子を有する公知のプラスミドにより補完される。
【0336】
外因性DNAを酵母宿主に導入する方法は、当業者に周知の技術であり、通常、アルカリ性陽イオンを用いて処理された天然の酵母宿主細胞またはスフェロプラストのいずれかの形質転換が挙げられるが、これらに限定されない。例えば、酵母の形質転換は、Hsiao et al, PROC. NATL. ACAD. SCI. USA (1979) 76:3829およびVan Solingen et al, J. BACT. (1977) 130:946に記載の方法にしたがって、実施され得る。しかし、また、例えば、核注入、エレクトロポレーションまたは原形質融合によってDNAを細胞に導入する他の方法も、SAMBROOK et al, MOLECULAR CLONING: A LAB. MANUAL (2001)に通常に記載されているように、使用され得る。次いで、酵母宿主細胞を当業者に公知の標準技術を用いて培養してもよい。
【0337】
酵母宿主細胞において異種タンパク質を発現させる他の方法は、当業者に公知の技術である。一般的に、米国特許出願公開第2002/0055169号明細書、米国特許第6,361,969号明細書、米国特許第6,312,923号明細書、米国特許第6,183,985号明細書、米国特許第6,083,723号明細書、米国特許第6,017,731号明細書、米国特許第5,674,706号明細書、米国特許第5,629,203号明細書、米国特許第5,602,034号明細書、および米国特許第5,089,398号明細書、米国再発行特許発明第RE37,343号明細書、および米国再発行特許発明第RE35,749号明細書、国際公開第99/07862号パンフレット、国際公開第98/37208号パンフレット、および国際公開第98/26080号パンフレット、欧州特許出願公開第0946736号明細書、欧州特許出願公開第0732403号明細書、欧州特許出願公開第0480480号明細書、欧州特許出願公開第0460071号明細書、欧州特許出願公開第0340986号明細書、欧州特許出願公開第0329203号明細書、欧州特許出願公開第0324274号明細書、および欧州特許出願公開第0164556明細書を参照すればよい。また、Gellissen et al, ANTONIE VAN LEEUWENHOEK (1992) 62(1-2):79-93、Romanos et al, YEAST (1992) 8(6):423-488、Goeddel, METHODS IN ENZYMOLOGY (1990) 185:3-7を参照すればよい。上記文献は、参照によって本明細書に援用される。
【0338】
酵母宿主株は、当業者に周知である標準の給飼バッチ発酵方法(feed batch fermentation method)を用いて、増幅段階の間に発酵槽において増殖されてもよい。上記発酵方法は、特定の酵母宿主の炭素利用経路、または発現制御の様式の差異に起因して、適合され得る。例えば、サッカロミセス酵母宿主の発酵は、1つのグルコース飼料、複合的な窒素源(カゼイン加水分解物など)、および複数のビタミン補助物を必要とし得る。これに対して、メチロトローフ酵母であるP. パストリスは、グリセロール、メタノール、および微量の無機化合物飼料を必要とし得、最適な増殖および発現については単純なアンモニウム(窒素)塩だけを必要とする。例えば、米国特許第5,324,639号明細書、Elliott et al, J. PROTEIN CHEM. (1990) 9:95、およびFieschko et al, BIOTECH. BIOENG. (1987) 29:1113を参照すればよい。なお、これら文献は、参照によって本明細書に援用される。
【0339】
しかし、上記発酵方法は、用いられる酵母宿主株とは無関係な特定の共通の特徴を有していてもよい。例えば、成長限界栄養素(通常は炭素)を発酵槽に増幅段階の間に添加して、最大限の成長を可能にし得る。さらに、発酵方法は、一般的に、十分な量の炭素、窒素、基本塩、リンおよび他の微量栄養素(ビタミン、微量無機物、および塩など)を含むように調製された発酵培地を用い得る。ピチアと一緒に使用するに適切な発酵培地の例が、米国特許第5,324,639号明細書、および米国特許第5,231,178号明細書に記載されている。なお、これら文献は、参照によって本明細書に援用される。
【0340】
(バキュロウイルス感染昆虫細胞)
“昆虫宿主”または“昆虫宿主細胞”という用語は、組換えベクターまたは他のトランスファーDNAの受容物として使用し得るか、または使用されている昆虫をいう。この用語は、トランスフェクトされた元々の昆虫宿主細胞の子孫を包含する。1つの親細胞の子孫が、形態において、またはゲノムDNAもしくは全DNAの補体において、偶発的な突然変異、もしくは計画的な突然変異に起因して、元々の親細胞と必ずしも完全に一致していなくてもよいことは理解される。関連する性質により特徴付けられる親細胞と十分に類似する親細胞の子孫は、この定義によって意図される子孫に含まれる。ここで、関連する性質は、例えば、レプチンポリペプチドをコードしているヌクレオチド配列の存在である。
【0341】
レプチンポリペプチドの発現に好適な昆虫細胞の選択は、当業者に周知である。いくつかの昆虫種は、当該分野において十分に説明されており、例えば、市販されているアエデス アエジプティ(Aedes aegypti)、ボンビックス モリ(Bombyx mori)、ドロソフィラ メラノガスター(Drosophila melanogaster)、スポドプテラ フルギペルダ(Spodoptera frugiperda)、およびトリコプルシア ニ(Trichoplusia ni)が挙げられる。発現用の昆虫宿主の選択において、適切な宿主としては、特に、良好な分泌能、低いタンパク質分解活性、および総合的な強健さを有することが示されている宿主が挙げられ得る。昆虫は、Insect Genetic Stock Center, Department of Biophysics and Medical Physics, University of California(バークレイ、CA)、およびthe American Type Culture Collection (“ATCC”)(マナサス、VA)を含む、種々の供給源から通常に入手することができるが、これらに限定されない。
【0342】
一般的に、バキュロウイルス−感染昆虫の発現系の構成要素は、バキュロウイルスのゲノム断片、および発現される異種遺伝子の挿入に便利な制限酵素認識部位の両方を含んでいるトランスファーベクター(普通は細菌のプラスミド);当該トランスファーベクターにおけるバキュロウイルスに特異的な断片に対して、相同な配列を有している(これにより、バキュロウイルスゲノムに対する異種遺伝子の相同組換えが可能になる)野生型バキュロウイルス;ならびに適切な昆虫宿主細胞および増殖培地を含んでいる。ベクターの構築、細胞のトランスフェクション、プラークの選択、または培養における細胞の増殖などに用いられる材料、方法および技術は公知であり、これらの技術が記載されている手引書が利用可能である。
【0343】
異種遺伝子をトランスファーベクターに挿入した後に、このベクターおよび野生型ウイルスゲノムを、ベクターとウイルスゲノムとが組換えを起こす昆虫宿主細胞にトランスフェクションする。パッケージングされた組換えウイルスが発現され、組換え体のプラークが同定および精製される。バキュロウイルス/昆虫細胞発現系にとっての材料および方法は、例えば、インビトロジェン Corp(チャールズバッド、CA)が提供している、キットの様式において市販されている。これらの技術は、一般的に当業者に公知であり、SUMMERS AND SMITH, TEXAS AGRICULTURAL EXPERIMENT STATION BULLETIN NO. 1555 (1987)に十分に記載されている。なお、この文献は、参照によって本明細書に援用される。また、RICHARDSON, 39 METHODS IN MOLECULAR BIOLOGY: BACULOVIRUS EXPRESSION PROTOCOLS (1995); AUSUBEL ET AL., CURRENT PROTOCOLS IN MOLECULAR BIOLOGY 16.9-16.11 (1994); KING AND POSSEE, THE BACULOVIRUS SYSTEM: A LABORATORY GUIDE (1992); および O’REILLY ET AL., BACULOVIRUS EXPRESSION VECTORS: A LABORATORY MANUAL (1992)を参照すればよい。
【0344】
バキュロウイルス/昆虫細胞発現系を用いた、種々の異種タンパク質の製造は、当業者にとって周知である。例えば、米国特許出願第6,368,825号明細書、米国特許出願第6,342,216号明細書、米国特許出願第6,338,846号明細書、米国特許出願第6,261,805号明細書、米国特許出願第6,245,528号明細書、米国特許出願第6,225,060号明細書、米国特許出願第6,183,987号明細書、米国特許出願第6,168,932号明細書、米国特許出願第6,126,944号明細書、米国特許出願第6,096,304号明細書、米国特許出願第6,013,433号明細書、米国特許出願第5,965,393号明細書、米国特許出願第5,939,285号明細書、米国特許出願第5,891,676号明細書、米国特許出願第5,871,986号明細書、米国特許出願第5,861,279号明細書、米国特許出願第5,858,368号明細書、米国特許出願第5,843,733号明細書、米国特許出願第5,762,939号明細書、米国特許出願第5,753,220号明細書、米国特許出願第5,605,827号明細書、米国特許出願第5,583,023号明細書、米国特許出願第5,571,709号明細書、米国特許出願第5,516,657号明細書、米国特許出願第5,290,686号明細書、国際公開第02/06305号パンフレット、国際公開第01/90390号パンフレット、国際公開第01/27301号パンフレット、国際公開第01/05956号パンフレット、国際公開第00/55345号パンフレット、国際公開第00/20032号パンフレット、国際公開第99/51721号パンフレット、国際公開第99/45130号パンフレット、国際公開第99/31257号パンフレット、国際公開第99/10515号パンフレット、国際公開第99/09193号パンフレット、国際公開第97/26332号パンフレット、国際公開第96/29400号パンフレット、国際公開第96/25496号パンフレット、国際公開第96/06161号パンフレット、国際公開第95/20672号パンフレット、国際公開第93/03173号パンフレット、国際公開第92/16619号パンフレット、国際公開第92/03628号パンフレット、国際公開第92/01801号パンフレット、国際公開第90/14428号パンフレット、国際公開第90/10078号パンフレット、国際公開第90/02566号パンフレット、国際公開第90/02186号パンフレット、国際公開第90/01556号パンフレット、国際公開第89/01038号パンフレット、国際公開第89/01037号パンフレット、国際公開第88/07082号パンフレットを参照すればよく、これらの各文献は、参照によって本明細書に援用される。
【0345】
バキュロウイルス/昆虫細胞の発現系に有用なベクターは公知であり、例えば、バキュロウイルスのAutographacalifornica核多角体ウイルス(AcNPV)に由来する、ヘルパー非依存性のウイルス発現ベクターである昆虫の発現およびトランスファーベクターを包含する。この系に由来するウイルス発現ベクターは、一般的に、異種遺伝子の発現を誘導するために、ウイルスの強力なポリヘドリン遺伝子プロモータを使用する。一般的には、Reilly ET AL., BACULOVIRUS EXPRESSION VECTORS:A LABORATORY MANUAL(1992)を参照すればよい。
【0346】
外来の遺伝子をバキュロウイルスのゲノムに挿入する前に、上記構成要素(プロモータ、リーダー(必要に応じて)、目的のコード配列、および転写終結配列を含んでいる)は、集合して中間トランス配列コンストラクト(intermediate transplacement construct)(トランスファーベクター)を構築する。中間トランス配列コンストラクトは、レプリコンにおいてしばしば維持される。このレプリコンは、例えば、細菌などの宿主において安定な維持が可能な染色体外エレメント(例えば、プラスミド)といったものである。レプリコンは複製系を有し、このため、クローニングおよび増幅に適切な宿主における当該レプリコンの維持を可能にする。より具体的には、プラスミドは、ポリヘドリンポリアデニル化シグナル(Miller, ANN. REV. MICROBIOL. (1988) 42:177)およびE. coliにおける選択および増殖に関する、原核生物のアンピシリン耐性(amp)遺伝子と複製起点とを含み得る。
【0347】
AcNPVへ外来遺伝子を導入するために一般的に使用されるトランスファーベクターの1つは、pAc373である。当業者に公知である他の多くのベクターもまた設計されており、例えば、これらとしてはpVL985が挙げられる。このベクターでは、ポリヘドリン開始コドンがATGからATTに変えられ、ATTの下流の32塩基対にBamHIクローニング部位が導入されている(Luckow and Summers, VIROLOGY 17:31 (1989)を参照すればよい)。他の市販されているベクターとしては、例えば、PBlueBac4.5/V5−His、pBlueBacHis2、pMelBac、pBlueBac4.5インビトロジェン Corp(チャールズバッド、CA)が挙げられる。
【0348】
異種遺伝子を挿入した後に、トランスファーベクターおよび野生型バキュロウイルスのゲノムを、昆虫細胞宿主に同時トランスフェクションする。異種DNAをバキュロウイルスの所望の部位に導入するための方法は公知である。SUMMERS AND SMITH, TEXAS AGRICULTURAL EXPERIMENT STATION BULLETIN NO. 1555 (1987); Smith et al., MOL. CELL. BIOL. (1983) 3:2156; Luckow and Summers, VIROLOGY (1989) 17:31を参照すればよい。例えば、二重交差型相同組換えによって、ポリへドリン遺伝子などの遺伝子に挿入し得る。また、所望のバキュロウイルス遺伝子中に設けられた、制限酵素認識部位に挿入してもよい。Miller et al., BIOESSAYS (1989) 4:91を参照すればよい。
【0349】
トランスフェクションを、エレクトロポレーションにより達成してもよい。TROTTER AND WOOD, 39 METHODS IN MOLECULAR BIOLOGY (1995)、Mann and King, J. GEN. VIROL. (1989) 70:3501を参照すればよい。代替可能に、リポソームを使用して、組換え発現ベクターとバキュロウイルスとを用いて昆虫細胞をトランスフェクションし得る。例えば、Liebman et al., BIOTECHNIQUES (1999) 26(1):36、Graves et al, BIOCHEMISTRY (1998) 37: 6050、Nomura et al, J. BIOL. CHEM. (1998) 273(22): 13570、Schmidt et al, PROTEIN
EXPRESSION AND PURIFICATION (1998) 12:323、Siffert et al, NATURE GENETICS (1998) 18:45、TILKINS et al, CELL BIOLOGY: A LABORATORY HANDBOOK 145-154 (1998) 、Caiet al, PROTEIN EXPRESSION AND PURIFICATION (1997) 10:263、Dolphin et al, NATUREGENETICS (1997) 17:491、Kost et al, GENE (1997) 190:139、Jakobsson et al, J. BlOL. CHEM. (1996) 271:22203、Rowles et al, J. BIOL. CHEM. (1996) 271(37): 22376、Reverey et al, J. BIOL. CHEM. (1996) 271(39) :23607- 10、Stanley et al, J. BlOL. CHEM. (1995) 270:4121、Sisk et al, J. VlROL. (1994) 68(2):766、およびPeng et al, BIOTECHNIQUES (1993) 14(2):274を参照すればよい。市販されているリポソームとしては、例えば、セルフェクチン(Cellfectin)(登録商標)、およびリポフェクチン(Lipofectin)(登録商標)(インビトロジェン、チャールズバッド、CA)が挙げられる。また、リン酸カルシウムトランスフェクションを用いてもよい。TROTTER AND WOOD, 39 METHODS IN MOLECULAR BIOLOGY (1995)、Kitts, NAR (1990) 18(19):5667、およびMann and King, J. GEN. VIROL. (1989) 70:3501を参照すればよい。
【0350】
バキュロウイルス発現ベクターは、たいていは、バキュロウイルスプロモーターを含んでいる。バキュロウイルスプロモーターは、バキュロウイルスのRNAポリメラーゼが結合でき、コード配列(例えば、構造遺伝子)をmRNAへと下流(3’)へ転写開始する任意のDNA配列である。プロモーターは、たいていはコード配列の5’末端近傍に配置される転写開始領域を有している。この転写開始領域は、通常、RNAポリメラーゼ結合部位と転写開始部位とを含んでいる。また、バキュロウイルスのプロモーターは、エンハンサーと呼ばれる2次ドメインを有していてもよい。この2次ドメインは、存在する場合、構造遺伝子から遠位に存在し得る。また、発現は、調節されてもよいし、恒常的であってもよい。
【0351】
感染サイクルの後期に多量に転写される構造遺伝子は、特に有用なプロモーター配列を提供する。有用なプロモーター配列の例としては、ウイルスポリヘドリンタンパク質をコードする遺伝子由来の配列(FRIESEN ET AL., The Regulation of Baculovirus Gene Expression in THE MOLECULAR BIOLOGY OF BACULOVIRUSES (1986)、欧州特許出願公開第0127839号明細書、および欧州特許出願公開第0155476号明細書)、およびp10タンパク質をコードする遺伝子由来の配列(Vlak et al., J. GEN. VIROL. (1988) 69:765)が挙げられる。
【0352】
新しく形成されたバキュロウイルス発現ベクターは、感染性の組換えバキュロウイルスにパッケージングされる。その後、成長したプラークが当業者に公知の方法により精製され得る。Miller et al, BIOESSAYS (1989) 4:91、SUMMERS AND SMITH, TEXAS AGRICULTURAL EXPERIMENT STATION BULLETIN NO. 1555 (1987)を参照すればよい。
【0353】
組換えバキュロウイルス発現ベクターは、いくつかの昆虫細胞へ感染させるために開発されている。例えば、取り分け、アエデス アエジプティ(ATCC番号CCL−125)、ボンビックス モリ(ATCC番号CRL−8910)、ドロソフィラ メラノガスター(ATCC番号1963)、スポドプテラ フルギペルダ、およびトリコプルシア ニのための組換えバキュロウイルスが開発されている。国際公開第89/046,699号パンフレット、Wright, NATURE (1986) 321:718、Carbonell et al, J. VlROL. (1985) 56:153、Smith et al, MOL. CELL. BIOL. (1983) 3:2156を参照すればよい。一般的には、Fraser et al, IN VITRO CELL. DEV. BIOL (1989) 25:225を参照すればよい。より具体的には、バキュロウイルス発現ベクターの系に用いられる細胞株としては、通常、Sf9(スポドプテラ フルギペルダ(ATCC番号CRL−1711)、Sf21(スポドプテラ フルギペルダ)(インビトロジェン Corp、カタログ番号11497−013(チャールズバッド、CA))、Tri−368(トリコプルシア ニ)、およびハイ−ファイブ(High-Five)(登録商標)BTI−TN−5B1−4(トリコプルシア ニ)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0354】
バキュロウイルス/発現における異種ポリペプチドの直接発現および融合発現の両方にとっての細胞および培地は、市販されている。また、細胞培養技術は、当業者に公知である。
【0355】
(E. coliおよび他の原核生物)
細菌における発現技術は、当業者に公知である。多種多様なベクターが、細菌宿主における使用に利用可能である。これらのベクターは、1コピーベクター、またはコピー数が少ない多コピー型ベクター(low multicopy vectors)もしくはコピー数が多い多コピー型ベクター(high multicopy vectors)であり得る。ベクターは、クローニングおよび/または発現に役立ち得る。ベクターに関する豊富な文献、多くの市販のベクター、ならびにベクターとその制限酵素地図とその特徴とについて記載している手引書を考慮すれば、本明細書では、これ以上論じる必要は無い。よく知られているように、ベクターは、通常は選択を可能にするマーカーを含んでいる。このマーカーは、細胞毒性剤への耐性、原栄養性、または免疫を提供し得るものである。しばしば、異なる特徴を提供する複数のマーカーが存在する。
【0356】
細菌プロモータは、細菌のRNAポリメラーゼと結合可能であり、コード配列(例えば、構造遺伝子)をmRNAへと下流(3’)へ転写開始できる任意のDNA配列である。プロモータは、コード配列の5’末端近傍に通常、配置される転写開始領域を有している。この転写開始領域は、典型的に、RNAポリメラーゼ結合部位と転写開始部位とを含んでいる。また、細菌プロモータは、オペレーターと呼ばれる2次ドメインを有していてもよい。この2次ドメインは、RNA合成が始まる隣接したRNAポリメラーゼ結合部位と重複してもよい。遺伝子リプレッサータンパク質が、オペレーターに結合することにより、特定の遺伝子の転写を阻害し得るように、オペレーターは、負に調節される(誘導性の)転写を可能にする。恒常的発現は、負の調節エレメント(オペレーターなど)が無いときに起こり得る。さらに、正の調節が、遺伝子アクチベータータンパク質の結合配列によりもたらされ得る。該結合配列は、存在する場合は、通常、RNAポリメラーゼ結合配列よりも遠位(5’)に存在する。遺伝子アクチベータータンパク質としては、例えば、カタボライト活性化タンパク質(CAP)が挙げられる。このCAPは、Escherichia coli(E. coli)のlacオペロンの転写開始を助ける(Raibaud et al, ANNU. REV. GENET. (1984) 18:173)。したがって、調節された発現は、正または負のいずれかであってもよく、これによって転写を増強または低減させ得る。
【0357】
代謝経路の酵素をコードしている配列は、特に有用なプロモータ配列を提供する。このプロモーター配列としては、例えば、ガラクトース、ラクトース(lac)(Chang et al, NATURE (1977) 198:1056)、およびマルトースなどの糖代謝酵素に由来するプロモータ配列が挙げられる。さらなる例としては、トリプトファン(trp)などの生合成酵素に由来するプロモータ配列が挙げられる(Goeddel et al, Nuc. ACIDS RES. (1980) 8:4057、Yelverton et al, NUCL. ACIDS RES. (1981) 9:731、米国特許第4,738,921号明細書、欧州公開第036776号明細書、欧州公開第121775号明細書)。なお、これら文献は参照によって本明細書に援用される。また、β−ガラクトシダーゼ(bla)のプロモータ系(Weissmann (1981) “The cloning of interferon and other mistakes.” In Interferon 3 (Ed. I. Gresser) )、バクテリオファージ ラムダのPL(Shimatake et al, NATURE (1981) 292:128) 、およびT5(米国特許第4,689,406号明細書)のプロモータ系も、有用なプロモータ配列を提供する(なお、これら文献は参照によって本明細書に援用される)。本発明の好ましい方法は、レプチンポリペプチドを高レベルに誘導するためのT7プロモータなどの強力なプロモータを利用する。そのようなベクターの例は、当業者に周知であり、pET29のシリーズ(ノバゲン(Novagen))、および国際公開第99/05297号明細書に記載のpPOPベクターなどが挙げられる(なお、上記文献は参照によって本明細書に援用される)。そのような発現系は、宿主細胞の生存能力または増殖パラメータに支障をきたすことなく、宿主において、レプチンポリペプチドを高レベルに産生する。
【0358】
また、天然に存在しない合成プロモータも、細菌プロモータとして機能する。例えば、ある細菌またはバクテリオファージのプロモータの転写活性化配列を、別の細菌またはバクテリオファージのプロモータのオペロン配列に結合して、合成混成プロモータを作製してもよい(米国特許第4,551,433号明細書(なお、この文献は参照によって本明細書に援用される))。例えば、tacプロモータは、trpプロモータ配列と、lacリプレッサーにより調節されるlacオペロン配列とを含んでいる混成のtrp−lacプロモータである(Amann et al, GENE (1983) 25:167、de Boer et al, PROC. NATL. ACAD. SCI. (1983) 80:21)。さらに、細菌プロモータは、細菌のRNAポリメラーゼとの結合能、および転写開始能を有する非細菌起源の天然に存在するプロモータを含み得る。また、非細菌起源の天然に存在するプロモータを、適合するRNAポリメラーゼに結合させることによって、原核生物にていくつかの遺伝子を高レベルに発現させ得る。バクテリオファージのT7RNAポリメラーゼ/プロモータ系は、共役型プロモータ系の例である(Studier et al, J. MOL. BIOL. (1986) 189:113、Tabor et al, Proc Natl. Acad. Sci. (1985) 82:1074)。さらに、混成プロモータは、バクテリオファージプロモータと、E. coliのオペレーター領域とを含み得る(欧州公開第267851号明細書)。
【0359】
また、機能性プロモータ配列に加えて、効率的なリボソーム結合部位が、外来遺伝子を原核細胞において発現させるために有効である。E. coliにおいて、リボソーム結合部位は、シャイン−ダルガルノ(SD)配列と呼ばれ、開始コドン(ATG)と、該開始コドンから3〜11ヌクレオチド上流に位置した、3〜9の長さのヌクレオチドの配列とを含んでいる(Shine et al, NATURE (1975) 254:34)。SD配列は、SD配列とE. coliの16S rRNAの3’との間において塩基対を形成することにより、mRNAとリボソームとの結合を促進すると考えられている(Steitz et al “Genetic signals and nucleotide sequences in messenger RNA”, In Biological Regulation and Development: GeneExpression (Ed. R. F. Goldberger, 1979))。真核性遺伝子および原核性遺伝子を、弱いリボソーム結合部位により発現すること(Sambrook et al Expression of cloned genes in Escherichia coli, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 1989)。
【0360】
“細菌宿主”または“細菌宿主細胞”という用語は、組換えベクターまたは他のトランスファーDNAにとっての受容物として使用され得るか、または使用されている細菌のことをいう。この用語は、トランスフェクションされている元々の細菌宿主細胞の子孫を含む。1つの親細胞の子孫が、形態、ゲノムDNAまたは全DNAの補体において、偶発的な突然変異、または計画的な突然変異に起因して、元々の親細胞と必ずしも完全に一致していなくてもよいことは理解される。関連する性質(例えば、4HBポリペプチドをコードするヌクレオチド配列の存在)により特徴付けられる親細胞と十分に類似する、親細胞の子孫は、この定義によって意図される子孫に含まれる。
【0361】
レプチンポリペプチドの発現に適切な細菌宿主の選択は、当業者に周知である。発現のための細菌宿主の選択において、適切な宿主としては、取り分け、良好な封入体形成能、低いタンパク質分解活性、および全体的に強健さを有することが示されている宿主が挙げられ得る。細菌宿主は、一般的に、種々の供給源から入手することができ、例えば、Bacterial Genetic Stock Center, Department of Biophysics and Medical Physics, University of California(バークレイ、CA)、およびthe American Type Culture Collection(“ATCC”)(マナサス、VA)から入手することができるが、これらに限定されない。K株に由来する細菌(W3110など)、またはB株に由来する細菌(BL21など)が、一般的に産業的/製薬的な発酵に用いられる。これらの株は、増殖パラメータが、極めてよく知られており、強健であるから特に有用である。さらに、これらの株は非病原性であり、このことは安全性および環境的理由にとって商業的に重要である。本発明の方法の一実施形態において、E. coli宿主はBL21の株である。本発明の方法の別の一実施形態において、E. coli宿主は、プロテアーゼが欠失した株(OMP−、およびLON−が挙げられるが、これらに限定されない)である。本発明の方法の別の実施形態において、宿主細胞株は、シュードモナス種(シュードモナス フルオレセンス(Pseudomonas fluorescens)、シュードモナス アエルギノーザ(Pseudomonas aeruginosa)、およびシュードモナス プティダ(Pseudomonas putida)が挙げられるが、これらに限定されない)である。MB101株と命名されたシュードモナス フルオレセンスの1つの次亜種は、宿主株として治療用タンパク質の製造プロセスに利用可能であり、The Dow Chemical Companyから入手可能である(ミッドランド、MI(ワールドワイドウェブのdow.comにおいて利用できる))。本明細書に組み込まれる米国特許第4,755,465号明細書および米国特許第4,859,600号明細書には、hGHを産生するための宿主細胞としてのシュードモナス株の使用が記載されている。
【0362】
組換え宿主細胞株が、確立されれば(すなわち、発現コンストラクトが、宿主細胞に導入され、適切な発現コンストラクトを有する宿主細胞が単離されれば)、当該組換え宿主細胞株が、レプチンポリペプチドの産生に適切な条件下において培養される。当業者にとって明らかなように、組換え宿主細胞株の培養方法は、利用される発現コンストラクトの性質、および宿主細胞の個性に依存する。組換え宿主株は、一般に、当業者に周知の方法を用いて培養される。組換え宿主細胞は、通常、炭素、窒素および無機塩の吸収可能な供給源を含んでおり、任意にビタミン、アミノ酸、増殖因子、および当業者にとって周知の他のタンパク質性の培養補助物を含んでいる液体培養基において一般的に培養される。また、宿主細胞を培養するための液体培養基は、望まない微生物および/または化合物の増殖を阻害するための抗生物質、または抗真菌剤(発現ベクターを含む宿主細胞を選択するための抗生物質が挙げられるが、これに限定されない)を任意に含み得る。
【0363】
組換え宿主細胞は、バッチ式もしくは連続式のいずれかにおいて、細胞の回収(レプチンポリペプチドが細胞内に蓄積する場合に)、または培養上清の回収のいずれかを伴う、バッチ式または連続式において培養され得る。原核生物の宿主細胞における産生にとって、バッチ式培養および細胞収集が好ましい。
【0364】
本発明のレプチンポリペプチドは、組換え系における発現の後に、普通、精製される。レプチンポリペプチドは、当該技術分野において公知の種々の方法によって宿主細胞から精製され得る。普通、細菌宿主細胞において産生されたレプチンポリペプチドは、(封入体の形態において)溶解性に乏しいか、または不溶性である。本発明の一実施形態では、当該技術において公知の方法だけでなく、本明細書に記載された方法を利用して、組換えによって産生されるタンパク質の溶解性の向上を目的として選択されたアミノ酸の置換が、レプチンポリペプチドにて容易に行われ得る。不溶性のタンパク質の場合、このタンパク質は、宿主細胞溶解液から遠心分離によって回収され得、次いで細胞のホモジナイゼーション(homogenization)がさらに行われ得る。溶解性に乏しいタンパク質の場合、化合物(ポリエチレンイミン(PEI)が挙げられるが、これに限定されない)が、部分的に可溶性のタンパク質の沈殿を引き起こすために加えられ得る。その後、沈殿したタンパク質は、遠心分離によって首尾よく回収され得る。当業者にとって周知の種々の方法により、組換え宿主細胞が破壊またはホモジナイズされて、当該細胞内から封入体が放出され得る。宿主細胞の破壊またはホモジナイゼーションは周知の技術(酵素的な細胞の破壊、超音波処理、ダウンス型ホモジナイゼーション(dounce homogenization)、または高圧放出破壊が挙げられるが、これらに限定されない)を用いて実施され得る。本発明の方法の一実施形態では、高圧放出技術を、E. coli宿主細胞の破壊に使用することによって、レプチンポリペプチドの封入体を放出させる。封入体の形態の不溶性レプチンポリペプチドの収量が、ホモジナイザーにE. coli宿主細胞を1回通過させるだけで、増加し得ることが発見されている。レプチンポリペプチドの封入体を取り扱うときに、繰り返しのホモジナイゼーション時間を最小化することが好都合である。これにより、可溶化、器械的なせん断またはタンパク質分解などの要因による損失を無くし、封入体の収量が最大になる。
【0365】
次いで、不溶性のまたは沈殿したレプチンポリペプチドは、当該技術にとって公知の適切な多くの可溶化試薬のいずれかを用いて可溶化され得る。好ましくは、レプチンポリペプチドは、尿素またはグアジニン塩酸塩を用いて可溶化され得る。バッチの大きさが都合よく扱いやすいものを用いて、大規模なバッチが産生され得るように、可溶化されたレプチンポリペプチド−BPの容積は、最小化されるべきである。組換え宿主細胞が数千リットルの容積であるバッチにおいて増殖され得るとき、この要因は、大規模な商業的設定において重要であり得る。また、特にヒトへの薬学的な使用のために大規模な商業的設定においてレプチンポリペプチドを製造するとき、機械および容器、またはタンパク質産物自体のいずれかを損傷するおそれのある過酷な化学物質の回避は、可能であれば、避けられるべきである。穏やかな変性試薬である尿素を、過酷な変性試薬であるグアニジン塩酸塩の代わりに、レプチンポリペプチドの封入体の可溶化に使用し得ることが、本発明の方法に示されている。尿素の使用は、レプチンポリペプチドの製造過程および精製過程に利用されるステンレス鋼の設備に対する損傷の危険度を顕著に低減すると同時に、レプチンポリペプチドの封入体を効率的に可溶化する。
【0366】
レプチンポリペプチドが融合タンパク質として産生されるとき、融合配列は除去されることが好ましい。融合配列の除去は、酵素的切断または化学的切断によって果たされ得る。融合配列の酵素的除去は、当業者に周知の方法を用いて果たされ得る。当業者にとって明らかなように、融合配列を除去するための酵素の選択は融合の個性によって決定され、反応条件は酵素の選択によって特定される。切断されたレプチンポリペプチドは、当業者に周知の方法によって、切断された融合配列から精製され得る。そのような方法は、当業者にとって明らかなように、融合配列およびレプチンポリペプチドの個性および性質によって決定される。精製方法としては、サイズ排除クロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、もしくは透析、またはこれらの任意の組合せが挙げられ得るが、これらに限定されない。
【0367】
また、レプチンポリペプチドは、タンパク質の溶液からDNAを除去するために、精製され得る。DNAは、当業者に公知の任意の適切な方法(例えば、沈殿またはイオン交換クロマトグラフィー)によって除去され得るが、核酸沈殿試薬(例えば、硫酸プロタミンが挙げられるが、これに限定されない)を用いた沈殿によって除去されることが好ましい。レプチンポリペプチドは、標準的な周知の方法(遠心分離またはろ過が挙げられるが、これらに限定されない)を用いて、沈殿されたDNAから分離され得る。レプチンポリペプチドがヒトの治療に用いられる設定、および本発明の方法が薬学的に許容可能なレベルまで宿主細胞のDNAを低減する設定において、宿主核酸分子の除去は重要な要因である。
【0368】
また、小規模または大規模な発酵方法は、タンパク質の発現(発酵槽、振とうフラスコ、流動床バイオリアクター、中空糸バイオリアクター、ローラーボトル培養系、および攪拌タンクバイオリアクター系が挙げられるが、これらに限定されない)に使用され得る。これらの方法のそれぞれは、バッチ処理、給飼バッチ処理、連続様式処理において実施され得る。
【0369】
本発明のヒトレプチンポリペプチドは、通常、当該分野における標準的な方法を用いて、回収され得る。例えば、培地または細胞溶解液は、細胞破片を除去するために遠心分離またはろ過され得る。上清は、濃縮され得るか、所望の容積に希釈され得るか、あるいは、さらなる精製のために調製物の状態を整える適切な緩衝液へ透析され得る。本発明のレプチンポリペプチドのさらなる精製としては、脱アミド化され、短縮された形態のレプチンポリペプチドバリアントを、損なわれていない形態(intact form)のレプチンポリペプチドから分離することが挙げられる。
【0370】
以下の例示的な手法のいずれかが、本発明のレプチンポリペプチドの精製に採用され得る。当該手法は、アフィニティークロマトグラフィー;陰イオン交換クロマトグラフィーもしくは陽イオン交換クロマトグラフィー(DEAE SEPHAROSEを用いたものが挙げられるが、これに限定されない);シリカ上におけるクロマトグラフィー;逆相HPLC;ゲルろ過(SEPHADEX G−75を用いたものが挙げられるが、これに限定されない);疎水性相互作用クロマトグラフィー;サイズ排除クロマトグラフィー;金属キレートクロマトグラフィー;限外ろ過/ダイアフィルトレーション;エタノール沈殿;硫酸アンモニウム沈殿;等電点電気泳動(chromatofocusing);置換クロマトグラフィー;電気泳動的手法(分離用の等電点電気泳動(preparative isoelectric focusing)が挙げられるが、これに限定されない)、差別的溶解性(differential solubility)(硫酸アンモニウム沈殿が挙げられるが、これに限定されない)、SDS−PAGEまたは抽出である。
【0371】
本発明のタンパク質(非天然アミノ酸を含んでいるタンパク質、非天然アミノ酸を含んでいるタンパク質に対する抗体、非天然アミノ酸を含んでいるタンパク質に対する結合パートナーなどが挙げられるが、これらに限定されない)は、当業者が知っており、使用する標準的な手法にしたがって、部分的または実質的に均質に精製される。したがって、本発明のポリペプチドは、当業者に周知の任意の多くの方法(硫酸アンモニウム沈殿もしくはエタノール沈殿、酸抽出もしくは塩基抽出、カラムクロマトグラフィー、アフィニティーカラムクロマトグラフィー、陰イオン交換クロマトグラフィーもしくは陽イオン交換クロマトグラフィー、ホスホセルロースクロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィー、レクチンクロマトグラフィー、およびゲル電気泳動などが挙げられるが、これらに限定されない)によって、回収および精製され得る。タンパク質をリフォールディング(refolding)する工程は、必要に応じて、正確に折りたたまれた成熟タンパク質を作製するときに、使用され得る。高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、アフィニティークロマトグラフィー、または他の適切な方法は、高い純度が所望される場合に、最終的な精製工程において採用され得る。一実施形態において、非天然アミノ酸(または非天然アミノ酸を含んでいるタンパク質)に対して作製された抗体は、非天然アミノ酸を1つ以上含んでいるタンパク質の親和性に基づく精製などのための精製試薬として使用され得るが、これに限定されない。必要に応じて、部分的にまたは均質にまで精製されると、ポリペプチドは、多種多様な有用物(例えば、アッセイの構成要素、治療学、予防法、診断学、研究試薬として、および/または抗体生成用の抗原としてであるが、これらに限定されない)に関して、任意に使用される。
【0372】
本明細書に言及されている他の参考文献に加えて、種々の精製/タンパク質フォールディング方法が、当業者に周知である(R. Scopes, Protein Purification, Springer-Verlag, N.Y. (1982); Deutscher, Methods in Enzymology Vol. 182: Guide to Protein Purification, Academic Press, Inc. N.Y. (1990); Sandana, (1997) Bioseparation of Proteins, Academic Press, Inc.; Bollag et al. (1996) Protein Methods, 2nd Edition Wiley-Liss, NY; Walker, (1996) The Protein Protocols Handbook Humana Press, NJ, Harris and Angal, (1990) Protein Purification Applications: A Practical ApproachIRL Press at Oxford, Oxford, England; Harris and Angal, Protein Purification Methods: A Practical Approach IRL Press at Oxford, Oxford, England; Scopes, (1993)
Protein Purification: Principles and Practice 3rd Edition Springer Verlag, NY; Janson and Ryden, (1998) Protein Purification: Principles, High Resolution Methods and Applications, Second Edition Wiley-VCH, NY; and Walker (1998), Protein Protocols on CD-ROM Humana Press, NJならびにこれらに引用されている参考文献に記載されている方法が挙げられるが、これらに限定されない)。
【0373】
真核生物の宿主細胞または非真核生物の宿主細胞において、非天然アミノ酸を用いて目的のタンパク質またはポリペプチドを産生することの1つの利点は、通常、該タンパク質または該ポリペプチドが、それらの本来の立体構造に折りたたまれることである。しかし、本発明のある特定の実施形態において、当業者は、合成、発現および/または精製の後に、タンパク質が、関連するポリペプチドの所望の立体構造とは異なる立体構造を有することが可能であることを認識している。本発明の1つの局面において、発現されたタンパク質は、任意に変性され、次いで復元される。これは、当該分野において公知の方法を利用して(目的のタンパク質またはポリペプチドに対するシャペロニンの添加によってか、カオトロピック剤(例えば、グアニジンHCl)にタンパク質を可溶化することによってか、またはプロテインジスルフィドイソメラーゼを用いてなどが挙げられるが、これらに限定されない)果たされ得る。
【0374】
一般的には、発現したポリペプチドを変性または還元して、その後に当該ポリペプチドを好ましい立体構造へとリフォールディングさせることが望ましいことがある。例えば、グアニジン、尿素、DTT、DTE、および/またはシャペロニンは、目的の転写産物に加えられ得る。タンパク質の還元、変性および復元の方法は、当業者に周知である(上記参考文献、Debinski,et al, (1993) J. Biol. Chem., 268: 14065- 14070)、Kreitman and Pastan (1993) Bioconiug. Chem.. 4: 581-585、およびBuchner,et al, (1992) Anal. Biochem., 205: 263-270を参照すればよい)。Debinski, et alには、例えば、グアニジン−DTEにおける封入体タンパク質の変性および還元が記載されている。タンパク質は、レドックス緩衝剤(これらに限定されないが、酸化型グルタチオンおよびL−アルギニンなどを含有している)においてリフォールディングされ得る。リフォールディング剤は、流されるか、またはそうでなければ、移動されて、1つ以上のポリペプチドもしくは他の発現産物と接触させられ得る。また、その逆もあり得る。
【0375】
レプチンポリペプチドを原核生物において産生する場合、そのように産生されるレプチンポリペプチドは、誤って折りたたまれることがある。このため、ポリペプチドの生物活性が、欠如または低下していることがあり得る。タンパク質の生物活性は、“リフォールディング”によって回復され得る。一般に、誤って折りたたまれたレプチンポリペプチドは、例えば、1つ以上のカオトロピック剤(例えば、尿素および/またはグアニジン)およびジスルフィド結合を還元可能な還元剤(例えば、ジチオスレイトール(DTT)、または2メルカプトエタノール(2−ME))を用いて、(レプチンポリペプチドも不溶性である場合に)ポリペプチド鎖を可溶化し、アンフォールディング(unfolding)し、そして還元することによってリフォールディングされ得る。次いで、穏やかな濃度のカオトロープ(chaotorope)において、ジスルフィド結合の再形成を可能にする酸化剤(例えば、酸素、シスチンまたはシスタミン)が添加される。レプチンポリペプチドは、当該分野において公知の標準的な方法(例えば、米国特許第4,511,502号明細書、米国特許第4,511,503号明細書、および米国特許第4,512,922号明細書に記載の方法、これらの文献は、参照によって本明細書に援用される)を用いてリフォールディングされ得る。また、レプチンポリペプチドは、他のタンパク質とコフォールディングされて、異種ニ量体または異種多量体を形成し得る。レプチンポリペプチドは、リフォールディングまたはコフォールディングの後に、さらに精製されることが好ましい。
【0376】
(一般的な精製方法)
種々の単離工程の何れか1つが、レプチンポリペプチドを含んでいる細胞溶解物に対して実施されてもよいし、任意の単離工程から生じた任意のレプチンポリペプチドの混合物に対して実施されてもよい。このような単離工程としては、アフィニティークロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、ゲルろ過クロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー(“HPLC”)、逆相HPLC(“PR−HPLC”)、発泡床吸着(expanded bed adsorption)、あるいはそれらの任意の組合せおよび/または繰り返し、ならびに任意の適切な順序でのそれらの任意の組合せおよび/または繰り返しが挙げられるが、これらに限定されない。
【0377】
本明細書に記載されている技術の実施に使用される設備、および他の必要な材料は、市販されている。ポンプ、フラクションコレクター、モニター、記録器、および全体のシステムは、例えば、アプライド バイオシステム(Applied Biosystems)(フォスターシティー(Foster City)、CA)、バイオラッドラボラトリー Inc.(ハーキュリーズ(Hercules)、CA)、およびアマシャムバイオサイエンス Inc.(ピスカタウェイ(Piscataway)、NJ)から入手することができる。また、クロマトグラフィーの材料(交換基質材料、溶剤および緩衝液が挙げられるが、これらに限定されない)も、そのようは企業から入手可能である。
【0378】
本明細書に記載のカラムクロマトグラフィー手法における平衡および他の工程(例えば、洗浄および溶出)は、特殊な設備(例えば、ポンプ)を用いてより迅速に実施され得る。市販のポンプとしては、ハイロードポンプ(HILOAD(登録商標)Pump)P−50、ペリスタルティックポンプ(Peristaltic Pump)、ポンプP−901、およびポンプP−903(アマシャムバイオサイエンス、ピスカタウェイ、NJ)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0379】
フラクションコレクターの例としては、レディフラック フラクションコレクター(REDIFRAC Fraction Collector)、FRAC−100およびFRAC−200フラクションコレクター、ならびにスーパーフラック フラクションコレクター(SUPERFRAC(登録商標)Fraction Collector)(アマシャムバイオサイエンス、ピスカタウェイ、NJ)が挙げられるが、これらに限定されない。また、混合器は、pH勾配および直線的な濃度勾配の形成に利用可能である。市販の混合器としては、グラジエントミキサー(Gradient Mixer)GM−1およびイン−ラインミキサーズ(In-Line Mixers)(アマシャムバイオサイエンス、ピスカタウェイ、NJ)が挙げられる。
【0380】
クロマトグラフィー過程は、任意の市販のモニターを用いてモニターされ得る。そのようなモニターは、UV、pHおよび導電率のような情報の収集に使用され得る。検出器の例としては、モニター(Monitor)UV−1、ユビコード(UVICORD(登録商標))SII、モニターUV−MII、モニターUV−900、モニターUPC−900、モニターpH/C−900、およびコンダクティヴィティーモニター(Conductivity Monitor)(アマシャムバイオサイエンス、ピスカタウェイ、NJ)が挙げられる。実際に、全体のシステムは、市販されている(例えば、アマシャムバイオサイエンス(ピスカタウェイ、NJ)から提供されているアクタ(AKTA(登録商標))システムズが挙げられる)。
【0381】
本発明の一実施形態において、例えば、レプチンポリペプチドは、得られた精製されたレプチンポリペプチドを、尿素を用いてまず変性によって還元し変性して、続いて適切なpHにおいて還元剤(例えばDTT)を含んでいる緩衝液に希釈され得る。他の実施形態において、レプチンポリペプチドは、約2M〜約9Mの濃度の尿素によって変性され、続いて約5.0〜約8.0のpHのTRIS緩衝液に希釈される。次いで、この実施形態のリフォールディング混合物は、インキュベートされ得る。一実施形態において、リフォールディング混合物は、室温において4〜24時間、インキュベートされる。還元されかつ変性されたレプチンポリペプチド混合物は、それからさらに単離され得るか、または精製され得る。
【0382】
本明細書に述べられているように、第1のレプチンポリペプチド混合物のpHは、その後の任意の単離工程を実施する前に調整され得る。また、第1のレプチンポリペプチド混合物、またはその後に生じた任意の混合物は、当該分野において公知の技術を用いて濃縮され得る。さらに、第1のレプチンポリペプチド混合物、またはその後に生じた任意の混合物のいずれかを含む溶出緩衝液は、当業者に周知の技術を用いて、次の単離工程に好適な緩衝液に交換され得る。
【0383】
(イオン交換クロマトグラフィー)
一実施形態において、そして必要に応じてさらなる工程として、イオン交換クロマトグラフィーが、第1のレプチンポリペプチド混合物に対して実施され得る。一般的に、ION EXCHANGE CHROMATOGRAPHY: PRINCIPLES AND METHODS(カタログ番号18−1114−21、アマシャムバイオサイエンス(ピスカタウェイ、NJ))を参照すればよい。市販のイオン交換カラムとしては、ハイトラップ(HITRAP(登録商標))カラム、ハイプレップ(HIPREP(登録商標))カラム、およびハイロード(HILOAD(登録商標))カラム((アマシャムバイオサイエンス、ピスカタウェイ、NJ))が挙げられる。そのようなカラムは、強い陰イオン交換体(例えば、Qセファロースファストフロウ(Q SEPHAROSE(登録商標) Fast Flow)、Qセファロースハイパフォーマンス(Q SEPHAROSE(登録商標) High Performance)、およびQセファロース(Q SEPHAROSE(登録商標))XL);強い陽イオン交換体(例えば、SPセファロースハイパフォーマンス(SP SEPHAROSE(登録商標)
High Performance)、SPセファロースファストフロウ(SP SEPHAROSE(登録商標) Fast Flow)、およびSPセファロース(SP SEPHAROSE(登録商標))XL);弱い陰イオン
