特開2015-135013(P2015-135013A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-135013(P2015-135013A)
(43)【公開日】2015年7月27日
(54)【発明の名称】耐火被覆構造
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/94 20060101AFI20150701BHJP
【FI】
   E04B1/94 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-6921(P2014-6921)
(22)【出願日】2014年1月17日
(71)【出願人】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000110804
【氏名又は名称】ニチアス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001151
【氏名又は名称】あいわ特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】鹿毛 俊彦
(72)【発明者】
【氏名】若山 恵英
(72)【発明者】
【氏名】碇屋 雅之
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 晴夫
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 将
(72)【発明者】
【氏名】山脇 翔太
(72)【発明者】
【氏名】山脇 慎平
(72)【発明者】
【氏名】清水 玄宏
【テーマコード(参考)】
2E001
【Fターム(参考)】
2E001DE01
2E001FA01
2E001FA02
2E001GA22
2E001GA23
2E001GA28
2E001GA42
2E001HA32
2E001HA34
2E001HB04
2E001HD11
2E001HF12
2E001KA01
2E001LA05
(57)【要約】
【課題】建物構造体の表面を耐火性があり、かつ、自己発塵性の低い構造とする。
【解決手段】建物構造体の表面に耐火被覆材を備えた耐火被覆構造とする。
耐火被覆材は、耐火層と飛散防止層で構成される。さらに、飛散防止層は耐火層の少なくとも片面に外面側から、熱可塑性樹脂フィルム、アルミニウム箔、及び不織布がこの順で積層された構成である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物構造体の表面に耐火被覆材を備えた耐火被覆構造であって、
前記耐火被覆材は、耐火層と、前記耐火層の少なくとも片面に外面側から、熱可塑性樹脂フィルム、アルミニウム箔、及び不織布の順で積層された飛散防止層で構成されることを特徴とする耐火被覆構造。
【請求項2】
前記熱可塑性樹脂フィルムは、前記アルミニウム箔の略全周囲位置にて当該アルミニウム箔と溶着されるか、或いは、前記耐火層と前記不織布、前記アルミニウム箔を一体として包含し、当該熱可塑性樹脂フィルム同士が溶着されることを特徴とする請求項1に記載の耐火被覆構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物構造物の耐火被覆構造に関する。詳しくは、建物内部の柱・梁に対して、耐火性能と非自己発塵性を有する巻き付け耐火被覆構造に関する。
【背景技術】
【0002】
耐火建築物内に設計されるクリーンルーム(クリーンルーム構造体)では、建物構造物としての耐火性と共に内部空間をISOレベル基準値に適合した清浄度に維持する必要がある。
すなわち、まず、柱や梁が鉄骨である建築物では、鉄骨が350〜500℃以上で軟化し、建物の荷重によって床が落ちたり、鉄骨が曲がって倒壊するおそれがあるので、対策の一つとして、柱や梁にロックウールを吹き付けたり、ロックウールフェルトなどの面材で表面を覆ったりして建築基準法上の耐火性を達成する場合がある。
なお、本願において「鉄骨」は、H形鋼や断面四角や丸の鋼管で構成される柱や梁あるいは桁を意味する。
【0003】
この目的で、次に例示するように、吹き付け用ロックウール材や張り付け用ロックウール面材が多く提案されている。
