【発明を実施するための形態】
【0008】
以下において、本発明の内容について詳細に説明する。尚、本願明細書において「〜」とはその前後に記載される数値を下限値および上限値として含む意味で使用される。
【0009】
<繊維強化樹脂材料>
本発明の繊維強化樹脂材料は、熱可塑性樹脂と、レーザーダイレクトストラクチャリング添加剤を含む熱可塑性樹脂組成物を、連続繊維に含浸させてなる繊維強化樹脂材料である。このようなシートを加熱成形して成形品とすることにより、メッキ性に優れ、かつ、機械的強度、特にノッチ付シャルピー衝撃強度に優れた樹脂成形品が得られる。以下、これらの詳細について説明する。
【0010】
<<熱可塑性樹脂組成物>>
本発明で用いる熱可塑性樹脂組成物は、熱可塑性樹脂と、レーザーダイレクトストラクチャリング添加剤を含む。さらに、ガラス繊維、エラストマー、ケイ酸塩鉱物、安定剤、酸化防止剤、離型等を含んでいても良い。
【0011】
<<<熱可塑性樹脂>>>
本発明で用いる熱可塑性樹脂としては、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、アクリル樹脂、ポリアセタール樹脂およびポリカーボネート樹脂から選択されることが好ましい。これらの中でも、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂が好ましい。これらは単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0012】
ポリエステル樹脂としては、特開2010−174223号公報の段落番号0013〜0016の記載を参酌することができる。
ポリアセタール樹脂としては、特開2003−003041号公報の段落番号0011、特開2003−220667号公報の段落番号0018〜0020の記載を参酌することができる。
【0013】
ポリアミド樹脂としては、特開2011−132550号公報の段落番号0011〜0013の記載を参酌することができる。好ましくは、ジアミン構成単位(ジアミンに由来する構成単位)とジカルボン酸構成単位(ジカルボン酸に由来する構成単位)をからなるポリアミド樹脂であって、ジアミン構成単位の50モル%以上がキシリレンジアミンに由来するポリアミド樹脂である。好ましくは、ジアミン構成単位の70モル%以上、より好ましくは80モル%以上がメタキシリレンジアミンおよび/またはパラキシリレンジアミンに由来し、ジカルボン酸構成単位(ジカルボン酸に由来する構成単位)の好ましくは50モル%以上、より好ましくは70モル%以上、特には80モル%以上が、炭素原子数が好ましくは4〜20の、α,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸に由来するキシリレンジアミン系ポリアミド樹脂である。
キシリレンジアミンは、70モル%以上が、パラキシリレンジアミンであることが好ましい。
4〜20のα、ω−直鎖脂肪族二塩基酸は、アジピン酸、セバシン酸、スベリン酸、ドデカン二酸、エイコジオン酸などが好適に使用できる。ジカルボン酸は、アジピン酸およびセバシン酸が好ましく、セバシン酸がより好ましい。
また、ポリアミド樹脂は、分子量が1,000以下の成分を0.5〜5質量%含有することが好ましい。このような低分子量成分をこのような範囲で含有することにより、得られる成形品の強度や低そり性がより良好となる。5質量%以下とすることにより、低分子量成分がブリードしにくくなり、また、表面外観が向上する傾向にある。
分子量が1,000以下の成分の好ましい含有量は、0.6〜4.5質量%であり、より好ましくは0.7〜4質量%であり、さらに好ましくは0.8〜3.5質量%であり、特に好ましくは0.9〜3質量%であり、最も好ましくは1〜2.5質量%である。
【0014】
分子量が1,000以下の低分子量成分の含有量の調整は、ポリアミド樹脂重合時の温度や圧力、ジアミンの滴下速度などの溶融重合条件を調節して行うことができる。特に溶融重合後期に反応装置内を減圧して低分子量成分を除去し、任意の割合に調節することができる。また、溶融重合により製造されたポリアミド樹脂を熱水抽出して低分子量成分を除去してもよいし、溶融重合後さらに減圧下で固相重合して低分子量成分を除去してもよい。固相重合に際しては、温度や減圧度を調節して、低分子量成分を任意の含有量に制御することができる。また、分子量が1,000以下の低分子量成分を後からポリアミド樹脂に添加することでも調節可能である。
【0015】
なお、分子量1,000以下の成分量の測定は、東ソー社(TOSOH CORPORATION)製「HLC−8320GPC」を用いて、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定による標準ポリメチルメタクリレート(PMMA)換算値より求めることができる。なお、測定用カラムとしては「TSKgel SuperHM−H」を2本用い、溶媒にはトリフルオロ酢酸ナトリウム濃度10mmol/lのヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)を用い、樹脂濃度0.02質量%、カラム温度は40℃、流速0.3ml/分、屈折率検出器(RI)にて測定することができる。また、検量線は6水準のPMMAをHFIPに溶解させて測定し作成する。
