特開2015-136516(P2015-136516A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社デンソーの特許一覧 ▶ 国立大学法人信州大学の特許一覧 ▶ 学校法人東京女子医科大学の特許一覧

<>
  • 特開2015136516-腕支持装置 図000003
  • 特開2015136516-腕支持装置 図000004
  • 特開2015136516-腕支持装置 図000005
  • 特開2015136516-腕支持装置 図000006
  • 特開2015136516-腕支持装置 図000007
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-136516(P2015-136516A)
(43)【公開日】2015年7月30日
(54)【発明の名称】腕支持装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 19/00 20060101AFI20150703BHJP
   B25J 11/00 20060101ALI20150703BHJP
【FI】
   A61B19/00 502
   B25J11/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-10383(P2014-10383)
(22)【出願日】2014年1月23日
【新規性喪失の例外の表示】申請有り
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(71)【出願人】
【識別番号】504180239
【氏名又は名称】国立大学法人信州大学
(71)【出願人】
【識別番号】591173198
【氏名又は名称】学校法人東京女子医科大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】中村 悟
(72)【発明者】
【氏名】高橋 稔
(72)【発明者】
【氏名】奥田 英樹
(72)【発明者】
【氏名】本郷 一博
(72)【発明者】
【氏名】後藤 哲哉
(72)【発明者】
【氏名】原 洋助
(72)【発明者】
【氏名】岡本 淳
【テーマコード(参考)】
3C707
【Fターム(参考)】
3C707AS35
3C707AS38
3C707BS10
3C707BS22
3C707CU04
3C707CY22
3C707HT40
3C707KS33
3C707KX06
3C707LT08
3C707LV15
3C707XK02
3C707XK07
3C707XK08
3C707XK17
3C707XK28
3C707XK64
(57)【要約】
【課題】作業者の腕を支持する腕支持装置において、前記腕が載置される載置部を鉛直成分を含む軸回りに回動させる関節を、適切な位置に配置して操作性を向上させること。
【解決手段】(A)に例示するように、アームホルダ(載置部)の鉛直軸回りの回転中心となる軸Jとそのアームホルダに支持された肘Eとの間隔が50mm未満であると、アームホルダを軸J回りに回動させたときの指先の振れ幅が大きくなり、手術等の繊細な作業では作業性が低下する。これに対して、(B)に示すように、軸Jがアームホルダに支持された肘Eよりも50mm以上手首W側で、かつ、前腕Aの手首Wよりも肘E側の位置を通る場合、指先の動きをコントロールするのが容易となる。従って、その腕支持装置を用いた作業の作業性が向上する。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業者の腕を支持する腕支持装置(1)であって、
前記腕が載置される載置部(11)と、
前記載置部に設けられ、その載置部に載置される作業者の肘の位置を規定する規定部(113)と、
複数の関節(31,32,33,34,35)を有し、前記載置部を移動可能に支持する支持部(12)と、
前記支持部の少なくとも一箇所に設けられ、前記腕が前記載置部に載置された状態で、少なくとも1つの前記関節に対してその関節回りに重力による力のモーメントが作用するのを抑制する錘(51,52)と、
を備え、
前記複数の関節のうちの一つは、前記載置部を鉛直成分を含む軸回りに回動させる特定関節(35)であり、その特定関節の軸は、前記載置部に載置された前記腕に対して、前記規定部によって位置を規定された肘よりも50mm以上手首側で、かつ、前記腕の手首よりも肘側の位置を通るように設けられたことを特徴とする腕支持装置。
【請求項2】
前記特定関節は、前記載置部に載置された前記腕に対して、前記規定部によって位置を規定された肘よりも50〜100mm手首側に設けられたことを特徴とする請求項1に記載の腕支持装置。
