【解決手段】活性層4を含み、活性層を含んで光の出射方向に延伸する光導波路部と、光導波路部上方に位置するリッジ部と、リッジ部の第1の側方に配置される第1バンク部12と、リッジ部の第2の側方に配置される第2バンク部13と、が形成される半導体多層を備え、半導体多層の上表面の予め定められた領域に積層される絶縁層7と、リッジ部の頂上面であり絶縁層が積層されない第1コンタクト領域を含んで、さらに、第2バンク部に積層される絶縁層の上表面までに連続して広がって形成される第1駆動電極と、第1バンク部の頂上面の一部であり絶縁層が積層されない第2コンタクト領域を含んで、第1駆動電極と非接触で形成されるダミー電極9と、を備える。
活性層を含み、前記活性層を含んで光の出射方向に延伸する光導波路部と、前記光導波路部上方に位置するリッジ部と、前記リッジ部の第1の側方に配置される第1バンク部と、前記リッジ部の第2の側方に配置される第2バンク部と、が形成される半導体多層と、
前記半導体多層の上表面の予め定められた領域に積層される絶縁層と、
前記リッジ部の頂上面であり前記絶縁層が積層されない第1コンタクト領域を含んで、さらに、前記第2バンク部に積層される前記絶縁層の上表面までに連続して広がって形成される第1駆動電極と、
前記第1バンク部の頂上面の一部であり前記絶縁層が積層されない第2コンタクト領域を含んで、前記第1駆動電極と非接触で形成されるダミー電極と、
を備えることを特徴とする半導体光素子。
活性層とクラッド層とコンタクト層を含み、前記活性層を含んで光の出射方向に延伸する光導波路部と、前記光導波路部上方に配置されるリッジ部と、前記リッジ部の第1の側方に位置する第1バンク部と、前記リッジ部の第2の側方に配置される第2バンク部と、を形成する半導体多層と、
前記半導体多層の上表面の予め定められた領域に積層される絶縁層と、
前記リッジ部の頂上面であって前記絶縁層が積層されない前記コンタクト層の頂上面である前記第1コンタクト領域を含んで、さらに、前記第2バンク部に積層される前記絶縁層の上表面までに連続して広がって形成される第1駆動電極と、
前記第1バンク部の頂上面の一部であって前記絶縁層が積層されない前記クラッド層の頂上面である第2コンタクト領域を含んで、前記第1駆動電極と非接触で形成されるダミー電極と、
を備えることを特徴とする半導体光素子。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、図面に基づき、本発明の実施形態を具体的かつ詳細に説明する。なお、実施形態を説明するための全図において、同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。なお、以下に示す図は、あくまで、実施形態の実施例を説明するものであって、図の大きさと本実施例記載の縮尺は必ずしも一致するものではない。
【0022】
[第1の実施形態]
図1は、本発明の第1の実施形態に係る半導体レーザ素子1の構成を示す斜視図である。本実施形態に係る半導体レーザ素子1は半導体多層を含んで形成されるリッジ型の半導体レーザであり、
図1に示す通り、1個のリッジ部11(1個の導波路部)を有する単体の半導体レーザ素子1である。本実施形態に係る半導体レーザ素子1はDFB(Distributed Feedback)レーザであるが、これに限定されることがないのは言うまでもない。半導体レーザ素子1は、半導体多層の凸状部分であるリッジ部11(メサ部)を含んでおり、リッジ部11の第1の側方(図の左側)には第1バンク部12が配置されている。また、リッジ部11の第2の側方(図の右側)には第2バンク部13が配置されている。リッジ部11、第1バンク部12、及び第2バンク部13は、半導体多層に形成される。リッジ部11と第1バンク部12の間には第1間隙底面14が設けられており、リッジ部11と第2バンク部13との間には第2間隙底面15が設けられている。ここで、第1間隙底面14及び第2間隙底面15には、リッジ部11と並列して延伸するアイソレーション溝10が形成されている。なお、リッジ部11は、凸状部分の頂上面及び両側の側面を含んでいる。同様に、第1バンク部12及び第2バンク部13は頂上面及び側面を含んでいる。ここで、リッジ部11の両側の側面がなだらかな裾を有する場合等、リッジ部11と、第1間隙底面14又は第2間隙底面15と、の境目が必ずしも明らかでない場合もあり得る。同様に、第1バンク部12又は第2バンク部13の側面がなだらかな裾を有する場合、第1バンク部12と第1間隙底面14との境目、又は第2バンク部13と第2間隙底面15との境目が、必ずしも明らかでない場合もあり得る。そういった場合は、リッジ部11と第1バンク部12とに挟まれる面のうち、少なくとも平坦部分を第1間隙底面と呼ぶこととする。第2間隙底面についても同様である。
【0023】
図2は、本発明の第1の実施形態に係る半導体レーザ素子1の断面図である。
図2は、
図1のII−II線で示す断面を示している。本発明の第1の実施形態に係る半導体レーザ素子1において、InP基板2(n型半導体基板)の上表面に、活性層4、クラッド層5、及びコンタクト層6(キャップ層)が順次積層されてなる半導体多層が形成されている。ここで、InP基板2は、例えばn型InPによって形成されるものであり、活性層4は、例えばInGaAlAsを用いた多重量子井戸構造によって形成されるものである。また、クラッド層5は、例えばp型InPによって形成され、コンタクト層6は、例えばInGaAsによって形成される。各半導体層は、例えば有機金属気相成長法によって数μm程度の厚さに積層されて、ほぼ平坦な界面を有する。なお、半導体多層はクラッド層5の下層部にエッチングストッパ層を含んでいてもよく、半導体多層をエッチングストッパ層までエッチング等することでリッジ部11を形成する。かかる場合、第1間隙底面14及び第2間隙底面15は、エッチングストッパ層の上表面となる。
【0024】
ここで、InP基板2の「上表面」とは、
図2におけるInP基板2の上側表面全体又はその一部を指すものとする。また、InP基板2における「上側」とは、InP基板2に対して活性層4やクラッド層5が積層される側をいうものとする。
【0025】
本発明の第1の実施形態に係る半導体レーザ素子1では、絶縁層7が、半導体多層の上表面の予め定められた領域に積層される。ここで、当該予め定められた領域とは、半導体多層の上表面の全域から、少なくとも後述する第1コンタクト領域及び第2コンタクト領域を除いた領域である。当該予め定められた領域とは、具体的には、半導体多層の上表面のうち、リッジ部11の両側の側面、第1間隙底面14及び第2間隙底面15、第1バンク部12の側面、第1バンク部12の頂上面の一部(第1バンク部12の頂上面のうち少なくとも第2コンタクト領域を除いた部分)、第2バンク部13の側面、及び第2バンク部13の頂上面である。
【0026】
コンタクト層6の上表面には、リッジ部11の頂上面を除いて、絶縁層7が積層されている。絶縁層7は、例えば数μm程度の厚さに積層されたSiO