【0016】
繊維強化樹脂材料における熱可塑性樹脂の含有量としては、20〜98重量%が好ましく、25〜80重量%がより好ましく、30〜70重量%がさらに好ましい。熱可塑性樹脂は1種類のみを用いても良く、2種類以上用いても良い。2種類以上用いた場合は、その合計量が上記範囲となることが好ましい。このような範囲とすることにより、本発明の効果がより効果的に発揮される。
【0017】
<<<LDS添加剤>>>
本発明で用いる熱可塑性樹脂組成物は、LDS添加剤を含む。本発明におけるLDS添加剤は、熱可塑性樹脂(例えば、後述する実施例で合成しているポリアミド樹脂)100重量部に対し、LDS添加剤と考えられる添加剤を10重量部添加し、波長1064nmのYAGレーザーを用い、出力13W、周波数20kHz、スキャン速度2m/sにて照射し、その後のメッキ工程は無電解のMacDermid社製MIDCopper100XB Strikeのメッキ槽にて実施し、該レーザー照射面に金属を適用したときに、メッキを形成できる化合物をいう。本発明で用いるLDS添加剤は、合成品であってもよいし、市販品を用いてもよい。また、市販品は、LDS添加剤として市販されているものの他、本発明におけるLDS添加剤の要件を満たす限り、他の用途として販売されている物質であってもよい。LDS添加剤は、1種類のみを用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0018】
以下に、本発明で用いるLDS添加剤の好ましい実施形態について述べる。本発明で用いるLDS添加剤がこれらに限定されるものでは無いことは言うまでもない。
【0019】
本発明で用いるLDS添加剤の第1の実施形態は、銅およびクロムを含むLDS添加剤を用いる態様である。本発明におけるLDS添加剤としては、銅を10〜30質量%含むことが好ましい。また、クロムを15〜50質量%含むことが好ましい。
本実施形態におけるLDS添加剤は、銅およびクロムを含む酸化物であることが好ましい。
【0020】
銅およびクロムの含有形態としては、スピネル構造が好ましい。スピネル構造とは、複酸化物でAB
2O
4型の化合物(AとBは金属元素)にみられる代表的結晶構造型の一つである。
【0021】
本実施形態におけるLDS添加剤は、銅およびクロムの他に、他の金属を微量含んでいてもよい。他の金属としては、アンチモン、スズ、鉛、インジウム、鉄、コバルト、ニッケル、亜鉛、カドミウム、銀、ビスマス、ヒ素、マンガン、マグネシウム、カルシウムなどが例示される。これら金属は酸化物として存在していてもよい。これら金属の含有量は、それぞれ0.001質量%以下が好ましい。
【0022】
LDS添加剤の粒子径は、0.01〜50μmであることが好ましく、0.05〜30μmであることがより好ましい。このような構成とすることにより、メッキを適応した際のメッキ表面状態の均一性が良好になる傾向にある。
【0023】
本発明で用いるLDS添加剤の第2の実施形態は、LDS添加剤に含まれる金属成分が錫とアンチモンを含む態様であり、より好ましくは、LDS添加剤に含まれる金属成分の、90重量%以上が錫であり、5重量%以上がアンチモンであり、微量成分として、鉛および/または銅を含む態様である(但し、金属成分の合計量は100重量%を超えることは無い、以下同じ)。第2の実施形態におけるLDS添加剤は、より好ましくは、90重量%以上が錫であり、5〜9重量%がアンチモンであり、0.01〜0.1重量%の範囲で鉛を含み、0.001〜0.01重量%の範囲で銅を含む。
【0024】
より具体的には、第2の実施形態で用いるLDS添加剤は、酸化錫90重量%以上と、酸化アンチモン3〜8重量%を含むことが好ましく、さらに、酸化鉛0.01〜0.1重量%および/または酸化銅0.001〜0.01重量%含むことが好ましい。より好ましい実施形態は、酸化錫90重量%以上と、酸化アンチモン3〜8重量%と、酸化鉛0.01〜0.1重量%と、酸化銅0.001〜0.01重量%含むLDS添加剤を用いる形態である。よりさらに好ましい実施形態は、酸化錫92重量%以上と、酸化アンチモン4〜7重量%と、酸化鉛0.01〜0.05重量%と、酸化銅0.001〜0.006重量%含むLDS添加剤を用いる形態である。
【0025】
第2の実施形態で用いるLDS添加剤は、鉛および/または銅の他に、他の金属成分を微量含んでいてもよい。他の金属としては、インジウム、鉄、コバルト、ニッケル、亜鉛、カドミウム、銀、ビスマス、ヒ素、マンガン、クロム、マグネシウム、カルシウムなどが例示される。これら金属は酸化物として存在していてもよい。これら金属の含有量は、それぞれ、LDS添加剤に含まれる金属成分の、0.001重量%以下が好ましい。
【0026】
本発明の第3の実施形態で用いるLDS添加剤は、少なくとも2種の金属を含み、かつ、抵抗率が5×10
3Ω・cm以下の導電性酸化物である形態である。導電性酸化物の抵抗率は、8×10
