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特開2015-135217熱交換器とそれを用いたチラーおよび保冷車または保冷庫
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  • 特開2015135217-熱交換器とそれを用いたチラーおよび保冷車または保冷庫 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-135217(P2015-135217A)
(43)【公開日】2015年7月27日
(54)【発明の名称】熱交換器とそれを用いたチラーおよび保冷車または保冷庫
(51)【国際特許分類】
   F25C 1/00 20060101AFI20150701BHJP
   F25D 11/00 20060101ALI20150701BHJP
   F25D 13/00 20060101ALI20150701BHJP
【FI】
   F25C1/00 D
   F25D11/00 101D
   F25D13/00 101Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-7342(P2014-7342)
(22)【出願日】2014年1月20日
(71)【出願人】
【識別番号】000175272
【氏名又は名称】三浦工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110685
【弁理士】
【氏名又は名称】小山 方宜
(72)【発明者】
【氏名】松永 勝利
(72)【発明者】
【氏名】柳原 伸章
(72)【発明者】
【氏名】松矢 久美
(72)【発明者】
【氏名】松林 浩司
(72)【発明者】
【氏名】堀川 伸二
【テーマコード(参考)】
3L045
【Fターム(参考)】
3L045AA04
3L045BA01
3L045BA02
3L045CA02
3L045DA02
3L045EA01
3L045KA15
3L045PA04
3L045PA05
(57)【要約】
【課題】冷凍サイクルの冷媒が通される製氷用熱交換器について、被凍結液の製氷時の膨張による破損を防止する。
【解決手段】冷凍サイクルの蒸発器に用いられ、氷蓄熱槽3内に入れて氷蓄熱槽3内の貯留液を凍結させる熱交換器1である。冷凍サイクルの冷媒が通される冷媒管9と、この冷媒管9を収容するケース10と、このケース10内に貯留される不凍液としてのブラインとを備える。ケース10は、好ましくは、氷蓄熱槽3内の貯留液の凍結による膨張で変形可能な金属板で形成された容器であり、上部開口の全部または一部が蓋板10aで閉じられている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷凍サイクルの蒸発器に用いられ、氷蓄熱槽内に入れて氷蓄熱槽内の貯留液を凍結させる熱交換器であって、
前記冷凍サイクルの冷媒が通される冷媒管と、
この冷媒管を収容するケースと、
このケース内に貯留され、前記冷媒管における冷媒温度よりも凍結温度が低いブラインと
を備えることを特徴とする熱交換器。
【請求項2】
前記ケースは、前記氷蓄熱槽内の貯留液の凍結による膨張で変形可能な金属板で形成された容器であり、上部開口の全部または一部が閉じられている
ことを特徴とする請求項1に記載の熱交換器。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の熱交換器を用いたチラーであって、
前記氷蓄熱槽には水が貯留されており、
前記氷蓄熱槽の貯留水を凍結後、解氷しながら冷水を製造する
ことを特徴とするチラー。
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載の熱交換器を用いた保冷車または保冷庫であって、
被冷却物が収容されると共に前記氷蓄熱槽が配置される保冷室と、
