【解決手段】電解質溶液を電気分解してガスを発生させるガス発生装置であって、電気エネルギを放電する電源手段と、前記電源手段から放電された電気エネルギを用いて前記電解質溶液を電気分解し、前記ガスを生成するガス生成手段と、前記ガス生成手段の気体生成量を検出する検出手段とを有し、前記電源手段は、交流を直流に変換するとともにパルス状電流にする整流回路と、前記パルス状電流の電流パルスを急峻化するパルス急峻化回路と、前記整流回路及び前記パルス急峻化回路の動作を制御する制御部とを備える、ことを特徴とする。
前記制御部は、前記検出手段で検出した前記気体生成量に基づいて、前記整流回路が変換する前記パルス状電流の周波数及び前記パルス急峻化回路が急峻化する電流パルスの最大振幅を制御する、
ことを特徴とする、請求項1に記載のガス発生装置。
前記制御部は、予め設定された周波数に前記整流回路が変換する前記パルス状電流の周波数を制御し、且つ、予め設定された最大振幅に前記パルス急峻化回路が急峻化する電流パルスの最大振幅を制御した後に、前記検出手段で検出した前記気体生成量に基づいて前記パルス状電流の周波数及び/又は前記電流パルスの最大振幅を変更し、
前記ガス生成手段は、前記制御部が変更した前記パルス状電流の周波数及び/又は前記電流パルスの最大振幅に対応する前記気体生成量で前記ガスを生成する、
ことを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載のガス発生装置。
前記整流回路は、前記電解質溶液のインダクタンスL及びキャパシタンスCで決定される共振周波数f=1/(2π√(LC))に前記周波数を変換する、ことを特徴とする、請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載のガス発生装置。
前記パルス急峻化回路は、前記整流回路で得られたパルス状電流のデューティー比を低くするPWM回路と、キャパシターと、前記キャパシターの充放電を制御するキャパシターコントローラとを更に備える、ことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載のガス発生装置。
前記パルス急峻化回路は、昇電圧して前記電流パルスの最大振幅を増加するDCDCコンバータを更に有する、ことを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載のガス発生装置。
前記ガス生成手段で生成した前記ガスを液体に混合することによって、前記液体を気体混合液体に改質する気体混合手段を更に備える、ことを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載のガス発生装置。
前記検出手段は、前記気体生成手段が生成した前記気体で変動する圧力を検出することによって前記気体生成量を検出する、ことを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれか一項に記載のガス発生装置。
パルス状電流を生成する整流回路と、前記パルス状電流の電流パルスを急峻化するパルス急峻化回路と、前記整流回路及び前記パルス急峻化回路の動作を制御する制御部とを備える電源手段を用いて、電解質溶液を電気分解してガスを発生させるガス生成方法であって、
前記電源手段から電気エネルギを供給する電源供給ステップと、
前記電源供給ステップで供給された電気エネルギを用いて前記電解質溶液を電気分解し、前記ガスを生成するガス生成ステップと、
前記ガス生成ステップで生成した気体生成量を検出する検出ステップと
を含み、
前記電源供給ステップは、前記整流回路を用いて交流を直流に変換するとともにパルス状電流にする整流ステップと、前記パルス急峻化回路を用いて前記整流ステップで変換した前記パルス状電流の電流パルスを急峻化する急峻化ステップと、前記制御部を用いて前記整流回路及び前記パルス急峻化回路の動作を制御する制御ステップとを更に含む、
ことを特徴とするガス生成方法。
前記制御ステップは、予め設定された周波数に前記整流回路が変換する前記パルス状電流の周波数を制御し、且つ、予め設定された最大振幅に前記パルス急峻化回路が急峻化する電流パルスの最大振幅を制御した後に、前記検出手段で検出した前記気体生成量に基づいて前記パルス状電流の周波数及び/又は前記電流パルスの最大振幅を変更し、
前記ガス生成ステップは、前記制御ステップが変更した前記パルス状電流の周波数及び/又は前記電流パルスの最大振幅に対応する前記気体生成量で前記ガスを生成する、
ことを特徴とする、請求項11に記載のガス生成方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記特許文献1〜3では、電解装置や発生したガスの処理等に注目してはいるが、供給電力に対してガスの発生量を多くするための技術が記載されていない。すなわち供給電力に対して一層効率的にガスを発生させる点にさらなる検討の余地が残されている。