【請求項3】
前記特定関節回りに前記載置部を回動させるときにその載置部に作用する摺動抵抗は、0.01〜0.1Nmであることを特徴とする請求項1又は2に記載の腕支持装置。
【請求項4】
前記載置部は、前記特定関節に対する装着位置を前記腕の長手方向に調整可能に構成されたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の腕支持装置。
【請求項5】
前記複数の関節のうち少なくとも1つの関節の機能を制限して前記載置部の移動を制限するブレーキ(31A,32A,33A,34A)を、
更に備えたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の腕支持装置。
【請求項6】
前記ブレーキは、前記特定関節を除いて、前記複数の関節の全てに備えられたことを特徴とする請求項5に記載の腕支持装置。
【請求項7】
前記載置部は、上方が開いた断面U字形の形状で構成された載置面(111)を有することを特徴とする請求項4項に記載の腕支持装置。
【請求項8】
前記載置部は、前記特定関節に対する装着位置を調整するべく前記断面U字形の長手方向に沿って複数の調整穴(115)が形成され、前記調整穴を介して、前記支持部の一端に設けられた載置部用支持部(25)に固定されることを特徴とする請求項7項に記載の腕支持装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業者の腕を支持する腕支持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば脳神経外科手術等のように緻密な手作業が要求される作業では、作業者(例えば手術を行う医師)の腕を支持する腕支持装置が用いられる場合がある。このような腕支持装置としては、可動の関節式保持アームにおける先端に設けられた支持部(載置部)に、ベルト部材を介して医師の腕を固定することで支持部を腕に追従移動させ、フットスイッチの操作時には関節式保持アームを固定して支持部の移動を禁止する構成が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
しかしながら、特許文献1に記載の構成では、例えばピンセット等の器具を作業台に置く場合など、支持部から腕を外す都度、ベルト部材の着脱が必要となり、使い勝手が悪い。これに対し、腕台(載置部)を支持する多関節アームに、腕台を上方へ付勢する力を付与することで、腕台を腕の下方から圧接し、圧接による摩擦抵抗で腕台を腕に追従移動させる構成も提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−272163号公報
【特許文献2】特開2009−291363号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
これらの腕支持装置では、作業者の腕が載置される載置部を鉛直成分を含む軸回りに回動させる関節を設けることが考えられるが、そのような関節が載置部に対してどのような位置にあるのが望ましいかについてはこれまで検討されてこなかった。そこで、本発明は、作業者の腕を支持する腕支持装置において、前記腕が載置される載置部を鉛直成分を含む軸回りに回動させる関節を適切な位置に配置して操作性を向上させることを目的としてなされた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達するためになされた本発明の腕支持装置(1)では、作業者の腕が載置される載置部(11)には、その載置部に載置される作業者の肘の位置を規定する規定部(113)が設けられ、載置部に対する腕の位置が規定される。この載置部を移動可能に支持する支持部(12)は、複数の関節(31,32,33,34,35)を有し、その関節うちの、前記載置部を鉛直成分を含む軸回りに回動させる特定関節(35)は、次のような位置に配置されている。
【0007】
すなわち、特定関節は、その軸(鉛直成分を含む軸)が、前記載置部に載置された前記腕に対して、前記規定部によって位置を規定された肘よりも50mm以上手首側で、かつ、前記腕の手首よりも肘側の位置を通るように設けられている。特定関節の軸と肘との間隔が50mm未満であると、載置部を前記軸回りに回動させたときの指先の振れ幅が大きくなり、手術等の繊細な作業では作業性が低下する。また、特定関節の軸が手首よりも指先側を通っていると、載置部を作業野(例えば手術野)に近づけるときに特定関節と作業野の部材(例えば手術野の身体)とが干渉する虞がある。