交換体(例えば、デアエセファロースファストフロウ(DEAE SEPHAROSE(登録商標) Fast Flow));および弱い陽イオン交換体(例えば、CMセファロースファストフロウ(CMSEPHAROSE(登録商標) Fast Flow))(アマシャムバイオサイエンス、ピスカタウェイ、NJ)を利用している。陽イオン交換カラムクロマトグラフィーは、実質的に精製されたレプチンポリペプチドを単離するために、精製過程の任意の工程において、レプチンポリペプチドに対して実施され得る。陽イオン交換クロマトグラフィー工程は、任意の適切な陽イオン交換基質を用いて実施され得る。有用な陽イオン交換基質としては、繊維状の陽イオン交換基質材料、多孔質の陽イオン交換基質材料、非多孔質の陽イオン交換基質材料、微粒子状の陽イオン交換基質材料、ビーズ状の陽イオン交換基質材料、または架橋された陽イオン交換基質材料が挙げられるが、これらに限定されない。このような陽イオン交換基質材料としては、セルロース、アガロース、デキストラン、ポリアクリレート、ポリビニル、ポリスチレン、シリカ、ポリエーテル、または上述のものの何れかの混合材料が挙げられるが、これらに限定されない。陽イオン交換基質にレプチンポリペプチドを吸着させた後に、実質的に精製されたレプチンポリペプチドは、当該基質からレプチンポリペプチドを移動させるほど十分に高いpHまたはイオン強度を有する緩衝液と、基質を接触させることによって溶出され得る。実質的に精製されたレプチンポリペプチドの高pH溶出における使用に適した緩衝液としては、少なくとも約5mM〜少なくとも約100mMの濃度範囲にある、クエン酸緩衝液、リン酸緩衝液、ギ酸塩緩衝液、酢酸緩衝液、HEPES緩衝液およびMES緩衝液が挙げられ得るが、これらに限定されない。
【0384】
(逆相クロマトグラフィー)
RP−HPLCは、当業者に公知の適切なプロトコールにしたがって、タンパク質を精製するために実施され得る。例えば、Pearson et al, ANAL BIOCHEM. (1982) 124:217-230 (1982)、Rivier et al, J. CHROM. (1983) 268:112-119、Kunitani et al, J. CHROM. (1986) 359:391-402を参照すればよい。RP−HPLCを4HBポリペプチドに対して実施して、実質的に精製された4HBポリペプチドを単離し得る。この点に関して、多種多様な長さ(少なくともC
3〜少なくともC
30、少なくともC
3〜少なくともC
20、または少なくともC
3〜少なくともC
18の長さが挙げられるが、これらに限定されない)を有しているアルキル官能基を用いた、シリカ誘導体化樹脂が使用され得る。代替可能に、ポリマー化樹脂が使用され得る。例えば、スチレンポリマー樹脂である、トソハースアンバークローム(TosoHaas Amberchrome)CG1000sd樹脂が使用され得る。また、多種多様な長さのアルキル鎖を有するシアノ樹脂またはポリマー樹脂が使用され得る。さらに、RP−HPLCカラムは、溶媒(例えば、エタノール)を用いて洗浄され得る。イオン対を形成する剤および有機修飾因子(例えば、メタノール、イソプロパノール、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、またはエタノール)を含んでいる適切な溶出緩衝液が、レプチンポリペプチドをPR−HPLCカラムから溶出するために使用され得る。最も一般的に使用されるイオン対を形成する剤としては、酢酸、蟻酸、過塩素酸、リン酸、トリフルオロ酢酸、ヘプタフルオロブチル酸、トリエチルアミン、テトラメチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム、酢酸トリエチルアンモニウムが挙げられるが、これらに限定されない。溶出は、分離時間の短縮、およびピーク幅の縮小に好ましい勾配条件を有している、1つ以上の勾配条件または定組成条件(isocratic condition)を用いて実施され得る。他の方法は、異なる溶媒濃度範囲を有する2つの勾配を使用することを包含している。本明細書における使用に適した溶出緩衝液の例としては、酢酸アンモニウム溶液およびアセトニトリル溶液が挙げられるが、これらに限定されない。
【0385】
(疎水性相互作用クロマトグラフィー精製技術)
疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)が、4HBポリペプチドに対して実施されてもよい。一般的に、HYDROPHOBIC INTERACTION CHROMATOGRAPHY HANDBOOK: PRINCIPLES AND METHODS(カタログ番号18−1020−90、アマシャムバイオサイエンス、(ピスカタウェイ、NJ))を参照すればよく、これは参照によって本明細書に援用される。適切なHIC基質としては、アルキルによって置換された基質もしくはアリールによって置換された基質(例えば、ブチルによって置換された基質、ヘキシルによって置換された基質、オクチルによって置換された基質、またはフェニルによって置換された基質(アガロース基質、架橋されたアガロース基質、セファロース基質、セルロース基質、シリカ基質、デキストラン基質、ポリスチレン基質、ポリ(メタクリレート)基質が挙げられる))、および混合された形式の基質(ポリエチレンアミン樹脂基質、またはブチルもしくはフェニルで置換されたポリ(メタクリレート)基質が挙げられるが、これらに限定されない)が挙げられるが、これらに限定されない。疎水性相互作用クロマトグラフィーに関する市販の原料としては、ハイトラップ(登録商標)カラム、ハイプレップ(登録商標)カラム、およびハイロード(登録商標)カラム(アマシャムバイオサイエンス、ピスカタウェイ、NJ)が挙げられるが、これらに限定されない。簡単に説明すると、装填の前に、HICカラムは、当業者に公知の標準的な緩衝液(例えば、酢酸溶液/塩化ナトリウム溶液、または硫酸アンモニウムを含むHEPES)を用いて、平衡化され得る。次いで、レプチンポリペプチドを装填した後に、カラムは、不要な物質を取り除くための標準的な緩衝液と条件とを用いて洗浄され得るが、レプチンポリペプチドはHICカラムに保持されている。レプチンポリペプチドは、カラム容積の約3倍〜約10倍の標準的な緩衝液(例えば、とりわけ、EDTAと平衡化緩衝液よりも低濃度の硫酸アンモニウムとを含むHEPES緩衝液、または酢酸/塩化ナトリウム緩衝液)を用いて溶出され得る。また、例えば、リン酸カルシウムの勾配を用いた、塩が減少する直線勾配を用いて、レプチン分子を溶出し得る。次いで、この溶出物は、例えば、ダイアフィルトレーション、または限外ろ過といったろ過によって濃縮され得る。ダイアフィルトレーションは、レプチンポリペプチドの溶出に使用される塩を除くために利用され得る。
【0386】
(他の精製技術)
例えば、ゲルろ過(参照によって本明細書に援用されるGEL FILTRATION: PRINCIPLES AND METHODS(カタログ番号18−1022−18、アマシャムバイオサイエンス(ピスカタウェイ、NJ))、HPLC、発泡床吸着、限外ろ過、ダイアフィルトレーション、および凍結乾燥などを用いたさらに他の単離工程を第1のレプチンポリペプチド混合物または該ポリペプチド混合物のその後に生じた任意の混合物に対して行い、任意の過剰な塩を除去したり、緩衝液を、次の単離工程または最終的な製剤の処方にさえも好適な緩衝液と交換したりし得る。レプチンポリペプチド(実質的に精製されたレプチンポリペプチドを含んでいる)の収率は、当業者に公知の技術を用いて、本明細書に記載の各工程において、モニターされてもよい。また、そのような技術は、最後の単離工程の後に、実質的に精製されたレプチンポリペプチドの収率を評価するために使用され得る。例えば、レプチンポリペプチドの収率は、陽イオン交換クロマトグラフィーおよびゲルろ過だけでなく、種々のアルキル鎖長を有するいくつかの逆相高圧液体クロマトグラフィーのいずれか(例えば、シアノPR−HPLC、C
18RP−HPLC)を用いて、モニターされてもよい。
【0387】
精製は、標準的な技術(例えば、SDS−PAGE)を用いることによって、またはウエスタンブロットおよびELISAアッセイを用いてレプチンポリペプチドを測定することによって、決定され得る。例えば、ポリクローナル抗体は、陰性対照の酵母を発酵させ、陽イオン交換により回収することによって単離されたタンパク質に対して生成され得る。また、抗体は、宿主細胞のタンパク質の夾雑物の存在を探索するために使用され得る。
【0388】
さらなる精製方法としては、米国特許第4,612,367号明細書に記載の方法が挙げられる。また、さらなる精製方法は、(1)レプチンポリペプチドを含んでいる混合物を、逆相のアクリレートエステルコポリマーのマクロ孔質樹脂の支持体に約7〜約9のpHにてアプライすること、および(2)体積で約20%〜約80%の有機希釈剤を含んでおり、pHが約7〜約9である溶出剤を用いて、この支持体からhEPOポリペプチドを溶出することを包含しているが、これらに限定されない。この有機希釈剤は、アセトン、アセトニトリル、およびアセトンとアセトニトリルとの組合せからなる群から選択される。
【0389】
EPOタンパク質を生成するための典型的なプロセスが、国際公開第96/35718号パンフレット(Burg, published Nov. 14, 1996)に開示されている。同様の技術をレプチンの精製に用いることができるので、このプロセスを以下に記載する。ブルーセファロース(ファルマシア(Pharmacia))は、セファロースビーズからなり、セファロースビーズの表面にシバクロンブルーの色素が共有結合している。EPOは、大部分の非タンパク質性の夾雑物、いくつかのタンパク質性の不純物およびPVAよりもブルーセファロースに対してより強く結合するので、この工程にてEPOを濃縮することができる。ブルーセファロースカラムの溶出は、塩濃度およびpHを増加させることによって実施する。カラムに、80〜100 lのブルーセファロースを充填し、NaOHを用いて再生し、平衡化緩衝液(塩化ナトリウム、塩化カルシウム、および酢酸ナトリウム)を用いて平衡化する。酸性にし、ろ過した発酵槽の上清(fermenter supernatant)を添加する。添加が完了した後、カラムを、まず上記平衡化緩衝液と同様の緩衝液(塩化ナトリウムの濃度がより高い)を用いて洗浄し、続けてTRIS塩基の緩衝液を用いて洗浄する。TRIS塩基の緩衝液を用いて産物を溶出し、主要な溶出プロファイルにしたがって単一の画分に収集する。
【0390】
ブチルトヨペアル(Toyopearl)650C(Toso Haas)は、ポリスチレンを基本とするマトリックスであり、このマトリックスに脂肪族のブチル残基が共有結合している。EPOは、ほとんどの不純物およびPVAよりもこのゲルに対してより強く結合するので、イソプロパノールを含んでいる緩衝液を用いてEPOが溶出されるにちがいない。30〜40 lのブチルトヨペアル650Cをカラムに充填し、NaOHを用いて再生し、TRIS塩基の緩衝液を用いて洗浄し、そして、イソプロパノールを含んでいるTRIS塩基の緩衝液を用いて平衡化する。ブルーセファロースの溶出物を、カラム平衡化緩衝液内のイソプロパノールの濃度に調整し、カラムに添加する。次いで、イソプロパノールを増加させた平衡化緩衝液を用いて、このカラムを洗浄する。溶出緩衝液(イソプロパノールの含有量の高いTRIS塩基の緩衝液)を用いて産物を溶出し、主要な溶出プロファイルにしたがって単一の画分に収集する。
【0391】
ヒドロキシアパタイトウルトロゲル(Ultrogel)(バイオセプラ)は、機械的性質を向上させるためにアガロースマトリックスに組み込まれたヒドロキシアパタイトからなる。EPOは、ヒドロキシアパタイトに対する親和性が低いため、タンパク質の不純物が溶出するリン酸濃度よりも低いリン酸濃度にて溶出することができる。カラムに30〜40lのヒドロキシアパタイトウルトロゲルを充填し、リン酸カリウムおよび塩化カルシウムの緩衝液を添加し、NaOHを添加し、次いでTRIS塩基の緩衝液を添加して再生する。その後、少量のイソプロパノールおよび塩化ナトリウムを含んでいるTRIS塩基の緩衝液を用いて、カラムを平衡化する。ブチルトヨペアルのクロマトグラフィーの、EPOを含んでいる溶出物をこのカラムに充填する。次いで、カラムを、平衡化緩衝液を用いて洗浄し、そして、イソプロパノールおよび塩化ナトリウムを含んでいないTRIS塩基の緩衝液を用いて洗浄する。低濃度のリン酸カリウムを含んでいるTRIS塩基の緩衝液を用いて産物を溶出し、主要な溶出プロファイルにしたがって単一の画分に収集する。
【0392】
PR−HPLC材料であるVydac C4(ビダック(Vydac))は、シリカゲル粒子からなり、シリカゲル粒子の表面にC4−アルキル鎖が保持されている。タンパク質性の不純物からのレプチンポリペプチドの分離は、疎水性相互作用の強度の差に基づく。アセトニトリル勾配の希釈されたトリフルオロ酢酸を用いて、溶出を行う。ステンレス鋼カラム(2.8〜3.2リットルのVydac C4シリカゲルが充填されている)を用いて、調製用HPLCを行う。ヒドロキシアパタイトウルトロゲルの溶出物を、トリフルオロ酢酸を加えることによって酸性化し、そして、Vydac C4カラム上に添加する。洗浄および溶出のために、アセトニトリル勾配の希釈されたトリフルオロ酢酸を使用する。画分を収集し、ただちにリン酸緩衝液を用いて中性化する。IPC限界内にある4HBポリペプチドの画分をプールする。
【0393】
デアエセファロース(ファルマシア)材料は、セファロースビーズの表面と共有結合されるジエチルアミノエチル(DEAE)基からなる。DEAE基に対するレプチンポリペプチドの結合は、イオン性相互作用によって媒介される。アセトニトリルおよびトリフルオロ酢酸は、保持されることなくカラムを通過する。これらの物質が洗い流された後に、微量の不純物を低pHの酢酸緩衝液を用いてカラムを洗浄することによって除去する。次いで、カラムを中性のリン酸緩衝液を用いて洗浄する。そして、レプチンポリペプチドを、イオン強度が増加した緩衝液を用いて溶出する。カラムに、デアエセファロースファストフロウを充填する。3−10mgのレプチンポリペプチド/1mlのゲルの範囲にて、レプチンポリペプチドを添加することを保障するように、カラム容積を調整する。水および平衡化緩衝液(リン酸ナトリウム/カリウム)を用いてカラムを洗浄する。HPLC溶出物のプールされた画分を添加し、カラムを平衡化緩衝液を用いて洗浄する。次いで、カラムを、洗浄緩衝液(酢酸ナトリウム緩衝液)を用いて洗浄し、その後、平衡化緩衝液を用いて洗浄する。続いて、溶出緩衝液(塩化ナトリウム、リン酸ナトリウム/カリウム)を用いてレプチンポリペプチドをカラムから溶出し、主要な溶出プロファイルにしたがって、単一の画分に収集する。デアエセファロースカラムの溶出物を、特定の伝導性に調整する。結果として生じる製剤原料を、テフロン(Teflon)(登録商標)ボトルの中に無菌的にろ過し、−70℃にて保存する。
【0394】
多種多様な方法および手法が、天然にコードされていないアミノ酸を1つ以上含んでいるレプチンタンパク質の収率および純度を評価するために使用されてもよい。このような方法および手法としては、ブラッドフォードアッセイ、SDS−PAGE、銀染色されるSDS−PAGE、クーマシーブルー染色されるSDS−PAGE、質量分析(MALDI−TOFが挙げられるが、これに限定されない)、および当業者に公知のタンパク質の性質を決定するための他の方法が挙げられるが、これらに限定されない。
【0395】
<VIII.代替系における発現>
種々の戦略が、非組換え宿主細胞、変異された宿主細胞、または無細胞系においてタンパク質に非天然アミノ酸を導入するために使用されている。また、これらの系は、本発明のレプチンポリペプチドの作製における使用に好適である。Lys、CysおよびTyrといった反応性の側鎖を有するアミノ酸を誘導体化することによって、リジンをN
2−アセチル−リジンへと転換させる。また、化学合成は、非天然アミノ酸を組み込むための簡単な方法を提供する。ペプチドのフラグメントの酵素的ライゲーションおよびネイティブな化学的ライゲーションの最近の発展に伴って、巨大タンパク質の作製が可能である。例えば、P. E. Dawson and S. B. H. Kent, Annu. Rev. Biochem, 69:923 (2000)を参照すればよい。所望の非天然アミノ酸によって化学的にアシル化されたサプレッサtRNAが、タンパク質生合成を支持し得るインビトロ抽出物に添加される、通常のインビトロ生合成方法は、実質的に任意の大きさを有する種々のタンパク質に100を超える非天然アミノ酸を部位特異的に組み込むために、使用されている。例えば、V. W. Cornish, D. Mendel and P. G. Schultz, Angew. Chem. Int. Ed. Engl., 1995, 34:621 (1995); C.J. Noren, S.J. Anthony-Cahill, M.C. Griffith, P.G. Schultz, A general method for site-specific incorporation of unnatural amino acids into proteins, Science 244:182-188 (1989);およびJ.D. Bain, C.G. Glabe, T.A. Dix, A.R. Chamberlin, E.S. Diala, Biosynthetic site-specific incorporation of a non-natural amino acid into a polypeptide, J. Am. Chem. Soc. 111:8013-8014 (1989)を参照すればよい。広範な官能基が、タンパク質の安定性、タンパク質のフォールディング、酵素機序、およびシグナル伝達を研究するために、タンパク質に組み込まれている。
【0396】
選択圧(selective pressure)組込みと呼ばれる、インビボの方法が、野生型合成酵素の無差別さを活用するために開発された。例えば、N. Budisa, C. Minks, S. Alefelder, W. Wenger, F. M. Dong, L. Moroder and R. Huber, FASEB J., 13:41 (1999) を参照すればよい。特定の天然アミノ酸を細胞に供給する関連代謝経路が断たれている栄養要求株は、制限された濃度の天然アミノ酸を含有している最小培地において増殖する一方、標的遺伝子の転写が抑制されている。増殖の定常期に入ると、天然アミノ酸が枯渇して、非天然アミノ酸類似物と置き換えられる。組換えタンパク質の発現の誘導は、非天然の類似物を含んでいるタンパク質の蓄積を生じる。例えば、この戦略を用いて、o、mおよびp−フルオロフェニルアラニンが、タンパク質に組み込まれており、容易に同定され得るUVスペクトルにおける2つの特徴的な肩を示し(例えば、C. Minks, R. Huber, L. Moroderand N. Budisa, Anal. Biochem., 284:29 (2000)を参照すればよい);トリフルオロメ
チオニンが、
19F NMRによってチトオリゴ糖のリガンドとの相互作用を研究するために、バクテリオファージのT4ライソザイム内のメチオニンを置換するために使用されており(例えば、H. Duewel, E. Daub, V. Robinson and J. F. Honek, Biochemistry, 36:3404 (1997) を参照すればよい);トリフルオロロイシンがロイシンの代わりに組み込まれて、ロイシンジッパータンパク質の増強された熱的および化学的な安定性をもたらしている。例えば、Y. Tang, G. Ghirlanda, W. A. Petka, T. Nakajima, W. F. DeGrado and D. A. Tirrell, Angew. Chem. Int. Ed. Engl., 40:1494 (2001)を参照すればよい。さらに、セレノメチオニンおよびテルルメチオニンが、種々の組換えタンパク質に組み込まれて、X線結晶解析における位相の解像を容易にしている。例えば、W. A. Hendrickson, J. R. Horton and D. M. Lemaster, EMBO J., 9:1665 (1990) ;J. O. Boles, K. Lewinski, M. Kunkle, J. D. Odom, B. Dunlap, L. Lebioda and M. Hatada, Nat. Struct. Biol., 1:283 (1994) ;N. Budisa, B. Steipe, P. Demange, C. Eckerskorn, J. Kellermann and R. Huber, Eur. J. Biochem., 230:788 (1995);およびN. Budisa, W. Karnbrock, S. Steinbacher, A. Humm, L. Prade, T. Neuefeind, L. Moroder and R. Huber, J. Mol. Biol., 270:616 (1997) を参照すればよい。また、アルケンまたはアルキンの官能基を有しているメチオニン類似物が効率的に組み込まれて、化学的手段によるタンパク質のさらなる修飾を可能にしている。例えば、J. C. van Hest and D. A. Tirrell, FEBS Lett., 428:68 (1998);J. C.. van Hest, K. L. Kiick and D. A. Tirrell, J. Am. Chem. Soc., 122:1282 (2000);およびK. L. Kiick and D. A. Tirrell, Tetrahedron, 56:9487 (2000) ;米国特許第6,586,207号明細書;米国特許出願公開第2002/0042097号明細書を参照すればよい(なお、これらの文献は、参照によって本明細書に援用される)。
【0397】
この方法の成功は、タンパク質翻訳の忠実度を保証するために高い選択性を一般的に必要とする、アミノアシルtRNAによる非天然アミノ酸類似物の認識に依存する。この方法の有効範囲を拡張するための1つの方法は、アミノアシルtRNAの基質特異性を緩和することであるが、この緩和は限られた事例にしか達成されていない。例えば、エシェリキア コリのフェニルアラニル合成酵素(PheRS)内のAla
294のGlyによる置換は、基質結合ポケットの大きさを増加させ、p−Cl−フェニルアラニン(p−Cl−Phe)によってtRNAPheがアシル化されることをもたらす。M. Ibba, P. Kastand H. Hennecke, Biochemistry, 33:7107 (1994) を参照すればよい。この変異Phe
RSを内部に有するエシェリキア コリ株は、フェニルアラニンの代わりに、p−Cl−フェニルアラニンまたはp−Br−フェニルアラニンの組込みを可能にする。例えば、M. Ibba and H. Hennecke, FEBS Lett., 364:272 (1995);およびN. Sharma, R. Furter, P. Kast and D. A. Tirrell, FEBS Lett., 467:37 (2000)を参照すればよい。同様に、エシェリキア コリのチロシル−tRNA合成酵素のアミノ酸結合部位の近傍の点変異Phe130Serによって、アザチロシンがチロシンよりも効率的に組み込まれることが可能になることが、示されている。F. Hamano-Takaku, T. Iwama, S. Saito-Yano, K. Takaku, Y. Monden, M. Kitabatake, D. Soll and S. Nishimura, J. Biol. Chem., 275:40324 (2000) を参照すればよい。
【0398】
インビボにおいて非天然アミノ酸をタンパク質に組み込む他の戦略は、校正機序を有する合成酵素を修飾することである。これらの合成酵素は、同種の天然アミノ酸と構造的に類似するアミノ酸を区別できず、それゆえ当該類似するアミノ酸を活性化する。この誤りは別の部位において訂正されて、誤ってチャージしたアミノ酸をtRNAから脱アシル化し、タンパク質翻訳の忠実度を維持する。合成酵素の校正活性が無効にされると、誤って活性化される構造的類似物が、編集機能を免れて組み込まれることがある。この方法は、近年、バリル−tRNA合成酵素(ValRS)を用いて証明されている。V. Doring, H. D. Mootz, L. A. Nangle, T. L. Hendrickson, V. de Crecy-Lagard, P. Schimmel andP. Marliere, Science, 292:501 (2001) を参照すればよい。ValRSは、Cys、Thr、アミノブチレート(Abu)によってtRNAValを誤ってアシル化でき;その後に、これらの非同種のアミノ酸が編集ドメインによって加水分解される。エシェリキア
コリの染色体の無作為変異生成の後に、ValRSの編集部位に変異を有している変異体エシェリキア コリ株が選択された。この編集を欠損したValRSは、Cysを用いてtRNAValを不正確にチャージする。また、AbuがCysと立体的に類似している(Cysの−SH基がAbuにおいて−CH3に置換されている)ので、変異体ValRSは、この変異体エシェリキア コリ株がAbuの存在下において増殖されると、タンパク質にAbuを組み込む。質量分析に基づく解析は、本来のタンパク質におけるバリンの位置のそれぞれにおいて、バリンの約24%がAbuに置換されることを示している。
【0399】
また、固相合成法および固相半合成法は、新規のアミノ酸を含んでいる多くのタンパク質の合成を可能にしている。例えば、以下の刊行物および引用される参考文献を参照すればよい:Crick, F.H.C., Barrett, L. Brenner, S. Watts-Tobin, R. General nature ofthe genetic code for proteins. Nature, 192:1227-1232 (1961); Hofmann, K., Bohn, H. Studies on polypeptides. XXXVI. The effect of pyrazole-imidazole replacements on the S-protein activating potency of an S-peptide fragment, J. Am Chem, 88(24):5914-5919 (1966); Kaiser, E.T. Synthetic approaches to biologically active peptides and proteins including enyzmes, Acc Chem Res, 47-54 (1989); Nakatsuka, T., Sasaki, T., Kaiser, E.T. Peptide segment coupling catalyzed by the semisynthetic enzyme thiosubtilisin, J Am Chem Soc, 3808-3810 (1987); Schnolzer, M., Kent, S B H. Constructing proteins by dovetailing unprotected synthetic peptides: backbone-engineered HIV protease, Science, 256(5054):221-225 (1992); Chaiken, I.M. Semisynthetic peptides and proteins, CRC Crit Rev Biochem, 11(3):255-301 (1981); Offord, R.E. Protein engineering by chemical means? Protein Eng., 1(3):151-157 (1987); and, Jackson, D.Y., Burnier, J., Quan, C., Stanley, M., Tom, J., Wells, J.A. A Designed Peptide Ligase for Total Synthesis of Ribonuclease A with Unnatural Catalytic Residues, Science, 266(5183):243 (1994)。
【0400】
化学的修飾は、インビトロにおいてタンパク質に種々の非天然な側鎖(補助因子、スピン標識およびオリゴヌクレオチドが挙げられる)を導入するために、使用されている。例えば、Corey, D.R., Schultz, P.G. Generation of a hybrid sequence-specific single-stranded deoxyribonuclease, Science, 238(4832):1401-1403 (1987); Kaiser, E.T., Lawrence D.S., Rokita, S.E. The chemical modification of enzymatic specificity, Annu Rev Biochem, 54:565-595 (1985); Kaiser, E.T., Lawrence, D.S. Chemical mutation of enyzme active sites, Science, 226(4674):505-511 (1984); Neet, K.E., NanciA, Koshland, D.E. Properties of thiol-subtilisin, J Biol. Chem, 243(24):6392-6401 (1968); Polgar, L. B., M.I., A new enzyme containing a synthetically formed active site. Thiol-subtilisin. J. Am Chem Soc, 88:3153-3154 (1966); and, Pollack, S.J., Nakayama, G. Schultz, P.G. Introduction of nucleophiles and spectroscopic probes into antibody combining sites, Science, 242(4881):1038-1040 (1988)を参
照すればよい。。
【0401】
代替可能に、化学的に修飾されたアミノアシル−tRNAを採用する生合成方法は、インビトロにおいて合成されるタンパク質に種々の生物物理的なプローブを組み込むために使用されている。以下の刊行物および引用される参考文献:Brunner, J. New Photolabeling and crosslinking methods, Annu. Rev Biochem, 62:483-514 (1993); and, Krieg, U.C., Walter, P., Hohnson, A.E. Photocrosslinking of the signal sequence of nascent preprolactin of the 54-kilodalton polypeptide of the signal recognition particle, Proc. Natl. Acad. Sci, 83(22):8604-8608 (1986)を参照すればよい。
【0402】
これまでに、所望のアンバーナンセンス変異を含んでいる遺伝子を用いて計画されたタンパク質合成反応に対して、化学的にアミノアシル化されたサプレッサtRNAを加えることによって、非天然アミノ酸がインビトロにおいて部位特異的に組み込まれ得ることが示されている。これらの方法を用いて、特定のアミノ酸に対して栄養要求性の株を用いて、一般的な20のアミノ酸の多くを構造的に近い相同物(例えば、フェニルアラニンに対するフルオロフェニルアラニン)に置換し得る。例えば、Noren, C.J., Anthony-Cahill, Griffith, M.C., Schultz, P.G. A general method for site-specific incorporation of unnatural amino acids into proteins, Science, 244: 182-188 (1989); M.W. Nowak, et al., Science 268:439-42 (1995); Bain, J.D., Glabe, C.G., Dix, T.A., Chamberlin, A.R., Diala, E.S. Biosynthetic site-specific Incorporation of a non-naturalamino acid into a polypeptide, J. Am Chem Soc, 111:8013-8014 (1989); N. Budisa et al., FASEB J. 13:41-51 (1999); Ellman, J.A., Mendel, D., Anthony-Cahill, S.,
Noren, C.J., Schultz, P.G. Biosynthetic method for introducing unnatural amino acids site-specifically into proteins, Methods in Enz., vol. 202, 301-336 (1992); and, Mendel, D., Cornish, V.W. & Schultz, P.G. Site-Directed Mutagenesis with an Expanded Genetic Code, Annu Rev Biophys. Biomol Struct. 24, 435-62 (1995)を参照すればよい。
【0403】
例えば、UAGストップコドンを認識するサプレッサtRNAが調製され、非天然アミノ酸によって化学的にアミノアシル化された。従来の部位特異的変異生成が、タンパク質遺伝子における目的の部位に、ストップコドンTAGを導入するために使用された。例えば、Sayers, J.R., Schmidt, W. Eckstein, F. 5’-3’ Exonucleases in phosphorothioate-based olignoucleotide-directed mutagensis, Nucleic Acids Res, 16(3):791-802 (1988)を参照すればよい。アミノアシル化サプレッサtRNAおよび変異体遺伝子が、インビトロの転写/翻訳系において組み合せられる場合、非天然アミノ酸がUAGコドンに応じて組み込まれ、特定の位置においてアミノ酸を含んでいるタンパク質が生じる。[
3H]−Pheを用いた実験およびα−ヒドロキシ酸を用いた実験は、所望のアミノ酸のみがUAGコドンによって特定される位置に組み込まれ、このアミノ酸が、タンパク質における任意の他の部位に組み込まれないことを証明した。例えば、Noren, et al, supra; Kobayashi et al., (2003) Nature Structural Biology 10(6):425-432;およびEllman, J.A., Mendel, D., Schultz, P.G. Site-specific incorporation of novel backbone structures into proteins, Science, 255(5041):197-200 (1992)を参照すればよい。
【0404】
また、微量注入技術も、タンパク質へ非天然アミノ酸を組み込むために使用されている。例えば、M. W. Nowak, P. C. Kearney, J. R. Sampson, M. E. Saks, C. G. Labarca, S. K. Silverman, W. G. Zhong, J. Thorson, J. N. Abelson, N. Davidson, P. G. Schultz, D. A. Dougherty and H. A. Lester, Science, 268:439 (1995) ;およびD. A. Dougherty, Curr. Opin. Chem. Biol., 4:645 (2000) を参照すればよい。アフリカツメガエルの卵母細胞は、インビトロにおいて作製された2つのRNA種:目的のアミノ酸位置にUAGストップコドンを有する標的タンパク質をコードするmRNA、および所望の非天然アミノ酸によってアミノアシル化されたアンバーサプレッサtRNAを共注入された。その後、卵母細胞の翻訳機構は、UAGによって特定される位置に非天然アミノ酸を挿入する。この方法は、一般的にインビトロの発現系に受け容れられない、内在性膜タンパク質(integral membrane protein)の構造−機能の研究を可能にしている。例としては、タキキニン ニューロキニン−2受容体へ蛍光アミノ酸を組み込んで、蛍光共鳴エネルギー転移によって距離を測定すること(例えば、G. Turcatti, K. Nemeth, M. D. Edgerton, U. Meseth, F. Talabot, M. Peitsch, J. Knowles, H. Vogel and A. Chollet, J. Biol. Chem., 271:19991 (1996) を参照すればよい);ビオチン化されたアミノ酸を組み込んで、イオンチャネルにおいて表面に露出した残基を同定すること(例えば、J. P. Gallivan, H. A. Lester and D. A. Dougherty, Chem. Biol., 4:739 (1997) を参照すればよい);ケージ化したチロシン類似物を使用して、リアルタイムでイオンチャネルの立体配置の変化をモニターすること(例えば、J. C. Miller, S. K. Silverman, P. M. England, D. A. Dougherty and H. A. Lester, Neuron, 20:619 (1998) を参照すればよい);および、αヒドロキシアミノ酸を使用してイオンチャネル骨格を変更し、それらのゲート機構を調べることが挙げられる。例えば、P. M. England, Y. Zhang, D. A. Dougherty andH. A. Lester, Cell, 96:89 (1999); およびT. Lu, A. Y. Ting, J. Mainland, L. Y. Jan, P. G. Schultz and J. Yang, Nat. Neurosci., 4:239 (2001)を参照すればよい。
【0405】
インビボにおいてタンパク質に非天然アミノ酸を直接的に組み込む能力は、変異タンパク質の収率が高く、技術的に容易であり、細胞またはおそらくは生体における変異タンパク質を研究する可能性があり、そして治療的な処置にこれらの変異タンパク質を使用するという利点を提供する。種々の大きさ、酸性度、求核性、疎水性および他の性質を有している非天然アミノ酸をタンパク質に含める能力は、タンパク質の機能を調べること、および新規の性質を有する新たなタンパク質もしくは生物を作り出すことの両方を目的として、タンパク質の構造を合理的かつ体系的に操作するわれわれの能力を非常に拡張し得る。しかし、このプロセスは困難である。なぜなら、タンパク質を翻訳する上で高い忠実度を達成することを必要とするtRNAと合成酵素との相互作用が、複雑な性質を帯びているからである。
【0406】
パラ−F−Pheを部位特異的に組み込むために、酵母アンバーサプレッサtRNAPheCUA/フェニルアラニル−tRNA合成酵素の対が、p−F−Pheに耐性で、Phe要求性のエシェリキア コリ株において使用された。例えば、R. Furter, Protein Sci., 7:419 (1998) を参照すればよい。
【0407】
また、無細胞(インビトロ)翻訳系を用いて、本発明のレプチンポリペプチドを発現させることも可能であり得る。これらの系は、鋳型としてmRNAを含んでいてもよいし(インビトロでの翻訳)、鋳型としてDNAを含んでいてもよい(インビトロでの転写と翻訳との組合せ)。このような系において、インビトロでの合成はリボソームによって誘導される。無細胞のタンパク質発現系を開発するために、多大な努力が注がれている。例えば、Kim, D.M. and J.R. Swartz, Biotechnology and Bioengineering, 74 :309-316 (2001); Kim, D.M. and J.R. Swartz, Biotechnology Letters, 22, 1537-1542, (2000); Kim, D.M., and J.R. Swartz, Biotechnology Progress, 16, 385-390, (2000); Kim, D.M., and J.R. Swartz, Biotechnology and Bioengineering, 66, 180-188, (1999);およびPatnaik, R. and J.R. Swartz, Biotechniques 24, 862-868, (1998);米国特許第6,337,191号明細書;米国特許出願公開第2002/0081660号明細書;国際公開第00/55353号パンフレット;国際公開第90/05785号パンフレットを参照すればよい(なお、これらの文献は、参照によって本明細書に援用される)。天然にコードされていないアミノ酸を含んでいるレプチンポリペプチドの発現に適用され得る他の方法としては、mRNA−ペプチド融合技術が挙げられる。例えば、R. Roberts and J. Szostak, Proc. Natl Acad. Sci. (USA) 94:12297-12302 (1997) ;A. Frankel, et al., Chemistry & Biology 10:1043-1050 (2003) を参照すればよい。この方法において、ピューロマイシンに連結されたmRNAの鋳型がリボソーム上においてペプチドに翻訳される。1つ以上のtRNA分子が修飾されると、非天然アミノ酸が、同様にペプチドに組み込まれ得る。最後のmRNAコドンが読まれた後に、ピューロマイシンがペプチドのC末端を捕捉する。生じたmRNA−ペプチド抱合物がインビトロアッセイにおいて興味深い性質を有することを発見した場合、その素性がmRNA配列から容易に明らかにされ得る。このようにして、天然にコードされていないアミノ酸を1つ以上含んでいるレプチンポリペプチドのライブラリをスクリーニングして、所望の性質を有するポリペプチドを同定し得る。最近になって、精製した成分を用いたインビトロでのリボソームによる翻訳が、天然にコードされていないアミノ酸によって置換されたペプチドの合成を可能にすることが、報告されている。例えば、A. Forster et al., Proc. Natl Acad. Sci. (USA) 100:6353 (2003)を参照すればよい。
【0408】
<IX.レプチンポリペプチドに結合された巨大分子ポリマー>
本明細書に記載されている非天然アミノ酸ポリペプチドの種々の修飾は、本明細書に記載されている組成物、方法、技術および戦略を用いてもたらされ得る。これらの修飾は、ポリペプチドに対する非天然アミノ酸に対するさらなる機能性(標識;色素;ポリマー;水溶性ポリマー;ポリエチレングリコールの誘導体;光架橋剤;細胞毒性化合物;薬物;親和性標識;光親和性標識;反応性化合物;樹脂;第2のタンパク質もしくはポリペプチドもしくはポリペプチド類似物;抗体もしくは抗体断片;金属キレート剤;補助因子;脂肪酸;含水炭素;ポリヌクレオチド;DNA;RNA;アンチセンスポリヌクレオチド;抑制性リボ核酸;生体適合物質;ナノ粒子;スピン標識;蛍光団;金属を含有している部分;放射性部分;新規な官能基;他の分子と共有的もしくは非共有的に相互作用する基;光ケージド部分;光異性体化可能な部分;ビオチン;ビオチン類似物;ビオチン類似物;重原子を組み込んいでる部分;化学的に切断可能な基;光切断可能な基;延長された側鎖;炭素結合型の糖;酸化還元的に活性な物質;アミノチオ酸;毒性部分;同位体によって標識された部分;生物物理学的なプローブ;燐光性の基;化学発光性の基;電子高密の高い基;磁性基;インターカレートする基;発色団;エネルギー転移物質;生物学的に活性な物質;検出可能な標識;小分子;または上述のものの任意の組合せ、もしくは他に所望される任意の化合物もしくは物質が挙げられるが、これらに限定されない)の組み込みを包含する。本明細書に記載されている組成物、方法、技術および戦略の具体的な、非限定的な例として、以下の記載は、それらに関して本明細書に記載されている組成物、方法、技術および戦略が、他の機能性(上記に挙げたそれらが挙げられるが、これらに限定されない)を加えることにも適用可能である(必要に応じて、当業者が本明細書における開示を用いてなし得る適切な改変を伴って)という理解を含めて、非天然アミノ酸ポリペプチドに対する巨大分子を加えることを中心に扱う。
【0409】
広範な巨大分子ポリマーおよび他の分子は、レプチンポリペプチドの生物学的な性質を調節するためか、および/またはレプチン分子に対して新たな生物学的な性質を与えるために、本発明のレプチンポリペプチドに対して連結され得る。これらの巨大分子ポリマーは、天然にコードされるアミノ酸を介してか、天然にコードされていないアミノ酸、または天然アミノ酸もしくは非天然アミノ酸の任意の置換基、または天然アミノ酸もしくは非天然アミノ酸に対して加えられる任意の置換基もしくは官能基を介して、レプチンポリペプチドに対して連結され得る。
【0410】
本発明は、ポリマー:タンパク質の抱合物の実質的に均質な調製物を提供する。本明細書において使用されるときに、“実質的に均質な”は、ポリマー:ポリペプチドの抱合物がタンパク質の総量の半分より多く観察されることを意味する。ポリマー:タンパク質の抱合物は、生物活性を有し、かつ本明細書において規定される“実質的に同質な”PEG付加レプチンポリペプチド調製物は、均質な調製物の利点(例えば、1組の薬物動態に対する1組の予想における臨床的な適用における容易さ)を示すために十分に均質であるそれらである。
【0411】
また、ポリマー:タンパク質の抱合物分子の混合物を調製するために選択し得、かつ本明細書に規定されている利点は、混合物に含まれるモノ−ポリマー:タンパク質の抱合物の比率を選択し得ることである。したがって、必要に応じて、種々の数(すなわち、ジ−、トリ−、テトラ−など)のポリマー部分と連結した状態の様々なタンパク質の混合物を調製し得、かつ本発明の方法を用いて調製されたモノ−ポリマー:タンパク質の抱合物と上記抱合物を組み合せ得、かつ所定の割合のモノ−ポリマー:タンパク質の抱合物を有する混合物を有し得る。
【0412】
選択されるポリマーは、ポリマーが連結されるタンパク質が水性環境(例えば、生理学的環境)において沈殿しないように、水溶性ポリマーであり得る。ポリマーは、分枝状であり得るか、または非分枝状であり得る。最終産物の調製物の治療的利用に関して、ポリマーは薬学的に受容可能である。
【0413】
タンパク質分子に対するポリエチレングリコールの比率は、反応混合物におけるそれらの濃度にしたがって変化する。一般的に、最適な比率(余剰の未反応のタンパク質またはポリマーが最小である反応の効率に関する)は、選択されるポリエチレングリコールの分子量によって、かつ有用な反応性基の利用可能な数に基づいて決定され得る。分子量に関連するときに、タンパク質に対して連結されるのは、典型的により分子量の高いポリマー、より少ない数のポリマー分子である。同様に、ポリマーの分枝は、これらの要素を最適化する場合に、計算に入れられるべきである。一般的に、分子量が高いほど(分枝が多いほど)、ポリマー:タンパク質の割合が高くなる。
【0414】
本明細書において使用されるとき、およびPEG:レプチンポリペプチドの抱合物について検討される場合に、“治療有効量”は、循環するレプチンを増加させて患者に対して所望の利益を与える量を指す。当該量は、個体間において変わり、かつ要素(患者の全体的な体調および肥満の根本的な原因が挙げられるが、これらに限定されない)の数に依存する。例えば、患者に対するレプチンポリペプチドの治療有効量は、レプチンポリペプチドを投与する方法(例えば、経口投与、静脈内投与、皮下投与、経皮投与などを挙げることができるが、これらに限定されない)、および患者が患っている症状であってレプチンポリペプチドが治療のために投与される症状(例えば、エネルギーバランスの制御、肥満の管理、グルコースの調節、脂質代謝の調節、視床下部下垂体の神経内分泌機能の調節、不妊症の治療、免疫機能の亢進、血液形成の亢進、血管形成の増加、創傷治癒の増加、または血清脂質の減少などを挙げることができるが、これらに限定されない)に依存する。治療に用いられるレプチンポリペプチドの量は、循環するレプチンについて、許容可能に増加させ得る。レプチンの量はまた、血清中のレプチンの濃度を有効な濃度に維持できる量である。当業者であれば、本発明の組成物の治療有効量を、一般的に利用可能な材料および方法を用いて決定することが可能である。
【0415】
一実施形態において、治療有効量の本発明のレプチンポリペプチドが肥満患者に投与される。現在、利用可能な肥満症の処置方法は、摂取する食物を減らすこと(例えば、シブトラミン(sibutramine))、または、脂肪の吸収を阻害すること(例えば、オルリスタット(orlistat))に基づいている。本発明の一実施形態では、食物の摂取を顕著に減少させることが無い場合には、脂肪組織が著しく減少する。一実施形態では、本発明のレプチンポリペプチドは体重を調節する。一実施形態では、本発明のレプチンポリペプチドを当該ペプチドを必要としている患者に投与すると、患者の体重が減少する。体重が減少している間の食物摂取量のレベルの例はとしては、(a)食物摂取量が、維持されているか、増加しているか、または本発明にしたがって処置される前の被験者の標準的な値(すなわち、投与前の量)を約0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19もしくは20%下回っている、(b)食物摂取量が、維持されているか、増加しているか、または投与前の量よりも約0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14もしくは15%下回っている、(c)食物摂取量が、維持されているか、増加しているか、または投与前の量よりも約0、1、2、3、4、5、6、7、8、9もしくは10%下回っている、ならびに(d)食物摂取量が、維持されているか、増加しているか、または投与前の量よりも約0、1、2、3、4もしくは5%下回っている、が挙げられる。
【0416】
いくつかの実施形態において、本発明のポリペプチドによって処置された患者は体重が減少し、よくある場合として、脂肪を除いた筋肉の量(lean muscle mass)の減少を同時に伴いながら、脂肪組織が減少する。このことは、すべての生体組織成分(例えば、脂肪組織および脂肪を除く筋肉など)の流出(washing)を示している癌患者において、特に明らかである。しかし、本発明では、脂肪を除く筋肉を顕著に減少させることなく、体の脂肪を顕著に減少させることが好ましい。脂肪組織の減少は、除脂肪体重(lean body mass)の顕著な減少とは関係なく、CB1アンタゴニストによる処置に起因する。脂肪細胞が減少している間の除脂肪体重のレベルの例としては、(a)除脂肪体重が、維持されているか、増加しているか、または本発明にしたがって処置される前の被験者の標準的な値(すなわち、投与前の量)を約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29もしくは30%下回っている、(b)除脂肪体重が、維持されているか、増加しているか、または本発明にしたがって処置される前の被験者の標準的な値(すなわち、投与前の量)を約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14もしくは15%下回っている、(c)除脂肪体重が、維持されているか、増加しているか、または本発明にしたがって処置される前の被験者の標準的な値(すなわち、投与前の量)を約1、2、3、4、5、6、7、8、9もしくは10%下回っている、ならびに(d)除脂肪体重が、維持されているか、増加しているか、または本発明にしたがって処置される前の被験者の標準的な値(すなわち、投与前の量)を約1、2、3、4および5%下回っている、が挙げられる。
【0417】
ある場合には、脂肪組織の減少は、同時に水分の減少を伴い得る。このことは、特に、脱水を引き起こす食事療法において明らかである。本発明では、水分を顕著に減少させること無く、体脂肪を顕著に減少させることが好ましい。すなわち、脂肪組織の減少は、水分の顕著な減少とは関係なく、CB1アンタゴニストによる処置に起因する。脂肪細胞が減少している間の水分のレベルの例は、以下の(a)〜(d)を含む、つまり、(a)水分が、維持されているか、増加しているか、または本発明にしたがって処置される前の被験者の標準的な値(すなわち、投与前の量)を約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29もしくは30%下回っている、(b)水分が、維持されているか、増加しているか、または本発明にしたがって処置される前の被験者の標準的な値(すなわち、投与前の量)を約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14もしくは15%下回っている、(c)水分が、維持されているか、増加しているか、または本発明にしたがって処置される前の被験者の標準的な値(すなわち、投与前の量)を約1、2、3、4、5、6、7、8、9もしくは10%下回っている、ならびに(d)水分が、維持されているか、増加しているか、または本発明にしたがって処置される前の被験者の標準的な値(すなわち、投与前の量)を約1、2、3、4および5%下回っている、が挙げられる。
【0418】