【0007】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであって、供給電力に対して発生するガスの量を増加させることができるガス発生装置を提供することを課題とする。特許文献1では、循環系内の不活性ガス中に水素と酸素を供給して燃焼させ、その発生熱を動力とする循環型動力システムにおいて、水素及び酸素濃度に基づいて酸素供給量を制御することにより、少なくともシステムの起動時には循環系内に酸素が過剰になるように制御し、燃焼器の出口側温度に基づいて凝縮器の冷却能力の調整を行うことにより凝縮器の出口温度を制御し、それによって循環系内に残存する水蒸気濃度を制御して、燃焼器での燃焼温度を制御する技術を開示している。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の一つの実施形態は、電解質溶液を電気分解してガスを発生させるガス発生装置であって、電気エネルギを放電する電源手段と、前記電源手段から放電された電気エネルギを用いて前記電解質溶液を電気分解し、前記ガスを生成するガス生成手段と、前記ガス生成手段の気体生成量を検出する検出手段とを有し、前記電源手段は、交流を直流に変換するとともにパルス状電流にする整流回路と、前記パルス状電流の電流パルスを急峻化するパルス急峻化回路と、前記整流回路及び前記パルス急峻化回路の動作を制御する制御部とを備える、ことを特徴とするガス発生装置を提供する。
【0009】
前記制御部は、前記検出手段で検出した前記気体生成量に基づいて、前記整流回路が変換する前記パルス状電流の周波数及び前記パルス急峻化回路が急峻化する電流パルスの最大振幅を制御する、ことを特徴とするガス発生装置であってもよい。また、前記制御部は、予め設定された周波数に前記整流回路が変換する前記パルス状電流の周波数を制御し、且つ、予め設定された最大振幅に前記パルス急峻化回路が急峻化する電流パルスの最大振幅を制御した後に、前記検出手段で検出した前記気体生成量に基づいて前記パルス状電流の周波数及び/又は前記電流パルスの最大振幅を変更し、前記ガス生成手段は、前記制御部が変更した前記パルス状電流の周波数及び/又は前記電流パルスの最大振幅に対応する前記気体生成量で前記ガスを生成する、ことを特徴とするガス発生装置であってもよい。
【0010】
前記整流回路は、前記電解質溶液のインダクタンスL及びキャパシタンスCで決定される共振周波数f=1/(2π√(LC))に前記周波数を変換する、ことを特徴とする上記のいずれか一つのガス発生装置であってもよい。
【0011】
前記パルス急峻化回路は、前記整流回路で得られたパルス状電流のデューティー比を低くするPWM回路と、キャパシターと、前記キャパシターの充放電を制御するキャパシターコントローラとを更に備える、ことを特徴とする上記のいずれか一つのガス発生装置であってもよい。また、前記パルス急峻化回路は、昇電圧して前記電流パルスの最大振幅を増加するDCDCコンバータを更に有する、ことを特徴とする上記のいずれか一つのガス発生装置であってもよい。
【0012】
前記ガス生成手段で生成した前記ガスを液体に混合することによって、前記液体を気体混合液体に改質する気体混合手段を更に備える、ことを特徴とする上記のいずれか一つのガス発生装置であってもよい。
【0013】
前記検出手段は、前記気体生成手段が生成した前記気体で変動する圧力を検出することによって前記気体生成量を検出する、ことを特徴とする上記のいずれか一つのガス発生装置であってもよい。
【0014】
前記電解質溶液は、水であり、前記ガスは、水素ガスと酸素ガスである、ことを特徴とする、ことを特徴とする上記のいずれか一つのガス発生装置であってもよい。また、前記電解質溶液は、アルカリ水溶液であり、前記ガスは、酸水素ガスである、ことを特徴とする、ことを特徴とする上記のいずれか一つのガス発生装置であってもよい。
【0015】
本発明の他の実施形態は、パルス状電流を生成する整流回路と、前記パルス状電流の電流パルスを急峻化するパルス急峻化回路と、前記整流回路及び前記パルス急峻化回路の動作を制御する制御部とを備える電源手段を用いて、電解質溶液を電気分解してガスを発生させるガス生成方法であって、前記電源手段から電気エネルギを供給する電源供給ステップと、前記電源供給ステップで供給された電気エネルギを用いて前記電解質溶液を電気分解し、前記ガスを生成するガス生成ステップと、前記ガス生成ステップで生成した気体生成量を検出する検出ステップとを含み、前記電源供給ステップは、前記整流回路を用いて交流を直流に変換するとともにパルス状電流にする整流ステップと、前記パルス急峻化回路を用いて前記整流ステップで変換した前記パルス状電流の電流パルスを急峻化する急峻化ステップと、前記制御部を用いて前記整流回路及び前記パルス急峻化回路の動作を制御する制御ステップとを更に含む、ことを特徴とするガス生成方法を提供する。