2によって形成される。第1コンタクト領域とは、リッジ部11の頂上面であり絶縁層7が積層されない領域である。第1コンタクト領域は、コンタクト層6の頂上面の一部となっており、第1駆動電極であるp型駆動電極8が形成される領域である。また、第1コンタクト領域とは、p型駆動電極8とコンタクト層6との界面であるともいえる。第1コンタクト領域は必ずしもリッジ部11の頂上面の全域である必要はなく、リッジ部11の頂上面のうち延伸方向に沿った縁を除いた領域や、リッジ部11の頂上面のうち両端部の縁を除いた領域等、頂上面の一部であってもよい。p型駆動電極8は、例えばTi、Pt、Auの順に積層された金属層であり、数μm程度の厚みを有するものである。このような構成は、他の電極についても同様である。p型駆動電極8は、第1コンタクト領域のほか、第2バンク部13に積層される絶縁層7の上表面にも連続して広がって形成されている。
【0027】
半導体レーザ素子の実装形態には、n型駆動電極3をサブマウントに融着する場合と、p型駆動電極8をサブマウントに融着する場合がある。前者をジャンクションアップ(junction up、 j-up)実装、後者をジャンクションダウン(junction down、 j-down)実装と呼ぶ。ここで、リッジ部11に直接半田等を融着するとレーザ特性を劣化させる原因となるため、ジャンクションアップ実装及びジャンクションダウン実装のいずれを採用する場合であっても、p型駆動電極8のうち第2バンク部13に形成される部分に半田等を融着して、当該融着部分を介して外部回路より電流が供給されることが望ましい。
【0028】
p型駆動電極8のうち第1コンタクト領域に形成された部分と、InP基板2の下表面に形成された第2駆動電極であるn型電極3は、対となって活性層4に電流を供給する。電流は、すなわち電子とホールの流れであり、リッジ部11下方の活性層4で電子とホールの再結合が起こり、光が発生することとなる。発生した光は、光導波路部を往復しながら増幅され、光導波路部の端面から
図2の紙面に垂直な方向に向けてレーザ光として出射される。ここで、光導波路部とは、半導体多層のうち、リッジ部11下方の活性層4を含んで光の出射方向に延伸する部分である。
【0029】
なお、リッジ部11の「頂上面」とは、リッジ部11の頂上に位置する平坦面を指すものとし、他の部位について用いる場合も同様とする。また、光導波路部の端面における光の「出射方向」とは、光導波路部の端面から放たれる光束の中心軸が延伸する方向をいうものとする。
【0030】
本発明の第1の実施形態に係る半導体レーザ素子1には、ダミー電極9が形成されている。第2コンタクト領域とは、第1バンク部12の頂上面の一部であり絶縁層7及びコンタクト層6が形成されない領域である。第2コンタクト領域とは、ダミー電極9とクラッド層5の界面であるともいえる。第2コンタクト領域はクラッド層5の頂上面の一部であるため、積層した絶縁層7及びコンタクト層6をエッチング等によって除去するか、コンタクト層6及び絶縁層7を積層する際に第2コンタクト領域をマスクしておく必要がある。また、ダミー電極9は、p型駆動電極8と非接触で形成されており、p型駆動電極8の寄生容量には影響しない構成となっている。ダミー電極9とp型駆動電極8とは物理的に接触しないように形成されており、半導体レーザ素子1において、ダミー電極9とp型駆動電極8とは、電気的接続の観点では、半導体多層を介して接続されている。半導体多層のうち、ダミー電極9とp型駆動電極8との電気的接続に寄与する部分は、ダミー電極9やp型駆動電極8と比べて極めて高抵抗となっており、ダミー電極9とp型駆動電極8との間は、実質的には電気的に絶縁された状態にあると言える。よって、ダミー電極9の面積を大きくしても、p型駆動電極8の寄生容量の増大にはほとんど影響しない。しかしながら、ダミー電極9は放熱に寄与するので、p型駆動電極8の寄生容量の増大を抑制しつつ、半導体レーザ素子1の放熱性能を向上させることができる。なお、p型駆動電極8とダミー電極9とが物理的に接触していない状態とは、両電極が直接に接触していない状態をいう。
【0031】
第1間隙底面14及び第2間隙底面15に形成されるアイソレーション溝10は、従来、リッジ部11から活性層4に流れ込む電流を狭窄し、発光領域を絞る機能を目的として形成されるものである。本実施形態におけるアイソレーション溝10は、上記機能に加えて、p型駆動電極8とダミー電極9間の電気抵抗をさらに上昇させ、両電極間の電気的な接続をさらに抑制する機能も有している。それらの機能を発揮させるためには、アイソレーション溝10の最深部が活性層4よりも下に達していることが望ましい。アイソレーション溝10の最深部が、活性層4の上もしくは途中までしか達していないと、活性層4を伝って電荷の移動が生じ、p型駆動電極8とダミー電極9間の電気抵抗を十分に上昇させられないからである。
【0032】
半導体レーザ素子を変調駆動させる場合、p型駆動電極8とn型駆動電極3等との間で生じる寄生容量が高周波特性の制限要因となる。寄生容量の増加に伴い遮断周波数が減少するためである。そこで、高周波特性を向上させるためには、p型駆動電極8の面積は可能な限り小さくする必要がある。一方で、放熱特性を考慮すると、熱伝導率が高いp型駆動電極8を可能な限り大きくすれば放熱経路が広くなり、放熱特性を改善することが可能である。
【0033】
なお、上述の通り、第2コンタクト領域はクラッド層5の頂上面の一部であり、第2コンタクト領域にダミー電極9が形成されており、製造工程において第2コンタクト領域の上方に積層されたコンタクト層6は除去されている。本実施形態では、コンタクト層6を除去する際やダミー電極9を形成する際の作製誤差等を考慮して、コンタクト層6が除去される領域は、第2コンタクト領域(ダミー電極9が形成される領域)よりも周辺に広がっており、
図2に示す通り、ダミー電極9の周囲にはクラッド層5の頂上面が露出した領域がある。同様に、コンタクト層6や絶縁層7を除去する際の作製誤差等を考慮して、絶縁層7が除去される領域は、コンタクト層6が除去される領域よりも周辺に広がっており、クラッド層5の頂上面が露出した領域の周囲にはコンタクト層6の頂上面が露出した領域がある。
【0034】
また、本実施形態では、ダミー電極9が半導体多層の上表面に形成される領域は、すべてクラッド層5の頂上面となっているが、これに限定されることはない。ダミー電極が半導体多層の上表面に形成される領域が、クラッド層5の頂上面からさらに広がって、コンタクト層6の側面の一部や頂上面の一部に及んでいてもよい。さらに、ダミー電極9がp型駆動電極8と非接触で形成される状況であれば、ダミー電極9が絶縁層7の頂上面にまで及んでいてもよい。
【0035】
図3は、本発明の第1の実施形態に係る半導体レーザ素子1に用いられる材料の熱抵抗率及び熱伝導率の参考値を示す図である。材料は、上から順に、InP基板2及びクラッド層5を構成するInP、コンタクト層6を構成するInGaAs、絶縁層7を構成するSiO
2、p型駆動電極8を構成するAuとなっている。p型駆動電極8を構成するAuの熱伝導率が最も高く、10
2W/(K・m)のオーダーであるのに対し、InP基板2及びクラッド層5を構成するInPは10
1W/(K・m)のオーダーであり、コンタクト層6を構成するInGaAsや絶縁層7を構成するSiO
2は10
0W/(K・m)のオーダーとなっている。特に、SiO
2の熱伝導率が小さく、絶縁層7は熱を閉じ込める層となることが予測される。なお、熱抵抗率は熱伝導率の逆数であり、熱抵抗率が小さいほど熱の伝導性が良いことになる。
【0036】
