(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-135066(P2015-135066A)
(43)【公開日】2015年7月27日
(54)【発明の名称】浮体式風力発電設備
(51)【国際特許分類】
F03D 9/00 20060101AFI20150701BHJP
【FI】
F03D9/00 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2014-6076(P2014-6076)
(22)【出願日】2014年1月16日
(71)【出願人】
【識別番号】713013375
【氏名又は名称】菅野 優
(72)【発明者】
【氏名】菅野 優
【テーマコード(参考)】
3H178
【Fターム(参考)】
3H178AA12
3H178AA26
3H178AA43
3H178DD61X
(57)【要約】
【課題】陸地や海底に固定したり係留したりすることなく、浮体式風力発電設備を洋上の定位置に安定して設置させる。必要に応じて洋上の所望の位置に移動させる。
【解決手段】セイル5に受けた風の力を、浮体1と横流れ防止板6と回転防止板7の水への抵抗により風上方向への推進力に変える。セイル5の風を受ける面を表裏繰り返し切り替えて前後移動を行い、風上方向への移動と風下に流される移動を相殺させて風力発電設備9を組した浮体1を洋上の定位置に停滞させる。固定されていないため洋上の所望の位置への移動も可能である。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
浮体上に敷設したセイルに風を受けて浮体とセイルとの角度や浮体上の加重の位置を調整することにより洋上のほぼ同位置に停止し、陸地や海底に固定されたり係留されたりしていない洋上浮体の上で風車を回して発電する浮体式風力発電設備。
【請求項2】
上記請求項1において、気象予測から風力発電に最適な洋上の位置を算出し、GPSを用いて、セイルに受けた風の力で移動することができる浮体式風力発電設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洋上において、風力発電設備を有する移動可能な浮体に設けたセイルが風を受けることによって、陸地や海底に固定することなく定点で停滞したり、気象、海象に応じて発電効率の良い場所へ移動したりすることを可能とした、洋上風力発電設備である。
【背景技術】
【0002】
陸上に設置される風力発電機は、地形の影響による風況低下や周辺への騒音の問題があり、また地域の景観の問題が指摘されることがある。日本のような国土の十分に大きくない国では、風力発電に適した土地を十分に確保することは困難である。よって風力発電機は洋上設置されるものが増えてきている。
【0003】
洋上は風の流れを遮るものもなく陸上より安定した風況を得ることができる。洋上風力発電機は海底に基礎を建設し設置する方式や、浮体上に風力発電設備を設けて海底に係留する方式などがある。
【0004】
また、洋上に移動可能の浮体に設け、常に風車が風向に対し90度または−90度で風を受けることができるように制御する風力発電設備の提案もなされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−41477
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
陸上の風力発電設備は地形の影響で風況が安定せず、安定した稼働が得られない。発電設備の周辺では風車が回転する時の騒音の問題が発生することがある。強風が吹いて風力発電設備が破損した場合、周辺に落下し危険を及ぼす。風車が立並ぶと景観が損なわれると指摘されることがある。風力発電設備に適した土地面積を十分に確保することが困難である。
【0007】
洋上の固定された風力発電機は風況によって稼働率が変化し安定した発電効果が得られない。水深が深い場所では浮体の固定を行えないこともある。動力を付備した移動式の風力発電設備は移動し続ける必要があり電線に接続して電力を連続で供給することが困難である。
【0008】
陸上、洋上に関わらず、固定式風力発電設備は台風など強風に耐えるための構造強度を高める対策も必要となる。風力発電は風車の径の2乗に比例するため建設の度に立地に合わせてできるだけ大きな径にする。そのため部品の共用が進まず費用の低減が進みにくい側面がある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
ウィンドサーフィンで用いるシバーリングという手段を用いる。シバーリングを用いることで、洋上において海岸や海底などに固定されていない浮体は風が吹いても風下に流されることがなくなる。
【0010】
浮体は細長いサーフィンボードのような板状とし、水中に浸かる裏側中央にはダガーボードという横流れ防止板を浮体の長手方向と平行に配置し、裏側長手端側にはダガーボードより小さいフィンを配置し浮体の水面回りの回転を抑制する。浮体上の中央部は全方位可動式の接合体で接合されたセイルを配置する。
【0011】