【0016】
前記制御ステップは、予め設定された周波数に前記整流回路が変換する前記パルス状電流の周波数を制御し、且つ、予め設定された最大振幅に前記パルス急峻化回路が急峻化する電流パルスの最大振幅を制御した後に、前記検出手段で検出した前記気体生成量に基づいて前記パルス状電流の周波数及び/又は前記電流パルスの最大振幅を変更し、前記ガス生成ステップは、前記制御ステップが変更した前記パルス状電流の周波数及び/又は前記電流パルスの最大振幅に対応する前記気体生成量で前記ガスを生成する、ことを特徴とするガス生成方法であってもよい。
【0017】
また、本発明の他の実施形態は、上記のガス生成方法のいずれか一つをコンピュータに実行させるためのプログラムであってもよい。
【0018】
また、前記プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体であってもよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、パルス急峻化回路により、整流回路で得られたパルス状電流の電流パルスの面積を増大することなくそのピークを高くして急峻化することができるので、単位
電力当たりのガス発生量を多くすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、添付図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係るガス発生装置を示す概略構成図である。なお、本発明は、以後に説明するガス発生装置に限定されるものではない。本発明は、以後に説明するガス発生装置以外でも、電気分解で気体を生成するもの(装置、機械、部品、システム、アプリケーションなど)であれば、いずれのものにも用いることができる。また、
図1に示すガス発生装置の構成の例は一例であり、本発明は
図1に示すガス発生装置に限定されるものではない。
【0022】
図1に示すように、本実施形態に係るガス発生装置100は、電気エネルギを放電する電源手段4と、電源手段4から放電された電気エネルギを用いてガスを生成するガス生成手段1と、ガス生成手段1の気体生成量を検出する検出手段7とを有する。また、ガス発生装置100の電源手段4は、交流を直流に変換するとともにパルス状電流にする整流回路(後述する
図5の62)と、パルス状電流の電流パルスを急峻化するパルス急峻化回路(後述する
図5の64)と、整流回路及びパルス急峻化回路の動作を制御する制御部5とを備える。制御部5は、検出手段7で検出した気体生成量(ガス発生量)に基づいて、整流回路が変換するパルス状電流の周波数及びパルス急峻化回路が急峻化する電流パルスの最大振幅を制御する。また、制御部5は、予め設定された周波数に整流回路が変換するパルス状電流の周波数を制御し、且つ、予め設定された最大振幅にパルス急峻化回路が急峻化する電流パルスの最大振幅を制御した後に、検出手段7で検出した気体生成量に基づいてパルス状電流の周波数及び/又は電流パルスの最大振幅を変更する。ガス生成手段1は、制御部5が変更したパルス状電流の周波数及び/又は電流パルスの最大振幅に対応する気体生成量でガスを生成する。これにより、本発明に係るガス発生装置100は、所望の量のガスを生成することができる。なお、検出手段7は、気体生成手段1が生成した気体で変動する圧力を検出することによって気体生成量を検出してもよい。ガス発生装置は、ガス生成手段1を用いて例えばKOHやNaOH等のアルカリ水溶液を電解し、気体混合手段2を用いてガス生成手段1で生成したガス(例えば酸水素ガス)を液体に混合して気体混合液体に改質する。なお、ガス発生装置100は、本実施形態では、ガス生成手段1に水を供給するための水供給部としての純水供給部3と、ガス発生装置100の動作状態を表示する表示部6とを有する。
【0023】
ガス生成手段1は、本体部11と、本体部11の上方に設けられた複数の冷却ファン12とを有している。本体部11は、
図2に示すように、ケーシング13内に収容されており、例えばステンレス薄鋼板からなる複数の電極14が所定の間隔に配列されて構成されている。
図3に示すように、本実施形態では、隣接する電極14の間にはガスケット15が介装されており、これらガスケット15によって、隣接する電極14間に空間16が形成され、空間16内に電解液としてのアルカリ水溶液、例えば3〜15%(好ましくは10%)のKOH溶液が満たされることにより、電解槽が形成される。電極14は、