この保冷室内に前記氷蓄熱槽を介した通風を起こすファンと
を備えることを特徴とする保冷車または保冷庫。
【請求項5】
前記氷蓄熱槽内の貯留液は、前記冷媒管における冷媒温度よりも凍結温度が高いブラインまたは水である
ことを特徴とする請求項4に記載の保冷車または保冷庫。
【請求項6】
前記氷蓄熱槽内で凍結させるブラインを、凍結温度の異なるブラインに変更することで保冷温度を変更する
ことを特徴とする請求項5に記載の保冷車または保冷庫。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製氷用の熱交換器と、それを用いたチラーおよび保冷車または保冷庫に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、下記特許文献1に開示されるように、氷蓄熱槽(31)内の貯留水に、冷凍サイクルの蒸発器を兼ねたコイル(35)を沈め、コイル(35)において冷媒と水とを熱交換して、氷蓄熱槽(31)内に製氷することで、冷熱を蓄熱することが知られている。この装置は、冷媒の流路を切り替えることで、氷蓄熱槽(31)内の冷熱を室内熱交換器(22)において冷房に用いる。
【0003】
一方、氷蓄熱槽(31)内の氷を融解しながら冷水を製造し、その冷水を食品冷却などに使用したい場合がある。ところが、熱交換器(コイル35)において直接に水を凍結させて製氷する場合、凍結時の膨張により熱交換器が破損するおそれが残るので、食品冷却には使用しにくい。つまり、万一、熱交換器が破損すると、冷水中に冷媒と冷凍機油とが混入してしまうが、特に食品冷却の用途では、冷水中への冷凍機油の混入は避けなければならない。
【0004】
そこで、従来、食品冷却の分野では、0℃に近い冷水を得たい場合、氷蓄熱ではなく、冷凍機にてブラインを氷点下まで冷却し、そのブラインをさらに外部熱交換器において水と熱交換して冷水を製造し、その冷水を使用している。しかし、ブラインを使用する場合には、ブラインの循環配管、循環ポンプ、ブラインタンクが必要となり、システムが複雑となり、コストや設置場所を要し、さらには循環ポンプの分だけ電気料金も要することになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−89891号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、冷凍サイクルの冷媒が通される製氷用熱交換器において、被凍結液の製氷時の膨張による破損を防止することにある。また、そのような熱交換器を用いたチラーおよび保冷車または保冷庫を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、前記課題を解決するためになされたもので、請求項1に記載の発明は、冷凍サイクルの蒸発器に用いられ、氷蓄熱槽内に入れて氷蓄熱槽内の貯留液を凍結させる熱交換器であって、前記冷凍サイクルの冷媒が通される冷媒管と、この冷媒管を収容するケースと、このケース内に貯留され、前記冷媒管における冷媒温度よりも凍結温度が低いブラインとを備えることを特徴とする熱交換器である。
【0008】
請求項1に記載の発明によれば、氷蓄熱槽内に熱交換器を入れて製氷する際、ケース外で貯留液が凍結して膨張しても、ケース内のブラインは凍結しないので、ケース内の冷媒管への負荷を防止して、冷媒管の破損を防止することができる。
【0009】
請求項2に記載の発明は、前記ケースは、前記氷蓄熱槽内の貯留液の凍結による膨張で変形可能な金属板で形成された容器であり、上部開口の全部または一部が閉じられていることを特徴とする請求項1に記載の熱交換器である。
【0010】
