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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-136683(P2015-136683A)
(43)【公開日】2015年7月30日
(54)【発明の名称】電気集塵装置及び集塵方法
(51)【国際特許分類】
   B03C 3/41 20060101AFI20150703BHJP
   B03C 3/02 20060101ALI20150703BHJP
   B03C 3/40 20060101ALI20150703BHJP
   B03C 3/47 20060101ALI20150703BHJP
【FI】
   B03C3/41 F
   B03C3/02 Z
   B03C3/40 A
   B03C3/41 C
   B03C3/47
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2014-11363(P2014-11363)
(22)【出願日】2014年1月24日
(71)【出願人】
【識別番号】309036221
【氏名又は名称】三菱重工メカトロシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100118913
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 邦生
(72)【発明者】
【氏名】上田 泰稔
(72)【発明者】
【氏名】杉▲崎▼ 寿典
(72)【発明者】
【氏名】三宅 一明
(72)【発明者】
【氏名】松浦 賢次
【テーマコード(参考)】
4D054
【Fターム(参考)】
4D054AA07
4D054BA02
4D054BB06
4D054BC03
4D054BC19
(57)【要約】
【課題】オゾン発生量を低減させるとともに高い集塵性能を維持することが可能である電気集塵装置及び当該電気集塵装置を用いた集塵方法を提供する。
【解決手段】第1の放電電極12が複数の第1の放電部14を有する帯電部10と、帯電部10のガスの下流側に設置され、第2のアース電極21と第2の放電電極22とを備える集塵部20と、電圧発生部30とを有する電気集塵装置において、第2のアース電極21のガスの下流側に位置する端部に捕集板40が設置される。電圧発生部30が第1の放電電極12に正極性の電圧を印加してダストを帯電させ、電圧発生部30が第2の放電電極22に正極性の電圧を印加して、第2のアース電極21及び捕集板40に帯電したダストを捕集させる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
NOを含むガス中のダストを集塵する電気集塵装置であって、
第1のアース電極と第1の放電電極とが互いに略平行に交互に配置される帯電部と、
前記帯電部の前記ガスの下流側に設置され、第2のアース電極と第2の放電電極とが互いに略平行に交互に配置される集塵部と、
前記帯電部及び前記集塵部に接続される電圧発生部とを備え、
前記第1の放電電極が、前記ガスの下流側及び上流側の端部から前記ガスの流通方向に略平行な方向に突出する複数の第1の放電部を有し、
前記第2のアース電極及び前記第2の放電電極が略平板形状を有し、
前記第2のアース電極が、前記ガスの下流側に位置する端部に、前記ガスの流れを阻害するととともに前記ガス中の前記ダストを捕集する捕集板を有し、
前記電圧発生部が、前記第1の放電電極に正の電圧を印加して前記第1の放電部と前記第1のアース電極との間でコロナ放電を発生させ、前記第2の放電電極に正の電圧を印加して、前記第2のアース電極及び前記捕集板と前記第2の放電電極との間に前記第2のアース電極に向かう電界を発生させる電気集塵装置。
【請求項2】
前記第2の放電電極が、前記ガスの下流側に位置する端部に、前記ガスの流通方向に略平行な方向に突出する複数の第2の放電部を有する請求項1に記載の電気集塵装置。
【請求項3】
前記捕集板の前記ガスが衝突する側の面に多孔部材が設置されている請求項1または請求項2に記載の電気集塵装置。
【請求項4】
前記ガスの流通方向と、前記捕集板の延在方向とが、略直交する請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の電気集塵装置。
【請求項5】
