特開2015-134976(P2015-134976A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-134976(P2015-134976A)
(43)【公開日】2015年7月27日
(54)【発明の名称】衣服用の断熱構造
(51)【国際特許分類】
   A41D 1/00 20060101AFI20150701BHJP
   A41D 1/02 20060101ALI20150701BHJP
   A41D 31/00 20060101ALI20150701BHJP
   A41D 1/04 20060101ALI20150701BHJP
【FI】
   A41D1/00 D
   A41D1/02 C
   A41D31/00 501A
   A41D31/00 501B
   A41D31/00 502B
   A41D31/00 502F
   A41D31/00 502S
   A41D1/04 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】19
【出願形態】OL
【外国語出願】
【全頁数】37
(21)【出願番号】特願2015-5577(P2015-5577)
(22)【出願日】2015年1月15日
(31)【優先権主張番号】10 2014 200 824.7
(32)【優先日】2014年1月17日
(33)【優先権主張国】DE
(71)【出願人】
【識別番号】510204998
【氏名又は名称】アディダス アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100114409
【弁理士】
【氏名又は名称】古橋 伸茂
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】ティム マウド
【テーマコード(参考)】
3B030
3B031
【Fターム(参考)】
3B030AA01
3B030AA04
3B030AB05
3B031AA01
3B031AA07
3B031AA08
3B031AA09
3B031AB01
3B031AB03
3B031AC01
3B031AC05
3B031AE07
3B031AE11
(57)【要約】
【課題】衣服用の断熱構造を提供すること。
【解決手段】本発明は、特にアウトドア衣服用の断熱構造、およびそのような断熱構造を備える衣服に関する。本発明の一態様によれば、衣服用の断熱構造が提供される。断熱構造は、第1の断熱要素と、第1の断熱要素とは異なる初期形状を有する第2の断熱要素とを備える。第1の断熱要素は、第2の断熱要素に接続され、衣服を着用したときに、第2の断熱要素が、断熱構造の内側に対する圧力によって変形され、それにより、第1の断熱要素が第2の断熱要素に接触する接触領域が増大される。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
衣服(600;800)用の断熱構造(200;300a〜d;400;500)であって、
a.第1の断熱要素(210;310a〜d;410;510;610;810)と、
b.第2の断熱要素(220;320a〜d;420;520;620;820)とを備え、前記第2の断熱要素(220;320a〜d;420;520;620;820)が、前記第1の断熱要素(210;310a〜d;410;510;610;810)とは異なる初期形状を有し、
c.前記第1の断熱要素(210;310a〜d;410;510;610;810)が、前記第2の断熱要素(220;320a〜d;420;520;620;820)に接続され、
d.前記衣服(600;800)を着用したときに、前記第2の断熱要素(220;320a〜d;420;520;620;820)が、前記断熱構造(200;300a〜d;400;500)の内側に対する圧力によって変形され、それにより、前記第1の断熱要素(210;310a〜d;410a〜b;510;610;810)が前記第2の断熱要素(220;320a〜d;420a〜b;520;620;820)に接触する接触領域(250)が増大される、
断熱構造(200;300a〜d;400;500)。
【請求項2】
複数の第1の断熱要素(210;310a〜d;410;510;610;810)と、複数の第2の断熱要素(220;320a〜d;420;520;620;820)とを備え、前記第2の断熱要素(220;320a〜d;420;520;620;820)がそれぞれ、前記第1の断熱要素(210;310a〜d;410;510;610;810)とは異なる初期形状を有し、各第1の断熱要素(210;310a〜d;410;510;610;620)が、少なくとも1つの第2の断熱要素(220;320a〜d;420;520;620;820)に接続され、前記衣服(600;800)を着用したときに、前記第2の断熱要素(220;320a〜d;420;520;620;820)が、前記断熱構造(200;300a〜d;400;500)の内側に対する圧力によって変形され、それにより、前記第1の断熱要素(210;310a〜d;410a〜b;510;610;810)が前記第2の断熱要素(220;320a〜d;420a〜b;520;620;820)に接触する接触領域(250)が増大される請求項1に記載の断熱構造(200;300a〜d;400;500)。
【請求項3】
少なくとも1つの第1の断熱要素(210;310a〜d;410;510;610;810)と、少なくとも1つの第2の断熱要素(220;320a〜d;420;520;620;820)とが、それぞれのシーム(230;430;571;572;573)で接続され、前記増大された接触領域(250)が、前記シーム(230;430;571;572;573)の近位にあり、それにより、前記衣服(600;800)が着用されるときに、前記少なくとも第2の断熱要素(220;320a〜d;420;520;620;820)が、前記シーム(230;430;571;572;573)に実質的に重なる請求項1または2に記載の断熱構造(200;300a〜d;400;500)。
【請求項4】
少なくとも1つの第1の断熱要素(210;310a〜d;410;510;610;810)が少なくとも1つの第2の断熱要素(220;320a〜d;420;520;620;820)に接触する前記増大された接触領域(250)が、体熱の逃げを減少させる請求項1から3のいずれか一項に記載の断熱構造(200;300a〜d;400;500)。
【請求項5】
前記断熱構造の断面において、少なくとも1つの第2の断熱要素(220;320a〜d;420;520;620;820)の内面に沿った第1の円弧(224、534)が、前記少なくとも1つの第2の断熱要素(220;320a〜d;420;520;620;820)の外面に沿った断面で、第2の円弧(222、532)の長さ(B;b)よりも大きい長さ(A;a)を有する請求項1から4のいずれか一項に記載の断熱構造(200;300a〜d;400;500)。
【請求項6】
前記第1の円弧(224、534)の長さ(A;a)と前記第2の円弧(222、532)の長さ(B;b)との比が、1.2:1〜3:1の範囲内、好ましくは1.4:1〜2:1の範囲内、特に好ましくは1.45:1〜1.55:1の範囲内である請求項1から5のいずれか一項に記載の断熱構造(200;300a〜d;400;500)。
【請求項7】
断面での前記第1の円弧(224、534)の長さ(A;a)と前記第2の断熱要素(220;320a〜d;420;520;620;820)の高さ(D;d)との比が、1.2:1〜3:1の範囲内、好ましくは1.3:1〜2.5:1の範囲内、特に好ましくは1.4:1〜2.1:1の範囲内である請求項1から6のいずれか一項に記載の断熱構造(200;300a〜d;400;500)。
【請求項8】
少なくとも1つの第1の断熱要素(210;310a〜d;410;510;610;810)および/または少なくとも1つの第2の断熱要素(220;320a〜d;420;520;620;820)が、充填材料を備える請求項1から7のいずれか一項に記載の断熱構造(200;300a〜d;400;500)。
【請求項9】
前記少なくとも1つの第1の断熱要素(210;310a〜d;410;510;610;810)内の充填材料の重量に対する前記少なくとも1つの第2の断熱要素(220;320a〜d;420;520;620;820)内の充填材料の重量の比が、1.3:1〜4:1の範囲内、好ましくは1.4:1〜3:1の範囲内、特に好ましくは1.45:1〜2.0:1の範囲内である請求項1から8のいずれか一項に記載の断熱構造(200;300a〜d;400;500)。
【請求項10】
少なくとも1つの第1の断熱要素および少なくとも1つの第2の断熱要素(410;420;510;520)がそれぞれ、
キャビティ(515;525)を画定する内層(414;511;521)および外層(412;512;522)を備え、
前記少なくとも1つの第1の断熱要素(410;510)の前記内層(414;511)の表面積が、前記少なくとも1つの第2の断熱要素(420;520)の前記内層(414;521)の表面積よりも小さい
