特開2015-136632(P2015-136632A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特開2015136632-ろ布の処理方法 図000005
  • 特開2015136632-ろ布の処理方法 図000006
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-136632(P2015-136632A)
(43)【公開日】2015年7月30日
(54)【発明の名称】ろ布の処理方法
(51)【国際特許分類】
   B09B 3/00 20060101AFI20150703BHJP
【FI】
   B09B3/00 301S
   B09B3/00 301Z
   B09B3/00 ZZAB
   B09B3/00 304Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-7727(P2014-7727)
(22)【出願日】2014年1月20日
(71)【出願人】
【識別番号】512244255
【氏名又は名称】富士炉材株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137338
【弁理士】
【氏名又は名称】辻田 朋子
(72)【発明者】
【氏名】上西 武彦
【テーマコード(参考)】
4D004
【Fターム(参考)】
4D004AA12
4D004AC05
4D004CA04
4D004CA15
4D004CA34
4D004CA45
4D004CB13
4D004CB21
4D004CC03
4D004CC06
4D004CC13
4D004DA03
4D004DA20
(57)【要約】
【課題】廃棄されるろ布を無害安定化することができる処理装置を提供することを課題とする。
【解決手段】ろ布を粉砕した後に、この粉砕されたろ布を、セメント、キレート剤、および、水とともに混練した後に、所定期間養生して前記セメントを固化させることにより、前記粉砕されたろ布をコンクリート被覆された粒状物とすることを特徴とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有害物質除去装置に装着されて、この有害物質除去装置に送り込まれる気体中の有害物質を捕捉して前記気体を浄化するろ布の処理方法であって、前記ろ布を粉砕した後に、この粉砕されたろ布を、セメント、キレート剤、および、水とともに混練した後に、所定期間養生して前記セメントを固化させることにより、前記粉砕されたろ布をコンクリート被覆された粒状物とすることを特徴とするろ布の処理方法。
【請求項2】
前記ろ布、セメント、キレート剤、および、水の混合比が、重量比で、100:5〜20:1〜10:10〜30であることを特徴とする請求項1に記載のろ布の処理方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃棄物焼却施設や汚泥処理施設等の廃棄物処理施設に設置されて、この廃棄物処理施設から排出される排気中の有害物質を捕捉して、この排気を浄化するろ布の処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、前述した廃棄物処理施設においては、廃棄物処理に伴って有害物質を含む気体が排出される。
【0003】
そして、前記排気中の有害物質濃度の規制値が、廃棄物の処理及び清掃に関する法律等によって定められており、前記有害物質の濃度を前記規制値以下とするための一方法として、前記排気をバグフィルター等のろ布を通過させ、このろ布によって前述した有害物質を捕捉して除去することが行なわれている(特許文献1参照)。
【0004】
一方、捕捉した有害物質は、前記ろ布から分離された後に、所定の処理により無害安定化されて最終処分場にて処分される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−80308号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、従来では、前述したように、捕捉した有害物質の無害安定化処理は行なわれているものの、ろ布の無害安定化処理については考慮されていない。
【0007】
前記ろ布は、長期の使用により、分離除去できない残存有害物質が蓄積し、定期的な交換が必要で、使用済みのろ布が定期的に発生することから、この使用済みのろ布を無害安定化する処理が必要とされている。
【0008】
本発明は、このような従来の問題点に鑑みてなされたもので、使用済みのろ布を有効に無害安定化して最終処分を可能にする処理方法を提供することを解決課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のろ布の処理方法は、有害物質除去装置に装着されて、この有害物質除去装置に送り込まれる気体中の有害物質を捕捉して前記気体を浄化するろ布の処理方法であって、前記ろ布を粉砕した後に、この粉砕されたろ布を、セメント、キレート剤、および、水とともに混練した後に、所定期間養生して前記セメントを固化させることにより、前記粉砕されたろ布をコンクリート被覆された粒状物とすることを特徴とする。
【0010】
このような構成とすることにより、前記ろ布の残留有害物質は、キレート剤の作用によって不溶化されるとともに、粉砕されたろ布内に取り込まれ、さらに、この粉砕されたろ布が固化するコンクリートによって被覆される。
【0011】
そして、粉砕されたろ布内に取り込まれた有害物質は、前記コンクリートの被覆によって溶出が阻止され、無害安定化状態に保持される。
【0012】
また、前記有害物質を、粉砕されたろ布中に微量ずつ閉じ込め、かつ、コンクリートによって被覆された粒状物とすることにより、閉じ込められた有害物質量に対するコンクリート量の比率を高めて、前述した有害物質の溶出を効果的に防止することができる。
【0013】
また、前記ろ布、セメント、キレート剤、および、水の混合比を、重量比で、100:5〜20:1〜10:10〜30とすることにより、前述した有害物質の溶出防止効果を有効に得ることができる。
【発明の効果】
【0014】