前記ガスの流通方向と、前記捕集板の延在方向とが、鋭角をなす請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の電気集塵装置。
【請求項6】
前記ガスの流通方向と、前記捕集板の延在方向とが、鈍角をなす請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の電気集塵装置。
【請求項7】
前記第2のアース電極から前記第2の放電電極に向かう方向での前記捕集板の先端と前記アース電極との距離は、前記第2のアース電極と前記第2の放電電極との距離の1/4以上1/2以下である請求項4乃至請求項6のいずれかに記載の電気集塵装置。
【請求項8】
NOを含むガス中のダストを集塵する電気集塵装置であって、
第1のアース電極と第1の放電電極とが互いに略平行に交互に配置される帯電部と、
前記帯電部の前記ガスの下流側に設置され、第2のアース電極と第2の放電電極とが互いに略平行に交互に配置される集塵部と、
前記帯電部及び前記集塵部に接続される電圧発生部とを備え、
前記第1の放電電極が、前記ガスの流通方向の両端部に、前記ガスの流通方向に略平行に突出する複数の第1の放電部を有し、
前記電圧発生部が、前記第1の放電電極に正の電圧を印加して前記第1の放電部と前記第1のアース電極との間で正極性のコロナ放電を発生させ、前記第2の放電電極に負の電圧を印加して、前記第2のアース電極と前記第2の放電電極との間に前記第2の放電電極に向かう電界を発生させる電気集塵装置。
【請求項9】
車両が走行するトンネル内に設置される請求項1乃至請求項8のいずれかに記載の電気集塵装置。
【請求項10】
請求項1乃至請求項7のいずれかに記載の電気集塵装置を用いて、前記NOを含む前記ガス中のダストを集塵する集塵方法であって、
前記電圧発生部が前記第1の放電電極に正の電圧を印加して、前記第1の放電電極と前記第1のアース電極との間で正極性のコロナ放電を発生させて、前記帯電部内で前記ダストを正に帯電させ、
前記電圧発生部が前記第2の放電電極に正の電圧を印加して、前記第2の放電電極と前記第2のアース電極との間に前記第2のアース電極に向かう電界を発生させて、前記第2のアース電極が正に帯電した前記ダストを捕集し、
前記捕集板が、前記ガス中に残留する前記ダスト及び前記第2のアース電極から離脱して前記ガス中に飛散した前記ダストを捕集する集塵方法。
【請求項11】
請求項8に記載の電気集塵装置を用いて、前記NOを含む前記ガス中のダストを集塵する方法であって、
前記電圧発生部が前記第1の放電電極に正の電圧を印加して、前記第1の放電電極と前記第1のアース電極との間で正極性のコロナ放電を発生させて、前記帯電部内で前記ダストを正に帯電させ、
前記電圧発生部が前記第2の放電電極に負の電圧を印加して、前記第2の放電電極と前記第2のアース電極との間に前記第2の放電電極に向かう電界を発生させて、前記第2の放電電極が正に帯電した前記ダストを捕集する集塵方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電気集塵装置に関し、特に車両が走行するトンネル内に設置される電気集塵装置及びそれを用いた集塵方法に関する。
【背景技術】
【0002】
山間部を貫通する長大トンネルや交通量の多いトンネルにおいては、トンネル内の視界確保及び環境改善を目的として、トンネル内に空気浄化システムが設置される。図9はトンネル用空気浄化システムの一例である。空気浄化システム300は、車両311が走行する主トンネル310から分岐するバイパストンネル320や換気所内に設置される。バイパストンネル320や換気所には更に、空気浄化システム300の後流側に、風路340及び送風機360が設置され、風路340外に補機室330及び電気室350が設置されている。
【0003】
図10は空気浄化システムの一例である。車両から排出される排ガスにはダスト(浮遊粒子状物質、図10で「SPM」と表す)の他NO、NOといった窒素酸化物が含まれている。バイパストンネル320に導かれた空気は、ダスト及び窒素酸化物を伴って空気浄化システム300に流入する。空気浄化システム300は、NO及びSPMを除去するために、ガス入口側から順に、電気集塵装置301及び脱硝装置302を備える。
【0004】
特許文献1は、電気集塵装置301の一例を開示する。特許文献1の電気集塵装置は、帯電部と集塵部とを備えている。帯電部及び集塵部は、放電電極と集塵電極とが交互に平行配設された電極を備える。特許文献1の電気集塵装置は、帯電部において、負極性のコロナ放電を発生させてダストを負極性に帯電させ、後段の集塵部で放電電極方向に向かう電界を発生させ、クーロン力により集塵電極に引き寄せて集塵電極がダストを捕集する。この工程により、排ガス中からダストが除去される。