請求項1から9のいずれか一項に記載の断熱構造(200;300a〜d;400;500)。
【請求項11】
少なくとも1つの第1の断熱要素(510)および少なくとも1つの第2の断熱要素(520)がそれぞれ、
キャビティ(515;525)を画定する内層(511;521)および外層(512;522)を備え、
前記少なくとも1つの第1の断熱要素(510)の前記内層(511)の表面積が、前記少なくとも1つの第1の断熱要素(510)の前記外層(512)の表面積と実質的に同じサイズであり、
前記少なくとも1つの第2の断熱要素(520)の前記内層(521)の表面積が、前記少なくとも1つの第2の断熱要素(520)の前記外層(522)の表面積よりも大きい
請求項1から10のいずれか一項に記載の断熱構造(200;300a〜d;400;500)。
【請求項12】
前記少なくとも1つの第1の断熱要素(410;510)の前記内層(414;511)と、前記少なくとも1つの第2の断熱要素(420;520)の前記内層(414;521)とが、一体部片として接合して提供される請求項10または11に記載の断熱構造(200;300a〜d;400;500)。
【請求項13】
前記少なくとも1つの第1の断熱要素(410;510)の前記外層(412;512)と、前記少なくとも1つの第2の断熱要素(420;520)の前記外層(412;522)とが、一体部片として接合して提供される請求項10から12のいずれか一項に記載の断熱構造(200;300a〜d;400;500)。
【請求項14】
少なくとも1つの第1の断熱要素(210;310b;310d;410;510;610;810)および/または少なくとも1つの第2の断熱要素(220;320c;320d;420;520;620;820)が細長い請求項1から13のいずれか一項に記載の断熱構造(200;300b〜d;400;500)。
【請求項15】
前記衣服が着用されるときに、少なくとも1つの第1の断熱要素(210;310a〜d;410;510;810)および少なくとも1つの第2の断熱要素(220;320a〜d;420;520;820)が実質的に水平に配置される請求項1から14のいずれか一項に記載の断熱構造(200;300a〜d;400;500)。
【請求項16】
少なくとも1つの第1の断熱要素(210;310a〜d;410;510;610)および少なくとも1つの第2の断熱要素(220;320a〜d;420;520;620)が、前記衣服(600)の内部でV字形に配置される請求項1から15のいずれか一項に記載の断熱構造(200;300a〜d;400;500)。
【請求項17】
少なくとも1つの第1の断熱要素(210;310a〜c;410;510;610;810)および少なくとも1つの第2の断熱要素(220;320a〜c;420;520;620;820)が、互いに並んで交互に配置される請求項1から16のいずれか一項に記載の断熱構造(200;300a〜c;400;500)。
【請求項18】
さらに、少なくとも1つのカバー層(850)を備え、前記カバー層(850)が、前記断熱構造(200;300a〜d;400;500)の内側および/または外側に配置される請求項1から17のいずれか一項に記載の断熱構造(200;300a〜d;400;500)。
【請求項19】
請求項1から18のいずれか一項に記載の断熱構造(200;300a〜d;400;500)を備える衣服(600;800)、特にジャケット(600;800)またはベスト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特にアウトドア衣服用の断熱構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特にアウトドア分野での衣服の主要な目的は、そのような衣服の着用者の身体を環境から断熱し、熱損失を最小限にすることである。このために、典型的には、断熱効果をもたらすように、外層と内層の間に良好な断熱特性を有する材料が配置された構成が選択される。天然の断熱素材、特にダウンと、合成材料との両方が、これに関して使用される。
【0003】
断熱材料の意図しないずれまたは分布の変化を避けるために、例えば、米国特許第2464380A号、米国特許第5408700A号、米国特許第8578516B2号、および国際公開第98/11795A1号に記載されているように、断熱材料は、典型的には、個々のチャンバまたはセクション内に分配される。これに関して、従来技術から2つの基本構造が知られている。
【0004】
一方では、図1aに示されるチャンバ構造(本明細書では以後、チャンバの形状により、簡単に「H形構造」と呼ぶ)であり、個々のチャンバを画定する区画が外層と内層との間に縫製される。さらに、従来技術から知られているこの構成の変形形態は、図1bに示されるように、台形の構成である。そのようなH形または台形の構成の利点は、衣服のより大きな領域にわたって断熱材料の一様な厚さを保証することができることである。これは、一様に良好な断熱をもたらすことができる。しかし、これらの構造は、かなりの製造労力がかかるという欠点を備える。
【0005】
他方で、図1cに示される構成も従来技術から知られており、ここでは、衣服の外層と内層は直接縫い合わされ、またはステッチされ、それにより、断熱材料を充填された個々のチャンバを形成する。この構造は、上述したH形構造よりもかなり少ない製造労力で製造することができる。図1cに示されるシーム構造は、シームを横切って熱を逃がす、あるいは衣服内への冷気の進入を可能にすることがある。さらに、この構成の欠点は、シームの領域内に断熱材料が存在しないことであり、この領域では、外層と内層が直接接触する。したがって、図1dにおけるこの構成の従来のアウトドアジャケットの熱画像で明瞭に見ることができるように、シームの領域内でかなりの熱損失が生じる。
【0006】
この問題に対処するために、例えば、米国特許第2960702A号は、このようにして製造された2つ以上の層を、千鳥配置のシームを用いて互いに重ねて配置し、それにより、それぞれのシームでの熱損失を減少させることを提案している。しかし、これは、製造労力を増加し、また衣服の厚さの望ましくない増加をもたらすこともある。例えば撥水性のさらなる外層を備える別の構成を、米国特許出願公開第2013/0177731A1号で見ることができる。これもまた、製造労力および材料投入の増加をもたらす。
【0007】
最後に、英国特許第2159050A号に、ベッドカバーのどちら側が底部に位置するかに応じて断熱の増加または減少を提供するベッドカバーが記載されている。しかし、この特許文献に記載されている概念は、チャンバを身体の長手方向で位置合わせさせる必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第2464380A号
【特許文献2】米国特許第5408700A号
【特許文献3】米国特許第8578516B2号
【特許文献4】国際公開第98/11795A1号
【特許文献5】米国特許第2960702A号
【特許文献6】米国特許出願公開第2013/0177731A1号
【特許文献7】英国特許第2159050A号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、本発明の目的は、製造が容易であり、使用され得るシームの領域内での熱損失を最小限にする断熱構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的は、少なくとも一部は、本発明による衣服用、特にアウトドア衣服用の断熱構造によって実現される。本発明による断熱構造は、第1の断熱要素と第2の断熱要素とを備え、第2の断熱要素が、第1の断熱要素とは異なる初期形状を有し、第1の断熱要素が、第2の断熱要素に接続され、衣服を着用したときに、第2の断熱要素が、断熱構造の内側に対する圧力によって変形され、それにより、第1の断熱要素が第2の断熱要素に接触する接触領域が増大される。
【0011】
初期形状は、好ましくは、断熱構造の内側に圧力が及ぼされていないときの第1および第2の断熱要素の形状を表す。さらに、形状は、好ましくは、第1および第2の断熱要素の断面形状を表す。さらにまた、用語「異なる初期形状」は、第1および第2の断熱要素の向きも考慮することがある。すなわち、第1の断熱要素と第2の断熱要素は、どちらも同じまたは同様の(断面)形状を有することがあり、例えば、どちらも長円形を有することがあるが、向きが異なることがある。例えば、第1の断熱要素は、横長断面を有することがあり、第2の断熱要素は、縦長断面を有することがある。第1の断熱要素と第2の断熱要素が同様の形状であるが異なる向きを有するそのような実施形態も、用語「異なる初期形状」によって網羅される。
【0012】
好ましくは、断熱構造は、複数の第1の断熱要素と複数の第2の断熱要素とを備え、第2の断熱要素がそれぞれ、第1の断熱要素とは異なる初期形状を有し、各第1の断熱要素が、少なくとも1つの第2の断熱要素に接続され、衣服を着用したときに、第2の断熱要素が、断熱構造の内側に対する圧力によって変形され、それにより、第1の断熱要素が第2の断熱要素に接触する接触領域が増大される。