特許文献1、2の耐火被覆は岩綿あるいは石綿含有吹付材の吹付によるものであり、後者では、不燃性に優れた樹脂塗膜を形成して石綿を効果的に封じ込め、吹付時及び吹付後に石綿が飛散するのを防止する石綿の封じ込め処理方法が記載されている。
【0004】
特許文献3は、鉄骨に無機繊維を主材としたフェルト材(耐火面材)をピンや接着剤で張り付けることにより耐火処理を行う方法を開示している。この方法は、耐火面材により鉄骨を被覆して耐火性を持たせる基本的な構造を示すものである。
【0005】
特許文献4の耐火被覆材は、耐熱性ロックウールのフェルト表面に不織布やプラスチックフィルム等の可撓性有機質表面材を積層させたもので、取付け作業中に耐火被覆材が裂けたり、ロックウール繊維が脱落するのを防止するものである。
【0006】
特許文献5の耐火被覆構造体は、耐火被覆材と耐火成形体とを組み合わせたものであり、前記の吹付処理と貼り付け処理を組み合わせた構造である。耐火被覆材はロックウールを有機系結合材で固化し、その周囲を無機繊維シートや無機系ボードで囲うことにより、耐火性能が経時的に低下してしまうのを緩和している。
【0007】
特許文献6の耐火被覆材は、無機繊維の飛散を抑制・防止することを目的として、ロックウールフェルトやガラスウールフェルトなどの低密度繊維集合体表面に対して凝固組成物を塗布した後にラテックス組成物を塗布し、加熱乾燥させることを開示している。ラテックスの吹き付けは塵埃を抑制できるが、ガスバリア性が低く、使用環境によっては、ラテックスそのものからアウトガスが発生する可能性もあるため、本課題を解決できない。
【0008】
【特許文献1】特開2003−171987号公報
【特許文献2】特開2010−156150号公報
【特許文献3】特開昭57−197349号公報
【特許文献4】特開平10−102628号公報
【特許文献5】特開2007−332715号公報
【特許文献6】特開2006−247626号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1〜6の技術によれば、ロックウール材の吹き付けやロックウール面材を巻き付けることで、鉄骨梁などの構造体の耐火性能は改善できるものの、建物構造体自体の温度変化や建物構造体に空気流が作用する場合等に、建物構造体表面から噴出する細かな無機質粉塵や有機質粒子(微粒子と総称する。直径0.1μm〜5μm程度)の飛散が懸念される。特に、高い空気清浄度を要求される半導体工場やデータセンター、病院等では、微粒子が飛散すると、製造機器の不良発生率の増加や使用機器の故障、または細菌を拡散させるなどの恐れがある。
【0010】
このような観点から、本発明は、半導体の製造が行われるクリーンルームが対象であり、クリーン度で表現すると1フィート立方中(28.8リットル)に0.5ミクロン以上の微粒子が10以下であるクリーンルームを対象とし、そのようなクリーンルームの建物内部の柱・梁などの建物構造体において、建物構造体自体から噴出する微粒子を抑制すると共に、建物構造体の耐火性能を改善することが可能な耐火被覆構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
建物構造体の表面に耐火被覆材を備えた耐火被覆構造とする。
このとき、耐火被覆材は耐火層と飛散防止層とで構成する。
さらに、飛散防止層は耐火層の少なくとも片面に外面側から、熱可塑性樹脂フィルム、アルミニウム箔、及び不織布の順で積層された構成とする。
また、前記熱可塑性樹脂フィルムは、前記アルミニウム箔の略全周囲位置にて当該アルミニウム箔と溶着される場合と、前記耐火層と前記不織布および前記アルミニウム箔を一体として包含するようにして熱可塑性樹脂フィルム同士を溶着される場合とがある。
【発明の効果】
【0012】
耐火被覆構造の耐火被覆材を耐火層と飛散防止層とで構成し、さらに、飛散防止層を耐火層の少なくとも片面に外面側から、熱可塑性樹脂フィルム、アルミニウム箔、及び不織布の順で積層された構成としたことにより、不織布がロックウールフェルトなど耐火層の表面に接して耐火層を構成する繊維などの振動を抑制し、耐火層から繊維や塵が離脱するのを抑制する。また、アルミニウム箔は金属箔の緻密な構造によって耐火層に起因する微粒子や気体が外部に飛散・拡散をするのを防止する。そして、アルミニウム箔の上面に溶着された熱可塑性樹脂フィルムは、アルミニウム箔の欠損を予防して作業性を向上させることが可能であり、さらに、欠損箇所から侵入する外気が原因の結露等が予防され、耐火層の水分による劣化を防止することができる。これらの機能が総合されてこの発明の耐火被覆材は耐火非自己発塵性の面材となる。