このように、本発明によれば、使用済みのろ布を効果的に無害安定化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】ろ布としてのバグフィルターを用いた有害物質除去装置の一構造例を示す概略図である。
図2】本発明の一実施形態のろ布の処理方法を実施するための処理装置の一例を示すシステム構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、ろ布としてのバグフィルターを用いた有害物質除去装置Bの一構造例を示す概略図で、有害物質を含む気体が送り込まれる気体流入口1aと、前記有害物質が除去された浄化気体が排出される気体排出口1bとを備えたハウジング1を備え、このハウジング1内には、前記気体流入口1aと前記基体排出口1bとを分離する隔壁2が設けられている。
【0017】
また、前記ハウジング1の下部には、前記気体流入口1aに連通させられ、前記気体から分離された有害物質を集積させるホッパー1cが連設され、このホッパー1cの最下部には、前記集積された有害物質を切り出すロータリーバルブ3が設けられている。
【0018】
また、前記隔壁2には、リテーナー4と、このリテーナー4を被覆するように装着された筒状のろ布5が、前記リテーナー4とともに、前記隔壁2を貫通するようにして複数装着されている。
【0019】
さらに、前記ハウジング1の、前記隔壁2の下流側には、圧縮空気供給パイプ6が配設され、この圧縮空気供給パイプ6には、前記複数のろ布5の内部に圧縮空気を噴射するノズル7が設けられている。
【0020】
この有害物質除去装置Bは、有害物質を含む気体を、前記気体流入口1aから前記ハウジング1内に送り込み、この気体を前記ろ布5を透過させた後に、前記気体排出口1bから外部へ排気するようになっており、気体が前記ろ布5を透過する際に、この気体中の有害物質を前記ろ布5の外周面に付着させて分離することにより前記気体を浄化し、浄化された気体を外気へ放出するようにしている。
【0021】
そして、前記気体の送り込みを停止させるとともに、前記ノズル7から前記ろ布5の内部へ向けて圧縮空気を吹き込んで外部へ透過させることにより、前記ろ布5の外周面に付着している有害物質を剥離させて、前記ろ布5における有害物質の分離機能を確保する。
【0022】
前述したように前記ろ布5から剥離された有害物質は、自重によって下方のホッパー1cへ落下するとともに、このホッパー1cによって集積させられ、集積された有害物質は、前記ロータリーバルブ3によって切り出されて後段の処理施設へ送られるようになっている。
【0023】
このような有害物質の除去処理の継続によって、前記ろ布5の外周面には、剥離できない有害物質が残存し、その残存量が所定量に至った場合、あるいは、定期的に前記ろ布5の交換作業が行なわれる。
【0024】
そして、前記有害物質除去装置Bから取り外した使用済みのろ布5には、前述したように、剥離できない有害物質が残存していることから、この使用済みろ布5の廃棄に際して、このろ布5を無害安定化処理する必要がある。
【0025】
このようなろ布5の無害安定化処理にかかる、本発明のろ布処理方法の一実施形態について、図2を参照して説明する。
【0026】
まず、前記有害物質処理装置Bの上方を開放するとともに、図2に示すように、前記隔壁2に装着されているろ布5を、前記リテーナー4とともに取り出す。
ついで、このリテーナー4から前記ろ布5を取り外した後に、このろ布5を粉砕器8へ投入して所定粒度に粉砕した後に、後段の混練装置9へ搬送する。
【0027】
この混練装置9には、セメントを供給するセメント供給機10と、キレート剤を供給する添加剤供給機11と、水を供給する水供給機12とを備えている。
【0028】
そして、前記粉砕されたろ布5を前記混練装置9へ投入するとともに、この混練装置9において、前記ろ布5の投入量に応じて、前記セメント供給機10、添加剤供給機11、および、水供給機12のそれぞれから、セメント、キレート剤、および、水を供給して混練した後に、後段の養生部Dへ送り込む。
【0029】
この養生部Dでは、粒状体を構成するセメントが完全に固化するまで養生される。
【0030】
このような処理により、前記ろ布5の残留有害物質は、キレート剤の作用によって不溶化されるとともに、粉砕されたろ布5内に取り込まれ、さらに、この粉砕されたろ布5が固化するコンクリートによって被覆される。
【0031】
そして、粉砕されたろ布5内に取り込まれた有害物質は、前記コンクリートの被覆によって溶出が阻止され、無害安定化状態に保持される。
【0032】
また、前記有害物質が、粉砕されたろ布中に微量ずつ閉じ込められ、かつ、コンクリートによって被覆された粒状物とすることにより、閉じ込められた有害物質量に対するコンクリート量の比率が高く、この結果、前述した有害物質の溶出防止効果が高められる。
【0033】
前記混練部5aにおける、ろ布、セメント、キレート剤、および、水の混合比を、重量比で、100:5〜20:1〜10:10〜30とすることが好ましい。
これは、閉じ込められる有害物質の量に対する、形成されるコンクリートの被覆厚さを適切なものとして、前述した有害物質の溶出防止効果を有効に得るためである。
【0034】
ここで、表1に示すような複数の有害物質が付着し、かつ、これらの有害物質の含有量および溶出量が表1の通りであるろ布5を用い、このろ布5を粉砕した後に、セメント、キレート剤、および、水を、表2に示す条件で供給して混練・養生することによって、試料1および試料2を作成し、これらの試料1および試料2について溶出試験を行なった結果を表3に示す。
【0035】
【表1】
【0036】
【表2】
【0037】
【表3】
【0038】
この試験結果から明らかなように、本発明のろ布の処理方法によれば、廃棄されるろ布5を無害安定化することができる。
【符号の説明】
【0039】
1 ハウジング
1a 気体流入口
1b 気体排出口
1c ホッパー
2 隔壁
3 ロータリーバルブ
4 リテーナー
5 ろ布
6 圧縮空気供給パイプ
7 ノズル
8 粉砕器
9 混練装置
10 セメント供給機
11 添加剤供給機
12 水供給機
B 有害物質除去装置
D 養生部

図1
図2