図4は、本発明の第1の実施形態に係る半導体レーザ素子1における放熱経路を示す図である。半導体レーザ素子では発光に伴い熱が発生するため、発熱部20から効率良く熱を逃がす工夫が必要とされる。本実施形態では、InP基板側放熱経路21と、p型駆動電極側放熱経路22に加えて、ダミー電極側放熱経路23が確保されている。ここで、ダミー電極9の下面はクラッド層5に接しており、絶縁層7とコンタクト層6を挟まない構成のため、InPに比べて熱伝導率が1桁程度小さい層を介さずに放熱することでき、放熱特性の改善に寄与している。また、本実施形態においてInP基板側放熱経路21は100μm程度の経路であるのに対し、ダミー電極側放熱経路23は20μm程度の経路であり、より短距離なため、放熱特性の改善に寄与する割合が大きい。
【0037】
InP基板側放熱経路21、p型駆動電極側放熱経路22は、融着されたワイヤもしくはサブマウントに熱を逃がす経路となる。一方、ダミー電極9に配線が行われていない場合、ダミー電極側放熱経路23は電極面から空気中(もしくは半導体レーザ素子1が置かれる雰囲気中)に熱を拡散させる経路となる。ダミー電極9にレーザ駆動用ワイヤとは別のワイヤをボンディングする場合、ダミー電極9が空気よりも格段に熱伝導率の良い金属と接触する部分を有することとなるため、当該部分からの放熱量が増し、ダミー電極9に配線が行われていない場合に比べて半導体レーザ素子1の放熱性能が向上する。
【0038】
なお、発熱部20からの放熱経路は図示した以外にも種々考えられるが、
図4では代表的な経路のみを図示している。例えば、p型駆動電極側放熱経路22は、p型駆動電極8に沿っているが、これはAuの熱伝導率がSiO
2の熱伝導率よりも2桁程大きいため、この経路が支配的と考えられるためである。
【0039】
図5は、第1の比較例に係る半導体レーザ素子の放熱経路を示す図である。第1の比較例に係る半導体レーザ素子は、本発明の第1の実施形態に係る半導体レーザ素子1と比較すると、ダミー電極9が形成されていない点で相違しているが、他の構造は第1の実施形態に係る半導体レーザ素子1と共通している。第1の比較例に係る半導体レーザ素子において、p型駆動電極8の形状は、第1の実施形態に係る半導体レーザ素子1と同じ形状であるので、第1の比較例におけるp型駆動電極8の寄生容量は、第1の実施形態におけるp型駆動電極8の寄生容量と同じであると考えられる。すなわち、第1の比較例に係る半導体レーザ素子において、寄生容量の増大は、第1の実施形態に係る半導体レーザ素子1と同程度に抑制されている。しかしながら、第1の比較例に係る半導体レーザ素子の放熱特性は、第1の実施形態に係る半導体レーザ素子1と比較して劣ると考えられる。なぜなら、
図5に示す通り、第1の比較例に係る半導体レーザ素子において、主要な放熱経路はInP基板側放熱経路21とp型駆動電極側放熱経路22であり、ダミー電極側放熱経路23が存在しないからである。p型駆動電極8は、第2バンク部13に大きく広がっているため、p型駆動電極側放熱経路22のうち第2バンク部13に至る経路が放熱性能の改善に最も寄与すると考えられる。一方、p型駆動電極8は、第1バンク部12の頂上面には僅かしか形成されていないため、p型駆動電極側放熱経路22のうち第1バンク部12に至る経路の放熱性能の改善への寄与は小さいと考えられる。
【0040】
図6は、第2の比較例に係る半導体レーザ素子の放熱経路を示す図である。第2の比較例に係る半導体レーザ素子の構造は、第1の比較例に係る半導体レーザ素子と比較すると、以下の2点が異なっている。第1には、コンタクト層6は第1バンク部12の全域に亘ってクラッド層5の上に形成されている。さらに、絶縁層7は、第1バンク部12(コンタクト層6)の上表面全域に亘って形成されている。p型駆動電極8は、リッジ部11に対して対称的に、第2バンク部13の上方と第1バンク部12の上方との両方に広がって形成される。かかる2点以外については、第2の比較例に係る半導体レーザ素子は、第1の比較例に係る半導体レーザ素子と共通の構造をしている。p型駆動電極8が、第2バンク部13の上方に加えて、第1バンク部12の上方にも広がって形成されていることにより、第1の比較例に係る半導体レーザ素子と比較して、第1バンク部12に至る放熱経路が拡大し、第2バンク部13に至る放熱経路と同程度に放熱性を奏するようになり、第1の比較例に係る半導体レーザ素子と比べて、放熱性能がさらに向上すると考えられる。しかし、p型駆動電極8の面積が第1の比較例に係る半導体レーザ素子(及び第1の実施形態に係る半導体レーザ素子1)と比べて増加しており、p型駆動電極8とn型駆動電極3との間等に生じる寄生容量が増大し、半導体レーザ素子1の高速な変調動作が困難になるという弊害がある。
【0041】
このように、放熱性能を向上させることと寄生容量の増大を抑制することがトレードオフの関係にあり、両立させるための工夫が必要とされる。本実施形態では、ダミー電極9をクラッド層5の上表面の一部に形成することにより、熱伝導率の低いコンタクト層6や絶縁層7を介さず放熱することを可能とし、活性層4の温度上昇を抑制する放熱機構を提供している。また、ダミー電極9をp型駆動電極8と非接触で形成することにより、p型駆動電極8の寄生容量の増大を抑制している。
【0042】
[第2の実施形態]
半導体レーザ素子に対する要求は、近年のモバイル端末によるインターネットアクセス量の増大やクラウドをベースとしたストレージやコンピューティングの急速な普及に伴い、より増大している。各種ネットワーク、たとえば携帯電話基地局とコアネットワーク間、データセンタ間、もしくはデータセンタ内のネットワーク等の帯域が逼迫し始めてきており、ネットワークの大容量化、高速化の要求に伴い、近年はアクセス網からHPC(High Performance Computer)、データセンタ、ストレージ等の通信システムにまで光技術の適用範囲が広がってきている。例えば、データセンタに使われているサーバーラックではラック間やラック内の通信が銅線によるものであったが、銅線ベースの通信では高速化に伴い通信距離が短くなるため、光技術を取り入れた光インタコネクションの技術が期待されている。
【0043】
光通信システムが活用されてきた主な市場である長距離、中距離の通信網では、光通信の大容量化や高速化を目指して、波長多重(WDM、Wavelength Division Multiplexing)、時間多重(TDM、Time Division Multiplexing)からマルチコアファイバ等を用いた空間多重化の技術開発や、光信号の振幅変調から位相や偏波による多値化の技術開発が盛んになっている。これらの技術の進展により、大容量かつ高速な通信ネットワークの構築が実現できると予想されるが、システム構成の変更に伴うデバイス構成の変更が大きく、アクセス網に求められる低コスト化を数年以内に実現することは難しいものと思われる。また、アクセス網の素子に求められる小型化にもすぐに対応できないものと思われる。
【0044】
