【課題】ポリウレタン原料や有機溶媒に対して溶解性が高く、また沈殿を生じ難い安定な金属アセチルアセトン化合物を含有する均一溶液からなるウレタン化反応触媒を提供すること、また、金属元素としてスズを含有しないにもかかわらず、ウレタン化反応を好適に促進するウレタン化反応触媒を提供すること。
上記成分(A)が、特定金属元素の原料として金属酸化物を用い、該特定金属元素1モルに対して、アセチルアセトン2モル以上を結合させて得られるものである請求項1に記載のウレタン化反応触媒。
上記溶剤が、芳香族炭化水素、ケトン、エステル、エーテル及びアルコールよりなる群から選ばれる少なくとも1種の溶剤である請求項1ないし請求項3の何れかの請求項に記載のウレタン化反応触媒。
少なくとも、イソシアネート若しくはブロックイソシアネート、ポリオール、及び、請求項1ないし請求項4の何れかの請求項に記載のウレタン化反応触媒を含有することを特徴とする硬化性組成物。
請求項6に記載のアセチルアセトン化合物の製造方法を使用して(A)アセチルアセトン化合物を製造し、そこに(B)安定化剤を配合することを特徴とするウレタン化反応触媒の製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
金属アセチルアセトン化合物は、常温常圧で固体であり、イソシアネート、ブロックイソシアネート、ポリオール等のポリウレタン原料に対して溶解性が低く、それらと混合しても不均一になるため、ウレタン化反応も不均一に進行することになり、ウレタン化反応触媒としては不向きであった。
また、金属アセチルアセトン化合物は、一般に低級アルコール以外の汎用有機溶媒に対しての溶解性も低いため、かかる汎用溶媒の存在下に、イソシアネート、ブロックイソシアネート、ポリオール等のポリウレタン原料を混合しても依然として不均一であるため、有機溶媒を含有するウレタン化反応触媒としても使用し難かった。
【0009】
また、金属アセチルアセトン化合物には、低級アルコールに溶解するものがあることは知られているものの、金属アセチルアセトン化合物を低級アルコールに溶解させると、該アセチルアセトンと該低級アルコールとの間で交換反応が起きて沈殿が生じる等の溶液安定性に難があり、その点からも、金属アセチルアセトン化合物は、ウレタン化反応触媒として使用し難かった。
【0010】
そこで、本発明は前記に鑑みてなされたものであり、その課題は、ポリウレタン原料や有機溶媒に対して溶解性が高く、また沈殿を生じ難い安定な金属アセチルアセトン化合物を含有する均一溶液からなるウレタン化反応触媒を提供することにある。
また、金属元素としてスズを含有しないにもかかわらず、ウレタン化反応を好適に促進するウレタン化反応触媒を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、特定の製造方法で製造した金属アセチルアセトン化合物と、安定化剤と、溶剤とを、少なくとも含有する組成物が、ポリウレタン原料や有機溶媒に対する溶解性も高く、溶液安定性が高く、好適なウレタン化反応触媒となることを見出して本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち、本発明は、イソシアネート若しくはブロックイソシアネートと、ポリオールとのウレタン化反応に用いるウレタン化反応触媒であって、下記成分(A)、成分(B)及び成分(C)
(A)亜鉛、アルミニウム、カルシウム、ジルコニウム及びマグネシウムよりなる群から選ばれる少なくとも1種の特定金属元素のアセチルアセトン化合物
(B)安定化剤
(C)溶剤
を含有し、上記成分(A)が成分(C)に均一に溶解状態にあるものであることを特徴とするウレタン化反応触媒を提供するものである。
【0013】
また、本発明は、少なくとも、イソシアネート若しくはブロックイソシアネート、ポリオール、及び、上記のウレタン化反応触媒を含有することを特徴とする硬化性組成物を提供するものである。
【0014】
また、本発明は、下記成分(A)及び成分(C)
(A)亜鉛、アルミニウム、カルシウム、ジルコニウム及びマグネシウムよりなる群から選ばれる少なくとも1種の特定金属元素のアセチルアセトン化合物
(C)溶剤
を含有する均一に溶解状態にあるウレタン化反応触媒を製造するためのアセチルアセトン化合物の製造方法であって、
(C)溶剤中で、該特定金属元素の金属酸化物1モルに対して、アセチルアセトン2モル以上を反応させることを特徴とするアセチルアセトン化合物の製造方法を提供するものである。
【0015】