2Ω・cm以下が好ましく、7×10
2Ω・cm以下がより好ましく、5×10
2Ω・cm以下がさらに好ましい。下限については特に制限はないが、例えば、1×10
1Ω・cm以上とすることができ、さらには、1×10
2Ω・cm以上とすることができる。
本発明における導電性酸化物の抵抗率は、通常、粉末抵抗率をいい、導電性酸化物の微粉末10gを、内面にテフロン(登録商標)加工を施した内径25mmの円筒内へ装入して100kg/cm
2に加圧し(充填率20%)、横河電気製の「3223型」テスターで測定することができる。
【0027】
第3の実施形態で用いるLDS添加剤は、抵抗率が5×10
3Ω・cm以下の導電性酸化物を含んでいれば特に制限されないが、少なくとも2種類の金属を含むことが好ましく、具体的には、周期表のn族(nは3〜16の整数)の金属とn+1族の金属を含むことが好ましい。nは10〜13の整数が好ましく、12または13がさらに好ましい。
第3の実施形態で用いるLDS添加剤は、LDS添加剤中における、周期表のn族(nは3〜16の整数)の金属の含有量とn+1族の金属の含有量の合計を100モル%としたとき、一方の金属の含有量が15モル%以下であることが好ましく、12モル%以下であることがさらに好ましく、10モル%以下であることが特に好ましい。下限については特に制限はないが、0.0001モル%以上である。2種類以上の金属の含有量をこのような範囲とすることで、メッキ性を向上させることができる。本発明では特に、n+1族の金属がドープされたn族の金属酸化物が好ましい。
さらに、第3の実施形態で用いるLDS添加剤は、LDS添加剤中に含まれる金属成分の98重量%以上が、上記周期表のn族の金属の含有量とn+1族の金属で構成されることが好ましい。
【0028】
周期表のn族の金属としては、例えば、3族(スカンジウム、イットリウム)、4族(チタン、ジルコニウムなど)、5族(バナジウム、ニオブなど)、6族(クロム、モリブテンなど)、7族(マンガンなど)、8族(鉄、ルテニウムなど)、9族(コバルト、ロジウム、イリジウムなど)、10族(ニッケル、パラジウム、白金)、11族(同、銀、金など)、12族(亜鉛、カドミウムなど)、13族(アルミニウム、ガリウム、インジウムなど)、14族(ゲルマニウム、錫など)、15族(ヒ素、アンチモンなど)、16族(セレン、テルルなど)、これらの金属酸化物などが挙げられる。中でも、12族(n=12)の金属または金属酸化物が好ましく、亜鉛がより好ましい。
【0029】
周期表のn+1族の金属としては、例えば、4族(チタン、ジルコニウムなど)、5族(バナジウム、ニオブなど)、6族(クロム、モリブテンなど)、7族(マンガンなど)、8族(鉄、ルテニウムなど)、9族(コバルト、ロジウム、イリジウムなど)、10族(ニッケル、パラジウム、白金)、11族(同、銀、金など)、12族(亜鉛、カドミウムなど)、13族(アルミニウム、ガリウム、インジウムなど)、14族(ゲルマニウム、錫など)、15族(ヒ素、アンチモンなど)、16族(セレン、テルルなど)、これらの金属酸化物などが挙げられる。中でも、13族(n+1=13)の金属または金属酸化物が好ましく、アルミニウムまたはガリウムがより好ましく、アルミニウムがさらに好ましい。
【0030】
第3の実施形態で用いるLDS添加剤は、導電性金属酸化物以外の金属を含有していてもよい。導電性酸化物以外の金属としては、アンチモン、チタン、インジウム、鉄、コバルト、ニッケル、カドミウム、銀、ビスマス、ヒ素、マンガン、クロム、マグネシウム、カルシウムなどが例示される。これらの金属は酸化物として存在していてもよい。これら金属の含有量は、LDS添加剤に対してそれぞれ0.01重量%以下が好ましい。
【0031】
LDS添加剤の粒子径は、0.01〜100μmであることが好ましく、0.05〜10μmであることがより好ましい。このような構成とすることにより、メッキを適応した際のメッキ表面状態の均一性が良好になる傾向にある。
【0032】
本発明で用いる熱可塑性樹脂組成物における、LDS添加剤の配合量は、熱可塑性樹脂100重量部に対し、好ましくは1〜30重量部であり、より好ましくは2〜25重量部であり、さらに好ましくは5〜20重量部である。LDS添加剤の配合量をこのような範囲にすることによって、樹脂成形品のメッキ性をより良好にすることができる。また、後述するように、タルクと組み合わせることにより、少ない添加量でメッキ形成をすることが可能になる。2種類以上のLDS添加剤を含む場合には、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0033】
<<<タルク>>>
本発明の熱可塑性樹脂組成物はタルクを含んでいてもよい。本発明では、タルクを配合することにより、レーザーを照射した部分のメッキ性能が向上する傾向にある。
本発明の熱可塑性樹脂組成物がタルクを含む場合、該タルクの配合量は、熱可塑性樹脂組成物100重量部に対し、0.5〜20重量部であることが好ましく、1〜15重量部であることがより好ましい。
【0034】
<<<離型剤>>>