【0013】
好ましくは、衣服が着用されるとき、各第1の断熱要素と、それが接続されるそれぞれの第2の断熱要素との間で、接触領域が増大される。しかしまた、接触領域は、いくつかの第1の断熱要素と第2の断熱要素の間でのみ増大されることも可能である。
【0014】
さらに、断熱構造および/または衣服がまた、第1および第2の断熱構造とは異なるさらなる断熱要素または他の要素を備えることもあることをここに明記しておく。
【0015】
本発明による断熱構造は、単純な製造と良好な断熱の利点を兼ね合わせる。衣服が着用されるとき、第2の断熱要素が変形され、それにより、それぞれの第1の断熱要素に「寄り添い」、したがって、熱が逃げることがあり得る任意の可能なシームまたは空間を少なくとも部分的に封止する。
【0016】
好ましくは、少なくとも1つの第1の断熱要素と、少なくとも1つの第2の断熱要素とが、それぞれのシームで接続され、増大された接触領域が、シームの近位にあり、それにより、衣服が着用されるときに、少なくとも第2の断熱要素が、シームに実質的に重なる。
【0017】
好ましくは、すべての第1および第2の断熱要素がそれぞれのシームによって接続され、すべてのそのようなシームの近位に増大された接触領域が存在し、それにより、衣服が着用されるときに第2の断熱要素がすべてのシームに実質的に重なる。
【0018】
一般に、本明細書において「少なくとも1つの第1の断熱要素」、「少なくとも1つの第2の断熱要素」について述べるとき、複数の第1および第2の断熱要素が存在する場合には、これは、好ましくはすべての第1および第2の断熱要素を意味する。しかしまた、第1および/または第2の断熱要素のすべてではなく、1つまたは複数のみを意味することもある。
【0019】
本発明によるそのような断熱構造を形成するために、以下にさらに詳述するように層間にキャビティが形成されるように、材料の層を接合することができる。シームを使用して、衣服を形成する布地の層を接合することができる。いくつかの実施形態では、シームは、衣服内での断熱要素の移動が減少および/または阻止されるように設計することができる。断熱構造は、材料の層によって画定される2つ以上の異なる断熱要素から構成することができる。
【0020】
例えば、断熱構造は、第2の断熱要素の近位に位置決めされた第1の断熱要素から構成することができ、これらの要素をシームによって互いに接続することができる。第2の断熱要素は、使用中に第2の断熱要素が隣接するシームに実質的に重なるように構成することができる。
【0021】
シームに重なることによって、第2の断熱要素は、シームの領域内に断熱材料を提供し、それにより、これらの点での熱損失を減少および/または阻止することができる。
【0022】
さらに、いくつかの実施形態では、第2の断熱材料は、使用中に、隣接するシームの少なくとも一部分をカバーするように構成することができる。
【0023】
第1の断熱要素の少なくとも1つが第2の断熱要素の少なくとも1つに接触する増大された接触領域は、好ましくは、体熱の逃げを減少させる。特に好ましくは、既に述べたように、衣服が着用されるときにすべての第1の断熱要素と第2の断熱要素の間に増大された接触領域が存在し、それにより、本発明による断熱構造によって体熱の損失が実質的に減少される。
【0024】
前述したように、体熱の逃げの減少は、断熱構造の異なる要素間の可能なシームまたは空間が少なくとも部分的に「封止」されることによって得られる。さらに、増大された接触領域は、湿気、例えば霧や雨が着用者/使用者の身体に達するのを防止する目的を果たすこともできる。これは、さらに、快適さを促進し、冷却を防止する助けとなり得る。
【0025】
好ましくは、断熱構造の断面で、少なくとも1つの第2の断熱要素に沿った第1の円弧が、少なくとも1つの第2の断熱要素の外面に沿った断面で、第2の円弧の長さよりも大きい長さを有する。
【0026】
ここで、第1の円弧の長さと第2の円弧の長さとの比は、1.2:1〜3:1の範囲内、好ましくは1.4:1〜2:1の範囲内、特に好ましくは1.45:1〜1.55:1の範囲内でよい。
【0027】
さらに、断面での上述した第1の円弧の長さと第2の断熱要素の高さとの比は、1.2:1〜3:1の範囲内、好ましくは1.3:1〜2.5:1の範囲内、特に好ましくは1.4:1〜2.1:1の範囲内でよい。
【0028】
第1の円弧の長さと高さとのこれらの比は、好ましくは、第1の円弧の長さと第2の円弧の長さの上述の比と組み合わせて適用することができる。しかし、第1の円弧の長さと高さとの比は、第1の円弧と第2の円弧の長さの比とは無関係に適用することもでき、逆も成り立つ。
【0029】
本明細書では、断面での第2の断熱要素の高さは、例えば、着用された断熱構造/衣服の断面での高さを表すことがある。
【0030】
断熱構造の断面で、内面に沿った円弧の長さが外面に沿った円弧の長さよりも長くなるように第2の断熱要素を提供することによって、第2の断熱要素が、断熱構造の内側から「突出」し、したがって、衣服が着用されるときに着用者の身体によって圧縮され、それにより、上述した「封止」効果をもたらす。内側円弧長さと外側円弧長さの上述の比、および内側円弧長さと、第2の断熱要素の高さとの上述の比は、熱孔の良好な封止、したがって体熱の損失の良好な減少を提供することが判明している。
【0031】
ここでもまた、複数の第2の断熱要素の場合、これらの比は、好ましくは、すべての第2の断熱要素に適用される。あるいは、それらが一部の第2の断熱要素のみに適用されることもある。
【0032】
好ましくは、少なくとも1つの第1の断熱要素および/または少なくとも1つの第2の断熱要素が、充填材料を備える。特に、すべての第1の断熱要素と第2の断熱要素が、充填材料を備えることができる。
【0033】
充填材料は、断熱構造の断熱性を大幅に高めることができる。天然繊維または羽根、特にダウン、あるいはまた、ダウンとは対照的に、例えば湿潤状態でさえ良好な断熱特性を有する合成繊維が、ここでの充填材料として想定可能である。対照的に、乾燥状態では、ダウンが、非常に良好な断熱特性を備えると共に、非常に軽量である。空気、ゲル、発泡材料、液体、ガス、または固体、例えば微粒も、充填材料として想定可能である。熱の対流を減少させるために排気されたキャビティも、原理的には想定可能である。
【0034】
ここで、少なくとも1つの第1の断熱要素内の充填材料の重量に対する少なくとも1つの第2の断熱要素内の充填材料の重量の比が、1.3:1〜4:1の範囲内、好ましくは1.4:1〜3:1の範囲内、特に好ましくは1.45:1〜2:1の範囲内である。
【0035】
充填材料の重量は、例えば衣服が構成されるときに測定することができる。重量の比は、実質的に同じ寸法、例えば同様の長さ(例えば、細長い断熱要素に関して)および高さを有する1対の第1の断熱要素と第2の断熱要素に適用することができる。また、これらの比は、第1の断熱要素と第2の断熱要素の各対に適用することもできる。あるいは、それらを一部の第1および第2の断熱要素のみに適用することもできる。
【0036】
これらの値も、上述したように衣服が着用されるときに本発明による「封止」効果を提供する、「突出」する第2の断熱要素を提供するのに有利であることが判明している。
【0037】
さらに、少なくとも1つの第1の断熱要素内の充填材料の重量と少なくとも1つの第2の断熱要素内の充填材料の重量の比を考慮するのではなく、少なくとも1つの第1の断熱要素内の充填材料の体積と少なくとも1つの第2の断熱要素内の充填材料の体積の比を考慮することもできる。充填体積のこの比に関しても、例えば、充填重量に関して上述した同じ好ましい比が適用されることがある。
【0038】
当業者は、少なくとも1つの第1の断熱要素と少なくとも1つの第2の断熱要素の両方において同じ充填材料で一定の充填密度の場合に、例えば充填材料の密度によって与えられる、充填材料の体積と重量の間の直接の1対1の対応関係が存在し得ることを理解されよう。しかし、例えば異なる材料または異なる充填密度が第1の断熱要素と第2の断熱要素それぞれに使用される場合、充填体積と充填重量の間により複雑な関係が存在することもある。
【0039】
好ましくは、少なくとも1つの第1の断熱要素および少なくとも1つの第2の断熱要素はそれぞれ、キャビティを画定する内層と外層を備え、ここで、少なくとも1つの第1の断熱要素の内層の表面積が、少なくとも1つの第2の断熱要素の内層の表面積よりも小さい。
【0040】
これもまた、第1の断熱要素の形状に比べて着用者の身体に向かって「突出」する第2の断熱要素の形状を提供する助けとなることがあり、それにより、第2の断熱要素の上述の変形、および熱孔を封止する増大された接触領域をもたらす。
【0041】
特に好ましくは、少なくとも1つの第1の断熱要素および少なくとも1つの第2の断熱要素はそれぞれ、キャビティを画定する内層と外層を備え、ここで、少なくとも1つの第1の断熱要素の内層の表面積は、少なくとも1つの第1の断熱要素の外層の表面積と実質的に同じサイズであり、少なくとも1つの第2の断熱要素の内層の表面積は、少なくとも1つの第2の断熱要素の外層の表面積よりも大きい。