請求項2に記載の発明によれば、氷蓄熱槽内に熱交換器を入れて製氷する際、ケース外で貯留液が凍結して膨張しても、凍結しないブラインが入れられたケースの変形により、ケース内の冷媒管への負荷を防止して、冷媒管の破損を防止することができる。また、ケースは、金属製のため、伝熱性を阻害するおそれはない。さらに、ケースは、密閉型または半密閉型であるため、ケース内のブラインの乾燥を防止して、ブラインの濃度管理が容易である。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載の熱交換器を用いたチラーであって、前記氷蓄熱槽には水が貯留されており、前記氷蓄熱槽の貯留水を凍結後、解氷しながら冷水を製造することを特徴とするチラーである。
【0012】
請求項3に記載の発明によれば、氷蓄熱槽内の貯留水を凍結させて冷熱を蓄熱し、その氷を融解しながら冷水を製造するチラーを構成することができる。しかも、冷媒と水との熱交換にブラインを貯留したケースを介在させることで、冷媒管の破損が防止されると共に、万一破損しても冷水中への冷媒や冷凍機油の混入が確実に防止される。それ故、冷水を食品冷却に安心して用いることができる。
【0013】
請求項4に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載の熱交換器を用いた保冷車または保冷庫であって、被冷却物が収容されると共に前記氷蓄熱槽が配置される保冷室と、この保冷室内に前記氷蓄熱槽を介した通風を起こすファンとを備えることを特徴とする保冷車または保冷庫である。
【0014】
請求項4に記載の発明によれば、氷蓄熱槽内の貯留液を凍結させて冷熱を蓄熱し、その冷熱を被冷却物の保冷に用いることができる。従来のドライアイスを用いる場合のように窒息事故のおそれもない。
【0015】
請求項5に記載の発明は、前記氷蓄熱槽内の貯留液は、前記冷媒管における冷媒温度よりも凍結温度が高いブラインまたは水であることを特徴とする請求項4に記載の保冷車または保冷庫である。
【0016】
請求項5に記載の発明によれば、氷蓄熱槽内で凍結させる貯留液を水とすれば、0℃の保冷車または保冷庫とでき、氷蓄熱槽内で凍結させる貯留液をブラインとすれば、0℃未満の保冷車または保冷庫とできる。
【0017】
さらに、請求項6に記載の発明は、前記氷蓄熱槽内で凍結させるブラインを、凍結温度の異なるブラインに変更することで保冷温度を変更することを特徴とする請求項5に記載の保冷車または保冷庫である。
【0018】
請求項6に記載の発明によれば、氷蓄熱槽内で凍結させるブラインとして、凍結温度の異なるブラインの内、どのブラインを用いるかにより、保冷温度の変更ができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、冷凍サイクルの冷媒が通される製氷用熱交換器において、被凍結液の製氷時の膨張による破損を防止することができる。また、そのような熱交換器を用いることで、安全で使い勝手の良いチラーおよび保冷車または保冷庫を実現することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の実施例1の熱交換器を用いたチラーの一例を示す概略図であり、一部を断面にして示している。
図2図1のチラーの氷蓄熱槽の一部を示す概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の具体的実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
ここでは、実施例1として、本発明をチラー(冷水製造装置)に適用した例について説明し、その後、実施例2として、本発明を保冷車または保冷庫に適用した例について説明する。
【実施例1】
【0022】
図1は、本発明の実施例1の熱交換器1を用いたチラー2の一例を示す概略図であり、一部を断面にして示している。また、図2は、図1のチラー2の氷蓄熱槽3の一部を示す概略斜視図である。なお、以下において、説明の便宜上、図1における上下、左右および前後(紙面と直交方向)として、方向を述べることがある。
【0023】