本発明で用いる熱可塑性樹脂組成物は、離型剤を含んでいてもよい。離型剤は、脂肪族カルボン酸、脂肪族カルボン酸エステル、および数平均分子量200〜15000の脂肪族炭化水素化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物が好ましい。中でも、脂肪族カルボン酸、および脂肪族カルボン酸エステルから選ばれる少なくとも1種の化合物がより好ましく用いられる。
【0035】
脂肪族カルボン酸としては、飽和または不飽和の脂肪族モノカルボン酸、ジカルボン酸またはトリカルボン酸を挙げることができる。本明細書では、脂肪族カルボン酸の用語は、脂環式カルボン酸も包含する意味で用いる。脂肪族カルボン酸の中でも、炭素数6〜36のモノまたはジカルボン酸が好ましく、炭素数6〜36の脂肪族飽和モノカルボン酸がより好ましい。このような脂肪族カルボン酸の具体例としては、パルミチン酸、ステアリン酸、吉草酸、カプロン酸、カプリン酸、ラウリン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、メリシン酸、テトラリアコンタン酸、モンタン酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸等を挙げることができる。
【0036】
脂肪族カルボン酸エステルを構成する脂肪族カルボン酸成分としては、前記脂肪族カルボン酸と同じものが使用できる。一方、脂肪族カルボン酸エステルを構成するアルコール成分としては、飽和または不飽和の1価アルコール、飽和または不飽和の多価アルコール等を挙げることができる。これらのアルコールは、フッ素原子、アリール基等の置換基を有していてもよい。これらのアルコールのうち、炭素数30以下の1価または多価の飽和アルコールが好ましく、さらに炭素数30以下の脂肪族飽和1価アルコールまたは多価アルコールが好ましい。ここで脂肪族アルコールは、脂環式アルコールも包含する。これらのアルコールの具体例としては、オクタノール、デカノール、ドデカノール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、2,2−ジヒドロキシペルフルオロプロパノール、ネオペンチレングリコール、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリスリトール等を挙げることができる。これらの脂肪族カルボン酸エステルは、不純物として脂肪族カルボン酸および/またはアルコールを含有していてもよく、複数の化合物の混合物であってもよい。脂肪族カルボン酸エステルの具体例としては、蜜ロウ(ミリシルパルミテートを主成分とする混合物)、ステアリン酸ステアリル、ベヘン酸ベヘニル、ベヘン酸オクチルドデシル、グリセリンモノパルミテート、グリセリンモノステアレート、グリセリンジステアレート、グリセリントリステアレート、ペンタエリスリトールモノパルミテート、ペンタエリスリトールモノステアレート、ペンタエリスリトールジステアレート、ペンタエリスリトールトリステアレート、ペンタエリスリトールテトラステアレートを挙げることができる。
【0037】
本発明で用いる熱可塑性樹脂組成物が離型剤を含む場合、該離型剤の配合量は、樹脂成分100重量部に対し、0.01〜5重量部であり、0.05〜3重量部がより好ましい。本発明で用いる熱可塑性樹脂組成物は、離型剤を1種類のみ含んでいてもよいし、2種類以上含んでいてもよい。2種類以上含む場合は、合計量が上記範囲となる。
【0038】
<<<ガラス繊維>>>
本発明で用いる熱可塑性樹脂組成物はガラス繊維を含んでいてもよい。本発明で用いる熱可塑性樹脂組成物は、LDS添加剤を含むため、メッキ性の向上のためには、ガラス繊維の配合量は少ない方が良いが、ある程度の量を入れることにより、メッキ性を維持しつつ、機械的強度のバランスを保つこともできる。すなわち、本発明では、熱可塑性樹脂組成物とは別に、連続繊維を用いるため、熱可塑性樹脂組成物に、多量のガラス繊維を入れなくても高い機械的強度を達成する手段として用いることもできる。
【0039】
<<<その他の成分>>>
本発明で用いる熱可塑性樹脂組成物は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、他の成分を含んでいてもよい。他の成分としては、光安定剤、熱安定剤、エラストマー、顔料、アルカリ、紫外線吸収剤、難燃剤、蛍光増白剤、滴下防止剤、帯電防止剤、防曇剤、滑剤、アンチブロッキング剤、流動性改良剤、可塑剤、分散剤、防菌剤などが挙げられる。これらは2種以上を併用してもよい。
これらの記載は、国際公開WO2012/128219号パンフレットの段落番号0027、0028、0038〜0054、特開2007−314766号公報、特開2008−127485号公報および特開2009−51989号公報、特開2012−72338号公報等の記載を参酌でき、これらの内容は本願明細書に組み込まれる。