近年、肥満症の治療のために、シブトラミンおよびオルリスタットが販売されている。これらの2つの化合物は、全く異なる機序を介して体重を減少させる。CNS食欲抑制剤であるシブトラミンは、ニューロンによるセロトニンおよびノルアドレナリンの再度の取込みを阻害する。オルリスタットは、取り込まれた脂肪の分解に関与する腸リパーゼを阻害する。
【0419】
カンナビノイド受容体のアンタゴニスト/逆アゴニストは、末梢のカンナビノイド受容体を阻害することによって体重を減少させる。このことは、全く異なる機序の食欲抑制剤、腸リパーゼの阻害剤、および同様に適用される他の薬剤(例えば、セロトニンのアゴニスト、レプチン、脂肪酸合成酵素の阻害剤、モノアミンオキシターゼ(MAO)の阻害剤など)と同様である。カンナビノイド受容体のアンタゴニスト/逆アゴニストと、先に記載した症状(例えば、肥満症、糖尿病、心血管代謝疾患(cardiometabolic disorder)およびこれらの組合せ)の処置に有用な1つ以上の他の薬剤とを一緒に投与すれば、例えば相加効果または相乗効果によって、効果的であることが期待される。さらなる薬剤の例としては、食欲抑制剤、リパーゼの阻害剤、およびMAO阻害剤(例えば、MAO−B、および、MAO−A/Bの組合せ)を挙げられる。したがって、本発明は、肥満症、糖尿病、および/または心血管代謝疾患を処置する方法を提供し、当該方法は、治療有効量の本発明の化合物と、所望の症状を効果的に処置する第2の成分とを投与する工程を含んでいる。
【0420】
第2の成分の例としては抗肥満薬を挙げることができ、当該抗肥満薬としては(1)成長ホルモン分泌促進薬、(2)成長ホルモン分泌促進剤受容体のアゴニスト/アンタゴニスト、(3)メラノコルチン(melanocortin)のアゴニスト、(4)Mc4r(メラノコルチン4レセプター)のアゴニスト、(5)β3のアゴニスト、(7)5HT2C(セロトニン受容体2C)のアゴニスト、(8)オレキシンのアンタゴニスト、(9)メラニン凝集ホルモンのアンタゴニスト、(10)メラニン凝集ホルモン1受容体(MCH 1R)のアンタゴニスト、(11)メラニン凝集ホルモン2受容体(MCH 2R)のアゴニスト/アンタゴニスト、(12)ガラニン(galanin)のアンタゴニスト、(13)CCKのアゴニスト、(14)CCK−A(コレシストキニン−A)のアゴニスト、(16)副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモンのアゴニスト、(17)NPY 5のアンタゴニスト、(18)NPY 1のアンタゴニスト、(19)ヒスタミン受容体3(H3)修飾因子、(20)ヒスタミン受容体−3(H3)のアンタゴニスト/インバースアゴニスト、(21)β−ヒドロキシステロイドデハイドロゲナーゼ−1の阻害剤(beta-HSD-1)、(22)PDE(ホスホジエステラーゼ)の阻害剤、(23)ホスホジエステラーゼ−3B(PDE3B)の阻害剤、(24)NE(ノルエピネフリン)輸送阻害剤、(25)非特異的なセロトニン/ノルエピネフリン輸送の阻害剤(例えば、シブトラミン、フェンテルミン、フェンフルラミンなど)、(26)グレリンのアンタゴニスト、(28)レプチン誘導体、(29)BRS3(ボンベシン受容体サブタイプ3)アゴニスト、(30)CNTF(毛様体ニューロトロフィックファクター)、(31)CNTF誘導体(例えば、アキソカイン(axokine)(Regeneron))、(32)モノアミン再取込の阻害剤、(33)UCP−1(アンカップリングタンパク質−1)、UCP−2またはUCP−3のアクチベータ、(34)甲状腺ホルモンβのアゴニスト、(35)FAS(脂肪酸合成酵素)の阻害剤、(37)DGAT2(ジアシルグリセロール アシルトランスフェラーゼ 2)の阻害剤、(38)ACC2(アセチル−CoA カルボキシラーゼ−2)の阻害剤、(39)グルココルチコイドのアンタゴニスト、(40)アシル−エストロゲン、(41)リパーゼの阻害剤(例えば、オルリスタット(Xenical.RTM))、(42)脂肪酸トランスポーターの阻害剤、(43)ジカルボン酸トランスポーターの阻害剤、(44)グルコーストランスポーターの阻害剤、(45)リン酸塩トランスポーターの阻害剤、(46)セロトニン再取込の阻害剤、(47)メトホルミン(Glucophage.RTM.)、(48)トピラメート(Topiramate)(Topimax.RTM)MAO阻害剤が挙げられるが、これらに限定されない。
【0421】
MAO阻害剤の例としては、モクロベミド(Mocrobemide);ブロファロミン(Brofaromine);BWA161U;Ro41−1049;RS−2232;SR95191;ハルマリン(Harmaline);ハルマン(Harman);アミフラミン(Amiflamine);BW 1370U87;FLA 688;FLA 788;ビフェメラン(Bifemelane);クロルジリン(Clorgyline);LY 51641;MDL 72,394;5−(4−ベンジルオキシフェニル)−3−(2−シアノエチル)−(3H)−1,3,4,−オキサジアゾール−2−one;5−(4−アリルメトキシフェニル)−2−(2−シアノエチル)テトラゾール;ラザベミド(Lazabemide);Ro16−6491;アルモキサトン(Almoxatone);XB308;RS−1636;RS−1653;NW−1015;SL 340026;L−セレギリン(L-selegiline);ラサジリン(Rasagiline);パージリン(Pargyline);AGN 1135;MDL 72,974;MDL 72,145;MDL 72,638;LY 54761;MD 780236;MD 240931;ビフェメラン(Bifemelane);トロキサトン(Toloxatone);シモキサトン(Cimoxatone);イプロニアジド(Iproniazid);フェネルジン(Phenelzine);ニアラミド(Nialamide);フェニルヒドラジン(Phenylhydrazine);1−フェニルシクロプロピラミン(1-Phenylcyclopropylamine);イソカルボキサジド(Isocarboxazid);および、トラニルシプロミン(Tranylcypromine)を挙げられる。MAO阻害剤のさらなる例が、米国特許出願公開第60/696,067号明細書;米国特許出願公開第60/686,585号明細書;米国特許出願公開第60/698,867号明細書;および米国特許出願公開第60/704,679号明細書に見出され、これらの文献の内容は、本明細書に参照によって援用される。
【0422】
糖尿病を処置するために有用な第2の成分の例としては、(a)インスリン増感剤(例えば、(i)グリタゾン(glitazone)などのPPAR−γアゴニスト(例えば、トログリタゾン(troglitazone)、ピオグリタゾン(pioglitazone)、エングリタゾン(englitazone)、MCC−555、ロシグリタゾン(rosiglitazone)など)、並びに、国際公開第97/27857号パンフレット、国際公開第97/28115号パンフレット、国際公開第97/28137号パンフレットおよび国際公開第97/27847号パンフレットに開示されている化合物;(ii)ビグアニド(例えば、メトホルミンおよびフェンホルミンなど));(b)インスリンまたはインスリン類似体(insulin mimetics);(c)スルホニル尿素(例えば、トルブタミドおよびグリピジド(glopizide)、または関連物質);(d)α−グルコシダーゼ阻害剤(例えば、アカルボース(acarbose));(e)コレステロール低下薬(例えば、(i)HMG−CoAレダクターゼ阻害剤(ロバスタチン、シムバスタチン、プラバスタチン、フルバスタチン、アトバスタチン、リバスタチン、および、他のスタチンなど)、(ii)金属イオン封鎖剤(例えば、コレスチラミン、コレスチポール、および、架橋されたデキストランのジアルキルアミノアルキル誘導体など)、(iii)ニコチニルアルコール、ニコチン酸またはこれらの塩、(iv)PPAR−αアゴニスト(例えば、ゲムフィブロジル(gemfibrozil)、クロフィブレート、フェノフィブレートおよびビザフィブレートなどのフェノフィブリック酸誘導体など)、(v)コレステロールの吸収阻害剤(例えば、β−シトステロールなど)およびacyl−CoA:コレステロール アシルトランスフェラーゼ阻害剤(例えば、メリナミドなど)、および(Vi)プロブコール);(f)PPAR−α/γアゴニスト;(g)抗肥満化合物(上述したもの);(h)回腸胆汁酸トランスポーター阻害剤;および(i)インスリン受容体の活性化剤が挙げられる。
【0423】
水溶性ポリマーは、任意の構造的な形態(直鎖、分岐鎖または分枝鎖が挙げられるが、これらに限定されない)であり得る。水溶性ポリマーは、典型的にポリ(エチレングリコール)(PEG)といったポリ(アルキレングリコール)であるが、他の水溶性ポリマーもまた採用され得る。ほんの一例として、PEGは、本発明のある特定の実施形態を説明するために使用される。
【0424】
PEGは、市販されているか、または当業者に公知の方法(Sandler and Karo, Polymer Synthesis, Academic Press, New York, Vol. 3, pages 138-161)にしたがって、エチレングリコールの開環重合によって調製され得る、よく知られている水溶性ポリマーである。“PEG”という用語は、PEGの大きさまたは末端における修飾に関係なく、任意のポリエチレングリコール分子を包含するために広く使用され、かつ4HBポリペプチドに対して連結されるときに、式:
XO−(CH
2CH
2O)
n−CH
2CH
2−Y
(ここで、nは2から10000であり、Xは、Hまたは末端修飾(C
1−4アルキルが挙げられるが、これらに限定されない)である)
によって表され得る。
【0425】
いくつかの場合において、本発明において使用されるPEGは、ヒドロキシまたはメトキシを有している末端が終端になる(すなわち、XはHかCH
3である(“メトキシPEG”))。代替可能に、PEGは、これによって二官能性ポリマーを形成する反応性基が終端になる。典型的な反応性基は、一般的に見られる20のアミノ酸における官能基と反応するために通常に使用されるこれらの反応性基(マレイミド基、活性化カルボン酸塩(p−ニトロフェニルエステルが挙げられるが、これらに限定されない)、活性化エステル(N−ヒドロキシスクシニミド、p−ニトロフェニルエステルが挙げられるが、これらに限定されない)、およびアルデヒドが挙げられるが、これらに限定されない)だけでなく、一般的な20のアミノ酸に対して不活性であるが、天然にコードされていないアミノ酸に存在する補完的な官能基と特に反応する官能基(アジド基、アルキン基が挙げられるが、これに限定されない)を含むことができる。ここで留意すべきは、上記式においてYによって示されているPEGの他の末端が、天然に存在するアミノ酸または天然にコードされていないアミノ酸を介してレプチンポリペプチドに対して直接的または間接的に連結していることである。実際に、Yは、ポリペプチドのアミン基(リジンまたはN末端のイプシロンアミンが挙げられるが、これらに限定されない)に対する、アミド結合、カルバメート結合または尿素結合であり得る。代替可能に、Yは、チオール基(システインのチオール基が挙げられるが、これに限定されない)に対するマレイミド結合であり得る。代替可能に、Yは、一般的な20のアミノ酸を介して通常には接近できない残基に対する結合であり得る。例えば、PEGにおけるアジド基は、レプチンポリペプチドのけるアルキン基と反応して、ヒュイゲン[3+2]環付加産物を形成し得る。代替可能に、PEGにおけるアルキン基は、天然にコードされていないアミノ酸に存在するアジド基と反応して、同様の産物を形成し得る。いくつかの実施形態において、強い求核基(ヒドラジン、ヒドラジド、ヒドロキシアミン、セミカルバジドが挙げられるが、これらに限定されない)は、天然にコードされていないアミノ酸に存在するアルデヒド基またはケトン基と反応して、必要に応じていくつかの場合において適切な還元剤を用いた処理によってさらに還元されるヒドラゾン、オキシムまたはセミカルバゾンを形成し得る。代替可能に、強い求核基は、天然にコードされていないアミノ酸を介してレプチンポリペプチドに組み込まれ得、水溶性ポリマーに存在するケトン基またはアルデヒド基と好適に反応するために使用され得る。
【0426】
PEGに関する任意の分子量が、実際に所望されるように、約100ダルトン(Da)から100000Daまたは必要に応じてそれ以上(0.1〜50kDaまたは10〜40kDaが挙げられるが、これらに限定されない)まで(これらが挙げられるが、限定されない)使用され得る。また、分枝鎖のPEG(1〜100kDa(1〜50kDaまたは5〜20kDaが挙げられるが、これらに限定されない)の範囲の分子量を有する鎖のそれぞれを有しているPEG分子が挙げられるが、これに限定されない)が、使用され得る。広範なPEGが、参照によって本明細書に援用される、Shearwater Polymers, Inc. catalog, Nektar Therapeutics catalog(これが挙げられるが、限定されない)に記載されている。
【0427】
一般的に、PEGの少なくとも1つの末端は、天然にコードされていないアミノ酸との反応に利用可能である。例えば、アミノ酸側鎖との反応のためのアルキン部分およびアジド部分は、本明細書に記載されるような天然にコードされていないアミノ酸に対してPEGを連結させるために使用され得る。天然にコードされていないアミノ酸がアジドを含んでいる場合に、そのときPEGは、ヒュイゲン[3+2]環付加産物の形成をもたらすためのアルキン部分、またはアミド結合の形成をもたらすための活性化PEG種(すなわち、エステル、カルボン酸塩)のいずれかを典型的に含んでいる。代替可能に、天然にコードされていないアミノ酸がアルキンを含んでいる場合に、そのときPEGは、[3+2]ヒュイゲン環付加産物の形成をもたらすためのアジド部分を典型的に含んでいる。天然にコードされていないアミノ酸がカルボニル基を含んでいる場合に、PEGは、対応するヒドラゾン、ヒドロキシアミン、またはセミカルバゾン結合のそれぞれをもたらすために、強力な求核基(ヒドラジド、ヒドラジン、ヒドロキシアミン、またはセミカルバジド基能性基が挙げられるが、これらに限定されない)を典型的に含んでいる。他の代替物において、上記において説明される反応性基の逆の方向性が使用され得る(すなわち、天然にコードされていないアミノ酸におけるアジド基が、アルキンを含有するPEG誘導体と反応され得る)。
【0428】
いくつかの実施形態において、PEG誘導体を有するレプチンポリペプチドバリアントは、天然にコードされていないアミノ酸の側鎖に存在する化学的な官能性基と反応性である化学的な官能性基を含んでいる。
【0429】
本発明は、いくつかの実施形態において、約800Daから約100000Daまでの平均分子量を有する水溶性ポリマー骨格を含んでいる、アジド含有ポリマーおよびアセチレン含有ポリマーを提供する。水溶性ポリマーのポリマー骨格は、ポリ(エチレングリコール)であり得る。しかし、広範な水溶性ポリマー(ポリ(エチレン)グリコールおよび他の関連するポリマー(ポリ(デキストラン)およびポリ(プロピレングリコール))が挙げられるが、これらに限定されない)がまた、本発明の実践における使用に好適であること、PEGまたはポリ(エチレングリコール)という用語が、そのような分子のすべてを包含し、含むことを意図されることは、理解されるべきである。PEGという用語としては、その形態のいずれか(二官能性のPEG、多腕のPEG、誘導体化PEG、分岐状のPEG、分枝状のPEG、ぶら下がりのPEG(すなわち、ポリマー骨格に対してぶら下がっている1つ以上の官能基を有するPEGまたは関連ポリマー)、またはこれらに分解可能な結合を有するPEGが挙げられるが、これらに限定されない)であるポリ(エチレングリコール)が挙げられるが、これに限定されない。
【0430】
PEGは、典型的に、透明であり、無色であり、無臭であり、水溶性であり、熱に安定であり、多くの化学物質に対して不活性であり、加水分解されないかまたは劣化されず、かつ一般的に無毒である。ポリ(エチレングリコール)は、生体適合性である(PEGが、損傷の原因になることなく、生きている組織または生体と共存可能であることを意味する)と見做される。より詳細には、PEGは、実質的に非免疫原性である(PEGが身体に免疫応答を生じさせる傾向を示さないことを意味する)。身体においていくつかの所望の機能を有している分子(例えば、生物学的に活性な分子)に連結される場合に、PEGは、物質をマスクする傾向にあり、生体が物質の存在に寛容であり得るように任意の免疫応答を低減可能か、または排除できる。PEG抱合物は、実質的な免疫応答を生じないか、または凝固もしくは他の好ましくない影響の原因にならない傾向を示す。式−CH
2CH
2O−(CH
2CH
2O)
n−CH
2CH
2−(ここでnは約3から4000、典型的に約20から約2000である)を有するPEGは、本発明における使用に好適である。約800Daから約100000Daまでの分子量を有しているPEGは、本発明のいくつかの実施形態において、ポリマー骨格として特に有用である。
【0431】
ポリマー骨格は、直鎖状または分枝状であり得る。分枝状のポリマー骨格は、一般的に当該技術において公知である。典型的に、分枝状のポリマーは、中心の分枝核部分および中心の分枝核に連結された複数の直鎖状のポリマー鎖を有する。PEGは、種々のポリオール(例えば、グリセロール、グリセロールオリゴマー、ペンタエリスリトールおよびソルビトール)に対するエチレンオキシドの付加によって調製され得る、分枝状の形態において通常に使用される。また、中心の分枝核部分は、リジンといった種々のアミノ酸から誘導体化され得る。分枝状のポリ(エチレングリコール)は、R(−PEG−OH)
m(Rは、グリセロール、グリセロールオリゴマー、またはペンタエリスリトールといった核部分から誘導体化され、mは腕の数を表す)として通常の形態において表され得る。また、多腕のPEG分子(例えば、参照によってその全体が本明細書に援用される、米国特許第5,932,462号明細書;米国特許第5,643,575号明細書;米国特許第5,229,490号明細書;米国特許第4,289,872号明細書;米国特許出願公開第2003/0143596号明細書;国際公開第96/21469号パンフレット;および国際公開第93/21259号パンフレットに記載されるようなそれら)は、ポリマー骨格として使用され得る。
【0432】
また、分枝状のPEGは、PEG(−YCHZ
2)
n(ここで、Yは結合基であり、Zは所定の長さの原子の鎖によってCHに対して連結される活性化末端基である)によって表される分岐状のPEGの形態であり得る。
【0433】
まださらなる分枝状の形態、ぶら下がりのPEGは、PEG鎖の末端ではなくPEG骨格に沿ってある、カルボキシルといった反応性基を有している。
【0434】
またPEGのこれらの形態に加えて、ポリマーは、骨格において弱い結合または分解可能な結合を有して、調製され得る。例えば、PEGは、ポリマー骨格に加水分解を受けやすいエステル結合を有して調製され得る。以下に示すように:
−PEG−CO
2−PEG−+H
2O → PEG−CO
2H+HO−PEG−
この加水分解は、ポリマーのより低い分子量の断片への切断を結果として生じる。ポリ(エチレングリコール)またはPEGという用語が、当該技術において公知の形態のすべて(本明細書に開示されるそれらが挙げられるが、これらに限定されない)を表すか、または含むことは、当業者によって理解される。
【0435】
また、他のポリマーは、本発明における使用にとって好適である。いくつかの実施形態において、水溶性ポリマーであり、2から約300の末端を有するポリマー骨格は、本発明において特に有用である。好適なポリマーの例としては、ポリ(プロピレングリコール)(“PPG”)、これらの共ポリマー(エチレングリコールおよびプロピレングリコールの共ポリマーが挙げられるが、これに限定されない)、これらの三元ポリマー、およびこれらの混合物などといった、他のポリ(アルキレングリコール)が挙げられるが、これらに限定されない。ポリマー骨格のそれぞれの鎖の分子量は、変更可能であるが、典型的に約800Daから約100000Daまで、しばしば約6000Daから約80000Daまでの範囲である。
【0436】
当業者は、水溶性ポリマーに関して上記に挙げたものが、決して網羅的なものではなく、単に例示であること、および上述のような品質を有するポリマー材料のすべてが、本発明における使用に好適であると考えらえることを認識する。
【0437】
本発明のいくつかの実施形態において、ポリマー誘導体は、ポリマー骨格が、官能基を用いて官能性化されたか、または活性化された少なくとも2つの末端、おそらく約300もの末端を有することを意味する、“多官能性”である。多官能性ポリマー誘導体としては、2つの末端(末端のそれぞれが、同じであり得るか、または異なり得る官能基に対して結合されている)を有する直鎖状のポリマーが挙げられるが、これに限定されない。
【0438】
1つの実施形態において、ポリマー誘導体は、構造:
X−A−POLY−B−N=N=N
(ここで、
N=N=Nはアジド部分であり;
Bは、存在し得るか、または存在しない場合があり得る連結部分であり;
POLYは、水溶性の非抗原性のポリマーであり;
Aは、存在し得るか、または存在し得ず、Bと同じであり得るか、または異なり得る連結部分であり;
Xは第2の官能基である)
を有している。
AおよびBに関する連結部分の例は、18まで含有する多重官能性化アルキル基を含んでおり、1−10の間の炭素原子を含有し得るが、これらに限定されない。窒素、酸素または硫黄といった異種原子は、アルキル鎖に含まれ得る。また、アルキル鎖は、異種原子において枝分かれし得る。AおよびBに関する結合部分の他の例は、10まで含有する多重官能性化アリール基を含んでおり、5−6の間の炭素原子を含有し得るが、これに限定されない。アリール基は、1つ以上の炭素原子、窒素原子、酸素原子または硫黄原子を用いて置換され得る。好適な連結基の他の例としては、参照によって本明細書に援用される、米国特許第5,932,462号明細書;米国特許第5,643,575号明細書;および米国特許出願公開第2003/0143596号明細書に記載されているこれらの連結基が挙げられるが、これらに限定されない。当業者は、連結部分に関して上記に挙げたものが、決して網羅的ではなく、かつ単に例示であること、および上述の品質を有する結合部分のすべてが、本発明における使用に好適であると考えらえることを認識する。
【0439】
Xとしての使用に好適な官能基の例としては、ヒドロキシル、保護されたヒドロキシル、アルコキシル、活性化エステル(例えば、N−ヒドロキシスクシニミジルエステルおよび1−ベンゾトリアゾリルエステル)、活性化カルボネート(例えば、N−ヒドロキシスクシニミジルカルボネートおよび1−ベンゾトリアゾリルカルボネート)、アセタール、アルデヒド、アルデヒド水和物、アルケニル、アクリレート、メタクリレート、アクリルアミド、活性化スルホン、アミン、アミノオキシ、保護されたアミン、ヒドラジド、保護されたヒドラジド、保護されたチオール、カルボキシル酸、保護されたカルボキシル酸、イソシアネート、イソチオシアネート、マレイミド、ビニルスルホン、ジチオピリジン、ビニルピリジン、ヨードアセトアミド、エポキシド、グリオキサール、ジオン、メシレート、トシレート、トレシレート、アルケン、ケトンおよびアジドなどが挙げられるが、これらに限定されない。当業者によって理解されるように、選択されるX部分は、アジド基との反応が生じないように、アジド基とコンパティブル(compatible)であるべきである。アジド含有ポリマー誘導体は、第2の官能基(すなわち、X)がまた、アジド部分であることを意味する同種の二官能性であり得るか、または第2の官能基が異なる官能基であることを意味する異種二官能性であり得る。
【0440】
“保護された”という用語は、特定の反応条件下における化学的に反応性の官能基の反応を妨げる保護基または保護部分の存在を指す。保護基は、保護される化学的に反応性の基の種類に依存して変わる。例えば、化学的に反応性の基がアミンまたはヒドラジドである場合に、保護基は、tert−ブチルオキシカルボニル(t−Boc)および9−フルオレニルメトキシカルボニル(Fmoc)の群から選択され得る。化学的に反応性の基がチオールである場合に、保護基は、オルトピリジルジスルフィドであり得る。化学的に反応性の基がカルボキシル酸(例えば、ブタン酸またはプロピオン酸)またはヒドロキシル基である場合に、保護基は、ベンジル基またはメチル、エチルもしくはtert−ブチルといったアルキル基であり得る。また、当該技術において公知の他の保護基は、本発明に使用され得る。
【0441】
文献における特定の末端官能基の例としては、N−スクシニミジルカルボネート(例えば、米国特許第5,281,698号明細書、米国特許第5,468,478号明細書を参照すればよい)、アミン(例えば、Buckmann et al. Makromol. Chem. 182:1379 (1981), Zalipsky et al. Eur. Polym. J. 19:1177 (1983)を参照すればよい)、ヒドラジド(例えば、Andresz et al. Makromol. Chem. 179:301 (1978) を参照すればよい)、スクシニミジルプロピオネートおよびスクシニミジルブタノエート(例えば、Olson et al. in Poly(ethylene glycol) Chemistry & Biological Applications, pp 170-181, Harris & Zalipsky Eds., ACS, Washington, D.C., 1997を参照すればよく;また、米国特許第5,672,662号明細書を参照すればよい)、スクシニミジルスクシネート(例えば、Abuchowski et al. Cancer Biochem. Biophys. 7:175 (1984)およびJoppich et al. Makromol. Chem. 180:1381 (1979)を参照すればよい)、スクシニミジルエステル(例えば、米国特許第4,670,417号明細書を参照すればよい)、ベンゾトリアゾールカルボネート(例えば、米国特許第5,650,234号明細書を参照すればよい)、グリシジルエステル(例えば、Pitha et al. Eur. J Biochem. 94:11 (1979)、Elling et al., Biotech. Appl. Biochem. 13:354 (1991)を参照すればよい)、オキシカルボニルイミダゾール(例えば、Beauchamp, et al., Anal. Biochem. 131:25 (1983), Tondelli et al. J. Controlled Release 1:251 (1985) を参照すればよい)、p−ニトロフェニルカルボネート(例えば、Veronese, et al., Appl. Biochem. Biotech., 11: 141 (1985);およびSartore et al., Appl. Biochem. Biotech., 27:45 (1991)を参照すればよい)、アルデヒド(例えば、Harris et al. J. Polym. Sci. Chem. Ed. 22:341 (1984) 、米国特許第5,824,784号明細書、米国特許第5,252,714号明細書を参照すればよい)、マレイミド(例えば、Goodson et al. Bio/Technology 8:343 (1990) 、Romani et al. in Chemistry of Peptides and Proteins 2:29 (1984) を参照すればよい)、オルトピリジル−ジスルフィド(例えば、Woghiren, et al. Bioconj. Chem. 4:314(1993) を参照すればよい)、アクリロール(例えば、Sawhney et al., Macromolecules, 26:581 (1993) を参照すればよい)、ビニルスルホン(例えば、米国特許第5,900,461号明細書を参照すればよい)が挙げられるが、これらに限定されない。上述の参考文献および特許文献のすべては、参照によって本明細書に援用される。
【0442】
本発明のある特定の実施形態において、本発明のポリマー誘導体は、構造:
X−CH
2CH
2O−(CH
2CH
2O)
n−CH
2CH
2−N=N=N
(ここで、
Xは、上述のような官能基であり;かつ
nは、約20から約4000までである)
を有しているポリマー骨格を含んでいる。
他の実施形態において、本発明のポリマー誘導体は、構造:
X−CH
2CH
2O−(CH
2CH
2O)
n−CH
2CH
2−O−(CH
2)
m−W−N=N=N
(ここで、
Wは、1−10の炭素原子を備える脂肪族または芳香族の連結部分であり;
nは、約20から約4000までであり;
Xは、上述のような官能基である)
を有しているポリマー骨格を含んでいる。mは、1から10である。
【0443】
本発明のアジド含有PEG誘導体は、当該技術において公知の種々の方法および/または本明細書に開示されている種々の方法によって調製され得る。以下に示されている1つの方法において、約800Daから約100000Daまでの平均分子量を有している水溶性ポリマー骨格であり、第1の官能基に対して結合される第1の末端および好適な脱離基に対して結合される第2の末端を有するポリマー骨格は、アジドアニオン(好適な対イオン(ナトリウム、カリウム、およびtertブチルアンモニウムなどが挙げられる)と一対にされ得る)と反応させられる。脱離基は、求核置換を受け、かつアジド部分によって置換され、所望のアジド含有PEGポリマーを生じる。
【0444】
X−PEG−L+N
3− → X−PEG−N
3
に示されているように、本発明における使用に好適なポリマー骨格は、式X−PEG−L(ここで、PEGはポリ(エチレングリコール)であり、Xはアジド基と反応しない官能基であり、Lは好適な脱離基である)を有している。好適な官能基の例としては、ヒドロキシル、保護されたヒドロキシル、アセタール、アルケニル、アミン、アミノオキシ、保護されたアミン、保護されたヒドラジド、保護されたチオール、カルボキシル酸、保護されたカルボキシル酸、マレイミド、ジチオピリジン、およびビニルピリジン、およびケトンが挙げられるが、これらに限定されない。好適な脱離基の例としては、塩化物、臭化物、ヨウ化物、メシレート、トレシレート、およびトシレートが挙げられるが、これらに限定されない。
【0445】
本発明のアジド含有ポリマー誘導体を調製する他の方法において、アジド官能性基を有する結合剤は、約800Daから約100000Daまでの平均分子量を有している水溶性ポリマー骨格と接触させられ、ここで、上記結合剤は、PEGポリマーにおける化学的な官能性基と選択的に反応してアジド含有ポリマー誘導体産物を形成する化学的な官能性基を有しており、ここで、アジドは、結合剤よってポリマー骨格から離されている。
【0446】
例示的な反応手順が、以下に示される:
X−PEG−M+N−リンカー−N=N=N → PG−X−PEG−リンカー−N=N=N
(ここで、
PEGは、ポリ(エチレングリコール)であり、Xは、アルコキシまたは上述のような官能基といったキャップ形成基であり;
Mは、アジド官能性基と反応しないが、Nの官能基と効率的かつ選択的に反応する官能基である)。
【0447】
好適な官能基の例としては、Nがアミンである場合にカルボキシル酸、カルボネートまたは活性エステルであるM;Nがヒドラジドまたはアミノオキシ部分である場合にケトンであるM;Nが求核基である場合に脱離基であるMが挙げられるが、これらに限定されない。
【0448】
粗製産物の精製は、公知の方法(必要に応じてクロマトグラフィーに続く産物の沈殿が挙げられるが、これに限定されない)によって達成され得る。
【0449】
より詳細な例は、アミンの1つがtert−ブチル−Bocといった保護基部分によって保護され、結果として生じる1保護されたPEGジアミンがアジド官能性基を有する連結部分と反応される、PEGジアミンの場合に関して、以下に示される:
BocHN−PEG−NH
2+HO
2C−(CH
2)
3−N=N=N。
【0450】
この場合には、アミン基は、チオニル塩化物もしくはカルボジイミド試薬、およびN−ヒドロキシスクシニミドもしくはN−ヒドロキシベンゾトリアゾールといった種々の活性剤を用いて、カルボキシル酸基に対して結合されて、モノアミンPEG誘導体とアジド担持連結部分との間にアミド結合を作り出し得る。アミド結合の形成が上手く行った後に、結果として生じるN−tert−ブチル−Boc−保護されたアジドを含んでいる誘導体は、生体活性分子を修飾するために直接に使用され得るか、または他の有用な官能基を組み込むために、さらに合成され得る。例えば、N−t−Boc基は、強酸を用いた処理によって加水分解されて、ω−アミノ−PEG−アジドを生成する。結果として生じるアミンは、合成の手がかりとして使用されて、有益な異種の二官能性試薬にとっての、マレイミド基、活性化ジスルフィド、および活性化エステルなどといった他の有用な官能性基を組み込み得る。
【0451】
異種二官能性誘導体は、ポリマーの末端のそれぞれに対して異なる分子を連結させることが所望される場合に、特に有用である。例えば、ω−N−アミノ−N−アジドPEGは、活性化された求核基(例えば、アルデヒド、ケトン、および活性化カルボネートなど)を有している分子の、PEGの1つの末端に対する連結、およびアセチレン基を有している分子の、PEGの他の末端に対する連結を可能にする。
【0452】
本発明の他の実施形態において、ポリマー誘導体は、構造:
X−A−POLY−B−C≡C−R
(ここで、
Rは、Hもしくはアルキル、アルキレン、アルコキシ、またはアリールもしくは置換アリールであり得;
Bは、存在し得るか、または存在しない場合があり得る連結部分であり;
POLYは、水溶性の非抗原性ポリマーであり;
Aは、存在し得るか、または存在しない場合があり得、かつBと同じであり得るか、または異なり得る連結部分であり;
Xは、第2の官能基である)
を有している。
【0453】
AおよびBに関する連結部分の例は、18まで含有する多機能化アルキル基を含んでおり。1−10の間の炭素原子を含有し得るが、これらに限定されない。窒素、酸素または硫黄といった異種原子は、アルキル鎖と共に含まれ得る。また、アルキル鎖は、異種原子において分岐され得る。AおよびBに関する連結部分の例は、10まで含有する多機能化アルキル基を含んでおり、5−6の間の炭素原子を含有し得るが、これらに限定されない。アリール基は、1つ以上の炭素原子、窒素原子、酸素原子、または硫黄原子を用いて置換され得る。好適な連結基の他の例としては、参照によって本明細書に援用される、米国特許第5,932,462号明細書および米国特許第5,643,575号明細書および米国特許出願公開第2003/0143596号明細書に記載されているそれらが挙げられる。当業者は、連結部分に関して上記に挙げたものが、決して網羅的なものではなく、かつ単に例示であること、および上述のような品質を有する連結部材料のすべてが、本発明における使用に好適であると考えらえることを認識する。
【0454】
Xとしての利用に好適な官能基の例としては、ヒドロキシル、保護されたヒドロキシル、アルコキシル、活性化エステル(例えば、N−ヒドロキシスクシニミジルエステルおよび1−ベンゾトリアゾリルエステル)、活性なカルボネート(例えば、N−ヒドロキシスクシニミジルカルボネートおよび1−ベンゾトリアゾリルカルボネート)、アセタール、アルデヒド、アルデヒド水和物、アルケニル、アクリレート、メタクリレート、アクリルアミド、活性化スルホン、アミン、アミノオキシ、保護されたアミン、ヒドラジド、保護されたヒドラジド、保護されたチオール、カルボキシル酸、保護されたカルボキシル酸、イソシアネート、イソチオシアネート、マレイミド、ビニルスルホン、ジチオピリジン、ビニルピリジン、ヨードアセトアミド、エポキシド、グリオキサール、ジオン、メシレート、トシレート、およびトレシレート、アルケン、ケトン、およびアセチレンが挙げられる。理解されるように、選択されるX部分は、アセチレン基との反応が生じないように、アセチレン基とコンパティブルであるべきである。アセチレン含有ポリマー誘導体は、第2の官能基(すなわち、X)がまた、アセチレン部分であることを意味する同種の二官能性であり得るか、または第2の官能基が異なる官能基であることを意味する異種の二官能性であり得る。
【0455】
本発明の他の実施形態において、ポリマー誘導体は、構造:
X−CH
2CH
2O−(CH
2CH
2O)
n−CH
2CH
2−O−(CH
2)
m−C≡CH
(ここで、
Xは、上述のような官能基であり;
nは、約20から約4000であり;
mは、1から10の間である)
を有しているポリマー骨格を含んでいる。異種二官能性PEGポリマーのそれぞれの詳細な例が以下に示される。
【0456】
本発明のアセチレン含有PEG誘導体は、当業者に公知の方法および/または本明細書に開示されている方法を用いて調製され得る。1つの方法において、約800Daから約100000Daまでの平均分子量を有している水溶性ポリマー骨格であり、第1の官能基に対して結合される第1の末端および好適な求核基に対して結合される第2の末端を有するポリマー骨格は、PEGにおける求核基との反応に好適であるアセチレン基および脱離基の両方を有している化合物と反応される。求核部分を有するPEGポリマーおよび脱離基を有する分子が組み合せられると、脱離基は、求核置換を受け、かつ求核部分によって置換され、所望のアセチレン含有ポリマーを生じる。
【0457】
X−PEG−Nu+L−A−C → X−PEG−Nu−A−C≡CR’
に示されるように、反応における使用に好ましいポリマー骨格は、式X−PEG−Nu(ここで、PEGはポリ(エチレングリコール)であり、Nuは求核部分であり、かつXはNu、Lまたはアセチレン官能性基と反応しない官能基である)を有している。
【0458】
Nuの例としては、SN2−型機序を介して主に反応する、アミン、アルコキシ、アリールオキシ、スルフィドリル、イミノ、カルボキシレート、ヒドラジド、アミノオキシ基が挙げられるが、これらに限定されない。Nuの付加的な例としては、求核付加反応を介して主に反応する、これらの官能基が挙げられる。L基の例としては、塩化物、臭化物、ヨウ化物、メシレート、トレシレート、およびトシレートおよび求核置換を受けると予想される他の基、これらと同様にケトン、アルデヒド、チオエステル、オレフィン、アルファ−ベータ不飽和カルボニル基、カルボネートおよび求核基によって付加を受けると予想される他の求核性基が挙げられる。
【0459】
本発明の他の実施形態において、Aは、1〜10の間の炭素原子の脂肪酸リンカー、または6〜14の間の炭素原子の置換アリール環である。Xはアジド基と反応しない官能基であり、Lは好適な脱離基である。
【0460】
本発明のアセチレン含有ポリマー誘導体を調製する他の方法において、約800Daから約100000Daまでの平均分子量を有し、1つの末端に保護された官能基もしくはキャップ形成剤のいずれかを有しており、もう一方の末端に好適な脱離基を有するPEGポリマーは、アセチレンアニオンによって接触される。
【0461】
例示的な反応手順は、以下に示される:
X−PEG−L+−C≡CR’ → X−PEG−C≡CR’
(ここで、
PEGはポリ(エチレングリコール)であり、Xはキャップ形成基(例えば、アルコキシまたは上述のような官能基)であり;
R’はH、アルキル、アルコキシ、アリールもしくはアリールオキシ基、または置換アルキル、置換アルコキシル、置換アリールもしくは置換アリールオキシ基のいずれかである)。
【0462】
上述の例において、脱離基Lは、十分な濃度のアセチレンアニオンと接触される場合に、SN2−型置換を受けるために十分に反応性でなければならない。アセチレンアニオンによる脱離基のSN2置換の達成に要求される反応条件は、当業者に公知である。
【0463】
粗製産物の精製は、当該分野に公知の方法(必要に応じて、クロマトグラフィーに続く沈殿が挙げられる)によって通常に達成され得るが、これに限定されない。
【0464】
水溶性ポリマーは、本発明のレプチンポリペプチドに対して連結され得る。水溶性ポリマーは、(1)天然にコードされていないアミノ酸もしくは天然にコードされるアミノ酸の任意の官能基もしくは置換基、またはレプチンポリペプチドに組み込まれている天然にコードされていないアミノ酸、または(2)天然にコードされるアミノ酸に付加された任意の官能基もしくは置換基を介して連結され得る。代替可能に、水溶性ポリマーは、天然に存在するアミノ酸(システイン、リジンまたはN末端残基のアミノ酸が挙げられるが、これらに限定されない)を介して、天然にコードされていないアミノ酸を組み込んでいるレプチンポリペプチドに連結され得る。いくつかの場合において、本発明のレプチンポリペプチドは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10の非天然アミノ酸を含んでおり、ここで、天然にコードされていないアミノ酸の1つ以上は、(複数の)水溶性ポリマー(PEGおよび/またはオリゴ糖が挙げられるが、これらに限定されない)に連結される。いくつかの場合において、本発明のレプチンポリペプチドは、水溶性ポリマーに連結された1、2、3、4、5、6、7、8、9、10またはそれ以上の天然にコードされていないアミノ酸をさらに含んでいる。いくつかの場合において、本発明のレプチンポリペプチドは、水溶性ポリマーに連結された天然にコードされていないアミノ酸の1つ以上、および水溶性ポリマーに連結された天然に存在するアミノ酸の1つ以上を含んでいる。いくつかの場合において、本発明に使用される水溶性ポリマーは、その非抱合形態と比べて、レプチンポリペプチドの半減期を延長させる。
【0465】
本発明のレプチンポリペプチドに対して連結される水溶性ポリマーの数(すなわち、PEG付加または糖鎖付加の程度)は、変更された(増強されたか、または低減されたが挙げられるが、これらに限定されない)薬理的特性、薬物動態的特性、または薬力学特性(例えば、インビボにおける半減期)を与えるために調節され得る。いくつかの実施形態において、4HBの半減期は、少なくとも約10、20、30、40、50、60、70、80、90パーセント、2倍、5倍、10倍、50倍、または少なくとも約100倍に、非修飾のポリペプチドを超えて延長される。
【0466】
(強い求核基(すなわち、ヒドラジド、ヒドラジン、ヒドロキシルアミンまたはセミカルバジド)を含んでいるPEG誘導体)
本発明の1つの実施形態において、カルボニルを含有する天然にコードされていないアミノ酸を含んでいるレプチンポリペプチドは、PEG骨格に対して直接に連結されている末端のヒドラジン、ヒドロキシアミン、ヒドラジドまたはセミカルバジド部分を含んでいるPEG誘導体を用いて修飾されている。
【0467】
いくつかの実施形態において、ヒドロキシルアミン末端PEG誘導体は、構造:
RO−(CH
2CH
2O)
n−O−(CH
2)
m−O−NH
2
(ここで、Rは単純なアルキル(メチル、エチル、プロピルなど)であり、mは2〜10であり、nは、100〜1000である(すなわち、平均分子量は5−40kDaの間である))
を有している。
【0468】
いくつかの実施形態において、ヒドラジン含有PEG誘導体またはヒドラジド含有PEG誘導体は、構造:
RO−(CH
2CH
2O)
n−O−(CH
2)
m−X−NH−NH
2
(ここで、Rは単純なアルキル(メチル、エチル、プロピルなど)であり、mは2〜10であり、nは100〜1000であり、Xは任意に、存在し得るか、または存在しない場合があり得るカルボニル基(C=O)である)
を有している。
【0469】
いくつかの実施形態において、セミカルバジド含有PEG誘導体は、構造:
RO−(CH
2CH
2O)
n−O−(CH
2)
m−NH−C(O)−NH−NH
2
(ここで、Rは、単純なアルキル(メチル、エチル、プロピルなど)であり、mは2〜10であり、nは100〜1000である)
を有している。
【0470】
本発明の他の実施形態において、カルボニル含有アミノ酸を含んでいるレプチンポリペプチドは、アミド結合を用いてPEG骨格に連結されている末端のヒドロキシアミン、ヒドラジド、ヒドラジン、またはセミカルバジド部分を含んでいるPEG誘導体を用いて修飾されている。
【0471】
いくつかの実施形態において、ヒドロキシアミン末端PEG誘導体は、構造:
RO−(CH
2CH
2O)
n−O−(CH
2)
2−NH−C(O)(CH
2)
m−O−NH
2
(ここで、Rは単純なアルキル(メチル、エチル、プロピルなど)であり、mは2〜10であり、nは100〜1000である(すなわち、平均分子量は5−40kDaの間である))
を有している。
【0472】
いくつかの実施形態において、ヒドラジン含有PEG誘導体またはヒドラジド含有PEG誘導体は、構造:
RO−(CH
2CH
2O)
n−O−(CH
2)
2−NH−C(O)(CH
2)
m−X−NH−NH
2
(ここで、Rは単純なアルキル(メチル、エチル、プロピルなど)であり、mは2〜10であり、nは100〜1000であり、かつXは任意に、存在し得るかまたは存在しない場合があり得るカルボニル基(C=O)である)
を有している。
【0473】
いくつかの実施形態において、セミカルバジド含有PEG誘導体は、構造:
RO−(CH
2CH
2O)
n−O−(CH
2)
2−NH−C(O)(CH
2)
m−NH−C(O)−NH−NH
2
(ここで、Rは単純なアルキル(メチル、エチル、プロピルなど)であり、mは2〜10であり、nは100〜1000である)
を有している。
【0474】
本発明の他の実施形態において、カルボニル含有アミノ酸を含んでいるレプチンポリペプチドは、末端のヒドラジン、ヒドロキシアミン、ヒドラジドまたはセミカルバジド部分を含んでいる分枝状のPEG(10〜40kDa(より好ましくは、5〜20kDaである)の範囲にある分子量を有する分枝状のPEGのそれぞれの鎖を伴う)を用いて修飾されている。
【0475】
本発明の他の実施形態において、天然にコードされていないアミノ酸を含んでいるレプチンポリペプチドは、分枝状構造を有しているPEG誘導体を用いて修飾されている。例えば、いくつかの実施形態において、ヒドラジン末端PEG誘導体またはヒドラジド末端PEG誘導体は、以下の構造:
[RO−(CH
2CH
2O)
n−O−(CH
2)
2−NH−C(O)]
2CH(CH
2)
m−X−NH−NH
2
(ここで、Rは単純なアルキル(メチル、エチル、プロピルなど)であり、mは2〜10であり、nは100〜1000であり、Xは任意に、存在し得るか、または存在しない場合があり得るカルボニル基(C=O)である)
を有している。
【0476】
いくつかの実施形態において、セミカルバジド基を含有するPEG誘導体は、構造:
[RO−(CH
2CH
2O)
n−O−(CH
2)
2−C(O)−NH−CH
2−CH
2]
2CH−X−(CH
2)
m−NH−C(O)−NH−NH
2
(ここで、Rは単純なアルキル(メチル、エチル、プロピルなど)であり、Xは任意にNH、O、S、C(O)であるか、または存在せず、mは2〜10であり、nは100〜1000である)
を有している。
【0477】
いくつかの実施形態において、ヒドロキシアミン基を含有するPEG誘導体は、構造:[RO−(CH
2CH
2O)
n−O−(CH
2)
2−C(O)−NH−CH
2−CH
2]
2CH−X−(CH
2)
m−O−NH
2
(ここで、Rは単純なアルキル(メチル、エチル、プロピルなど)であり、Xは任意にNH、O、S、C(O)であるか、または存在せず、mは2〜10であり、nは100〜1000である)
を有している。
【0478】
水溶性ポリマーがレプチンポリペプチドに対して連結される程度および部位は、サイトIにおける、レプチンポリペプチド受容体に対するレプチンポリペプチドの結合を調節し得る。いくつかの実施形態において、連結は、レプチンポリペプチドが、レプチンポリペプチド受容体を、平衡化結合アッセイ(例えば、hGHについてSpencer et al., J. Biol. Chem., 263:7862-7867 (1988) に記載の通りである)によって測定されるときに約400nM以下のK
dを有して、150nM以下のK
dを有して、そしていくつかの場合において100nM以下のK
dを有して、結合するように配置される。
【0479】
ポリマーの活性化およびペプチドの抱合に関する、方法および化学反応は、文献に記載され、かつ当該技術において公知である。ポリマーの活性化に通常に使用される方法としては、シアン、臭化物、過ヨウ素酸塩、グルタルアルデヒド、ビエポキシド、エピクロロヒドリン、ジビニルスルホン、カルボジイミド、ハロゲン化スルホニル、トリクロロトリアジンなどを有する官能基の活性化が挙げられるが、これらに限定されない(R. F. Taylor, (1991), PROTEIN IMMOBILISATION. FUNDAMENTAL AND APPLICATIONS, Marcel Dekker, N.Y.; S. S. Wong, (1992), CHEMISTRY OF PROTEIN CONJUGATION AND CROSSLINKING, CRC Press, Boca Raton; G. T. Hermanson et al., (1993), IMMOBILIZED AFFINITY LIGANDTECHNIQUES, Academic Press, N.Y.; Dunn, R.L., et al., Eds. POLYMERIC DRUGS AND DRUG DELIVERY SYSTEMS, ACS Symposium Series Vol. 469, American Chemical Society, Washington, D.C. 1991を参照すればよい)。
【0480】
PEGの官能性化および抱合に関する種々の概説および研究論文が利用可能である。例えば、Harris, Macromol. Chem. Phys. C25: 325-373 (1985); Scouten, Methods in Enzymology 135: 30-65 (1987); Wong et al., Enzyme Microb. Technol. 14: 866-874 (1992); Delgado et al., Critical Reviews in Therapeutic Drug Carrier Systems 9: 249-304 (1992); Zalipsky, Bioconjugate Chem. 6: 150-165 (1995)を参照すればよい。
【0481】
また、ポリマーを活性化する方法は、国際公開第94/17039号パンフレット、米国特許第5,324,844号明細書、国際公開第94/18247号パンフレット、国際公開第94/04193号パンフレット、米国特許第5,219,564号明細書、米国特許第5,122,614号明細書、国際公開第90/13540号パンフレット、米国特許第5,281,698号明細書、および国際公開第93/15189号パンフレットに見出され得、かつ活性化ポリマーと酵素(凝結因子VIII(国際公開第94/15625号パンフレット)、ヘモグロビン(国際公開第94/09027号パンフレット)、酸素運搬タンパク質(米国特許第4,412,989号明細書)、リボヌクレアーゼおよび超酸化物不均化酵素(Veronese at al., App. Biochem. Biotech. 11: 141-52 (1985))が挙げられるが、これらに限定されない)との間における抱合に関して見出され得る。引用された参考文献および特許文献のすべては、参照によって本明細書に援用される。
【0482】
天然にコードされていないアミノ酸(例えば、p−アジド−L−フェニルアラニン)を含んでいるレプチンポリペプチドのPEG付加(すなわち、任意の水溶性ポリマーの付加)は、任意の従来の方法によって実施される。例えば、レプチンポリペプチドは、アルキン末端化mPEG誘導体を用いて修飾される。簡単に言うと、過剰のmPEG(5000)−O−CH
2−C≡CHが、室温において攪拌しながら、p−アジド−L−Phe含有レプチンポリペプチドの水性溶液に対して加えられる。典型的に、水性溶液は、反応が実施されるべきpH(一般的に約pH4〜10)に近いpK
aを有する緩衝液を用いて、緩衝化される。pH7.5におけるPEG付加に好適な緩衝液の例としては、例えば、HEPES、リン酸塩、ホウ酸塩、TRIS−HCl、EPPS、およびTESが挙げられるが、これらに限定されない。pHは、継続的に観察され、必要に応じて調節される。反応は放置されて、典型的に1〜48時間にわたって継続される。
【0483】
反応産物は、続いて疎水性相互作用クロマトグラフィーにかけられて、遊離mPEG(5000)−O−CH
2−C≡CH、ならびにブロックされていないPEGが分子の両方の末端において活性化される場合に形成し、これによってレプチンポリペプチドバリアント分子を架橋し得る、レプチンポリペプチドバリアントの任意の高分子量複合体から、PEG付加レプチンポリペプチドを分離する。疎水性相互作用クロマトグラフィーの条件は、遊離mPEG(5000)−O−CH
2−C≡CHがカラムをとおり抜ける一方において、PEG付加レプチンポリペプチドバリアント複合体が、1つ以上のPEG基に抱合された1つのレプチンポリペプチドバリアント分子を含んでいる所望の形態の後に、溶出するような条件である。好適な条件は、所望の抱合物に対する架橋化複合体の相対的な大きさに依存して変わり、当業者によって容易に決定される。所望の抱合物を含んでいる溶出物は、限外ろ過によって濃縮され、ダイアフィルトレーションによって脱塩化される。
【0484】