図1に示すように、チラー2は、水が貯留される氷蓄熱槽3と、この氷蓄熱槽3内の貯留水を凍結させる熱交換器1と、この熱交換器1を蒸発器として蒸気圧縮式冷凍サイクルを構成する冷凍機(コンデンシングユニット)4とを備える。
【0024】
氷蓄熱槽3は、製氷用の水が貯留される水槽である。氷蓄熱槽3には、給水路5を介して水が供給可能である。給水路5に設けた弁6を制御して、氷蓄熱槽3内への給水の有無を切り替えることができる。一方、氷蓄熱槽3内の水は、送水路7を介して冷水使用設備(図示省略)へ供給可能である。送水路7に設けたポンプ8を制御して、冷水使用設備への給水の有無を切り替えることができる。なお、給水路5には、弁6に代えてまたはそれに加えてポンプを設けてもよいし、送水路7には、ポンプ8に代えてまたはそれに加えて弁を設けてもよい。
【0025】
氷蓄熱槽3内には、一または複数の熱交換器1が配置される。本実施例では、図2に示すように、略矩形板状の複数の熱交換器1が、互いに対面した状態で等間隔に配置される。各熱交換器1は、典型的には、大きさを含めて互いに同一の構成とされる。
【0026】
各熱交換器1は、冷凍サイクルの冷媒が通される冷媒管9と、この冷媒管9を収容するケース10と、このケース10内に貯留されるブラインとを備える。
【0027】
冷媒管9は、その構成を特に問わないが、図示例の場合、蛇行した銅管から構成される。図1では、冷媒管9は、左右に蛇行しつつ、上方から下方へ進む形状とされている。蛇行部を構成する冷媒管9の両端部は、上方へ延出するよう直管状に形成されており、その上端部が冷凍機4に接続される。
【0028】
ケース10は、冷媒管9を収容する中空容器である。本実施例では、ケース10は、上方へ開口した略矩形の薄いボックス状に形成され、上部開口は蓋板10aで閉じられる。そして、図示例の場合、蓋板10aには、ケース10内にブラインを注入する開口部があり、その開口部はキャップ10bで開閉可能とされる。但し、ケース10は、場合により、上部開口の一部または全部を上方へ開口させておいてもよい。
【0029】
ケース10は、氷蓄熱槽3内の貯留水の凍結による膨張で弾性変形可能な金属板で形成されるのが好ましい。本実施例では、薄いステンレス板、たとえば板厚1mmの平板により形成されている。但し、ケース10を構成する金属板は、平板に限らず、波板状など、適宜の凹凸が形成されていてもよい。凹凸を形成することで、伝熱面積を拡大して良好な熱交換を実現することができる。
【0030】
ケース10内には、冷媒管9の蛇行部が浮いた状態で保持される。冷媒管9の蛇行部は、一つの平面内に配置されるが、その平面が、ケース10の前後の板面と平行に、しかもケース10の板面との間に隙間をあけて配置される。また、冷媒管9の蛇行部の左右両端部(左右の屈曲部)は、ケース10の左右の板面との間に隙間をあけて配置される。
【0031】
図1において、熱交換器1を左右側面から観察した場合、前述したように、冷媒管9の外面とケース10の前後の板面との間には、氷蓄熱槽3内の貯留水が凍結により膨張してケース10を変形させた際にも、冷媒管9を損傷させない隙間があけられている。この隙間は、氷蓄熱槽3内の貯留水が凍結により膨張してケース10を変形させた際にも、ケース10が冷媒管9に接触しない必要最小限の寸法であるのが好ましい。たとえば、冷媒管9の外径が10mm、ケース10を構成する板材の板厚が1mm、ケース10の厚さ寸法(前後方向外寸)が15〜20mmとされる。
【0032】
冷媒管9の蛇行部をケース10内に収容した状態で、ケース10内にはブラインが貯留される。これにより、冷媒管9の蛇行部は、ブラインに沈められる。ケース10内には、設定水位までブラインが貯留されるが、場合によりケース10内をブラインで満たしてもよい。ケース10内をブラインで満たす場合、ケース10の変形時にブラインを一時的に外部へ抜くパイプをケース10の上端部などに設けておくのがよい。製氷時のケース10の弾性変形により一時的に外部へ抜かれたブラインは、解氷時のケース10の復元によりケース10内へ自然に戻される。
【0033】
