【解決手段】溶媒として良溶媒と貧溶媒とを含有するイミド系高分子溶液を、基材上に塗布して塗膜を形成し、これを乾燥炉中で乾燥することによって、イミド系多孔質フィルムを製造する方法であって、乾燥の際、前記乾燥炉内の雰囲気における塗膜表面近傍の溶媒蒸気圧を高めつつ加熱して、前記塗膜を乾燥することを特徴とするイミド系多孔質フィルムの製造方法。前記の方法によって製造されたイミド系多孔質フィルム。
溶媒として良溶媒と貧溶媒とを含有するイミド系高分子溶液を、基材上に塗布して塗膜を形成し、これを乾燥炉中で乾燥することによって、イミド系多孔質フィルムを製造する方法であって、乾燥の際、前記乾燥炉内の雰囲気における塗膜表面近傍の溶媒蒸気圧を高めつつ加熱して、前記塗膜を乾燥することを特徴とするイミド系多孔質フィルムの製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明はイミド系多孔質フィルムの製造方法およびこの製造方法により得られるイミド系多孔質フィルムに関するものである。
【0012】
ここで、イミド系多孔質フィルムを形成するイミド系高分子とは、主鎖にイミド結合を有する高分子もしくはその前駆体のことである。主鎖にイミド結合を有する高分子の代表例としては、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエステルイミド等が挙げられる。しかし、これらに限定されるものではない。
【0013】
イミド系高分子の中で、例えば、ポリイミドやポリアミドイミドを好ましく用いることができる。ポリイミドとしては、その前駆体としてポリアミック酸を用いた前駆体型ポリイミド(ポリイミドとした時に溶媒に不溶となるポリイミドに適用)や、可溶型ポリイミド(ポリイミドとして溶媒に可溶)を用いることができる。これらイミド系高分子の中でも、力学的特性や耐熱性に優れた芳香族ポリイミドや芳香族ポリアミドイミドが好ましい。芳香族ポリイミドや芳香族ポリアミドイミドは、熱可塑性であっても非熱可塑性であってもよい。なかでも、そのガラス転移温度が200℃以上の芳香族ポリイミドや芳香族ポリアミドイミドを好ましく用いることができる。
【0014】
本発明のイミド系多孔質フィルムの製造方法においては、まず、基材上に塗布するための溶液として前記イミド系高分子の溶液(以下、「イミド系塗液」と略記することがある)を準備する。このイミド系塗液の溶媒としては、貧溶媒と良溶媒との混合溶媒を用いる。このようにすることにより、塗膜を乾燥して固化させる際に、塗膜中に残存する貧溶媒の作用により、相分離が起こり、溶質であるイミド系高分子を多孔質構造とすることができる。ここで、良溶媒とは、25℃において、イミド系高分子に対する溶解度が1質量%以上の溶媒を言い、貧溶媒とは、25℃において、イミド系高分子に対する溶解度が1質量%未満の溶媒を言う。 貧溶媒は、良溶媒よりも沸点が高いことが好ましく、その沸点差は、5℃以上が好ましく、20℃以上がより好ましく、50℃以上が更に好ましい。
【0015】
良溶媒としては、アミド系溶媒が好ましく用いられる。アミド系溶媒としては、例えば、N−メチル−2−ピロリドン(NMP 沸点:202℃)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF 沸点:153℃)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc 沸点:166℃)が挙げられる。これらを単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。貧溶媒としては、エーテル系溶媒が好ましく用いられる。エーテル系溶媒としては、例えば、ジエチレングリコールジメチルエーテル(沸点:162℃)、トリエチレングリコールジメチルエーテル(沸点:216℃)、テトラエチレングリコールジメチルエーテル(沸点:275℃)、ジエチレングリコール(沸点:244℃)、トリエチレングリコール(沸点:287℃)等の溶媒を挙げることができる。これらを単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。ただし、前記したように、良溶媒よりも5℃以上高沸点でありかつイミド系高分子には貧溶媒となりうる溶媒であれば、制限はない。貧溶媒の配合量は、全溶媒量に対して40〜90質量%であることが好ましく、60〜80質量%であることがより好ましい。
【0016】
ポリアミック酸溶液、可溶型ポリイミド溶液、ポリアミドイミド溶液等イミド系塗液の例としては、ユニチカ株式会社から多孔質形成用として市販されている商品名「UイミドワニスBP」(ポリアミック酸型ポリイミド溶液)、商品名「UイミドワニスSP」(可溶型ポリイミド溶液)、商品名「UイミドワニスIP」(ポリアミドイミド溶液)等を挙げることができる。これらの塗液には、溶媒として、アミド系溶媒とエーテル系溶媒との混合溶媒が用いられている。
【0017】