【0005】
ダストが捕集された後のガスは、後段の脱硝装置302に搬送される。脱硝装置302は内部に吸収剤303を備える。ガス中の窒素酸化物は、脱硝装置302内を通過する際に吸収剤303がガス中のNOを吸収することにより、ガス中から除去される。脱硝装置302は、例えばハニカム状活性炭担体上に反応促進剤が担持されたものである。
【0006】
ここで、車両から環境に排出されるガス中に含まれる窒素酸化物のうち、NOに対して規制が設定されている。このため、トンネルに設置される脱硝装置302には、NOを吸収する反応促進剤(例えばKOH)が担持された吸収剤が用いられる。吸収剤において、以下の反応式によりNOがガス中から除去される。
2NO+2KOH→KNO+KNO+HO …(1)
一方、NOは吸収剤303を通過して空気浄化システム300から排出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第4964515号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1の電気集塵装置では負極性のコロナ放電によりオゾンが発生する。このオゾンにより排ガス中のNOがNOに酸化される。負極性のコロナ放電はオゾン発生量が多くなるため、電気集塵装置を通過する間にNO濃度が増大する。後段にNOの吸収剤を備える脱硝装置が設置される場合は、吸収剤の処理負荷が増大し、吸収剤の寿命が低下することが問題となっていた。
【0009】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、オゾン発生量を低減させるとともに高い集塵性能を維持することが可能である電気集塵装置、及び、当該電気集塵装置を用いた集塵方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1の態様は、NOを含むガス中のダストを集塵する電気集塵装置であって、第1のアース電極と第1の放電電極とが互いに略平行に交互に配置される帯電部と、前記帯電部の前記ガスの下流側に設置され、第2のアース電極と第2の放電電極とが互いに略平行に交互に配置される集塵部と、前記帯電部及び前記集塵部に接続される電圧発生部とを備え、前記第1の放電電極が、前記ガスの下流側及び上流側の端部から前記ガスの流通方向に略平行な方向に突出する複数の第1の放電部を有し、前記第2のアース電極及び前記第2の放電電極が略平板形状を有し、前記第2のアース電極が、前記ガスの下流側に位置する端部に、前記ガスの流れを阻害するととともに前記ガス中の前記ダストを捕集する捕集板を有し、前記電圧発生部が、前記第1の放電電極に正の電圧を印加して前記第1の放電部と前記第1のアース電極との間でコロナ放電を発生させ、前記第2の放電電極に正の電圧を印加して、前記第2のアース電極及び前記捕集板と前記第2の放電電極との間に前記第2のアース電極に向かう電界を発生させる。
【0011】
本発明の第2の態様は、第1の態様に係る電気集塵装置を用いて、前記NOを含む前記ガス中のダストを集塵する集塵方法であって、前記電圧発生部が前記第1の放電電極に正の電圧を印加して、前記第1の放電電極と前記第1のアース電極との間で正極性のコロナ放電を発生させて、前記帯電部内で前記ダストを正に帯電させ、前記電圧発生部が前記第2の放電電極に正の電圧を印加して、前記第2の放電電極と前記第2のアース電極との間に前記第2のアース電極に向かう電界を発生させて、前記第2のアース電極が正に帯電した前記ダストを捕集し、前記捕集板が、前記ガス中に残留する前記ダスト及び前記第2のアース電極から離脱して前記ガス中に飛散した前記ダストを捕集する。
【0012】
電気集塵装置での処理対象のガス中にNOが含まれる場合、コロナ放電で発生したオゾンによりNOが酸化されてNOが生成する。NOに環境基準が設けられるとともに上述のように車両から排出されるNOに対して規制が設けられているため、トンネルにもNO2除去用の脱硝装置が設置されるケースがある。NOの増大は脱硝装置の負荷を増大させ吸収剤の寿命を短くする。