【0008】
これに対して、本発明のように特定関節の軸が、前記載置部に載置された前記腕に対して、前記規定部によって位置を規定された肘よりも50mm以上手首側で、かつ、前記腕の手首よりも肘側の位置を通る場合、その腕支持装置を用いた作業の作業性が向上する。すなわち、本発明では、肘の大きな動きを縮尺して指先を動かすことができるので、手術等の繊細な作業における作業性が向上する。なお、前記50mmとは、おおよその目安であり、50mmに臨界的な意義があるわけではない。また、肘から手首までは一般的に250〜300mmである。
【0009】
更に、本発明では、前記支持部の少なくとも一箇所に設けられた錘(51,52)は、前記腕が前記載置部に載置された状態で少なくとも1つの前記関節に対してその関節回りに重力による力のモーメントが作用するのを抑制する。このため、腕が載置部に載置されているときにその載置部が重力の影響で予期せぬ動きをしたり、腕に載置部から余分な力が加わるのを抑制することができる。従って、本発明の腕支持装置を用いた作業の作業性が一層向上する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明を適用した腕支持装置の外観を表す図であり、(A)は側面図、(B)は斜視図である。
図2】その腕支持装置のリンク機構の構成を表す模式図である。
図3】その腕支持装置のアームホルダ近傍の構成を表す斜視図である。
図4】その腕支持装置の使用例を模式的に表す側面図である。
図5】その腕支持装置の使用例及び効果を模式的に表す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[実施形態の構成]
以下、本発明が適用された実施形態について、図面を用いて説明する。図1に示す実施形態の腕支持装置1は、手術を行う作業者としての医師D(図4参照)の腕(具体的には前腕A)を支持する装置である。腕支持装置1は、医師Dの前腕Aが載置されるアームホルダ11(載置部の一例)と、アームホルダ11を移動可能に支持する多関節アーム12(支持部の一例)と、を備える。
【0012】
多関節アーム12は、ベース部21,肩部22,第1腕部23,第2腕部24,及びホルダ支持部25(載置部用支持部の一例)を備え、5自由度に構成されている。多関節アーム12の全体を支持するベース部21は、床Fの上における所望の位置に固定的に配置可能となっている。肩部22は、ベース部21から鉛直方向に伸び、ベース部21に対して鉛直軸回りに回動可能に構成されている。第1腕部23は、一端が肩部22の上端に水平軸回りに回動可能に接続されている。第2腕部24は、一端が第1腕部23の他端に水平軸回りに回動可能に接続されている。ホルダ支持部25は、第2腕部24の他端に水平軸回りに回動可能に接続され、その軸と直交する主として鉛直方向の軸J回りに回動可能にアームホルダ11を支持する。
【0013】
図2に模式的に示すように、多関節アーム12は、5つの関節31,32,33,34,35を有している。本実施形態では、関節31〜35はいずれも回転関節である。具体的には、関節31は、ベース部21の上端に、肩部22を鉛直軸回りに回転可能に接続する。
【0014】
第1腕部23の内部には、2本の棒材41,42の両端が上下方向に一定間隔に維持された平行リンク機構43が設けられ、その平行リンク機構43の上側の棒材41の一端が、関節32を介して肩部22の上端に水平軸回りに回動可能に接続されている。第2腕部24の内部には、2本の棒材45,46の両端が上下方向に一定間隔に維持された平行リンク機構47が設けられ、その平行リンク機構47の上側の棒材45の一端が、棒材41の他端に、関節33を介して水平軸回りに回動可能に接続されている。棒材45の他端には、水平軸回りに回転可能な関節34とその関節34とは回転軸が直交する関節35(特定関節の一例)とを介して、アームホルダ11が接続されている。また、関節35には、アームホルダ11に加わる力を検出する力センサ48が設けられている。
【0015】
棒材41は、関節32を突き抜けて延びており、その先端部にカウンタウェイト51が設けられている。このカウンタウェイト51は、アームホルダ11に前腕Aが載置された状態で関節32回りに重力による力のモーメントが作用するのを抑制する。また、関節32に接続された側の棒材41,42の一端を連結する棒材49は、棒材42よりも下方まで延びており、その先端にカウンタウェイト52が設けられている。このカウンタウェイト52は、平行リンク機構43,47を介して、アームホルダ11に前腕Aが載置された状態で関節34回りに重力による力のモーメントが作用するのを抑制する。すなわち、カウンタウェイト51,52は、錘の一例に相当する。