前記したポリイミド前駆体ポリアミック酸溶液や可溶型ポリイミド溶液からなるイミド系塗液は、前記した市販品を用いてもよいが、原料であるテトラカルボン酸二無水物およびジアミンを略等モルで配合し、それを前記した混合溶媒中で重合反応させて得られるポリアミック酸溶液や可溶型ポリイミド溶液も好ましく用いられる。また、良溶媒中のみで重合反応して溶液を得た後、これに貧溶媒を加える方法や、貧溶媒中のみで重合反応して懸濁液を得た後、これに良溶媒を加える方法で、イミド系塗液を得ることもできる。
【0018】
テトラカルボン酸二無水物としては、例えば、ピロメリット酸、3,3′,4,4′−ビフェニルテトラカルボン酸、3,3′,4,4′−ベンゾフェノンテトラカルボン酸、3,3′,4,4′−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸、3,3′,4,4′−ジフェニルエーテルテトラカルボン酸、2,3,3′,4′−ベンゾフェノンテトラカルボン酸、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸、1,4,5,7−ナフタレンテトラカルボン酸、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸、3,3′,4,4′−ジフェニルメタンテトラカルボン酸、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、3,4,9,10−テトラカルボキシペリレン、2,2−ビス[4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン等の二無水物が用いられる。これらを単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、ピロメリット酸、3,3′,4,4′−ビフェニルテトラカルボン酸が好ましい。
【0019】
ジアミンとしては、例えば、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、3,4′−ジアミノジフェニルエーテル、4,4′−ジアミノジフェニルエーテル、4,4′−ジアミノジフェニルメタン、3,3′−ジメチル−4,4′−ジアミノジフェニルメタン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、1,2−ビス(アニリノ)エタン、ジアミノジフェニルスルホン、ジアミノベンズアニリド、ジアミノベンゾエート、ジアミノジフェニルスルフィド、2,2−ビス(p−アミノフェニル)プロパン、2,2−ビス(p−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、1,5−ジアミノナフタレン、ジアミノトルエン、ジアミノベンゾトリフルオライド、1,4−ビス(p−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4′−ビス(p−アミノフェノキシ)ビフェニル、ジアミノアントラキノン、4,4′−ビス(3−アミノフェノキシフェニル)ジフェニルスルホン、1,3−ビス(アニリノ)ヘキサフルオロプロパン、1,4−ビス(アニリノ)オクタフルオロブタン、1,5−ビス(アニリノ)デカフルオロペンタン、1,7−ビス(アニリノ)テトラデカフルオロヘプタンが用いられる。これらを単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、p−フェニレンジアミン、4,4′−ジアミノジフェニルエーテル、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパンが好ましい。
【0020】
ポリイミド前駆体溶液中におけるポリアミック酸の固形分濃度は、1〜50質量%が好ましく、5〜25質量%がより好ましい。ポリイミド前駆体溶液中に含まれるポリアミック酸は、部分的にイミド化されていてもよい。ポリイミド前駆体溶液の30℃における粘度は、1〜150Pa・sが好ましく、5〜100Pa・sがより好ましい。
【0021】
本発明のポリアミドイミド溶液を得るには、前記したような市販品を用いてもよいが、原料であるトリメリット酸成分(無水トリメリット酸クロライドや無水トリメリット酸等)およびジアミン成分(各種ジアミンもしくはそのジイソシアネート誘導体)を略等モルで配合し、それを前記混合溶媒中で重合反応させて得られる溶液も好ましく用いることができる。また、良溶媒中のみで重合反応して溶液を得た後、これにエーテル系溶媒を加える方法や、貧溶媒中のみで重合反応して懸濁液を得た後、これにアミド系溶媒を加える方法で、ポリアミドイミド溶液を得ることもできる。
【0022】
原料であるトリメリット酸成分としては、無水トリメリット酸クロライドが好ましい。また、トリメリット酸成分の一部がピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸、ビフェニルテトラカルボン酸、またはテレフタル酸等の成分で置換されたものを用いてもよい。