また、本発明は、上記のアセチルアセトン化合物の製造方法を使用して(A)アセチルアセトン化合物を製造し、そこに(B)安定化剤を配合することを特徴とするウレタン化反応触媒の製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、前記問題点や課題を解決し、ポリウレタン原料や有機溶媒に対して溶解性が高く、また低級アルコール等の水酸基を有する有機溶媒に溶解させても沈殿を生じない安定な金属アセチルアセトン化合物を含有する均一溶液からなるウレタン化反応触媒を提供することができる。
【0017】
本発明のウレタン化反応触媒は、均一な溶解状態にある液体であることから、イソシアネート、ブロックイソシアネート、ポリオール等のポリウレタン原料に対して容易に溶解し、ウレタン化反応触媒としても活性が高い。本発明によれば、金属元素としてスズを含有しないにもかかわらず、ウレタン化反応を好適に促進させることが可能なウレタン化反応触媒を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明について説明するが、本発明は、以下の具体的形態に限定されるものではなく、技術的思想の範囲内で任意に変形することができる。
【0019】
本発明のウレタン化反応触媒は、イソシアネート若しくはブロックイソシアネートと、ポリオールとのウレタン化反応に用いるものであって、
少なくとも、下記成分(A)、成分(B)及び成分(C)
(A)亜鉛、アルミニウム、カルシウム、ジルコニウム及びマグネシウムよりなる群から選ばれる少なくとも1種の特定金属元素(以下、単に、「特定金属元素」と略記することがある)のアセチルアセトン化合物
(B)安定化剤
(C)溶剤
を含有し、上記成分(A)が成分(C)に均一に溶解状態にあるウレタン化反応触媒である。
【0020】
<成分(A)>
成分(A)である「亜鉛、アルミニウム、カルシウム、ジルコニウム及びマグネシウムよりなる群から選ばれる少なくとも1種の特定金属元素のアセチルアセトン化合物」としては、特定金属元素のモノ(アセチルアセトナート)、ビス(アセチルアセトナート)、トリス(アセチルアセトナート)、テトラキス(アセチルアセトナート)等が挙げられる。
【0021】
また、上記特定金属元素には、アセチルアセトン以外の有機基が結合していてもよい。その場合、該有機基としては、特に限定はないが、例えば、メトキシ基、エトキシ基、ノルマルプロポキシ基、イソプロポキシ基、ノルマルブトキシ基、イソブトキシ基、ターシャリーブトキシ基、ペントキシ基、ヘキソキシ基等のアルコキシ基;アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸プロピル、アセト酢酸ブチル等のβ−ケトエステル基;等が挙げられる。上記アルコキシ基の炭素数は、特に限定はないが、1〜18個が好ましく、1〜10個がより好ましく、1〜5個が特に好ましい。上記β−ケトエステル基のエステルの炭素数は、特に限定はないが、1〜18個が好ましく、1〜10個がより好ましく、1〜5個が特に好ましい。
【0022】
また、1個の金属元素に結合する、アセチルアセトンやアルコキシ基等のそれぞれの個数は、該特定金属元素の価数から決まる。
これらは、単独又は2種類以上を混合して用いることができる。
【0023】
成分(A)としては、具体的には、例えば、ビスアセチルアセトナート亜鉛、ビスアセチルアセトナート亜鉛一水和物等の亜鉛のアセチルアセトン化合物;トリスアセチルアセトナートアルミニウム等のアルミニウムのアセチルアセトン化合物;、ビスアセチルアセトナートカルシウム、ビスアセチルアセトナートカルシウム二水和物等のカルシウムのアセチルアセトン化合物;ジメトキシビス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、ジエトキシビス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、ジノルマルプロポキシビス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、ジイソプロポキシビス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、ジノルマルブトキシビス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、モノメトキシトリス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