【0016】
関節35を除いて、各関節31,32,33,34の全てには、当該関節31,32,33,34の機能(本実施形態では回転機能)を制限する(本実施形態ではロックする)ブレーキ31A,32A,33A,34Aが設けられている。本実施形態では、ブレーキ31A,32A,33A,34Aとして、電磁ブレーキが用いられている。これにより、腕支持装置1において、アームホルダ11の移動を制限(本実施形態ではロック)する動作モードであるロックモードと、アームホルダ11の移動の制限(ロック)を解除した動作モードであるフリーモードと、が実現される。
【0017】
ロックモードは、固定されたアームホルダ11の上に医師Dが前腕Aを載置する状態を想定した動作モードである。ロックモードでは、ブレーキ31A,32A,33A,34Aにより関節31,32,33,34が固定され、アームホルダ11の移動が禁止(位置が固定)される。ロックモードにおいては、医師Dがアームホルダ11から前腕Aを外しても、アームホルダ11の位置が固定されている。ただし、関節35にはブレーキがないため、すなわち、関節35を除いて、各関節31,32,33,34には、回転機能を制限するブレーキ31A,32A,33A,34Aが設けられているため、ロックモードであっても、アームホルダ11の角度は軸J回りに自由に調整することができる。
【0018】
一方、フリーモードは、医師Dがアームホルダ11を前腕Aに追従移動させる状態を想定した動作モードである。フリーモードでは、ブレーキ31A,32A,33A,34Aによる関節31,32,33,34の固定が解除され、アームホルダ11を自由に動かすことができる。フリーモードにおいて、アームホルダ11から前腕Aに加わる力は極めて小さく、ブレーキ31A,32A,33A,34Aの摺動抵抗も小さいので、医師Dは前腕Aにそれ程力を加えなくてもその前腕Aにアームホルダ11を追従移動させることができる。ロックモードとフリーモードとの切換は、医師Dによるボタン操作に応じて切り替えられてもよく、前腕Aに加わる力を力センサ48等にて検出することによって自動的に切り替えられてもよい。
【0019】
図3に示すように、アームホルダ11は、上方が開いた断面U字形の形状に構成された載置面(底面)111と、その載置面111に載置される前腕Aの長手方向(以下、腕軸方向という。)における肘E(図4参照)側にせり上がった肘位置規定部113(規定部の一例)とを備える。この載置面111には、前腕Aの手首Wより肘E側の部分が載置され、肘Eが肘位置規定部113に当接することによってその位置が規定される。
【0020】
アームホルダ11には、断面U字形の長手方向に沿って複数(5つ)の調整穴115が形成されている。ホルダ支持部25の上面には、関節35の動作に応じて軸J回りに回転する回転板251が設けられている。回転板251の上面には、アームホルダ11の複数の調整穴115のうち、隣接する2つの調整穴115と対応するボルト穴253が形成されている。アームホルダ11は、隣接する2つの調整穴115を介して、断面U字形の上方から2本のボルト116により、回転板251の上面に固定される。この複数の調整穴115とボルト穴253により、肘位置規定部113によって規定された肘Eの位置と軸Jとの間隔(腕軸方向の間隔)Lが調整可能である。この間隔Lは50mm以上(より好ましくは70〜100mm)とされるのが好ましい。また、回転板251が回転する際に作用する摺動抵抗は、0.01〜0.1Nmとなるように調整されている。なお、アームホルダ11の回転板251への装着時には、アームホルダ11に載置された前腕Aの腕軸が軸Jと直交する。アームホルダ11の複数の調整穴115の中心間隔(ピッチ)は、術者(医師D)の腕の長さ、好みに合わせて設計することが可能で、ピッチは10〜15mm程度が好ましい。
【0021】
[実施形態の効果及び他の実施形態]
以下、そのように調整された本実施形態の腕支持装置1の効果について説明する。腕支持装置1が使用される場合、図4に例示するように、医師Dは、椅子Cをその腕支持装置1の隣に配置して、その椅子Cに腰掛けた状態で前腕Aをアームホルダ11に載置する。その後、動作モードがフリーモードとされると、医師Dはアームホルダ11を前腕Aに容易に追従移動させることができる。すなわち、カウンタウェイト51,52の作用により、アームホルダ11に前腕Aが載置された状態で関節32,34回りに重力による力のモーメントが作用するのが抑制される。換言すれば、多関節アーム12は、前腕Aの自重と同じ力でアームホルダ11を前腕Aに圧接した状態で釣り合っている。