【0023】
ジアミン成分としては、例えば、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、4,4′−ジフェニルメタンジアミン、4,4′−ジフェニルエーテルジアミン、ジフェニルスルホン−4,4′−ジアミン、ジフェニル−4,4′−ジアミン、o−トリジン、2,4−トリレンジアミン、2,6−トリレンジアミン、キシリレンジアミン、ナフタレンジアミンもしくはこれらのジイソシアネート誘導体を用いることができる。これらを単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、4,4′−ジフェニルエーテルジアミンおよびm−フェニレンジアミンが好ましい。
【0024】
ポリアミドイミド溶液中におけるポリアミドイミドの固形分濃度は、1〜50質量%が好ましく、10〜30質量%がより好ましい。 ポリアミドイミド溶液の30℃における粘度は、1〜150Pa・sが好ましく、5〜100Pa・sがより好ましい。
【0025】
必要に応じて、イミド系塗液に、各種界面活性剤や有機シランカップリング剤のような公知の添加物を、本発明の効果を損なわない範囲で添加してもよい。また、必要に応じて、イミド系塗液に、イミド系高分子以外の他のポリマーを、本発明の効果を損なわない範囲で添加してもよい。
【0026】
本発明のイミド系多孔質フィルムの製造法においては、前記イミド系塗液を、基材の表面に塗布し、100〜150℃で乾燥後、必要に応じ、250〜350℃で熱処理を行うことにより、気孔率が30〜90体積%のイミド系多孔質フィルムを形成することができる。その後、これらの基材から多孔質イミド系フィルムを剥離して多孔質イミド系フィルム単体とすることができる。また、基材上に成形されたイミド系多孔質フィルムは、基材と積層一体化して使用することもできる。このプロセスにおいて、イミド塗液中の溶媒(良溶媒および貧溶媒)の種類や配合量を選ぶことにより、気孔率や気孔径を調整することができる。
【0027】
前記基材としては、例えば、金属箔、金属線、ガラス板、プラスチックフィルム、各種織物、各種不織布等が挙げられ、前記金属としては、金、銀、銅、白金、アルミニウム等を用いることができる。これらは、多孔質であっても非多孔質であっても良い。この基材への塗液の塗布方法としては、ディップコータ、バーコータ、スピンコータ、ダイコータ、スプレーコータ等を用い、連続式またはバッチ式で塗布することができる。
【0028】
本発明のイミド系多孔質フィルムの製造方法においては、前記乾燥の際、前記乾燥炉内の雰囲気における塗膜表面近傍の溶媒蒸気圧を高めつつ加熱して、前記塗膜を乾燥することが必須である。これにより塗膜表面に気孔が多数形成され、表面開孔率が増加するので、透過性の良好なイミド系多孔質フィルムを得ることができる。透過性の良否は、例えば、特定の溶媒(例えば、リチウムイオン二次電池を構成する電解液用の溶媒)をイミド系多孔質フィルム表面に滴下した際の、溶媒の浸透時間から判定することができる。その判定方法の詳細は後述する。本発明のイミド系多孔質フィルムにおいては、この浸透時間が300秒以下であることが好ましく、150秒以下であることがより好ましい。
【0029】
塗膜内に残存する溶媒濃度と前記乾燥炉内の雰囲気における塗膜表面近傍の溶媒蒸気圧を高めつつ加熱するには、例えば、(1)乾燥炉内の排気速度を、溶媒の蒸発速度よりも遅くする、(2)乾燥炉から排気された溶媒を循環する、等の方法により、塗膜表面から蒸発する溶媒を乾燥炉内の空間部に籠らせ、加熱することにより行うことができる。このような方法は、塗布を連続的に行う場合に好ましい方法である。また、塗布をバッチ式で行う場合は、
図4に示す様に、塗膜面の端部にスペーサを設けた上で、このスペーサを介して溶媒蒸気透過性の被覆材(例えば、市販多孔質フィルムや不織布)を積層して加熱する方法や、塗膜面に前記被覆材を直接積層して、蒸発する溶媒を塗膜表面に籠らせることにより行うことができる。この場合、被覆材の溶媒蒸気透過性やスペーサの厚みを選ぶことにより、前記溶媒蒸気圧を調整することができる。バッチ式で行う場合は、このような被覆材を用いて行う方法が好ましい。
【0030】
前記製造方法により得られたイミド系多孔質フィルムの気孔率は、30〜90体積%であることが好ましく、40〜85体積%であることがより好ましく、45〜80体積%であることがより好ましい。気孔率をこのように設定することにより、良好な力学的特性と、透過性とが同時に確保される。イミド系多孔質フィルムの気孔率は、イミド系多孔質フィルムの見掛け密度と、イミド系多孔質フィルムを構成するイミド系高分子の真密度(比重)とから算出される値である。詳細には、気孔率(体積%)は、イミド系多孔質フィルムの見掛け密度がA(g/cm
3)、イミド系高分子の真密度がB(g/cm
3)の場合、次式により算出される。
気孔率(体積%) = 100−A*(100/B)
【0031】