建物構造体の柱や梁等が鉄骨で構成されるクリーンルームなどにおいて建物構造体を前記の耐火被覆材で被覆しておくと、温度変化や振動があっても、壁の内側空間や天井裏空間に微粒子が多量に発生することがなく、これらの空間から微粒子がクリーンルームに侵入する危険を払拭することができる。
また、アルミニウム箔と熱可塑性フィルムの層を有する飛散防止層は、耐火層を構成する、例えばロックウールフェルトの繊維を結合させるために使用する有機接着材や層間の接着に用いる有機接着材等から遊離してくる有機ガス(アウトガス)の飛散も防止する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の第1実施形態に係る耐火被覆材の構造を模式的に示した断面図。
図2】本発明の第2実施形態に係る耐火被覆材の構造を模式的に示した断面図。
図3】従来例1の耐火被覆材の構造を模式的に示した断面図。
図4】従来例2の耐火被覆材の構造を模式的に示した断面図。
図5】鉄骨の独立柱に耐火被覆材を巻き付けた耐火被覆構造を模式的に示した断面図であり、(a)はH型鉄骨柱の場合、(b)は角型鉄骨柱の場合。
図6】本発明の耐火被覆構造をクリーンルーム構造体に用いた場合の正面図。
図7】鉄骨梁に耐火被覆材を箱張りした状態を示した斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1はこの発明による耐火被覆材1(耐火非自己発塵性面材)の断面構造を示したものであり、耐火層2の表面(第1面)に飛散防止層3を備えている。
なお、本明細書で述べる耐火被覆材とは、板状、またはフェルト状の可撓性有機質表面材を積層させたものである。
【0015】
耐火層2は、セラミックファイバーフェルトまたはロックウールフェルトなどの耐火材で形成される。ロックウールフェルトの場合、化学組成がSiO2 38.5%(重量%、以下同じ)、Al23 13.0%、CaO25.5%、MgO 6.2%、FeO 7.6%、Fe23 0.8%、TiO2 1.0%、MnO 0.9%、Na2O 3.8%、K2O 0.8%、その他 1.9%となるように高炉スラグ、転炉スラグ、玄武岩、角閃岩等を配合し、これらの混合物を加熱して溶融させる。ついで、得られた溶融物をローター方式で繊維化後、フェノール樹脂バインダーを吹き付けて集綿、積層し、ついで、加熱してバインダーを硬化させることによりフェルトに形成してある。厚さが40mmの場合嵩密度が80kg/m3である。
そして、面状に成形したロックウールフェルトの表裏をなす第1面と第2面のうち、表の第1面全体に飛散防止層を積層する。ロックウールフェルトの厚さは鉄骨柱や梁の寸法により変化するが標準的な厚さは20〜80mm程度である。
【0016】
飛散防止層3は外面側から熱可塑性樹脂フィルム、アルミニウム箔及び不織布の順で積層する。ポリフィルムの厚さは、1〜100μm、アルミニウム箔の厚さは5〜100μm及び不織布の目付量は10〜50g/m2が好ましい。なお、ロックウールフェルトの第2面が鉄骨柱等に取付ける側である。
【0017】
熱可塑性樹脂フィルム4としては、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリビニルアルコール、ポリアミドフィルム、ポリアクリルフィルム、アイオノマーフィルム、セルロースフィルム、エチレン酢酸ビニル共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、ポリスチレン等であり、厚さは12μmが好ましい。これらのフィルムは柔軟であると共に靱性が高く、破れにくいものが好ましい。
【0018】
アルミニウム箔5は、アルミニウムを極薄い箔に伸ばしたアルミニウム箔、または、アルミフォイルを用いる。アルミニウム箔5は、微粒子の通過を阻止することはもちろん有機ガスの通過も阻止できることを目的としたもので、厚さ5μm〜8μm程度のものが好適である。前記の熱可塑性樹脂フィルム4や不織布6にラミネートした状態で利用することが多い。