【0042】
外層と内層の同じ表面積により、第1の断熱要素は、ほぼ対称的な断面形状を有するキャビティを形成する。対照的に、外層の表面積に比べて大きな第2の断熱要素の内層の表面積により、第2の断熱要素は、内側に向かってより大きな厚さを有する非対称形状を有するキャビティを形成し、それにより、使用中に生じる変形によって生じるスペースまたはシームの上述した封止をもたらす。
【0043】
ここで、好ましくは、少なくとも1つの第1の断熱要素の内層と、少なくとも1つの第2の断熱要素の内層とが、一体部片として接合して提供される。
【0044】
さらに、好ましくは、少なくとも1つの第1の断熱要素の外層と、少なくとも1つの第2の断熱要素の外層とが、一体部片として接合して提供される。
【0045】
これは、一方で、内層または外層におけるシームなどをなくすことができる。これは、断熱性の改良、および液体、霧、汚れなどの進入の回避に寄与することができる。他方、特に外層と内層が一体部片として提供される場合には、これは、特に容易な自動製造を可能にする。内層と外層は、例えば、それぞれのロールから巻き解かれ、それぞれのキャビティを形成するように互いに縫い合わせることができる。内層と外層が、縫製される2つの隣接するシームの間で同じ速度でミシンに供給される場合、まず、対称的な断熱要素が形成される。対照的に、内層がより速く供給される場合、これは、自動的に、より大きな「ポケット」を形成し、したがって、例えば、充填材料で充填された後に、断熱構造の内側に垂直な方向でより大きい厚さを有する。
【0046】
例えば、これはまた、第1の断熱要素と第2の断熱要素を、修正する必要なく、かつ例えば縫製などによって後で接続させる必要なく、効率的に製造できるようにする。これは、製造労力のかなりの減少をもたらすことができる。さらに、衣服の構成を完全に、または部分的に自動化することができる。
【0047】
好ましくは、少なくとも1つの第1の断熱要素および/または少なくとも1つの第2の断熱要素は、細長い。
【0048】
そのような細長い断熱要素は、特に製造が容易であり、断熱要素の表面に比べて特に大きい断熱体積を有することができる。これにより、材料を節約することができる。さらに、細長い断熱要素は、着用者/使用者にとって特に好ましい。なぜなら、それらは心地良くない隅または縁部を備えず、顕著な膨出部または尖頭部を有さずに着用者の身体表面に平坦に位置することができるからである。
【0049】
一般に、断熱要素は、限定はしないが、湾曲要素、例えば、円形、長円形、楕円形、またはそれらの一部、長方形、三角形、不規則形状、管、自由幾何形状、および/またはそれらの組合せを含む断面を有することがある。
【0050】
好ましくは、衣服が着用されるときに、少なくとも1つの第1の断熱要素および少なくとも1つの第2の断熱要素が、実質的に水平に配置される。
【0051】
この向きは、特に衣服の場合、充填材料(下記参照)が重力により下方向に移動する可能性をなくすことができる。そのような下方向への移動は、断熱構造の断熱要素内部での充填材料の一様でない分布をもたらすことがあり、したがって、断熱要素の上側部分で不十分な断熱をもたらすことがある。
【0052】
さらなる好ましい可能性は、少なくとも1つの第1の断熱要素と少なくとも1つの第2の断熱要素とが、衣服内にV字形で配置されることである。
【0053】
これは、例えば第1の断熱要素および/または第2の断熱要素内での充填材料の一様な分布をさらに改良することができる。なぜなら、V字形で配置されたそのような断熱要素は、身体軸に垂直な方向でのある程度の固定を保証することもできるからである。これに関して、「V」字形は、それにも関わらず、例えば重力による悪影響を大幅に回避するのに十分に平坦に選択することができる。
【0054】
特に好ましくは、少なくとも1つの第1の断熱要素および/または少なくとも1つの第2の断熱要素は、互いに並べて交互に配置される。特に、すべての第1の断熱要素と第2の断熱要素が、互いに並べて交互に配置されることがある。しかし、これが、一部の第1および/または第2の断熱要素のみに適用されることもあることを再度強調しておく。
【0055】
この構成は、接続領域、例えばシームが、第1の断熱要素の各側に向けて、対応する隣接する第2の断熱要素によって封止され、したがって断熱が特に良好であることを保証する。また、第1の断熱要素と第2の断熱要素の対称的な配置は、大きな凹凸が生じないので、着心地の良さに特に有利となり得る。
【0056】
さらに、断熱構造が、少なくとも1つのカバー層を備え、カバー層が、断熱構造の内側および/または外側に配置されることが想定可能である。
【0057】
そのようなカバー層は、例えば内側に配置されたフリースまたはウール層などによって、着心地の向上など様々なさらなる機能に役立つことがある。外側に配置されるカバー層は、例えば、水、汚れ、霧、または風の進入を防止し、断熱をさらに改良することができる。これらは、そのような層を使用することができる方法のいくつかの有利な可能性にすぎない。当業者は、自らの知識から、さらなる代替形態を導き出すことができる。
【0058】
限定はしないが、本発明による断熱構造の実施形態を有するアウトドアジャケット、ベスト、断熱パンツ、帽子、ミトン、手袋などを含む衣服が、本発明のさらなる態様を成す。
【0059】
本発明による断熱構造により、そのような衣服は、製造が容易であり、それにも関わらず優れた断熱性を提供し、これは、特にアウトドア分野において、着心地、体積、重量、または他の重要な特性を過度には損なわない。
【0060】
ここで、本発明は、要件が満たされるように断熱構造を利用するために、本明細書で述べる設計特徴およびオプションのいくつかが組み合わされた断熱構造および衣服の実施形態を含むことも明記しておく。これに関して、目的を実現するために必要でないと考えられることを前提として個々の態様を無視することもでき、それでも、そのような実施形態を本発明の一部とみなすことができないわけではない。
【0061】
本発明の現在好ましい例および実施形態を、以下の図面を参照しながら以下の詳細な説明で述べる。
【図面の簡単な説明】
【0062】
図1a】従来の断熱用の構造、および既知の構造に基づくアウトドアジャケットの熱画像を示す図である。
図1b】従来の断熱用の構造、および既知の構造に基づくアウトドアジャケットの熱画像を示す図である。
図1c】従来の断熱用の構造、および既知の構造に基づくアウトドアジャケットの熱画像を示す図である。
図1d】従来の断熱用の構造、および既知の構造に基づくアウトドアジャケットの熱画像を示す図である。
図2a】断熱要素を備える本発明による断熱構造の実施形態を示す図である。
図2b】断熱要素を備える本発明による断熱構造の実施形態を示す図である。
図2c】断熱要素を備える本発明による断熱構造の実施形態を示す図である。
図3a】本発明による断熱構造のさらなる実施形態を示す図である。
図3b】本発明による断熱構造のさらなる実施形態を示す図である。
図3c】本発明による断熱構造のさらなる実施形態を示す図である。
図3d】本発明による断熱構造のさらなる実施形態を示す図である。
図4】本発明による断熱構造の実施形態を示す図である。
図5a】外層および内層を有する本発明による断熱構造の実施形態、ならびに可能な製造方法の略図を示す図である。
図5b】外層および内層を有する本発明による断熱構造の実施形態、ならびに可能な製造方法の略図を示す図である。
図6a】本発明による断熱構造の一実施形態を備える本発明によるアウトドアジャケットの一実施形態を示す図である。
図6b】本発明による断熱構造の一実施形態を備える本発明によるアウトドアジャケットの一実施形態を示す図である。
図6c】本発明による断熱構造の一実施形態を備える本発明によるアウトドアジャケットの一実施形態を示す図である。
図6d】本発明による断熱構造の一実施形態を備える本発明によるアウトドアジャケットの一実施形態を示す図である。
図6e】本発明による断熱構造の一実施形態を備える本発明によるアウトドアジャケットの一実施形態を示す図である。
図7図6a〜eに示されるアウトドアジャケットの実施形態の熱画像を示す図である。
図8a】本発明による断熱構造の一実施形態を備える本発明によるアウトドアジャケットのさらなる実施形態を示す図である。
図8b】本発明による断熱構造の一実施形態を備える本発明によるアウトドアジャケットのさらなる実施形態を示す図である。
図9a】第1の断熱要素と第2の断熱要素が異なる初期向きを備える、本発明による断熱構造の実施形態を示す図である。
図9b】第1の断熱要素と第2の断熱要素が異なる初期向きを備える、本発明による断熱構造の実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0063】
図1aは、従来技術から知られている「H形構造」で組み立てられた断熱構造の一例100を示す。区画103が、2つの材料層101と102の間に縫製されている。ここで、2つの材料層101と102と区画103とによって形成される立方形キャビティまたはチャンバ105は通常、断熱構造100の断熱性を高めるためにダウンなどの断熱材料を充填される。
【0064】