そこで、アクセス網の大容量化を実現する1つのアプローチとして、並列高密度化が試みられている。最近注目を集めているいわゆるSiホトニクス技術は並列高密度化技術に適用可能であると考えられており、例えば、InP系の半導体レーザとCMOSプラットフォーム上に作製したSi変調器をハイブリッド集積した小型光送信器が開発されている。この技術によって10Gbps動作の信号を4chのパラレル伝送によって40GbpsとするQSFP(Quad Small Form-factor Pluggable)トランシーバが製品化されており、CMOSとCMOS駆動の変調器をSOI(Silicon-on-Insulator)基板上に作製することで、小型かつ低コストのトランシーバを実現している。
【0045】
上述のようなトランシーバは、1つの半導体レーザからの光をSiプラットフォーム上で4分岐させているが、更に分岐数を増やすためには半導体レーザの数を増やす必要がある。このような構造では半導体レーザのアレイ化技術における光結合や放熱技術の開発が必要不可欠である。そこで、本発明の第2の実施形態に係る半導体レーザ素子1は、本発明をアレイ化した半導体レーザ素子に適用したものであり、以下に説明する。
【0046】
図7は、本発明の第2の実施形態に係る半導体レーザ素子1を示す斜視図である。本発明の第1の実施形態に係る半導体レーザ素子1が単体の半導体レーザ素子であったのに対して、本発明の第2の実施形態に係る半導体レーザ素子1は、複数個のリッジ部11(複数個の導波路部)を有する半導体レーザ素子である。すなわち、アレイ化された半導体レーザ素子であり、複数個の単位素子からなっている。
図7に示す通り、半導体多層の上部に、光の出射方向に沿って延伸するリッジ部11が、当該出射方向に垂直な方向(図の横方向)に、複数並んで配置されており、当該複数のリッジ部11が半導体多層の上表面の一部となっている。活性層4のうち、当該複数のリッジ部11の下方に位置する部分それぞれを含んで、複数の光導波路部が形成されている。当該複数の光導波路部は、光の出射方向(リッジ部11の延伸方向)に垂直な方向(図の横方向)に並んで形成される。なお、
図7には2個の単位素子が示されているが、単位素子の数は適宜選択することが出来るのは言うまでもない。第2の実施形態に係る半導体レーザ素子1の単位素子1個の構造は、第1の実施形態に係る半導体レーザ素子1の構造と同じである。なお、n型駆動電極3は、全ての単位素子について共通電極となっている。第2の実施形態に係る半導体レーザ素子1は、上述の通り、複数個の単位素子それぞれは、リッジ部11とその両側に第1のバンク部12と第2のバンク部13とを含んでおり、隣り合う2個の単位素子において、第1の側方側(図の左側)の単位素子の第2バンク部13と、第2の側方側(図の右側)の単位素子の第1バンク部12とで、1個のバンク部を形成している。かかるバンク部の上方に、第1の側方側の単位素子のp型駆動電極8と、第2の側方側の単位素子のダミー電極9とがともに形成されるが、当該p型駆動電極8と当該ダミー電極9とは、非接触で形成される。すなわち、かかるバンク部の上方において、当該p型駆動電極8と当該ダミー電極9の電極も形成されていない部分がある。このように、半導体レーザ素子1をアレイ化することで、大容量光通信に好適な半導体レーザ素子が得られる。また、n型駆動電極3を全単位素子で一体形成することができるため、製造工程が単純化され、製造コストの増大が抑制されるという利点もある。
【0047】
図7に示す第2の実施形態に係る半導体レーザ素子1は、アレイ化によってレーザ素子の並列高密度化を達成し、単体のレーザ素子の場合よりも利用可能なチャネルを増やして、大容量光通信に適した半導体レーザ素子1を提供するものである。また、
図7のようにアレイ化した半導体レーザ素子1の場合、ジャンクションアップ実装することとすると、ワイヤボンディングの本数が増え、工程が複雑化し、制作コストが増大してしまう。一方、ジャンクションダウン実装の場合、p型駆動電極8はサブマウントにパターン化された配線に実装すればよく、n型駆動電極3はアレイ全体で共通電極となっているためワイヤボンディングの本数が増大せず、結果として工程が単純になり、製造コストの増大を抑制できる。
【0048】
小型なマルチチャネル光トランシーバを実現するためには、ICと光素子の近接配置や光素子のアレイ化実装技術が必要になる。さらに、光トランシーバの省電力化のためには、半導体光素子の駆動電力の低減やアンクールド動作が必要になる。光トランシーバの動作環境温度としては、例えば0〜85℃の低温〜高温範囲での動作が求められる。半導体レーザは発振時に発熱するため、高温時の活性層温度は外気温度よりも高くなり、熱損傷などの危険性が生じる。マルチチャネルトランシーバの場合、隣接する半導体レーザ素子による熱干渉や、ICドライバの近接配置による熱干渉によって半導体レーザ素子の活性層温度が更に上昇するため、半導体レーザ素子の活性層温度を低下させる必要があり、レーザからの発熱を効率よく放熱する機構を設ける必要がある。
【0049】
第2の実施形態では、第1の実施形態の場合と同様に、ダミー電極9をクラッド層5の上表面の一部に形成することにより、熱伝導率の低いコンタクト層6や絶縁層7を介さず放熱することを可能とし、活性層4の温度上昇を抑制する放熱機構を提供している。また、ダミー電極9をp型駆動電極8と非接触で形成することにより、p型駆動電極8の寄生容量の増大を抑制している。
【0050】
[第3の実施形態]
図8は、本発明の第3の実施形態に係る半導体レーザ素子1の断面図である。本発明の第1又は第2の実施形態との相違点は、ダミー電極9がクラッド層5ではなくコンタクト層6の頂上面に形成されている点である。つまり、本実施形態における第2コンタクト領域は、第1又は第2の実施形態における第2コンタクト領域と同様に、半導体多層のうち第1バンク部12の頂上面の一部である。しかし、かかる第1バンク部12の頂上面の一部は、クラッド層5の頂上面の一部である第1の実施形態と異なり、コンタクト層6の頂上面の一部である。本実施形態における第2コンタクト領域は、ダミー電極9とコンタクト層6の界面であるともいえる。また、上記相違点の他は、第3の実施形態に係る半導体レーザ素子1は、第1又は第2の実施形態に係る半導体レーザ素子1と共通の構造を有する。本実施形態におけるサブマウントへの実装方法としては、ジャンクションアップもしくはジャンクションダウンのどちらでもよい点も同様である。また、単位素子単体で機能するが、アレイ化した場合にさらに大容量の光通信に利用することができる点も同様である。
【0051】
図3に示したように、コンタクト層6の材料であるInGaAsは熱伝導率がInPよりも1桁程度小さいため、第3の実施形態の放熱性能は第1の実施形態の場合より若干劣る。しかし、製造工程において第2コンタクト領域に位置するコンタクト層6を除去する工程を必要としておらず、より簡易な製造工程によって第3の実施形態に係る半導体レーザ素子を作製することが出来、製造コストの低減が実現される。本実施形態であっても、ダミー電極9を形成しない場合に比べて放熱性能が向上するため、製造コストと放熱性能のバランスを考慮して、第1又は第2の実施形態と本実施形態を使い分けることができる。
【0052】
なお、上述の通り、第2コンタクト領域はコンタクト層6の頂上面の一部であり、第2コンタクト領域にダミー電極9が形成されており、製造工程において第2コンタクト領域の上方に積層された絶縁層7は除去されている。本実施形態では、絶縁層7を除去する際やダミー電極9を形成する際の作製誤差等を考慮して、絶縁層7が除去される領域は、第2コンタクト領域(ダミー電極9が形成される領域)よりも周辺に広がっており、