【0022】
このため、アームホルダ11は、前記圧接による摩擦抵抗で前腕Aに良好に追従移動する。また、前記釣り合いにより、前腕Aがアームホルダ11に載置されているときにそのアームホルダ11が重力の影響で予期せぬ動きをしたり、前腕Aにアームホルダ11から余分な力が加わるのを抑制することができる。更に、前腕Aの肘Eは、肘位置規定部113によって位置が規定されるので、アームホルダ11の腕軸方向への移動が一層円滑に行える。
【0023】
また、回転板251の軸Jは肘位置規定部113によって位置を規定された肘Eよりも50mm以上手首W側で、かつ、手首Wよりも肘E側の位置を通るように設けられている。このため、腕支持装置1を用いた作業の作業性が一層向上する。すなわち、図5(A)に例示するように、軸Jと肘Eとの間隔が50mm未満であると、アームホルダ11を軸J回りに回動させたときの指先の振れ幅が大きくなり、手術等の繊細な作業では作業性が低下する。これに対して、図5(B)に示すように、軸Jが肘位置規定部113によって位置を規定された肘Eよりも50mm以上手首W側で、かつ、前腕Aの手首Wよりも肘E側の位置を通る場合、指先の動きをコントロールするのが容易となる。すなわち、肘Eの大きな動きを縮尺して指先を動かすことができるので、手術等の繊細な作業における作業性が向上する。従って、その腕支持装置1を用いた作業の作業性が向上する。
【0024】
また、腕支持装置1では、関節35がブレーキを持たないため、ロックモードでもアームホルダ11を軸J回りに回動させることができ、前腕Aを安定して軸J回りに動かすことができる。
【0025】
一方、軸Jが手首Wよりも指先側を通っていると、アームホルダ11やホルダ支持部25が手術野の身体と干渉する虞があるが、腕支持装置1ではそのような事態も抑制することができる。更に、腕支持装置1では、軸Jをどの程度手首Wに近づけるかを、複数の調整穴115のうち、どの隣接する調整穴115にボルト116を挿入してホルダ支持部25に固定するかによって医師Dの好みに応じて腕軸方向に容易に調整することができる。また、回転板251の摺動抵抗が小さすぎると前腕Aが動きすぎてしまい、その摺動抵抗が大きすぎると前腕Aを動かしづらくなるが、本実施形態ではその摺動抵抗を0.01〜0.1Nmとしているので、前腕Aを微動させることが容易となる。従って、本実施形態では、手術等の繊細な作業における作業性が一層向上する。
【0026】
また、関節35を除いて、各関節31,32,33,34には、回転機能を制限するブレーキ31A,32A,33A,34Aが設けられているため、ロックモードであっても、アームホルダ11の角度は軸J回りに自由に調整することができる。このロックモードにより、医師Dが固定されたアームホルダ11の上に前腕Aを載置したまま、前腕Aを軸J回りに自由に回転することができるため、医師Dは細かい作業を疲労することなく、長時間に亘り、自由に実施することができる。特に、数ミリ単位で異なる部位を縫合する細かい作業を実施するときに効果を発揮することができる。
【0027】
更に、アームホルダ11の固定位置を腕軸方向に調整することができるため、医師Dが実施する作業内容や、医師Dの個人的な好みや体格差などに応じて、前腕Aの微動範囲が調整でき、より一層作業性を向上することができる。
【0028】
なお、アームホルダ11の腕軸方向の調整方法は、一般にスライド調整・固定方法もあるが、本案のようにスライド方向(腕軸方向)と直角方向をなす方向からネジ固定を行うことで、腕の前後方向の動きに対するすべり・ずれを防止し安全を確保する効果がある。
【0029】
なお、本発明は前記実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の形態で実施することができる。例えば、回転板251に作用する摺動抵抗は他の値であってもよい。また、多関節アーム12における関節数やカウンタウェイトの数は種々に変更することができる。また、アームホルダ11の形状も、種々に変更することができる。更に、本発明は、手術用の腕支持装置以外にも、精密機械製造用の腕支持装置等、種々の分野に適用することができる。
【符号の説明】
【0030】
1…腕支持装置 11…アームホルダ 12…多関節アーム
21…ベース部 22…肩部 23…第1腕部 24…第2腕部
25…ホルダ支持部 31,32,33,34,35…関節
43,47…平行リンク機構 51,52…カウンタウェイト
111…載置面 113…肘位置規定部 115…調整穴
116…ボルト 251…回転板 253…ボルト穴
A…前腕 D…医師 E…肘
図2
図1
図3
図4
図5