また、本発明で用いる熱可塑性樹脂組成物は、本発明の範囲を逸脱しない範囲で、繊維を含んでいても良い。繊維としてはガラス繊維、有機繊維が挙げられる。しかしながら、本発明では、本発明で用いる熱可塑性樹脂組成物が繊維(特に、ガラス繊維)を実質的に含まない態様が好ましい。実質的に含まないとは、例えば、熱可塑性樹脂組成物の3重量%以下であることをいい、好ましくは1重量%以下である。
【0040】
<<熱可塑性樹脂組成物の調整方法>>
本発明で用いる熱可塑性樹脂組成物の製造方法は、特に定めるものではなく、公知の熱可塑性樹脂組成物の製造方法を広く採用できる。具体的には、各成分を、タンブラーやヘンシェルミキサーなどの各種混合機を用い予め混合した後、バンバリーミキサー、ロール、ブラベンダー、単軸混練押出機、二軸混練押出機、ニーダーなどで溶融混練することによって熱可塑性樹脂組成物を製造することができる。
【0041】
また、例えば、各成分を予め混合せずに、または、一部の成分のみを予め混合し、フィーダーを用いて押出機に供給して溶融混練して、本発明で用いる熱可塑性樹脂組成物を製造することもできる。
さらに、例えば、一部の成分を予め混合し押出機に供給して溶融混練することで得られる熱可塑性樹脂組成物をマスターバッチとし、このマスターバッチを再度残りの成分と混合し、溶融混練することによって本発明で用いる熱可塑性樹脂組成物を製造することもできる。
【0042】
<<連続繊維>>
本発明に用いる連続繊維としては、ガラス繊維、炭素繊維、植物繊維(ケナフ(Kenaf)、竹繊維等を含む)、アルミナ繊維、ボロン繊維、セラミック繊維、金属繊維(スチール繊維等)、アラミド繊維、ポリオキシメチレン繊維、芳香族ポリアミド繊維、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール繊維、超高分子量ポリエチレン繊維などが挙げられる。なかでも、炭素繊維および/またはガラス繊維が好ましく、ガラス繊維がより好ましい。繊維の断面は、円形であってもよく、扁平な形状であってもよい。連続繊維の製法としては、例えば、平均繊維径5〜24μmの繊維を数千本集束したストランドを所定の本数(数本から数十本)に引き揃えるものがある。
【0043】
連続繊維は、本発明で用いる熱可塑性樹脂組成物に含まれる熱可塑性樹脂との濡れ性、界面密着性を向上させるために、連続繊維の表面に熱可塑性樹脂と反応性を有する官能基を有するものが好ましい。
熱可塑性樹脂と反応性を有する官能基を有する連続繊維の例として、表面処理剤または集束剤で表面処理したものが好ましく挙げられる。
【0044】
表面処理剤としては、例えば、エポキシ系化合物、アクリル系化合物、イソシアネート系化合物、シラン系化合物、チタネート系化合物等の官能性化合物からなるものが挙げられ、シラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤等であり、シラン系カップリング剤が好ましい。
シラン系カップリング剤としては、アミノプロピルトリエトキシシラン、フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン、グリシジルプロピルトリエトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等のトリアルコキシまたはトリアリロキシシラン化合物、ウレイドシラン、スルフィドシラン、ビニルシラン、イミダゾールシラン等が挙げられる。
【0045】
集束剤としては、ビスフェノールA型のエポキシ樹脂等のエポキシ系樹脂、1分子中にアクリル基またはメタクリル基を有するエポキシアクリレート樹脂であって、ビスフェノールA型のビニルエステル樹脂、ノボラック型のビニルエステル樹脂、臭素化ビニルエステル樹脂等のビニルエステル系樹脂が好ましく挙げられる。また、エポキシ系樹脂やビニルエステル系樹脂のウレタン変性樹脂であってもよい。
【0046】
繊維強化樹脂材料における連続繊維の量は、繊維強化樹脂材料の2〜80重量%が好ましく、30〜70重量%がより好ましい。
また、繊維強化樹脂材料は、その構成成分の80重量%以上が、熱可塑性樹脂と連続繊維からなることが好ましい。
【0047】
<繊維強化樹脂材料の製造方法>
本発明の繊維強化樹脂材料の製造方法では、熱可塑性樹脂と、LDS添加剤を含む熱可塑性樹脂組成物を連続繊維に含浸させることを含む。このような構成とすることにより、LDS添加剤と繊維と共に、樹脂成分をコンパウンドする必要がなくなり、コンパウンド時に、LDS添加剤が、繊維にダメージを与えるのをより効果的に抑制できる。
【0048】
本発明で用いる熱可塑性樹脂組成物を含浸させる際の、連続繊維の形態についても特に定めるものではないが、連続繊維が規則性を持って配列しているもの、例えば、一方向または交互の交差するように並べたものが好ましい。また、これらを積層し、バインダー等を含浸したプリプレグも用いられる。より好ましくは、シートを巻き取る場合の巻き取り方向が、連続繊維の長手方向となるように、連続繊維を引き揃える。
【0049】
本発明で用いる熱可塑性樹脂組成物を連続繊維に含浸させる際の熱可塑性樹脂組成物の形状は特に定めるものではなく、フィルム状、繊維状、粉状、溶融状等の各種の形状のものを採用でき、溶融状のものが好ましい。