図7に示す通り、ダミー電極9の周囲にはコンタクト層6の頂上面が露出した領域がある。
【0053】
また、本実施形態では、ダミー電極9が半導体多層の上表面に形成される領域は、すべてコンタクト層6の頂上面となっているが、これに限定されることはない。ダミー電極9がp型駆動電極8と非接触で形成される状況であれば、ダミー電極9が絶縁層7の頂上面にまで及んでいてもよい。さらに、ダミー電極9とp型駆動電極8との電気的接続を抑制するために、p型駆動電極8は、第1バンク部12の上方において、絶縁層7の上表面に形成され、コンタクト層6の上表面と物理的に接触していないことが望ましい。また、アレイ化された半導体レーザ素子において、隣り合う第1の側方側の単位素子のp型駆動電極8と、第2の側方側の単位素子のダミー電極9についても同様であり、当該ダミー電極9と当該p型駆動電極8との電気的接続を抑制するために、当該p型駆動電極8は、第2バンク部13の上方において、絶縁層7の上表面に形成され、コンタクト層6の上表面と物理的に接触していないことが望ましい。
【0054】
[第4の実施形態]
図9は、本発明の第4の実施形態に係る光モジュールの断面図である。本実施形態に係る光モジュールは、第1乃至第3の実施形態のいずれかに係る半導体レーザ素子1と、当該半導体レーザ素子1がジャンクションダウン実装されるサブマウント30と、を含んでいる。半導体レーザ素子1のp型駆動電極8とダミー電極9とがサブマウント30に半田によりろう付けされている。
図9は、
図2に示した第1の実施形態に係る半導体レーザ素子1をサブマウント30にジャンクションダウン実装した場合を図示している。なお、第2又は第3の実施形態に係る半導体レーザ素子1をサブマウント30にジャンクションダウン実装することとしてもよいのは言うまでもない。すなわち、本実施形態に係る半導体レーザ素子は、単体の半導体レーザ素子であっても、アレイ化された半導体レーザ素子であってもよい。アレイ化された半導体レーザ素子1をジャンクションダウン実装することにより、ワイヤボンディングの本数を減らすことができるという利点がある。いずれの場合であっても、半導体レーザ素子ではサブマウント30側から吸熱もしくは放熱することが一般的であるため、サブマウント30に接している駆動電極面からの放熱経路をより効果的にする必要がある。
【0055】
p型駆動電極8及びダミー電極9とサブマウント30は、それぞれp型駆動電極側半田31とダミー電極側半田32を通じて接続されている。このような実装を行うことにより、上述のp型駆動電極側放熱経路22及びダミー電極側放熱経路23はサブマウント30へ熱を逃がす経路となり、放熱性能が格段に向上する。また、リッジ部11に半田が接触すると、融着時にオーミック特性の劣化や熱応力によるひずみが発生し、半導体レーザ素子のレーザ特性が劣化する。そのため、本実施形態では、リッジ部11とサブマウント30の間に空隙が設けられている。ここで、ダミー電極9は、熱伝導率の低い層であるコンタクト層6と絶縁層7を除去してクラッド層5の上表面に形成されているため、頂上面の高さはp型駆動電極8の高さと異なっている。p型駆動電極8とダミー電極9とを同一工程で積層した場合、p型駆動電極8とダミー電極9の頂上面の高さの差は、第2バンク部13におけるコンタクト層6と絶縁層7の厚みの和に相当し、本実施形態では500〜1000nmとなる。そのため、本実施形態では、p型駆動電極側半田31よりもダミー電極側半田32を厚くし、p型駆動電極8とダミー電極9の高さの差を相殺するように構成している。このような構成を採用することにより、半導体レーザ素子1がサブマウント30に対してより水平に近づけて搭載され、光モジュールとした場合の光の出射方向の傾き等が抑制される。
【0056】
ここで、第2バンク部13におけるコンタクト層6の「厚み」とは、第2バンク部13に形成されるコンタクト層6の層厚のうち最大値をいうものとする。絶縁層7に関しても同様である。また、p型駆動電極8の頂上面の「高さ」とは、n型駆動電極3の下表面から測ったp型駆動電極8の頂上面の高さのうち最大値をいうものとする。ダミー電極9の頂上面の高さについても同様である。なお、高さを測る基準点の取り方には自由度があるが、ここで注目する量はp型駆動電極8とダミー電極9の頂上面の高さの差であるため、基準点の取り方には依存しない。
【0057】
図10は、熱抵抗及びp型駆動電極8の寄生容量を示す図である。
図10には、
図5に示す第1の比較例に係る半導体レーザ素子をサブマウントにジャンクションダウン実装して光モジュールとした場合(以下の説明において、第1の比較例の場合と称する)と、
図6に示す第2の比較例に係る半導体レーザ素子をサブマウントにジャンクションダウン実装して光モジュールとした場合(以下の説明において、第2の比較例の場合と称する)と、第4の実施形態に係る光モジュールの場合とが、それぞれ示されている。縦軸は熱抵抗及びp型駆動電極8の寄生容量を、
図5に示す第1の比較例に対する相対値で表している。横軸は構造の別を現し、左から順に、
図5に示す第1の比較例の場合、
図6に示す第2の比較例の場合、
図9に示す本発明の第4の実施形態の場合である。グラフ中に、黒塗りの菱型を用いて熱抵抗の相対値が示され、白塗りの四角を用いてp型駆動電極8の寄生容量の相対値が示されている。
【0058】
第2の比較例の場合に注目すると、第1の比較例の場合に比べて熱抵抗が2割弱減少している。しかし、同時にp型駆動電極8の寄生容量が3割ほど増加している。一方で、本発明の第4の実施形態の場合、p型駆動電極8の寄生容量は基本構造の場合から変化が無く、熱抵抗は第2の比較例の場合からさらに数分減少している。これらのことから、本発明の第4実施形態により、p型駆動電極8の寄生容量を第1の比較例の場合と同程度に抑制しつつ、第2の比較例の場合よりさらに放熱性能の良い半導体レーザ素子1が提供されることがわかる。
【0059】
[第5の実施形態]
図11は、本発明の第5の実施形態に係る光モジュールの断面図である。上述した第4の実施形態に係る光モジュールにおいて、ダミー電極側半田32の厚みをp型駆動電極側半田31の厚みより厚くすることにより、厚みが等しい場合と比べて、半導体レーザ素子1をサブマウント30により水平に近づけて搭載することを実現している。本実施形態に係る光モジュールは、半導体レーザ素子1とサブマウント30とを備えるが、第4の実施形態に係る光モジュールと異なり、ダミー電極側半田32の厚みとp型駆動電極側半田31の厚みは等しい。しかし、本発明に係る半導体レーザ素子1では、第4の実施形態に係る半導体レーザ素子1と異なり、ダミー電極9の厚みがp型駆動電極8の厚みより厚くなるよう、ダミー電極9が形成されている。上述の点以外については、本実施形態に係る光モジュールは、第4の実施形態に係る光モジュールと同じ構造をしている。すなわち、本実施形態に係る半導体レーザ素子1は、上述のダミー電極9の厚みがp型駆動電極8の厚みより厚くなっていること以外は、第1乃至第3の実施形態のいずれかに係る半導体レーザ素子1と共通する構造をしている。
【0060】