図4に示すように、正方形状をなしており、表面にガスケット15が嵌め込まれる凹部17が形成され、凹部17の内側部分の上部には電解液および発生したガスが通過する貫通孔18が形成されている。また、四隅には連結ボルト20(
図2参照)が挿入される挿入口19が形成されている。そして、所定の電極14間に電圧を印加することにより、空間16内に充填された電解液が電気分解されてガスが発生する。
【0024】
ガス生成手段1の本体部11には、例えば高濃度のKOHやNaOH等のアルカリ水溶液を補充するためのアルカリ溶液補充ライン21、生成したガス(例えば酸水素ガス)を取り出すガスライン22、ドレイン配管23が接続されている。
【0025】
ガス処理部2は、本実施形態では、ガス生成手段1で発生したガスを冷却する冷却器31と、冷却器31で冷却されたガスをフィルタリングする第1フィルタータンク32、第2フィルタータンク33、およびラストフィルター34と、フィルタリングされたガスをエンジン・バーナー等の負荷設備(燃焼部)へ導く配管35とを有する。
【0026】
純水供給部3は、本実施形態では、RO(逆浸透膜)純水装置41と、RO純水装置41で製造した純水を貯蔵する純水タンク42と、RO純水装置41から純水タンク42に純水を導く第1配管43と、第1配管43に設けられた第1ポンプ44と、純水タンク42から第1フィルタータンク32へ純水を導く第2配管45と、第2配管に設けられた第2ポンプ46とを有する。第1ポンプ44は純水タンク42に設けられた液面センサの検出値に基づいて供給量が制御される。また、第2ポンプ46は、第1フィルタータンク32に設けられた液面センサに基づいて供給量が制御される。
【0027】
制御部5は、例えばCPU及びメモリで構成される演算装置を用いることができる。制御部5は、ガス発生装置100外部から入力される情報に基づいて、ガス発生装置100の動作を制御してもよい。電源手段4の電源は、二次電池、蓄電池及びその他公知の技術を用いることができる。ガス生成手段1は、例えば電解質溶液に水を用いた場合に、水素ガス及び酸素ガスを生成することができる。なお、ガス生成手段1は、電気分解する方法として、公知の技術を用いることができる。気体混合手段2は、ガス生成手段1の下流側に配置される。気体混合手段2は、ガス生成手段1が気体を生成することによって発生する圧力エネルギを用いて、気体を燃料に混合してもよい。気体混合手段2は、例えばエジクター式マイクロナノバブル発生装置、ループ流式マイクロナノバブル発生装置、噴流式微細気泡発生装置及びその他公知の技術を用いることができる。検出手段7は、ガス生成手段1の下流側の流路に配置される。検出手段7は、気体生成によるガス生成手段1の下流側の流路の圧力変化又は流速変動を検出する。なお、検出手段14は、圧力計又は流量計を用いることができる。
【0028】
水として井水・水道水などを用いられるが、その水の不純物が装置の安定運転に影響を与える場合があった。水中には、例えばシリカ、アルミナ、カルシア、マグネシア等あるいはそれらの水和物などが50〜500mg/リットル程度は含まれている。それらの不純物がガス発生経過とともに電解槽内に蓄積する場合がある。その場合これら蓄積物を取り除くために電解槽の分解・清掃が必要となる。それを避けるために純水を購入し、槽内に装入して用いることもあったが、純水の購入費は高く、結果的に製造されるガスの製造コストを上昇させ、その有用性を損なう点にも検討の余地が残されていた。そこで、本発明に係る実施形態では、純水供給部3にRO純水装置41を用い、ROを用いて井水・水道水などから純水を製造する。これにより非常に安価に純水を製造することができる。すなわち、通常の精製水を用いる場合にはそれ自体が高価なものであり、生成されるガスが高価なものにならざるを得ないが、その点、RO純水装置は、ガス生成のために必要な純度を満たしつつ、精製水の1/10以下のコストで純水を製造することができる。RO純水装置41は、プレフィルターおよび逆浸透膜を有し、これらにより井水・水道水などから純水を製造する。
【0029】
ガス処理部2の第1フィルタータンク32には、純水供給部3からの純水が充填されるとともに、その上部に多孔質セラミックスからなる第1セラミックスフィルター51が設けられている。そして、第1セラミックフィルター51の側面には冷却器31で冷却されたガスが供給されるガス供給ライン52が接続され、第1セラミックフィルター51では、ガスから泡および水分が取り除かれる。第1フィルタータンク32の上部には、第1セラミックフィルター51を通過したガスを第2フィルタータンク33に導く第1ガス配管53が接続されている。
【0030】