必要に応じて、疎水性相互作用クロマトグラフィーから得られたレプチンポリペプチドは、当業者に公知の1つ以上の手法(アフィニティークロマトグラフィー;アニオンまたはカチオン交換クロマトグラフィー(デアエ セファロース(DEAE SEPHAROSE)を用いる、が挙げられるが、これに限定されない);シリカ上におけるクロマトグラフィー;逆相HPLC;ゲルろ過(セファデックス(SEPHADEX) G−75を用いる、が挙げられるが、これらに限定されない);疎水性相互作用クロマトグラフィー;サイズ排除クロマトグラフィー、金属キレートクロマトグラフィー;限外ろ過/ダイアフィルトレーション;エタノール沈殿;硫酸アンモニウム沈殿;等電点電気泳動;置換クロマトグラフィー;電気泳動手法(分離用の等電点電気泳動が挙げられるが、これに限定されない)、差異的可溶性(硫酸アンモニウム沈殿が挙げられるが、これに限定されない)、または抽出が挙げられるが、これらに限定されない)によってさらに精製され得る。見かけの分子量は、球状タンパク質標準との比較によるGPCによって、見積もられ得る(PROTEIN PURIFICATIONMETHODS, A PRACTICAL APPROACH (Harris & Angal, Eds.) IRL Press 1989, 293-306)
。4HB−PEG抱合物は、タンパク質分解(トリプシン切断が挙げられるが、これに限定されない)に続く質量分析によって評価され得る。Pepinsky B., et al., J. Pharmcol. & Exp. Ther. 297(3):1059-66 (2001)。
【0485】
本発明のレプチンポリペプチドのアミノ酸に対して連結された水溶性ポリマーは、制限されることなく、さらに誘導体化され得るか、または置換され得る。
【0486】
(アジド含有PEG誘導体)
本発明の他の実施形態において、レプチンポリペプチドは、天然にコードされていないアミノ酸の側鎖に存在するアルキン部分と反応するアジド部分を含んでいるPEG誘導体を用いて、修飾されている。一般的に、PEG誘導体は、1−100kDaを有しており、いくつかの実施形態において10−40kDaの範囲にある平均分子量を有している。
【0487】
いくつかの実施形態において、アジド末端PEG誘導体は、構造:
RO−(CH
2CH
2O)
n−O−(CH
2)
m−N
3
(ここで、Rは単純なアルキル(メチル、エチル、プロピルなど)であり、mは2〜10であり、nは100〜1000である(すなわち、平均分子量は5〜40kDaの間である))
を有している。
【0488】
他の実施形態において、アジド末端PEG誘導体は、構造:
RO−(CH
2CH
2O)
n−O−(CH
2)
m−NH−C(O)−(CH
2)
p−N
3(ここで、Rは単純なアルキル(メチル、エチル、プロピルなど)であり、mは2〜10であり、pは2〜10であり、nは100〜1000である(すなわち、平均分子量は5〜40kDaの間である))
を有している。
【0489】
本発明の他の実施形態において、アルキン含有アミノ酸を含んでいるレプチンポリペプチドは、末端アジド部分を含んでいる分枝状のPEG誘導体(10〜40kDa(より好ましくは5−20kDaである)の範囲にある分子量を有する分枝状のPEGのそれぞれの鎖を伴う)を用いて修飾されている。例えば、いくつかの実施形態において、アジド末端PEG誘導体は、以下の構造:
[RO−(CH
2CH
2O)
n−O−(CH
2)
2−NH−C(O)]
2CH(CH
2)
m−X−(CH
2)
pN
3
(ここで、Rは単純なアルキル(メチル、エチル、プロピルなど)であり、mは2〜10であり、pは2〜10であり、nは100〜1000であり、かつXは任意に、いずれの場合においても存在し得るか、または存在し得ない、O、N、Sまたはカルボニル基(C=O)である)
を有している。
【0490】
(アルキン含有PEG誘導体)
本発明の他の実施形態において、レプチンポリペプチドは、天然にコードされていないアミノ酸の側鎖に存在しているアジド部分と反応するアルキン部分を含んでいる、PEG誘導体を用いて修飾されている。
【0491】
いくつかの実施形態において、アルキン末端PEG誘導体は、以下の構造:
RO−(CH
2CH
2O)
n−O−(CH
2)
m−C≡CH
(ここで、Rは単純なアルキル(メチル、エチル、プロピルなど)であり、mは2〜10であり、nは100〜1000である(すなわち、平均分子量は5〜40kDaの間である))
を有する。
【0492】
本発明の他の実施形態において、アルキンを含んでいり天然にコードされていないアミノ酸を含んでいるレプチンポリペプチドは、アミド結合を用いてPEGに対して連結される末端のアジドまたは末端のアルキン部分を含んでいるPEG誘導体を用いて、修飾されている。
【0493】
いくつかの実施形態において、アルキン末端PEG誘導体は、以下の構造:
RO−(CH
2CH
2O)
n−O−(CH
2)
m−NH−C(O)−(CH
2)
p−C≡CH
(ここで、Rは単純なアルキル(メチル、エチル、プロピルなど)であり、mは2〜10であり、pは2〜10であり、nは100〜1000である)
を有している。
【0494】
本発明の他の実施形態において、アジド含有アミノ酸を含んでいるレプチンポリペプチドは、末端のアルキン部分を含んでいる分枝状のPEG誘導体(10〜40kDa(より好ましくは5−20kDaである)の範囲にある分子量を有する分枝状のPEGのそれぞれの鎖を伴う)を用いて修飾されている。例えば、いくつかの実施形態において、アルキン末端PEG誘導体は、以下の構造:
[RO−(CH
2CH
2O)
n−O−(CH
2)
2−NH−C(O)]
2CH(CH
2)
m−X−(CH
2)
pC≡CH
(ここで、Rは単純なアルキル(メチル、エチル、プロピルなど)であり、mは2〜10であり、pは2〜10であり、nは100〜1000であり、かつXはO、N、Sまたはカルボニル基(C=O)であるか、または存在しない)
を有している。
【0495】
(ホスフィン含有PEG誘導体)
本発明の他の実施形態において、レプチンポリペプチドは、活性化官能基(エステル、カルボネートが挙げられるが、これらに限定されない)を含有しており、天然にコードされていないアミノ酸の側鎖に存在しているアジド部分と反応するアリールホスフィン基をさらに含んでいるPEG誘導体を用いて、修飾されている。一般的に、PEG誘導体は、1〜100kDa、そしていくつかの実施形態において10〜40kDaの範囲の平均分子量を有する。
【0496】
いくつかの実施形態において、PEG誘導体は、構造:
【0498】
(ここで、nは1〜10であり、XはO、NまたはSであり得るか、または存在しない場合があり得、Phはフェニルであり、かつWは水溶性ポリマーである)
を有している。
【0499】
いくつかの実施形態において、PEG誘導体は、構造:
【0501】
(ここで、Xは、O、NまたはSであるか、または存在せず、Phはフェニルであり、Wは水溶性ポリマーであり、RはH、アルキル、アリール、置換アルキルおよび置換アリール基であり得る)。例示的なR基としては、−CH
2、−C(CH
3)
3、−OR’,−NR’R’’、−SR’、−ハロゲン、−C(O)R’、−CONR’R’’、−S(O)
2R’、−S(O)
2NR’R’’、−CNおよび−NO
2が挙げられるが、これらに限定されない。R’、R’’、R’’’およびR’’’’は互いに独立して、水素、置換もしくは非置換のヘテロアルキル、置換もしくは非置換のアリール(1−3のハロゲンを用いて置換されているアリールが挙げられるが、これらに限定されない)、置換もしくは非置換のアルキル、アルコキシもしくはチオアルコキシ、またはアルキルアリール基を指す。本発明の化合物が1つ以上のR基を含む場合に、例えば、R基のそれぞれは独立して、2つ以上のこれらの基が存在する場合に、R’、R’’、R’’’およびR’’’’のそれぞれであるように選択される。R’およびR’’が同じ窒素原子に連結される場合に、それらは、窒素原子と組み合わさって、5−、6−または7−員環を形成し得る。例えば、−NR’R’’は、これらに限定されないが、1−ピロリジニルおよび4−モルホリニルを包含することを意図している。置換基の上述の議論から、当業者は、“アルキル”という用語が、水素基以外の基(例えば、ハロアルキル(−CF
3および−CH
2CF
3が挙げられるが、これらに限定されない)およびアシル(−C(O)CH
3、−C(O)CF
3、および−C(O)CH
2OCH
3などが挙げられるが、これらに限定されない))に結合される炭素原子を含めた基を包含することを意図している。
【0502】
(他のPEG誘導体および一般的なPEG付加技術)
レプチンポリペプチドに連結され得る他の例示的なPEG分子だけでなく、PEG付加方法としては、例えば、参照によって本明細書に援用される、米国特許出願公開第2004/0001838号明細書;米国特許出願公開第2002/0052009号明細書;米国特許出願公開第2003/0162949号明細書;米国特許出願公開第2004/0013637号明細書;米国特許出願公開第2003/0228274号明細書;米国特許出願公開第2003/0220447号明細書;米国特許出願公開第2003/0158333号明細書;米国特許出願公開第2003/0143596号明細書;米国特許出願公開第2003/0114647号明細書;米国特許出願公開第2003/0105275号明細書;米国特許出願公開第2003/0105224号明細書;米国特許出願公開第2003/0023023号明細書;米国特許出願公開第2002/0156047号明細書;米国特許出願公開第2002/0099133号明細書;米国特許出願公開第2002/0086939号明細書;米国特許出願公開第2002/0082345号明細書;米国特許出願公開第2002/0072573号明細書;米国特許出願公開第2002/0052430号明細書;米国特許出願公開第2002/0040076号明細書;米国特許出願公開第2002/0037949号明細書;米国特許出願公開第2002/0002250号明細書;米国特許出願公開第2001/0056171号明細書;米国特許出願公開第2001/0044526号明細書;米国特許出願公開第2001/0027217;米国特許出願公開第2001/0021763号明細書;米国特許第6,646,110号明細書;米国特許第5,824,778号明細書;米国特許第5,476,653号明細書;米国特許第5,219,564号明細書;米国特許第5,629,384号明細書;米国特許第5,736,625号明細書;米国特許第4,902,502号明細書;米国特許第5,281,698号明細書;米国特許第5,122,614号明細書;米国特許第5,473,034号明細書;米国特許第5,516,673号明細書;米国特許第5,382,657号明細書;米国特許第6,552,167号明細書;米国特許第6,610,281号明細書;米国特許第6,515,100号明細書;米国特許第6,461,603号明細書;米国特許第6,436,386号明細書;米国特許第6,214,966号明細書;米国特許第5,990,237号明細書;米国特許第5,900,461号明細書;米国特許第5,739,208号明細書;米国特許第5,672,662号明細書;米国特許第5,446,090号明細書;米国特許第5,808,096号明細書;米国特許第5,612,460号明細書;米国特許第5,324,844号明細書;米国特許第5,252,714号明細書;米国特許第6,420,339号明細書;米国特許第6,201,072号明細書;米国特許第6,451,346号明細書;米国特許第6,306,821号明細書;米国特許第5,559,213号明細書;米国特許第5,612,460号明細書;米国特許第5,747,646号明細書;米国特許第5,834,594号明細書;米国特許第5,849,860号明細書;米国特許第5,980,948号明細書;米国特許第6,004,573号明細書;米国特許第6,129,912号明細書;国際公開第97/32607号パンフレット、欧州特許出願公開第229,108号明細書、欧州特許出願公開第402,378号明細書、国際公開第92/16555号パンフレット、国際公開第94/04193号パンフレット、国際公開第94/14758号パンフレット、国際公開第94/17039号パンフレット、国際公開第94/18247号パンフレット、国際公開第94/28024号パンフレット、国際公開第95/00162号パンフレット、国際公開第95/11924,WO95/13090号パンフレット、国際公開第95/33490号パンフレット、国際公開第96/00080号パンフレット、国際公開第97/18832号パンフレット、国際公開第98/41562号パンフレット、国際公開第98/48837号パンフレット、国際公開第99/32134号パンフレット、国際公開第99/32139号パンフレット、国際公開第99/32140号パンフレット、国際公開第96/40791号パンフレット、国際公開第98/32466号パンフレット、国際公開第95/06058号パンフレット、欧州特許出願公開第439 508号明細書、国際公開第97/03106号パンフレット、国際公開第96/21469号パンフレット、国際公開第95/13312号パンフレット、欧州特許出願公開第921 131号明細書、国際公開第98/05363号パンフレット、欧州特許出願公開第809 996号明細書、国際公開第96/41813号パンフレット、国際公開第96/07670号パンフレット、欧州特許出願公開第605 963号明細書、欧州特許出願公開第510 356号明細書、欧州特許出願公開第400 472号明細書、欧州特許出願公開第183 503号明細書および欧州特許出願公開第154 316号明細書に記載されているそれらが挙げられる。本明細書に記載されているPEG分子のいずれもが、任意の形態(単鎖、分枝状鎖、多腕鎖、単官能性、二官能性、多官能性、またはこれらの組合せが挙げられるが、これらに限定されない)において使用され得る。
【0503】
(血清アルブミンに対する親和性の増強)
また、種々の生物学的に活性な分子が本発明のレプチンポリペプチドと融合されて、生物学的に活性な分子の半減期を調節し得る。いくつかの実施形態において、分子が本発明のレプチンポリペプチドに対して連結されるか、または融合されて、動物における内因性の血清アルブミンに対する親和性を増強し得る。
【0504】
例えば、いくつかの場合において、レプチンポリペプチドおよびアルブミン結合配列の組換え融合体が作製される。例示的なアルブミン結合配列としては、ストレプトコッカスのタンパク質Gから得られるアルブミン結合ドメイン(例えば、Makrides et al., J. Pharmacol. Exp. Ther. 277:534-542 (1996)およびSjolander et al., J, Immunol. Methods 201:115-123 (1997)を参照すればよい)、または例えば、Dennis, et al., J. Biol. Chem. 277:35035-35043 (2002) に記載されているペプチドといったアルブミン結合ペプチドが挙げられるが、これらに限定されない。
【0505】
他の実施形態において、本発明のレプチンポリペプチドは、脂肪酸を用いてアシル化される。いくつかの場合において、脂肪酸は血清アルブミンに対する結合を促進する。例えば、Kurtzhals, et al., Biochem. J. 312:725-731 (1995) を参照すればよい。
【0506】
他の実施形態において、本発明のレプチンポリペプチドは、血清アルブミン(ヒトアルブミンが挙げられるが、これに限定されない)と直接に融合される。例えば、EPOアナログの血清アルブミンの融合について、米国特許第6,548,653号明細書を参照すればよい(なお、当該特許文献は、本明細書に参照によって援用される)。当業者であれば、広範な生物学的に活性な分子がまた、本発明におけるレプチンに対して連結されて、血清アルブミンまたは他の血清成分との結合を調節し得ることを認識する。
【0507】
<X.レプチンポリペプチドのグリコシル化>
本発明は、糖付加残基を有する天然にコードされていないアミノ酸を1つ以上組み込んでいる、レプチンポリペプチドを包含する。糖付加残基は、天然(N−アセチルグルコサミンが挙げられるが、これに限定されない)、または非天然(3−フルオロガラクトースが挙げられるが、これに限定されない)であり得る。糖は、N型もしくはO型の糖鎖結合(N−アセチルガラクトース−L−セリンが挙げられるが、これに限定されない)、または非天然の結合(オキシムまたは対応するC型−またはS型のグリコシドが挙げられるが、これらに限定されない)のいずれかによって、天然にコードされていないアミノ酸に連結され得る。
【0508】
糖(グリコシルが挙げられるが、これに限定されない)部分は、インビボまたはインビトロにおいて、レプチンポリペプチドに付加され得る。本発明のいくつかの実施形態において、カルボニルを含んでいる天然にコードされていないアミノ酸を含んでいるレプチンポリペプチドは、オキシム結合を介して対応する糖鎖付加ポリペプチドを生成するためのアミノオキシ基を有している糖誘導体を用いて修飾される。天然にコードされていないアミノ酸に連結されると、糖は、レプチンポリペプチドに結合されるオリゴ糖を生成するための糖転移酵素および他の酵素を用いた処理によって、さらに合成され得る。例えば、H. Liu, et al. J. Am. Chem. Soc. 125: 1702-1703 (2003) を参照すればよい。
【0509】
本発明のいくつかの実施形態において、カルボニルを含んでいる天然にコードされていないアミノ酸を含んでいるレプチンポリペプチドは、アミノオキシ誘導体として調製される所定の構造を有しているグリカンを用いて、直接に修飾される。当業者は、他の官能性基(アジド、ヒドラジド、ヒドラジン、およびセミカルバジドが挙げられるが、これらに限定されない)が、天然にコードされていないアミノ酸に対する糖の連結に対して使用され得ることを認識する。
【0510】
本発明のいくつかの実施形態において、アジドまたはアルキニルを含んでいる天然にコードされていないアミノ酸を含んでいるレプチンポリペプチドは、それから、アルキニルまたはアジド誘導体のそれぞれ(限定されないが、これら挙げられる)を用いた、ヒュイゲン[3+2]環付加反応によって(限定されないが、これが挙げられる)、修飾される。この方法は、タンパク質が非常に高い選択性を有して修飾されることを可能にする。
【0511】
<XI.レプチンの2量体および多量体>
また、本発明は、レプチンのホモ2量体、ヘテロ2量体、ホモ多量体またはヘテロ多量体(例えば、3量体、4量体など)を提供する。ここで、1つ以上の天然にコードされていないアミノ酸を含んでいる4HBは、レプチン、レプチンのバリアント、またはGHスーパージーンファミリー、非GHスーパージーンファミリーもしくはこれらのバリアントである別のポリペプチドに対して、直接にか、またはリンカーを介して結合されている。モノマーと比べて増大した分子量に起因して、レプチンのダイマーまたはマルチマーの抱合物は、新たなまたは所望の特性を示し得る。当該特性としては、モノマーのレプチンと比べて異なる薬物動態、異なる薬力学、調節された治療半減期、または調節された血清中半減期が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、本発明のレプチンの2量体は、レプチン受容体の二量体化を調節する。他の実施形態において、本発明のレプチンの2量体または多量体は、レプチン受容体のアンタゴニスト、アゴニストまたは調節因子として機能する。
【0512】
いくつかの実施形態において、レプチンを含有するダイマーまたはマルチマーに存在する1つ以上のレプチン分子は、水溶性ポリマーに連結された天然にコードされていないアミノ酸を含んでおり、上記水溶性ポリマーは、サイトII結合領域(Site II binding region)内に存在している。ダイマーまたはマルチマー中の個々のレプチン分子は、サイトI接合部(Site I interface)を介してレプチンポリペプチド受容体に結合できるように当該受容体に接近可能であるが、サイトII接合部(Site II interface)を介して第2のレプチンポリペプチド受容体に結合することは無い。それ故に、レプチンポリペプチドのダイマーまたはマルチマーは、2つのレプチンポリペプチド受容体の各々のサイトI結合領域(Site I binding site)を噛み合わせることができる。しかし、レプチン分子は、サイトII領域内に存在する遺伝的にコードされていないアミノ酸と結合する水溶性ポリマーを有しているので、レプチンポリペプチド受容体は、レプチンポリペプチドリガンドのサイトII領域と噛み合うことができない。ダイマーおよびマルチマーは、レプチンポリペプチドのアンタゴニストとして機能する。いくつかの実施形態において、ダイマーまたはマルチマーを含んでいるレプチンポリペプチド中に存在している1つ以上のレプチン分子は、水溶性ポリマーに連結されている天然にコードされていないアミノ酸を有しており、上記水溶性ポリマーは、サイトI結合領域内に存在してサイトII領域へ結合することができる。別のいくつかの実施形態において、ダイマーまたはマルチマーを含んでいるレプチンポリペプチド中に存在している1つ以上のレプチン分子は、水溶性ポリマーに連結されている天然にコードされていないアミノ酸を有しており、上記水溶性ポリマーは、サイトI結合領域内またはサイトII結合領域内ではない領域に存在しており、両方が結合に利用可能である。いくつかの実施形態において、サイトI、サイトIIまたは両方が結合に利用可能であるレプチン分子の組合せが用いられる。少なくとも1つのレプチン分子が結合に利用可能なサイトIを有しているレプチン分子の組合せ、および少なくとも1つのレプチン分子が結合に利用可能なサイトIIを有しているレプチン分子の組合せは、所望の活性および特性を備えた分子を提供し得る。加えて、サイトIおよびサイトIIの両方が結合に利用可能なレプチン分子の組合せは、スーパーアゴニストレプチン分子を作製し得る。
【0513】
いくつかの実施形態において、レプチンポリペプチドは、これらに限定されないが、Asn−Lysアミド結合またはCys−Cysジスルフィド結合を介して直接に連結されている。いくつかの実施形態において、レプチンポリペプチド、および/または連結された4HBファンミリー分子は、異なる天然にコードされていないアミノ酸を含んでいて、二量体化を容易にする。当該二量体化は、第1のレプチンポリペプチドの天然にコードされていないアミノ酸におけるアルキンおよび第2のレプチンポリペプチドの天然にコードされていないアミノ酸におけるアジドが、ヒュイゲン[3+2]付加環化を介して抱合されることによって(これらが挙げられるが、限定されない)、容易になり得る。代替可能に、ケトン含有天然にコードされていないアミノ酸を含んでいる第1のレプチンポリペプチド、および/または連結された4HBファミリー分子は、ヒドロキシアミン含んでいる天然にコードされていないアミノ酸を含んでいる第2のレプチンポリペプチドに抱合される。これらのポリペプチドは、対応するオキシムの形成を介して反応させられる。
【0514】
代替可能に、2つのレプチンポリペプチド、および/または連結されたレプチンポリペプチドは、リンカーを介して連結される。任意のヘテロ−またはホモ−二官能性リンカーが使用されて、同じか、または異なる一次配列を有している2つのレプチンポリペプチド、および/または連結された4HBファミリーポリペプチドを連結する。いくつかの場合において、レプチンポリペプチドおよび/または連結された4HBファミリーポリペプチドをつなぐためにともに使用されるリンカーは、二官能性のPEG試薬であり得る。
【0515】
いくつかの実施形態において、本発明は、ダンベル構造を有している水溶性の二官能性リンカーを提供する。当該ダンベル構造は、(a)ポリマー骨格の少なくとも第1の末端にあるアジド、ヒドラジン、ヒドラジド、ヒドロキシアミンまたはカルボニルを含有している部分;(b)ポリマー骨格の第2の末端にある少なくとも1つの第2の官能基を含んでいる。第2の官能基は、第1の官能基と同じであり得るか、または異なり得る。いくつかの実施形態において、第2の官能基は、第1の官能基と反応性ではない。いくつかの実施形態において、本発明は、分枝状の分子構造の少なくとも1つのアームを含んでいる水溶性化合物を提供する。例えば、分枝状の分子構造は樹状であり得る。
【0516】
いくつかの実施形態において、本発明は、1つ以上のレプチンポリペプチドを含んでいるマルチマーを提供する。当該レプチンポリペプチドは、以下の構造:
R−(CH
2CH
2O)
n−O−(CH
2)
m−X
(ここで、nは約5から3000であり、mは2から10であり、Xは、アルキン、ヒドラジン、ヒドラジド、アミノオキシ基、ヒドロキシアミン、アセチルまたはカルボニルを含有している部分であり得、Rは、Xと同じであるか、または異なるキャップ形成基、官能基または脱離基である)
を有している水溶性活性化ポリマーと反応させることによって形成される。Rは、例えば、ヒドロキシル、保護されたヒドロキシル、アルコキシル、N−ヒドロキシスクシニミジルエステル、1−ベンゾトリアゾリルエステル、N−ヒドロキシスクシニミジルカルボネート、1−ベンゾイミダゾリルカルボネート、アセタール、アルデヒド、アルデヒド水和物、アルケニル、アクリレート、メタクリレート、アクリルアミド、活性化スルホン、アミン、アミノオキシ、保護されたアミン、ヒドラジド、保護されたヒドラジド、保護されたチオール、カルボン酸、保護されたカルボン酸、イソシアネート、イソチオシアネート、マレイミド、ビニルスルホン、ジチオピリジン、ビニルピリジン、ヨードアセトアミド、エポキシド、グリオキサール、ジオン、メシレート、トシレート、およびトレシレート、アルケン、およびケトンからなる群から選択される官能基であり得る。
【0517】
いくつかの実施形態において、本発明は、インスリン、FGF−21、FGF−23またはこれらのあらゆるバリアントに連結した1つ以上のレプチンポリペプチドを含んでいるマルチマーを提供する。当該レプチンポリペプチドは、以下の構造:
R−(CH
2CH
2O)
n−O−(CH
2)
m−X
(ここで、nは約5から3000であり、mは2から10であり、Xは、アルキン、ヒドラジン、ヒドラジド、アミノオキシ基、ヒドロキシアミン、アセチルまたはカルボニルを含有する部分であり得、Rは、Xと同じであるか、または異なるキャップ形成基、官能基または脱離基である)
を有している水溶性活性化ポリマーと反応させることによって形成される。Rは、例えば、ヒドロキシル、保護されたヒドロキシル、アルコキシル、N−ヒドロキシスクシニミジルエステル、1−ベンゾトリアゾリルエステル、N−ヒドロキシスクシニミジルカルボネート、1−ベンゾイミダゾリルカルボネート、アセタール、アルデヒド、アルデヒド水和物、アルケニル、アクリレート、メタクリレート、アクリルアミド、活性化スルホン、アミン、アミノオキシ、保護されたアミン、ヒドラジド、保護されたヒドラジド、保護されたチオール、カルボン酸、保護されたカルボン酸、イソシアネート、イソチオシアネート、マレイミド、ビニルスルホン、ジチオピリジン、ビニルピリジン、ヨードアセトアミド、エポキシド、グリオキサール、ジオン、メシレート、トシレート、およびトレシレート、アルケン、およびケトンからなる群から選択される官能基であり得る。
【0518】
<XII.レプチンポリペプチド活性、およびレプチンポリペプチド受容体に対するレプチンポリペプチドの親和性の測定>
レプチンポリペプチドの活性は、標準的なin vitroまたはin vivoのアッセイを用いて決定され得る。例えば、レプチンの存在下において増殖する細胞株(例えば、レプチン受容体を発現する細胞株を挙げることができるが、これに限定されない)を、レプチン受容体の結合測定に用いることが可能である。例えば、Clark, R., et al., J. Biol. Chem. 271(36):21969(1996);Wada, et al., Mol. Endocrinol. 12:146-156(1998);Gout, P. W., et al. Cancer Res. 40, 2433-2436(1980);WO99/03887を参照すればよい。非天然アミノ酸を含んでいる非PEG付加レプチンについて、ホルモンレセプターに対するホルモンの親和性は、BIAcore(登録商標)(Pharmacia)を用いて測定可能である。例えば、米国特許第5,849,535号明細書;Spencer, S. A., et al., J. Biol. Chem., 263:7862-7867(1988)を参照すればよい。レプチンの活性を試験するためのin vivoの動物モデルは、例えば、Clark et al., J. Biol. Chem. 271(36):21969-21977(1996)に記載されている事項を含む。1つ以上の天然にコードされていないアミノ酸を有しているレプチンポリペプチドの二量体化能を試験するためのアッセイは、Cunningham, B., et al., Science, 254:821-825(1991)、およびFuh, G., et al., Science, 256:1677-1680(1992)にしたがって行うことができる。上述した参考文献および特許文献は、本明細書に参照によって援用される。肥満(DIO)マウスまたはモデルラットで誘導した食餌療法は、代謝性疾患(肥満、または、タイプ2糖尿病)の試験にしばしば用いられた。特に、8〜12週間にわたって、マウスまたはラットに高脂肪食を与えることによって、マウスまたはラットを肥満および適度な糖尿病にした。肥満の程度は、食物中に含まれる脂肪の量によって調節した。
【0519】
非天然アミノ酸を含んでおり、PEG付加されていないレプチンポリペプチドまたはPEG付加されたレプチンポリペプチドについて、ホルモンレセプターに対するホルモンの親和性は、周知技術(例えば、BIAcore(登録商標)(Pharmacia))を用いて測定することが可能である。インビボのモデル動物は、レプチンの活性を試験するためのヒトの臨床試験と同様に、例えば、Kontsek et al., Acta Virol, 43:63(1999);Youngster et al., Current Pharma Design 8:2139(2002);Kozlowski et al., BioDrugs 15:419(2001);米国特許第6,180,096号明細書;米国特許第6,177,074号明細書;米国特許第6,042,822号明細書;米国特許第5,981,709号明細書;米国特許第5,951,974号明細書;米国特許第5,908,621号明細書;米国特許第5,711,944号明細書;米国特許第5,738,846号明細書に記載されている事項を含み、これらの文献は、本明細書に参照によって援用される。
【0520】
本発明のレプチン類似物を生成するために使用される方法に関わらず、上記類似物は、生物活性に関するアッセイにかけられる。トリチウム化チミジンアッセイが、細胞分裂の程度を測定するために用いられ得る。しかし、他の生物学的アッセイが、所望の活性を測定するために用いられ得る。生物学的アッセイ(例えば、細胞からモデル動物にわたる、グルコース負荷応答(glucose challenge response)のアッセイ)もまた、レプチンの活性の指標を提供する。4HBタンパク質の評価にはOBモデルマウスを用いることが可能であるが、他の細胞に基づいた動物アッセイを用いることも可能である。これらのアッセイは、Bailon et al., Bioconj. Chem. 12:195(2001);Forti et al., Meth. Enzymol. 119:533(1986);Walter et al., Cancer Biother. & Radiopharm. 13:143(1998);DiMarco et al., BioChem. Biophys. Res. Com. 202:1445(1994);米国特許第4,675,282号明細書;米国特許第4,241,174号明細書;米国特許第4,514,507号明細書;米国特許第4,622,292号明細書;米国特許第5,766,864号明細書に記載されている事項を含み、これらの文献は、本明細書に参照によって援用される。他のインビトロのアッセイも、生物活性を測定するために用いられ得る。一般的に、生物活性の試験は、所望の解析結果(例えば、(改変していないレプチンと比較した場合の)生物活性の増減、(改変していないレプチンと比較した場合の)異なる生物活性、レセプターの親和性の解析、または、血清半減期の解析など)を提供すべきである。
【0521】
アッセイの方法論に関して上記にまとめた言及は網羅的ではなく、当業者であれば所望の最終結果に関する試験に有用なアッセイを認識する。
【0522】
<XIII.有効性、機能的なインビボ半減期、および薬物動態特性>
本発明の重要な局面は、水溶性ポリマー部分に対するポリペプチドの抱合を有しているか、または有していないレプチンポリペプチドの構築によって得られる、延長された生物学的半減期である。レプチンポリペプチドの血中濃度の急速な低下に起因して、抱合および非抱合のレプチンポリペプチドおよびこれらのバリアントを用いた処置に対する生物学的応答を評価することが重要である。本発明の抱合および非抱合のレプチンポリペプチドおよびこれらのバリアントは、投与の後においても血中半減期を延長し得ており、例えば、ELISA法および一次スクリーニングアッセイによる測定を可能にしている。BioSource International(Camarillo, CA)またはDiagnostic Systems Laboratories(Webster, TX)が提供するELISAキットまたはRIAキットを使用することが可能である。レプチンまたはバリアントのインビボにおける半減期を測定するためのアッセイの他の例は、Kozlowski et al., BioDrugs 15:419(2001);Bailon et al., Bioconj. Chem. 12:195(2001);Youngster et al., Current Pharm. Design 8:2139(2002);米国特許第6,524,570号明細書;米国特許第6,250,469号明細書;米国特許第6,180,096号明細書;米国特許第6,177,074号明細書;米国特許第6,042,822号明細書;米国特許第5,981,709号明細書;米国特許第5,591,974号明細書;米国特許第5,908,621号明細書;米国特許第5,738,846号明細書に記載されており、これらの文献は本明細書に参照によって援用される。G−CSFまたはバリアントのインビボにおける半減期を測定するためのアッセイの他の例は、米国特許第5,824,778号明細書に記載されており、当該文献は、本明細書に参照によって援用される。当該文献と同じ方法を用いて、レプチンの血清における半減期を測定することができる。ここに記載されているように、インビボにおける生物学的半減期を測定することができる。
【0523】
天然にコードされていないアミノ酸を含んでいるレプチンポリペプチドの有効性および機能的なインビボ半減期は、Clark, R., et al., J. Biol. Chem. 271(36), 21969-21977(1996);米国特許第5,711,944号明細書;米国特許第5,382,657号明細書;米国特許第6,646,110号明細書;米国特許第6,555,660号明細書;米国特許第6,166,183号明細書;米国特許第5,985,265号明細書;米国特許第5,824,778号明細書;米国特許第5,773,581号明細書;米国特許第6,586,398号明細書;米国特許第5,583,272号明細書;米国特許出願公開第2003/0198691号明細書に記載されている手順にしたがって側手緒され得、これらの文献は、本明細書に参照によって援用される。
【0524】
天然にコードされていないアミノ酸を含んでいるレプチンポリペプチドに関する薬物動態要素は、通常のオスのスピローグダウリーマウス(処理群ごとにN=5の動物)において評価され得る。動物は、静脈内に25ug/ラットまたは皮下に50μg/ラットの単回用量のいずれかを受け、およそ5〜7の血液試料が、予め決められた時間経過にしたがって(水溶性ポリマーに対して抱合されていない、天然にコードされていないアミノ酸を含んでいるレプチンポリペプチドに関して約6時間、および天然にコードされていないアミノ酸を含んでおり、水溶性ポリマーに抱合されているレプチンポリペプチドに関して約4日の範囲に一般的に及ぶ)採取される。レプチンポリペプチドに関する薬物動態のデータは、多様な種においてよく研究されており、天然にコードされていないアミノ酸を含んでいるレプチンポリペプチドについて得られたデータに対して直接に比較され得る。Mordenti J., et al., Pharm. Res. 8(11):1351-59(1991)を参照すればよい。
【0525】
天然にコードされていないアミノ酸を含んでいるレプチンポリペプチドに関する薬物動態要素は、通常のオスのスピローグダウリーマウス(処理群ごとにN=5の動物)において評価され得る。動物は、静脈内に10ug/ラットまたは皮下に20ug/ラットの単回用量のいずれかを受け、およそ5〜7の血液試料が、予め決められた時間経過にしたがって(水溶性ポリマーに抱合されていない、天然にコードされていないアミノ酸を含んでいるレプチンポリペプチドに関して約6時間、および天然にコードされていないアミノ酸を含んでおり、水溶性ポリマーに抱合されているレプチンポリペプチドに関して約4日の範囲に一般的に及ぶ)採取される。レプチンポリペプチドに関する薬物動態のデータは、多様な種においてよく研究されており、天然にコードされていないアミノ酸を含んでいるレプチンポリペプチドについて得られたデータに対して直接に比較され得る。Mordenti J., et al., Pharm. Res. 8(11):1351-59(1991)を参照すればよい。
【0526】
天然にコードされていないアミノ酸を含んでいるレプチンポリペプチドに関する薬物動態要素は、通常のオスのスピローグダウリーマウス(処理群ごとにN=5の動物)において評価され得る。動物は、静脈内に75ug/ラットまたは皮下に150ug/ラットの単回用量のいずれかを受け、およそ5〜7の血液試料が、(水溶性ポリマーに抱合されていない、天然にコードされていないアミノ酸を含んでいるレプチンポリペプチドに関して約6時間、および天然にコードされていないアミノ酸を含んでおり、水溶性ポリマーに抱合されているレプチンポリペプチドに関して約4日の範囲に一般的に及ぶ)採取される。レプチンポリペプチドに関する薬物動態のデータは、多様な種においてよく研究されており、天然にコードされていないアミノ酸を含んでいるレプチンポリペプチドについて得られたデータに対して直接に比較され得る。Mordenti J., et al., Pharm. Res. 8(11):1351-59(1991)を参照すればよい。
【0527】
本発明に係るレプチンポリペプチドの特定の活性は、当該技術において公知の方法によって決定され得る。本発明に係る精製されたレプチンタンパク質の生物活性は、注射によるヒトの患者へのレプチンタンパク質の投与が、グルコース濃度の低下、食欲の低下、代謝における生理的な変化の現われ、血管形成の増加、創傷治癒の増加、またはこれらの組合せによる、生物活性の明確な結果を示し得るほどである。本発明にしたがって得られおよび精製されるレプチン変異タンパク質(leptin muteins)の生物活性または当該タンパク質の断片の生物活性は、Pharm. Europa Spec. Issue Erythropoietin BRP Bio 1997(2)に開示されている方法と同様の方法によって試験され得る。レプチンの生物活性を測定するときに用いられ得るhEPOの活性を測定するための他の生物学的アッセイは、正常赤血球マウスアッセイ(normocythaemic mouse assey)(Pharm. Europa Spec. Issue Erythropoietin BRP Bio 1997(2))である。本発明にしたがって得られ、精製されるレプチンポリペプチド変異タンパク質または当該タンパク質の断片の生物活性は、本明細書中に記載または引用されている方法、または当業者にとって周知の方法によって試験され得る。
【0528】
レプチンポリペプチドまたはそのバリアントの生物活性の測定に同様に用いられ得るhG−CSFのインビボにおける生物活性の測定のためのアッセイの更なる例は、米国特許第5,681,720号明細書;米国特許第5,795,968号明細書;米国特許第5,824,778号明細書;米国特許第5,985,265号明細書;Bowen et al., Experimental Hematology 27:425-432(1999)に記載されており、これらの文献の各々は、本明細書に参照によって援用される。
【0529】
<XIV.投与および薬学的組成物>
本発明のレプチンポリペプチドまたはタンパク質は、好適な薬学的担体と組み合せて(限定されないが、これが挙げられる)、治療的使用に任意に採用される。当該組成物は、例えば、治療有効量の化合物、および薬学的に受容可能な担体もしくは賦形剤を含んでいる。当該担体または賦形剤としては、生理食塩水、緩衝化生理食塩水、デキストロース、水、グリセロール、エタノール、および/またはこれらの組合せが挙げられるが、これらに限定されない。調合物は、投与形態に合わせて作製される。一般的に、タンパク質を投与する方法は、当業者に公知であり、かつ本発明のポリペプチドの投与に適用され得る。
【0530】
本発明の1つ以上のポリペプチドを含んでいる治療組成物は、当業者に公知の方法にしたがって、有効性を確かめ、用量を評価するために、疾患の1つ以上のインビトロおよび/またはインビボにおける動物モデルにおいて、任意に試験され得る。特に、用量は、天然アミノ酸の相同物に対する本明細書における非天然アミノ酸の活性、安定性または他の好適な測定(1つ以上の非天然アミノ酸を含めるために修飾されたレプチンポリペプチドの、天然アミノ酸のレプチンポリペプチドに対する比較)(すなわち、比較アッセイ)によって最初に決定され得る。
【0531】
投与は、血液または組織細胞と最終的に接触する分子の導入に通常に使用される任意の経路による。本発明の非天然アミノ酸ポリペプチドは、1つ以上の薬学的に受容可能な担体を任意に伴って、任意の好適な様式において投与される。本発明に関する当該ポリペプチドの患者に対する投与の好適な方法が利用可能であり、そして、2つ以上の経路が特定の組成物を投与するために使用されるが、特定の経路は、他の経路よりも即時のかつ効果的な作用または反応をしばしば提供し得る。
【0532】
薬学的に受容可能な担体は、投与される特定の組成物よって、これと同様に組成物を投与するために使用される方法によって、部分的に決定される。したがって、本発明の薬学的組成物の広範な好適な調合物がある。
【0533】
ポリペプチド組成物は、多くの経路(経口、静脈内、腹腔内、筋肉内、経皮、皮下、局所、舌下、または直腸の手段が挙げられるが、これらに限定されない)によって投与され得る。また、修飾されたか、または非修飾の非天然アミノ酸ポリペプチドの組成物は、リポソームを介して投与され得る。当該投与経路および調合物は、当業者にとって公知である。
【0534】
また、単独の、または他の好適な組成物との組合せの、非天然アミノ酸を含んでいるレプチンポリペプチドは、吸入を介して投与されるためのエアロゾル調合物(すなわち、それらは“霧状化”され得る)に作製され得る。エアロゾル調合物は、圧縮化可能な噴霧剤(例えば、ジクロロジフルオロメタン、プロパンおよび窒素など)に配合され得る。
【0535】
例えば、関節内(関節における)、静脈内、筋肉内、皮内、腹腔内、および皮下の経路といった、非経口投与に好適な調合物としては、抗酸化剤、緩衝液、静菌剤および意図される受容物の血液と等張な調合物にさせる溶液を含有できる水性および非水性の等張無菌注入溶液、ならびに懸濁剤、可溶化剤、増粘剤、安定化剤、および防腐剤を含むことができる水性および非水性の無菌懸濁液が挙げられる。パッケージされた核酸の調合物は、容器(例えば、アンプルおよびバイアル)に密封された単回用量または多回用量において提供され得る。
【0536】
非経口投与および静脈内投与は、投与の好ましい方法である。特に、天然アミノ酸相同物治療に関してすでに使用中の投与の経路(EPO、GH、G−CSF、GM−CFS、IFN、インターロイキン、抗体、抗体断片、FGFおよび/または任意の他の薬学的送達タンパク質にとって使用される経路が挙げられるが、これらに限定されない)が、現在使用中の調合物と共に、本発明のポリペプチドにとっての投与および調合物の好適な経路を提供する。
【0537】
本発明に照らして、患者に投与される用量は、長期間にわたる患者に有益な治療応答(病原体による感染の防止が挙げられるが、これに限定されない)、または他の好適な活性を示すために十分な用途に依存する量である。用量は、特定のベクターもしくは調合物の有効性、および採用される非天然アミノ酸ポリペプチドの安定性もしくは血中半減期、および患者の状態、これらと同様に処置される患者の体重または体表面積によって決定される。また、用量の大きさは、特定の患者における特定のベクターまたは調合物などの投与に付随する任意の副作用の存在、性質および程度によって決定される。
【0538】
症状の処置または予防(エネルギーバランスの制御、肥満の管理、グルコースの調節、脂質代謝の調節、視床下部下垂体の神経内分泌機能の調節、不妊症の治療、免疫機能の亢進、血液形成の亢進、血管形成の増加、創傷治癒の増加または血清脂質の減少が挙げられるが、これらに限定されない)において投与されるベクターまたは調合物の有効量の決定において、医師は、循環血漿濃度、調合物の毒性、疾患の進行、および/または(該当する場合に)抗非天然アミノ酸ポリペプチド抗体の産生を評価する。
【0539】
例えば70キログラムの患者に投与される用量は、現在使用されている治療タンパク質の用量と同等な範囲において、関連組成物の変更された活性または血中半減期に関して典型的に調節される。本発明のベクターは、従来公知の任意の治療(抗体投与、ワクチン投与、細胞毒性物質の投与、天然アミノ酸ポリペプチドの投与、核酸の投与、ヌクレオチド類似物の投与、および生体反応調節因子の投与が挙げられる)による処置条件を補うことができる。
【0540】
投与に関して、本発明の調合物は、関連調合物のLD−50もしくはED−50よって、および/または患者の集団および全体的な健康状態に対して適用されるような(これが挙げられるが、限定されない)、種々の条件における非天然アミノ酸の任意の副作用の観察によって、決定される割合において投与される。投与は、単回用量または分けられた用量を介して達成され得る。
【0541】
調合物の注入を受ける患者が熱を出すか、寒気を覚えるか、または筋肉痛を覚える場合には、彼/彼女は、適量のアスピリン、イブプロフェン、アセトアミノフェン、または他の痛覚/熱制御薬を受ける。注入に対する反作用(例えば、熱、筋肉痛、および悪寒)を経験する患者は、さらなる注入の30分前に、アスピリン、アセトアミノフェン、または(これが挙げられるが、限定されない)ジフェンヒドラミンのいずれかを用いて前投与される。メペリジンは、解熱剤および抗ヒスタミン剤にすぐに反応しないひどい悪寒および筋肉痛に対して使用される。細胞注入は、反作用の重篤度に依存して速度を落とされるか、または中断される。
【0542】
本発明のヒトレプチンポリペプチドは、哺乳類の対象に対して直接に投与され得る。投与は、対象に対するレプチンポリペプチドの導入に通常に使用される経路のうちいずれかによる。本発明の実施形態に係るレプチンポリペプチド組成物としては、経口、直腸、局所、吸入(エアロゾルを介した吸入が挙げられるが、これに限定されない)、頬側(舌下が挙げられるが、これに限定されない)、膣、非経口(皮下、筋肉内、皮内、間接内、胸膜内、腹腔内、大脳内、動脈内、胸膜内、または静脈内が挙げられるが、これに限定されない)、局所(すなわち、皮膚および気道の表面を含む粘膜の表面の両方)および経皮の投与に好適なそれらが挙げられるが、所定の場合のいずれかにおける最も好適な経路は、処置される性質および重篤度に依存する。投与は、局所的であるか、または全身性であるかのいずれかであり得る。化合物の調合物は、容器(例えば、アンプルおよびバイアル)に密閉された単回用量または多回用量に存在し得る。本発明のレプチンポリペプチドは、薬学的に受容可能な担体を伴った、単回用量の形態(溶液、懸濁液、または乳液が挙げられるが、これらに限定されない)における混合物に調製され得る。また、本発明のレプチンポリペプチドは、連続的な注入(浸透圧ポンプといったミニポンプを用いた注入が挙げられるが、これに限定されない)、単回の大量瞬時投与、または緩徐に放出する徐放性製剤調合物によって投与され得る。
【0543】
投与に好適な調合物としては、抗酸化剤、緩衝液、静菌剤、および調合物に等張性を与える溶液を含有できる水性および非水性の溶液、等張無菌溶液、ならびに懸濁剤、可溶化剤、増粘剤、安定化剤および防腐剤を含むことができる水性および非水性の無菌懸濁液が挙げられる。溶液および懸濁液は、これまでに記載したような、無菌の粉末、顆粒、および錠剤から調製され得る。
【0544】
本発明の薬学的組成物および調合物は、薬学的に受容可能な担体を含み得る。薬学的に受容可能な担体は、投与される特定の組成物によって、これと同様に、組成物の投与に使用される特定の方法によって、部分的に決定される。したがって、本発明の薬学的組成物の広範な好適な調合物(薬学的に受容可能な担体、賦形剤、または安定化剤を任意に含む)がある(例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences, 17
thed. 1985)を参照すればよい)。
【0545】
好適的な担体としては、リン酸塩、ホウ酸塩、HEPES、クエン酸塩、および他の有機酸を含有する緩衝液;抗酸化剤(アスコルビン酸が挙げられる);低分子量ポリペプチド(10残基未満のそれらが挙げられる);タンパク質(血清アルブミン、ゼラチン、または免疫グロブリンが挙げられる);親水性ポリマー(ポリビニルピロリドンが挙げられる);アミノ酸(グリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニン、またはリジンが挙げられる);単糖類、2糖類、他の糖(グルコース、マンノース、またはデキストリンが挙げられる);キレート剤(EDTAが挙げられる);2価の金属イオン(亜鉛、コバルト、または銅が挙げられる);糖アルコール(マンニトールまたはソルビトールが挙げられる);塩形成対イオン(ナトリウムが挙げられる);および/または非イオン性界面活性剤(トウィーン(Tween)(商標)、Pluronics(商標)、またはPEGが挙げられる)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0546】
また、本発明のレプチンポリペプチド(PEGといった水溶性ポリマーに対して連結されるそれらが挙げられるが、これらに限定されない)は、徐放性の系の一部によってか、または一部として投与され得る。徐放性組成物としては、成形された品の形態(フィルム、またはマイクロカプセルが挙げられるが、これらに限定されない)における半透過性のポリマーマトリクスが挙げられるが、これに限定されない。徐放性のマトリクスとしては、生体適合性材料から得られるもの(例えば、ポリ(2−ヒドロキシエチルメタクリレート)(Langer et al., J. Biomed. Mater. Res., 15: 167-277 (1981); Langer, Chem. Tech., 12: 98-105 (1982))、エチレンビニルアセテート(上述のLanger et al)またはポリ−D−(−)−3−ヒドロキシブチル酸(欧州特許出願公開第133,988号明細書)、ポリラクチド(ポリ酪酸)(米国特許第3,773,919号明細書;欧州特許出願公開第58,481号明細書)、ポリグリコリド(グリコール酸のポリマー)、ポリラクチド−コ−グリコリド(酪酸およびグリコリドの共ポリマー)のポリ無水物、L−グルタミン酸およびガンマ−エチル−L−グルタミン酸塩の共ポリマー(U. Sidman et al., Biopolymers, 22, 547-556 (1983) )、ポリ(オルト)エステル、ポリペプチド、ヒアルロン酸、コラーゲン、硫酸コンドロイチン、カルボキシル酸、脂肪酸、リン脂質、多糖、核酸、ポリアミノ酸、アミノ酸(例えば、フェニルアラニン、チロシン、イソロイシン)、ポリヌクレオチド、ポリビニルプロピレン、ポリビニルピロリドンならびにシリコン)が挙げられる。また、徐放性組成物は、リポソームに取り込まれる化合物が挙げられる。化合物を含有するリポソームは、それ自体が公知の方法によって調製される(独国特許出願公開第3,218,121号明細書;Eppstein et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 82: 3688-3692 (1985);Hwang et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 77: 4030-4034 (1980);欧州特許出願公開第52,322号明細書;欧州特許出願公開第36,676号明細書;欧州特許出願公開第88,046号明細書;欧州特許出願公開第143,949号明細書;欧州特許出願公開第142,641号明細書;日本国出願公開第83−118008号明細書;米国特許第4,485,045号明細書;米国特許第4,544,545号明細書:および欧州特許出願公開第102,324号明細書)。引用された参考文献および特許文献のすべては、本明細書に参照によって援用される。
【0547】