、モノエトキシトリス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、モノノルマルプロポキシトリス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、モノイソプロポキシトリス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、モノノルマルブトキシトリス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、テトラキスアセチルアセトナートジルコニウム等のジルコニウムのアセチルアセトン化合物;ビスアセチルアセトナートマグネシウム、ビスアセチルアセトナートマグネシウム二水和物等のマグネシウムのアセチルアセトン化合物;等が挙げられる。
これらは、単独又は2種類以上を混合して用いることができる。
【0024】
本発明のウレタン化反応触媒の成分(A)である「特定金属元素のアセチルアセトン化合物」は、特定金属元素の原料として金属酸化物を用い、該特定金属元素1モルに対して、アセチルアセトン2モル以上を結合させて得られるものであることが好ましい。
これらは、特定金属元素の金属酸化物にアセチルアセトンを直接反応させることによって得ることができる。
各種特定金属酸化物とアセチルアセトンとの反応モル比については、特に制限されるものではないが、該特定金属元素の金属酸化物1モルに対して、アセチルアセトン2モル以上を結合(反応)させて得られるアセチルアセトン化合物が好ましい。
金属酸化物1モルに対して、アセチルアセトンが2モル以上を結合(反応)させて得られるような化学構造を有するアセチルアセトン化合物は、安定的に化合物が得られる点;保存しても安定な化合物が得られる点;イソシアネート若しくはブロックイソシアネート、ポリオール等のウレタン原料や有機溶媒に溶解性が高い点;未反応の金属酸化物の残存をなくして触媒活性を低下させない点;等から好ましい。
【0025】
かかる化学構造を有するアセチルアセトン化合物の製造方法について、該アセチルアセトン化合物は、反応容器に、特定金属元素の金属酸化物1モルに対して、アセチルアセトンを2モル以上加えて、反応させて得ることができる。
より好ましくは、特定金属元素の金属酸化物1モルに対して、アセチルアセトンを2モル以上20モル以下加えて反応させる製造方法であり、特に好ましくは、特定金属元素の金属酸化物1モルに対して、アセチルアセトンを2モル以上10モル以下加えて反応させる製造方法である。
特定金属元素と反応せず結合しなかったアセチルアセトンは、後述する「成分(B)安定化剤」として作用する場合がある。
金属酸化物1モルに対して、アセチルアセトンが2モルより少ないと、未反応の金属酸化物が残存し、触媒活性の低下を招く場合がある。
【0026】
該反応容器には、反応溶媒を加えることが好ましい。アセチルアセトン化合物の製造に用いる反応溶媒としては、特に限定はないが、後述する「成分(C)溶剤」と同様のものが好ましいものとして挙げられる。
【0027】
<成分(B)>
成分(B)である「安定化剤」としては、成分(A)を成分(C)中で、25℃で少なくとも1週間(より好ましくは1か月間、特に好ましくは3か月間)、均一な溶解状態を保たせる性質を有するものならば特に限定はないが、β−ジケトン及びβ−ケトエステルよりなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物が好ましい。
【0028】
上記β−ジケトンとしては、特に限定はないが、具体的には、例えば、2,4−ペンタンジオン(アセチルアセトン)、2,4−ヘキサンジオン、2,4−ヘプタンジオン、ジベンゾイルメタン、テノイルトリフルオロアセトン、1,3−シクロヘキサンジオン、1−フェニル−1,3−ブタンジオン等が挙げられる。
これらは、単独又は2種類以上を併用できる。
【0029】
また、上記β−ケトエステルとしては、特に限定はないが、具体的には、例えば、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸プロピル、アセト酢酸ブチル、メチルピバロイルアセテート、メチルイソブチロイルアセテート、カプロイル酢酸メチル、ラウロイル酢酸メチル等が挙げられる。
これらは、単独又は2種類以上を併用できる。
【0030】