第2フィルタータンク33は、連結管54により第1フィルタータンク32と繋がっており、連結管54を介して第1フィルタータンク32から純水が供給されるようになっている。また、第2フィルタータンク33の上部には第2セラミックスフィルター55が設けられている。そして、第2セラミックフィルター55の側面には上記第1ガス配管53が接続されており、第1フィルタータンク32の第1セラミックフィルター51を経たガスが第2セラミックスフィルター55に供給され、さらに泡および水分が取り除かれる。第2フィルタータンク33の上部には、第2セラミックフィルター55を通過したガスをラストフィルター34に導く第2ガス配管56が接続されている。なお、第2フィルタータンク33にガソリン等の富化剤を入れて、第2フィルタータンク33において富化剤で富化された富化ガス(例えば酸水素ガス)を生成してもよい。
【0031】
ラストフィルター34には、第3セラミックフィルター57が設けられている。第3セラミックフィルター57の側面には上記第2ガス配管56が接続されており、第2フィルタータンク33の第2セラミックフィルター55を経たガスが第3セラミックフィルター57に供給されてさらに泡および水分が取り除かれ乾燥したガスとなる。ラストフィルター34の側壁には、第1フィルタータンク32および第2フィルタータンク33の底部から延びる第1純水配管58が接続され、ラストフィルター34の底部には第2純水配管59が接続されている。第2純水配管59は、電解槽11に接続されている。これにより純水供給部3からの純水が、第1および第2フィルタータンク32,33、第1および第2純水配管58,59を経て電解槽11に供給される。また、ラストフィルター34の上部には、上記配管35が接続されている。
【0032】
そして、ガス生成手段1で発生したガスは、本実施形態では、冷却器31を通って冷却された後、第1フィルタータンク32、第2フィルタータンク33およびラストフィルター34で泡が取り除かれるとともに水分が除去され、乾燥したガスとして配管35を経てエンジン・バーナー等の負荷設備(燃焼部)60へ導かれ、ガスエネルギーとして利用される。
【0033】
電源手段4は、
図5に示すように、商用の100Vまたは200Vの交流電源61と、交流を整流してパルス状の直流に変換するAC/DC変換器(整流回路)62と、周波数を変換する周波数変換回路63と、パルス急峻化回路64とを有する。
【0034】
パルス急峻化回路64は、例えば
図6で示すような、AC/DC変換器62で整流され、周波数変換回路63で所定の周波数に変換された電流パルスのパルス幅を調整して低デューティー比にするPWM回路65と、昇電圧して電流パルスのピーク電流値を高めるDCDCコンバータ66と、パルス電流の周波数をアルカリ水溶液のインダクタンスL・キャパシタンスCで決定される共振周波数f=1/(2π√(LC))に調整する周波数調整回路67とを有するものを挙げることができる。周波数調整回路67は、共振機能により電流パルスを急峻化することができる。DCDCコンバータ66は必須ではないが、より高いピークを得るためには設けたほうが好ましい。また、周波数調整回路67は、電流パルスの周波数をアルカリ水溶液の共振周波数に自動追随する機能を有することが好ましい。
【0035】
また、パルス急峻化回路64は、
図7に示すように、
図6の構成において、周波数調整回路67の代わりに、キャパシターコントローラ68およびキャパシター69を設けたものであってもよい。なお、符号70は蓄電池である。
図7のパルス急峻化回路64では、電流パルスが、キャパシターコントローラ68に入力され、キャパシターコントローラ68がキャパシター69に充電・放電の量とタイミングを指示し、電流パルスを急峻化することができる。
【0036】
さらに、パルス急峻化回路64は、
図8に示すように、
図6の構成に、キャパシターコントローラ68およびキャパシター69を加えたものであってもよい。これにより、周波数調整回路67により急峻化した電流パルスを、キャパシターコントローラ68がキャパシター69によりさらに急峻化することができる。
【0037】
制御部5は、本実施形態では、電源手段4を制御する電源制御部、圧力監視部、温度監視部等を有する。また、表示部6は、電源スイッチ(図示せず)および電源をオンにした際に点灯するパワーオンのランプ、電力指示計(いずれも図示せず)を有している。また、圧力メータースイッチ73および温度メータースイッチ74を有しており、第1フィルタータンク32から送出される、第1セラミックフィルター51でフィルタリングされた後のガスの圧力およびガス生成手段1に設けられた温度センサ71が検出した温度を表示するようになっている。そして、制御部5は、これらの圧力および温度が所定値より高くなった場合に、警報を出し、装置を停止する機能を有している。また、制御部5は、ガス供給ライン52に設けられた圧力スイッチ72を制御するようになっている。
【0038】