本実施形態に係る半導体レーザ素子1では、ダミー電極9の厚みをp型駆動電極8のうち第2バンク部13に形成される部分の厚みよりも厚くして、厚みが等しい場合と比較して、両電極の頂上面の高さの差を減らしている。すなわち、p型駆動電極8の頂上面の高さとダミー電極9の頂上面の高さの差を、第2バンク部13における絶縁層7の厚みとコンタクト層6の厚みの和より小さくしている。このような構成を採用することにより、半田の厚み調整を省略しても、半導体レーザ素子1をサブマウント30に対してより水平に近づけて搭載することができる。ここで、ダミー電極9の厚みは、第2バンク部13におけるコンタクト層6と絶縁層7の厚みの和に相当する分だけ、p型駆動電極8のうち第2バンク部13に形成される部分の厚みより厚いことが望ましい。
【0061】
一般に、p型駆動電極側半田31の厚みとダミー電極側半田32の厚みとを変えて形成することは、製造工程を複雑にし、製造コストの増大を招いてしまう。しかしながら、本実施形態に係る光モジュールでは、半導体レーザ素子1において、ダミー電極9の厚みをp型駆動電極8の厚みより厚くすることにより、厚みが等しい場合と比べて、半導体レーザ素子1をサブマウント30により水平に近づけて搭載することを実現している。
【0062】
ダミー電極9の厚みとp型駆動電極8の厚みとを変えて形成する工程は、p型駆動電極側半田31の厚みとダミー電極側半田32の厚みとを変えて形成する工程と比較して、より簡便に実現することが可能であり、製造工程の簡便化と製造コストの低減を実現することが出来る。具体的な方法として、ダミー電極9とp型駆動電極8の形成方法を変えてもよいし、ダミー電極9とp型駆動電極8とを共通する工程で作製した後にダミー電極9を金メッキによってさらに厚く形成してもよい。また、ダミー電極9とp型駆動電極8とを共通する工程で作製した後に化学的機械研磨(Chemical Mechanical Polishing、CMP)によってp型駆動電極8の頂上面の高さとダミー電極9の頂上面の高さをより近づけてもよい。これら方法を組み合わせてもよいのは言うまでもなく、例えば、ダミー電極9を金メッキによってさらに厚く形成した後に化学的機械研磨を施してもよい。
【0063】
[第6の実施形態]
図12は、本発明の第6の実施形態に係る光モジュールの断面図である。本実施形態に係る光モジュールは、半導体レーザ素子1とサブマウント30とを備えるが、本実施形態に係る半導体レーザ素子1と第5の実施形態に係る半導体レーザ素子1との違いは、p型駆動電極8の頂上面の高さとダミー電極9の頂上面の高さとの差を、両電極の厚みを変えずに、第2バンク部13の下方において半導体多層の一部を積層しないことによって相殺している点である。それ以外については、本実施形態に係る光モジュールは、第5の実施形態に係る光モジュールと共通する構造をしている。
【0064】
本実施形態に係る半導体レーザ素子1では、第2バンク部13の頂上面の高さが、リッジ部11の頂上面の高さより低くなるよう、半導体多層が形成されている。すなわち、第2バンク部13の頂上面とInP基板2の上表面との間に形成される半導体多層の構成は、リッジ部11の頂上面とn型InP基板2の上表面との間に形成される半導体多層の構成と異なっており、前者の半導体多層では後者の半導体多層の構成の一部が形成されていない。具体的には、第2バンク部13の下方に活性層4及びコンタクト層6が積層されていない。リッジ部11の頂上面とInP基板2の上表面との間に形成される半導体多層の構成は、下層から上層へかけて、活性層4、クラッド層5及びコンタクト層6である。第1乃至第5の実施形態において、第2バンク部13の頂上面とInP基板2の上表面との間に形成される半導体多層は、かかる構成と同じであり、半導体多層を構成する各層の厚みもそれぞれ等しく、リッジ部11の頂上面の高さと第2バンク部13の頂上面の高さは等しくなっている。これに対して、本実施形態において、第2バンク部13の頂上面とInP基板2の上表面との間には、活性層4及びコンタクト層6が形成されておらず、半導体多層の構成は、クラッド層5のみである。これにより、第2バンク部13の頂上面の高さは、リッジ部11の頂上面の高さよりも低くすることが出来ている。これにより、第1乃至第5の実施形態に係る半導体レーザ素子1と比較して、第2バンク部13の頂上面の高さをより低く形成することが出来ている。活性層4の厚みは200〜500nmであり、絶縁層7の厚みを活性層4の厚みと同程度に形成することにより、p型駆動電極8とダミー電極9を共通する工程を用いて、ほぼ等しい厚みに形成しても、p型駆動電極8の頂上面の高さとダミー電極9の頂上面との高さの差を相殺することができる。活性層4の厚みが絶縁層7の厚みと等しくするのが望ましい。このような構成を採用することによって、半田の厚み調整を省略しても半導体レーザ素子1をサブマウント30に対してより水平に近づいて搭載することができる。
【0065】
本実施形態では、第2バンク部13の下方において活性層4とコンタクト層6の両方を積層しないこととしたが、どちらか一方を積層しない構成としてもよい。その場合であっても、活性層4とコンタクト層6の両方が積層される場合と比較して、p型駆動電極8とダミー電極9の頂上面の高さの差をより小さくすることができる。また、第5の実施形態と第6の実施形態を組み合わせた構成を採用することとしてもよい。すなわち、活性層4の厚みが絶縁層7の厚みより薄い場合に、第2バンク部13の下方には活性層4やコンタクト層6を積層しないこととしつつ、ダミー電極9の厚みをp型駆動電極8のうち第2バンク部に形成される部分の厚みより厚くすることとしてもよい。同様に、活性層4の厚みが絶縁層7の厚みより厚い場合に、第2バンク部13の下方には活性層4やコンタクト層6を積層しないこととしつつ、ダミー電極9の厚みをp型駆動電極8のうち第2バンク部に形成される部分の厚みより薄くすることとしてもよい。例えば、活性層4の厚みが絶縁層7の厚みと異なる場合に、ダミー電極9の厚みとp型駆動電極8のうち第2バンク部に形成される部分の厚みとを異ならせて形成することにより、より水平に近づけて半導体レーザ素子1をサブマウント30に搭載することが出来る。さらに、化学的機械研磨を用いてp型駆動電極8とダミー電極9の頂上面の高さを揃えることとしてもよいし、第4の実施形態におけるp型駆動電極側半田31とダミー電極側半田32の厚みを変える構成を組み合わせてもよい。
【0066】
[第7の実施形態]
図13は、本発明の第7の実施形態に係る半導体レーザ素子1の上面図である。第7の実施形態に係る半導体レーザ素子1は、DFBレーザ部17と、集積ミラー40と、を備えており、第1の実施形態に係る半導体レーザ素子1と異なり、n型駆動電極3がInP基板2の上表面側に形成される。集積ミラー40は、リッジ部11とn型駆動電極3の間に形成されている。本実施形態に係るDFBレーザ部17は、n型駆動電極3以外について、第1乃至第6の実施形態に係る半導体レーザ素子1と共通する。本実施形態に係る半導体レーザ素子1では、