図1bは、図1aに示される例100に対する従来技術から知られている代替構成120を示す。代替構成120が例100と異なるのは、区画123が、区画103とは異なり、材料層101および102に対して直角には取り付けられない点である。したがって、キャビティ125の断面は、台形、または台形に似た形状である。
【0065】
図1cは、従来技術から知られている断熱構造のさらなる例140を示す。2つの材料層141と142は、特定の間隔で、平行なシーム143によって互いに直接接続される。したがって、キャビティまたはチャンバ145が形成され、これらのキャビティまたはチャンバ145は通常、ダウンなどの断熱材料を充填される。矢印150によって示されるように、熱損失領域がシーム143の近位に作成される。この熱損失は、一部には、断熱の目的を果たす断熱材料がこれらの領域内にほとんどまたは全く存在しないことによる。
【0066】
これは、図1dによってさらに示されており、図1dは、図1cに示される原理に従って構成された断熱構造を有するジャケット160の熱画像を示す。図1dで見ることができるように、断熱材料を充填されたチャンバ145が位置される領域内で、熱画像は、約10.5℃までの低い温度を示す。対照的に、シーム143の領域内では、熱画像は、15.5℃までのかなり高い温度を示す。これは、シーム143の領域内での図1cに示される構造の熱損失を示す。
【0067】
図2a〜cは、本発明による断熱構造200の一実施形態を示す。断熱構造200は、例えば、衣服で使用することができる。断熱構造200は、第1の断熱要素210と、第2の断熱要素220とを備える。第2の断熱要素220は、第1の断熱要素210とは異なる初期形状を備え、第1の断熱要素210は、第2の断熱要素220に接続される。断熱構造200を有する衣服が着用されるとき、第2の断熱要素220は、断熱構造200の内側に対する圧力によって変形され、それにより、第1の断熱要素210が第2の断熱要素220に接触する接触領域250が増大される。
【0068】
ここに示される実施形態では、断熱構造200は、複数の第1の断熱要素210と、複数の第2の断熱要素220とを備える。第2の断熱要素220はそれぞれ、第1の断熱要素210とは異なる初期形状を備える。各第1の断熱要素210は、少なくとも1つの第2の断熱要素220に接続される。断熱構造200を有する衣服が着用されるとき、第2の断熱要素220は、断熱構造200の内側に対する圧力によって変形され、それにより、第1の断熱要素210が第2の断熱要素220に接触する接触領域250が増大される。ここに示される有利な場合には、圧力が及ぼされたときに断熱構造200のすべての断熱要素210、220の間に増大された接触領域250が存在し、それにより、接続部230、例えばシーム230が、増大された接触領域250によって封止される。しかしまた、接触領域は、いくつかの第1の断熱要素210と第2の断熱要素220の間でのみ増大され得ることも可能である。
【0069】
第1の断熱要素210が第2の断熱要素220に接触する増大された接触領域250は、特に、断熱構造200を有する衣服が着用されるときに体熱の逃げを減少させることができる(図2b参照)。
【0070】
断熱要素210、220は、例えば、間にキャビティ215、225を形成するシーム230で接合された層212、214から形成することができる。
【0071】
層212、214は、単一の材料から、またはいくつかの実施形態では複数の材料から構成することができる。そのような層212、214の構成に有用な材料は、限定はしないが、ダウンプルーフ布地、例えば、極軽量生地、軽量織布、超軽量布地、軽量布地、通気性布地、織布ポリエステルおよび起毛ポリエステルなどのポリエステル、ナイロン、麻布、コットン、ウール、フリース、シルク、フランネル、細かく編まれたまたは織られた布地、またはそれらの組合せなどを含む。
【0072】
さらに、層212、214は、例えば、ダウンプルーフ処理、化学処理、例えば耐久性に優れた撥水処理などで処理されることがある。
【0073】
好ましくは、第1の断熱要素210と第2の断熱要素220は、それぞれのシーム230によって互いに接続される。好ましくは、断熱構造200を備える衣服を着用したときに断熱構造200の内側への圧力によって作成される増大された接触領域250は、シーム230の近位にあり、それにより、第2の断熱要素220は、衣服が着用されるときに、図2bに示されるようにシーム230に実質的に重なる、またはシーム230を覆う。
【0074】
シーム230は、例えば、キルティングシームでよい。また、シーム230は、当技術分野で知られている構成方法によって形成することもでき、そのような構成方法は、限定はしないが、化学的結合、機械的結合、熱的結合、接着剤、結合テープ、可溶性の糸および/または材料、超音波溶接や高周波溶接などの溶接、ステッチング、例えばブランケットステッチ、チェーンステッチ、クロスステッチ、エンブロイダリステッチ、ガーターステッチ、ロックステッチ、直線ステッチ、ジグザグステッチ、ストレッチステッチ、オーバーロックステッチ、カバーステッチ、トップステッチなど、リベット、熱処理、またはそれらの任意の組合せを含む。さらに、シームまたはシームの一部分がシールを含むことがあり、シールは、特に外部から熱、空気、液体、汚れなどがシーム230を通過するのをより難しくする。いくつかの実施形態では、他のタイプの接続部230もさらに想定可能である。例えば、それぞれの第1の断熱要素210と第2の断熱要素220は、バー、または別の形で設計される接続領域を介して互いに接続されることもある。
【0075】
2つの第1の断熱要素210と2つの第2の断熱要素220とがここで示されているが、3つ以上の任意の数の第1の断熱要素210および/または第2の断熱要素220が想定可能である。また、1つの第1の断熱要素210と1つの第2の断熱要素220のみが存在することもある。しかし、分かりやすくするために、実施形態200の以下の説明では複数形を使用する。
【0076】
第1の断熱要素210は、第2の断熱要素220とは異なる初期形状を有する。図2aおよび図2cに示されるように、断熱要素の初期形状は、無負荷状態、すなわち例えばジャケットの着用者によって断熱構造200に圧力が及ぼされていない状態での断熱要素210、220の形状を表す。
【0077】
さらに、各第1の断熱要素210は、第2の断熱要素220に接続される。特に好ましくは、第1の断熱要素210と第2の断熱要素220は、図2a〜cに示されるように、互いに並べて交互に配置される。これに関して、例えば、ここに示されるように連続的な断熱構造200を提供するために、すべての断熱要素210、220が互いに交互に接続されることが有利となることがある。
【0078】
第2の断熱要素220は、使用中に変形されることがあり、それにより、第1の断熱要素210が第2の断熱要素220に接触する接触領域250が、衣服を着用したときに生成される断熱構造200の内側(図2c参照)に対する圧力によって増大される。図2bは、例えばジャケットまたはベストで使用される場合に、人がジャケットまたはベストを着用しているときの使用中の断熱要素を示す。図2bに示されるように、第1の断熱要素210と第2の断熱要素220の接触は直接行うことができる。
【0079】
しかし、例えば、ジャケットが、断熱構造200の内側に配置されたさらなる内層(図示せず)を備える場合、第1の断熱要素210と第2の断熱要素220の接触は、例えばそれぞれの領域内でのそのような内層の接触によって間接的に行われることもある。
【0080】
前述したように、断熱要素210、220は変形可能である。所与の第2の断熱要素220が、使用中に変形されることがあり、それにより、第2の断熱要素220の一部が、隣接するシーム230またはシーム230の一部を覆う。具体的には、シーム230での熱損失が減少されるように、第2の断熱要素220は、使用中に、隣接するシームに実質的に重なるように構成することができる。例えば、使用者が、第2の断熱要素220を有する衣服を着用したとき、使用者の身体または身体の一部が、第2の断熱要素220に力を及ぼすことがあり、それにより、第2の断熱要素220は、シーム230および/または第1の断熱要素210に対して押圧される。これにより、第2の断熱要素220は、両方の層212、214および充填材料で、隣接するシーム230に重なることができる。
【0081】
接触領域250を増大させるために、第2の断熱要素220は、例えば、図2cに示されるように第1の断熱要素210よりも実質的に厚くすることができる。第1の断熱要素210または第2の断熱要素220の厚さ260または265は、例えば、図2cに示されるように、平面280から測定することができ、平面280は、断熱構造200の内側に実質的に垂直な方向285で、第1の断熱要素210および第2の断熱要素220、ならびにシーム230と交差する。ジャケットが着用されるとき、第2の断熱要素220の表面は、好ましくは着用者の身体表面と接触し、使用中に引き起こされる断熱構造200の内側に対する圧力によって変形される。前述したように、この状況は図2bに示されている。いくつかの実施形態では、第1の断熱要素210も変形を受けることがある。第1の断熱要素210が第2の断熱要素220に接触するこれらの増大された接触領域250は、特に体熱の逃げを減少させることができる。