イミド多孔質層の平均気孔径は、0.1〜10μmが好ましく、0.5〜5μmがより好ましい。平均気孔径をこのように設定することにより、良好な透過性を確保することができる。イミド系多孔質フィルムの厚みは1〜100μmが好ましく、10〜50μmがより好ましい。
【0032】
以上述べた如く、本発明のイミド系多孔質フィルムの製造方法は、乾式多孔化プロセスに基づくので、気孔形成の際、貧溶媒を含む凝固浴からの廃液が発生しない。従い、環境適合性が良好であり、しかも、プロセスが極めて簡単である。得られるイミド系多孔質フィルムは、透過性に優れるので、リチウム二次電池用セパレータ、フィルタ、分離膜等として、好適に使用することができる。
【実施例】
【0033】
以下に、実施例を挙げて、本発明をさらに詳細に説明する。なお本発明は実施例により限定されるものではない。
【0034】
<実施例1>
ユニチカ株式会社製UイミドワニスBP(ポリアミック酸型ポリイミド溶液)を塗液として準備し、これを30cm角のアルミ板上に塗布後、このアルミ板の4辺に厚み2mm、幅2cmのスペーサを設けた。このスペーサを介して、アルミ板上の塗膜全面を、厚みが30μmで、平均孔径が0.5μmである市販のフッ素樹脂製多孔質フィルムで被覆した。 これを130℃に設定された熱風循環式の乾燥炉に投入して30分加熱後、更に300℃で60分加熱し、その後冷却してアルミ板から剥離することにより、厚み55μmで、気孔率が58体積%のポリイミドからなる多孔質フィルム(A−1)を得た。得られた多孔質フィルムの透過性を以下の方法により評価した。 すなわち、フィルム表面にエチレンカーボネート、エチルメチルカーボネートおよびジメチルカーボネートの混合溶媒(体積比1:1:1)であって30℃に設定されたもの5μLを滴下し、これが完全に浸透することを目視で観測してその浸透時間を測定し、表1の基準によって透過性を評価した。
多孔質フィルム(A−1)の透過性評価結果を表2に示す。
【0035】
【表1】
【0036】
【表2】
【0037】
<実施例2>
スペーサの厚みを0.5mmとしたこと以外は、実施例1と同様に多孔質フィルム(A−2)を作成し、評価した結果を表2に示す。
また、このフィルムの断面および表面のSEM像を
図1、2に示す。これらの図から、平均孔径が3μm程度の連続気孔が形成されていることが判る。また、表面にも平均孔径が3μm程度の気孔が多数形成されていることが判る。この表面に形成された気孔がこの多孔質フィルム(A−2)の良好な透過性に寄与している。
【0038】
<実施例3>
フッ素樹脂製多孔質フィルムの平均孔径を0.2μmとしたこと以外は、実施例1と同様に多孔質フィルム(A−3)を作成し、評価した結果を表2に示す。
【0039】
<実施例4>
ユニチカ株式会社製UイミドワニスIP(ポリアミドイミド溶液)を塗液として準備し、これを30cm角のアルミ板上に塗布後、このアルミ板の4辺に厚み2mm、幅2cmのスペーサを設けた。このスペーサを介して、アルミ板上の塗膜全面を、厚みが30μmで、平均孔径が0.5μmである市販のフッ素樹脂製多孔質フィルムで被覆した。 これを130℃に設定された熱風循環式の乾燥炉に投入して30分加熱後、その後冷却してアルミ板から剥離することにより、厚み30μmで、気孔率が55体積%のポリアミドイミドからなる多孔質フィルム(A−4)を得た。これを、実施例1と同様に評価した結果を表2に示す。
【0040】
<実施例5>
スペーサの厚みを0.5mmとしたこと以外は、実施例4と同様に多孔質フィルム(A−5)を作成し、評価した結果を表2に示す。
【0041】
<実施例6>
フッ素樹脂製多孔質フィルムの平均孔径を0.2μmとしたこと以外は、実施例4と同様に多孔質フィルム(A−6)を作成し、評価した結果を表2に示す。
【0042】
<比較例1>
スペーサの厚みを50mmとしたこと以外は、実施例1と同様に多孔質フィルム(B−1)を作成し、評価した結果を表2に示す。
【0043】
<比較例2>
スペーサを用いなかったこと以外は、実施例1と同様に多孔質フィルム(B−2)を作成し、評価した結果を表2に示す。また、このフィルムの表面のSEM像を
図3に示すが、表面には、気孔が僅かに認められるが、開孔率としては、低いものであることが判る。
【0044】
<比較例3>
【0045】
スペーサを用いなかったこと以外は、実施例4と同様に多孔質フィルム(B−3)を作成し、評価した結果を表2に示す。
【0046】
実施例で示した様に、本発明の製造方法により得られた多孔質イミド系フィルムの溶媒浸透時間は300秒以下と速いものであった。このような良好な透過性は、フィルム表面に形成された多数の気孔が寄与している。この表面の気孔形成は、塗膜表面近傍の溶媒蒸気圧を高めつつ加熱することによる効果であり、溶媒蒸気圧を高めることにより、塗膜表面の貧溶媒濃度が上昇して、表面の気孔形成に寄与する相分離が促進されることに起因するものと考えられる。
これに対し、比較例で示した製造方法により得られた多孔質イミド系フィルムの溶媒浸透時間は、300秒超と遅くなった。これは、フィルム表面の開孔率が低いことに起因している。