ケース10内に貯留されるブラインは、冷凍機4の運転中の冷媒管9における冷媒温度(冷媒蒸発温度)よりも凍結温度が低いものが用いられる。言い換えれば、冷媒管9内の冷媒温度が最も低い状態に至っても、その温度よりも凍結温度が低いブラインが用いられる。たとえば、凍結温度が−40℃のブラインが用いられる。これにより、冷凍機4の運転中、ケース10内のブラインが凍結することはない。なお、ケース10内に貯留されるブラインは、不凍液であれば、特に問わないが、たとえばプロピレングリコールが用いられる。後述するように、チラー2による冷水を食品冷却に用いる場合(特に食品と直接に接触させる場合)、万一のケース10の破損によるブラインの漏れにも安全なように、食品添加物としても許容されるブラインを用いるのが好ましい。
【0034】
冷凍機4は、圧縮機11、凝縮器12および膨張弁13を備える。熱交換器1の冷媒管9は、一端部が膨張弁13に接続され、他端部が圧縮機11に接続される。これにより、氷蓄熱槽3内の熱交換器1を蒸発器として、蒸気圧縮式冷凍サイクルが構成される。つまり、圧縮機11、凝縮器12、膨張弁13および蒸発器(9)が順次環状に接続される。
【0035】
圧縮機11は、冷媒を圧縮して高温高圧の気体にする。凝縮器12は、圧縮機11からの冷媒を凝縮液化する。膨張弁13は、凝縮器12からの冷媒を通過させることで、冷媒の圧力と温度とを低下させる。そして、蒸発器としての熱交換器1は、膨張弁13からの冷媒を蒸発させる。この蒸発時の気化熱により、氷蓄熱槽3内の貯留水の冷却および凍結を図ることができる。
【0036】
以下、本実施例の熱交換器1とそれを用いたチラー2の使用について説明する。
熱交換器1が配置された氷蓄熱槽3内には、給水路5を介して設定水位まで水が貯留される。この際、熱交換器1は、図示例では上端部が水面から露出するが、ケース10が密閉構造の場合、熱交換器1の全体(言い換えればケース10)を水中に沈めてもよい。いずれにしても、熱交換器1は、冷媒管9の蛇行部と対応した高さ、あるいはブラインの貯留部と対応した高さが、少なくとも水中に沈められるのがよい。
【0037】
氷蓄熱槽3内に水を貯留した状態で、冷凍機4を作動させる。具体的には、圧縮機11を起動して、蒸発器を構成する熱交換器1の冷媒管9に冷媒を通す。熱交換器1においては、冷媒の気化熱により、ブラインを介して貯留水が冷却され、凍結を図られる。これにより、氷蓄熱槽3内に製氷して、冷熱を蓄熱することができる。このような蓄熱運転は、好適には、夜間電力により行われる。
【0038】
氷蓄熱槽3内の貯留水は、一部を凍結させるだけでもよいし、全部を凍結させてもよい。典型的には、氷蓄熱槽3内の貯留水の全部から8割程度の凍結がなされる。
【0039】
蓄熱した冷熱は、冷水として取り出される。冷熱の取り出しは、氷蓄熱槽3内に給水路5から水を供給しながら、送水路7を介して冷水を冷水使用設備へ供給すればよい。この際、冷水使用設備にて冷水を使い捨ててもよいし、氷蓄熱槽3と冷水使用設備との間で水を循環させてもよい。つまり、水を循環使用する場合、冷水使用設備で使用後の水は、給水路5を介して氷蓄熱槽3へ戻され、氷で冷やされた後、送水路7を介して再び冷水使用設備へ送られる。いずれにしても、氷蓄熱槽3内の氷を融解しながら冷水を製造することで、0℃に近い冷水(たとえば0.5℃の冷水)を冷水使用設備に供給することができる。なお、冷水使用設備は、特に問わないが、たとえば食品冷却設備とされる。
【0040】
氷蓄熱槽3内における製氷時、熱交換器1のケース10の外面において製氷が行われる。冷媒管9は、氷蓄熱槽3内の貯留水と直接には接触せず、ケース10内の凍結しないブラインを介して水と熱交換する。これにより、氷蓄熱槽3内における製氷時、貯留水の凍結による膨張により、冷媒管9が直接に負荷を受けるのが防止され、冷媒管9の破損が防止される。ケース10に柔軟性を持たせておけば、ケース10および冷媒管9の保護をさらに図ることができる。
【0041】