成分(B)「安定化剤」の含有によって、溶液中での成分(A)の変質が起こり難くなり、析出物が生じ難くなり、均一な溶液のまま外観やウレタン化反応触媒性能を劣化させ難くなる。成分(A)を、低級アルコール等のアルコール、又は、それらを含有する混合溶媒に溶解させても、該アルコールが交換反応をし難く、そのため、ウレタン化反応触媒を長期に保管しても、析出物がない等、変質が抑制される。
また、成分(B)「安定化剤」の含有によって、更に、(C)溶剤として、溶解性の高い低級アルコール等のアルコールの使用量が減らせるため、ウレタン化反応触媒を溶液状態で保管しても、析出物がなく変質が抑制される。
【0031】
<成分(C)>
成分(C)である「溶剤」としては、特に限定はなく、20℃で液体の有機溶剤であることが、取り扱いの容易な点で好ましい。成分(C)は、芳香族炭化水素、ケトン、エステル、エーテル及びアルコールよりなる群から選ばれる少なくとも1種の溶剤であることが好ましい。
【0032】
上記芳香族炭化水素としては、具体的には、例えば、ベンゼン、トルエン、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレン、エチルベンゼン、クメン等が挙げられる。
これらは、単独又は2種類以上を併用できる。
【0033】
上記ケトンとしては、具体的には、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、2−ペンタノン、3−ペンタノン、2−ヘキサノン、メチルイソブチルケトン、2−ヘプタノン、4−ヘプタノン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン等が挙げられる。
これらは、単独又は2種類以上を併用できる。
【0034】
上記エステルとしては、具体的には、例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸sec−ブチル、酢酸ペンチル、3−メトキシブチルアセタート、2−エチルブチルアセタート、2−エチルヘキシルアセタート等が挙げられる。
これらは、単独又は2種類以上を併用できる。
【0035】
上記エーテルとしては、具体的には、例えば、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジヘキシルエーテル、エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル等が挙げられる。
これらは、単独又は2種類以上を併用できる。
【0036】
上記アルコールとしては、具体的には、例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、イソブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、3−ペンタノール等が挙げられる。
これらは、単独又は2種類以上を併用できる。
【0037】
成分(C)溶剤は、混合溶媒であることも好ましく、その場合には、少なくとも1種の溶媒は、アルコールであることが、成分(A)の成分(C)溶剤への溶解性が高い点から特に好ましい。
成分(C)溶剤としてアルコール又は「炭素数1〜3個のアルコール」を用いる場合には、成分(C)溶剤全体に対するアルコール又は「炭素数1〜3個のアルコール」の含有量は、10〜60質量%が好ましく、15〜50質量%がより好ましく、20〜40質量%が特に好ましい。アルコール又は「炭素数1〜3個のアルコール」が少な過ぎる場合は、成分(A)が成分(C)に溶解し難くなる場合があり、一方多過ぎる場合は、「アセチルアセトンのアルコールとの交換反応がおこり難い」と言う本発明の特長が生かされ難い場合がある。
【0038】
<含有比率>
本発明のウレタン化反応触媒における成分(A)、成分(B)、成分(C)の含有比率は特に限定はないが、
「(B)安定化剤/(A)特定金属元素のアセチルアセトン化合物」は、0.1〜20モル比が好ましく、0.5〜10モル比がより好ましく、0.7〜5モル比が特に好ましい。
本比率以下のモル比にすると、ウレタン化反応触媒の組成物としての安定性が悪く、加水分解の影響により触媒活性を失う場合があり、一方、本比率以上のモル比であると、組成物中の安定性が高過ぎるため、触媒活性の低下につながる場合がある。
【0039】
一方、本発明における(C)溶剤の使用量は特に限定はしないが、ウレタン化反応触媒全体に対して、30〜90質量%が好ましく、40〜85質量%がより好ましく、50〜80質量%が特に好ましい。