本発明の好ましい態様の一例として、溶融した熱可塑性樹脂組成物を連続繊維に供給し、その後冷却することが好ましい。この場合の溶融温度は、熱可塑性樹脂組成物中の熱可塑性樹脂の融点等を考慮して適宜定められる。具体的には、本発明で用いる熱可塑性樹脂組成物の種類や分子量によっても異なるが、一般に本発明で用いる熱可塑性樹脂組成物のガラス転移点+5℃以上の温度から熱分解温度−5℃の温度範囲が好ましい。また、融点を有する本発明で用いる熱可塑性樹脂組成物の場合は、融点+5℃以上が好ましく、より好ましくは融点+10℃以上である。上限については、熱可塑性樹脂組成物の熱分解温度−5℃の温度範囲が好ましい。
また、含浸の際に、加圧も行ってもよい。加圧の際のプレス圧力は5MPa以上が好ましく、8MPa以上がより好ましく、10〜100MPaが特に好ましい。
このような温度範囲で加熱や加圧することで、本発明で用いる熱可塑性樹脂組成物の連続繊維への含浸がより良好に行われ、繊維強化樹脂材料およびこれを成形して得られる樹脂成形品の物性が向上する傾向にある。なお、本発明で用いる熱可塑性樹脂組成物が融点を2つ以上有する場合、ここでいう融点とは、高温側の吸熱ピークのピークトップの温度である。
【0050】
また、本発明の好ましい形態の他の一例として、LDS添加剤を含有する繊維含浸ポリアミド樹脂シートと、LDS添加剤を実質的に含有しない繊維含浸ポリアミド樹脂シートを積層することも例示される。ここでの繊維は、ガラス繊維が好ましい。
LDS添加剤を含有する繊維含浸ポリアミド樹脂シートは、LDS添加剤を含む熱可塑性樹脂組成物を溶融し、開繊した連続繊維に含浸させて、フィルム状とすることによって得られる。LDS添加剤を実質的に含有しない繊維含浸ポリアミド樹脂シートは、LDS添加剤を実質的に含まない熱可塑性樹脂組成物を溶融し、開繊した連続繊維に含浸させて、フィルム状とすることによって得られる。ここで、LDS添加剤を実質的に含まないとは、メッキを形成できる程度にLDS添加剤が配合されていないことをいい、例えば、熱可塑性樹脂組成物の1重量%以下をいい、好ましくは0.0重量%以下である。
LDS添加剤を含有する繊維含浸ポリアミド樹脂シートと、LDS添加剤を実質的に含有しない繊維含浸ポリアミド樹脂シートを積層する際には、通常、熱プレスすることが好ましい。熱プレスすることによって、両樹脂シートを密着させることができる。
このような構成とすることにより、LDS添加剤を含有する繊維含浸ポリアミド樹脂シート側にも、繊維が存在するため、シートのそりなどを生じにくくすることができる。さらに、得られるシートの厚さ方向で、LDS添加剤の配合量に濃度勾配を付けることができ、シート全体におけるLDS添加剤の量を減らしつつ、適切にメッキを形成できる。また、得られるシートの厚さ方向で、LDS添加剤の量が多い領域は、繊維の量が少ないため、繊維によってLDS添加剤がダメージを受けるのを最小限に抑えつつ、機械的強度の向上やそりの抑制を達成できる。
【0051】
<繊維強化樹脂材料の形状>
本発明で用いる繊維強化樹脂材料の形状は、特に定めるものではなく、テープ、フィルム、シート等の形状とすることができる。これらの繊維強化複合材料は、芯等に巻き取られ、巻き取り品として市場に供給される。巻き取られる場合、連続繊維の繊維方向(長手方向)に巻き取られることが好ましい。本発明の繊維強化樹脂材料の好ましい形態として、一方向または交互に交差して規則的に並んでいる連続繊維に、熱可塑性樹脂組成物を含浸させてなるテープ、フィルムまたはシートが挙げられる。テープ等の厚さは、0.05〜2mmが好ましく、0.1〜1mmがより好ましい。
【0052】
<樹脂成形品>
本発明の繊維強化材料は、そのまま用いられることもあるが、通常は、加熱加工して樹脂成形品として用いられる。樹脂成形品として用いられる場合、繊維強化樹脂材料を複数枚積層して、または、他の樹脂材料等と併せて、加熱加工することが好ましい。繊維強化樹脂材料を複数枚積層する場合、繊維強化樹脂材料の連続繊維の繊維方向(長手方向)が直交するように積層することが好ましい。このような構成とすると、得られる樹脂成形品の機械的強度がより向上する傾向にある。本発明の繊維強化樹脂材料は、所望の形状・サイズに切断して、また、これらを複数重ねて加熱加工することも好ましい。加熱加工の際には、繊維強化樹脂材料を金型に入れて成形して樹脂成形品を得ることも可能である。
加熱温度は、本発明で用いる熱可塑性樹脂組成物のガラス転移点+5℃以上の温度から熱分解温度−5℃の温度範囲が好ましい。また、融点を有する熱可塑性樹脂組成物を用いる場合は、融点+5℃以上が好ましく、より好ましくは融点+10℃以上である。上限については、熱可塑性樹脂組成物の熱分解温度−5℃の温度範囲が好ましい。
また、加圧の際のプレス圧力は5MPa以上が好ましく、8MPa以上がより好ましく、10〜100MPaが特に好ましい。プレス機は、80〜120tのものが好ましい。
【0053】