【0082】
さらに、断熱構造200の断面において、第2の断熱要素220の内面に沿った第1の円弧224は、第2の断熱要素220の外面に沿った断面での第2の円弧222の長さBよりも長い長さAを有する。内面と外面は、例えば、上述した平面280によって画定することができる。
【0083】
第1の円弧224の長さと第2の円弧222の長さとの比、すなわち長さAと長さBとの比は、約1.2:1〜3:1の範囲内、好ましくは1.4:1〜2:1の範囲内、特に好ましくは1.45:1〜1.55:1の範囲内でよい。例えば、第1の円弧224の長さAと第2の円弧222の長さBとの比、すなわちA:Bは、約1.5:1でよい。
【0084】
図2cにも示されるように、第2の断熱要素220の高さDは、例えば平面280に沿って測定することができる。高さDは、特に、第2の断熱要素220に隣接する2つのシーム230の間で測定することができる。第1の円弧224の長さAは、第2の断熱材料220の高さDよりも長いことがある。
【0085】
いくつかの実施形態では、第1の円弧224の長さAと第2の断熱要素220の高さDとの比、すなわちA:Dは、1.2:1〜3:1の範囲内、好ましくは1.3:1〜2.5:1の範囲内、特に好ましくは1.4:1〜2.1:1の範囲内でよい。例えば、第1の円弧224の長さAと第2の断熱要素220の高さDとの比、すなわちA:Dは、約2.0でよい。
【0086】
既に前述したように、値A:BまたはA:Dに関するこれらの範囲は、好ましくは、すべての第2の断熱要素220に適用されることがある。しかしまた、それらが一部の第2の断熱要素220のみに適用されることも想定可能である。
【0087】
さらに、比A:BおよびA:Dは、好ましくは、上述した好ましい範囲内にどちらも同時に位置することがある。しかしまた、一方の比、例えば比A:Bのみが好ましい範囲内にあり、他方の比、この例ではA:Dが好ましい範囲内にないこと、またはその逆も可能となり得る。
【0088】
図2a〜cに示される実施形態200では、第1の断熱要素210および第2の断熱要素220は細長い。これに関して、断熱要素210、220は、高さ(例えば平面280に沿ってそれぞれの隣接するシーム230の間で測定される断熱要素210、220の高さDなど)よりも実質的に長い長さにわたって延在しているときに細長いと称する。
【0089】
いくつかの実施形態では、第1の断熱要素210および第2の断熱要素220は、変数の中でもとりわけ、層212、214で使用される材料、各断熱要素210、220を構成するために使用される材料の量、充填材料、充填材料の体積および重量、ステッチング、または断熱要素210、220で使用される他の構造デバイスに一部依存する断面を有する。一般に、断熱要素210、220は、限定はしないが、湾曲要素、例えば、円形、長円形、楕円形、またはそれらの一部、長方形、三角形、不規則形状、管、自由幾何形状、および/またはそれらの組合せを含む断面を有することがある。例えば、図2a〜cに示されるように、断熱要素210、220の断面は実質的に湾曲している。いくつかの例では、断熱要素の断面は、実質的に長円形または楕円形である。例えば、断熱要素210および220の製造によりシームなどが存在することがあり、それにより、断熱要素210、220は、円形または長円形など厳密に規則的な形状からずれる。断熱要素のさらなる可能な実施形態は、以下にさらに述べる。
【0090】
第1の断熱要素210は、チャンバまたはキャビティ215を画定することがあり、第2の断熱要素220は、チャンバまたはキャビティ225を画定することがある。
【0091】
第1の断熱要素210および/または第2の断熱要素220は、好ましくは、充填材料または断熱材料を備える。これは、チャンバ215または225内に配置されることがある。チャンバ215または225は、例えば、そのような充填材料によって充填されることがある。充填材料または断熱材料は、限定はしないが、天然繊維、例えばウールなどの動物繊維、植物繊維、または羽、特にダウン、合成繊維、例えばポリエステル繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維、ポリエチレンテレフタレートとポリプロピレンの混合繊維、ポリエチレンテレフタレート−ポリエチレンイソフタレートコポリマー繊維、アクリル繊維、およびそれらの混合繊維、合成マイクロファイバ断熱材、合成マイクロファイバとマクロファイバとの混合、および/またはそれらの組合せ、例えば天然充填材料と合成充填材料との混合を含む。
【0092】
合成繊維は、例えば湿潤状態で良好な断熱特性を提供し、ここでは充填または断熱材料として想定可能である。対照的に、乾燥状態では、ダウンが、非常に良好な断熱特性を備えると共に、非常に軽量である。そのような材料の混合も想定可能である。空気、ゲル、発泡材料、液体、ガス、または固体、例えば微粒が、充填材料としてさらに想定可能である。
【0093】
熱の対流を減少させるために排気されたキャビティも、原理的には想定可能である。さらに、それぞれの充填材料の充填量および/または充填密度は、第1の断熱要素210と第2の断熱要素220とで変えることができる。また、個々の第1の断熱要素210の充填量および/または充填密度が異なること、および/または個々の第2の断熱要素220の充填量および/または充填密度が異なることも可能である。最後に、充填量および/または充填密度は、単一の断熱要素210または220の内部で不均一に提供することもできる。
【0094】
第2の断熱要素220は、第1の断熱要素210よりもかなり多くの充填材料を有することができる。いくつかの例では、例えば、第2の断熱要素220内の充填材料の重量と第1の断熱要素210内の充填材料の重量との比は、1.3:1〜4:1の範囲内、好ましくは1.4:1〜3:1の範囲内、特に好ましくは1.45:1〜2:1の範囲内でよい。例えば、断熱構造200は、第1の断熱要素210に対する第2の断熱要素220内の充填材料の重量の比が約1.5でよい。ここでもまた、これは、すべての第1の断熱要素210および第2の断熱要素220に適用されることも、それらの一部のみに適用されることもある。
【0095】
さらに、第1の断熱要素210内の充填材料の重量に対する第2の断熱要素220内の充填材料の重量の比を考慮するのではなく、既に上述したように、第1の断熱要素210内の充填材料の体積に対する第2の断熱要素220内の充填材料の体積の比を考慮することもでき、充填体積のこの比に関して、例えば、充填重量に関して上述したのと同じ好ましい比を適用することができる。
【0096】
第1の断熱要素210および/または第2の断熱要素220、またはそれらの一部は、好ましくは、既に上述したように細長い形態で提供することができる。
【0097】
さらに、細長い部材である断熱要素は、限定はしないが、円形、長円形、長方形、三角形、またはそれらの組合せを含む任意の断面幾何形状を有していてよく、長手方向でのその広がりは、断熱要素の幅または高さよりもかなり大きい。
【0098】
好ましくは、第1の断熱要素210および第2の断熱要素220、またはそれらのいくつかは、衣服が着用されるときに実質的に水平に配置される。これは、特に衣服での適用の場合には、充填材料が重力により下方向に移動する可能性をなくすことができる。そのような下方向への移動は、断熱構造200の断熱要素210および220の内部での充填材料の一様でない分布をもたらすことがあり、したがって、より高い領域内で不十分な断熱をもたらすことがある。さらなる好ましい可能性は、第1の断熱要素210および第2の断熱要素220のいくつかまたはすべてがV字形で衣服内に配置されることである。これは、例えば、第1の断熱要素210および/または第2の断熱要素220内での充填材料の一様な分布をさらに改良することができる。なぜなら、V字形で配置されたそのような断熱要素210、220は、例えば水平方向で、身体軸に垂直な方向でのある程度の固定を保証することもできるからである。したがって、V字形は、それにも関わらず、十分に平坦に選択することができ、それにより、例えば重力による悪影響を大幅に回避することができる。
【0099】
また、衣服内部で、いくつかの第1の断熱要素210および/または第2の断熱要素220が実質的に水平に配置され、いくつかの第1の断熱要素210および/または第2の断熱要素220がV字形に配置されることも可能である。
【0100】
さらなる設計オプションとして、断熱構造200が、断熱構造200の内側または外側に配置されることがある少なくとも1つのカバー層(図示せず)を備えることができることにも言及しておく。これは、例えば内側ライニングでよく、この内側ライニングは、着心地を良くし、断熱性をさらに高める。さらに、撥水、汚れ防止、防風などの目的を果たす外層も考えられる。これに関して、カバー層は、例えば以下の材料の1つまたは複数を備えることができる。天然素材および/または合成素材からなる横編み、緯編み、および/または織布テキスタイル。さらに、テキスタイルは、耐久性に優れた撥水剤(例えば、DWR)で処理することもできる。