(C)溶剤の量が少な過ぎると、溶解している特定金属元素のアセチルアセトン化合物が析出し、均一な溶液を得ることができ難くなったり、保存中に均一な溶液を維持でき難くなったりする場合がある。
一方、(C)溶剤の量が多過ぎると、硬化性組成物に添加するウレタン化反応触媒の量が多くなり、その(C)溶剤によって、ウレタン化反応が阻害されるため硬化阻害を起こす場合がある。
【0040】
<製造方法>
本発明のウレタン化反応触媒の製造方法は、特に限定はしないが、予め、特定金属酸化物とアセチルアセトンとの反応物(A)を合成した後、(B)安定化剤、(C)溶剤を添加して合成する方法や、(C)溶剤中で(B)安定化剤の存在下において特定金属酸化物とアセチルアセトンを反応させ、本発明のウレタン化反応触媒を得る方法等を用いることができる。
【0041】
本発明における好ましいアセチルアセトン化合物の製造方法は、
下記成分(A)及び成分(C)
(A)亜鉛、アルミニウム、カルシウム、ジルコニウム及びマグネシウムよりなる群から選ばれる少なくとも1種の特定金属元素のアセチルアセトン化合物
(C)溶剤
を含有する均一に溶解状態にあるウレタン化反応触媒を製造するためのものであって、
(C)溶剤中で、該特定金属元素の金属酸化物1モルに対して、アセチルアセトン2モル以上を反応させることを特徴とする。
【0042】
本発明のウレタン化反応触媒は、均一な溶解状態にある液体であることから、イソシアネート、ブロックイソシアネート、ポリオール等のポリウレタン原料に対して容易に溶解し、ウレタン化反応触媒としても活性が高い。本発明によれば、金属元素としてスズを含有しないにもかかわらず、ウレタン化反応を好適に促進させることが可能なウレタン化反応触媒を提供することができる。
【0043】
従来、本発明のように溶解性の高い特定金属元素の金属アセチルアセトン化合物は、ウレタン化反応触媒としては知られていなかったので、本発明は、「ウレタン化反応触媒」という物として新規であるが、その製造方法としては、上記した製造方法が好ましい。
【0044】
更に、上記のアセチルアセトン化合物の製造方法を使用して(A)アセチルアセトン化合物を製造し、そこに(B)安定化剤を配合することを特徴とするウレタン化反応触媒の製造方法が特に好ましい。
【0045】
<硬化性組成物>
本発明は、少なくとも、「イソシアネート若しくはブロックイソシアネート」、「ポリオール」、及び、「前記のウレタン化反応触媒」を含有することを特徴とする硬化性組成物でもある。
【0046】
イソシアネートとしては、特に限定はなく、公知のイソシアネートが使用できるが、ジイソシアネート化合物が好ましい。
例えば、脂肪族イソシアネートとしては、1,4−テトラメチレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4,−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート等が挙げられる。
また、脂環式イソシアネートとしては、例えば、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、3−イソシアナトメチル−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、ビス−(4−イソシアナトシクロヘキシル)メタン、ノルボルナンジイソシアネート等が挙げられる。
また、芳香族イソシアネートとしては、例えば、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、3,3’−ジメチル−4,4’−ジイソシアナトビフェニル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジイソシアナトジフェニルメタン、1,5−ナフチレンジイソシアネート等が挙げられる。
また、芳香族脂肪族イソシアネートとしては、例えば、1,3−キシリレンジイソシアネート、1,4−キシシレンジイソシアネート等が挙げられる。
上記以外としては、例えば、アダクト型ポリイソシアネート、アロファネート化合物、ビウレット化反応等によるイソシアネート変性体等が挙げられる。
【0047】
本発明の前記ウレタン化反応触媒を使用する際に用いられるブロックイソシアネートとしては、例えば、非水性ブロックイソシアネート、水性ブロックイソシアネート等を挙げることができる。
【0048】