一般的に、同一の消費電力条件では正極性のコロナ放電は負極性のコロナ放電に比べてオゾンの発生量が少ないという特徴がある。そこで本発明では正のコロナ放電でダストを帯電させることにより、NO濃度の増加を抑制している。本発明の電気集塵装置の後段にNOを除去する脱硝装置を設ける場合、脱硝装置でのNO処理量が低減されるので、吸収剤の寿命低下を抑制することができる。
【0013】
一方、同一の消費電力で比較した場合、正極性荷電を用いた電気集塵装置は、負極性荷電を用いる場合よりも集塵性能に劣る。また、電極に捕集されたダストが再飛散することにより、電気集塵装置の集塵性能の低下が起こる。そこで、本発明では、集塵部のアース電極に捕集板を設置してアース電極近傍を漂う再飛散粒子を捕集することで、正極性荷電でも負極性荷電と同等の集塵性能を確保することが可能となる。
【0014】
第1の態様において、前記第2の放電電極が、前記ガスの下流側に位置する端部に、前記ガスの流通方向に略平行な方向に突出する複数の第2の放電部を有することが好ましい。
【0015】
集塵部の放電電極に設けられた放電部からコロナ放電を発生させることにより、アース電極及び捕集板に向かうダストの移動を促進させることができる。この結果、再飛散ダストを含む浮遊ダストをよりアース極近傍に保持することが可能になり、アース電極及び捕集板でのダストの捕集効率を更に向上させることができる。
【0016】
第1の態様において、前記捕集板の前記ガスが衝突する側の面に多孔部材が設置されていることが好ましい。こうすることにより衝突したダストの保持力が増大するため、集塵性能を向上させることが可能となる。
【0017】
第1の態様において、前記ガスの流通方向と、前記捕集板の延在方向とが、略直交していることが好ましい。または、前記ガスの流通方向と、前記捕集板の延在方向とが、鋭角をなしていても良い。または、前記ガスの流通方向と、前記捕集板の延在方向とが、鈍角をなしていても良い。
この場合、前記第2のアース電極から前記第2の放電電極に向かう方向での前記捕集板の先端と前記アース電極との距離は、前記第2のアース電極と前記第2の放電電極との距離の1/4以上1/2以下であることが好ましい。
【0018】
このような形状の捕集板を設けることにより、集塵部から排出されるガスの流れを阻害することなく、捕集板でダストを捕集することができるため、集塵部内のガス通過領域の全面にフィルタを設置した場合のような大幅な圧損上昇を伴うことなく集塵効率を向上させることが可能となる。
【0019】
本発明の第3の態様は、NOを含むガス中のダストを集塵する電気集塵装置であって、第1のアース電極と第1の放電電極とが互いに略平行に交互に配置される帯電部と、前記帯電部の前記ガスの下流側に設置され、第2のアース電極と第2の放電電極とが互いに略平行に交互に配置される集塵部と、前記帯電部及び前記集塵部に接続される電圧発生部とを備え、前記第1の放電電極が、前記ガスの流通方向の両端部に、前記ガスの流通方向に略平行に突出する複数の第1の放電部を有し、前記電圧発生部が、前記第1の放電電極に正の電圧を印加して前記第1の放電部と前記第1のアース電極との間で正極性のコロナ放電を発生させ、前記第2の放電電極に負の電圧を印加して、前記第2のアース電極と前記第2の放電電極との間に前記第2の放電電極に向かう電界を発生させる。
【0020】
本発明の第4の態様は、本発明の第3の態様に係る電気集塵装置を用いて、前記NOを含む前記ガス中のダストを集塵する方法であって、前記電圧発生部が前記第1の放電電極に正の電圧を印加して、前記第1の放電電極と前記第1のアース電極との間で正極性のコロナ放電を発生させて、前記帯電部内で前記ダストを正に帯電させ、前記電圧発生部が前記第2の放電電極に負の電圧を印加して、前記第2の放電電極と前記第2のアース電極との間に前記第2の放電電極に向かう電界を発生させて、前記第2の放電電極が正に帯電した前記ダストを捕集する。
【0021】
第3の態様及び第4の態様においても、帯電部で正極性のコロナ放電を発生させて、NO濃度上昇を抑制している。
集塵部の放電電極は略平板形状であるため、集塵部内でコロナ放電が発生しない。集塵部内でのオゾンの生成は行われないため、本態様では放電電極に火花電圧の高い負極性の電圧を印加する。こうすることにより電界強度を上げることができ、集塵部の放電電極に正極性の高電圧を印加するよりも高い集塵効率を確保することが可能となる。
【0022】
第1の態様及び第3の態様の電気集塵装置は、車両が走行するトンネル内に設置されることが好ましい。
【0023】