なお、電源手段4は、その中の電気装置を過電圧と短絡(ショート)から保護する自動入力スイッチ(図示せず)を有し、電源手段4がスイッチオンされると、スターターが駆動されるとともに、各部に設けられたファン(図示外)が回り、また、コントロールパワーブリッジ(図示せず)に電力が供給されるとともに、表示部6の電力指示計が点灯される。
【0039】
このように構成されたガス発生装置においては、電源手段4からパルス状の直流電圧がガス生成手段1の電極14に印加され、電極14の間の空間に保持された電解液を分解してガスを発生させ、発生したガスを、冷却器31で冷却し、第1フィルタータンク32、第2フィルタータンク33、ラストフィルター34でフィルタリングし、ラストフィルター34を経たガスが配管35を経てエンジン・バーナー等の負荷設備60に供給され、ガスエネルギーとして利用される。
【0040】
このとき、ガス生成手段1に電流パルスが与えられることにより、電解液が分解してガスが発生するが、本発明者は、このときのガスの発生量(気体生成量)が、電流パルスの高さのみで決まることを見出した。すなわち、従来は、ガスの発生量を増加させるためには、供給電力(電流)を増加させる必要があると考えられていたが、本発明者の知見によれば、ガスの発生量(気体生成量)は、電流パルスの面積を増大させずに電流パルスの高さを高くすることにより、供給電力を増加させることなく、増大させることができることを新たに見出した。すなわち、電流パルスを極力急峻化することにより、単位電力当たりのガス発生量(気体生成量)を飛躍的に増大できることを見出した。
【0041】
そこで、本実施形態では、AC/DC変換器(整流回路)62で整流し、周波数変換回路63で周波数を変換した後のパルス状電流を、パルス急峻化回路64で急峻化する。すなわち、AC/DC変換器(整流回路)62で整流された際の電流波形は
図9に示すような矩形波であり、それを電極に印加すると
図10に示す模式図のように先尖りの電流パルスとなるが、従来は電圧が低く比較的なだらかな形状をしていた。このような状況において、ガス発生量(気体生成量)を増加させるためには、この波高を維持したままデューティー比を上げ、電流値を増加させるしかなく、結果的に供給電力(すなわち消費電力)の増大をともなっていた。しかし、本実施形態では、パルス急峻化回路64を用いることにより、デューティー比を下げることで、
図11に示す模式図のように、電流パルスの半値幅を小さくしつつピーク高さを高くすることにより、電流パルスの面積を増大させることなく、つまり電力消費量を増大させることなく、ガス発生量(気体生成量)を増大させることができる。なお、
図9〜11の電流パルスの波形は模式的に示したものであり、実際の波形は多少異なる形状を有する。
【0042】
そして、パルス急峻化回路64として、
図6に示すようなものを用いることにより、PWM回路65によりデューティー比を低く(望ましくは0.2以下に)し、好ましくはDCDCコンバータ66で昇電圧した後、さらに、周波数調整回路67により、パルス電流の周波数をアルカリ水溶液のインダクタンスL・キャパシタンスCで決定される共振周波数f=1/(2π√(LC))に調整することにより、周波数調整回路67の共振機能により、電流パルスを著しく急峻化することができ、単位電力当たりのガス発生量(気体生成量)を増大させることができる。
【0043】
また、パルス急峻化回路64として、
図8に示すようなものを用いることにより、PWM回路65によりデューティー比を低く(望ましくは0.2以下に)し、好ましくはDCDCコンバータ66で昇電圧した後、電流パルスが、キャパシターコントローラ68に入力され、キャパシターコントローラ68がキャパシター69に充電・放電の量とタイミングを指示し、電流パルスを急峻化することができ、単位電力当たりのガス発生量(気体生成量)を増大させることができる。
【0044】
さらに、パルス急峻化回路64として、
図7に示すようなものを用いることにより、周波数調整回路67と、キャパシターコントローラ68およびキャパシター69との相乗効果により、より一層電流パルスを急峻化することができ、単位電力当たりのガス発生量(気体生成量)をより一層増大することができる。
【0045】
また、本実施形態のガス発生装置は、アルカリ水溶液、例えば3〜15%(好ましくは10%)のKOH溶液を電解水として使用し、100V商用電源を利用してこれを電気分解し、発生するガスをフィルターにより脱泡・脱水して、ガス成分のみを取り出し、これをそのまま、または必要に応じてガソリン等の富化剤で富化して燃料ガスにするので、低圧下においても燃料ガスを生成することができ、通常のプロパン等の燃料に代えて使用できるガスエネルギーを得ることができる。
【0046】