リポソームに取り込まれたレプチンポリペプチドは、例えば、独国特許出願公開第3,218,121号明細書;Eppstein et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 82: 3688-3692 (1985);Hwang et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 77: 4030-4034 (1980);欧州特許出願公開第52,322号明細書;欧州特許出願公開第36,676号明細書;欧州特許出願公開第88,046号明細書;欧州特許出願公開第143,949号明細書;欧州特許出願公開第142,641号明細書;日本国出願第83−118008号明細書;米国特許第4,485,045号明細書および米国特許第4,544,545号明細書;および欧州特許出願公開第102,324号明細書に記載されている方法によって調製され得る。組成物およびリポソームの大きさは、公知であるか、または経験的に当業者によって容易に決定され得る。リポソームのいくつかの例が、例えば、Park JW, et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 92:1327-1331 (1995) ;Lasic D and Papahadjopoulos D (eds): MEDICAL APPLICATIONS OF LIPOSOMES (1998);Drummond DC, et al., Liposomal drug delivery systems for cancer therapy, in Teicher B (ed): CANCER DRUG DISCOVERY AND DEVELOPMENT (2002);Park JW, et al., Clin. Cancer Res. 8:1172-1181 (2002); Nielsen UB, et al., Biochim. Biophys. Acta 1591(1-3):109-118 (2002);Mamot C, et al., Cancer Res. 63: 3154-3161 (2003)に記載されている。引用された参考文献および特許文献のすべてが、本明細書に参照によって援用される。
【0548】
本発明に照らして、患者に対して投与される用量は、長期間にわたって対象において有益な応答を引き起こすに十分な量であるべきである。一般的に、投与ごとに非経口的に投与される本発明のレプチンポリペプチドの治療有効量の総計は、患者の体重の約0.01μ/kg/日から約100μg/kg/日まで。または約0.05mg/kg/日から約1mg/kg/日の範囲であるが、これは治療の自由裁量に従う。また、投与の頻度は、治療の自由裁量にしたがう。一般的に、本発明のPEG付加レプチンポリペプチドは、上述の投与経路のうちのいずれかによって投与され得る。
【0549】
<XV.本発明のレプチンポリペプチドの治療的使用>
本発明のレプチンポリペプチドは、広範な障害の治療に有用である。
【0550】
一局面において、本発明のレプチンポリペプチドは、肥満を治療するために次の方法において使用される。その方法は、肥満の対象において体重の減少を誘導するに有効な量の、本明細書に規定されたような修飾されたレプチンポリペプチドの化合物を、この肥満の被験体に投与する工程を包含している。別の局面において、本発明のレプチンポリペプチドは、理想の体重を10%以上、上回っている患者に対して投与される。この場合、投与されるレプチンポリペプチドの量は、本明細書に規定されたような修飾されたレプチンポリペプチドの化合物の、この対象において体重の減少を誘導するに有効な量である。別の局面において、本発明のレプチンポリペプチドは、体重が増加する危険性を有しているか、体重が増加し続ける危険性を有している患者を治療するために用いられる。この場合、用いられるレプチンポリペプチドの量は、本明細書に規定されたような修飾されたレプチンポリペプチドの化合物の、この対象において患者の体重を維持するか、減少させるに有効な量である。別の局面において、本発明のレプチンポリペプチドは、体重が増加する危険性を有しているか、体重が増加し続ける危険性を有している患者を治療するために用いられる。この場合、用いられるレプチンポリペプチドの量は、本明細書に規定されたような修飾されたレプチンポリペプチドの化合物の、この対象において身体の脂肪を維持するか、減少させるに有効な量である。本発明の別の局面において、本明細書に開示の修飾されたレプチンポリペプチドは、体重の変化を防止および/または支援するために所定の甲状腺の障害を有している患者に投与されてもよいし、この甲状腺の障害によって引き起こされる体重の変化を相殺することを防止および/または支援するためにこの患者に投与され得る。
【0551】
本発明のレプチンアゴニストのポリペプチドは、例えば、障害(限定されないが、代謝性疾患が挙げられる)の治療、エネルギーバランスの調節、肥満の管理、グルコースの変化、脂質の代謝の変化、視床下部−下垂体の神経内分泌機能の変化、不妊の治療、免疫機能の促進、造血の促進、血管新生の増加、創傷治癒の増加、または血清脂質の低減に有用であり得る。本発明の別の実施形態において、天然にコードされていないアミノ酸を含んでいるレプチンポリペプチドは、深部温を、0.1〜1℃の間で、または1℃よりも高く増加させ得る。この測定は、患者の代謝の増加を決定する上で有用であり得る。
【0552】
本発明のレプチンポリペプチドは、投与が必要な患者に対して、患者の体重1kgにつき0.1mg〜0.5mgの間で投与され得る。本発明のレプチンポリペプチドは、投与が必要な患者に対して、患者の体重1kgにつき0.1〜3.0mgの間で投与され得る。本発明のレプチンポリペプチドは、投与が必要な患者に対して、患者の体重1kgにつき0.5mg〜1.5mgの間で投与され得る。本発明のレプチンポリペプチドは、投与が必要な患者に対して、患者の体重1kgにつき0.1〜2.0mgの間で投与され得る。本発明のレプチンポリペプチドは、投与が必要な患者に対して、患者の体重1kgにつき0.2〜1.0mgの間で投与され得る。本発明のレプチンポリペプチドは、投与が必要な患者に対して、患者の体重1kgにつき1.0mg〜1.5mgの間で投与され得る。本発明のレプチンポリペプチドは、投与が必要な患者に対して、患者の体重1kgにつき2.0mg〜3.0mgの間で投与され得る。本発明のレプチンポリペプチドは、投与が必要な患者に対して、患者の体重1kgにつき2.0mg〜2.5mgの間で投与され得る。本発明のレプチンポリペプチドは、投与が必要な患者に対して、患者の体重1kgにつき1.5mg〜2.0mgの間で投与され得る。本発明のレプチンポリペプチドは、投与が必要な患者に対して、患者の体重1kgにつき2.0mg〜4.0mgの間で投与され得る。本発明のレプチンポリペプチドは、投与が必要な患者に対して、患者の体重1kgにつき3.0mg〜5.0mgの間で投与され得る。本発明のレプチンポリペプチドは、投与が必要な患者に対して、患者の体重1kgにつき4.0mg以上で投与され得る。
【0553】
レプチンの平均の量は変更されてもよく、特に、医師の推奨および処方に基づくべきである。レプチンの正確な量は、処置される状態の正確な型、治療される患者の状態、および組成物中の他の成分のような因子に対する優先度の問題である。
【0554】
本発明の方法は、推奨される体脂肪率を超える体脂肪率を有する(すなわち、少なくとも“過体重”の範囲にあるか、少なくとも“肥満”の範囲にある)ヒトを処置するために用いてもよい。体脂肪率は女性と男性とにおいて異なる。具体的には、女性の場合、本発明の方法は、少なくとも約25%、25%を上回る、少なくとも約26%、26%を上回る、少なくとも約27%、27%を上回る、少なくとも約28%、28%を上回る、少なくとも約29%、29%を上回る、少なくとも約30%、30%を上回る、少なくとも約31%、31%を上回る、少なくとも約32%、32%を上回る、少なくとも約33%、33%を上回る、少なくとも約34%、34%を上回る、少なくとも約35%、35%を上回る、少なくとも約40%、40%を上回る、体脂肪率を有するヒトの女性を治療するために使用され得る。男性の場合、本発明の方法は、少なくとも約14%、14%を上回る、少なくとも約15%、15%を上回る、少なくとも約16%、16%を上回る、少なくとも約17%、17%を上回る、少なくとも約18%、18%を上回る、少なくとも約19%、19%を上回る、少なくとも約20%、20%を上回る、少なくとも約21%、21%を上回る、少なくとも約22%、22%を上回る、少なくとも約23%、23%を上回る、少なくとも約24%、24%を上回る、少なくとも約25%、25%を上回る、少なくとも約30%、または30%を上回る、体脂肪率を有するヒトの男性を治療するために使用され得る。体脂肪率は、当該技術分野において容認されている任意の方法を用いて評価され得る。この方法としては、例えば、近赤外線の相互作用(near infrared interactance)、二重エネルギーX線吸収測定法、身体密度の測定、および生体電気インピーダンス法などが挙げられる。
【0555】
本発明の方法は、推奨される腰周りを上回る腰周りを有しているヒトを治療するために用いてもよい。腰周りは、腹部の脂肪含量および肥満の危険性を決定するための広く用いられる別の測定値である。総体脂肪と調和がとれていない場合、過剰な腹部の脂肪は、肥満に関係する危険因子の予兆となるものとみなされる。腰周りが40インチを超過する男性は危険性があるとみなされる。腰周りが35インチ以上である女性は危険性がある。一実施形態において、本明細書に開示の化合物は、腰周りが40インチを超過するヒトの男性のための体重を減少させる処置として使用され得る。別の実施形態において、本明細書に開示の化合物は、腰周りが35インチを超過するヒトの女性のための体重を減少させる処置として使用され得る。
【0556】
本発明のレプチン産物の投与は、市販されているレプチン調製物によって(ヒトにおいて)実証されている作用の何れかをもたらす。レプチンの糖タンパク質の産物を含んでいる薬学的組成物は、単独のまたは状態または疾患の一部としての障害を経験するヒトの患者に対して、種々の手段によって投与されるに有効な強度を有して製剤化され得る。この障害はレプチンのアゴニストまたはアンタゴニスト(限定されないが、抗肥満、抗脂質、グルコースの低下または血管新生のアゴニストが挙げられる)によって影響を受け得るものである。レプチンの糖タンパク質の産物の平均量は変更されてもよく、特に、医師の推奨および処方に基づくべきである。レプチンの正確な量は、治療される状態の正確な型、治療される患者の状態、および組成物中の他の成分のような因子に優先度の問題である。したがって、本発明のレプチンは、エネルギーのバランス、エネルギーの調節、肥満の管理、血清脂質、血清グルコース、グルコースの変化、脂質代謝の変化、視床下部−下垂体の神経内分泌機能の変化、不妊の治療、免疫機能の促進、造血の促進、血管新生の増加、または創傷治癒の増加を、妨害または変化させるために使用され得る。また、本発明は、治療的に有効な量の別の活性な剤(抗糖尿病剤、抗脂質剤、食欲を抑制する剤、または他の剤など)を投与することを提供する。与えられる量は、レプチンを用いる治療に基づいて、当業者によって容易に決定され得る。
【0557】
本発明のレプチンポリペプチドは、肥満の治療に有用な他の治療剤(他の抗肥満薬など)の1つ以上と組み合わされ得る。他の治療剤は、エネルギーの消費、解糖、糖新生、グリコーゲン分解(glucogenolysis)、リポリーシス、リポゲネシス、脂肪吸収、脂肪蓄積、脂肪排出、空腹および/または満腹および/または切望の機序、食欲/動機付け、食物の摂取、またはG−I運動に影響を及ぼすものである。本発明のさらなる実施形態は、天然にコードされていないアミノ酸を1つ以上有しているレプチンポリペプチド、抗肥満剤、および薬学的に受容可能な担体を含んでいる薬学的組成物を包含している。さらに説明すれば、本発明は、PEGに結合された天然にコードされていないアミノ酸を1つ以上有しているレプチンポリペプチド、抗肥満剤、および薬学的に受容可能な担体を含んでいる薬学的組成物である。さらなる実施形態は、肥満の治療に有用な医薬を調製するための、天然にコードされていないアミノ酸を1つ以上有しているレプチンポリペプチドを含んでいる薬学的処方物を包含している。さらなる実施形態は、肥満の治療に有用な医薬を調製するための、天然にコードされていないアミノ酸を1つ以上有しているレプチンポリペプチドを含んでいる薬学的処方物を包含しており、この天然にコードされていないアミノ酸の1つ以上がPEG化されている。本発明の一実施形態において、抗肥満剤は、PYY、PYY.sub.3−36、PYYのアゴニスト、5HTトランスポーターの阻害剤;NEトランスポーターの阻害剤;グレリンのアンタゴニスト;H3のアンタゴニスト/インバースアゴニスト;MCH1Rのアンタゴニスト;MCH2Rのアゴニスト/アンタゴニスト;MC3Rのアゴニスト;NPY1のアンタゴニスト;NPY4のアゴニスト;NPY5のアンタゴニスト;レプチン;レプチンのアゴニスト/修飾因子;レプチン誘導体;オピオイドのアンタゴニスト;オレキシンのアンタゴニスト;BRS3のアゴニスト;11.ベータ.HSD−1の阻害剤;CCK−Aのアゴニスト;CNTF;CNTFのアゴニスト/修飾因子;CNTFの誘導体;Cox2の阻害剤;GHSのアゴニスト;5HT2Cのアゴニスト;5HT6のアンタゴニスト;モノアミン再取込阻害剤;UCP1、UCP2、およびUCP3のアクチベータ;β3のアゴニスト;甲状腺ホルモンβのアゴニスト;PDEの阻害剤;FASの阻害剤;DGAT1の阻害剤;DGAT2の阻害剤;ACC2の阻害剤;グルココルチコイドのアンタゴニスト;アシルエストロゲン;リパーゼの阻害剤;脂肪酸トランスポーターの阻害剤;ジカルボキシレートトランスポーターの阻害剤;グルコーストランスポーターの阻害剤;セロトニン再取込阻害剤;アミノレックス;アンフェクロラール;アンフェタミン;アキソカイン(axokine);ベンズフェタミン
;クロルフェンテルミン;クロベンゾレックス(clobenzorex);クロホレックス(cloforex);クロミノレックス(clominorex);クロルテルミン(clortermine);シクルエキセドリン;デキストロアンフェタミン;ジフェメトキシジン、N−エチルアンフェタミン;フェンブトラザート(fenbutrazate);フェニソレックス(fenisorex);フェンプロポレクス;フルドレックス(fludorex);フルミノレックス(fluminorex);フルフリルメチルアンフェタミン;レブアンフェタミン(levamfetamine);レボファセトペラン;メフェノレックス;メタンフェプラモン(metamfepramone);メタンフェタミン;ナルメフェン;ノルシュードエフェドリン;ペントレックス(pentorex);フェンジメトラジン;フェンメトラジン;ファイトファルム(phytopharm)化合物57;ピシロレックス(picilorex);トピラメート;ゾニサミド;またはそれらの組合せである。当業者は、他の治療的組合せまたは連続的な投与を認識するだろう。そして、このような他の治療的組合せまたは連続的な投与は、これらを必要とする患者にとって治療的に有効であり得る。さらなる組合せおよび実施形態は、米国特許出願公開第2008/0319019号明細書(Cheng et al.)および米国特許出願公開第2008/0261981号明細書(Dey etal.)にて示唆されている(なお、これらの文献は、参照によってその全体が本明細書に援用される)。
【実施例】
【0558】
以下の実施例は、例示のために提示されているのであって、特許請求の範囲に記載の発明を限定しない。
【0559】
<実施例1>
本実施例では、天然にコードされていないアミノ酸をhGHに組み込むための好ましい部位を選択するための、多くの見込みのある基準の一組の1つについて説明する。
【0560】
本実施例では、hGHポリペプチド内の好ましい部位が天然にコードされていないアミノ酸の導入のためにどのように選択されたのかについて示す。受容体(hGHbp)の細胞外ドメインの2分子と複合体化されたhGHを構成する結晶構造3HHRを使用して、天然にコードされていないアミノ酸の1つ以上が導入され得る好ましい位置を決定した。他のhGH構造(例えば、1AXI)を利用して、結晶構造のデータセット間における、見込みのある種々の一次構造および二次構造の要素について試験した。これらの構造に関する同等のものは、プロテインデータバンク(PDB)(Berslein et al. J. MoI Biol. 1997, 112, pp 535)からか、またはワールドワイドウェブのrcsb.orgにおいて利用可能なResearch Collaboratory for Structural Bioinformatics PDBを介して利用可能である。構造モデル3HHRは、結晶における異常に起因して除外される148〜153残基およびC末端のF191を除いて、hGHの完全な成熟型の22kDaの配列を含んでいる。C53およびC165、ならびにC182およびC185によって形成される2つのジスルフィド架橋が存在する。本実施例において使用される配列の番号付与は、配列番号4に示される成熟hGH(22kDaバリアント)のアミノ酸配列にしたがっている。
【0561】
天然にコードされていないアミノ酸を導入するためのhGHのそれぞれの位置を評価するために、以下の基準を使用した:(a)3HHR、1AXIまたは1HWG(hGHbpのモノマーまたはダイマーと抱合されたhGHの結晶学的構造)の構造解析に基づくいずれかのhGHbpの結合に干渉しない残基、(b)アラニン走査突然変異生成法または相同物スキャニング突然変異生成法(Cunningham et al. Science (1989) 244: 1081-1085 and Cummingham et al. Science (1989) 243: 1330-1336)によって影響されない残基、(c)表面露出され、周囲の残基とともに最小のファンデルワールス力または水素結合相互作用を示す残基、(d)hGHバリアントにおいて欠失されているか、または変異している残基(例えば、Tyr35、Lys38、Phe92、Lys140)、(e)天然にコードされていないアミノ酸を用いた置換によって保存的な変化を生じる残基、ならびに(f)フレキシビリティーの高い領域(CDループが挙げられるが、これに限定されない)、または構造的に堅固な領域(ヘリックスBが挙げられるが、これに限定されない)のいずれかに見られ得る残基。これに加えて、Cxプログラム(Pintar et al. Bioinformatics, 18, pp 980)を利用してhGH分子に関して、タンパク質の各原子に関する突出の程度を評価するために、さらなる演算を実施した。その結果として、いくつかの実施形態において、天然にコードされていないアミノ酸の1つ以上が、hGHの以下の位置:1位より前(すなわちN末端)、1位、2位、3位、4位、5位、8位、9位、11位、12位、15位、16位、19位、22位、29位、30位、32位、33位、34位、35位、36位、37位、38位、39位、40位、41位、42位、43位、44位、45位、46位、47位、48位、49位、52位、55位、57位、59位、65位、66位、69位、70位、71位、74位、88位、91位、92位、94位、95位、97位、98位、99位、100位、101位、102位、103位、104位、105位、106位、107位、108位、109位、111位、112位、113位、115位、116位、119位、120位、122位、123位、126位、127位、129位、130位、131位、132位、133位、134位、135位、136位、137位、138位、139位、140位、141位、142位、143位、144位、145位、146位、147位、148位、149位、150位、151位、152位、153位、154位、155位、156位、158位、159位、161位、168位、172位、183位、184位、185位、186位、187位、188位、189位、190位、191位、192位(すなわちタンパク質のカルボキシル末端)(配列番号48、または他の公知のhGH配列における対応する位置)に組み込まれるが、これらの位置に限定されない。
【0562】
いくつかの実施形態において、天然にコードされていないアミノ酸の1つ以上が、以下の位置:29位、30位、33位、34位、35位、37位、39位、40位、49位、57位、59位、66位、69位、70位、71位、74位、88位、91位、92位、94位、95位、98位、99位、101位、103位、107位、108位、111位、122位、126位、129位、130位、131位、133位、134位、135位、136位、137位、139位、140位、141位、142位、143位、145位、147位、154位、155位、156位、159位、183位、186位及び187位(配列番号2、または配列番号1もしくは3によってコードされている対応するアミノ酸)に置換されている。
【0563】
いくつかの実施形態において、天然にコードされていないアミノ酸の1つ以上が、以下の位置:29位、33位、35位、37位、39位、49位、57位、69位、70位、71位、74位、88位、91位、92位、94位、95位、98位、99位、101位、103位、107位、108位、111位、129位、130位、131位、133位、134位、135位、136位、137位、139位、140位、141位、142位、143位、145位、147位、154位、155位、156位、186および187位(配列番号2、または配列番号1もしくは3によってコードされている対応するアミノ酸)に置換されている。
【0564】
いくつかの実施形態において、天然にコードされていないアミノ酸の1つ以上が、以下の位置:35位、88位、91位、92位、94位、95位、99位、101位、103位、111位、131位、133位、134位、135位、136位、139位、140位、143位、145位および155位(配列番号48、または他の公知のhGH配列における対応する位置)に置換されている。
【0565】
いくつかの実施形態において、天然にコードされていないアミノ酸の1つ以上が、以下の位置:30位、74位、103位(配列番号48、または他の公知のhGH配列における対応する位置)において置換されている。いくつかの実施形態において、天然にコードされていないアミノ酸の1つ以上が、以下の位置:35位、92位、143位、145位(配列番号48、または他の公知のhGH配列における対応する位置)に置換されている。
【0566】
いくつかの実施形態において、以下の位置の1つ以上における天然に存在しないアミノ酸が、水溶性ポリマーと連結されている。当該位置としては、1位より前(すなわちN末端)、1位、2位、3位、4位、5位、8位、9位、11位、12位、15位、16位、19位、22位、29位、30位、32位、33位、34位、35位、36位、37位、38位、39位、40位、41位、42位、43位、44位、45位、46位、47位、48位、49位、52位、55位、57位、59位、65位、66位、69位、70位、71位、74位、88位、91位、92位、94位、95位、97位、98位、99位、100位、101位、102位、103位、104位、105位、106位、107位、108位、109位、111位、112位、113位、115位、116位、119位、120位、122位、123位、126位、127位、129位、130位、131位、132位、133位、134位、135位、136位、137位、138位、139位、140位、141位、142位、143位、144位、145位、146位、147位、148位、149位、150位、151位、152位、153位、154位、155位、156位、158位、159位、161位、168位、172位、183位、184位、185位、186位、187位、188位、189位、190位、191位、192位(すなわちタンパク質のカルボキシル末端)(配列番号48、または他の公知のhGH配列における対応する位置)が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、以下の位置:30位、35位、74位、92位、103位、143位、145位(配列番号48、または他の公知のhGH配列における対応する位置)の1つ以上における天然に存在しないアミノ酸が、水溶性ポリマーと連結されている。いくつかの実施形態において、以下の位置:35位、92位、143位、145位(配列番号48、または他の公知のhGH配列における対応する位置)の1つ以上における天然に存在しないアミノ酸が、水溶性ポリマーと連結されている。
【0567】
hGHアンタゴニストを生成するための部位のいくつかとしては、1位、2位、3位、4位、5位、8位、9位、11位、12位、15位、16位、19位、22位、103位、109位、112位、113位、115位、116位、119位、120位、123位、127位もしくは1位より前への付加、またはこれらの任意の組合せ(配列番号48または任意の他のGH配列における対応する位置)が挙げられる。これらの部位を、アゴニスト設計の基準(c)〜(e)を利用して選択した。また、アンタゴニストの設計は、hGHbpに対する結合親和性を高めるための、サイトI残基の部位特異的な修飾を含み得る。
【0568】
<実施例2>
本実施例では、天然にコードされていないアミノ酸を含んでいるhGHポリペプチドの、E. coliにおけるクローニングおよび発現について詳述する。また、本実施例では、修飾されているhGHポリペプチドの生物活性を評価するための方法の1つについて説明する。
【0569】
hGHおよびこれらの断片をクローニングする方法について、米国特許第4,601,980号;米国特許第4,604,359号;米国特許第4,634,677号;米国特許第4,658,021号;米国特許第4,898,830号;米国特許第5,424,199号;および米国特許第5,795,745号(これらの文献は、参照によって本明細書に援用される)に詳述されている。全長のhGH、またはN末端のシグナル配列を欠損しているhGHの成熟形態をコードしているcDNAは、配列番号21および22のそれぞれに示されている。
【0570】
直交性のtRNA(O−tRNA)および直交性のアミノアシルtRNA合成酵素(O−RS)を含んでいる、取り入れられた翻訳系を、天然にコードされていないアミノ酸を含んでいるhGHを発現させるために使用する。O−RSは、天然にコードされていないアミノ酸とともに、O−tRNAを好ましくアミノアシル化する。上記翻訳系は、コードされているセレクターコドンに応じて、hGH内に天然にコードされていないアミノ酸を次々に挿入していく。
【0571】
【表2】
【0572】
修飾hGH遺伝子、および(所望の天然にコードされていないアミノ酸に特異的な)直交性のアミノアシルtRNA合成酵素/tRNA対を含んでいるプラスミドを用いた、E. coliの形質転換によって、hGHポリペプチド内に天然にコードされていないアミノ酸を部位特異的に導入することが可能になる。形質転換されたE. coliは、0.01〜100mMの特定の天然にコードされていないアミノ酸を含んでいる培地において37℃にて培養され、高い忠実度および効率を有して修飾hGHを発現する。天然にコードされていないアミノ酸を含んでいるHisタグつきのhGHは、E. coli宿主細胞によって、封入体または凝集物として生成される。凝集物は、6MのグアニジンHClの変成条件下において可溶化され、親和性精製される。リフォールディングは、50mMのTRIS−HCl、pH8.0、40μMのCuSO
4および2%(w/v)のサルコシル、オーバーナイトの4℃における透析によって実施される。それから、物質は、20mMのTRIS−HCl、pH8.0、100mMのNaCl、2mMのCaCl
2に対して透析され、続いてHisタグが除去される。Boissel et al., (1993) 268:15983-93を参照すればよい。hGHの精製方法は、当業者に公知であり、SDS−PAGE、ウエスタンブロット分析またはエレクトロスプレーイオン化質量分析などによって確認される。
【0573】
図6は、精製したhGHポリペプチドのSDS−PAGEである。Hisタグつき変異体のhGHポリペプチドを、製造者によって提供されているHisタグつきタンパク質の標準的な精製手法によって、ProBond Nickcl-Chelating Resin(Invitrogen、Carlsbad, CA)を用いて精製し、続いてゲルにローディングする前にアニオン交換カラムにかけた。レーン1は、分子量マーカーを示しており、レーン2は、非天然アミノ酸を組み込んでいないN−His hGHを表している。レーン3〜10は、Y35、F92、Y111、G131、R134、K140、Y143およびK145の各位置に、非天然アミノ酸のp−アセチル−フェニルアラニンを含んでいるN−His hGH変異体を含んでいる。
【0574】
hGHポリペプチドの生物活性をさらに評価するために、その受容体とのhGHの相互作用の下流マーカーを測定するアッセイを使用した。内因的に産生された受容体とのhGHの相互作用によって、ヒトIM−9リンパ球細胞種における転写調節ファミリーのメンバーであるSTAT5のシグナル伝達因子および活性因子のチロシンリン酸化が引き起こされる。STAT5の2つの形態、STAT5AおよびSTAT5Bを、IM−9のcDNAライブラリから同定した。例えば、Suva et al., MoI. Endocrinol. (1996) 10(5):508-518を参照すればよい。IM−9細胞におけるヒト成長因子ホルモン受容体は、検出可能なSTAT5のリン酸化を生じるラット成長ホルモンおよびヒトプロラクチンではなく、ヒト成長ホルモンに対して選択的である。重要なことに、ラットGHR(L43R)細胞外ドメイン、およびG120Rを有しているhGHは、hGHに刺激されたpSTAT5のリン酸化に対して効果的に競合する。
【0575】
IM−9を、本発明のhGHポリペプチドを用いて刺激した。ヒトIM−9リンパ細胞を、ATCC(Manassas, VA)から購入され、ピルビン酸ナトリウム、ペニシリン、ストレプトマイシン(Invitrogen, Carlsbad, San Diego)、および10%の熱非動化したウシ胎児血清(Hyclone, Logan, UT)を補ったRPMI1640において培養した。IM−9細胞を、12点の投与量の範囲のhGHポリペプチドを用いた、37℃における10分間にわたる刺激の前に、アッセイ用の培地(フェノールレッドなしの、RPMI、10mMのHepes、1%の熱非動化したチャコール/デキストラン処理したFBS、ピルビン酸ナトリウム、ペニシリンおよびストレプトマイシン)においてオーバーナイトにわたって飢餓状態にした。刺激された細胞を、90%の氷冷したメタノールを用いた氷上における1時間にわたる透過化処理の前に、1%のホルムアルデヒドを用いて固定した。STAT5のリン酸化レベルを、リン酸化STAT5に対する一次抗体(Cell Signaling Technology, Beverly, MA)を用いた、室温において30分間にわたる細胞内染色(これに続いてPEが抱合された二次抗体)によって検出した。サンプル収集を、FACSアレイによって実施し、得られたデータをFlowjoソフトウェア(Tree Star Inc., Ashland, OR)によって解析した。EC
50値を、SigmaPlotを用いたタンパク質濃度に対する蛍光強度平均(MFI)を用いてプロットされた投与応答曲線から得た。
【0576】
以下の表3は、変異体hGHポリペプチドを用いて生成されたIM−9データをまとめたものである。異なる位置に非天然アミノ酸置換を有している種々のhGHポリペプチドを、上述のようにヒトIM−9細胞を用いて試験した。特に
図7のパネルAはHisタグつきのhGHポリペプチドに関するデータを示しており、
図7のパネルBは、Y143に非天然アミノ酸のp−アセチル−フェニルアラニン置換を含んでいるHisタグつきのhGHに関するIM−9データを示している。PEG付加されている非天然アミノ酸を含んでいるhGHポリペプチドの生物活性を評価するために、同じアッセイを使用した。
【0577】
【表3】
【0578】
【表4】
【0579】
<実施例3>
本実施例では、カルボニル含有アミノ酸の導入、およびこれに続くアミノオキシ含有PEGとの反応について詳述する。
【0580】
本実施例では、ケトンを含有している天然にコードされていないアミノ酸を組み込んでいる4HBポリペプチドの生成方法について示す。ここで、当該アミノ酸を、約5000の分子量のアミノオキシ含有PEGと後ほど反応させる。実施例1の基準にしたがたって同定された35位、88位、91位、92位、94位、95位、99位、103位、103位、111位、120位、131位、133位、134位、135位、136位、139位、140位、143位、145位および155位の各残基(hGH)、実施例32の基準にしたがたって同定された各残基(hIFN)、実施例36の基準にしたがたって同定された59位、63位、67位、130位、131位、132位、134位、137位、160位、163位、167位および171位の各残基(hG−CSF)、または実施例の基準にしたがたって同定された21位、24位、38位、83位、85位、86位、89位、116位、119位、121位、124位、125位、126位、127位および128位の各残基(hEPO)が、以下の構造:
【0581】
【化17】
【0582】
を有している天然にコードされていないアミノ酸を用いて別々に置換されている。
【0583】
p−アセチル−フェニルアラニンのhGHへの部位特異的組込みに利用された配列は、配列番号2(hGH)および配列番号4(muttRNA、M.ジャナスキー、mtRNA
TyrCUA)、ならびに上記実施例2に記載の配列番号16、17または18(TyrRS LW1、5または6)である。p−アセチル−フェニルアラニンのhIFNへの部位特異的組込みに利用された配列は、配列番号24(hIFN)および配列番号4(muttRNA)、ならびに上記実施例2に記載の配列番号16、17または18(TyrRS LW1、5または6)である。p−アセチル−フェニルアラニンのhG−CFSへの部位特異的組込みに利用された配列は、配列番号29(hG−CFS)および配列番号4(muttRNA)、ならびに上記実施例2に記載の配列番号16、17または18(TyrRS LW1、5または6)である。p−アセチル−フェニルアラニンのhEPOへの部位特異的組込みに利用された配列は、配列番号38(hEPO)および配列番号4(muttRNA)、ならびに上記実施例2に記載の配列番号16、17または18(TyrRS LW1、5または6)である。
【0584】
いったん改変を受けると、カルボニル含有アミノ酸を含んでいる4HBポリペプチドバリアントは、以下の形態:
R−PEG(N)−O−(CH
2)
n−NH
2
(ここで、Rはメチルであり、nは3であり、Nは約5000の分子量である)
のアミノオキシ含有PEGと反応させられる。p−アセチルフェニルアラニンを含んでいる精製4HBを、25mM(Sigma Chemical, St. Louis, MO) pH6.0、25mMのHepes(Sigma Chemical, St. Louis, MO) pH7.0、または10mMの酢酸ナトリウム(Sigma Chemical, St. Louis, MO) pH4.5に、10mg/mLの濃度に溶解し、10〜100倍の過剰量のアミノオキシ含有PEGと反応させ、それから10〜16時間にわたって室温において攪拌する(, W. J. Am. Chem. Soc. 1959, 81 , pp 475)。それから、PEG−4HBを、即座に精製および分析するために適切な緩衝液に希釈する。
【0585】
<実施例4>
アミド結合を介してPEGと連結されているヒドロキシルアミン基を含んでいるPEGとの抱合。
【0586】
以下の構造:
R−PEG(N)−O−(CH
2)
2−NH−C(O)(CH
2)
n−O−NH
2
(ここで、Rはメチルであり、nは4であり、Nは約20000の分子量である)
を有しているPEG試薬を、実施例3に記載の手法を用いて、ケトンを含有している天然にコードされていないアミノ酸と結合させる。反応、精製および分析の条件は、実施例3に記載の通りである。
【0587】
<実施例5>
本実施例では、2つの異なる天然にコードされていないアミノ酸の、4HBポリペプチドへの組込みについて詳述する。
【0588】
本実施例では、ケトン官能基を含んでいる天然にコードされていないアミノ酸を含んでいるhGHの生成方法について示す。当該hGHは、以下の残基:E30、E74、Y103、K38、K41、K140およびK145のうちの2つの位置に、当該天然にコードされていないアミノ酸を含んいる。当該hGHポリペプチドは、サプレッサーコドンが核酸内の2つの部位に導入されていることを除いて、実施例1および2に記載の通りに調製される。
【0589】
本実施例では、実施例32にしたがって同定された残基のうちの2つの位置において、ケトン官能基を含んでいる天然にコードされていないアミノ酸を含んでいるhIFNの生成方法について示す。ここで、X*は、天然にコードされていないアミノ酸を表す。当該hIFNは、サプレッサーコドンが核酸内の2つの部位に導入されていることを除いて、実施例32および33に記載の通りに調製される。
【0590】
本実施例では、ケトン官能基を含んでいる天然にコードされていないアミノ酸を含んでいるhG−CSFの生成方法について示す。当該hG−CSFは、以下の残基:W59X*およびT134X*;L134X*およびS67X*;S67X*およびQ91X*;T134X*およびSer77X*うちの2つの位置に、当該天然にコードされていないアミノ酸を含んでいる。ここで、X*は天然にコードされていないアミノ酸を表す。当該hG−CSFポリペプチドは、サプレッサーコドンが核酸内の2つの部位に導入されていることを除いて、実施例36および37に記載の通りに調製される。
【0591】
本実施例では、ケトン官能基を含んでいる天然にコードされていないアミノ酸を含んでいるhEPOの生成方法について示す。当該hEPOは、以下の残基:N24X*およびG113X*;N38X*およびQ115X*;N36X*およびS85X*;N36X*およびA125X*;N36X*およびA128X*;Q86X*およびS126X*うちの2つの位置に、当該天然にコードされていないアミノ酸を含んでいる。ここで、X*は天然にコードされていないアミノ酸を表す。当該hEPOポリペプチドは、サプレッサーコドンが核酸内の2つの部位に導入されていることを除いて、実施例40および41に記載の通りに調製される。
【0592】
<実施例6>
本実施例では、ヒドラジド含有PEGに対する4HBポリペプチドの抱合、およびそれに続くインシチュ還元について詳述する。
【0593】
カルボニル含有アミノ酸を組み込んでいる4HBポリペプチドは、実施例2および3、実施例33および3、実施例37および3、ならびに実施例41および3に記載の手法にしたがって調製される。いったん改変を受けると、以下の構造:
R−PEG(N)−O−(CH
2)
2−NH−C(O)(CH
2)
n−X−NH−NH
2(ここで、Rはメチルであり、nは4であり、Nは約20000の分子量であり、Xはカルボニル(C=O)基である)
を有しているヒドラジド含有PEGが、4HBポリペプチド対して抱合される。p−アセチルフェニルアラニンを含んでいる精製4HBを、25mM(Sigma Chemical, St. Louis, MO) pH6.0、25mMのHepes(Sigma Chemical, St. Louis, MO) pH7.0、または10mMの酢酸ナトリウム(Sigma Chemical, St. Louis, MO) pH4
.5に、0.1〜10mg/mLの濃度に溶解し、10〜100倍の過剰量のヒドラジド含有PEGと反応させ、対応するヒドラゾンを、ストック濃度1MのNaCNBH
3(Sigma Chemical, St. Louis, MO)の添加によってインシチュにおいて還元する。4℃〜室温までの暗所において18〜24時間にわたって、反応を実施する。反応を、約pH7.6の1MのTris(Sigma Chemical, St. Louis, MO)をTrisの最終濃度が50mMになるまで加えることによって停止するか、または即座に精製するための適切な緩衝液に希釈する。
【0594】
<実施例7>
本実施例では、アルキン含有アミノ酸の4HBポリペプチドへの導入およびmPEG−アジドを用いた誘導体化ついて詳述する。
【0595】
以下の残基:35位、88位、91位、92位、94位、95位、99位、103位、131位、133位、134位、135位、136位、140位、143位、145位および155位のそれぞれが、以下の天然にコードされていないアミノ酸(hGH:配列番号2):
【0596】
【化18】
【0597】
を用いて置換される。
【0598】
p−プロパルギル−チロシンのhGHへの部位特異的組込みに使用された配列は、配列番号2(hGH)、配列番号4(muttRNA、M.ジャナスキー、mtRNA
TyrCUA)、ならびに上記実施例2に記載の配列番号9、10または11である。実施例32にしたがって同定されたhIFNの残基のいずれかが、この天然にコードされていないアミノ酸を用いて置換される。p−プロパルギル−チロシンのhIFNへの部位特異的組込みに使用された配列は、配列番号24(hIFN)、配列番号4(muttRNA、M.ジャナスキー、mtRNA
TyrCUA)、ならびに上記実施例2に記載の配列番号9、10または11である。hG−CSFの以下の残基:59位、63位、67位、130位、131位、132位、134位、137位、160位、163位、167位および171位のぞれぞれが、この天然にコードされていないアミノ酸を用いて置換される。p−プロパルギル−チロシンのhG−CSFへの部位特異的組込みに使用された配列は、配列番号29(hG−CSF)、配列番号4(muttRNA、M.ジャナスキー、mtRNA
TyrCUA)、ならびに上記実施例2に記載の配列番号9、10または11である。hEPOの以下の残基:21位、24位、38位、83位、85位、86位、89位、116位、119位、121位、124位、125位、126位、127位および128位のぞれぞれが、この天然にコードされていないアミノ酸を用いて置換される。p−プロパルギル−チロシンのhEPOへの部位特異的組込みに使用された配列は、配列番号38(hEPO)、配列番号4(muttRNA、M.ジャナスキー、mtRNA
TyrCUA)、ならびに上記実施例2に記載の配列番号9、10または11である。プロパルギルチロシンを含んでいる4HBポリペプチドは、E. coliにおいて発現され、実施例3に記載の条件を用いて精製される。
【0599】
プロパルギルチロシンを含んでいる精製4HBを、PB緩衝液(100mMのリン酸ナトリウム、0.15MのNaCl、pH8)に、0.1〜10mg/mLの濃度に溶解し、10〜100倍の過剰量のアジド含有PEGが反応混合物に加える。それから、触媒量のCuSO
4およびCuワイヤを、反応混合物に加える。混合物をインキュベート(室温もしくは37℃において4時間にわたってか、または4℃においてオーバーナイトが挙げられるが、これらに限定されない)した後に、H
2Oが加えられ、混合物を、透析膜を通してろ過する。サンプルを、付加的に(実施例3に記載の類似の手法によってが挙げられるが、これに限定されない)分析し得る。
【0600】
本実施例では、PEGは、以下の構造:
R−PEG(N)−O−(CH
2)
2−NH−C(O)(CH
2)
n−N
3
(ここで、Rはメチルであり、nは4であり、Nは約10000の分子量である)
を有している。
【0601】
<実施例8>
本実施例では、4HBポリペプチドにおける巨大な疎水性アミノ酸の、プロパルギルチロシンを用いた置換について詳述する。
【0602】
hGHの以下の領域:1〜5(N−末端)、6〜33(Aヘリックス)、34〜74(AヘリックスとBヘリックスとの間の領域、A−Bループ)、75〜96(Bヘリックス)、97〜105(BヘリックスとCヘリックスとの間の領域、B−Cループ)、106〜129(Cヘリックス)、130〜153(CヘリックスとDヘリックスとの間の領域、C−Dループ)、154〜183(Dヘリックス)、184〜191(C−末端)(配列番号2)に存在するPhe、TrpまたはTyrを、実施例7に記載の天然にコードされていないアミノ酸を用いて置換する。同様に、hIFNの以下の領域:1〜9(N−末端)、10〜21(Aヘリックス)、22〜39(AヘリックスとBヘリックスとの間の領域)、40〜75(Bヘリックス)、76〜77(BヘリックスとCヘリックスとの間の領域)、78〜100(Cヘリックス)、101〜110(CヘリックスとDヘリックスとの間の領域)、111〜132(Dヘリックス)、133〜136(DヘリックスとEヘリックスとの間の領域)137〜155(Eヘリックス)、156〜165(C−末端)(配列番号24、または他のIFNポリペプチドによてコードされている対応するアミノ酸)に存在するPhe、TrpまたはTyrを、実施例7に記載の天然にコードされていないアミノ酸を用いて置換する。また、hG−CSFの以下の領域:1〜10(N−末端)、11〜39(Aヘリックス)、40〜70(AヘリックスとBヘリックスとの間の領域)、71〜91(Bヘリックス)、92〜99(BヘリックスとCヘリックスとの間の領域)、100〜123(Cヘリックス)、124〜142(CヘリックスとDヘリックスとの間の領域)、143〜172(Dヘリックス)、173〜175(C−末端)(3
10ヘリックス(44〜47)およびαヘリックス(48〜53)から構成される、短いヘリックス部分であるAヘリックスとBヘリックスとの間の44〜53におけるミニ−Eヘリックスが挙げられる)(配列番号29、ならびに分泌シグナル配列である30のN末端アミノ酸を除いた配列番号28もしくは30、または配列番号35もしくは36の対応するアミノ酸)に存在するPhe、TrpまたはTyrを、実施例7に記載の天然にコードされていないアミノ酸を用いて置換する。hEPOの以下の領域:1〜7(N−末端)、8〜26(Aヘリックス)、27〜54(ABループ、ミニB’ヘリックス(47〜52)を含んでいる)、55〜83(Bヘリックス)、84〜89(BCループ)、90〜112(Cヘリックス)、113〜137(CDループ、ミニC’ヘリックス(114〜121)およびβシート(133〜135)を含んでいる)、138〜161(Dヘリックス)、162〜166(C−末端)に存在するPhe、TrpまたはTyrを、実施例7に記載の天然にコードされていないアミノ酸を用いて置換する。実施例7に記載の天然にコードされていないアミノ酸は、以下の構造を有している:
【0603】
【化19】
【0604】
いったん修飾を受けると、PEGがアルキン含有アミノ酸を含んでいる4HBポリペプチドバリアントと結合させられる。PEGは、以下の構造:
Me−PEG(N)−O−(CH
2)
2−N
3
を有しており、結合手法は、実施例7に手法にしたがう。これによって、天然にコードされていないアミノ酸を含んでいる4HBポリペプチドバリアントが生成される。ここで、当該天然にコードされていないアミノ酸は、天然に存在する巨大な疎水性アミノ酸の1つと等比体積であり、ポリペプチドの異なる部位においてPEG誘導体を用いて修飾される。
【0605】
<実施例9>
本実施例では、1つ以上のPEGリンカーによって隔てられている、4HBポリペプチドのホモダイマー、へテロダイマー、ホモマルチマーまたはへテロマルチマーの生成について詳述する。
【0606】
実施例7において生成されたアルキン含有4HBポリペプチドバリアントを、以下の形態:
N
3−(CH
2)
n−C(O)−NH−(CH
2)
2−O−PEG(N)−O−(CH
2)
2−NH−C(O)−(CH
2)
n−N
3
(ここで、nは4であり、PEGが約5000の平均分子量を有している)
の二官能性PEGと反応させて、4HBポリペプチドのホモダイマーが生成される。ここで、2つの4HB分子はPEGによって物理的に隔てられている。類似の様式において、4HBポリペプチドを1つ以上の他のポリペプチドと結合することによって、ヘテロダイマー、ホモマルチマーまたはへテロマルチマーを形成し得る。結合、精製および分析は、実施例7および3の通りに実施される。
【0607】
<実施例10>
本実施例では、4HBポリペプチドに対する糖部分の結合について詳述する。
【0608】
以下の残基:29位、30位、33位、34位、35位、37位、39位、40位、49位、57位、59位、66位、69位、70位、71位、74位、88位、91位、92位、94位、95位、98位、99位、101位、103位、107位、108位、111位、122位、126位、129位、130位、131位、133位、134位、135位、136位、137位、139位、140位、141位、142位、143位、145位、147位、154位、155位、156位、159位、183位、186位および187位(hGH、配列番号2)の1つを、実施例3に記載の天然にコードされていないアミノ酸を用いて置換する。同様に、以下の残基:1位、2位、3位、4位、5位、6位、7位、8位、9位、12位、13位、16位、19位、20位、22位、23位、24位、25位、26位、27位、28位、30位、31位、32位、33位、34位、35位、40位、41位、42位、45位、46位、48位、49位、50位、51位、58位、61位、64位、65位、68位、69位、70位、71位、73位、74位、77位、78位、79位、80位、81位、82位、83位、85位、86位、89位、90位、93位、94位、96位、97位、100位、101位、103位、105位、106位、107位、108位、109位、110位、111位、112位、113位、114位、117位、118位、120位、121位、124位、125位、127位、128位、129位、131位、132位、133位、134位、135位、136位、137位、148位、149位、152位、153位、156位、158位、159位、160位、161位、162位、163位、164位、165位(配列番号24、または他のIFNポリペプチドによってコードされている対応するアミノ酸)の1つを、実施例3に記載の天然にコードされていないアミノ酸を用いて置換する。以下の残基:30位、31位、33位、58位、59位、61位、63位、64位、66位、67位、68位、77位、78位、81位、87位、88位、91位、95位、101位、102位、103位、130位、131位、132位、134位、135位、136位、137位、156位、157位、159位、160位、163位、164位、167位、170位および171位(配列番号29、または配列番号28、30、35、36もしくは他のG−CSFポリペプチドにおける対応するアミノ酸)の1つが実施例3に記載の天然にコードされていないアミノ酸を用いて置換される。以下の残基:21位、24位、28位、30位、31位、36位、37位、38位、55位、72位、83位、85位、86位、87位、89位、113位、116位、119位、120位、121位、123位、124位、125位、126位、127位、128位、129位、130位、162位、163位、164位、165位、166位(配列番号38、または他のEPOポリペプチドによってコードされている他のアミノ酸)の1つを、実施例3に記載の天然にコードされていないアミノ酸を用いて置換する。実施例3に記載の天然にコードされていないアミノ酸は、以下の構造を有している:
【0609】
【化20】
【0610】
いったん修飾を受けると、カルボニル含有アミノ酸を含んでいる4HBポリペプチドバリアントは、N−アセチルグルコサミン(GlcNAc)のβ結合アミノオキシ類似物と反応させられる。4HBポリペプチドバリアント(10mg/mL)およびアミノオキシ糖を、100mMの酢酸ナトリウムの水性緩衝液(pH5.5)において混合し、7〜26時間にわたって37℃においてインキュベートする。UDPガラクトース(16mM)およびβ−1,4−ガラシトシルトランスフェラーゼ(0.4ユニット/mL)とともに、糖抱合4HBポリペプチド(5mg/mL)を150MmのHEPES緩衝液(pH7.4)において、48時間にわたって周囲温度においてインキュベートすることによって、第2の糖を第1の糖に対して酵素的に結合させる(Schanbacher et al. J Biol Chem. 1970, 245, 5057-5061)。
【0611】
<実施例11>
本実施例では、PEG付加4HBポリペプチドアンタゴニストの生成について詳述する。
【0612】
以下の残基:1位、2位、3位、4位、5位、8位、9位、11位、12位、15位、16位、19位、22位、103位、109位、112位、113位、115位、116位、119位、120位、123位、127位(hGH;配列番号2、または配列番号1もしくは3における対応するアミノ酸)の1つを、実施例3に記載の天然にコードされていないアミノ酸と置換する。以下の残基:2位、3位、4位、5位、7位、8位、16位、19位、20位、40位、42位、50位、51位、58位、68位、69位、70位、71位、73位、97位、105位、109位、112位、118位、148位、149位、152位、153位、158位、163位、164位、165位(hIFN;配列番号24、または配列番号23もしくは25における対応するアミノ酸)の1つを、実施例3に記載の天然にコードされていないアミノ酸と置換する。これらの置換の1つを含んでいるhIFNポリペプチドは、選択された部位および所望の活性に依存する弱いアンタゴニストまたは弱いアゴニストとして潜在的に作用し得る。以下の残基:22位、23位、24位、25位、26位、27位、28位、30位、31位、32位、33位、34位、35位、74位、77位、78位、79位、80位、82位、83位、85位、86位、89位、90位、93位、94位、124位、125位、127位、128位、129位、131位、132位、133位、134位、135位、136位、137位(hIFN;配列番号24、または配列番号23もしくは25における対応するアミノ酸)の1つを、実施例3に記載の天然にコードされていないアミノ酸と置換する。以下の残基:6位、7位、8位、9位、10位、11位、12位、13位、16位、17位、19位、20位、21位、23位、24位、28位、30位、41位、47位、49位、50位、70位、71位、105位、106位、109位、110位、112位、113位、116位、117位、120位、123位、123位、124位、125位、127位、145位(hG−CSF;配列番号29、または配列番号28、30、35もしくは36における対応するアミノ酸)の1つを、実施例3に記載の天然にコードされていないアミノ酸と置換する。以下の残基:2位、3位、5位、8位、9位、10位、11位、14位、15位、16位、17位、18位、20位、23位、43位、44位、45位、46位、47位、48位、49位、50位、52位、75位、78位、93位、96位、97位、99位、100位、103位、104位、107位、108位、110位、131位、132位、133位、140位、143位、144位、146位、147位、150位、154位、155位、159位(hEPO;配列番号38、または配列番号37もしくは39における対応するアミノ酸)の1つを、実施例3に記載の天然にコードされていないアミノ酸と置換する。実施例3に記載の天然にコードされていないアミノ酸は、以下の構造を有している:
【0613】
【化21】
【0614】
いったん修飾を受けると、カルボニル含有アミノ酸を含んでいる4HBポリペプチドバリアントは、以下の形態:
R−PEG(N)−O−(CH
2)
n−O−NH
2
(ここで、Rはメチルであり、nは4であり、Nは20000の分子量である)
のアミノオキシ含有PEGと反応させられて、当該ポリペプチド内の単一の部位において、PEGを用いて修飾されている天然にコードされていないアミノ酸を含んでいる4HBポリペプチドアンタゴニストを生成する。結合、精製および分析は実施例3の通りに実施される。
【0615】
<実施例12>
4HBポリペプチドが直接的に連結されている4HBポリペプチドのホモダイマー、ヘテロダイマー、ホモマルチマーまたはヘテロマルチマーの生成。
【0616】
アルキン含有アミノ酸を含んでいる4HBポリペプチドバリアントは、アジド含有アミノ酸を含んでいる他の4HBポリペプチドバリアントと直接的に結合され得る。これらの4HBポリペプチドバリアントのそれぞれは、実施例10に記載の部位(これらが挙げられるが、これらに限定されない)において天然にコードされていないアミノ酸の置換を含んでいる。これによって、2つの4HBポリペプチドバリアントがサイトII結合表面に抱合されている、対応する4HBポリペプチドのホモダイマーが生成される。類似の様式において、4HBポリペプチドを1つ以上の他の4HBポリペプチドと結合して、ヘテロダイマー、ホモマルチマーまたはへテロマルチマーが形成される。結合、精製および分析は、実施例3、6および7に記載の通りに実施される。
【0617】
<実施例13>
PEG−OH + Br−(CH
2)
n−C≡CR’(A) → PEG−O−(CH
2)
n−C≡CR’(B)
ポリアルキレングリコール(P−OH)を、ハロゲン化アルキル(A)と反応させて、エーテル(B)が形成される。これらの化合物において、nは1〜9の整数であり、R’は、直鎖状または分枝鎖状の飽和または不飽和のC1〜C20アルキル基またはヘテロアルキル基であり得る。また、R’は、飽和もしくは不飽和のC3〜C7環状アルキルもしくは環状ヘテロアルキル、置換もしくは非置換のアリール基もしくはヘテロアリール基、または置換もしくは非置換のアルカリル基(アルキルは飽和または不飽和のC1〜C20アルキルである)もしくはへテロアルカリル基であり得る。典型的に、PEG−OHは、800〜40000ダルトン(Da)の分子量を有しているポリエチレングリコール(PEG)またはモノメトキシポリエチレングリコール(mPEG)である。
【0618】
<実施例14>
mPEG−OH + Br−CH
2−C−CH → mPEG−O−CH
2−C=CH
20000Daの分子量を有しているmPEG−OH(mPEG−OH 20kDa;2.0g、0.1mmol、Sunbio)を、THF(35mL)におけるNaH(12mg、0.5mmol)溶液を用いて処理した。キシレン(0.56mL、5mmol、50当量、Aldrich)における80重量%の溶液として溶解したプロパルギルブロマイドの溶液、および触媒量のKIを、上記溶液に加え、生じた混合物を2時間にわたって加熱して還流した。それから、水(1mL)を加え、溶媒を真空中において除去した。残余物にCH
2Cl
2(25mL)を加え、有機層を分離し、無水Na
2SO
4に通して乾燥し、容積が約2mLに減らした。このCH
2Cl
2溶液をジエチルエーテル(150mL)に滴下して加えた。生じた沈殿物を回収し、冷却したジエチルエーテルを用いて数回にわたって洗浄し、乾燥して、プロパルギル−O−PEGが生成された。
【0619】
<実施例15>
mPEG−OH + Br−(CH
2)
3−C≡CH → mPEG−O−(CH
2)
3−C≡CH
20000Daの分子量を有しているmPEG−OH(mPEG−OH 20kDa;2.0g、0.1mmol、Sunbio)を、THF(35mL)におけるNaH(12mg、0.5mmol)溶液を用いて処理した。それから、50当量の5−ブロモ−1−ペンチン(0.53mL、5mmol、Aldrich)および触媒量のKIを、混合物に加えた。生じた混合物を16時間にわたって加熱して、還流し、それから、水(1mL)を加え、溶媒を真空中において除去した。残余物にCH
2Cl
2(25mL)を加え、有機層を分離し、無水Na
2SO
4に通して乾燥し、容積が約2mLに減した。このCH
2Cl
2溶液をジエチルエーテル(150mL)に滴下して加えた。生じた沈殿物を回収し、冷却したジエチルエーテルを用いて数回にわたって洗浄し、乾燥して、対応するアルキンが生成された。5−クロロ−1−ペンチンを類似の反応に使用し得る。
【0620】
<実施例16>
(1)m−HOCH
2C
6H
4OH + NaOH + Br−CH
2−C≡CH → m−HOCH
2C
6H
4O−CH
2−C≡CH
(2)m−HOCH
2C
6H
4O−CH
2−C≡CH + MsCl + N(Et)
3
→ m−MsOCH
2C
6H
4O−CH
2−C≡CH
(3)m−MsOCH
2C
6H
4O−CH
2−C≡CH + LiBr → m−Br−CH
2C
6H
4O−CH
2−C≡CH
(4)mPEG−OH + m−Br−CH
2C
6H
4O−CH
2−C≡CH → mPEG−O−CH
2−C
6H
4O−CH
2−C≡CH
THF(50mL)および水(2.5mL)における3−ヒドロオキシベンジルアルコール(2.4g、20mmol)の溶液に、粉末の水酸化ナトリウム(1.5g、37.5mmol)をまず加え、それから、キシレン(3.36mL、30mmol)における80重量%の溶液として溶解したプロパルギルブロマイドの溶液を加えた。反応混合物を、6時間にわたって加熱して還流した。混合物に対して、10%のクエン酸(2.5mL)を加え、溶媒を真空中において除去した。残余物を、酢酸エチル(3×15mL)を用いて抽出し、混合性の有機層をNaClの飽和溶液(10mL)を用いて洗浄し、MgSO4に通して乾燥し、濃縮されて3−プロパルギロキシベンジルアルコールが生成された。
【0621】
メタンスルホニルクロライド(2.5g、15.7mmol)およびトリエチルアミン(2.8mL、20mmol)を、0℃においてCH
2Cl
2における化合物3(2.0g、11.0mmol)の溶液に加え、反応物を16時間にわたって冷蔵庫に置いた。通常の結果として、淡黄色の油状物としてのメシレートが生成された。この油状物(2.4g、9.2mmol)を、THF(20mL)に溶解し、LiBr(2.0g、23.0mmol)を加えた。反応混合物を、1時間にわたって加熱して還流し、それから室温まで冷却した。混合物に対して、水(2.5mL)を加え、溶媒を真空中において除去した。残余物を酢酸エチル(3×15mL)を用いて抽出し、混合性の有機層をNaClの飽和溶液(10mL)を用いて洗浄し、Na
2SO
4に通して乾燥し、濃縮して所望の臭化物が生成された。
【0622】
mPEG−OH 20kDa(1.0g、0.05mmol、Sunbio)を、THF(20mL)に溶解し、溶液をアイスバスにおいて冷却した。激しく攪拌しながら、NaH(6mg、0.25mmol)を数分間にわたって加え、次いで、上述のように得られた臭化物(2.55g、11.4mmol)および触媒量のKIを加えた。冷却バスから取り出され、生じた混合物を、12時間にわたって加熱して還流した。水(1.0mL)を混合物に加え、溶媒を真空中において除去した。残余物に対してCH
2Cl
2(25mL)を加え、有機層を分離され、無水Na
2SO
4に通して乾燥し、容積を約2mLまで減した。エーテル溶液(150mL)に滴下して加えられ、白色の沈殿物を生じ、これを回収してPEG誘導体を生成した。
【0623】
<実施例17>
mPEG−NH
2 + X−C(O)−(CH
2)
n−C≡CR’ → mPEG−NH−C(O)−(CH
2)
n−C≡CR’
また、末端にアルキンを含有しているポリ(エチレングリコール)ポリマーは、末端官能基を含んでいるポリ(エチレングリコール)ポリマーを、上述のようなアルキン官能基を含んでいる反応性分子と結合させることによって、得ることができる。nは1〜10であり、R’はHまたはC1〜C4の小さなアルキル基である。
【0624】
<実施例18>
(1)HO
2C−(CH
2)
2−C=CH + NHS + DCC → NHSO−C(O)−(CH
2)
2−C≡CH
(2)mPEG−NH
2 + NHSO−C(O)−(CH
2)
2−C≡CH → mPEG−NH−C(0)−(CH
2)
2−C≡CH
4−ペンチン酸(2.943g、3.0mmol)をCH
2Cl
2(25mL)に溶解した。N−ヒドロキシスクシニミド(3.80g、3.3mmol)およびDCC(4.66g、3.0mmol)を加え、溶液を室温においてオーバーナイトにわたって攪拌した。生じた粗製のNHSエステル7を、さらなる精製なしに以下の反応に使用した。
【0625】
5000Daの分子量を有しているmPEG−NH
2(mPEG−NH
2、1g、Sunbio)を、THF(50mL)に溶解し、混合物を4℃に冷却した。激しく攪拌しながら、NHSエステル7(400mg、0.4mmol)が数回にわけて加えられた。混合物を、室温まで温めながら、3時間にわたって攪拌した。水(2mL)を加え、溶媒を真空中において除去した。残余物にCH
2Cl
2(50mL)を加え、有機層を分離し、無水Na
2SO
4に通して乾燥し、容積を約2mLまで減らした。このCH
2Cl
2溶液を、エーテル(150mL)に滴下して加えた。生じた沈殿物を回収し、真空中において乾燥した。
【0626】
<実施例19>
本実施例では、ポリ(エチレングリコール)のメタンスルホニルエステル(ポリ(エチレングリコール)のメタンスルホネートまたはメシレートとも呼ばれる)の調製について説明する。対応するトシレートおよびハライドが、同様の手法によって調製され得る。
【0627】
mPEG−OH + CH
3SO
2Cl + N(Et)
3 → mPEG−O−SO
2CH
3 → mPEG−N
3
150mLのトルエンにおけるmPEG−OH(3400の分子量、25g、10mmol)を、窒素雰囲気下において2時間にわたって共沸蒸留し、溶液を室温まで冷却した。40mLの無水CH
2Cl
2および2.1mLの無水トリエチルアミン(15mmol)を溶液に加えた。溶液を、アイスバスにおいて冷却し、1.2mLの蒸留したメタンスルホニルクロライド(15mmol)を滴下して加えた。溶液を、室温の窒素雰囲気下においてオーバーナイトに攪拌し、反応を2mLの無水エタノールの添加によって停止させた。混合物を真空中において蒸発させ、主にトルエン以外の溶媒を除去し、ろ過し、真空中においてふたたび濃縮し、それから100mLのトルエンに入れて沈殿させた。ろ過物を冷却したジエチルエーテルを用いて数回に分けて洗浄し、真空中において乾燥して、メシレートが生成された。
【0628】
メシレート(20g、8mmol)を、75mLのTHFに溶解させ、溶液を0℃に冷却した。冷却された溶液に対して、アジ化ナトリウム(1.56g、24mmol)を加えた。反応物を、窒素雰囲気下において2時間にわたって加熱して還流した。それから、溶液を蒸発させ、残余物をCH
2Cl
2(50mL)を用いて希釈した。それから、有機画分をNaCl溶液を用いて洗浄し、無水MgSO
4に通して乾燥した。容積を20mLまで減らし、生成物を、150mLの冷却した無水エーテルに加えることによって沈殿させた。
【0629】
<実施例20>
(1)N
3−C
6H
4−CO
2H → N
3−C
6H
4CH
2OH
(2)N
3−C
6H
4CH
2OH → Br−CH
2−C
6H
4−N
3
(3)mPEG−OH + Br−CH
2−C
6H
4−N
3→mPEG−O−CH
2−C
6H
4−N
3
4−アジドベンジルアルコールは、参照によって本明細書に援用される米国特許第5,998,595号に記載の方法を用いて製造され得る。メタンスルホニルクロライド(2.5b、15.7mmol)およびトリエチルアミン(2.8mL、20mmol)を、0℃において、CH
2Cl
2における4−アジドベンジルアルコール(1.75g、11.0mmol)の溶液に加え、反応物を、16時間にわたって冷蔵庫に置いた。通常の結果として、淡黄色の油状物としてのメシレートを生じた。この油状物(9.2mmol)をTHF(20mL)に溶解させ、LiBr(2.0g、23.0mmol)を加えた。反応混合物を、1時間にわたって加熱して還流した、それから室温まで冷却した。混合物に対して、水(2.5mL)を加え、溶媒を真空中において除去した。残余物を、酢酸エチル(3×15mL)を用いて抽出し、混合性の有機層をNaClの飽和溶液(10mL)を用いて洗浄し、無水Na
2SO
4に通して乾燥し、濃縮して、所望の臭化物が生成された。
【0630】
mPEG−OH 20kDa(2.0g、0.1mmol、Sunbio)を、THF(35mL)におけるNaH(12mg、0.5mmol)の溶液を用いて処理し、上記臭化物(3.32g、15mmol)を触媒量のKIとともに混合物に加えた。生じた混合物を、12時間にわたって加熱して還流した。水(1.0mL)を混合物に加え、溶媒を真空中において除去した。残余物にCH
2Cl
2(25mL)を加え、有機層を分離し、無水Na
2SO
4に通して乾燥し、容積を約2mLまで減らした。これを、エーテル溶液(150mL)に滴下して加えることによって沈殿を生じさせ、沈殿物を回収してmPEG−O−CH
2−C
6H
4−N
3が生成された。
【0631】
<実施例21>
NH
2−PEG−O−CH
2CH
3CO
2H + N
3−CH
2CH
2CO
2−NHS → N
3−CH
2CH
2−C(O)NH−PEG−O−CH
2CH
3CO
2H
NH
2−PEG−O−CH
2CH
3CO
2H(3400の分子量、2.0g)を、NaHCO
3の飽和水溶液(10mL)に溶解し、溶液は0℃に冷却した。激しく攪拌しながら、3−アジド−1−N−ヒドロキシスクシニミド プロピオネート(5当量)を加えた。3時間後に、20mLのH
2Oを加え、混合物を室温においてさらに45分間にわたって攪拌した。pHをH
2SO
4を用いて3に調節し、NaClを約15重量%の濃度になるまで加えた。反応混合物をCH
2Cl
2(100mL×3)を用いて抽出し、Na
2SO
4に通して乾燥し、濃縮した。冷却したジエチルエーテルを用いた沈殿の後に、生成物をろ過によって回収し、真空中において乾燥してω−カルボキシ−アジドPEG誘導体が生成された。
【0632】
<実施例22>
mPKG−OMs + HC≡CLi → mPEG−O−CH
2−CH
2−C≡C−H
当業者に公知のように調製され、−78℃に冷却されたTHFにおけるリチウムアセチリド(4当量)の溶液に対して、激しく攪拌しながら、THFに溶解されたmPEG−OMsの溶液を加える。3時間後に、反応液を室温まで温めて放置し、1mLのブタノールを添加することによって反応を停止させる。それから、20mLのH
2Oを加え、混合物を室温においてさらに45分間にわたって攪拌した。pHを0.5規定のH
2SO
4を用いて3に調節し、NaClを約15重量%の濃度になるまで加えた。反応混合物を、CH
2Cl
2(100mL×3)を用いて抽出し、Na
2SO
4に通して乾燥し、濃縮した。冷却したジエチルエーテルを用いた沈殿の後に、生成物をろ過によって回収し、真空中において乾燥して1−(ブト−3−イニルオキシ)−メトキシポリエチレングリコール(mPEG)が生成された。
【0633】
<実施例23>
L. Wang, et al., (2001)、Science 292:498-500、J.W. Chin et al., Science 301 :964-7 (2003)、J. W. Chin et al., (2002), Journal of the American Chemical Society124:9026-9027;J. W. Chin, & P. G. Schullz, (2002), Chcm Bio Chem 1 1 : 1 135-1137;J. W. Chin, et al., (2002), PNAS United States of America 99: 1 1020-1 1024;およびL, Wang, & P. G. Schuit/, (2002), Chem. Comm., 1-10に記載の方法を用いて、アジド含有アミノ酸およびアセチレン含有アミノ酸を、タンパク質内に部位選択的に組み込んだ。上記アミノ酸をいったん組み込むと、2mMのPEG誘導体、1mMのCuSO
4、および〜1mgのCuワイヤの存在下において、pH8のリン酸緩衝液(PB)における0.01mMのタンパク質を用いて、37℃において1時間にわたって、環付加反応を実施した。
【0634】
<実施例24>
本実施例では、p−アセチル−D,L−フェニルアラニン(pAF)およびm−PEG−ヒドロキシルアミン誘導体の合成について説明する。
【0635】
ラセミ体pAFを、Zhang, Z., Smith, B. A. C, Wang, L., Brock, A., Cho, C. & Schultz, P. G,, Biochemistry, (2003) 42, 6735-6746 において以前に説明されている手法を用いて合成した。
【0636】
m−PEGヒドロキシアミン誘導体を合成するために、以下の手順を実施した。ジクロロメタン(DCM、70mL)における(N−t−Boc−アミノオキシ)酢酸(0.382g、2.0mmol)および1,3−ジイソプロピルカルボジイミド(0.16mL、1.0mmol)の溶液(当該溶液は室温(RT)において1時間にわたって攪拌されている)に対して、メトキシ−ポリエチレングリコールアミン(m−PEG−NH
2、7.5g、00.25mmol、分子量30K、BioVecta)およびジイソプロピルエチルアミン(0.16mL、1.0mmol)を加えた。反応液を室温において48時間にわたって攪拌し、それから約100mLまで濃縮した。混合物を、冷却したエーテル(800mL)に滴下して加えた。t−Boc保護生成物を沈殿させ、ろ過によって回収し、3×100mLのエーテルによって洗浄した。さらに、DCM(100mL)にふたたび溶解させること、および2度にわたってエーテル(800mL)において沈殿させることによって精製した。生成物を真空中において乾燥して、7.2g(96%)が生成され、NMRおよびニンヒドリン反応によって確認された。
【0637】
上述のようにして得られた保護生成物(7.0g)の脱Bocを、0℃の50%TFA/DCM(40mL)において1時間にわたって、それから室温において1時間にわたって実施した。真空中におけるほとんどのTFAの除去の後に、残余物に対して4規定のHClのジオキサン(1mL)溶液を加えることによって、上記ヒドロキシアミン誘導体のTFA塩をHCl塩に転換した。沈殿物をDCM(50mL)に再溶解し、エーテル(800mL)おいて再沈殿させた。最終生成物(6.8g、97%)を、ろ過によって回収し、3×100mLのエーテルを用いて洗浄し、真空中において乾燥し、窒素雰囲気下において保存した。他のPEG(5K、20K)のヒドロキシアミン誘導体は、同じ手順を用いて合成された。
【0638】
<実施例25>
本実施例では、非天然アミノ酸を含んでいるhGHポリペプチドのために使用される発現方法および精製方法について説明する。宿主細胞は、直交性のtRNA、直交性のアミノアシルtRNAおよびhGHのコンストラクトを用いて形質転換されている。
【0639】
形質転換されているDH10B(fis3)を、その凍結したグリセロールストックから小さなスタブによって挿して取り、37℃において、100μg/mlのアンピシリンを有している2mLの完全培地(ロイシン、イソロイシン、微量の金属およびビタミンを補ったグルコース最小培地)においてまず培養した。OD
600が2〜5に達したら、60μlを取って、100μg/mlのアンピシリンを有している60mlの新たな完全培地に移し、2〜5のOD
600に達するまでふたたび37℃において培養した。50mlの培養物を、5リットルの発酵槽(Sartorius BBI)における、100μg/mlのアンピシリンを有している2リットルの完全培地に移した。発酵槽のpHは、炭酸カルシウムを用いてpH6.9に制御され、温度は37℃に制御され、気流は5lpmに制御され、気泡はポリアルキレン消泡剤KFO F119(Lubrizol)を用いて制御された。攪拌速度が自動調節されて、30%以上の溶存酸素濃度を維持し、攪拌速度が最大値に達した場合には、純酸素がエアスパージングを補うために使用された。37℃において8時間が経過した後に、指数関数的な増加率を示しているときに50倍濃度の完全培地を培養物に供給して、0.15/時間の特定の増殖率を維持した。OD
600が約100に達したら、パラ−アセチル−フェニルアラニンのラセミ混合物を3.3mMの最終濃度になるまで加え、温度を28℃まで下げた。0.75時間後に、イソプロピル−b−D−チオガラクトピラノシドを0.25mMの最終濃度になるまで加えた。細胞を、28℃においてさらに8時間にわたって増殖させ、ペレット化し、さらなる処理まで−80℃において凍結した。
【0640】
Hisタグつきの変異体hGHタンパク質を、Invitrogenの取扱説明書によって提供されているHisタグつきタンパク質の標準的な精製手法によって、ProBond Nickcl-Chelating Resin(Invitrogen、Carlsbad, CA)を用いて精製し、続いてアニオン交換カラムにかけた。
【0641】
精製されたhGHを、8mg/mlに濃縮し、緩衝液を反応緩衝液(20mMの酢酸ナトリウム、150mMのNaCl、1mMのEDTA、pH4.0)に交換した。MPEG−オキシアミンの粉末を、PEG:hGHが20:1のモル比においてhGH溶液に加えた。反応を、28℃において2日間にわたって緩やかに振とうさせながら実施した。
【0642】
PEG付加変異体hGHのそれぞれの性質を、動物実験に入る前に3つのアッセイによって評価した。PEG−hGHの純度を、非還元条件課のMES SDSランニングバッファー(Invitrogen)を用いた、4〜12%のアクリルアミドNuPAGE Bis−Trisゲルにかけることによって試験した。クーマシーブルーを用いてゲルを染色した。PEG−hGHのバンドは、濃度測定スキャンに基づいて、95%以上であった。各PEG−hGHにおけるエンドトキシンのレベルは、Charles River Laboratories(Wilmington, MA)から入手したKTA
2キットを用いたキネティックLALアッセイによって試験され、分量ごとに5EU未満であった。PEG−hGHの生物活性は、IM−9 pSTATバイオアッセイ(実施例2に述べている)を用いて評価され、EC
50値は15nM未満であった。
【0643】
<実施例26>
本実施例では、非天然アミノ酸を含んでいるhGHポリヌクレオチドの精製および均一性を評価する方法について説明する。
【0644】
図8は、92位に非天然アミノ酸を含んでいるhGHポリペプチドのSDS−PAGEである。ゲルのレーン3、4および5には、5kDa、20kDaまたは30kDaのPEG分子と共有結合的に連結されているp−アセチル−フェニルアラニンを92位に含んでいるhGHが示されている。PEG付加されている非天然アミノ酸を含んでいるさらなるhGHポリペプチドが
図11に示されている。5μgの各PEG−hGHタンパク質のそれぞれをSDS−PAGEにかけた。
図11のパネルA:レーン1、分子量マーカー;レーン2、WHO rhGHの参照標準(2μg);レーン3および7、30KPEG−F92pAF;レーン4、30KPEG−YpAF;レーン5、30KPEG−R134pAF;レーン6、20KPEG−R134pAF;レーン8、WHO rhGH 参照標準(20μg)。
図11のパネルB:レーン9、分子量マーカー;レーン10、WHO
rhGH 参照標準(2μg);レーン11、30KPEG−F92pAF;レーン12、30KPEG−K145pAF;レーン13、30KPEG−Y143pAF;レーン14、30KPEG−G131pAF;レーン15、30KPEG−F29pAF/G210R;レーン16、WHO rhGH 参照標準(20μg)。
図9は、PEG付加hGHポリペプチド(5kDa、20kDa、30kDaのPEG)の生物活性を示しており、その方法は、実施例2に記載のように実施された。
【0645】
hGH−PEGの純度は、タンパク質分解性の変質(トリプシン切断が挙げられるが、これに限定されない)、続く質量分析解析によって評価され得る(Pepinsky B., et al, J. Pharmcol & Exp. Ther, 297(3): 1059-66 (2001))。また、トリプシン消化を実施する方法は、European Pharmacopoeia (2002) 4
th Edition, pp. 1938に記載されている。これに説明されている方法の改変が行われた。サンプルを、50mMのTRIS−HCl、pH7.5においてオーバーナイトで透析した。rhGHポリペプチドを、37℃のウォーターバスにおいて4時間にわたって、質量比66:1のトリプシン(TPCK処理したトリプシン、Worthington)とともにインキュベートした。サンプルを、数分間にわたって氷上においてインキュベートして消化反応を停止させ、続いてHPLC分析の間には4℃に維持した。消化したサンプル(〜200μg)を、0.1%フルオロ酢酸の入った25×0.46cmのVydac C-8カラム(5μmのビーズサイズ、100Åの孔径)上に載せ、30℃、1ml/分の流量において70分間にわたって0〜80%のアセトニトリルの勾配を用いて溶出した。トリプシン処理したペプチドの溶出を214nmにおける吸収によってモニターした。
【0646】
図10のパネルAは、トリプシン切断部位を有するhGHの一次構造、および矢印を用いて特定されている非天然アミノ酸置換、F92pAFを示している(図面はBecker et al. Biotechnol λppl Biochem. (1988) 10(4):326- 337から改変した)。パネルBは、PEG付加されている天然にコードされていないアミノ酸を含んでいるhGHポリペプチド(30k PEG His
6−F92pAF、Aと表示)から生成されたペプチド、天然にコードされていないアミノ酸を含んでいるhGHポリペプチドから生成されたペプチド(His
6−F92pAF rhGH、Bと表示)、および野生型のhGHから生成されたペプチド(WHO rhGH、Cと表示)の重ね合わせのトリプシン地図である。WHO rhGH、およびHis
6−F92pAF rhGHの比較から、ペプチドピーク1およびペプチドピーク2の2つのピークのシフトのみが明らかになり、残りのピークは同一である。これらの差異は、ピーク1のシフトを生じている発現されたHis
6−F92pAF rhGHのN末端におけるHis
6の付加に起因し、一方で、ピーク9のシフトは、92番目の残基におけるフェニルアラニンのp−アセチル−フェニルアラニンを用いた置換に起因している。パネルCにはパネルBから得られたピーク9の大きさを示している。His
6−F92pAFおよび30K PEG His
6−F92pAF rhGHのトリプシン地図の比較から、His
6−F92pAF rhGHのPEG付加によってピーク9の消失が明らかになっており、したがって、修飾がペプチド9に特異的であることは確かである。
【0647】
<実施例27>
本実施例では、非天然アミノ酸を含んでいる2つのhGHポリペプチドから形成されているホモダイマーについて説明する。
【0648】
図12は、92位にp−アセチル−フェニルアラニンを含んでいるHisタグつきのhGH−ポリペプチドから得られたIM−pアッセイの結果を、実施例25に記載のようにhGHのPEG付加のための官能基および反応性を有している二官能性であるリンカーを用いて抱合されているこの修飾ポリペプチドのホモダイマーと比較している。
【0649】
<実施例28>
本実施例では、hGHアンタゴニストとして機能するモノマーおよびダイマーのhGHポリペプチドについて説明する。
【0650】
G120R置換がサイトII内に導入されているhGH変異タンパク質は、単一のhGH受容体と結合可能であるが、2つの受容体を二量体化できない。当該変異タンパク質は、おそらく細胞内シグナル経路を活性化することなく受容体部位を占有することによって、インビトロにおいてhGHアンタゴニストとして作用する(Fuh, G., et al., Science256: 1677-1680 (1992))。
図13のパネルAは、G120R置換を有しているhGHによるpSTAT5のリン酸化を測定するIM−9アッセイのデータを示している。同じ部位(G120)に組み込まれている非天然アミノ酸を有しているhGHポリペプチドは、
図13のパネルBに示されているように、これもhGHアンタゴニストとして作用する分子を生じた。
図13のパネルBに示されているhGHアンタゴニストのダイマーは、実施例25に記載のようにhGHのPEG付加のための官能基および反応性を有している二官能性のリンカーと抱合されて構築されている。
図14は、このダイマーもIM−9アッセイにおける生物活性を欠失していることを示している。
【0651】
PEGリンカーによって抱合されているG120pAF改変hGHポリペプチドと、G120pAFを含んでいるhGHポリペプチドを比較する付加的なアッセイが実施された。STAT5のリン酸化を誘導するWHO hGHは、用量反応の範囲のモノマーおよびPEGリンカーによって抱合されたダイマーを用いて競合された。また、モノマーおよびダイマーがIM−9細胞およびラットGHR(L43R)/BAF3細胞において細胞表面受容体の結合に関して、GHと競合することを示す、表面受容体競合試験が実施された。表5はこれらの試験から得られたデータを示している。
【0652】
【表5】
【0653】
<実施例29>
本実施例では、hGH活性およびhGH受容体に対するhGHポリペプチドの親和性の測定について詳述する。
【0654】
(ラットGH受容体のクローニングおよび精製)
GH受容体の細胞外ドメイン(GHR ECD、アミノ酸S29〜T238)を、pETベクター(Novagen)のNdeI部位とHindIII部位との間に、C末端6Hisタグをつけてインフレームにクローニングした。L43のRへの変異を、推定のヒトGH受容体結合部位(Souza et al., Proc Natl Acad Sci U S A. (1995) 92(4): 959-63)に対してさらに導入した。組換えタンパク質を、4〜5時間にわたって30℃において0.4mgIPTGを用いた誘導によって、BL21(DE3)E. coli細胞(Novagen)において産生した。細胞を溶解した後に、ペレットを、30mL、50mMのTris pH7.6、100mMのNaCl、1mMのEDTA、1%Triton X−100を有するダウンス(dounce)に再懸濁することによって、4回にわたって洗浄し、Triton X100なしの同じ緩衝液を用いて2回にわたって洗浄した。この時点で、封入体は95%を超えるGHR ECDから構成され、0.1MのTris、pH11.5、2Mの尿素に可溶化された。リフォールディングを、50mMのTris、pH7.8、1MのL−アルギニン、3.7mMのシスタミン、6.5mMのシステアミンを用いて平衡化されたS100(Sigma)ゲルろ過カラムに、封入体溶液の一部を通すことによって実施した。可溶性のタンパク質を含有している画分を、混合し、50mMのTris、pH7.6、200mMのNaCl、10%のグリセロールに対して透析した。サンプルを、簡単に遠心分離してあらゆる沈殿を除去し、製造者の取扱説明書にしたがって、Talon
樹脂(Clontech)の一部とともにインキュベートした。5mMのイミダゾールを補った20倍容積の透析緩衝液を用いて樹脂を洗浄した後に、タンパク質を、透析緩衝液に入れた120mMのイミダゾールを用いて溶出した。最後に、サンプルを、50mMのTris、pH7.6、30mMのNaCl、1mMのEDTA、10%のグリセロールに対して、オーバーナイトで透析し、簡単に遠心分離してあらゆる沈殿物を除去し、グリセロールの最終濃度を20%に調節し、分注し、−80℃において保存した。タンパク質の濃度を、算出されたε=65700M
−1*cm
−1の吸光係数を用いてOD(280)によって測定した。
【0655】
(GHRに対するGHの結合のBiocore(商標)分析)
約600〜800RUのGHR ECDが、製造者によって推奨されている通りに、標準的なアミン結合手順を用いてBiacore(商標) CM5チップ上に固定化された。大部分の受容体がこの技術によって不活化されたにもかかわらず、この固定化のレベルが、結合動態に顕著な変化を示さずに、約100〜150RUの極大のGH結合応答を生じるために十分であることが実験的に見出された。例えば、Cunningham et al. J Mol Biol. (1993) 234(3): 554-63およびWells JA. Proc Natl Acad Sci USA (1996) 93(1): 1-6を参照すればよい。
【0656】
HBS−EP緩衝液(Biacore(商標)、Pharmacia)に溶解させた種々の濃度(0.1〜300nM)の野生型および変異体のGHが、40μl/分の流速において4〜5分間にわたってGHR表面の上に注入され、分離作用が注入後から15分間にわたってモニターされた。表面は、4.5MのMgCl
2を15秒間の間隔を空けて律動的に送ることによって再生された。少なくとも100回の再生サイクルの後に、結合親和性の最小の損失(1〜5%)のみが観察された。受容体が固定化されていない基準細胞が、任意の緩衝バルク効果(buffer bulk effect)および非特定結合を差し引くために使用された。
【0657】
GH力価実験から得られた動的結合データは、BiaEvaluation4.1ソフトウエア(BIACORE(商標))を用いて処理された。“2価の検体”の会合モデルが、提唱されているその後の1:2(GH:GHR)の二量体化と一致して、良好な適合(通常は3以下のchi
2値)を示した(Wells JA. Proc Natl Acad Sci USA (1996) 93(1): 1 - 6)。平行解離定数(Kd)は、個々の速度定数(K
off/K
on)の比として算出された。
【0658】
表6は、CM5チップ上に固定化されたラットGHR(L43R)を用いたBiacore(商標)から得られた結合パラメータを示す。
【0659】
【表6】
【0660】
(GHRの安定な細胞株)
IL−3依存性のマウス細胞株であるBAF3は、RPMI1640、ピルビン酸ナトリウム、ペニシリン、ストレプトマイシン、10%の熱非動化したウシ胎児血清、50μMの2−メルカプトエタノール、およびIL−3の供給源としてのWHEI細胞株の10%の馴化培地において、継代された。すべての細胞培養物は、37℃の加湿した5%CO
2の雰囲気に維持された。
【0661】
BAF3細胞株は、ラットGHR(K43R)の安定な細胞クローン、2E2−2B12−F4を確立するために使用された。簡単に説明すると、1×10
7の中程度に密なBAF3細胞は、ラットGHR(L43R)のcDNAの全長を含んでいる線状化したpcDNA3.1プラスミドの15μgを用いて、エレクトロポレーションにかけた。800μg/mlのG418および5nMのWHO hGHを含んでいる培地における限界希釈によるクローニングの前に、トランスフェクトされた細胞は、48時間にわたって放置して回復させた。GHRを発現する形質移入体は、ヒトGHRに対する抗体(R&D Systems, Minneapolis, MN)を用いた表面染色によって同定され、FACSアレイ(BD Bioscicnces, San Diego, CA)において分析された。それから、GHRを高レベルに発現する形質移入体が、BrdU増殖アッセイ(後述の通り)におけるWHO hGHに対する増殖活性に関して、スクリーニングされた。安定にトランスフェクトされたラットGHR(L43R)細胞クローンは、表面受容体発現および増殖能に関して一定のプロファイルを有する所望の形質移入体を、1.2mg/mlのG418および5nMのhGHの存在下において、さらに2回にわたって繰り返しのサブクローニングすることによって確立された。こうして確立された細胞クローン2E2−2B12−F4は、hGHの非存在下において1.2mg/mlのG418を添加したBAF3培地おいて通常の通りに維持された。
【0662】
(BrdU標識による増殖)
血清をスターブさせたラットGHR(L43R)発現BAF3細胞株、2E2−2B12−F4は、96ウェルプレートに5×10
4細胞/ウェルの密度に入れられた。細胞は、12点の用量範囲のhGHを用いて活性化され、同時に50μMのBrdU(Sigma, St. Louis, MO)を用いて標識された。48時間の培養後に、細胞は、100μlのBDサイトフィックス/サイトパーム溶液(BD Bioscienccs)を用いて、30分間にわたって室温において、固定/透過化処理された。BrdUエピトープを露出させるために、固定/透過化処理された細胞は、1時間にわたって37℃において、30μl/ウェルのDNase(Sigma)を用いて処理された。APC抱合抗BrdU抗体(BD Bioscienccs)を用いて免疫蛍光染色によって、FACSアレイに対するサンプル分析が可能になった。
【0663】
表7は、pSTAT5(IM−9)およびBrdU増殖アッセイに関してプロファイルしたPEG hGH変異体の生物活性を示す。WHO hGHは、アッセイ間の比較のための要素として発現されている。
【0664】
【表7】
【0665】
<実施例30>
本実施例では、PEG付加hGHのインビボおよびインビトロにおける活性を測定する方法について説明する。
【0666】
(細胞結合アッセイ)
細胞(3×10
6)は、種々の濃度(容積:10μl)の非標識のGH、hGHまたはGM−CSFの存在下または非存在下、ならびに
125I−GH(約100000cpmまたは1ng)の存在下のPBS/1%のBSA(100μl)において(総容積:120μl)、0℃において90分間にわたって2組に分けてインキュベートされる。それから、細胞は、再懸濁され350μlのプラスティックチューブ内の氷冷した200μlのFCSの上に層状に載せられ、遠心分離(1000g;1分間)された。ペレットは、チューブの端部を切り取ることによって回収され、ペレットおよび上清は、ガンマカウンター(Packard)において別々にカウントされる。
【0667】
特異的結合(cpm)が、100倍過剰量の非標識GHの存在下(非特異的結合)における結合(cpm)を引いた、競合物の存在下(2組の平均)における結合の総量(cpm)として、測定される。非特異的結合は使用された細胞種のそれぞれについて測定される。実験は、
125I−GHの同じ調製物を用いて別々の日に実施され、内部整合性を示す必要がある。
125I−GHは、GH受容体産生細胞に対する結合を示している。結合は、非標識の天然GHまたはhGHによって濃度依存的様式に阻害されるが、GM−CSFまたは他の陰性対照によって阻害されない。天然の
125I−GH、類似の天然GHの結合に対するhGHの競合能は、受容体が両方の形態を等しく十分に認識することを示唆している。
【0668】
(PEG付加hGHのインビボにおける試験)
PEG−hGH、非修飾hGHおよび緩衝液溶液は、マウスまたはラットに投与される。結果は、非修飾hGHに比べて、本発明のPEG付加hGHの優れた活性および延長された半減期を示し、有意に増加した体重によって表される。
【0669】
(抱合hGHおよび非抱合hGH、ならびにこれらのバリアントのインビボ半減期の測定)
すべての動物実験は、AAALACに認可された施設において、セントルイス大学の研究機関内の動物の管理および使用に関する委員会によって推奨されている手順にしたがって実施された。ラットは、12時間の明暗サイクルの部屋において別々のケージに入れて飼われた。動物には、保証されたピューリナのげっ歯類用の固形飼料5001および水を自由に入手させた。下垂体切除したラットに対して、飲料水に5%のグルコースを付加的に加えた。
【0670】
薬物動態試験
各PEG付加変異体hGHの品質は、動物実験に入る前に、3つのアッセイによって評価された。PEG−hGHの純度は、非還元条件課のMES SDSランニングバッファー(Invitrogen,Carlsbad, CA)を用いた、4〜12%のアクリルアミドNuPAGE Bis−Trisゲルにかけることによって試験された。ゲルは、クーマシーブルーを用いて染色された。PEG−hGHのバンドは、濃度測定スキャンに基づいて、95%以上であった。各PEG−hGHにおけるエンドトキシンのレベルは、Charles River Laboratories(Wilmington, MA)から入手したKTA
2キットを用いたキネティックLALアッセイによって試験され、分量ごとに5EU未満であった。PEG−hGHの生物活性は、IM−9 pSTATバイオアッセイ(実施例2に述べている)を用いて評価され、EC
50値は15nM未満であった。
【0671】
PEG修飾された成長ホルモン化合物の薬物動態特性は、Charles River Laboratories(Wilmington, MA)から入手したスピローグ−ダウリーラット(261〜425g)において、互いに、そして非PEG付加成長ホルモンと比較された。血液回収のために、カテーテルが頚動脈内に、外科的に取り付けられた。カテーテルの取り付けに成功した後に、動物は、投与前に処置群(一群ごとに3〜6匹)に割り当てられた。動物は、1mg/kgの化合物を含んでいる0.41〜0.55ml/kgの投与量を用いた投与を皮下に受けた。血液サンプルは、留置カテーテルを介して種々の時点において、EDTA被覆されたミクロチューブに回収された。血漿は遠心分離後に回収され、分析するまで−80℃に保存された。化合物の濃度は、Bio Source International(Camarillo, CA)またはDiagnostic Systems Laboratories(Webster, TX)から入手した、抗体サンドイッチ成長ホルモンELISAキットを用いて測定された。濃度は、投与された類似物に対応する標準を用いて算出された。薬物動態パラメータは、モデルプログラムWinNonlin(Pharsight, version 4.1)を用いて見積もられた。線形アップ/対数ダウン(linea-up/log-down)台形積分を用いた非区分(noncompartment)分析が使用され、濃度データが均一に加重された。
【0672】
図15は、ラットにおける単回の皮下投与後の、血漿濃度の平均(±標準偏差)を示している。ラット(一群ごとにn=3〜4)は、1mg/kgのhGH野生型タンパク質(WHO hGH)、HisタグつきのhGHポリペプチド(His−hGH)、または30kDaのPEGと共有結合的に連結された非天然アミノ酸p−アセチル−フェニルアラニンを92位に含んでいるhGHポリペプチド(30KPEG−pAF92(his)hGH)の単回の瞬時大量投与を受けた。血漿サンプルは、図示された時間間隔において採取され、記載の通りに注入された化合物についてアッセイされた。30KPEG−pAF92(his)hGHは、対照hGHと比べて、劇的に延長された循環時間を有している。
【0673】
図16は、ラットにおける単回皮下投与後における、血漿濃度の平均(±標準偏差)を示している。ラット(一群ごとにn=3〜4)は、1mg/kgのタンパク質の単回の瞬時大量投与を受けた。6つの異なる位置のそれぞれにおいて30kDaのPEGと共有結合的に連結された非天然アミノ酸p−アセチル−フェニルアラニンを含んでいるhGHポリペプチドが、WHO hGHおよび(his)−hGHと比較された。血漿サンプルは、図示された時間の間隔において採取され、記載の通りに注入された化合物についてアッセイされた。表8は、
図18に示されているhGHポリペプチドの単回投与量の投与に関する薬物動態パラメータを示している。濃度−時間曲線は、非区分分析(Pharsight, version 4.1)によって評価された。示されている値は、平均値(±標準偏差)である。Cmax:最大濃度;terminalt
1/2:末梢半減期;AUC0−>inf:無限大まで推定された濃度−時間曲線下にある面積;MRT:平均滞留時間;Cl/f;見かけ上の総血漿除去;Vz/f:末期における分布の見かけ上の体積。
【0674】
【表8】
【0675】
薬物動態試験
下垂体切除を受けたオスのスピローグ−ダウリーラットが、Charles River Laboratories(Wilmington, MA)から入手された。下垂体は、3〜4週齢において外科的に切除された。動物は、3週間にわたって馴化のために放置され、その間に体重がモニターされた。試験の開始までに7日間に0〜8gの体重増加を示したラットが、処置群に含められ、無作為化された。試験を通して、ラットは、順次に毎日、体重が測定され、麻酔がかけられ、採血され、(適用される場合に)投与された。血液は、ヘパリンが添加された毛細管を用いて眼窩隔膜から回収され、EDTA被覆されたミクロチューブに収納された。血漿は、遠心分離によって単離され、分析まで−80℃に保存された。
【0676】
図17は、下垂体切除を受けたラットにおける単回の皮下投与後の、血漿濃度の平均(±標準偏差)を示している。ラット(一群ごとにn=5〜7)は、2.1mg/kgのタンパク質の単回の大量瞬時投与を受けた。30kDaのPEGと共有結合的に連結されている非天然アミノ酸p−アセチル−フェニルアラニンをそれぞれ異なる2つの位置(35位、92位)に含んでいるhGHポリペプチドから得られた結果が示さている。血漿サンプルは、図示された時間の間隔において採取され、記載の通りに注入された化合物についてアッセイされた。
【0677】
ペプチドIGF−1は、ソマトメジンまたはインスリン様成長因子のファミリーのメンバーである。IGF−1は、成長ホルモンの多くの成長促進作用を媒介する。IGF−1濃度は、規定のラット/マウスIGF−1標準物質(Diagnosic Systems Laboratories)に対する競合的な結合酵素免疫アッセイキットを用いて測定された。有意差が、両側分布、独立した均等な分散を用いたt検定によって認められた。
図18のパネルAは、下垂体切除を受けたラットのにおける化合物の評価を示している。ラット(一群ごとにn=5〜7)は、単回投与または毎日の投与のいずれかを皮下に受けた。動物は、順次に体重が測定され、体重が測定され、麻酔がかけられ、採血され、毎日(適用される場合に)投与された。体重の結果は、プラシーボ処理、野生型hGH(hGH)、HisタグつきのhGH((his)hGH)および30kDaのPEGと共有結合的に連結されているp−アセチル−フェニルアラニンを35位および92位に含んでいるhGHポリペプチドについて示されている。
図18のパネルB−PEG付加されている(35位、92位)天然にコードされていないアミノ酸を含んでいるhGHポリペプチドの単回投与後の、血漿を循環するIGFの濃度に対する影響の図が示されている。バーは標準偏差を示している。
図18のパネルAにおいて、30KPEG−pAF35(his)hGH化合物について9日目における体重増加は、30KPEG−pAF92(his)hGH化合物において観察された体重増加と有意に異なっていた(p<0.0005)。
【0678】
図18のパネルCは、下垂体切除を受けたラットにおける化合物の評価を示している。ラット(一群ごとにn=11)は、単回投与または毎日の投与のいずれかを皮下に受けた。動物は、順次に体重が測定され、麻酔がかけられ、採血され、毎日(適用される場合に)投与された。体重の結果は、プラシーボ処理、野生型hGH(hGH)、HisタグつきのhGH((his)hGH)および30kDaのPEGと共有結合的に連結されているp−アセチル−フェニルアラニンを92位、134位、145位、131位および143位に含んでいるhGHポリペプチドについて示されている。
図18のパネルD−PEG付加されている(92位、134位、145位、131位、143位)天然にコードされていないアミノ酸を含んでいるhGHポリペプチドの単回投与後の、血漿を循環するIGFの濃度に対する影響の図が示されている。
図18のパネルEは、PEG付加されている天然にコードされていないアミノ酸を含んでいる(92位、134位、145位、131位、143位)hGHポリペプチドに対応する血漿濃度の平均(±標準偏差)を示している。血漿サンプルは、図示された時間の間隔において採取され、記載の通りに注入された化合物についてアッセイされた。バーは標準偏差を表している。
【0679】
<実施例31>
天然にコードされていないアミノ酸を含んでいるPEG付加hGHの安全性および有効性のヒト臨床試験。
【0680】
(目的)
天然にコードされていないアミノ酸を含んでいる、皮下に投与されたPEG付加組換えヒトhGHの安全性および薬物動態を、1つ以上の市販のhGH製品(Humatrope(商標)(EH Lilly & Co.)、Nutropin(商標)(Genentech)、Norditropin(商標)(Novo-Nordisk)、Genotropin(商標)(Pfizer)およびSaizen/Serostim(商標)(Serono)が挙げられる)と比較すること。
【0681】
(患者)
20〜40歳の年齢および60〜90kgの体重の範囲にある18人のボランティアが試験に登録される。被験者は、臨床的に有意な異常を示す血液学もしくは血清化学に関する検査値を有しておらず、尿に関する毒性スクリーン、HIVスクリーンおよびB型肝炎表面抗原に関して陰性である。被験者らは、以下の任意の徴候:高血圧;任意の主要な血液疾患の既往歴;深刻な肝疾患、腎疾患、心疾患、胃腸疾患、代謝疾患、神経疾患の既往歴;貧血またはてんかん発作の既往歴;細菌または哺乳類由来の産物、PEGまたはヒト血清アルブミンに対する公知の感受性;カフェイン含有飲料の習慣的な大量の消費家;任意の他の臨床試験への関与、または試験開始までの30日以内において輸血されたか、もしくは献血された血液を有すること;試験開始までの3ヶ月以内にGHのばくろを受けたこと;試験開始までの7日以内に病気にかかったこと;ならびに試験開始までの14日以内に試験前の身体検査または臨床検査の評価に対して有意な異常を有しているべきではない。すべての被験者は、安全性に関して評価可能であり、薬物動態分析にとってのすべての血液採取物が予定通りに採取される。すべての試験は、制度上の倫理委員会の承認および患者の同意のもとに実施される。
【0682】
(試験計画)
これは、健康な男性の有志者における、単一施設における無作為化された2期にわたる第1相の非盲検の交差試験である。18人の被験者は、2つの処理系列群(9人の被験者/群)の1つに無作為に割り当てられる。GHは、天然にコードされていないアミノ酸を含んでいるPEG付加hGHおよび市販の製品から選択されたものの等量を用いて、太股の上部に対して皮下注射による大量瞬時投与によって、2つの別々の投与期間にわたって投与される。市販製品の投与の量および頻度は包装の表示に従う。市販の製品を用いた付加的な投与、投与頻度または所望される他の要因は、被験者の付加的な群を含めることによって、試験に加えられ得る。各投与期間は14日間の洗い流し期間によって分けられる。被験者は、2つの投与期間のそれぞれ(2つの投与期間に挟まれた期間ではない)について、投与前の少なくとも12時間、および投与後の少なくとも72時間にわたって試験施設に留めおかれる。PEG付加hGHについても同様に試験されるべき、付加的な投与、頻度または他の要因がある場合に、被験者の付加的な群が加えられ得る。ヒトへの使用が認可されているGHの複数の調合物がこの試験に使用され得る。Humatrope(商標)(EH Lilly & Co.)、Nutropin(商標)(Gcnentech)、Norditropin(商標)(Novo-Nordisk)、Genotropin(商標)(Pfizer)およびSaizcn/Serostim(商標)(Serono)は、ヒトへの使用が認可されている市販のGH製品である。hGHの試験調合物は、天然にコードされていないアミノ酸を含んでいるPEG付加hGHである。
【0683】
(血液採取)
血液の系列は、GH投与の前および後に、直接に血管に穿刺することによって引き出される。血清中のGH濃度の決定するための静脈血サンプル(5mL)は、投与の約30、20および10分前(3つの基準サンプル);投与の30分後、1、2、5、8、12、15、18、24、30、36、48、60、および72時間後に得られる。各血清サンプルは2等分される。すべての血清サンプルは−20℃に保存される。血清サンプルはドライアイス上に乗せられる。空腹時の臨床検査試験(血液学、血清生化学および尿検査)が、1日目における初回投与の直前、4日目の朝、16日目における投与の直前、および19日目の朝に実施される。
【0684】
(生物分析法)
ELISAキットの手順(Diagnostic Systems Laboratory (DSL), Webster TX)が血清中のGH濃度の決定に使用される。
【0685】
(安全性測定)
生命徴候は、各投与(1日目および16日目)の直前、各投与から6、24、48、および72時間目に記録される。安全性の決定は、有害事象の発生および種類ならびに臨床検査試験の基準からの変化に基づいている。さらに、試験前における生命徴候(血圧および身体検査の結果が挙げられる)の測定からの変化が評価される。
【0686】
(データ解析)