【0101】
本発明による断熱構造のさらなる現在好ましい実施形態を以下に論じる。しかし、繰返しを避けるために、図2a〜cに関連付けて上述した実施形態200との相違点のみを詳細に考察する。残りに関しては、実施形態200および言及した設計可能性に関して成された記載が、適用可能であれば、すべての後続の実施形態にも当てはまる。
【0102】
さらに、それぞれの断熱構造を通る断面のみが、簡略化した例示の目的で図3a〜d、図4図5a〜b、および図9a〜bに示されていることを指摘しておく。これは、断熱構造が、図の平面内および平面外にさらに延びていることがあることを意味する。
【0103】
図3a〜dは、本発明による断熱構造300a、300b、300c、300dのさらなる可能な実施形態を示し、これらの断熱構造は、主に、第1および/または第2の断熱要素の設計および構成に関して、またはより正確にはそれらの初期形状に関して断熱構造200とは異なる。シームなどを封止するための上述した機能は、実質的に同じままである。
【0104】
例えば、図3aは、本発明による断熱構造300aの一実施形態を示し、断熱構造300aは、複数の第1の断熱要素310aと、複数の第2の断熱要素320aとを備える。ここで、第1の断熱要素310aおよび第2の断熱要素320aは、実質的に長方形の断面を備える。これにより、特に、図3で見ることができるように、着用者によって生成される圧力がないときでさえ、第1の断熱要素310aと第2の断熱要素320aを互いに密接に位置させることができ、それにより、断熱構造300aが、独自に特に良好な断熱特性を備える。図3aにおいても、第2の断熱要素320aは、着用によって生成される圧力がないときには、断熱構造300aの内側(図3aでは上)に垂直な方向で第1の断熱要素310aよりも厚い。これにより、着用中に生成される断熱構造300aの内側に対する圧力によって、第2の断熱要素320aが変形され、それにより、第1の断熱要素310aが第2の断熱要素320aに接触する接触領域が拡大される。
【0105】
同様のことが、断熱要素の初期形状、特に断面形状を除いて、図3bおよび図3cに示される本発明による断熱構造300bおよび300cの実施形態にも当てはまる。断熱構造300bでは、第1の断熱要素310bは、本質的に管状であり、第2の断熱要素320bは断面が長方形であるが、図3cに示される断熱構造300cでは状況が逆である。ここでは、第1の断熱要素310cは断面が長方形断面であり、第2の断熱要素320cは管状に提供される。第2の断熱要素320b、320cは、それぞれ、断熱構造300b、300cの内側(図では上)に垂直な方向で第1の断熱要素310b、310cよりも厚い。
【0106】
最後に、図3dに示される断熱構造300dの実施形態は、第1の断熱要素310dと第2の断熱要素320dが、互いに並んで交互に配置される必要が必ずしもないことを明確に示す。図3dに示されるように、第1の断熱要素310dは、第2の断熱要素320dに、および/またはいくつかの例では別の第1の断熱要素310dに接続することができる。さらに、要素330dは、断熱構造300d内の様々な点に位置決めすることができる。要素330dは、特定の衣服に関する要件に特有の機能を提供することが可能な構造を含むことがある。例えば、要素330dは、通気性および/または換気を提供し、ワイヤやケーブルなど材料の通過を可能にし、および/または断熱を提供するように構成することができる。また、そのようなさらなる要素は、明示的には示していない場合でさえ、本明細書で述べる本発明による断熱構造の他の実施形態の一部となり得る。
【0107】
しかし、第1の断熱要素と第2の断熱要素の交互の配置および接続が望ましいことがある。なぜなら、これは、第1の断熱要素と第2の断熱要素の間のできるだけ多くのシームまたは接続領域を、圧力が及ぼされる場合に拡大される接触領域によって封止できるようにするからである。さらに、反復的な配置は、着心地を良くすることができる。
【0108】
第1、第2、および適用可能であればさらなる要素の可能な組合せおよび配置のすべてをここに示すことはできないことは当業者に明らかである。しかし、それらの組合せおよび配置は、当業者には、自らの知識から想定可能であり、そのような実施形態も本発明の一部である。
【0109】
図4は、断熱構造400のさらなる好ましい実施形態を示す。断熱構造400は、層412および414を含む。図4に示されるように、層412は、単一部片または布地を含むことがある。層414は、シーム430によって層412に結合させることができる。図4に示されるように、シーム430は、結合テープ440、およびステッチ450を含む。さらに、シーム430は、本明細書で述べるような構成方法の組合せを含むこともできる。
【0110】
図4に示されるように、第1の断熱要素410は、第2の断熱要素420とは異なる初期形状を有する。いくつかの実施形態では、第2の断熱要素420の円弧424の長さA’は、第1の断熱要素410の円弧422の長さB’よりも長いことがある。
【0111】
さらに、第2の断熱要素420の円弧424の長さA’と第2の断熱要素420の高さEとの比、すなわち長さA’と高さEとの比は、1.2:1〜3:1の範囲内、好ましくは1.3:1〜2.5:1の範囲内、特に好ましくは1.4:1〜2.1:1の範囲内でよい。例えば、円弧424の長さA’と第2の断熱要素420の高さEとの比、すなわちA’:Eは、約1.5でよい。
【0112】
さらなる実施形態では、層412は、一体に結合された複数部片の材料から構成されることがある。使用される材料の部片は、材料の特定の性質または特性で選択することができる。
【0113】
図5a〜bは、本発明による断熱構造500および製造方法550の好ましい実施形態を示す。断熱構造500は、例えば、断熱構造の前述の実施形態の1つ、特に断熱構造200でよい。
【0114】
断熱構造500は、1つまたは複数の第1の断熱要素510と、1つまたは複数の第2の断熱要素520とを備える。例示を簡略化するために、それぞれ1つのみ示す。第1の断熱要素510の少なくとも1つは、内層511と外層512を備え、これらがキャビティ515を画定する。また、第2の断熱要素520の少なくとも1つは、内層521と外層522を備え、これらがキャビティ525を画定する。好ましくは、第1の断熱要素510および第2の断熱要素520はすべて、キャビティ515、525を画定するそれぞれの内層511、521と外層512、522を備える。
【0115】
第1の断熱要素510の内層511の表面積(ここでも、分かりやすくするために以下では複数形を使用する)は、第2の断熱要素520の内層521の表面積よりも小さい。
【0116】
さらに、図5a〜bに示される実施形態では、第1の断熱要素510の内層511の表面積は、第1の断熱要素510の外層512の表面積と実質的に等しいサイズである。対照的に、第2の断熱要素520の内層521の表面積は、第2の断熱要素520の外層522の表面積よりも大きい。
【0117】
この構成により、場合によってはキャビティ515および525の充填後に、第2の断熱要素520が、図5a〜bに示されるように、内側に垂直な方向で第1の断熱要素510よりも大きい厚さを有する。
【0118】
これに関して、図5a〜bに示されるように、第1の断熱要素510および第2の断熱要素520の内層511および521は、特に好ましくは、一体部片として接合して提供される。このようにして、一様な内層を実現することができる。さらに、第1の断熱要素510および第2の断熱要素520の外層512および522も、特に好ましくは、一体部片として接合して提供される。このようにして、一様な外層も実現することができる。内層と外層がどちらも一体部片として提供される場合、これは、断熱構造500の安定性、ならびに断熱、防水、および汚れ防止特性などを改良することができる。さらに、製造を単純化する、および/またはコストを削減することができる。
【0119】
さらに、ここで示される実施形態においても、断熱構造500の断面において、第2の断熱要素520の内面521に沿った第1の円弧534は、第2の断熱要素520の外面522に沿った断面での第2の円弧532の長さbよりも長い長さaを有する。内面および外面は、例えば、第1の断熱要素510および第2の断熱要素520、ならびに存在する場合にはシーム571、572、573に交差する、図5a〜bに示される平面590によって画定することができる。
【0120】
第1の円弧534の長さと第2の円弧532の長さとの比、すなわち長さaと長さbとの比は、約1.2:1〜3:1の範囲内、好ましくは1.4:1〜2:1の範囲内、特に好ましくは1.45:1〜1.55:1の範囲内でよい。例えば、第1の円弧534の長さaと第2の円弧532の長さbとの比、すなわちa:bは、約1.5:1でよい。
【0121】
図5aにも示されるように、第2の断熱要素520の高さdは、例えば平面590に沿って測定することができる。高さdは、特に、第2の断熱要素520に隣接する2つのシーム572、573の間で測定することができる。第1の円弧534の長さaは、第2の断熱材料520の高さdよりも長いことがある。