なお、熱交換器1の経年劣化などにより、万一、冷媒管9が破損しても、冷媒と冷凍機油とは、ケース10内のブラインには混入するが、ケース10外の冷水には混入せず、安全である。また、万一、ケース10が破損しても、ブラインは冷凍機油に比べて、水に混入しても安全である。食品添加物としても許容されるブラインを用いるのであれば、さらに安全である。
【0042】
本実施例の熱交換器1とそれを用いたチラー2によれば、ブラインの循環配管、循環ポンプ、ブラインタンクを要することなく、氷蓄熱槽3内の貯留液の凍結時の膨張による熱交換器1の破損を防止することができる。しかも、上述したように、万一、破損した場合にも安全である。さらに、熱交換器1の冷媒管9は、水と直接に接触せず、腐食の心配がないので、安価な銅パイプでも製作が可能である。さらに、ケース10は、密閉型または半密閉型であるため、ケース10内のブラインの乾燥を防止して、ブラインの濃度管理が容易である。その上、冷媒管9に直接に製氷せずに、より面積の広いケース10に製氷させるので、より大きな製氷が容易である。
【実施例2】
【0043】
つぎに、本発明を保冷車または保冷庫に適用した例について説明する。この場合も、基本的には、前記実施例1と同様である。そこで、以下においては、実施例1と異なる点を中心に説明し、実施例1と同様の点については説明を省略する。なお、図面としては、図1において、氷蓄熱槽3が保冷室(図示省略)内に配置されたものとなり、その保冷室内にはさらにファン(図示省略)が備えられる。
【0044】
保冷車または保冷庫は、被冷却物(冷却または保冷しようとする物品)が収容されると共に氷蓄熱槽3が配置される保冷室(図示省略)と、この保冷室内に氷蓄熱槽3を介した通風を起こすファン(図示省略)とを備える。なお、冷凍機4は、保冷室外に設置されるのがよい。また、本実施例2の場合、前記実施例1における給水路5および送水路7は、設置を省略することもできる。
【0045】
保冷室は、扉で開閉可能とされた密閉空間であり、扉を開けることで、被冷却物の出し入れが可能とされる。保冷室内には、氷蓄熱槽3が設けられており、その氷蓄熱槽3内には、水またはブラインが貯留されると共に、その貯留液を凍結可能に熱交換器1が配置される。また、保冷室内には、ファンが設けられており、そのファンは、典型的には、氷蓄熱槽3を介して被冷却物へ送風する。氷蓄熱槽3には、ファンからの風が通る通風部を適宜形成しておくのがよい。
【0046】
本実施例2では、氷蓄熱槽3に貯留される液体は、水に限らず、ブラインでもよい。氷蓄熱槽3に貯留されるブラインは、ケース10内の不凍液としてのブラインとは異なり、冷凍機4の運転により敢えて凍結可能なものが用いられる。言い換えれば、氷蓄熱槽3内の貯留液は、冷凍機4の運転中の冷媒管9における冷媒温度(冷媒蒸発温度)よりも凍結温度が高いブラインまたは水である。
【0047】
本実施例2では、保冷室の使用前に、冷凍機4を運転して、氷蓄熱槽3内の貯留液を凍結させる。この際、ファンは停止しておいてよい。また、氷蓄熱槽3内の貯留液の全部を凍結させるのが好ましい。全部を凍結させた場合、従来の熱交換器では、冷媒管を破損させるおそれがあるが、本発明の熱交換器1の場合、前記実施例1で述べたように、熱交換器1の破損を防止することができる。なお、氷蓄熱槽3内の貯留液を液体のまま冷却するだけよりも、所望温度で凍結させることで、大きな冷熱を蓄熱でき、また冷熱使用時の温度(保冷室内の温度)を安定させることができる。
【0048】
製氷完了による冷凍機4の運転停止は、製氷完了をセンサで検知して停止する以外に、低圧カット(冷媒の圧力または温度)で停止するか、タイマで停止するなどしてもよい。保冷室の使用時には、保冷室に被冷却物を収容すると共に、ファンを作動させればよい。ファンを作動させることで、保冷室内に冷風が通風され、被冷却物を冷却および保冷することができる。但し、場合により、ファンの設置または運転を省略してもよい。
【0049】