洋上に本発明の浮体を浮かべて、セイルの角度を変えて片面に風を当てると風が当たる反対面側に浮体が押し出されて進行する。この時、浮体への加重を付加する位置を制御し浮体の進行方向先端を風上側に向けると一般的に最大で風向に対して45度の角度までは浮体は風上側に進行することができる。反対に、それまで風が当たっていた面と反対側の面に風を当てるようにセイルの風向に対する角度を変えると浮体も逆方向に進行する。同様に加重を付加する位置を制御し進行方向先端を風上側に向けると浮体は風上側に移動する。
【0012】
セイルに交互に風を当てることを繰り返すことによって、浮体は風下に流されることなくほぼ一定の位置に停滞することができる。
【0013】
浮体上のセイルの可動範囲に干渉しない、例えば浮体の細長い長手方向の両端に風車を配置して風力発電を行えば、浮体を海底に係留することなく、定点で発電を行うことができる。または必要に応じ風の力を利用し移動することができる。
【0014】
発電した電気は陸上から伸ばした電線で直接送電してもよく、浮体上に搭載した蓄電池に蓄積してもよい。または例えば水を電気分解して水素を生成させるなどそれ以外のエネルギー源に変換しても良く、浮体が風力を利用し移動してエネルギー源を届けても良い。
【0015】
浮体を係留する必要がないため、海底に基礎工事を行う必要がなく少ない費用で風力発電設備を活動させることが可能となる。また水深の影響も受けないため発電可能面積を広く使用することが可能となる。
【0016】
ある程度の定点で停止することができたり、または場所を移動することができるため風況の適当な場所を選択することが可能であり、固定式の風力発電機と比較して効率的に稼動させることができる。また移動式であるため台風など強風災害も回避することが可能となる。
【0017】
浮体上のセイルの操作や浮体の加重は人が乗って手足で行える動作であるが、同様の動きができる例えば人型ロボットが行っても良い。
【発明の効果】
【0018】
浮体を係留する必要がないため、海底に基礎工事を行う必要がなく少ない費用で風力発電設備を活動させることが可能となる。また水深の影響も受けないため発電可能面積を広く使用することが可能となる。
【0019】
ある程度の定点で停止することができたり、または固定されていないため気象情報から風況の適当な場所を選択して浮体に搭載したGPS情報を利用して移動可能であり、固定式の風力発電機と比較して効率的に稼動させることができる。また台風など強風災害も事前に遠ざかることで回避でき強度設計の簡素化が可能となる。
【0020】
係留されない浮体式であるため、水位の増減による風力発電設備への影響を考慮する必要がなくなる。例えば海底への着床式風力発電設備の場合、海面水位が上昇しすぎるとプロペラの下端部が水面に接触してしまう。海底への係留式風力発電設備の場合、海面水位が上昇しすぎると浮体設備が水没してしまう。
【0021】
発電量を増やすために、風車の径に頼るのではなく、台数を増やすことで量産効果から費用を安くすることが可能となる。
【0022】
洋上は陸上にくらべ設置可能面積の制約が少ない。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の実施例を示す平面図であり、矢印(W)は風向を示す。
【
図3】本発明の実施例を示す底面から見た図を示す。
【
図4】
図1の状態からセイルのア面に風が当たるようにセイルを開き、浮体の片端を風上側に向けた状態を示す。
【
図5】
図1の状態からセイルのイ面に風が当たるようにセイルを開き、浮体の片端を風上側に向けた状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
1方向に細長い平な浮体の中央に全方向に可動な接続体で接続させたセイルを立設させ、同浮体中央下には横流れ防止板と回転防止板が敷設されるものはセイルへの風の当て方と浮体への加重のかけ方で風上方向へ前後に移動可能であり、風下に押し流されることと相殺するとほぼ同位置に停滞することが可能である。
【0025】
同浮体上に風力発電設備を敷設し風力に応じて電力エネルギーを生成させる。
【0026】
浮体は海上や海底に固定、係留することなくほぼ同位置で風力発電設備を稼動し電力エネルギーを生成させることを実現する。
【実施例】
【0027】
図1および
図2に示すように、洋上に浮かべられた1方向に細長い浮体1において、同浮体上中央に全方向に可動な接続体2で接続されたマスト3と、ブーム4を支持として広げられたセイル5が立設され、同浮体下中央には横流れ防止板6と回転防止板7が敷設され、同浮体上長手方向両端には例えば支柱8を介して設けられた風車9が敷設されている。
【0028】
風車9は発電機を有しており風車の回転により電気エネルギーを発生することができる。
【産業上の利用可能性】
【0029】
陸上や海底に固定、係留することなく浮体式風力発電設備を洋上に設置することができることから、陸地から遠く海底が深い洋上にも安価に浮体式洋上風力発電設備を展開することができる。
【符号の説明】
【0030】
1 浮体
2 接続体
3 マスト
4 ブーム
5 セイル
6 横流れ防止板
7 回転防止板
8 支柱
9 風車