図13に示すように、n型駆動電極3がp型駆動電極8やダミー電極9と共に素子の上方(積層方向側)から見える構成となっている。次図によってより明らかとなるが、本実施形態では、p型駆動電極8が形成されている場所と異なる場所に、エッチング等により半導体多層を除去して形成したInP基板2に到達する溝部35があり、当該溝部35の底面に達するようにn型駆動電極3が形成されている。また、溝部35底面には絶縁層7が形成されていない。n型駆動電極3は、絶縁層7の上表面及びInP基板2の上表面に連続して広がって形成される。ただし、p型駆動電極8及びダミー電極9と非接触で形成される。第3コンタクト領域とは、InP基板2の上表面のうち半導体多層が積層されない領域であり、溝部35の底面に位置している。第3コンタクト領域は、n型駆動電極3とInP基板2の界面であるともいえる。n型駆動電極3は、第3コンタクト領域を含んで、絶縁層7の上表面までに連続して広がって形成される。絶縁層7は、半導体多層の上表面のうち予め定められた領域に形成される。ここで、予め定められた領域とは、半導体多層の上表面の全域から、少なくとも第1コンタクト領域、第2コンタクト領域、及び集積ミラー40が形成される領域を除く半導体多層の上表面である。また、InP基板2の上表面のうち少なくとも第3コンタクト領域には、絶縁層7は形成されない。なお、レーザ特性向上のため、溝部35の側面のうち少なくともn型駆動電極3が形成される部分に絶縁層7が形成されることが望ましい。n型駆動電極3が活性層4やクラッド層5等に直接接触しないようにするためである。本実施形態に係る半導体レーザ素子1では、InP基板2の下表面にn型駆動電極3を形成しなくてもよいため、InP基板2の下表面側からレーザ光を出射するような面出射型半導体レーザに好適な構成となる。
【0067】
本実施形態に係る半導体レーザ素子1では、リッジ部11の下方に形成された光導波路部の延長線上に集積ミラー40が形成されており、当該延長線のさらに先の上方にn型駆動電極3が形成されている。
図13のように半導体レーザ素子1を上方から平面的にみた場合に、当該延長線は、集積ミラー40と、n型駆動電極3が形成されるInP基板2の上表面である第3コンタクト領域を、この順に貫いている。ここで、光導波路部の「延長線」とは、光導波路部の中心を貫く線を延長した線をいうものとする。光導波路部の「延長線」とは、DFBレーザ部17が活性層4の出射側端面から出射する光の光束の中心の延長線であるといってもよい。
【0068】
図14は、本発明の第7の実施形態に係る光モジュールの断面図である。本実施形態に係る光モジュールは、本実施形態に係る半導体レーザ素子1とサブマウント30を備えており、半導体レーザ素子1のn型駆動電極3と、p型駆動電極8と、ダミー電極9とが、サブマウント30に半田によってろう付けされてジャンクションダウン実装されている。
図14は、サブマウント30に実装される半導体レーザ素子1の
図13におけるXIV−XIV線を貫く断面を示している。サブマウント30は、p型駆動電極8、ダミー電極9、及びn型駆動電極3のための配線パターンを有し、それぞれの電極と半田で融着される。すなわち、p型駆動電極8に融着するp型駆動電極側半田31(図示せず)、ダミー電極9に融着するダミー電極側半田32(図示せず)、及びn型駆動電極3に融着するn型駆動電極側半田33により、半導体レーザ素子1はサブマウント30に実装される。ここで、p型駆動電極側半田31は紙面の奥側に、ダミー電極側半田32は紙面の手前側に、それぞれ形成されている。
【0069】
本実施形態に係る半導体レーザ素子1は、活性層4を含む光導波路部の延長線上に集積ミラー40が形成された、面出射型半導体レーザである。このようなレーザは、LISEL(Lens Integrated Surface Emitting Laser)と呼ばれ、DFBレーザ部17を基本構造としている。ここで、DFBレーザ部17は、回折格子層16による干渉により格子間隔に応じた特定波長の光以外を打ち消して、特定波長の光を増幅して出射することを特徴とするレーザ部である。出射光の波長の制御が精密に行えるため、近接した波長のレーザ光を同時に用いる光通信等の分野において、波長の読み違いによる混線等を防ぐため広く使われているものである。本実施形態に係る半導体レーザ素子1のように、n型駆動電極3をp型駆動電極8やダミー電極9と同じ側の面に形成することで、全ての電極をサブマウント30にジャンクションダウン実装することが可能となり、ワイヤボンディングを排することができるため、製造コストの増大がさらに抑制されるという利点がある。
【0070】
図14における白抜き矢印は、DFBレーザ部17からの出射光の光路を表す。集積ミラー40の鏡面の法線方向は、光導波路部から出射される光の出射方向と斜交しており、DFBレーザ部17からの出射光は集積ミラー40で反射され、反射された光はInP基板2の内部を伝搬して、InP基板2の下表面(裏面)より外部へ出射する。DFBレーザ部17の光導波路部から出射される光の出射方向と集積ミラー40の鏡面の法線方向とがなす角は、45°±10°の範囲が望ましく、さらに望ましくは45°である。集積ミラー40の鏡面の法線方向が光導波路部から出射される光の出射方向と斜交することにより、光導波路部から出射される光はInP基板2の下表面側より外部へ出射されるよう光路変換される。集積ミラー40はこれに限定されることはなく、集積ミラー40で反射された光が、各電極が形成される側より半導体レーザ素子1から外部へ出射されるよう、集積ミラー40が形成されていてもよい。
【0071】
図14に示す通り、DFBレーザ部17からの出射光は集積ミラー40により図面の垂直上方に光路変換され、無反射膜41が成膜された集積レンズ42を通じて外部に出射される。このような構成を採用することにより、外部光学部品を用いることなく、高効率な直接ファイバ結合が可能となる。このようにレーザ光をInP基板2の下表面側から出射させる場合、ジャンクションダウン実装が望ましい。なお、本実施形態に係る半導体レーザ素子1では、
図14に示す通り、DFBレーザ部17の光導波路部の出射側端面(活性層4の出射側端面)の前方にクラッド層5が形成されており、集積ミラー40は、かかるクラッド層5の一部を除去して斜面とすることにより形成される。集積ミラー40がかかる構造となることにより、光導波路部から出射される光が集積ミラー40で反射され、反射された光がInP基板2の下表面側より外部へ出射される。これに対して、集積ミラー40で反射された光が、各電極が形成される側(上表面側)より外部へ出射する場合、集積ミラー40は例えば以下のように形成されればよい。DFBレーザ部17の光導波路部の出射側端面(活性層4の出射側端面)の外側ではクラッド層5などの半導体多層が除去されている。そして、DFBレーザ部17の出射側端面のさらに前方に配置される半導体多層に、集積ミラー40が形成される。集積ミラー40は、DFBレーザ部17から出射される光が上表面側へ反射されるように鏡面が形成されればよい。かかる鏡面の法線方向はDFBレーザ部17から出射される光より上表面側へ傾斜していればよく、出射される光と法線方向のなす角度が45°であることが望ましい。また、集積ミラー40は半導体多層に埋め込まれるものであってもよいし、光路を図面の垂直上方以外の方向に変換するものであってもよい。ただし、集積ミラー40は、一般的な半導体レーザ素子の端面に形成される反射膜(又は反射抑制膜)ではなく、光導波路部端面から出射する光を再び光導波路部へ反射するミラーではない。集積ミラー40は、DFBレーザ部17より出射される光を反射して、InP基板2の下側表面側又は上側表面側より外部へ出射するために配置される。
【0072】