車両から排出される排ガス中のNO濃度に規制が設けられているため、トンネル内に設置される電気集塵装置の後段にはNOを除去する脱硝装置が設置される場合がある。本発明の電気集塵装置は、ダストの帯電に伴うNO濃度の上昇を抑制することができる。従って、本発明の電気集塵装置を用いれば、後段の脱硝装置でのNO処理量を低減し、吸収剤の寿命低下を抑制するという効果を奏することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、帯電部において正極性のコロナ放電でダストを帯電させることにより、オゾンの発生が抑制されるので、排ガス中のNO濃度増大を抑制することができる。この結果、後段の脱硝装置での処理負荷を低減させることができる。
ダストを正に帯電させた場合は、負に帯電させる場合よりも捕集性能が低下するが、本発明では捕集板が捕集性能をアシストするので、高い集塵効率を維持できる。
あるいは、集塵部において帯電部とは逆に放電電極に火花電圧が高い負の高電圧を印加することにより、正の高電圧を印加するよりも高い電界を与えることが可能になるので、捕集性能を高めることができる。この結果、高い集塵効率を維持することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】第1実施形態に係る電気集塵装置の集塵ユニットの概略斜視図である。
図2】第1実施形態に係る電気集塵装置の集塵ユニットの概略平面図である。
図3】第1実施形態に係る電気集塵装置の集塵ユニットの別の例を説明する概略平面図である。
図4】第2実施形態に係る電気集塵装置の集塵ユニットの概略斜視図である。
図5】第2実施形態に係る電気集塵装置の集塵ユニットの概略平面図である。
図6】ダストの極性による捕集性能の違いを説明するグラフである。
図7】捕集板の有無による捕集性能の違いを説明するグラフである。
図8】第3実施形態に係る電気集塵装置の集塵ユニットの概略斜視図である。
図9】トンネル用空気浄化システムの一例である。
図10】空気浄化システムの一例である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
[第1実施形態]
本発明の第1実施形態に係る電気集塵装置を、図面を参照して説明する。本実施形態の電気集塵装置は、図10に例示される空気浄化システムに適用される。
図1は電気集塵装置に収容される集塵ユニットの概略斜視図である。図2は、図1の集塵ユニットを上側から見た平面図である。図1では、ガスは集塵ユニット1に対して略水平方向に流通する。集塵ユニット1は、帯電部10と、帯電部10のガス下流側に位置する集塵部20と、電圧発生部30とを有する。
【0027】
帯電部10は、複数のアース電極(第1のアース電極)11と放電電極(第1の放電電極)12とを備える。アース電極11及び放電電極12は略平板形状を有し、所定間隔を開けて互いに略平行になるように交互に配列されている。
【0028】
放電電極12には、ガスの下流側及び上流側の端部13a,13bに複数の放電部(第1の放電部)14が設けられている。放電部14は、放電電極12からガス流通方向と略平行な方向にそれぞれ突出する突起である。図1及び図2では、放電部14はトゲ状の突起である。ただし、放電部14の形状はこれに限定されない。
【0029】
集塵部20は、複数のアース電極(第2のアース電極)21と放電電極(第2の放電電極)22とを備える。アース電極21及び放電電極22は互いに略平行になるように、所定の間隔を開けて交互に配列されている。アース電極21及び放電電極22は略平板形状を有し、放電電極22はアース電極21よりも小さい。本実施形態において、放電電極22には放電部は設けられていない。
【0030】
アース電極21には、ガスの下流側に位置する端部に捕集板40が取り付けられている。捕集板40は、鋼などの金属製の板である。図1及び図2の捕集板40は、横断面が長方形となっている。すなわち、捕集板40は、アース電極21からガス流通方向に略直交する方向に向かって延在する。
【0031】
図3は、本実施形態の捕集板の別の形状例を説明する概略図であり、図1の集塵ユニットを上側から見た平面図である。図3(a)に示される捕集板41は、アース電極21からガス流通方向と鋭角を成す方向に向かって延在する。図3(b)に示される捕集板42は、アース電極21からガス流通方向と鈍角を成す方向に向かって延在する。
【0032】
捕集板40〜42のガス流入側の表面に多孔部材が設置されていても良い。例えば、スポンジやフィルタが設置される。
【0033】