非水性ブロックイソシアネートとしては、例えば、公知のブロック剤として、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール類;フェノール、クレゾール等のフェノール類;ベンゼンチオール等のチオール類;カプロラクタム類;オキシム類;アミン類;ケトエノール類等を用いたものが挙げられる。すなわち、これらのブロック剤を用いたイソシアネート又はイソシアネートのプレポリマーをブロックした化合物が挙げられる。
【0049】
一方で水性のブロックイソシアネートとしては、例えば、ポリイソシアネートと、「イソシアネート基と反応する活性水素基を1個以上有する親水性基」とを反応させ、これを上記した公知のブロック剤でブロックしたものが挙げられる。
【0050】
イソシアネートと反応する化合物として、ポリオールが挙げられる。本発明において、「ポリオール」とは、イソシアネート基に対して反応性の水酸基を2個以上有する化合物である。具体的には、非水性ポリオール、水性ポリオール等が挙げられる。
【0051】
非水性ポリオールとしては、例えば、(メタ)アクリルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、エポキシポリオール、ポリカーボネートポリオール等が挙げられる。
【0052】
(メタ)アクリルポリオールとしては、例えば、1分子中に1個以上の活性水素を有する重合性モノマーと、これに共重合可能なモノマーの共重合物等が挙げられる。
「1分子中に1個以上の活性水素を有する重合性モノマー」としては、例えば、アクリル酸−2−ヒドロキシエチル等のアクリル酸ヒドロキシアルキルエステル類;メタクリル酸−2−ヒドロキシエチル等のメタクリル酸ヒドロキシアルキルエステル類;グリセリンのアクリル酸又はメタクリル酸エステル類;等が挙げられる。
アクリルポリオールとしては、上記モノマーと、アクリル酸エステルやメタクリル酸エステルとの共重合体等が挙げられる。
【0053】
ポリエステルポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ジエチレングリコール等のジオール類と、コハク酸、フマル酸、アジピン酸等のジカルボン酸類との反応物が挙げられる。具体的には、例えば、ポリエチレンアジぺートジオール、ポリネオペンペンチレンアジペートジオール、ポリ(ポリテトラメチレンエーテル)アジぺートジオール、ポリブチレンアゼレートジオール等が挙げられる。
【0054】
ポリエーテルポリオールとしては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール等が挙げられる。
エポキシポリオールとしては、例えば、ノボラック型、グリコールエーテル型、グリシジルエーテル型、多価カルボン酸エステル型等が挙げられる。
ポリカーボネートポリオールとしては、例えば、ε−カプロラクトン、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン等の1種又は2種以上の開環重合物等が挙げられる。
【0055】
水性のポリオールとしては、非水性ポリオールを、水に乳化、分散又は溶解した化合物が挙げられる。例えば、アクリルポリオールのエマルジョン、カルボキシル基含有ポリエステルポリオール等が挙げられる。
【0056】
本発明の硬化性組成物におけるウレタン化触媒の使用量は、特に制限されるものではないが、イソシアネートを使用する場合、該イソシアネート全体に対する本発明のウレタン化反応触媒の使用量、すなわち、ウレタン化反応触媒使用量/イソシアネート使用量は、0.01〜10質量%が好ましく、0.05〜5質量%がより好ましく、0.1〜3質量%が特に好ましい。
この比率より少ないと、触媒活性がなく、硬化不良を生ずる場合があり、この比率より多いと、触媒の析出等により、硬化阻害生ずる場合がある。
【0057】
また、ブロックイソシアネートを使用する場合、該ブロックイソシアネート全体に対する本発明のウレタン化反応触媒の使用量、すなわち、ウレタン化反応触媒使用量/ブロックイソシアネート使用量は、0.01〜10質量%が好ましく、0.05〜5質量%がより好ましく、0.1〜3質量%が特に好ましい。
この比率より少ないと、触媒活性がなく、硬化不良を生ずる場合があり、この比率より多いと、触媒の析出等により、硬化阻害生ずる場合がある。
【実施例】
【0058】
以下に、実施例及び比較例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限りこれらの実施例に限定されるものではない。
【0059】
[調製例1]