【0122】
いくつかの実施形態では、第1の円弧534の長さaと第2の断熱要素520の高さdとの比、すなわちa:dは、1.2:1〜3:1の範囲内、好ましくは1.3:1〜2.5:1の範囲内、特に好ましくは1.4:1〜2.1:1の範囲内でよい。例えば、第1の円弧534の長さaと第2の断熱要素520の高さdとの比、すなわちa:dは、約2.0でよい。
【0123】
断熱構造500に関する可能な製造方法550が、例えば図5bに示されている。一体部片として提供される内層560、および一体部片として提供される外層565は、例えば、矢印580および585によって示唆される可変速度で、裁縫台570に供給することができ、裁縫台570が、内層560と外層565を一体に縫い合わせる。ここで、第1の断熱要素510および第2の断熱要素520をV字形に製造するために、例えば、図の平面に垂直な方向に延びるV字形のシームも形成することができる。ここで、第1の断熱要素510を製造するために、内層560と外層565は、縫製される第1の断熱要素510を画定する2つのシーム571と572の間で、それぞれ同じ速度580および585で裁縫台570に供給することができる。これにより、内層560および外層565の断面511および512の表面積は、同じサイズを与えられる。対照的に、第2の断熱要素520を製造するために、内層560は、縫製される第2の断熱要素520を画定する2つのシーム572と573の間で、外層565よりも高い速度580で裁縫台570に供給することができる。これにより、内層560の断面521の表面積は、外層565の断面522の表面積よりも大きく形成される。裁縫台570を通過した後、キャビティ515および/または525に、場合によっては充填または断熱材料を充填することができ、必要であれば、第1の断熱要素510と第2の断熱要素520を、それらの端部で一体に縫い合わせることができる。
【0124】
本明細書で述べる構成は、断熱構造を利用する衣服を機械によって組み立てることを可能にすることができ、または、衣服の少なくとも一部を機械によって組み立てることができる。
【0125】
本明細書で述べる断熱構造を、衣服を形成するために従来の構造と組み合わせることもできる。断熱構造200、300a〜d、400、500、900a〜bは、場合によっては従来の構造100と組み合わせて、熱損失を最も受けやすい使用者の部位に対応して位置決めすることができる。これらの断熱構造は、さらに、追加の通気性、移動性、着心地、自然の力(すなわち、風、雨、湿気など)からの保護、および/または有用性を実現するように設計された構造と組み合わせることができる。
【0126】
限定はしないが、本発明による断熱構造200、300a〜d、400、500、900a〜dの実施形態を有するジャケット、ベスト、断熱パンツ、帽子、ミトン、手袋などを含む衣服が、本発明のさらなる態様を成す。
【0127】
図6a〜eは、本発明による断熱構造の一実施形態を備えるジャケット600の一実施形態を示す。各場合に、ジャケット600の内側が示されている。
【0128】
複数の第1の断熱要素610および複数の第2の断熱要素620が見える。これに関して、第1の断熱要素610および第2の断熱要素620のいくつかが、V字形を有する。ここで、断熱要素610および620は、充填材料、例えばダウンまたは合成繊維材料を充填される。さらに、図面、特に図6c〜eから、ジャケット600が着用されていないとき、すなわち着用者によって内側に及ぼされる圧力がないとき、第2の断熱要素620が、それぞれジャケット600または断熱構造の内面に垂直な方向で第1の断熱要素610よりも大きい厚さを有することが分かる。ここで、厚さの比は、約3:1である。
【0129】
第1の断熱要素610および第2の断熱要素620は、主に、着用者の身体の胴体部の周りに配置される。なぜなら、身体のこの部分は、場合によっては多量の熱損失を生じ得るからである。他方、例えばリュックサックによって覆われていることがあり、汗をかきやすい領域であり得る肩および首の領域では、ここに示されるように、異なる、より通気性の高い材料630を配置することができる。
【0130】
図7は、図1dにおける従来のジャケット160の熱画像と同じ環境条件で撮影されたジャケット600の熱画像を示す。図7の画像から、下側後部領域700(その内側は図6a〜eで見ることができる)で、特にまた、ジャケット600のシームが位置された領域710で、約10°未満の温度が常に測定されたことが明瞭に分かる。したがって、ジャケット600は、従来のジャケット160よりもかなり少ない熱孔を有する。熱孔の明らかな減少は、やはり本発明による断熱構造が位置されているジャケット600の腕の領域でも検出することができる。
【0131】
他方、通気性の高い材料630の領域750では、はるかに顕著な体熱の損失が見られる。
【0132】
図8a〜bは、本発明による断熱構造の一実施形態を備えるジャケット800の別の実施形態を示す。ジャケットは、互いに並べて交互に配置された複数の第1の断熱要素810と複数の第2の断熱要素820とを備える。第1の断熱要素810および第2の断熱要素820は細長く、着用者の胴体の左右の半分に水平に配置される。ジャケット800の後部の中央には、V字形で提供されたさらなる断熱要素830が配置される。これらの断熱要素830は、熱孔の本発明による「封止」効果を提供しても、提供しなくてもよい。
【0133】
また、ジャケットは、本発明による断熱構造を有するジャケット800の外側に配置された外側カバー層850、例えば撥水性の外側カバー層850を備える。外層850は、デザインの面での目的を果たすこともできる。
【0134】
例えば、ここで示される場合には、ジャケット800の袖には本発明による第1の断熱要素810および第2の断熱要素820が配置されていないが、本発明のジャケットの他の好ましい実施形態では、袖も、それらの領域にある熱孔を封止する本発明による機能を提供する第1および第2の断熱要素を含む。
【0135】
最後に、図9a〜bは、本発明による断熱構造900aおよび900bのさらなる想定可能な実施形態を示す。これらの断熱構造900aおよび900bに関して特別な点は、第1の断熱要素910aまたは910bと第2の断熱要素920aまたは920bとがそれぞれ同じ初期形状を有するが、それらの初期向きが異なることである。そのような実施形態も、既に上で説明したように、用語「異なる初期形状」によって網羅される。特に、第1の断熱要素910aまたは910bと第2の断熱要素920aまたは920bとは、それぞれ異なる断面向きを有する。
【0136】
形状および向きは、ここでもまた、無負荷状態で、すなわち圧力が及ぼされていないときに断熱要素910a、910bおよび920a、920bが有する初期形状または初期向きとみなされる。
【0137】
これに関して、図9a〜bで破線によって示唆されるように、断熱構造900aにおいて、ここでは長円(断面)形状で示される第1の断熱要素910aは、やはりここでは長円形状で示される第2の断熱要素920aに対して、それらの断面に関して約85°だけ回転される。対照的に、断熱構造900bでは、ここでは長方形状で示される第1の断熱要素910bは、やはりここでは長方形状で示される第2の断熱要素920aに対して、それらの断面に関して約90°だけ回転される。例えば80°〜100°の範囲内の他の回転角度も想定可能である。
【符号の説明】
【0138】
100 断熱構造
101 材料層
102 材料層
103 区画
105 キャビティ
120 代替構成
123 区画
125 キャビティ
140 断熱構造
141 材料層
142 材料層
143 シーム
145 キャビティ、チャンバ
160 ジャケット
200 断熱構造
210 第1の断熱要素
212 層
214 層
215 キャビティ
220 第2の断熱要素
225 キャビティ
230 シーム
250 接触領域
300a〜d 断熱構造
310a〜d 第1の断熱要素
320a〜d 第2の断熱要素
330d 要素
400 断熱構造
410 第1の断熱要素
412 層
414 層
420 第2の断熱要素
430 シーム
440 結合テープ
450 ステッチ
500 断熱構造
510 第1の断熱要素
511 内層
512 外層
515 キャビティ
521 内層
522 外層
525 キャビティ
560 内層
565 外層
571 シーム
572 シーム
573 シーム
600 ジャケット
610 第1の断熱要素
620 第2の断熱要素
630 より通気性の高い材料
700 下側後部領域
800 ジャケット
810 第1の断熱要素
820 第2の断熱要素
830 さらなる断熱要素
850 外側カバー層
900a、b 断熱構造
910a、b 第1の断熱要素
920a、b 第2の断熱要素
図1a
図1b
図1c
図1d
図2a
図2b
図2c
図3a
図3b
図3c
図3d
図4
図5a
図5b
図6a
図6b
図6c
図6d
図6e
図7
図8a
図8b
図9a
図9b
【外国語明細書】
2015134976000001.pdf