不織布6は、ポリエステル繊維を主成分とし、混紡成形したもので目付量12〜30g/m2のものが好ましい。不織布6の素材として他に、ポリエチレン、ポリオレフィン、ポリプロピレンがあるが、いずれにしても前記耐火層2の表面に接触してロックウールフェルトを構成する繊維の先端部が移動したり振動したりするのを抑制できる機能を発揮できるものが好ましい。
【0019】
つぎに、実施例について説明する。
なお、各例において使用する耐火層2としてのロックウールフェルトは、前記の製造例によるものである。%は重量%である。
【0020】
〔実施例1〕(図1
ポリエチレンフィルム(厚さ12μm)/アルミニウム箔(厚さ7μm)/ポリプロピレン系不織布(厚さ0.11mm)/ロックウールフェルト(厚さ20mm、目付量12g/m2)を記載順に積層し、各層間を接着して一体化し、面材として成形した。ロックウールフェルトと飛散防止層3との接着、および飛散防止層3を構成する熱可塑性樹脂フィルム4、アルミニウム箔5、不織布6などによる複数の層を重ねて積層する場合におけるこれら層間の接着には、エチレン共重合体系接着剤を用いた。
【0021】
〔実施例2〕(図2
ポリエチレンフィルム(熱可塑性樹脂フィルム4)の厚さ8μm/アルミニウム箔5の厚さを5μmとし、まず、アルミニウム箔5(厚さ7μm)、ポリプロピレン系不織布6(厚さ0.11mm)及びロックウールフェルト(耐火層2)(厚さ20mm、目付量12g/m2)を記載順に積層し、各層間を接着して一体化した面材とし、これに前記のポリエチレンフィルム(熱可塑性フィルム4)を前記耐火層2と前記不織布6および前記アルミニウム箔を一体として包含するようにして溶着してある。他は実施例1の場合と同じである。
【0022】
〔実施例3〕
ポリエチレンフィルムの厚さを14μm/アルミニウム箔の厚さを8μmとした以外は、実施例1と同じ仕様とした。
【0023】
これら実施例の効果を検証するため比較例を設定した。いずれも市販品である。
〔比較例1〕(図3
厚さ20mm、目付量12g/m2のロックウールフェルト(耐火層2)の表面にポリエチレン・ポリエステル長繊維の不織布(30g/m2)6を積層した市販の耐火被覆材(標準品)。
【0024】
〔比較例2〕(図4
厚さ20mm、目付量12g/m2のロックウールフェルト(耐火層2)の表面に不織布6としてのガラスクロス(JIS R3414 85g/m2)及びその外面にアルミニウム箔5
(厚さ7μm)を積層し、各層間を接着して一体化し、面材として整形した。ロックウールフェルト(耐火層2)とガラスクロス(不織布6)及びアルミニウム箔5間の接着には、エチレン共重合体系接着剤19が用いられている。
【0025】
なお、比較例1,2のロックウールフェルト(耐火層2)は、いずれも850℃加熱で軟化する通常のロックウール市販品(化学組成:SiO2 46.9%、Al23 12.4%、CaO 32.7%、MgO 3.8%、FeO 0.2%、Fe23 0.0%、TiO2 1.1%、MnO0.4%、Na2O 痕跡、K2O 0.6%、その他 1.9%)からなる厚さ40mmのフェルトである。
【0026】
実験は次の環境で行った。
実施例1,2,3及び比較例1,2のそれぞれを長さ2mの鉄骨梁(H−400×200×8×13)の回りに幅1mで直張りし(図5参照)、その鉄骨梁の長手方向両端の端面及びこれらと鉄骨梁表面との間を別途に準備したアルミニウム箔で完全に遮蔽したものを試料とした。なお、直張りで巻き付けた耐火被覆材の谷折り箇所にそれぞれ30cm間隔で配置した4本ずつの固定ピン16を耐火被覆材の外面側から鉄骨梁に向けて打ち込み、先端を鉄骨梁に溶接することで固定し、直張り状態を維持した。
【0027】
次いで、試料を3m3の密閉空間に封入して清浄度のわかっている空気を1m3/分で換気を5分間行い、その換気中に増加した微粒子の数をカウントし、また、アウトガスの量と種類を記録した。アウトガスはガスクロマトグラフ質量分析法(GC‐MS)により定量分析し、放散量[測定単位:μg/m2・h]を求めた。
結果は次のとおりである。
【0028】
〔非発塵性と使用勝手〕
【0029】
【表1】
【0030】
〔アウトガス分析結果〕
各試験体をそれぞれ前記の密閉空間に置き、パーティクルカウンターにより、飛散した粒子を定量し、放散量[測定単位:μg/m2・h]を求めた。
【0031】
耐火被覆材料の空気中放散量結果一覧