投与後の血清中濃度値は、投与後の値のそれぞれから基準のGH濃度の平均値を引くことによって、投与前のGH濃度の基準値に関して補正される。基準のGH濃度の平均値は、投与までの10、20および30分前において回収された3つのサンプルからGHレベルを平均化することによって得られる。投与前のGH濃度は、それらがアッセイの定量レベルよりも下回っている場合、平均値の算出に含められない。薬物動態パラメータは、基準のGH濃度に関して補正された血清濃度のデータから決定される。薬物動態パラメータは、デジタルイクイップメントコーポレーション VAX8600コンピュータシステムにおいて、BIOAVLソフトウェアの最新バージョンを用いたモデル独立法によって算出される。以下の薬物動態パラメータ:ピーク血清濃度(C
max)、ピーク血清濃度までの時間(t
max);直線台形法を用いて算出された時点0から最後の血液サンプリング時点まで(AUC
0−72)の濃度−時間曲線の下にある領域(AUC);および排泄速度定数から計算された末梢排泄半減期(t
1/2)が決定された。排泄速度定数は、ログ−リニアの濃度−時間プロットの末端の直線領域における連続的な複数のデータ点の直線回帰によって見積もられる。薬物動態パラメータの平均値、標準偏差(SD)、および変動係数(CV)が各処置について算出される。パラメータの平均の割合(保存した調合物/保存していない調合物)が算出される。
【0687】
(安全性の結果)
有害事象の発生は、処置群を越えて等しく分配されている。基準、試験前の臨床検査試験または血圧からの臨床的に有意な変化はなく、試験前の身体検査結果および生命徴候の測定から顕著な変化はない。2つの処置群に関する安全性の特性は同様と思われる。
【0688】
(薬物動態の結果)
1つ以上の市販のhGH製品(Humatrope(商標)(EH Lilly & Co.)、Nutropin(商標)(Genentech)、Norditropin(商標)(Novo-Nordisk)、Genotropin(商標)(Pfizer)およびSaizen/Serostim(商標)が挙げられるが、これらに限定されない)の単回投与を受けた後の、18人の被験者のすべてにおける血清GH濃度の平均−時間プロファイル(GHレベルの基準に関する補正なし)は、測定された各時点において、天然にコードされていないアミノ酸を含んでいるPEG付加hGHと比較された。すべての被験者は、正常な生理学的範囲内にある投与前の基準のGH濃度を有しているはずである。薬物動態パラメータは、基準のGH濃度の平均値に関して補正された血清データから決定され、C
maxおよびt
maxが決定される。選択された臨床比較対象(Humatrope(商標)(EH Lilly & Co.)、Nutropin(商標)(Genentech)、Norditropin(商標)(Novo-Nordisk)、Genotropin(商標)(Pfizer)およびSaizen/Serostim(商標))に関するt
maxの平均は、天然にコードされていないアミノ酸を含んでいるPEG付加GHに関するt
maxよりも有意に短い。前臨床の(複数の)比較対象に関する末梢半減期の値は、天然にコードされていないアミノ酸を含んでいるPEG付加GHに関する末梢半減期より有意に短い。
【0689】
本試験は健康な男性の被験者において実施されているが、同様の吸収特性および安全性が、他の患者の集団において見込まれる。他の患者の集団は、例えば、がんまたは慢性腎不全の男性または女性の患者、小児腎不全患者、自家の先天的な生体プログラムを有する患者、緊急を要しない手術を予定している患者である。
【0690】
結論として、天然にコードされていないアミノ酸を含んでいるPEG付加GHの皮下投与される単回投与は、安全であり、かつ男性の健康な被検体によって十分に許容される。有害事象の相対的な発生、臨床検査値、生命徴候および身体検査の結果に基づいて、GHの市販の形態の安全性および天然にコードされていないアミノ酸を含んでいるPEG付加GHの安全性は、同等である。天然にコードされていないアミノ酸を含んでいるPEG付加GHは、患者および保健医療提供者に対して大きな臨床有用性を提供し得る。
【0691】
<実施例32>
本実施例では、天然にコードされていないアミノ酸をhIFNに組み込むための好ましい部位を選択するための、多くの見込みのある基準の一組の1つについて説明する。
【0692】
本実施例では、hIFNポリペプチド内の好ましい部位が天然にコードされていないアミノ酸の導入のためにどのように選択されたのかについて示す。PDBのID 1RH2を有する結晶構造、およびNMR構造HTF(24の異なるNMR構造)が使用されて、天然にコードされていないアミノ酸の1つ以上が導入され得る好ましい位置を決定した。これらの構造に関する同等のものは、プロテインデータバンク(PDB)からか、またはワールドワイドウェブのrcsb.orgにおいて利用可能なResearch Collaboratory for Structural Bioinformatics PDBを介して利用可能である。
【0693】
本実施例において使用される配列の番号付与は、配列番号24に示される成熟hIFNのアミノ酸配列にしたがっている。
【0694】
天然にコードされていないアミノ酸を導入するためのhGHのそれぞれの位置を評価するために、以下の基準が使用された:(a)hIFNbpと抱合されたhIFNの結晶構造の構造解析に基づくいずれかのhGHbpの結合に干渉しない残基、(b)アラニン走査突然変異生成法によって影響されない残基、(c)表面露出され、周囲の残基とともに最小のファンデルワールス力または水素結合相互作用を示す残基、(d)hIFNバリアントにおいて欠失されているか、または変異している残基、(e)天然にコードされていないアミノ酸を用いた置換によって保存的な変化を生じる残基、ならびに(f)フレキシビリティーの高い領域(CDループが挙げられる)、または構造的に堅固な領域(ヘリックスBが挙げられる)のいずれかに見られ得る残基。部位の評価に使用される文献としては、Bioconj. Chemistry 2001 (12) 195-202; Current Pharmaceutical Design 2002 (8) 2139-2157; Neuroimmunology 2001 (12), 857-859; BBRC 218 1994 (202) 1445-1451 ; Cancer Biotherapy + Radiopharmaceuticals 1998 (vol13) 143-153; Structure 1996 (14) 1453-1463; JMB 1997 (274) 661-675が挙げられる。これに加えて、Cxプログラム(Pintar et al. Bioinformatics, 18, pp 980)を利用してhIFN分子に関して、タンパク質の各原子に関する突出の程度を評価するために、さらなる演算が実施された。その結果として、いくつかの実施形態において、天然にコードされていないアミノ酸の1つ以上は、hIFN(配列番号24、または他の公知のhIFN配列における対応する位置)の以下の位置:1位より前(すなわちN末端)、1位、2位、3位、4位、5位、6位、7位、8位、9位、12位、13位、16位、19位、20位、22位、23位、24位、25位、26位、27位、28位、30位、31位、32位、33位、34位、35位、40位、41位、42位、45位、46位、48位、49位、50位、51位、58位、61位、64位、65位、68位、69位、70位、71位、73位、74位、77位、78位、79位、80位、81位、82位、83位、85位、86位、89位、90位、93位、94位、96位、97位、100位、101位、103位、105位、106位、107位、108位、109位、110位、111位、112位、113位、114位、117位、118位、120位、121位、124位、125位、127位、128位、129位、131位、132位、133位、134位、135位、136位、137位、148位、149位、152位、153位、156位、158位、159位、160位、161位、162位、163位、164位、165位、または166位(すなわちカルボキシル末端)の1つ以上において置換されるが、これらの位置に限定されない。いくつかの実施形態において、本発明のIFNポリペプチドは、以下の位置:100位、106位、107位、108位、111位、113位、114位の1つ以上に、天然にコードされていないアミノ酸を含んでいる。いくつかの実施形態において、本発明のIFNポリペプチドは、以下の位置:41位、45位、46位、48位、49位の1つ以上に、天然にコードされていないアミノ酸を含んでいる。いくつかの実施形態において、本発明のIFNポリペプチドは、以下の位置:61位、64位、65位、101位、103位、110位、117位、120位、121位、149位の1つ以上に、天然にコードされていないアミノ酸を含んでいる。いくつかの実施形態において、本発明のIFNポリペプチドは、以下の位置:6位、9位、12位、13位、16位、96位、156位、159位、160位、161位、162位の1つ以上に、天然にコードされていないアミノ酸を含んでいる。いくつかの実施形態において、本発明のIFNポリペプチドは、以下の位置:2位、3位、4位、5位、7位、8位、16位、19位、20位、40位、42位、50位、51位、58位、68位、69位、70位、71位、73位、97位、105位、109位、112位、118位、148位、149位、152位、153位、158位、163位、164位、165位の1つ以上に、天然にコードされていないアミノ酸を含んでいる。いくつかの実施形態において、天然にコードされていないアミノ酸は、以下の位置:1位より前(すなわちN末端)、1位、2位、3位、4位、5位、6位、7位、8位、9位、12位、13位、16位、19位、20位、22位、23位、24位、25位、26位、27位、28位、30位、31位、32位、33位、34位、35位、40位、41位、42位、45位、46位、48位、49位、50位、51位、58位、61位、64位、65位、68位、69位、70位、71位、73位、74位、77位、78位、79位、80位、81位、82位、83位、85位、86位、89位、90位、93位、94位、96位、97位、100位、101位、103位、105位、106位、107位、108位、109位、110位、111位、112位、113位、114位、117位、118位、120位、121位、124位、125位、127位、128位、129位、131位、132位、133位、134位、135位、136位、137位、148位、149位、152位、153位、156位、158位、159位、160位、161位、162位、163位、164位、165位、166位(すなわちカルボキシル末端)において水溶性ポリマーと連結されているが、これらの位置に限定されない。いくつかの実施形態において、水溶性ポリマーは、以下のアミノ酸位置:6位、9位、12位、13位、16位、41位、45位、46位、48位、49位、61位、64位、65位、96位、100位、101位、103位、106位、107位、108位、110位、111位、313位、114位、117位、120位、121位、149位、156位、159位、160位、161位および162位(配列番号24、または配列番号23、配列番号25もしくは任意の他のIFNポリペプチドにおける対応するアミノ酸)の1つ以上においてIFNポリペプチドと連結されている。いくつかの実施形態において、本発明のIFNポリペプチドは、以下の位置:2位、3位、4位、5位、7位、8位、16位、19位、20位、40位、42位、50位、51位、58位、68位、69位、70位、71位、73位、97位、105位、109位、112位、118位、148位、149位、152位、153位、158位、163位、164位、165位の1つ以上に、天然にコードされていないアミノ酸を含んでおり、アンタゴニストを提供する。これらの置換を含んでいるIFNポリペプチドは、選択された部位および所望の活性に依存する弱いアンタゴニストまたは弱いアゴニストとして潜在的に作用し得る。ヒトIFNアンタゴニストとしては、以下の位置:22位、23位、24位、25位、26位、27位、28位、30位、31位、32位、33位、34位、35位、74位、77位、78位、79位、80位、82位、83位、85位、86位、89位、90位、93位、94位、124位、125位、127位、128位、129位、131位、132位、133位、134位、135位、136位、137位またはこれらの任意の組合せ(hIFN;配列番号24、または配列番号23もしくは25における対応するアミノ酸)に置換を有するポリペプチドが挙げられるが、これらに限定されない。
【0695】
<実施例33>
本実施例では、修飾したhIFNポリペプチドのE. coliにおけるクローニングおよび発現について詳述する。
【0696】
本実施例では、天然にコードされていないアミノ酸を含んでいるhIFNポリペプチドがE. coliにおいてどのようにして発現され得るかについて示す。Nagata et. al., Nature, vol. 284, 316-320 (1980)および米国特許第4,364,863号を参照すればよい。全長hIFNをコードしているcDNA、およびN末端シグナル配列を欠失しているhIFNの成熟形態をコードしているcDNAは、配列番号26および27にそれぞれに示されている。全長hIFNおよび成熟hIFNをコードしているcDNAは、pBAD、HISc、pET120bおよびpET19b発現ベクターに挿入され、続いてアミノ酸配列を変更することなしに、クローニングおよび発現のために配列が最適化される。
【0697】
直交性のtRNA(O−tRNA)および直交性のアミノアシルtRNA合成酵素を含んでいる、取り入れられた翻訳系が使用されて、hGH発現に関して実施例2に記載のように、天然にコードされていないアミノ酸を含んでいるhIFNを発現させる。
【0698】
<実施例34>
本実施例では、PEG付加IFNのインビボおよびインビトロにおける活性の測定方法について説明する。
【0699】
(細胞結合アッセイ)
細胞(3×10
6)は、種々の濃度(容積:10μl)の非標識のIFN、hIFNまたはGM−CSFの存在下または非存在下、ならびに
125I−IFN(約100000cpmまたは1ng)の存在下のPBS/1%のBSA(100μl)において(総容積:120μl)、0℃において90分間にわたって2組に分けてインキュベートされる。それから、細胞は、再懸濁され350μlのプラスティックチューブ内の氷冷した200μlのFCSの上に層状に載せられ、遠心分離(1000g;1分間)された。ペレットは、チューブの端部を切り取ることによって回収され、ペレットおよび上清は、ガンマカウンター(Packard)において別々にカウントされた。
【0700】
特異的結合(cpm)が、100倍過剰量の非標識IFNの存在下(非特異的結合)における結合(cpm)を引いた、競合物の存在下(2組の平均)における結合の総量(cpm)として、測定される。非特異的結合は使用された細胞種のそれぞれについて測定される。実験は、
125I−IFNの同じ調製物を用いて別々の日に実施され、内部整合性を示す必要がある。
125I−IFNは、ダウディ細胞に対する結合を示している。結合は、非標識の天然GHまたはhIFNによって濃度依存的様式に阻害されるが、GM−CSFまたは他の陰性対照によって阻害されない。天然の
125I−IFN、類似の天然IFNの結合に対するhIFNの競合能は、受容体が両方の形態を等しく十分に認識することを示唆している。
【0701】
(PEG付加IFNに由来するインビボ試験)
PEG−hIFNは、非修飾hIFNおよび緩衝液溶液は、マウスまたはラットに投与される。結果は、非修飾hIFNに比べて、本発明のPEG付加hIFNの優れた活性および延長された半減期を示し、マウスごとに同じ投与量を用いてウイルス増殖の有意に増大した阻害によって表される。
【0702】
(抱合hIFNおよび非抱合hIFN、ならびにこれらのバリアントのインビボ半減期の測定)
オスのスピローグ−ダウリーラット(約7週齢)が使用される。投与の1日目に各動物の体重が測定される。体重1kgごとに100μgの非抱合および抱合のhIFNサンプルのそれぞれが、3匹のラットの尾静脈に静脈内注射される。血液サンプルは、1.5時間にわたって室温において保存され、遠心分離(4℃、18000×gにおいて5分間)によって血清が分離される。血清サンプルは、分析の日まで−80℃に保存される。サンプルを氷上において融解させた後に、血清サンプルにおける活性なIFNの量が、IFNのインビボ活性アッセイによって定量される。
【0703】
(抗ウイルス活性)
ウイルスに対する細胞の耐性の程度を測定する多くの方法は、当業者に公知である(McNeill TA, J Immunol Methods. (1981) 46(2): 121- 7)。これらのアッセイは、3つの種類:細胞変性効果の阻害;ウイルスのプラーク形成;およびウイルス産生の減少に一般的に分類され得る。ウイルス性の細胞変性効果アッセイでは、IFNを用いて前処理され、続いてウイルスに感染させた細胞培養物に誘導される保護の防御の程度を測定する。水疱性口内炎ウイルスは、例えば、当該アッセイへの使用に適切なウイルスである。この種のアッセイは、96ウェルプレートにおいて実施され得るので、多くの異なるIFNのスクリーニングに簡便である。プラーク減少アッセイでは、プラーク形成ウイルス(麻疹ウイルス)に対する、IFN処理した細胞培養物の耐性を測定する。このアッセイに関する1つの利点は、プラーク形成の50%の減少を正確に測定可能な点である。最後に、ウイルス産生アッセイでは、例えば、1回の成長周期の間に細胞から放出されるウイルスの量を測定する。当該アッセイは、細胞変性効果を生じないか、または標的の細胞培養物においてプラークを形成しないウイルスに対するIFNの抗ウイルス活性の試験に有用である。感染の多重度(moi)は、プラーク減少アッセイまたはウイルス産生アッセイを用いる場合に、検討される重要な要素である。
【0704】
また、臨床的に重要なインターフェロンの特性は、研究室の環境において容易に評価される。当該特性の1つは、特異的な細胞表面受容体に対するインターフェロンポリペプチドの結合能である、例えば、IFNα−2bのいくつかは、臨床試験に最も広く使用されるIFNであるIFNα−2bと比べて、異なる細胞表面性質を示す。IFNα−2bは、有効な抗ウイルス剤であり、重大で有害な副作用を引き起こす。IFNα−2bとは異なる結合特性を示すインターフェロンは、同じ副作用を引き起こさない可能性がある。したがって、細胞上の結合部位に関してIFNα−2bとほとんど競合しないインターフェロンは、臨床的に興味深い。競合的なインターフェロン結合アッセイは、よく知られている(Hu et al., J Biol Chem. (1993) Jun 15;268(17): 12591-5; Di Marco et al., (1994) Biochem. Biophys. Res. Comm. 202:1445-1451)。このようなアッセイは、
125I−標識したIFNα−2bおよび非標識の所望のインターフェロンとともに、培養細胞をインキュベートすることを、一般的に含んでいる。それから、未結合のインターフェロンが除去され、結合した標識(すなわち、結合した
125I−標識したIFNα−2b)の量が測定される。競合するインターフェロンの存在下または非存在下において細胞に結合する標識の量を比較することによって、相対的な結合親和性が算出され得る。
【0705】
IFNαの他の顕著な作用は、抗腫瘍作用の測定において非常に重要になる、それらの細胞増殖の阻害能である。増殖阻害アッセイは、十分に確立されており、細胞のカウント、またはトリチウム化チミジン([
3H]チミジン)または他の放射線標識物の取込みに、一般的に依存している。ヒトリンパ芽球のダウディ細胞株は、IFNαに対して過剰に感受性があることが証明されており、多くのIFNαおよび誘導体化されたハイブリッドポリペプチドにおける抗増殖活性の測定に使用されている(Meister et al., J Gen Virol. (1986) Aug; 67 (Pl 8): 1633-43)。この細胞株は、懸濁培養によって増殖し得るので、取り扱いが容易である(Evinger and Pestka, (1981) Methods Rnzymol. 79:362-368)。また、IFNαは、多くの免疫調節活性を示す(Zoon et al., (1986) In, The Biology of the Interferon System. Cantell and Schellenkens, Eds., Martinus Nyhoff Publishers, Amsterdam)。
【0706】
IFNは、ウイルス学者によって最初に発見されたが、それらが始めて臨床的に使用されたのは(1979年)、骨髄腫に対する治療剤としてであった(Joshua et al., (1997) Blood Rev. 1 1(4): 191- 200)。それ以来、IFNαは、無数のウイルス性、悪性、血管形成性、アレルギー性、炎症性および繊維性の起源の疾患に対して有効であることが証明されている(Tilg, (1997) Gastroenterology. 1 12(3): 1037-1021)。また、IFNαは、転移性の腎がんおよび慢性の骨髄性白血病の処置に有効であることが証明されている(Williams and Linch, (1997) Br. J. Hosp. Med. 57(9):436-439)。IFNの臨床使用については、Gresser (1997) J. Leukoc. Biol. 61(5):567-574およびPfeffer (1997) Semin. Oncol. 24(3 Suppl. 9):S9-S63S969に概説されている。
【0707】
<実施例35>
天然にコードされていないアミノ酸を含んでいるPEG付加hIFNの安全性および/または有効性のヒト臨床試験。
【0708】
(目的)
天然にコードされていないアミノ酸を含んでいる、皮下に投与されたPEG付加組換えヒトhIFNの安全性および薬物動態を、市販のhIFN製品であるRoferon A(登録商標)およびIntoron A(登録商標)と比較すること。
【0709】
(患者)
20〜40歳の年齢および60〜90kgの体重の範囲にある18人のボランティアが試験に登録される。被験者は、臨床的に有意な異常を示す血液学もしくは血清化学に関する検査値を有しておらず、尿に関する毒性スクリーン、HIVスクリーン、およびB型肝炎表面抗原に関して陰性である。被験者らは、以下の任意の徴候:高血圧;任意の主要な血液疾患の既往歴;深刻な肝疾患、腎疾患、心疾患、胃腸疾患、代謝疾患、神経疾患の既往歴;貧血またはてんかん発作の既往歴;細菌または哺乳類由来の産物、PEGまたはヒト血清アルブミンに対する公知の感受性;カフェイン含有飲料の習慣的な大量の消費家;任意の他の臨床試験への関与、または試験開始までの30日以内において輸血されたか、もしくは献血された血液を有すること;試験開始までの3ヶ月以内にhIFNのばくろを受けたこと;試験開始までの7日以内に病気にかかったこと;ならびに試験開始までの14日以内に試験前の身体検査または臨床検査の評価に対して有意な異常を有しているべきではない。すべての被験者は、安全性に関して評価可能であり、薬物動態分析にとってのすべての血液採取物が予定通りに採取される。すべての試験は、制度上の倫理委員会の承認および患者の同意のもとに実施される。
【0710】
(試験計画)
これは、健康な男性の有志者における、単一施設における無作為化された2期にわたる第1相の非盲検の交差試験である。18人の被験者は、2つの処理系列群(9人の被験者/群)の1つに無作為に割り当てられる。IFNは、天然にコードされていないアミノ酸を含んでいるPEG付加hIFNおよび市販の製品から選択されたものの等量を用いて、太股の上部に対して皮下注射による大量瞬時投与によって、2つの別々の投与期間にわたって投与される。市販製品の投与の量および頻度は包装の表示に従う。市販の製品を用いた付加的な投与、投与頻度または所望される他の要因は、被験者の付加的な群を含めることによって、試験に加えられ得る。各投与期間は14日間の洗い流し期間によって分けられる。被験者は、2つの投与期間のそれぞれ(2つの投与期間に挟まれた期間ではない)について、投与前の少なくとも12時間、および投与後の少なくとも72時間にわたって試験施設に留めおかれる。PEG付加hIFNについても同様に試験されるべき、付加的な投与、頻度または他の要因がある場合に、被験者の付加的な群が加えられ得る。ヒトへの使用が認可されているIFNの複数の調合物がこの試験に使用され得る。Roferon A(登録商標)および/またはIntoron A(登録商標)は、ヒトへの使用が認可されている市販のIFN製品である。hIFNの試験調合物は。天然にコードされていないアミノ酸を含んでいるPEG付加hIFNである。
【0711】
(血液採取)
血液の系列は、IFN投与の前および後に、直接に血管に穿刺することによって引き出される。血清中のIFN濃度の決定するための静脈血サンプル(5mL)は、投与の約30、20および10分前(3つの基準サンプル);投与の30分後、1、2、5、8、12、15、18、24、30、36、48、60、および72時間後に得られる。各血清サンプルは2つに等分される。すべての血清サンプルは−20℃において保存される。血清サンプルはドライアイス上に乗せられる。空腹時の臨床検査試験(血液学、血清生化学および尿検査)が、1日目における初回投与の直前、4日目の朝、16日目における投与の直前、および19日目の朝に実施される。
【0712】
(生物分析法)
ELISAキットの手順(Biosource International(Camarillo, CA))が血清中のIFN濃度の決定に使用される。
【0713】
(安全性の測定)
生命徴候は、各投与(1日目および16日目)の直前、各投与から6、24、48、および72時間目に記録される。安全性の決定は、有害事象の発生および種類ならびに臨床検査試験の基準からの変化に基づいている。さらに、試験前における生命徴候(血圧および身体検査の結果が挙げられる)の測定からの変化が評価される。
【0714】
(データ解析)
投与後の血清中濃度値は、投与後の値のそれぞれから基準のIFN濃度の平均値を引くことによって、投与前のIFN濃度の基準値に関して補正される。基準のIFN濃度の平均値は、投与までの10、20および30分前において回収された3つのサンプルからIFNレベルを平均化することによって得られる。投与前のIFN濃度は、それらがアッセイの定量レベルよりも下回っている場合、平均値の算出に含められない。薬物動態パラメータは、基準のIFN濃度に関して補正された血清濃度のデータから決定される。薬物動態パラメータは、BIOAVLソフトウェア最新バージョンを用いたデジタルイクイップメントコーポレーション VAX8600コンピュータシステムにおけるモデル独立法によって算出される。以下の薬物動態パラメータ:ピーク血清濃度(C
max)、ピーク血清濃度までの時間(t
max);直線台形法を用いて算出された時点0から最後の血液サンプリング時点まで(AUC
0−72)の濃度−時間曲線の下にある領域(AUC);および排泄速度定数から計算された末梢排泄半減期(t
1/2)が決定された。排泄速度定数は、ログ−リニアの濃度−時間プロットの末端の直線領域における連続的な複数のデータ点の直線回帰のよって見積もられる。薬物動態パラメータの平均値、標準偏差(SD)、および変動係数(CV)が各処置について算出される。パラメータの平均の割合(保存した調合物/保存していない調合物)が算出される。
【0715】
(安全性の結果)
有害事象の発生は、処置群を越えて等しく分配されている。基準、試験前の臨床検査試験または血圧からの臨床的に有意な変化はなく、試験前の身体検査結果および生命徴候の測定から顕著な変化はない。2つの処置群に関する安全性の特性は同様と思われる。
【0716】
(薬物動態の結果)
1つ以上の市販のhIFN製品(例えば、Roferon A(登録商標)またはIntoron A(登録商標))の単回投与を受けた後の、18人の被験者のすべてにおける血清IFN濃度の平均−時間プロファイル(IFNレベルの基準に関する補正なし)は、測定された各時点において、天然にコードされていないアミノ酸を含んでいるPEG付加hIFNと比較された。すべての被験者は、正常な生理学的範囲内の、投与前の基準のIFN濃度を有しているはずである。薬物動態パラメータは、基準のGH濃度の平均値に関して補正された血清データから決定され、C
maxおよびt
maxが決定される。hIFN(例えば、Intoron A(登録商標))に関するt
maxの平均は、天然にコードされていないアミノ酸を含んでいるPEG付加IFNに関するt
maxよりも有意に短い。前臨床の(複数の)比較対象に関する末梢半減期の値は、天然にコードされていないアミノ酸を含んでいるPEG付加IFNに関する末梢半減期より有意に短い。
【0717】
本試験は健康な男性の被験者において実施されているが、同様の吸収特性および安全性が、他の患者の集団において見込まれる。他の患者の集団は、例えば、がんまたは慢性腎不全の男性または女性の患者、小児腎不全患者、自家の先天的な生体プログラムを有する患者、緊急を要しない手術を予定している患者である。
【0718】
結論として、天然にコードされていないアミノ酸を含んでいるPEG付加IFNの皮下投与される単回投与は、安全であり、かつ男性の健康な被検体によって十分に許容される。有害事象の相対的な発生、臨床検査値、生命徴候および身体検査の結果に基づいて、IFNの市販の形態の安全性および天然にコードされていないアミノ酸を含んでいるPEG付加IFNの安全性は、同等である。天然にコードされていないアミノ酸を含んでいるPEG付加IFNは、患者および保健医療提供者に対して大きな臨床有用性を提供し得る。
【0719】
<実施例36>
本実施例では、天然にコードされていないアミノ酸をhG−CSFに組み込むための好ましい部位を選択するための、多くの見込みのある基準の一組の1つについて説明する。
【0720】
本実施例では、hG−CSFポリペプチド内の好ましい部位が天然にコードされていないアミノ酸の導入のためにどのように選択されたのかについて示す。受容体(hG−CSFbp)の細胞外ドメインの2分子と複合体化されているhG−CSFの2分子から構成されている結晶構造1CD9を使用して、天然にコードされていないアミノ酸の1つ以上が導入され得る好ましい位置を決定した。他のhG−CSF構造(1PGR、1RHGおよび1GNCが挙げられるが、これらに限定されない)を利用して、結晶構造のデータセット間における、見込みのある種々の一次構造および二次構造の要素について試験した。これらの構造に関する同等のものは、プロテインデータバンク(PDB)(Berslein et al. J. MoI Biol. 1997, 112, pp 535)からか、またはワールドワイドウェブのrcsb.orgにおいて利用可能なResearch Collaboratory for Structural Bioinformatics PDBを介して利用可能である。構造モデル1CD9は、N末端の1〜4番目の残基、および129〜136番目の残基を除いて、hG−CSFの完全に成熟な19kDaの配列を含んでいる。C37およびC43、ならびにC65およびC75によって形成されているジスルフィド結合が2つ存在している。
【0721】
本実施例に使用される配列の番号付けは、配列番号29に示されている成熟hG−CSFのアミノ酸配列にしたがっている。
【0722】
天然にコードされていないアミノ酸を導入するためのhG−CSFのそれぞれの位置を評価するために、以下の基準が使用された:(a)1CD9および1RHG(hG−CSFbpのモノマーまたはダイマーと抱合されたhG−CSFの結晶学的構造)の構造解析に基づくいずれかのhG−CSFbpの結合に干渉しない残基、(b)アラニン走査突然変異生成法(Reidhaar-Olson JF et al., Biochemistry (1996) JuI 16;35(28):9034~41; Young DC et al. Protein Sci, (1997) Jun;6(6): 1228-36; Layton et al. (1997) JBC272(47):29735-29741)によって影響されない残基、(c)表面露出され、周囲の残基とともに最小のファンデルワールス力または水素結合相互作用を示す残基、(d)hG−CSFバリアントにおいて欠失されているか、または変異している残基、(e)天然にコードされていないアミノ酸を用いた置換によって保存的な変化を生じる残基、ならびに(f)フレキシビリティーの高い領域(CDループが挙げられるが、これに限定されない)、または構造的に堅固な領域(ヘリックスBが挙げられるが、これに限定されない)のいずれかに見られ得る残基。これに加えて、Cxプログラム(Pintar et al. Bioinformatics, 18, pp 980)を利用してhGH分子に関して、タンパク質の各原子に関する突出の程度を評価するために、さらなる演算が実施された。その結果として、いくつかの実施形態において、天然にコードされていないアミノ酸の1つ以上は、hG−CSFの以下の位置:1位より前(すなわちN末端)、1位、2位、3位、4位、5位、6位、7位、8位、9位、10位、11位、12位、13位、16位、17位、19位、20位、21位、23位、24位、28位、30位、31位、33位、34位、35位、38位、39位、40
位、41位、44位、45位、46位、47位、48位、49位、50位、51位、53位、54位、55位、56位、58位、59位、61位、63位、64位、66位、67位、68位、69位、70位、71位、72位、73位、77位、78位、81位、84位、87位、88位、91位、92位、94位、95位、97位、98位、99位、101位、102位、103位、105位、106位、108位、109位、110位、112位、113位、116位、117位、120位、121位、123位、124位、125位、126位、127位、130位、131位、132位、133位、134位、135位、136位、137位、138位、139位、140位、142位、143位、144位、145位、146位、147位、148位、156位、157位、159位、160位、163位、164位、166位、167位、170位、171位、173位、174位、175位、176位(すなわちタンパク質のカルボキシル末端)(配列番号29、または配列番号28、30、35もしくは36における対応するアミノ酸)に置換されるが、これらの位置に限定されない。
【0723】
いくつかの実施形態において、本発明のG−CSFポリペプチドは、以下の位置:30位、31位、33位、58位、59位、61位、63位、64位、66位、67位、68位、77位、78位、81位、87位、88位、91位、95位、101位、102位、103位、130位、131位、132位、134位、135位、136位、137位、156位、157位、159位、160位、163位、164位、167位、170位、171位(配列番号29、または配列番号28、30、35もしくは36における対応するアミノ酸)の1つ以上において天然に存在しないアミノ酸を1つ以上含んでいる。いくつかの実施形態において、本発明のG−CSFポリペプチドは、以下の位置:59位、63位、67位、130位、131位、132位、134位、137位、160位、163位、167位および171位(配列番号29、または配列番号28、30、35もしくは36における対応するアミノ酸)の1つ以上において天然に存在しないアミノ酸を1つ以上含んでいる。いくつかの実施形態において、以下の位置の1つ以上における天然に存在しないアミノ酸が水溶性ポリマーと連結されている。当該位置としては、1位より前(すなわちN末端)、1位、2位、3位、4位、5位、6位、7位、8位、9位、10位、13位、12位、13位、16位、17位、19位、20位、21位、23位、24位、28位、30位、33位、33位、34位、35位、38位、39位、40位、41位、44位、45位、46位、47位、48位、49位、50位、51位、53位、54位、55位、56位、58位、59位、61位、63位、64位、66位、67位、68位、69位、70位、73位、72位、73位、77位、78位、81位、84位、87位、88位、91位、92位、94位、95位、97位、98位、99位、101位、102位、103位、105位、106位、108位、109位、110位、112位、113位、116位、117位、120位、121位、123位、124位、125位、126位、127位、130位、131位、132位、133位、134位、135位、136位、137位、138位、139位、140位、142位、143位、144位、145位、146位、147位、148位、156位、157位、159位、160位、163位、164位、166位、167位、170位、171位、173位、174位、175位、176位(すなわちタンパク質のカルボキシル末端)(配列番号29、または配列番号28、30、35もしくは36における対応するアミノ酸)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0724】
hG−CSFを生成するためのいくつかの部位としては、6位、7位、8位、9位、10位、11位、12位、13位、16位、17位、19位、20位、21位、23位、24位、28位、30位、41位、47位、49位、50位、70位、71位、105位、106位、109位、110位、112位、113位、116位、117位、120位、121位、123位、124位、125位、127位、145位またはこれらの任意の組合せ配列番号29、および配列番号28、30、35もしくは36における対応するアミノ酸が挙げられる。これらの部位は、アンタゴニスト設計の基準(c)〜(e)を利用して選択される。また、アンタゴニストの設計は、hG−CSFに対する結合親和性を増大させる受容体結合領域における部位特異的な修飾を含み得る。
【0725】
<実施例37>
本実施例では、修飾されたhG−CSFポリペプチドのE. coliにおけるクローニングおよび発現について詳述する。
【0726】
本実施例では、天然にコードされていないアミノ酸を含んでいるhG−CSFポリペプチドが、E. coliにおいてどのようにして発現され得るのかについて示す。hG−CSFの単離および宿主細胞(例えば、E. coli)におけるhG−CSFの生成について、例えば、参照によって本明細書に援用される米国特許第4,810,643号;米国特許第4,999,291号;米国特許第5,580,755号;および米国特許第6,716,606号に記載されている。全長hG−CSF、hG−CSFの成熟形態(メチオニルhG−CSF)およびhG−CSFの成熟形態のバリアントをコードしているcDNAは、配列番号31、32および33にそれぞれ示されている。全長および成熟型のhG−CSFをコードしているcDNAは、アミノ酸配列(配列番号34)を変えずに、クローニングおよび発現のために配列を最適化した後に、pBAD、HISc、pET20b、およびpET19bに挿入される。
【0727】
直交性のtRNA(O−tRNA)および直交性のアミノアシルtRNA合成酵素(O−RS)を含んでいる、採用された翻訳系が使用されて、hG−CSF発現について実施例2に記載のように、天然にコードされていないアミノ酸を含んでいるhG−CSFを発現させる。
【0728】
<実施例38>
(PEG付加hG−CSFのインビトロおよびインビボにおける活性)
PEG−hG−CSF、非修飾のhG−CSFおよび緩衝液溶液が、ラットまたはマウスに投与される。結果は、マウスごとに同じ投与量を用いて、非修飾のhG−CSFと比べて、本発明のPEG付加hG−CSFの優れた活性および延長された半減期を示し、好中球の有意に増大した量および白血球細胞のカウント数の最大値のシフトによって示される。
【0729】
(
3H−チミジンアッセイ)
標準的な方法を用いて、
3H−チミジンアッセイが実施される。骨髄は、安楽死させたメスのBalb Cマウスから得られる。骨髄細胞は、簡単に懸濁され、遠心分離され、増殖培地に再懸濁される。約10000の細胞数を含んでいる160μlの分注物が、96ウェルのマイクロタイタープレートの各ウェルに入れられる。精製したhG−CSFの類似物のサンプル(上述のように調製される)が各ウェルに加えられ、68時間にわたってインキュベートされる。トリチル化チミジンがウェルに加えられ、さらに5時間にわたってインキュベートされる。5時間にわたるインキュベートの後に、細胞は、回収され、ろ過され、十分に洗浄される。ろ過物は、シンチレーション液が入っているバイアルに加えられる。β放出が測定される(LKBベータプレートシンチレーションカウンター)。基準物および類似物は、3つ1組にして分析され、基準曲線を大幅に上回るか、または下回っているサンプルは適度に希釈して再びアッセイされる。結果は、改変なしの組換えhG−CSF標準物の結果と比べた、3つ1組の類似物の平均として表されている。
【0730】
ヒト骨髄細胞の増殖誘導は、
3H−チミジンの取込みの増大に基づいて定量される。健常なドナーからのヒト骨髄は、フィコール−ヒパーク(1.077g/ml、Pharmacia)を用いてデンシティカット(density cut)にかけられ、低密度の細胞が、10%のウ
シ胎児血清およびグルタミン、ペニシリン−ストレプトマイシンを含むイスコフ培地(GIBCO)に懸濁される。次に、ヒト骨髄細胞は、対照培地または実施例2のE. coli由来hG−CSF物質のいずれかを用いて、96ウェルの平底プレートにおいて、5%CO
2の空気、37℃において、2日間にわたってインキュベートされる。サンプルは、2つ1組にしてアッセイされ、濃度が10000万倍まで振られている。それから、培養物は、0.5μCi/ウェルの
3H−チミジン(New England Nuclear, Bostone, Mass)を用いて4時間にわたってパルスされる。
3H−チミジンの取込みは、Venuta, et al, Blood, 61, 781 (1983)に記載のように測定される。このアッセイにおいて、ヒトG−CSFの単離物は、ヒト骨髄細胞への
3H−チミジンの取込みを、対照上清物よりも約4〜10倍を超えるレベルに誘導し得る。本発明のE. coli由来のhG−CSF物質は、同様の特性を有している。
【0731】
(WEHI−3B D
+分化誘導)
マウスの骨髄単核球性白血病細胞株WEHI−3B D
+の分化を誘導する、本発明のhG−CSFポリペプチドの能力が、Metcalf, Int. J. Cancer, 25, 225 (1980)に記載の半固体培地においてアッセイされる。組換えhG−CSF生成物および培地対照は、ウェルごとに細胞数が約60のWEHI−3B D
+とともに、7日間にわたって5%CO
2の空気、37℃においてインキュベートされる。サンプルは、24ウェルの平底プレートにおいてインキュベートされ、濃度が2000倍まで振られている。コロニーは、未分化、部分的に分化または完全に分化と分類され、コロニーの細胞数が顕微鏡によってカウントされる。E. coli由来のhG−CSF物質が分化を誘導することが認められる。
【0732】
(CFU−GM、BFU−EおよびCFU−GEMMアッセイ)
ヒトG−CSFの天然の単離物およびhG−CSFが、ヒト骨髄細胞の増殖および分化を引き起こすことが認められる。これらの活性は、健常なヒトのボランティアから得られる低密度の非接着性の骨髄細胞を用いた、CFU−GMアッセイ(Broxmeyer, et al., Exp. Hematol, 5, 87, (1971))、BFU−EアッセイおよびCFU−GEMMアッセイ(Lu, et al., Blood, 61 , 250 (1983))において測定される。CFU−GM、BFU−EおよびCFU−GEMMの生物活性は、500ユニットのG−CSFまたはhG−CSFのいずれかを用いて実施される。
【0733】
コロニーアッセイは、低密度の非接着性の骨髄細胞を用いて実施される。ヒト骨髄細胞は、フィコール−ヒパーク(1.077g/cm
3、Pharmacia)を用いてデンシティカットにかけられる。それから、低密度の細胞は、ウシ胎児血清を含んでいるイスコフ改変ダルベッコ培地に再懸濁され、ファルコン組織培養ディッシュ(3003番、Bccton Dickinson, Cockeysville, Md.)に接着させるために、30分間にわたって37℃に置かれる。
【0734】
培地対照は、10%のFCS、0.2mMのヘミンおよび1ユニットの組換えエリスロポエチンを添加したイスコフ改変ダルベッコ培地からなる。CFU−GMアッセイの標的細胞は、補完されたMcCoy 5A培地および10%の熱非動化ウシ胎児血清を含んでいる1mlの0.3%寒天培養培地につき1×10
5が入れられる。培養物はコロニー(凝集物につき細胞数40を超える)に関して記録され、培養の7日目に形態学的に評価される。コロニー数は、4つ1組のプレートから測定される平均±標準偏差として示される。
【0735】
BFU−EおよびCFU−GEMMアッセイのために、細胞(1×10
5)がイスコフ改変ダルベッコ培地(GIBCO)、0.8%のメチルセルロース、30%のウシ胎児血清、0.05nMの2−メルカプトエタノール、0.2mMのヘミンおよび1ユニットの組換えエリスロポエチンの、1mlの混合物に加えられる。ディッシュは、5%のCO
2および5%O
2の加湿された雰囲気においてインキュベートされる。低圧の酸素は、Reming Bioinstruments(Syracuse, N. Y.)から入手されたオキシリデューサー(oxyreducer)を用いて得られる。コロニーは、インキュベーション開始から14日後に記録される。コロニー数は、2つ1組のプレートから測定される平均±標準偏差として決定される。
【0736】
CFU−GMアッセイにおいて形成されるコロニーのすべては、コロニーが顆粒球型であることと一致して、クロル酢酸塩エステラーゼ陽性であり、非特異的エステラーゼ(αナフチル酢酸塩エステラーゼ)陰性であると予想される。G−CSFおよびhG−CSFは両方とも、CFU−GMアッセイにおける希釈系列によってアッセイされる場合に、約1×10
8ユニット/mgの純粋なタンパク質の特異活性を有していると予測される。重要なこととして、hG−CSFは、E. coliにおいて生成されることによって、非常に純度が高く、予測される哺乳類の他の成長因子を含んでいない。したがって、hG−CSFは、組換えエリスロポエチンの存在下において加えられる場合に、混合性のコロニー形成(CFU−GEMMおよびBFU−E)を支持可能である。
【0737】
(細胞結合アッセイ)
マウスのWEHI−3BD
+細胞およびヒトの末梢血骨髄性白血病細胞の調製物(ANLL)が、
125I−G−CSFとの結合能について試験された。マウスおよび新たに得られたヒトの末梢血骨髄性白血病細胞は、1%BSAのPBSを用いて3回にわたって洗浄された。WEHI−3BD
+細胞(3×10
6)または新たな白血病細胞(3×10
6)は、種々の濃度(10μlの容積)の非標識のG−CSF、hG−CSFもしくはGM−CSFの存在下または非存在下において、ならびに種々の濃度(10μlの容積)の
125I−G−CSF(約100000cpmまたは1ng)の存在下において、0℃において90分間にわたって1%BSAのPBSにおいて2系列にインキュベートされた(総容積:120μl)。それから、細胞は再懸濁され、350μlの遠心分離チューブに入れた200μlの氷冷したFCSの上に載せられ、遠心分離された(1000g、1分間)。ペレットが、チューブの端部を切り取って回収され、上清がガンマカウンター(Packard)において別々にカウントされる。
【0738】
100倍過剰量の非標識のG−CSFの存在下における結合(非特異的結合)(cpm)を引いた、競合物の存在下における結合の総計(2系列の平均)として、特異的結合(cpm)を測定する。非特異的な結合は、使用された細胞種に関してそれぞれ測定される。実験は、
125I−G−CSFの同じ調製物を用いて別の日に実施され、内部整合性を示す。
125I−G−CSFは、WEHI−3B
+白血病細胞との結合を示している。結合は、非標識の天然のG−CSFまたはhG−CSFによって濃度依存的に阻害され、GM−CSFによって阻害されない。天然の
125I−G−CSFと同様に天然G−CSFの結合に対するhG−CSFの競合能は、受容体が両方の形態を等しく認識することを示唆している。
【0739】
(G−CSFは、白血病患者から得られた低密度の骨髄細胞の顆粒球分化および単核球分化を誘導する)
患者から得られた細胞は、培地の単独または1×10
5ユニットのhG−CSFの存在下において4日間にわたって培養される。培地の単独においてインキュベートされた対照の培養物から得られた細胞は、その型が前骨髄細胞であり、hG−CSFの存在下において培養された細胞は、骨髄の型の成熟した細胞(後骨髄球、巨大な棒状核球、セグメント化した好中球およびセグメント化した単核球が挙げられる)である。少なくとも100の細胞の実際の分化が、形態学的に評価される。hG−CSF処理された細胞は、芽細胞、骨髄球、後骨髄球、棒状核球ならびにセグメント化した好中球、前骨髄球および単核球から構成されている。対照細胞は、芽細胞と考えられる。
【0740】
(抱合型および非抱合型のhG−CSFならびにそれらのバリアントのインビボ半減期の測定)
オスのスピローグダウリーラット(約7週齢)が使用される。投与の日に各動物の体重が測定される。体重1kgにつき100μgの非抱合型および抱合型のhG−CSFサンプルが、これらのラットの尾静脈に静脈注射される。投与から1分後、30分後、1、2、4、6および24時間後に500μlの血液が、CO
2−麻酔のもとに採取される。血液サンプルは、室温において1.5時間にわたって保存され、遠心分離(4℃、18000×g、5分間)によって血清が分離される。血清サンプルは、分析の日まで−80℃に保存される。血清サンプルにおける活性なG−CSFの量が、氷上にてサンプルを融解させた後のインビトロ活性アッセイにおけるG−CSFによって定量される。
【0741】
(抱合型および非抱合型のhG−CSFならびにそれらのバリアントの健常ラットにおけるインビボ生物活性の測定)
SRFスピローグダウリーラットにおけるインビボの生物学的な影響の測定が、抱合型および非抱合型のG−CSF、ならびにこれらのバリアントの生物学的な影響の評価のために行われる。到着した日に、ラットは無作為に6つの群に配分される。動物を7日間にわたって休息させる。ここで、健康状態が不良であるか、または過剰な体重を有している個体を不採用にする。休息期間の開始時におけるラットの体重の範囲は、250〜270gである。
【0742】
投与の1日目に、16時間にわたってラットに絶食させ、体重1kgにつき100μgのhG−CSFまたはこれらのバリアントを皮下に注射する。hG−CSFサンプルは、無作為化された6匹のラットの群に注射される。300μgのEDTAによって安定化した血液の血液サンプルが、投与前、ならびに投与後の6、12、24、36、72、96、120および144時間目にラットの尾静脈から採取される。血液サンプルは、以下の血液学的パラメータ:ヘモグロビン、赤血球カウント、ヘマトクリット値、細胞容積の平均値、細胞のヘモグロビン濃度の平均値、細胞のヘモグロビンの平均値、白血球カウント、白血球分画(好中球、リンパ球、好酸球、好塩基球、単核球)について分析される。これらの測定結果に基づいて、抱合型および非抱合型のhG−CSF、ならびにこれらのバリアントの生物学的な影響が評価される。
【0743】
(抱合型および非抱合型のhG−CSFならびにそれらのバリアントの、化学療法誘導型の好中球減少を有しているラットにおけるインビボ生物活性の測定)
SPFスピローグダウリーラットがこの分析に使用される。到着した日に、ラットを無作為に6つの群に配分する。動物を7日間にわたって休息させる。ここで、健康状態が不良であるか、または過剰な体重を有している個体を不採用にする。休息期間の開始時におけるラットの体重の範囲は、250〜270gである。
【0744】
hG−CSFサンプルを投与する24時間前に、体重1kgにつき50mgのシクロホスファミド(CPA)をラットの腹腔内に注射して、抗がん化学療法によって生じる好中球減少に類似する好中球減少を誘導する。0日目に、体重1kgにつき100μgのhG−CSFまたはこれらのバリアントが皮下に注射される。各hG−CSFサンプルは、無作為化した6匹のラットの群に注射される。300μgのEDTAによって安定化した血液の血液サンプルが、投与前、ならびに投与後の6、12、24、36、72、96、120および144時間目にラットの尾静脈から採取される。血液サンプルは、以下の血液学的パラメータ:ヘモグロビン、赤血球カウント、ヘマトクリット値、細胞容積の平均値、細胞のヘモグロビン濃度の平均値、細胞のヘモグロビンの平均値、白血球カウント、白血球分画(好中球、リンパ球、好酸球、好塩基球、単核球)について分析される。これらの測定結果に基づいて、抱合型および非抱合型のhG−CSF、ならびにこれらのバリアントの生物学的な有効性が評価される。
【0745】
<実施例39>
天然にコードされていないアミノ酸を含んでいるPEG付加hG−CSFの安全性および/または有効性のヒト臨床試験。
【0746】
(目的)
天然にコードされていないアミノ酸を含んでいる、皮下投与されたPEG付加組換えヒトhG−CSFの安全性および薬物動態特性を、市販のhG−CSF製品であるNEULASTA(登録商標)またはNEUPOGEN(登録商標)と比較すること。
【0747】
(患者)
20〜40歳の年齢および60〜90kgの体重の範囲にある18人のボランティアが試験に登録される。被験者は、臨床的に有意な異常を示す血液学もしくは血清化学に関する検査値を有しておらず、尿に関する毒性スクリーン、HIVスクリーン、およびB型肝炎表面抗原に関して陰性である。被験者らは、以下の任意の徴候:高血圧;任意の主要な血液疾患の既往歴;深刻な肝疾患、腎疾患、心疾患、胃腸疾患、代謝疾患、神経疾患の既往歴;貧血またはてんかん発作の既往歴;細菌または哺乳類由来の産物、PEGまたはヒト血清アルブミンに対する公知の感受性;カフェイン含有飲料の習慣的な大量の消費家;任意の他の臨床試験への関与、または試験開始までの30日以内において輸血されたか、もしくは献血された血液を有すること;試験開始までの3ヶ月以内にG−CSFのばくろを受けたこと;試験開始までの7日以内に病気にかかったこと;ならびに試験開始までの14日以内に試験前の身体検査または臨床検査の評価に対して有意な異常を有しているべきではない。すべての被験者は、安全性に関して評価可能であり、薬物動態分析にとってのすべての血液採取物が予定通りに採取される。すべての試験は、制度上の倫理委員会の承認および患者の同意のもとに実施される。