本発明の樹脂成形品は、最終製品に限らず、複合材料や各種部品も含む趣旨である。本発明における樹脂成形品は、携帯電子機器、車両および医療機器の部品や、その他の電気回路を含む電子部品、ならびに、これらを形成するための複合材料として用いることが好ましい。特に、本発明の樹脂成形品は、高い耐衝撃特性と剛性、優れた耐熱性を併せ持つうえ、異方性が小さく、そりが小さいものとすることができるため、電子手帳、携帯用コンピューター等のPDA、ポケットベル、携帯電話、PHSなどの内部構造物および筐体として極めて有効である。特に樹脂成形品がリブを除く平均肉厚が1.2mm以下(下限値は特に定めるものではないが、例えば、0.4mm以上)である平板形状の部品に適しており、中でも携帯電子機器の筐体として特に適している。
【0054】
<メッキ層の形成方法>
次に、本発明の樹脂成形品の表面にメッキを設ける工程を
図1に従って説明する。
図1は、レーザーダイレクトストラクチャリング技術によって、樹脂成形品1の表面にメッキを形成する工程を示す概略図である。
図1では、樹脂成形品1は、平坦な基板となっているが、必ずしも平坦な基板である必要はなく、一部または全部が曲面している樹脂成形品であってもよい。
本発明のメッキ層の形成方法では、樹脂成形品1にレーザー2を照射する。ここでのレーザーとは、特に定めるものではなく、YAGレーザー、エキシマレーザー、電磁線等の公知のレーザーから適宜選択することができ、YGAレーザーが好ましい。また、レーザーの波長も特に定めるものではない。好ましい波長範囲は、200nm〜1200nmである。特に好ましくは800〜1200nmである。
レーザーが照射されると、レーザーが照射された部分3のみ、樹脂成形品1が活性化される。この活性化された状態で、樹脂成形品1をメッキ液4に適用する。メッキ液4としては、特に定めるものではなく、公知のメッキ液を広く採用することができ、金属成分として銅、ニッケル、金、銀、パラジウムが混合されているものが好ましく、銅がより好ましい。
樹脂成形品1をメッキ液4に適用する方法についても、特に定めるものではないが、例えば、メッキ液を配合した液中に投入する方法が挙げられる。メッキ液を適用後の樹脂成形品は、レーザー照射した部分のみ、メッキ層5が形成される。
本発明の方法では、1mm以下、さらには、150μm以下の幅の回路間隔(下限値は特に定めるものではないが、例えば、30μm以上)を形成することができる。かかる回路は携帯電子機器部品のアンテナとして好ましく用いられる。すなわち、本発明の樹脂成形品の好ましい実施形態の一例として、携帯電子機器部品の表面に設けられたメッキ層が、アンテナとしての性能を保有する樹脂成形品が挙げられる。
【0055】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、特開2011−219620号公報、特開2011−195820号公報、特開2011−178873号公報、特開2011−168705号公報、特開2011−148267号公報の記載を参酌することができる。
【0056】
本発明の方法により、樹脂成形品の表面に直接にメッキ層を形成できる。このため、本発明の製造方法は、アンテナを有する携帯電子機器部品の製造に好ましく用いられる。
【実施例】
【0057】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。
【0058】
<ポリアミド樹脂>
(ポリアミド(PAMP10)の合成)
セバシン酸を窒素雰囲気下の反応缶内で加熱溶解した後、内容物を攪拌しながら、パラキシリレンジアミン(三菱瓦斯化学(株)製)とメタキシリレンジアミン(三菱瓦斯化学(株)製)のモル比が3:7の混合ジアミンを、加圧(0.35Mpa)下でジアミンとセバシン酸とのモル比が約1:1になるように徐々に滴下しながら、温度を235℃まで上昇させた。滴下終了後、60分間反応継続し、分子量1000以下の成分量を調整した。反応終了後、内容物をストランド状に取り出し、ペレタイザーにてペレット化し、ポリアミドを得た。以下、「PAMP10」という。
【0059】
(ポリアミド(PAMP6)の合成)
アジピン酸を窒素雰囲気下の反応缶内で加熱溶解した後、内容物を攪拌しながら、パラキシリレンジアミン(三菱瓦斯化学(株)製)とメタキシリレンジアミン(三菱瓦斯化学(株)製)のモル比が3:7の混合ジアミンを、加圧(0.35Mpa)下でジアミンとアジピン酸(ローディア社製)とのモル比が約1:1になるように徐々に滴下しながら、温度を270℃まで上昇させた。滴下終了後、0.06MPaまで減圧し10分間反応を続け分子量1,000以下の成分量を調整した。その後、内容物をストランド状に取り出し、ペレタイザーにてペレット化し、ポリアミドを得た。以下、「PAMP6」という。
【0060】
<LDS添加剤>
Black1G:L値:(15.6)、銅クロム酸化物(CuCr
2O
4)(シェファードジャパン製)
【0061】
<繊維>
<<連続繊維>>
T−423:ガラスロービング(日本電気硝子製)、繊維径:17μm、線密度:2400TEX
<<樹脂組成物に配合する繊維>>
03T−296GH:ガラス繊維(日本電気硝子製)、繊維径:10μm
【0062】
<タルク>
ミクロンホワイト(MW)5000S(林化成製)
<離型剤>
CS8CP(日東化成工業製)