図2図3(a)及び図3(b)に示す形状の捕集板40〜42を設置すると、捕集板40〜42のガス流入側の表面にガスが衝突し、アース電極21端部でガスの流れが阻害される。アース電極21から放電電極22に向かう方向での捕集板40〜42の先端とアース電極21との距離tは、アース電極21と放電電極22との距離をDとすると、D/4以上D/2以下であることが好ましい。D/4未満であると捕集板40〜42に衝突するガス量が少ないので、所望の捕集効率を得ることができない。一方、D/2より大きくなると、集塵部20からの排出口におけるガス流通面積が小さくなるので、圧力損失が増加するとともに、通過流速が速くなる事で捕集されていたダストが飛散し、集塵効率が低下する。
【0034】
電圧発生部30は、放電電極12,22に接続され、放電電極12,22に正極性の高電圧を印加する。アース電極11,21はそれぞれ接地されている。
【0035】
本実施形態の集塵ユニット1では、アース電極21及び捕集板40の上方に、アース電極21及び捕集板40を洗浄するための洗浄液(例えば水)を供給する洗浄部(図示せず)が設置されても良い。
【0036】
図1,2に示される集塵ユニット1を用いて、排ガスからダストを集塵する方法を以下で説明する。ここでは、電気集塵装置がトンネル内に設置され、車両から発生する排ガスを処理する場合を例に挙げて説明する。但し、本実施形態の電気集塵装置はトンネル内に設置される場合に限定されるものではなく、空気浄化設備(室内用空気清浄器など)にも適用可能である。
【0037】
車両から排出される排ガスには、ダスト及び窒素酸化物(NO、NO)が含まれる。ダスト及び窒素酸化物を含む排ガスが、帯電部10側から集塵ユニット1に流入する。
【0038】
電圧発生部30は、帯電部10の放電電極12に正極性の電圧を印加する。放電電極12に電圧が印加されると、放電部14とアース電極11との間で正極性のコロナ放電が発生する。コロナ放電が発生している領域をダストが通過すると、ダストが正の電荷に帯電される。
【0039】
排ガスには酸素も含まれているため、排ガスがコロナ放電内を通過するとオゾンが発生する。排ガスに含まれるNOの一部は、発生したオゾンによりNOに酸化される。すなわち、帯電部10を通過すると、排ガス中のNO濃度が増加することになる。
【0040】
ここで、放電部14とアース電極11との距離が一定である場合、一般的にオゾン発生量は正極性の放電の方が負極性の放電よりも少ない事が知られている。この事象は、それぞれの放電特性に依るものである。従って、正極性のコロナ放電ではNO濃度増加が抑制される。
【0041】
電圧発生部30は、集塵部20の放電電極22に正極性の電圧を印加する。これにより、集塵部20内において、放電電極22とアース電極21及び捕集板40との間でアース電極21に向かう電界が発生する。本実施形態において、放電電極22には放電部が形成されていない。このため、集塵部20ではコロナ放電は発生しない。
【0042】
帯電部10を通過した排ガスは、帯電したダスト及び窒素酸化物を伴って集塵部20に流入する。排ガスが集塵部20に流入すると、正極性に帯電したダストがアース電極21に引きつけられ、アース電極21に付着して捕集される。これにより、ダストがガスから除去される。
【0043】
一旦アース電極21に捕集されたダストの一部は、ガス中に再飛散する。飛散したダストは凝集しており、電荷を帯びている。再飛散したダストは、放電電極22とアース電極21との間の電界により、再度アース電極21に捕集される。一方、ガス最下流側のアース電極21から飛散したダストは、捕集板40のガスが衝突する表面に捕集される。また、アース電極21に捕集されずに通過したダストも、捕集板41で捕集される。上述のように捕集板の表面に多孔部材が設置されていると表面積が大きくなるために、捕集率が高くなる。
【0044】
集塵部20ではコロナ放電が発生していないので、集塵部20ではオゾンは発生しない。このため、集塵部20を通過する間のNO濃度の増加はほとんど起こらない。
【0045】
ダストが捕集された清浄ガス(窒素酸化物を含む)は、捕集板40と放電電極22との隙間を通過して、集塵ユニット1から排出され、次いで電気集塵装置から排出される。
【0046】
アース電極21及び捕集板40へのダスト付着量が増大すると、捕集効率が低下する。そこで、本実施形態の電気集塵装置では、アース電極21及び捕集板40に対して洗浄部から洗浄液を定期的に供給して、表面からダストを除去することが好ましい。