【0032】
【表2】

TOC・・・TOTAL Organic Carbon
【0033】
【表3】
【0034】
以上のデータを勘案すると、実施例1,2,3及び比較例2の耐火被覆材が非自己発塵性に優れるといえる。しかし、比較例2の場合は表面のアルミニウム箔が作業中に破れやすく、作業がし辛いとともに、表面に欠損があるとそこから微粒子が飛散するおそれがある。また、実施例2は実施例1に比べて表面のポリフィルムの厚さが薄いので作業中の擦過や引っ張りで破れてしまう恐れがある。実施例1、3は性能に差異はないが、コスト面や耐火性能面で重要となる有機分が少ないことを考慮すると、実施例1が最も優れているといえる。
【0035】
図6は、クリーンルーム構造体7のモデルを示したものであり、耐火認定が必要な鉄骨建て建物の内部に構成されている。符号8は鉄骨柱であり、この実施例において、断面矩形の角型鋼である。鉄骨柱8間はH型鋼の鉄骨梁9で結合されている。鉄骨柱8と鉄骨梁9による建物構造体による内部空間は、表面に非発塵層10を形成したスラブ11の床面と両側の非発塵性の壁材12及び非発塵性の天井材13とで構成され、内部空間が弱正圧に維持され、エアコンないしエアクリーナーが可動中は外気が侵入しないようにされている。
【0036】
図6において、符号14は壁裏空間、符号15は天井チャンバーであり、通常、外気が流通している。
鉄骨柱8と鉄骨梁9の前記空間側の露出面には実施例1の耐火被覆材1(耐火非自己発塵性面材)が張り付けられる。鉄骨柱8では横巻き端面を突き合わせて全体が隙間なく被覆されるよう張られ、端面箇所を300mm間隔で打ち込んだ固定ピン16の先端を鉄骨梁9に溶着(スポット溶接)して、耐火被覆材1を鉄骨柱8に固定し、さらに、突合せ線に沿って別途準備したアルミニウム箔テープ17で封鎖してある。
【0037】
鉄骨梁9は図7に示すように下面側から梁に当て付けた耐火被覆材1を、梁の両側へ巻くように持ち上げて両側の端面をそれぞれ外側へ少し水平に折り曲げて水平部18とし、その箇所をそれぞれ固定ピン16で固定してある。張り付けのタイプには種々あるが、この実施例ではいわゆる箱張りとしている。垂みの生じる箇所には補助ピンを打ち込んで溶着することにより張り付け状態を確実なものとしている。
【0038】
そして、巻き付けた耐火面材の鉄骨梁9に沿った方向の端面同士は突き合わせ、突合せ線を別途準備したアルミニウム箔テープ17で封鎖すると共に、前記水平部18の端部に現れる端面もアルミニウム箔テープ17で封鎖する。さらに、鉄骨柱8と鉄骨梁9との取り合い部やこれらとブレースとの取り合い部では耐火被覆材1の端部が重なるように張られ、その際に露出する耐火被覆材1の端面は、全て、アルミニウム箔テープ17で封鎖してある。
【0039】
以上の構成であって、実施例の耐火構造としたクリーンルーム構造体7では、クリーンルームとして清浄にすべき内部空間を取り囲む建物構造体における鉄骨柱8や梁の表面全部が前記の耐火被覆材(耐火非自己発塵性面材)で被覆され、また、耐火被覆材の端面を外面に露出させないので、クリーンルーム構造体7の内部に隣接した空間(壁裏空間14や天井チャンバー15など)から微粒子がクリーンルームに侵入する虞がなく、微粒子の浮遊を低減することができる。また、クリーンルーム構造体の耐火基準を満足することができる。そして、耐火層を構成するロックウールフェルトなどの繊維を相互結合させるのに用いる合成樹脂接着材の溶剤から揮発する気体(アウトガス)の侵入も避けることができる。
結果として耐火性を備え、かつ、内部空間に関し高度な清浄度が要求されるクリーンルームの構築が可能である。
従来、壁裏空間14とか天井チャンバー15の耐火処理において、建物構造体による空間がクリーンルームであることを意識して対策が取られている耐火被覆材やこれを用いた耐火性の建物構造体は発見できない。
【符号の説明】
【0040】
1 耐火被覆材
2 耐火層
3 飛散防止層
4 熱可塑性樹脂フィルム
5 アルミニウム箔
6 不織布
7 クリーンルーム構造体
8 鉄骨柱
9 鉄骨梁
10 非発塵層
11 スラブ
12 壁材
13 天井材
14 壁裏空間
15 天井チャンバー
16 固定ピン
17 アルミニウム箔テープ
18 水平部
19 接着剤
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7