保冷車と保冷庫との違いは、保冷室が車両に設置されるか否かである。但し、保冷車の場合、冷凍機4は、必ずしも車両に設置する必要はなく、必要に応じて車両側の熱交換器1と、車両外の冷凍機4とを着脱可能に接続するようにしてもよい。その場合、夜間など、車を使用しない時間帯にワンタッチ継手で、外置きの冷凍機4に配管を接続し、冷凍機4を運転させて、製氷すればよい。そして、車の使用時には、熱交換器1に対する冷凍機4の接続を解除すればよい。
【0050】
氷蓄熱槽3内で凍結させる貯留液を水とすれば、0℃の保冷車または保冷庫とでき、氷蓄熱槽3内で凍結させる貯留液をブラインとすれば、0℃未満の保冷車または保冷庫とできる。また、氷蓄熱槽3内で凍結させるブラインを、凍結温度の異なるブラインに変更することで保冷温度を変更することができる。
【0051】
たとえば、氷蓄熱槽3内に貯留液(ケース10外の貯留液)として、凍結温度が−20℃のブラインを用いれば、−20℃のブライン氷を作ることができる。この際、ケース10内のブラインは、たとえば−40℃で凍結するものを用いておき、冷凍機4の制御は、蒸発器としての冷媒管9における冷媒温度が−30℃程度になるように行えばよい。これにより、ケース10内のブラインは凍結しないが、ケース10外のブラインは凍結させることができる。
【0052】
また、氷蓄熱槽3内に貯留液(ケース10外の貯留液)として、凍結温度が−5℃のブラインを用いれば、−5℃のブライン氷を作って、−5℃の保冷を行うことができる。このように、氷蓄熱槽3内で凍結させるブラインを、凍結温度の異なるブラインに変更することで保冷温度を変更することができる。この際、ブラインの濃度を変更することで、凍結温度を変更することもできる。
【0053】
なお、氷蓄熱槽3にブラインを貯留する場合、実施例1のケースの場合と同様、氷蓄熱槽3の上部を閉じるのが好ましい。これにより、氷蓄熱槽3内のブラインの乾燥を防止して、ブラインの濃度管理が容易である。
【0054】
本発明の熱交換器1とそれを用いたチラー2および保冷車または保冷庫は、前記各実施例の構成に限らず適宜変更可能である。特に、冷凍サイクルの蒸発器に用いられ、氷蓄熱槽3内に入れて氷蓄熱槽3内の貯留液を凍結させる熱交換器1であって、冷凍サイクルの冷媒が通される冷媒管9と、この冷媒管9を収容するケース10と、このケース10内に貯留される不凍液としてのブラインとを備えるのであれば、その他の構成や用途は適宜に変更可能である。いずれにしても、本発明の熱交換器1によれば、氷蓄熱槽3内の貯留液が凍結膨張しても冷媒管9の破損が防止され、冷媒管9が万一破損しても冷媒や冷凍機油がケース10外へ漏れるのが防止される。また、氷蓄熱槽3内の貯留液の凍結温度を調整することで、任意の温度で冷熱を蓄熱できる。
【0055】
たとえば、前記各実施例では、ケース10は、金属製の箱状に形成されたが、場合により合成樹脂製の袋状としてもよい。この場合、伝熱性の点で金属製に劣るが、貯留液の凍結膨張に対応した変形は容易となる。
【0056】
また、前記各実施例では、薄い箱状のケース10内に蛇行した冷媒管9を収容したが、ケース10を冷媒管9と同様に蛇行した管状に形成し、その管状のケース10内に冷媒管9を通して、二重管構造としてもよい。この場合も、内側の冷媒管9と外側のケース10との隙間に、ブラインが満たされる。
【0057】
さらに、前記実施例1では、氷蓄熱槽3内に製氷後、解氷しながら冷水として利用する例を示したが、蓄熱した冷熱の利用時、冷媒の流路を切り替えて、氷蓄熱槽3内の熱交換器1と外部熱交換器との間で冷媒を循環させて、冷熱を冷房などに利用してもよい。この場合、氷蓄熱槽3内に貯留して凍結させる液体は、水に限らずブラインとしてもよい。
【符号の説明】
【0058】
1熱交換器
2 チラー
3 氷蓄熱槽
4 冷凍機
5 給水路
6 弁
7 送水路
8 ポンプ
9 冷媒管
10 ケース
10a 蓋板
10b キャップ
11 圧縮機
12 凝縮器
13 膨張弁
図1
図2