【0047】
[第2実施形態]
本発明の第2実施形態に係る電気集塵装置を、図面を参照して説明する。本実施形態の電気集塵装置は、図10に例示される空気浄化システムに適用される。
図4は第2実施形態に係る電気集塵装置に収容される集塵ユニットの概略斜視図である。図5は、図4の集塵ユニットを上側から見た平面図である。図4,5において、図1,2と同じ構成には同じ符号を付す。
【0048】
第2実施形態における集塵ユニット101は、集塵部120の放電電極122が異なる以外は、第1実施形態と同じ構成である。なお、捕集板40は図3(a)または図3(b)に示す形状とすることも可能である。
【0049】
放電電極122には、ガスの下流側に位置する端部123に複数の放電部(第2の放電部)124が設けられている。放電部124は、放電電極122からガス流通方向と略平行な方向に突出する突起である。図4,5において放電部124はトゲ状の突起であるが、放電部124の形状はこれに限定されない。
【0050】
集塵ユニット101を用いて、排ガスからダストを集塵する方法を以下で説明する。電気集塵装置がトンネル内に設置され、車両から発生する排ガスを処理する場合を例に挙げて説明する。但し、本実施形態の電気集塵装置はトンネル内に設置される場合に限定されるものではなく、第1実施形態と同様に空気浄化設備(室内用空気清浄器など)にも適用可能である。
【0051】
第1実施形態で説明したように、帯電部10において排ガスに含まれるダストが正極性に帯電する。また、排ガスがコロナ放電内を通過する際にオゾンが発生し、オゾンにより排ガス中のNOの一部がNOに酸化される。
【0052】
電圧発生部30は、集塵部120の放電電極122に正極性の電圧を印加する。これにより、集塵部120内において、放電電極122の板状部分とアース電極21との間でアース電極21に向かう電界が発生する。また、放電電極122の放電部124とガス下流側に位置するアース電極21及び捕集板40との間で正極性のコロナ放電が発生する。
【0053】
帯電部10を通過した排ガスは、集塵部120に流入する。排ガスが集塵部120に流入すると、正極性に帯電したダストがアース電極21に引きつけられ、アース電極21に付着して捕集される。これにより、ダストがガスから除去される。
【0054】
第1実施形態と同様に、アース電極21に捕集されたダストの一部がガス中に再飛散する。再飛散したダストは、アース電極21及び捕集板40に捕集されて除去される。本実施形態では、放電部124からのコロナ放電によってアース電極21及び捕集板40に向かうダストの移動が促進される。また、コロナ放電によりダストの帯電量を増加し、ガス最下流側におけるアース電極21及び捕集板40でのダストの捕集が促進される。
【0055】
図6は、帯電部で帯電させるダストの極性による捕集性能の違いを説明するグラフである。図6は、第2実施形態の構成の電気集塵装置を用いて取得した。図6において、横軸は消費電力比、縦軸はダスト捕集効率比である。
図7は、捕集板の有無による捕集性能の違いを説明するグラフである。図7は、第2実施形態と同じ構成の電気集塵装置を用いて取得した。図7において、横軸は消費電力比、縦軸はダスト捕集効率比である。
【0056】
図6から、同じ消費電力比である場合、帯電部でダストに正の電荷を与えた方がダスト捕集効率比が低下するので、アース電極での捕集効率が低下することが理解できる。また、負の電荷を与える場合と同程度の捕集効率を得るには、放電電極に与える電圧を高くし、集塵に必要な消費電力を投入する必要があることが理解できる。
【0057】
図7から、同じ消費電力比である場合は、捕集板を設置した方が捕集効率を向上させることができることが理解できる。また、同程度の捕集効率(ダスト捕集効率比)を得る場合には、捕集板を設けた方が消費電力が小さくなることが理解できる。
【0058】
NO濃度上昇を抑制するには帯電部の放電電極に正極性の電圧を印加することが効果的である。しかし図6に示すように、ダストを正極性に帯電させることによって捕集効率が犠牲となる。一方で、図7に示すように、捕集板が集塵部でのダストの捕集をアシストする効果を奏するので、高い集塵効率を維持することが可能となる。
【0059】
上述のように本実施形態では電気集塵装置通過後のNO濃度増加が抑制されているので、清浄ガスをNO除去用の脱硝装置に導くと、脱硝装置でのNO処理量が低減されることになるので、吸収剤の寿命低下を抑制することが可能である。
【0060】