【0063】
実施例1
<テープの作成>
後述する表に示す組成となる熱可塑性樹脂組成物を用い、下記方法にてテープ(繊維強化樹脂材料)を作成した。なお、熱可塑性樹脂組成物はあらかじめ各成分をそれぞれ秤量し、タンブラーにてブレンドを行った。
ガラスロービング(連続繊維)22ロールを等間隔に並べ、スプレッダーを通過させ、200mm幅に広げた。広げたガラス繊維を上下2つの含浸ロール間に入れる際に、二軸押出機(東芝機械社製、TEM26SS)で溶融させた熱可塑性樹脂組成物を供給し、含浸ロール中で、ガラス繊維に熱可塑性樹脂組成物を含浸させた。その後、冷却ロールで冷却しながら、引き取り、円柱状の芯材に巻き取り、テープを作成した。押出機の設定温度は280℃、回転数は350回転、引き取り速度は2mm/minとした。ガラス含有率60重量%の幅200mm、厚さ0.25mmのテープが50m得られた。
【0064】
<厚さ4.0mmの樹脂成形品の作成>
上記テープを幅200mm、長さ200mmに切削し、ガラス繊維が直交するように90度ずつ回転させ、交互に並べた18枚のテープを、270℃に昇温させた金型内に入れ、100tのプレス機を用い、プレス成形を行った。プレス後、金型に水を流し、80度まで冷却した後、金型を開いて取り出し、テープを18枚重ねた厚さ4.0mmの樹脂成形品が得られた。プレス時の金型の温度は260度、圧力100kgf/cm
2(9.8MPa)、プレス時間10分、冷却時間20分とした。
【0065】
<ISO試験片の作成>
厚さ4.0mmの樹脂成形品から、試験片を切り出して作成した。10mm幅、80mm長のサイズで繊維が試験片長手方向に配向する方向にて切り出し、衝撃試験用試験片を得た。
【0066】
実施例2
<テープ作成>
実施例1で用いたPAMP10をPAMP6に換え、ガラスロービングを18ロールに変更した以外は、実施例1と同様の方法でテープを作成した。ガラス含有率50重量%の幅200mm、厚さ0.25mmのテープが50m得られた。
【0067】
<厚さ4.0mmの樹脂成形品の作成>
実施例1において、金型の設定温度を280℃に変更する以外は、実施例1における厚さ4.0mmの樹脂成形品の作成と同様の方法で繊維強化樹脂材料を作成した。
【0068】
<ISO試験片の作成>
厚さ4.0mmの樹脂成形品から、試験片を切り出して作成した。10mm幅、80mm長のサイズで繊維が試験片長手方向に配向する方向にて切り出し、衝撃試験用試験片を得た。
【0069】
比較例1〜3
<コンパウンド品の作成>
後述する表に示す組成となるように、各成分をそれぞれ秤量し、ガラス繊維を除く成分をタンブラーにてブレンドし、二軸押出機(東芝機械社製、TEM26SS)の根元から投入し、溶融した後で、ガラス繊維をサイドフィードして樹脂ペレットを作成した。押出機の温度設定は280℃、回転数は350回転にて実施した。
【0070】
<ISO試験片の作成>
射出成形用ペレットを80℃で5時間乾燥させた後、ファナック社製射出成形機(100T)を用いて、シリンダー温度280℃、金型温度130℃の条件で、ISO引張り試験片(厚さ4.0mm)を射出成形した。その後、ISO引張り試験片の両端を切削し衝撃強度測定用試験片を得た。
射出速度:ISO引張試験片中央部の断面積から樹脂流速を計算して300mm/sとなるように設定した。約95%充填時にVP切替となるように保圧に切り替えた。保圧はバリの出ない範囲で高めに500kgf/cm
2を25秒とした。
【0071】
<シャルピー衝撃強度>
上述の方法で得られたISO引張試験片(厚さ4.0mm)を用い、ISO179−1またはISO179−2に準拠し、23℃の条件で、ノッチ付きシャルピー衝撃強度を測定した。単位は、kJ/m
2とした。結果を下記表1に示す。
【0072】
<メッキ性(Plating外観)>
上記ISO試験片を用い、得られたプレート試験片の5×5mmの範囲に、SUNX(株)製LP−Z SERIESのレーザー照射装置(波長1064nmのYAGレーザー最大出力13W)を用い、出力80%、パルス周期20μs(マイクロ秒)、速度4m/sにて照射した。その後のメッキ工程は無電解のMacDermid社製、MIDCopper100XB Strikeを用い、60℃のメッキ槽にて実施した。メッキ性は30分間にメッキされた銅の厚みを目視にて判断した。
以下の通り評価した。結果を下記表に示す。
A:良好な外観(銅の色も濃くメッキが厚く乗っている様子が確認された)
B:メッキがほとんど確認されない様子であった
【0073】
【表1】
【0074】
上記結果から明らかなとおり、本発明の繊維強化樹脂材料では、高いメッキ性を維持しつつ、高いノッチ付きシャルピー衝撃強度を維持できた(実施例1、2)。これに対し、ガラス繊維およびLDS添加剤を配合した熱可塑性樹脂組成物のコンパウンド品では、メッキ性は維持できたが、ノッチ付きシャルピー衝撃強度が低下してしまった(比較例1、2)。また、LDS添加剤を配合しない熱可塑性樹脂組成物のコンパウンド品では、比較例1、2よりも、ノッチ付きシャルピー衝撃強度に優れていたが、メッキが形成できなかった(比較例3)。