【0748】
(試験計画)
これは、健康な男性の有志者における、単一施設における無作為化された2期にわたる第1相の非盲検の交差試験である。18人の被験者は、2つの処理系列群(9人の被験者/群)の1つに無作為に割り当てられる。G−CSFは、天然にコードされていないアミノ酸を含んでいるPEG付加hG−CSFおよび市販の製品から選択されたものの等量を用いて、太股の上部に対して皮下注射による大量瞬時投与によって、2つの別々の投与期間にわたって投与される。市販製品の投与の量および頻度は包装の表示に従う。市販の製品を用いた付加的な投与、投与頻度または所望される他の要因は、被験者の付加的な群を含めることによって、試験に加えられ得る。各投与期間は14日間の洗い流し期間によって分けられる。被験者は、2つの投与期間のそれぞれ(2つの投与期間に挟まれた期間ではない)について、投与前の少なくとも12時間、および投与後の少なくとも72時間にわたって試験施設に留めおかれる。PEG付加hG−CSFについても同様に試験されるべき、付加的な投与、頻度または他の要因がある場合に、被験者の付加的な群が加えられ得る。ヒトへの使用が認可されているG−CSFの複数の調合物がこの試験に使用され得る。NEULASTA(登録商標)として販売されているフィルグラスチム、および/またはNEUPOGEN(登録商標)として販売されているペグフィルグラスチムは、ヒトへの使用が認可されている市販のG−CSF製品である。hG−CSFの試験調合物は、天然にコードされていないアミノ酸を含んでいるPEG付加hG−CSFである。
【0749】
(血液採取)
血液の系列は、G−CSF投与の前および後に、直接に血管に穿刺することによって引き出される。血清中のG−CSF濃度の決定するための静脈血サンプル(5mL)は、投与の約30、20および10分前(3つの基準サンプル);投与の30分後、1、2、5、8、12、15、18、24、30、36、48、60、および72時間後に得られる。各血清サンプルは2つに等分される。すべての血清サンプルは−20℃において保存される。血清サンプルはドライアイス上で輸送される。空腹時の臨床検査試験(血液学、血清生化学および尿検査)が、1日目における初回投与の直前、4日目の朝、16日目における投与の直前、および19日目の朝に実施される。
【0750】
(生物分析方法)
ELISAキットの手順(BioSource International (Camarillo, CA))が血清中のG−CSF濃度の決定に使用される。
【0751】
(安全性の評価)
生命徴候は、各投与(1日目および16日目)の直前、各投与から6、24、48、および72時間目に記録される。安全性の決定は、有害事象の発生および種類ならびに臨床検査試験の基準からの変化に基づいている。さらに、試験前における生命徴候(血圧および身体検査の結果が挙げられる)の測定からの変化が評価される。
【0752】
(データ分析)
投与後の血清中濃度値は、投与後の値のそれぞれから基準のG−CSF濃度の平均値を引くことによって、投与前のG−CSF濃度の基準に関して補正される。基準のG−CSF濃度の平均値は、投与までの10、20および30分前において回収された3つのサンプルからG−CSFレベルを平均化することによって得られる。投与前のG−CSF濃度は、それらがアッセイの定量レベルよりも下回っている場合、平均値の算出に含められない。薬物動態パラメータは、基準のG−CSF濃度に関して補正された血清濃度のデータから決定される。薬物動態パラメータは、BIOAVLソフトウェア最新バージョンを用いたデジタルイクイップメントコーポレーション VAX8600コンピュータシステムにおけるモデル独立法によって算出される。以下の薬物動態パラメータ:ピーク血清濃度(C
max)、ピーク血清濃度までの時間(t
max);直線台形法を用いて算出された時点0から最後の血液サンプリング時点まで(AUC
0−72)の濃度−時間曲線の下にある領域(AUC);および排泄速度定数から計算された末梢排泄半減期(t
1/2)が決定された。排泄速度定数は、ログ−リニアの濃度−時間プロットの末端の直線領域における連続的な複数のデータ点の直線回帰のよって見積もられる。薬物動態パラメータの平均値、標準偏差(SD)、および変動係数(CV)が各処置について算出される。パラメータの平均の割合(保存した調合物/保存していない調合物)が算出される。
【0753】
(安全性の結果)
有害事象の発生は、処置群を越えて等しく分配されている。基準、試験前の臨床検査試験または血圧からの臨床的に有意な変化はなく、試験前の身体検査結果および生命徴候の測定から顕著な変化はない。2つの処置群に関する安全性の特性は同様と思われる。
【0754】
(薬物動態の結果)
市販のhG−CSF製品(NEULASTA(登録商標)またはNEUPOGEN(登録商標))の単回投与を受けた後の、18人の被験者のすべてにおける血清G−CSF濃度の平均−時間プロファイル(G−CSFレベルの基準に関する補正なし)は、測定された各時点において、天然にコードされていないアミノ酸を含んでいるPEG付加hG−CSFと比較された。すべての被験者は、正常な生理学的範囲内の、投与前の基準のGH濃度を有しているはずである。薬物動態パラメータは、基準のG−CSF濃度の平均値に関して補正された血清データから決定され、C
maxおよびt
maxが決定される。NEUPOGEN(登録商標)に関するt
maxの平均は、天然にコードされていないアミノ酸を含んでいるPEG付加G−CSFに関するt
maxよりも有意に短い。末梢半減期の値は、天然にコードされていないアミノ酸を含んでいるPEG付加G−CSFに関する末梢半減期と比べて、hG−CSF(NEUPOGEN(登録商標))に関する末梢半減期がより有意に短い。
【0755】
本試験は健康な男性の被験者において実施されているが、同様の吸収特性および安全性が、他の患者の集団において見込まれる。他の患者の集団は、例えば、がんまたは慢性腎不全の男性または女性の患者、小児腎不全患者、自家の先天的な生体プログラムを有する患者、緊急を要しない手術を予定している患者である。
【0756】
結論として、天然にコードされていないアミノ酸を含んでいるPEG付加G−CSFの皮下投与される単回投与は、安全であり、かつ男性の健康な被検体によって十分に許容される。有害事象の相対的な発生、臨床検査値、生命徴候および身体検査の結果に基づいて、G−CSFの市販の形態の安全性および天然にコードされていないアミノ酸を含んでいるPEG付加G−CSFの安全性は、同等である。天然にコードされていないアミノ酸を含んでいるPEG付加G−CSFは、患者および保健医療提供者に対して大きな臨床有用性を提供し得る。
【0757】
<実施例40>
本実施例では、天然にコードされていないアミノ酸をhEPOに組み込むための好ましい部位を選択するための、多くの見込みのある基準の一組の1つについて説明する。
【0758】
本実施例では、hEPOポリペプチド内の好ましい部位が天然にコードされていないアミノ酸の導入のためにどのように選択されたのかについて示す。受容体(hEPObp)の細胞外ドメインの2分子と複合体化されたhEPO(24位、38位、83位に変移部位を有している)を構成する1CN4が使用されて、天然にコードされていないアミノ酸の1つ以上が導入され得る好ましい位置を決定した。他のhEPO構造(1EER(24位、28位、83位、121位、122位に変異を有している)が挙げられるが、これに限定されない)を利用して、結晶構造のデータセット間における、見込みのある種々の一次構造および二次構造の要素について試験された。これらの構造に関する同等のものは、プロテインデータバンク(PDB)(Berslein et al. J. MoI Biol. 1997, 112, pp 535)からか、またはワールドワイドウェブのrcsb.orgにおいて利用可能なResearch Collaboratory for Structural Bioinformatics PDBを介して利用可能である。構造モデル1CN4は、結晶における異常に起因して除外される124〜130残基、N末端のA1、ならびにC末端のT163、G164D165およびR166残基を除いて、hEPOの完全な成熟型の18kDaの配列を含んでいる。C7およびC161、ならびにC29およびC33によって形成される2つのジスルフィド架橋が存在する。
【0759】
本実施例において使用される配列の番号付与は、配列番号38に示される成熟hEPO(18kDaバリアント)のアミノ酸配列にしたがっている。
【0760】
天然にコードされていないアミノ酸を導入するためのhEPOのそれぞれの位置を評価するために、以下の基準が使用された:(a)1CN4、1EERおよび1BUY(hEPObpと抱合したhEPOの結晶学的構造)の構造解析に基づくいずれかのhEPObpの結合に干渉しない残基、(b)アラニン走査突然変異生成法(Bittorf, T. et al. FEBS, 336:133-136 (1993)、Wen, D., et al. JBC, 269:22839-22846 (1994)、およびElliott, S. et al. Blood, 89:493-502 (1997))によって影響されない残基、(c)表面露出され、周囲の残基とともに最小のファンデルワールス力または水素結合相互作用を示す残基、(d)hEPOバリアントにおいて欠失されているか、または変異している残基(Bittorf, T. et al. FEBS, 336:133-136 (1993)、Wen, D., et al. JBC, 269:22839-22846 (1994))、(e)天然にコードされていないアミノ酸を用いた置換によって保存的な変化を生じる残基、ならびに(f)フレキシビリティーの高い領域(CDループが挙げられるが、これに限定されない)、または構造的に堅固な領域(ヘリックスBが挙げられるが、これに限定されない)のいずれかに見られ得る残基。これに加えて、Cxプログラム(Pintar et al. Bioinformatics, 18, pp 980)を利用してhGH分子に関して、タンパク質の各原子に関する突出の程度を評価するために、さらなる演算が実施された。その結果として、いくつかの実施形態において、天然にコードされていないアミノ酸の1つ以上は、hEPOの以下の位置:1位より前(すなわちN末端)、1位、2位、3位、4位、5位、6位、8位、9位、10位、11、14位、15位、16位、17位、18位、20位、21位、23位、24位、25位、26位、27位、28位、30位、31位、32位、34位、35位、36位、37位、38位、39位、40位、43位、44位、45位、46位、47位、48位、49位、50位、51位、52位、53位、54位、55位、56位、57位、58位、65位、68位、72位、75位、76位、77位、78位、79位、80位、82位、83位、84位、85位、86位、87位、88位、89位、90位、91位、92位、93位、96位、97位、99位、100位、103位、104位、107位、108位、110位、111位、113位、114位、115位、116位、117位、118位、119位、120位、121位、122位、123位、124位、125位、126位、127位、128位、129位、130位、131位、132位、133位、134位、136位、140位、143位、144位、146位、147位、150位、154位、155位、157位、158位、159位、160位、162位、163位、164位、165位、166位、167位(すなわちタンパク質のカルボキシル末端)またはこれらの組合せ(配列番号38、または配列番号37もしくは39における対応するアミノ酸)に組み込まれるが、これらの位置に限定されない。
【0761】
天然にコードされていないアミノ酸の1つ以上の組込みのための例示的な部位の一部としては、EPO(配列番号38、または配列番号37もしくは39における対応するアミノ酸)における1位、2位、4位、9位、17位、20位、21位、24位、25位、27位、28位、30位、31位、32位、34位、36位、37位、38位、40位、50位、53位、55位、58位、65位、68位、72位、76位、79位、80位、82位、83位、85位、86位、87位、89位、113位、115位、116位、119位、120位、121位、122位、123位、124位、125位、126位、127位、128位、129位、130位、131位、332位、134位、136位、159位、162位、163位、164位、165位、および166位が挙げられるが、これらに限定されない。天然にコードされていないアミノ酸の1つ以上の組込みのための例示的な位置としては、EPO(配列番号38、または配列番号37もしくは39における対応するアミノ酸)、における21位、24位、28位、30位、31位、36位、37位、38位、55位、72位、83位、85位、86位、87位、89位、113位、116位、119位、120位、121位、123位、124位、125位、126位、127位、128位、129位、130位、162位、163位、164位、165位、および166位が挙げられる。
【0762】
いくつかの実施形態において、以下の位置の1つ以上における天然に存在しないアミノ酸が水溶性ポリマーと連結されている。当該位置としては、1位より前(すなわちN末端)1位、2位、3位、4位、5位、6位、8位、9位、10位、11位、34位、15位、16位、17位、18位、20位、21位、23位、24位、25位、26位、27位、28位、30位、31位、32位、34位、35位、36位、37位、38位、39位、40位、43位、44位、45位、46位、47位、48位、49位、50位、51位、52位、53位、54位、55位、56位、57位、58位、65位、68位、72位、75位、76位、77位、78位、79位、80位、82位、83位、84位、85位、86位、87位、88位、89位、90位、91位、92位、93位、96位、97位、99位、100位、103位、104位、107位、108位、110位、111位、113位、114位、115位、116位、117位、138位、119位、120位、121位、122位、123位、124位、125位、126位、127位、128位、129位、130位、131位、132位、133位、134位、136位、140位、143位、144位、146位、147位、150位、154位、155位、157位、158位、159位、160位、162位、163位、164位、165位、166位、167位(すなわちタンパク質のカルボキシル末端)(配列番号38、または配列番号37もしくは39における対応するアミノ酸)が挙げられる。いくつかの実施形態において、以下の位置または他の位置の1つ以上における天然に存在しないアミノ酸が水溶性ポリマーと連結されている。当該位置としては、21位、24位、38位、83位、85位、86位、89位、116位、119位、121位、124位、125位、126位、127位、および128位、またはこれらの組合せ(配列番号38、または配列番号37もしくは39における対応するアミノ酸)が挙げられる。
【0763】
hEPOアンタゴニストを生成するための部位としては、2位、3位、5位、8位、9位、10位、11位、14位、15位、16位、17位、18位、20位、23位、43位、44位、45位、46位、47位、48位、49位、50位、52位、75位、78位、93位、96位、97位、99位、100位、103位、104位、107位、108位、110位、331位、132位、133位、140位、143位、144位、146位、147位、150位、154位、155位、159位またはこれらの任意の組合せ(hEPO;配列番号38、または配列番号37もしくは39における対応するアミノ酸)が挙げられる。これらの部位は、アゴニスト設計の基準(c)〜(e)を利用して選択された。また、アンタゴニストの設計はhEPObpに対する結合親和性を高めるための、サイト1残基の部位特異的な修飾を含み得る。
【0764】
<実施例41>
本実施例では、E. coliにおける修飾hEPOのクローニングおよび発現について詳述する。
【0765】
本実施例では、天然にコードされていないアミノ酸を含んでいるhEPOポリペプチドがE. coliにおいてどのように発現され得るかについて示す。Matthews et al., (1996) PNAS 93:9471-76に記載のように、hEPOをコードしているヌクレオチド配列を一般的に生成した。胎児の肝臓、成体の肝臓、胎児の腎臓および成体の腎臓のcDNAライブラリを、全長および成熟型のhEPOをコードしているcDNAをクローニングするための鋳型として使用し、胎児の肝臓から最も良好な結果を得た。全長および成熟型のhEPOをコードしているcDNAをクローニングするために使用されたプライマーは、それぞれ
5'cagttacatatgggagttcacgaatgtcctgcctgg3'(配列番号44)および
5'cagttacatatgctccaccaagattaatctgtg3'(配列番号45)であった。3’プライマーの配列は、5'ctgcaactcgagtcatctgtcccctgtcctgcag3'(配列番号46)であった。クローニング用の反応条件は、2分間にわたって94℃、以下の条件:30秒間にわたって94℃、1分間にわたって50℃および2分間にわたって72℃の30サイクル、これに続く4℃の反応の終了であった。3つの分子が、全長のhEPO、N末端のシグナル配列を欠いている成熟型のhEPO、および成熟型のEPOのバリアントとして同定された(それぞれの配列は、配列番号40、配列番号41および配列番号42に示されている)。全長および成熟型のhEPOをコードしているcDNAは、pBAD HIScおよびpET20b発現ベクターの両方に挿入され、アミノ酸配列(配列番号43)を変えることなく、クローニングおよび発現のために配列を最適化した。
【0766】
直交性のtRNA(O−tRNA)および直交性のアミノアシルtRNA合成酵素(O−RS)を含んでいる採用された転写系が使用されて、hGH発現について実施例2に記載のように、天然にコードされていないアミノ酸を含んでいるhEPOを発現させる。
【0767】
<実施例42>
(正赤血球性貧血(normocyhtaemic)マウスアッセイによって測定されたPEG付加hEPOのインビトロ活性およびインビボ活性)
PEG−hEPO、未修飾のhEPOおよび緩衝溶液がマウスに投与される。その結果は、PEG付加hEPOが、未修飾のhEPOと比べて、優れた活性および延長された半減期を有していることを示し、マウスごとに同じ量を用いた、網状赤血球数の有意な増大および網状赤血球数の最大値の変移によって示される。
【0768】
正赤血球性貧血マウスのバイオアッセイは従来公知である(Pharm. Europa Spec. Issue Erythropoietin BRP Bio 1997(2))。サンプルはBSA−PBSを用いて希釈される。7〜15週齢の健常マウスは、本発明のPEG付加hEPO(0.2ml)の腹腔内投与を受ける。投与後72時間目から始めて4日間にわたって、血液が、尾静脈の穿刺によって採取され、0.15μmolのアクリジンオレンジ染色溶液の1mlに1μlが含まれるように希釈される。染色時間は3〜10分間である。網状赤血球のカウントは、赤色蛍光のヒストグラムの分析(30000の血液細胞ごとに分析される)によって、フローサイトメータにおいて微蛍光測定を用いて実施される。
【0769】
(バイオアッセイ)
さらに、本発明のhEPOポリペプチドは、生物活性がBa/F3−huhEPOR細胞の増殖によって測定されるhEPO受容体結合アッセイおよび細胞増殖アッセイを用いて、インビトロ生物活性について評価される。各アッセイに関する手順は、Wrighton et al. (1997) Nature Biotechnology 15: 1261-1265、米国特許第5,773569号および米国特許第5,830,851号に記載されている。本発明にしたがって調製されたhEPOポリペプチドに関するEC
50値は、組換えエリスロポエチンを用いて得られる最大の活性の50%を生じさせるために必要な、化合物の濃度である。
【0770】
<実施例43>
天然にコードされていないアミノ酸を含んでいるPEG付加hEPOの安全性および/または有効性のヒトの臨床試験。
【0771】
(目的)
天然にコードされていないアミノ酸を含んでいる、皮下投与されたPEG付加組換えヒトhEPOの安全性および薬物動態特性を、市販のhEPO製品であるPROCRIT(登録商標)またはARANESP(登録商標)と比較すること。
【0772】
(患者)
20〜40歳の年齢および60〜90kgの体重の範囲にある18人のボランティアが試験に登録される。被験者は、臨床的に有意な異常を示す血液学もしくは血清化学に関する検査値を有しておらず、尿に関する毒性スクリーン、HIVスクリーン、およびB型肝炎表面抗原に関して陰性である。被験者らは、以下の任意の徴候:高血圧;任意の主要な血液疾患の既往歴;深刻な肝疾患、腎疾患、心疾患、胃腸疾患、代謝疾患、神経疾患の既往歴;貧血またはてんかん発作の既往歴;細菌または哺乳類由来の産物、PEGまたはヒト血清アルブミンに対する公知の感受性;カフェイン含有飲料の習慣的な大量の消費家;任意の他の臨床試験への関与、または試験開始までの30日以内において輸血されたか、もしくは献血された血液を有すること;試験開始までの3ヶ月以内にhEPOのばくろを受けたこと;試験開始までの7日以内に病気にかかったこと;ならびに試験開始までの14日以内に試験前の身体検査または臨床検査の評価に対して有意な異常を有しているべきではない。すべての被験者は、安全性に関して評価可能であり、薬物動態分析にとってのすべての血液採取物が予定通りに採取される。すべての試験は、制度上の倫理委員会の承認および患者の同意のもとに実施される。
【0773】
(試験計画)
これは、健康な男性の有志者における、単一施設における無作為化された2期にわたる第1相の非盲検の交差試験である。18人の被験者は、2つの処理系列群(9人の被験者/群)の1つに無作為に割り当てられる。hEPOは、天然にコードされていないアミノ酸を含んでいるPEG付加hEPOおよび市販の製品から選択されたものの等量を用いて、太股の上部に対して皮下注射による大量瞬時投与によって、2つの別々の投与期間にわたって投与される。市販製品の投与の量および頻度は包装の表示に従う。市販の製品を用いた付加的な投与、投与頻度または所望される他の要因は、被験者の付加的な群を含めることによって、試験に加えられ得る。各投与期間は14日間の洗い流し期間によって分けられる。被験者は、2つの投与期間のそれぞれ(2つの投与期間に挟まれた期間ではない)について、投与前の少なくとも12時間、および投与後の少なくとも72時間にわたって試験施設に留めおかれる。PEG付加hEPOについても同様に試験されるべき、付加的な投与、頻度または他の要因がある場合に、被験者の付加的な群が加えられ得る。ヒトへの使用が認可されているEPOの複数の調合物がこの試験に使用され得る。PROCRIT(登録商標)として販売されているエポエチンアルファ、および/またはARANESP(登録商標)として販売されているダルベポイテインは、ヒトへの使用が認可されている市販のEPO製品である。hEPOの試験調合物は、天然にコードされていないアミノ酸を含んでいるPEG付加hG−EPOである。
【0774】
(血液の採取)
血液の系列は、EPO投与の前および後に、直接に血管に穿刺することによって引き出される。血清中のEPO濃度の決定するための静脈血サンプル(5mL)は、投与の約30、20および10分前(3つの基準サンプル);投与の30分後、1、2、5、8、12、15、18、24、30、36、48、60、および72時間後に得られる。各血清サンプルは2つに等分される。すべての血清サンプルは−20℃において保存される。血清サンプルはドライアイス上で輸送される。空腹時の臨床検査試験(血液学、血清生化学および尿検査)が、1日目における初回投与の直前、4日目の朝、16日目における投与の直前、および19日目の朝に実施される。
【0775】
(生物分析方法)
放射免疫アッセイ(RIA)キットの手順(Diagnostic Systems Laboratory (DSL), Webster TX)が、血清中のエリスロポエチン濃度の測定に使用される。市販のRIAは、ヒトの尿エリスロポエチンに対するウサギポリクロナル抗血清を一次抗体として使用し、
125I標識した尿エリスロポエチンをトレーサとして使用する、2重抗体の競合的な方法である。エポエチンアルファまたはダルベポイエチンが、標準の品質対照サンプルとして、DSLキットに入っている尿エリスロポエチンと置き換えられる。アッセイに使用される基準の濃度は7.8、15.6、31.3、50、62.5、100および125mIU/mLである。許容範囲の精度を与える最低の基準に関する背景適合値の平均と規定される感度は、8.6mIU/mLであり、アッセイの範囲は、品質の対照希釈から2000mIU/mLまで及んでいる。
【0776】
(安全性の評価)
生命徴候は、各投与(1日目および16日目)の直前、各投与から6、24、48、および72時間目に記録される。安全性の決定は、有害事象の発生および種類ならびに臨床検査試験の基準からの変化に基づいている。さらに、試験前における生命徴候(血圧および身体検査の結果が挙げられる)の測定からの変化が評価される。
【0777】
(データ分析)
投与後の血清中濃度値は、投与後の値のそれぞれから基準のエリスロポエチン濃度の平均値を引くことによって、投与前のエリスロポエチン濃度の基準に関して補正される。基準のエリスロポエチン濃度の平均値は、投与までの10、20および30分前において回収された3つのサンプルからエリスロポエチンレベルを平均化することによって得られる。投与前のエリスロポエチン濃度は、それらがアッセイの定量レベルよりも下回っている場合、平均値の算出に含められない。薬物動態パラメータは、基準のエリスロポエチン濃度に関して補正された血清濃度のデータから決定される。薬物動態パラメータは、BIOAVLソフトウェア最新バージョンを用いたデジタルイクイップメントコーポレーション VAX8600コンピュータシステムにおけるモデル独立法によって算出される。以下の薬物動態パラメータ:ピーク血清濃度(C
max)、ピーク血清濃度までの時間(t
max);直線台形法を用いて算出された時点0から最後の血液サンプリング時点まで(AUC
0−72)の濃度−時間曲線の下にある領域(AUC);および排泄速度定数から計算された末梢排泄半減期(t
1/2)が決定された。排泄速度定数は、ログ−リニアの濃度−時間プロットの末端の直線領域における連続的な複数のデータ点の直線回帰によって見積もられる。薬物動態パラメータの平均値、標準偏差(SD)、および変動係数(CV)が各処置について算出される。パラメータの平均の割合(保存した調合物/保存していない調合物)が算出される。
【0778】
(安全性の結果)
有害事象の発生は、処置群を越えて等しく分配されている。基準、試験前の臨床検査試験または血圧からの臨床的に有意な変化はなく、試験前の身体検査結果および生命徴候の測定から顕著な変化はない。2つの処置群に関する安全性の特性は同様と思われる。
【0779】
(薬物動態の結果)
市販のhEPO製品(PROCRIT(登録商標)またはARANESP(登録商標))の単回投与を受けた後の、18人の被験者のすべてにおける血清エリスロポエチン濃度の平均−時間プロファイル(エリスロポエチンレベルの基準に関する補正なし)は、測定された各時点において、天然にコードされていないアミノ酸を含んでいるPEG付加hG−CSFと比較された。すべての被験者は、正常な生理学的範囲内の、投与前の基準のGH濃度を有しているはずである。薬物動態パラメータは、基準のエリスロポエチン濃度の平均値に関して補正された血清データから決定され、C
maxおよびt
maxが決定される。hEPO(PROCRIT(登録商標))に関するt
maxの平均は、天然にコードされていないアミノ酸を含んでいるPEG付加hEPOに関するt
maxよりも有意に短い。末梢半減期の値は、天然にコードされていないアミノ酸を含んでいるPEG付加hEPOに関する末梢半減期と比べて、hEPO(PROCRIT(登録商標))に関する末梢半減期がより有意に短い。
【0780】
本試験は健康な男性の被験者において実施されているが、同様の吸収特性および安全性が、他の患者の集団において見込まれる。他の患者の集団は、例えば、がんまたは慢性腎不全の男性または女性の患者、小児腎不全患者、自家の先天的な生体プログラムを有する患者、緊急を要しない手術を予定している患者である。
【0781】
結論として、天然にコードされていないアミノ酸を含んでいるPEG付加hEPOの皮下投与される単回投与は、安全であり、かつ男性の健康な被検体によって十分に許容される。有害事象の相対的な発生、臨床検査値、生命徴候および身体検査の結果に基づいて、hEPO(PROCRIT(登録商標))の安全性および天然にコードされていないアミノ酸を含んでいるPEG付加hEPOの安全性は、同等である。天然にコードされていないアミノ酸を含んでいるPEG付加hEPOは、患者および保健医療提供者に対して大きな臨床有用性を提供し得る。
【0782】
<実施例44:レプチン封入体調製物の可溶化、リフォールディング、精製>
(封入体調製物の可溶化)
4℃の封入体(IB)緩衝液I(50mMのTris、pH8.0;100mMのNaCl;1mMのEDTA;1%のTriton X100;4℃)に対して、固形分が最終的に10%になるまで混合することによって細胞のペーストを再懸濁する。再懸濁した材料を計2回にわたってマイクロフリューダイザーに通して細胞を溶解させる。遠心分離(10000g;15分間;4℃)し、容器を傾けて上清を捨てる。過剰量のIB緩衝液(50mMのTris、pH8.0;100mMのNaCl;1mMのEDTA;1%のTriton X100;4℃)に再懸濁することによってIBペレットを洗浄し、再懸濁した材料を計2回にわたってマイクロフリューダイザーに通す。遠心分離(10000g;15分間;4℃)し、容器を傾けて上清を捨てる。1倍量の緩衝液II(50mMのTris、pH8.0;100mMのNaCl;1mMのEDTA;4℃)にIBペレットを再懸濁する。遠心分離(10000g;15分間;4℃)し、容器を傾けて上清を捨てる。1/2倍量の緩衝液II(50mMのTris、pH8.0;100mMのNaCl;1mMのEDTA;4℃)にIBペレットを再懸濁する。適当な容器にIBを分注する。遠心分離(10000g;15分間;4℃)し、容器を傾けて上清を捨てる。封入体を、可溶化するか、またはさらに使用するまで−80℃に保存する。
【0783】
(封入体の可溶化)
10〜15mg/mLの最終濃度まで、可溶化緩衝液(20mMのTris、pH8.0;8Mの尿素;10mMのβ−ME)に封入対を可溶化させる。1時間にわたって定速において混合しながら、室温において可溶化したIBをインキュベートする。遠心分離(12000g;20分間;4℃)によって不要性の物質を除去する。タンパク質濃度が高ければ、必要に応じてさらなる可溶化緩衝液を用いて希釈することによって、タンパク質濃度を調節する。
【0784】
(リフォールディング)
1.0mg/mLの最終濃度まで、50mMのグリシン、pH9.0;1Mの尿素;0.2mMのシステイン;2.0mMのシスチンに希釈することによってリフォールディングさせる。24時間にわたって4℃に放置してリフォールディングさせる。
【0785】
(精製)
0.22μmのPESフィルタにリフォールディング反応物を通してろ過する。緩衝液A(20mMのTris、pH8.0)において平衡化したQ HPカラム(GE Healthcare)に材料を載せる。20〜100%の緩衝液B(20mMのTris、pH8.0;250mMのNaCl)の直線勾配を用いて、レプチンを溶出させる。モノマーのレプチンをプールする。
【0786】
(PEG付加および精製)
Q HPプールを取り、2.0mg/mLまで濃度を下げる。10%の氷酢酸を用いてpHを4.0まで下げる。12:1の過剰量のPEGを加える。72時間にわたって28℃においてインキュベートする。PEG反応物に最終濃度が50mMのTris塩基を加え、RO水を用いて10倍に希釈する。伝導率が<1mS/cmであり、pHが8.0〜9.0であることを確認する。緩衝液A(20mMのTris、pH8.0)において平衡化したQ HPカラム(GE Healthcare)に材料を載せる。50〜100%の緩衝液B(20mMのTris、pH8.0;250mMのNaCl)の直線勾配を用いて、PEG−レプチンを溶出させる。PEG−レプチンをプールし、緩衝液を20mMのTris、pH7.5;100mMのNaClに交換する。PEG物質を1〜2mg/mLに濃縮し、0.22μmのPESフィルタを用いてろ過滅菌する。4℃に保存する。
【0787】
<実施例45:試験名−ob/ob B6 マウスにおけるレプチン化合物の予備的な有効性>
(目的)
ob/ob変異マウスにおける、Ambrxが保有する技術によって製造されたPEG修飾レプチン化合物の有効性、および天然(野生型)のヒトレプチン化合物の有効性を評価すること。試験物質の有効性は、薬物の投与から特定の時点において得られた体重(BW)に対するそれらの影響によって定量化される。
【0788】
(試験物質)
1.組換えヒトレプチン(RnD Systems)
2.ヒトPEG−レプチンバリアント1
3.ヒトPEG−レプチンバリアント2
4.ヒトPEG−レプチンバリアント3
5.ヒトPEG−レプチンバリアント4。
【0789】
(試験物質の質/組成)
20.0mMのTris
100〜150mMのNaCl
pH8.0。
【0790】
(ストック濃度)
1.組換えヒトレプチン(RnD):0.5mg/mLのPBS溶液
2.ヒトPEG−レプチンバリアント1:0.11mg/mL
3.ヒトPEG−レプチンバリアント2:未定(TBD)
4.ヒトPEG−レプチンバリアント3:未定
5.ヒトPEG−レプチンバリアント4:未定。
【0791】
(動物)
試験の開始時に約8週齢の30匹のメスのob/ob変異マウスを、良好な健康状態においてHarlan Labsから受け取り、試験の開始までに少なくとも3日間にわたって試験区域に馴化させた。試験物質の投与日にマウスの体重を測定する。動物を、飼料(ピューリナの固形飼料5008)および水を自由に得られる標準的な無菌条件において飼育する。
【0792】
供給メーカ/動物の受領日
Harlan Laboratory/動物は2008/1/29に受領した。
【0793】
(動物群:すべての化合物が皮下に投与される)
群1(n=5):0mg/kg(PBS)の皮下投与
群2(n=5):0.5mg/kgのレプチン(RnD)の皮下投与
群3(n=5):0.5mg/kgのPEG−レプチンのバリアント1の皮下投与
群4(n=5):0.5mg/kgのPEG−レプチンのバリアント2の皮下投与
群5(n=5):0.5mg/kgのPEG−レプチンのバリアント3の皮下投与
群6(n=5):0.5mg/kgのPEG−レプチンのバリアント4の皮下投与。
【0794】
(手順)
試験物質の投与前に動物の体重を測定する。□Lにおいて体重の5倍量が投与されるように、化合物を調合する。動物の背側肩甲骨の領域の皮下に投与する。動物に試験物質を単回注射する(1日目)。
【0795】
(データ収集/指標)
動物は、毎日のおよそ同じ時刻に体重測定される。体重を記録して、個々の動物の投与前の体重と比べて飼料の摂取量を評価するために使用する。7日目の終わりに、最後の採血のために鎮静剤を動物に投与する。血清を、補助的な指標(例えば、アデイポネクチンの濃度)について分析する。
【0796】
(終了)
すべての動物を、組織材料の回収のために安楽死させる。
【0797】
<実施例46>
合成レプチン遺伝子を、pVK6抑制系にクローニングした(E. coliにおける発現に最適化された)。7つのアンバー変異(H46、T66、S67、W100、E105、D108、G111)を生成し、公開されているSAR情報を利用して、これらの変異を30K PEGを用いたPEG付加に使用した。
【0798】
野生型を精製した。そして、すべての変異体にPEGを付加する。H46のPEG付加(H46pAF)から得られたデータが、本願の出願書類の最後にある図面に示され得る(
図19におけるSDS−PAGE、ならびに
図20および21におけるクロマトグラム)。
【0799】
これに使用される現状の処理は:
封入体を精製し、8Mの尿素に可溶化する
酸化還元対を用いてpH8、0.3〜1mg/mlにおいてリフォールディングする
モノマーを精製するためのQ HP FPLC
PEG付加のためのpH4への調節(最適化されておらず、ここで多くの物質を消失する)
標準的な条件(27℃、12倍過剰量のPEG、48〜72時間)におけるPEG付加。
【0800】
最後に、天然にコードされていないアミノ酸を含んでいる、皮下に単回投与されたPEG付加hEPOは、安全であり、健康なメスの被験体によって十分に許容される。有害事象の相対的な発生率、臨床検査値、生命徴候および身体検査の結果に基づいて、hEPO(PROCRIT(登録商標))の安全性、および天然にコードされていないアミノ酸を含んでいるPEG付加hEPOの安全性は、同等である。天然にコードされていないアミノ酸を含んでいるPEG付加hEPOは、患者および保健医療提供者に対して大きな臨床有用性を提供し得る。
【0801】
<実施例47>
この試験は、ob/ob変異マウスにおける天然のヒトレプチン(
図22〜24におけるrHレプチン)と比較した場合の、PEG修飾した5つの異なるヒトレプチン化合物(PEG−レプチンH46、PEG−レプチンW100、PEG−レプチンE105、PEG−レプチンD108、PEG−レプチンG111)の有効性を評価するために設計された。16kDaのタンパク質であるレプチンは、脂肪組織によって生成され、体重調節に重要な役割を果たすと考えられている。食欲の充足、エネルギーの消費、および代謝に対するレプチンの作用に起因して、レプチンは、肥満患者における体重減少および体重管理に対する実行可能な治療上の選択肢である。レプチンの治療上の潜在性に関する最初の研究が、ob/ob変異マウスにおいて行われている。これらのマウスは、機能的なレプチンを欠失しており、結果として活動性および代謝が低下しており、遺伝的に肥満性である。われわれは、天然のレプチンを投与した動物と比べて、PEGレプチンの高いPK活性に起因して、PEG−レプチンの投与によって体重増加が高められ、飼料の消費量が低下するだろうと仮説を立てた。メスのob/ob変異マウスは、試験の開始時において約8週齢であった。マウスは、試験の開始時に、5つの異なるPEG−レプチンバリアントのうちの1つ、天然のヒトレプチン、または対照ビヒクルの単回投与を皮下に受けた。体重および飼料の消費量が、処理後の7日間にわたって毎日、記録された。予想通りに、われわれは、7日間にわたるPEG−レプチンバリアントを用いて処理したマウスにおいて、体重低下の増進および飼料消費の低下を認めた。天然のヒトレプチンまたは対照ビヒクルを用いて処理したマウスは、処理の7日間に体重が低下せず、飼料消費がわずかに増加した。結論として、われわれは、天然のヒトレプチンの単回投与を受けたマウスと比べて、ob/obマウスの皮下に対するPEG−レプチンの単回投与によって、体重低下が高められ、飼料消費が低下したことを示している。これは、市販の化合物と比べたときの、Ambrxの化合物の治療に関する優位性を示している。
【0802】
(結果および考察)
体重
PEG−レプチンの単回処理によって、天然のヒトレプチンまたは対照ビヒクルを用いて処理したマウスと比べて、ob/obマウスにおける体重低下が増進される。
【0803】
試験1日目からの体重変化のパーセントは、PEG−レプチンバリアントを用いて処理したすべての群と、天然のヒトレプチンまたは対照ビヒクルを用いて処理した群との間に、試験2日目から試験5日目までにおいて有意差が認められた。
【0804】
PEG−レプチンバリアントを用いて処理したマウスは、試験2日目から試験5日目までに体重低下を示した。PEG−AXL4を用いて処理したマウスは、試験4日目までに(試験1日目と比べて)10%の体重が低下した。
【0805】
飼料の消費量
天然のヒトレプチンまたは対照ビヒクルを単回注射によって処理したマウスと比べた場合、PEG−レプチンの単回投与によって、ob/obマウスにおける飼料消費の低下が起こる。
【0806】
天然のヒトレプチンまたは対照ビヒクルを用いて処理したマウスの毎日の飼料の消費量は、6〜9グラムであった。PEG−レプチンを用いて処理したマウスの毎日の飼料の消費量は、試験2日目から試験4日目まで0.4〜5グラムであった。試験5日目付近において、PEG−レプチンを用いて処理したマウスの飼料の消費量は、天然のヒトレプチンまたは対照ビヒクルを用いて処理したマウスと同程度であった。
【0807】
PEG−レプチンを用いて処理したマウスは、対照ビヒクルを用いて処理したマウスと比べて、飼料の総消費量が有意に低かった。
【0808】
最後に、われわれは、天然のヒトレプチンの単回注射によって処理したマウスと比べて、ob/obマウスの皮下に対するPEG−レプチンバリアントの単回投与によって、処理後7日目までの間に体重低下の有意な増進および飼料消費の有意な低下が起こることを示している。これの有効性は、市販の化合物と比べたときの、Ambrxの化合物の治療に関する優位性を示している。
【0809】
(方法)
メスのob/ob変異マウス(8週齢)を、飼料および水を自由に摂取できる、標準的な無菌のケースにおいて飼育した。マウスは、5つの異なるPEG−レプチンバリアントのうちの1つ、PEG付加前のレプチンバリアント、天然のヒトレプチン、または対照ビヒクルの単回投与を、試験の開始時に皮下に受けた。処置後の7日のあいだ、毎日およそ同じ時刻に体重および飼料消費を測定し、記録した。群の平均値の間における統計的な差を一元配置分散分析(p<0.05)によって評価した。
【0810】
<実施例48>
本試験は、7つのPEG−レプチン類似物の、通常のレプチン応答を示すマウスにおける有効性、長時間作用性および最適濃度を評価し、体重、飼料の摂取および血中グルコースを測定するために設計された。これらの7つの異なるPEG修飾ヒトレプチン化合物としては、PEG−レプチンH46、PEG−レプチンW100、PEG−レプチンE105、PEG−レプチンG111、PEG−レプチンD108、PEG−レプチンG112、およびPEG−レプチンS120が挙げられる。
【0811】
(動物)
8匹のC57BL/6J種のマウス(11週齢)を各処置群に使用した。それらを、通常の固形飼料を受け、12時間の明暗サイクルにおいて1ケージに2匹ずつ入れた。
【0812】
(動物群:すべての化合物は皮下に投与された)
群1(n=8):ビヒクル対照、週に1回のPBSの皮下投与
群2(n=8):ビヒクル対照2、PBSの毎日の皮下投与
群3(n=8):陽性対照、1.0mg/kgのレプチン(研究室への提供元から購入した)の毎日の皮下投与
群4(n=8):0.5mg/kgのレプチンH46の皮下投与
群5(n=8):0.25mg/kgのレプチンH46の皮下投与
群6(n=8):0.1mg/kgのレプチンH46の皮下投与
群7(n=8):0.5mg/kgのレプチンW100の皮下投与
群8(n=8):0.25mg/kgのレプチンW100の皮下投与
群9(n=8):0.1mg/kgのレプチンW100の皮下投与
群10(n=8):0.5mg/kgのレプチンE105の皮下投与
群11(n=8):0.25mg/kgのレプチンE105の皮下投与
群12(n=8):0.1mg/kgのレプチンE105の皮下投与
群13(n=8):0.5mg/kgのレプチンG111の皮下投与
群14(n=8):0.25mg/kgのレプチンG111の皮下投与
群15(n=8):0.1mg/kgのレプチンG111の皮下投与
群16(n=8):0.5mg/kgのレプチンD108の皮下投与
群17(n=8):0.25mg/kgのレプチンD108の皮下投与
群18(n=8):0.1mg/kgのレプチンD108の皮下投与
群19(n=8):0.5mg/kgのレプチンG112の皮下投与
群20(n=8):0.25mg/kgのレプチンG112の皮下投与
群21(n=8):0.1mg/kgのレプチンG112の皮下投与
群22(n=8):0.5mg/kgのレプチンS120の皮下投与
群23(n=8):0.25mg/kgのレプチンS120の皮下投与
群24(n=8):0.1mg/kgのレプチンS120の皮下投与。
【0813】
(手順)
PBS、レプチン、または本発明のレプチンポリペプチドの投与前に、動物の体重を測定した。すべての試験物質は、皮下に投与され、本発明のPEG−レプチンポリペプチドバリアントを受ける動物は、0日目における試験物質の単回注射によってそれらを受けた。
【0814】
(データ収集/指標)
処理後の0、1、3、5および7日目に、すべての動物の体重を測定した。動物の飼料の摂取量を、グラムを単位として測定し、測定を処理後の0、1、3、5および7日目に行った。摂氏を単位として測定されたすべての動物の深部温を、処理後の0および3日目に記録し、mg/dlを単位として測定されたすべての動物の血中グルコース濃度を、処理後の0および3日目に記録し、試験期間における体組成、体脂肪量および体脂肪率の変化を測定するために、各動物についてNMR試験を実施した。
【0815】
本実験から収集されたデータのグラフのいくつかを
図32(PEG−レプチンH46(0.5mg/kg)およびPEG−レプチンG111(0.5mg/kg))に示す。
図32には、0.5mg/kgの処理群の体重の平均値(±の標準偏差(SEM)が示されている)が、開始時の体重に対する百分率として、陽性対照および陰性対照の群(毎日のrhレプチンおよびPBS)と比較されて示されている。
【0816】
<実施例49>
本試験は、7つの異なるPEG修飾ヒトレプチン化合物(PEG−レプチンH46、PEG−レプチンW100、PEG−レプチンE105、PEG−レプチンG111、PEG−レプチンD108、PEG−レプチンG112およびPEG−レプチンS120が挙げられる)の、高脂肪の飼料を与えられたマウス(食餌によって誘導された肥満(DIO)のマウスモデル)における体重増加の防止に対する影響を評価するために設計された。
【0817】
(動物)
8匹のC57BL/6J種のマウス(11週齢)を各処置群に使用した。マウスには、試験の開始まで通常の固形飼料が与えられ、それから0日目に高脂肪の飼料に切り替えられた。特に断りがない限り、試験群(1つの対照群は通常の固形飼料のまま据え置かれた)には、試験の0日目から14日目まで高脂肪の飼料を与えた。本発明のレプチンポリペプチドを用いて処理された動物に、0日目に1回および7日目に1回の、週に2回の注射を行った。マウスを、12時間の明暗サイクルにおいて1ケージに2匹ずつ入れた。
【0818】
(動物群:すべての化合物は皮下に投与された)
群1(n=8):ビヒクル対照、週に1回の皮下注射
群2(n=8):対照2、PBSの毎日の皮下注射
群3(n=8):陽性対照、1.0mg/kgのレプチン(研究室への提供元から購入した)の毎日の皮下注射
群4(n=8):対照3、マウスには通常の固形飼料が与えられ、マウスはPBSを用いた週に1回の処置を受けた
群5(n=8):0.5mg/kgのPEG−レプチンH46の皮下注射
群6(n=8):0.5mg/kgのPEG−レプチンW100の皮下注射
群7(n=8):0.5mg/kgのPEG−レプチンE105の皮下注射
群8(n=8):0.5mg/kgのPEG−レプチンG111の皮下注射
群9(n=8):0.5mg/kgのPEG−レプチンD108の皮下注射
群10(n=8):0.5mg/kgのPEG−レプチンG112の皮下注射
群11(n=8):0.5mg/kgのPEG−レプチンS120の皮下注射
(データ収集/指標)
処置後の0、3、7、10および14日目にすべての動物の体重を、グラムを単位として測定した。動物の食物の摂取量を、グラムを単位として測定し、処置後の0、3、7、10および14日目に測定を行い、記録した。すべての動物の血中グルコース濃度を処置後の0および14日目にmg/dlを単位として測定し、記録し、試験期間における体組成、体脂肪量および体脂肪率の変化を測定するために、各動物についてNMR試験を実施した。
【0819】
本実験から収集されたデータのグラフのいくつかを
図30(PEG−レプチンH46(0.5mg/kg)およびPEG−レプチンG111(0.5mg/kg))に示す。
図32には、0.5mg/kgの処理群の体重の平均値(±の標準偏差(SEM)が示されている)が、開始時の体重に対する百分率として、陽性対照および陰性対照の群(毎日のrhレプチンおよびPBS)と比較されて示されている。
【0820】
<実施例50>
本試験は、カテーテルを挿入したラットにおける、天然のレプチンおよび本発明のPEG修飾レプチンポリペプチドの薬物動態特性を比較するために設計された。試験物質の薬物動態を、薬物の投与後の特定の時点に回収された血清サンプルからのヒトレプチンに特異的なELISAによって定量化した。
【0821】
この実験に使用された本発明のポリペプチドは、PEG30K−H46レプチン、PEG30K−W100レプチン、PEG30K−D108レプチンおよびPEG30K−G111レプチンであった。ポリペプチドは、以下に示すようなストック濃度を有しており、希釈調製物が必要であった。
【0822】
【表9】
【0823】
(動物)
試験の開始時におよそ250〜275グラムの体重を有している16匹のオスのスピローグ−ダウリー(SD)ラットに、頚動脈カテーテルを外科的に取り付けた。動物を、Charles River Labから受け取り、試験開始までの3日間にわたって放置して順化させ、試験の開始日に動物の体重を測定した。動物を、飼料および水を自由に摂取できる、標準的な無菌の条件において飼育した。
【0824】
(動物群:すべての化合物は皮下に投与された)
群1(n=5):rhレプチンの皮下注射、0.1mg/kgのレプチン(研究室への提供源から購入した)の皮下注射)
群2(n=5):0.5mg/kgのPEG−レプチンH46の皮下注射
群3(n=5):0.5mg/kgのPEG−レプチンW100の皮下注射
群4(n=5):0.5mg/kgのPEG−レプチンE105の皮下注射
群5(n=5):0.5mg/kgのPEG−レプチンG111の皮下注射
レプチンまたはレプチンバリアントの投与前に動物の体重を測定した。化合物を、BW×1μlが投与されるように調合した。試験物質を、背側肩甲骨の領域に皮下投与した。時点0に試験物質の単回投与を動物に対して行い、それから特定の時点に全血を動物から採取して、SSTマイクロテイナー回収チューブに回収した。血清を、遠心分離の前に30分間にわたって放置して凝固させた。血清を、ポリプリピレンのタイターチューブに移して、マイクロストリップを用いて密閉し、ELISAによって分析してレプチンの血清中濃度を測定するまで−80℃に保存した。
【0825】
(データ収集/指標)
各動物を、完全なPKの時間的経過のために使用し、0.25mLの全血を頚動脈カテーテルから採取した。採血の直後に、カテーテルを0.1mLの生理食塩水を用いて洗い流した。各試験物質の回収時点は、投与前の採血、投与後の1、2、4、8、24、32、48、56、72、96時間目であった。このデータのグラフが
図31に示されており、rhレプチンと対照して試験された本発明の4つの特定のPEG−レプチンポリペプチドのそれぞれの単回投与に関する血清半減期が、rhレプチンを投与した場合よりも8倍から10倍であることを示している。
【0826】
<実施例49>
本試験は、FGF−21、FGF−21変異体、天然にコードされていないアミノ酸を1つ以上含んでいるFGF−21、PEG付加された上述のFGF−21ポリペプチドのうちのいずれか、ヒト成長ホルモン、または本発明のレプチンポリペプチドとの組合せに使用され得る公知の抗肥満薬と、本発明のレプチンポリペプチドとを組み合わせる組合せ療法の効果を評価するために設計された。
【0827】
食餌によって誘導された肥満マウス(例えば、C57BL/6マウス)(1群ごとにn=6)に、試験開始前の6週間にわたって高脂肪の飼料(HFD)を与えた。
【0828】
(動物群)
群1(n=6):対照、調合物のビヒクルのみ
群2(n=6):PBS対照
群3(n=6):1.0mg/kgのrhレプチン
群4(n=6):アミリン(治療有効量)
群5(n=6):アミリン+組換えヒトレプチン(1.0mg/kg)
群6(n=6):アミリン+PEG−レプチンポリペプチド(1.0mg/kg)
群7(n=6):FGF−21+PEG−レプチンポリペプチド(1.0mg/kg)
群8(n=6):FGF−21(治療有効量)
浸透圧ポンプによるアミリンを用いた2週間の前処理、それから上述の群における試験化合物(他の公知の抗肥満薬が本発明のポリペプチドとともに試験され、使用され得る)の4週間の処理。すべてのマウスは前処理のための浸透圧ポンプを有している。群4〜7について、試験期間(2〜6週目)中の薬物投与のために浸透圧ポンプを使用する。PEG付加レプチンポリペプチドを用いる群に対して、毎週の皮下投与(2〜6週目)によって試験物質を投与する。
【0829】
(指標)
飼料消費および体重の毎日の測定
QMRによる体脂肪量および除脂肪体重の週に1回の測定(組合せ処理の開始後)
呼吸商、体温および血清における代謝レベル(metabolic serum levels)の測定
投与前および試験の終了時、または最小のアディポネクチンレベルおよびインスリンレベル時における採血。
【0830】
本明細書に記載の実施例および実施形態が単に例示を目的としており、これらを踏まえた種々の改変または変更が、当業者に示唆され、本願の精神および範囲、ならびに添付の特許請求の範囲の範囲内に含まれることが理解されるであろう。本明細書に引用されているすべての公開物、特許および特許出願が、すべての目的のために参照によって本明細書に援用される。
【0831】
【表10】
【0832】
【表11】