[第3実施形態]
本発明の第3実施形態に係る電気集塵装置を、図面を参照して説明する。本実施形態の電気集塵装置は、図10に例示される空気浄化システムに適用される。
図8は、第3実施形態に係る電気集塵装置に収容される集塵ユニットの概略斜視図である。図8では、ガスは集塵ユニット201に対して略水平方向に流通する。集塵ユニット201は、帯電部210と、帯電部210のガス下流側に位置する集塵部220と、電圧発生部230とを有する。
【0061】
帯電部210は第1実施形態と同じ構成である。略平板状のアース電極211及び放電電極212が互いに略平行になるように、所定の間隔を開けて交互に配置されている。放電電極212は放電部214を有する。
【0062】
集塵部220は、複数のアース電極(第2のアース電極)221と放電電極(第2の放電電極)222とを備える。アース電極221及び放電電極222は互いに略平行になるように、所定の間隔を開けて交互に配列されている。アース電極221及び放電電極222は略平板形状を有し、放電電極222はアース電極221よりも小さい。集塵ユニット201では、アース電極221に捕集板は設置されていない。また、放電電極222に放電部が設けられていない。
【0063】
第3実施形態において、電圧発生部230は第1の電圧発生部230aと第2の電圧発生部230bとで構成される。第1の電圧発生部230aは、帯電部210の放電電極212に接続され、放電電極212に正極性の電圧を印加する。第2の電圧発生部230bは、集塵部220の放電電極222に接続され、放電電極222に負極性の電圧を印加する。アース電極211,221は接地されている。
【0064】
本実施形態の集塵ユニット201では、放電電極222の上方に、放電電極222を洗浄するための洗浄液(例えば水)を供給する洗浄部(図示せず)が設置されても良い。
【0065】
図8に示される集塵ユニット201を用いて、排ガスからダストを集塵する方法を以下で説明する。ここでは、電気集塵装置がトンネル内に設置され、車両から発生する排ガスを処理する場合を例に挙げて説明する。なお、本実施形態の電気集塵装置はトンネル内に設置される場合に限定されるものではなく、第1実施形態と同様に空気浄化設備にも適用可能である。
【0066】
第1の電圧発生部230aは、放電電極212に正の電圧を印加する。これにより、放電電極212の放電部214とアース電極211との間で正極性のコロナ放電が発生する。第1実施形態と同様に、ガスが帯電部210を通過することにより、ダストが正に帯電されるとともに、排ガス中のNOの一部が酸化されてNOとなる。
【0067】
第2の電圧発生部230bは、集塵部220の放電電極222に負の電圧を印加する。これにより、集塵部220内において、放電電極222とアース電極221との間で放電電極222に向かう電界が発生する。本実施形態において、放電電極222には放電部が形成されていない。このため、集塵部220ではコロナ放電は発生しない。
【0068】
帯電部210を通過した排ガスは、帯電したダスト及び窒素酸化物を伴って集塵部220に流入する。集塵部220に排ガスが流入すると、正に帯電したダストが放電電極222に引きつけられ、放電電極222に付着して捕集される。これにより、ダストがガスから除去される。ダストが除去された後のガスは、窒素酸化物を含む清浄ガスとして集塵ユニット201から排出され、その後電気集塵装置から排出される。
【0069】
本実施形態では、帯電部210で正極性のコロナ放電を発生させて、NO濃度上昇を抑制している。
また、集塵部220の放電電極222は放電部を有さない平板状の電極であるため、アース電極221との間でのコロナ放電が発生しない。このため、集塵部220を通過する間にオゾンの生成は行われない。このため、放電電極222に火花電圧の高い負極性の電圧を印加することができる。このため、高い集塵効率を維持することが可能となる。
【符号の説明】
【0070】
1,101,201 集塵ユニット
10,210 帯電部
11,211 アース電極(第1のアース電極)
12,212 放電電極(第1の放電電極)
14,214 放電部(第1の放電部)
20,120,220 集塵部
21,221 アース電極(第2のアース電極)
22,122,222 放電電極(第2の放電電極)
30,230 電圧発生部
40,41,42 捕集板
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10