本実施形態に係る半導体レーザ素子1では、n型駆動電極3はInP基板2の上表面と絶縁層7の上表面にわたって形成され、n型駆動電極3の頂上面がn型駆動電極側半田33を介してサブマウント30の配線パターンに融着されている。n型駆動電極側放熱経路24は第1の実施形態等の場合とは異なるが、半導体レーザ素子1のチップ長(
図14における左右方向の長さ)は400μm程度であり、発熱部20からn型駆動電極3までの距離はダミー電極側放熱経路23等と比べて長くなっている。また、発熱部20からの熱は、光導波路部の延伸方向よりも、直交する方向、すなわちp型駆動電極8やダミー電極9が形成されている方向に向けてより多く拡散するため、n型駆動電極側放熱経路24の放熱効果はダミー電極側放熱経路23の放熱効果よりも小さいことが予測される。なお、n型駆動電極3の寄生容量への影響は無視できるほどに小さい。なお、n型駆動電極3は、集積ミラー40の周囲にまわり込むようにL字形状やコの字形状で形成されることとしてもよい。その場合も、n型駆動電極3は、p型駆動電極8及びダミー電極9と物理的に接触しないことが必要とされる。
【0073】
なお、
図14に示す半導体レーザ素子1において、n型駆動電極3が形成される絶縁層7の頂上面の高さは、第2バンク部13に形成される絶縁層7の頂上面の高さとほぼ等しい。そのため、n型駆動電極3とp型駆動電極8を共通の工程により形成し、両者の厚みをほぼ等しく形成すると、p型駆動電極8と同様に、n型駆動電極3の頂上面の高さは、ダミー電極9の頂上面の高さよりも高くなる。ダミー電極9に融着するダミー電極側半田32の厚みを、p型駆動電極8に融着するp型駆動電極側半田31の厚みやn型駆動電極3に融着するn型駆動電極側半田33の厚みよりも厚くすることにより、半導体レーザ素子1をより水平に近づけてサブマウント30に実装することが出来る。また、後述するように第5もしくは第6の実施形態で示した半導体レーザ素子1の構成を適用してもよい。
【0074】
図15は、n型駆動電極の面積と熱抵抗の相対値の関係を示す図である。
図15で用いられる半導体レーザ素子は、
図13に示す半導体レーザ素子1と異なりダミー電極9が形成されない半導体レーザ素子であり、
図13に示す半導体レーザ素子1と同様に、n型駆動電極3がp型駆動電極8とInP基板2に対して同じ側に形成されるLISELである。
図15に用いられる光モジュールでは、当該半導体レーザ素子がサブマウント30にジャンクションダウン実装されている。かかる光モジュールにおいて、半導体レーザ素子のn型駆動電極の面積を変化した場合の熱抵抗の相対値が、
図15に示されている。熱抵抗の基準となる熱抵抗は、
図5に示した第1の比較例に係る半導体レーザ素子をジャンクションダウン実装した光モジュールである。n型駆動電極の面積は、例えば、27500μm
2の場合、チップ長(単位素子の
図13における縦方向の長さに相当)が400μm、チップ幅(単位素子の
図13における横方向の長さに相当)が250μm、DFBレーザ部の共振器長が150μmのLISELの場合に相当する。
図15と
図10を比較すると、第4の実施形態に係る光モジュールの場合は、熱抵抗の相対値が約0.82となるのに対して、
図15に用いられる半導体レーザ素子(LISEL)においてn型駆動電極の面積を大きくしても、熱抵抗の相対値は約0.87までしか下がっていない。第4の実施形態において、ダミー電極9の面積は約3850μm
2であり、n型駆動電極の面積の1/7程度であるにもかかわらず、熱抵抗がより下がっており、ダミー電極9の放熱効果はより高いことがわかる。
【0075】
よって、第7の実施形態に係る半導体レーザ素子1のように、ダミー電極9を形成しつつ、n型駆動電極3の面積を最大化する構成の場合に放熱効果がより良くなる。しかしながら、上述のように、n型駆動電極3の面積を増大させることによる放熱性能への寄与は、ダミー電極9の面積を増大させることによる寄与よりも小さい。
【0076】
図13に示す第7の実施形態に係る半導体レーザ素子1は、単体の半導体レーザ素子1の場合だが、半導体レーザ素子1を複数並べてアレイ化する構成を採用することもできる。例えば、
図13に示す単一素子を左右に繰り返し並べる構成が考えられる。そのような構成を採用し、ジャンクションダウン実装することで、全ての駆動電極配線をサブマウント30に集約することができ、ワイヤボンディングを排することができるため、工程を単純化して製造コストの増大をさらに抑制することができる。
【0077】
また、第7の実施形態に係る半導体レーザ素子1を複数並べてアレイ化する場合において、n型駆動電極3を複数の単位素子にわたって連続して形成することとして、n型駆動電極3を全単位素子の共通電極としてサブマウント30にジャンクションダウン実装することもできる。そのような構成を採用した場合、ワイヤボンディングを排することができる利点に加えて、n型駆動電極3を全単位素子で一体形成することができるため、製造工程がさらに単純化され、製造コストの増大がさらに抑制される。以上のような利点があるため、第7の実施形態に係る半導体レーザ素子1をアレイ化する構成は、アレイ化した面出射型半導体レーザをサブマウント30に実装する光モジュールの場合において特に有効となる。
【0078】
さらに、
図13に示す半導体レーザ素子1のp型駆動電極8及びダミー電極9を、第5の実施形態に係るp型駆動電極8及びダミー電極9と同様に、ダミー電極9の厚みがp型駆動電極8のうち第2バンク部13に形成される部分の厚みより厚くするようダミー電極9が形成されてもよい。この際、n型駆動電極3をp型駆動電極8と共通する工程で形成することにより、n型駆動電極3の厚みをp型駆動電極8の厚みとほぼ等しく形成することが出来、ジャンクションダウン実装した場合に、半導体レーザ素子1をサブマウント30に対し、より水平に近づけて搭載することができる。このような構成は、アレイ化した面出射型半導体レーザの場合にも適用でき、各単位素子間におけるレーザ光の出射方向のばらつきが抑制された光モジュールを得ることができる。
【0079】
他に、
図13に示す半導体レーザ素子1の半導体多層の構造が、第6の実施形態に係る半導体多層と同様に、第2バンク部13の頂上面の高さが、リッジ部11の頂上面の高さより低くなるよう、半導体多層が形成されてもよい。この場合、n型駆動電極3の下方に形成される半導体多層についても第2バンク部13における半導体多層の構成を採用し、n型駆動電極3の頂上面の高さとダミー電極9の頂上面の高さの差を小さくすることとしてもよい。そのような構成を採用することにより、ジャンクションダウン実装した場合に、半導体レーザ素子1をサブマウント30に対し、より水平に近づけて搭載することができる。アレイ化した面出射型半導体レーザの場合にも適用できることは上述の通りである。また、第5の実施形態に係るダミー電極9の構成と、第6の実施形態に係る半導体多層の構成の両方を組み合わせて適用することとしてもよい。
【0080】
本発明の実施形態は、以上に説明したものに限られない。例えば、n型駆動電極3をInP基板2の上表面に形成する場合において、集積ミラー40を形成せず、光導波路部の端面からレーザ光を出射する構成としてもよい。また、以上に説明した実施形態と駆動電極の極性が反対となる構成を採用することとしてもよい。その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の変更が可能である。