さらに、ガスは、水を電解分解によって得られたものであるので、無公害、低コストで得ることができる。
【0047】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、富化剤はガソリンに限らず、例えば灯油等他の燃料を用いることができる。また、ガスを含む燃料ガスをエンジン・バーナー以外の他の負荷設備に供給してもよい。
【実施例】
【0048】
実施例に係るガス発生装置を用いて、本発明を説明する。なお、本発明は、以後に説明するガス発生装置以外でも、電気分解で気体を生成するもの(装置、機械、部品、システム、アプリケーションなど)であれば、いずれのものにも用いることができる。
【0049】
(実施例1)
本実施例においては、実施形態に係るガス発生装置100を用いて、以下の生成条件で酸水素ガスを生成した。
0)電極:ステンレス薄鋼板(SUS316L)
1)電源:商用電源交流100V、パルス周波数50−300Hz
2)供給電流:10A−50A
3)電解液:10%KOH
4)水溶液ミキサー:容積 3.8リットル
【0050】
この条件で、AC/DC変換器(整流回路)で整流したのみのもの、およびさらに
図8に示すパルス急峻化回路で電流ピークを2倍に高めたものについて、実際に酸水素ガスの発生量を比較した。その結果、前者では300リットル/時/kWであったが、後者では倍の600リットル/時/kWであった。
【0051】
図12(a)に周波数に対応するガス生成量の実験結果(100V、5A)の一例を示す。
図12(b)に周波数fに対応するガス生成量Qgの実験結果(100V、10A)の一例を示す。
図12(a)および
図12(B)に示すように、パルス電流の周波数fgがアルカリ水溶液のインダクタンスL・キャパシタンスCで決定される共振周波数f=1/(2π√(LC))付近(例えば本実験では125Hz)であるときに、ガス生成量Qgが最大となった。また、
図12(a)および
図12(B)に示すように、パルス電流の周波数fgがアルカリ水溶液のインダクタンスL・キャパシタンスCで決定される共振周波数f=1/(2π√(LC))付近(例えば本実験では125Hz)であるときに、ガス生成量Qgが急激増加する極大値となった。すなわち、本発明に係るガス発生装置(酸水素ガス発生装置)によれば、パルス急峻化回路(
図5)を用いて整流回路(
図5)で得られたパルス状電流の電流パルスの面積を増大することなくそのピークを高くして急峻化することができるので、パルス電流の周波数fgを制御して単位電力当たりのガス発生量Qgを増加することができる。
【0052】
図13に、ピーク電流値Igに対応するガス生成量Qgの実験結果の一例を示す。
図13に示すように、ガス発生装置は、パルス急峻化回路(
図5)を用いて整流回路(
図5)で得られたパルス状電流の電流パルスのピーク電流値Igを変更することによって、ガス発生量Qgを調整することができる。すなわち、本発明に係るガス発生装置(酸水素ガス発生装置)によれば、パルス急峻化回路を用いて整流回路で得られたパルス状電流の電流パルスのピーク電流値Igを変更することによってガス発生量Qgを調整することができるので、生成するガスを使用状況に応じて、所望の量のガスを生成することができる。また、本発明に係るガス発生装置(酸水素ガス発生装置)によれば、パルス状電流の電流パルスのピーク電流値Igを変更することによってガス発生量Qgを調整することができるので、高応答性の制御が可能であり、ガスの貯蔵装置(高圧ガスボンベ・ガス貯蔵合金、その他気体貯蔵装置など)を必要とせず、必要な時に必要な量のガスを生成することができる。
【0053】
(実施例2)
(ガス生成方法、ガス生成方法のプログラム及びそのプログラムを記録した記録媒体)
図14を用いて、ガス発生装置100(
図1)がガスを生成する動作(ガス生成方法)を説明する。ここで、
図14は、本発明に係るガス生成方法を説明するフローチャート図である。なお、
図14に示すガス発生装置の動作は一例であり、本発明は
図14に示すガス発生装置の動作に限定されるものではない。
【0054】
図14に示すように、ガス発生装置100は、ステップS1401において、先ず、制御部5(
図1)を用いて、ガスを生成する動作を開始する(制御ステップ)。制御部5は、例えばガス発生装置100の外部から入力された情報に応じて、ガスを生成する動作を開始することができる。その後、ガス発生装置100は、ステップS1402に進む。
【0055】
次に、ステップS1402において、ガス発生装置100は、電源手段4(
図1)を用いて、電気エネルギをガス生成手段1(
図1)に供給する(電源供給ステップ)。ここで、制御部5は、整流回路62(
図5)を用いて交流を直流に変換するとともにパルス状電流に変換し(整流ステップ)、且つ、パルス急峻化回路64(