トルエン142.0gとメタノール60.8gをフラスコに計量した後、撹拌しながら酸化亜鉛16.2g(0.2モル)を添加した。これにアセチルアセトン40.0g(0.4モル)を滴下した後、3時間加熱還流を行った。冷却後、アセチルアセトン23.0g(0.23モル)を加え、組成物Aを得た。
【0060】
[調製例2]
キシレン142.0gとメタノール60.8gをフラスコに計量した後、撹拌しながら酸化亜鉛16.2g(0.2モル)を添加した。これにアセチルアセトン40.0g(0.4モル)を滴下した後、3時間加熱還流を行った。冷却後、アセト酢酸エチル26.0g(0.2モル)を加え、組成物Bを得た。
【0061】
[調製例3]
メチルエチルケトン121.7gとメタノール81.1gをフラスコに計量した後、撹拌しながら酸化亜鉛16.2g(0.2モル)を添加した。これにアセチルアセトン40.0g(0.4モル)を滴下した後、5時間加熱還流を行った。冷却後、アセチルアセト23.0g(0.23モル)を加え、組成物Cを得た。
【0062】
[調製例4]
メチルエチルケトン121.7gとエタノール81.1gをフラスコに計量した後、撹拌しながら酸化亜鉛16.2g(0.2モル)を添加した。これにアセチルアセトン40.0g(0.4モル)を滴下した後、5時間加熱還流を行った。冷却後、2,4−ヘキサンジオン22.6g(0.2モル)を加え、組成物Dを得た。
【0063】
[調製例5]
アセトン121.7gとメタノール81.1gをフラスコに計量した後、撹拌しながら酸化マグネシウム8.06g(0.2モル)を添加した。これにアセチルアセトン60.0g(0.6モル)を滴下した後、5時間加熱還流を行った。冷却後、アセト酢酸エチル26.0g(0.2モル)を加え、組成物Eを得た。
【0064】
[調製例6]
酢酸エチル101.4gとメタノール101.4gをフラスコに計量した後、撹拌しながら酸化アルミニウム20.4g(0.2モル)を添加した。これにアセチルアセトン120.0g(1.2モル)を滴下した後、5時間加熱還流を行った。冷却後、アセチルアセトン23.0g(0.23モル)を加え、組成物Fを得た。
【0065】
[調製例7]
トルエン142.0gとメタノール60.8gをフラスコに計量した後、撹拌しながら酸化亜鉛16.2g(0.2モル)を添加した。これにアセチルアセトン40.0g(0.4モル)を滴下した後、3時間加熱還流を行い、組成物aを得た。
【0066】
[調製例8]
メチルエチルケトン121.7gとメタノール81.1gをフラスコに計量した後、撹拌しながら酸化亜鉛16.2g(0.2モル)を添加した。これにアセチルアセトン40.0g(0.4モル)を滴下した後、5時間加熱還流を行い、組成物bを得た。
【0067】
[評価方法]
<組成物の安定性>
<<評価方法>>
上記調製例で得た組成物を、硝子瓶に密閉した状態で、25℃、1か月保管し、1か月後の組成物の状態を以下の判定基準で評価した。
【0068】
<<判定基準>>
○:析出物がなく、均一な溶液となっており、外観に変化がなし
△:析出物があるが、40℃に加温すると溶解して均一な溶液となる
△×:析出物があり、40℃に加温しても溶解しないが、40℃より高い温度から60℃までの温度に加温すると溶解して均一な溶液となる
×:析出物があり、60℃に加温しても溶解せず均一な溶液とならない
【0069】
<ウレタン化反応触媒としての性能>
<<ゲル分率の測定方法>>
ブロックイソシアネート(旭化成ケミカルズ社製、(登録商標)デュラネートTPA−B80E)20.0gとポリオール(DIC社製、(登録商標)アクリディックA−801−P)5.9gとを混合した後、前記調製例で得られた組成物0.15gを加え、140℃で、30分間、加熱硬化した。
得られた硬化物の質量[a]を計量した後、300gのアセトンに、25℃で、24時間浸漬した。24時間経過後、ろ過を行い、不溶物を100℃、1時間で乾燥し、不溶物の質量[b]を計量した。
【0070】
以下の計算式で、ゲル分率(%)を計算し、これをウレタン化反応触媒の性能評価の指標とした。
[ゲル分率](%)=100×不溶物の質量[b]/硬化物の質量[a]
結果を以下の表1に示す。
【0071】
【表1】
【0072】
本発明のウレタン化反応触媒(調製例1〜6)では、組成物の安定性も、ウレタン化反応触媒性能(ゲル分率(%))も優れていた。
一方、(B)安定化剤を含有しないウレタン化反応触媒(調製例7〜8)では、組成物の安定性も、ウレタン化反応触媒性能(ゲル分率(%))も劣っていた。