図5)を用いて変換したパルス状電流の電流パルス(例えば
図11)を急峻化する(急峻化ステップ)。その後、ガス発生装置100は、ステップS1403に進む。
【0056】
次いで、ステップS1403において、ガス発生装置100は、ガス生成手段1を用いて、電源手段4から供給される電気エネルギを用いて、電解質溶液を電気分解する(ガス生成ステップ)。その後、ガス発生装置100は、ステップS1404に進む。
【0057】
ステップS1404において、ガス発生装置100は、検出手段7を用いて、ガス生成手段1が生成したガスの気体発生量を検出する(検出ステップ)。その後、ガス発生装置100は、ステップS1405に進む。
【0058】
ステップS1405において、ガス発生装置100は、制御部5を用いて、ガス生成手段1が生成するガスの気体生成量を調整する。ここで、制御部5は、整流回路62及びパルス急峻化回路64の動作を制御して、気体生成量を調整する。具体的には、制御部5は、検出手段7で検出した気体生成量に基づいてパルス状電流の周波数fg(例えば
図12)及び/又は電流パルスの最大振幅(例えば
図13)を変更する。その後、ガス発生装置100は、ステップS1406に進む。
【0059】
ステップS1406において、ガス発生装置100は、制御部5を用いて、ステップS1405で検出された検出結果に基づいて、ガスを生成する動作を繰り返すか否かを判断する(制御ステップ)。制御部5は、例えばガス発生装置100の外部から入力された情報を更に用いて、ガスを生成する動作を繰り返すか否かを判断することができる。これにより、ガス発生装置100は、所望の量のガスを生成することができる。その後、生成する動作を繰り返すと判断した場合には、ガス発生装置100は、ステップS1402に戻る。生成する動作を終了すると判断した場合には、ガス発生装置100は、図中の「END」に進み、動作を終了する。
【0060】
以上のとおり、本実施例に係るガス生成方法は、実施形態に係るガス発生装置100と同様に、パルス急峻化回路により、整流回路で得られたパルス状電流の電流パルスの面積を増大することなくそのピークを高くして急峻化することができるので、単位電力当たりのガス発生量を多くすることができる。
【0061】
(ガス生成方法、ガス生成方法のプログラム及びそのプログラムを記録した記録媒体)
本発明に係るガス生成方法のプログラムは、パルス状電流を生成する整流回路と、前記パルス状電流の電流パルスを急峻化するパルス急峻化回路と、前記整流回路及び前記パルス急峻化回路の動作を制御する制御部とを備える電源手段を用いて、電解質溶液を電気分解してガスを発生させるガス生成方法であって、前記電源手段から電気エネルギを供給する電源供給ステップと、前記電源供給ステップで供給された電気エネルギを用いて前記電解質溶液を電気分解し、前記ガスを生成するガス生成ステップと、前記ガス生成ステップで生成した気体生成量を検出する検出ステップとを含み、前記電源供給ステップは、前記整流回路を用いて交流を直流に変換するとともにパルス状電流にする整流ステップと、前記パルス急峻化回路を用いて前記整流ステップで変換した前記パルス状電流の電流パルスを急峻化する急峻化ステップと、前記制御部を用いて前記整流回路及び前記パルス急峻化回路の動作を制御する制御ステップとを更に含む、ことを特徴とするガス生成方法を実行する。また、本発明に係るガス生成方法のプログラムにおいて、前記制御ステップは、予め設定された周波数に前記整流回路が変換する前記パルス状電流の周波数を制御し、且つ、予め設定された最大振幅に前記パルス急峻化回路が急峻化する電流パルスの最大振幅を制御した後に、前記検出手段で検出した前記気体生成量に基づいて前記パルス状電流の周波数及び/又は前記電流パルスの最大振幅を変更し、前記ガス生成ステップは、前記制御ステップが変更した前記パルス状電流の周波数及び/又は前記電流パルスの最大振幅に対応する前記気体生成量で前記ガスを生成する、ことを特徴とするガス生成方法を実行してもよい。
【0062】
上記のプログラムによれば、本発明の実施形態に係るガス発生装置100(前述)と同等の効果が得られる。また、本発明は、上記のプログラムを記録したコンピュータによって読み取り可能な記録媒体としてもよい。記録媒体には、フレキシブルディスク、CD−ROM、DVD、及び、メモリーカード等、コンピュータ読み取り可能な媒体を利用することができる。更に、本発明は、上記のプログラムをインターネット等のネットワークを介して送信することが可能な伝送可能媒体であってもよい。
【0063】
以上のとおり、本発明に係る実施形態及び実施例について説明したが、本発明は上記の実施形態及び実施例に限定されるものではない。すなわち、本発明は、特許請求の範囲に記載の内容に基づいて、様々に変形、変更又はその他任意に改変され得る。