【解決手段】第1送給ローラ21と、第1送給ローラとの間にワイヤ891を挟んだ状態で第1送給ローラを押圧する第1押圧ローラ22と、第2送給ローラ31と、第2送給ローラとの間にワイヤを挟んだ状態で、第2送給ローラを押圧する第2押圧ローラ32と、第1送給ローラおよび第2送給ローラを回転させる駆動部7と、第1ワンウェイクラッチ29とを備え、駆動部は、第1ワンウェイクラッチを介して、回転駆動力を第1送給ローラに伝達し、第1ワンウェイクラッチは、第1回転方向に第1送給ローラを回転するための回転駆動力を第1送給ローラに伝達させ、且つ第2回転方向に第1送給ローラを回転するための回転駆動力を第1送給ローラに伝達せず、第1回転方向はワイヤを送給方向前方F1へ送給するための第1送給ローラの回転方向であり、第2回転方向は第1回転方向とは反対の方向である。
前記第1送給ローラ、前記第1押圧ローラ、前記第2送給ローラ、および前記第2押圧ローラは、それぞれ、後方プッシュ側送給ローラ、後方プッシュ側押圧ローラ、前方プッシュ側送給ローラ、および前方プッシュ側押圧ローラであり、
前記駆動部は、プッシュ側モータを含み、
前記後方プッシュ側送給ローラおよび前記前方プッシュ側送給ローラはいずれも、前記プッシュ側モータによって駆動させられる、請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の供給機構。
前記第1送給ローラ、前記第1押圧ローラ、前記第2送給ローラ、および前記第2押圧ローラは、それぞれ、プッシュ側送給ローラ、プッシュ側押圧ローラ、プル側送給ローラ、およびプル側押圧ローラである、請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の供給機構。
前記プッシュ側送給ローラおよび前記プル側送給ローラのいずれか一方には、ユニバーサルジョイントを介して、前記モータの回転駆動力が伝達される、請求項8に記載の供給機構。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態につき、図面を参照して具体的に説明する。
【0019】
<第1実施形態>
図1〜
図5を用いて、本発明の第1実施形態について説明する。
【0020】
図1は、本発明の第1実施形態にかかるアーク処理システムの正面図である。
【0021】
同図に示すアーク処理システムA1は、ロボット11と、ワイヤの供給機構12と、を備える。
【0022】
ロボット11は母材Wに対してアーク処理を行う。このようなアーク処理としては、たとえば、溶接および溶射が挙げられる。本実施形態では、ロボット11は、母材Wに対して自動でアーク溶接を行う。ロボット11は、たとえば多関節ロボットである。ロボット11は、供給機構12によって供給されたワイヤ891を用いてアーク処理を行う。
【0023】
供給機構12は、母材Wに向かってワイヤ891を送給するためのものである。
【0024】
図2は、
図1に示したアーク処理システムを模式的に示した図である。
図3は、本発明の第1実施形態にかかる供給機構の一部を示す正面図である。
図4は、
図3のIV−IV線に沿う断面図である。
図5は、
図3のV−V線に沿う断面図である。
【0025】
供給機構12は、支持部材20と、第1送給ローラ21と、第1押圧ローラ22と、第1ワンウェイクラッチ29と、第2送給ローラ31と、第2押圧ローラ32と、第2ワンウェイクラッチ39と、第1ワイヤガイド61と、第2ワイヤガイド62と、第3ワイヤガイド63と、駆動部7と、を含む。
【0026】
図4等に示す支持部材20は、たとえば金属よりなるフレームである。詳細な図示は省略するが、本実施形態では、支持部材20は底板および側板等を有する。各側板は、底板に立設されている。
図1に示すワイヤリール28は、ワイヤリールハブ(図示略)を介して支持部材20に回転可能に固定されている。
【0027】
第1押圧ローラ22は、回転軸線22Aを中心に回転可能に、支持体(図示略)を介して、支持部材20に支持されている。第1押圧ローラ22は、第1送給ローラ21との間にワイヤ891を挟んだ状態で、第1送給ローラ21を押圧する。第1押圧ローラ22はローラ周面22aを有する。ローラ周面22aは、回転軸線22Aの径方向側を向いている。
【0028】
第1送給ローラ21は、回転軸線21Aを中心に回転可能に、支持部材20に支持されている。第1送給ローラ21はローラ周面21aを有する。ローラ周面21aは、回転軸線21Aの径方向側を向いている。第1送給ローラ21には、ガイド溝21bが形成されている。ガイド溝21bは、ローラ周面21aから凹んでいる。ガイド溝21bはワイヤ891をガイドするために形成されている。
【0029】
第1送給ローラ21と第1押圧ローラ22は、互いに協働して、ワイヤリールハブ(図示略)に巻かれたワイヤ891を所望の方向に送る。具体的には、第1送給ローラ21と第1押圧ローラ22との間にワイヤ891を挟んだ状態で、第1送給ローラ21と第1押圧ローラ22とが回転することにより、ワイヤ891が送給方向前方F1に送られる。第1送給ローラ21が第1回転方向X1(
図3では時計回り)に回転し、第1押圧ローラ22が第1送給ローラ21とは逆方向に回転することにより、ワイヤ891が送給方向前方F1に送られる。すなわち、第1回転方向X1は、ワイヤ891を送給方向前方F1へ送給するための第1送給ローラ21の回転方向である。第2回転方向X2は、第1回転方向X1とは反対の方向である。
【0030】
本実施形態では、第2送給ローラ31および第2押圧ローラ32は、第1送給ローラ21および第1押圧ローラ22に対して、送給方向前方F1側に配置されている。
【0031】
第2押圧ローラ32は、回転軸線32Aを中心に回転可能に、支持体(図示略)を介して、支持部材20に支持されている。第2押圧ローラ32は、第2送給ローラ31との間にワイヤ891を挟んだ状態で、第2送給ローラ31を押圧する。第2押圧ローラ32はローラ周面32aを有する。ローラ周面32aは、回転軸線32Aの径方向側を向いている。
【0032】
第2送給ローラ31は、回転軸線31Aを中心に回転可能に、支持部材20に支持されている。第2送給ローラ31はローラ周面31aを有する。ローラ周面31aは、回転軸線31Aの径方向側を向いている。第2送給ローラ31には、ガイド溝31bが形成されている。ガイド溝31bは、ローラ周面31aから凹んでいる。ガイド溝31bはワイヤ891をガイドするために形成されている。
【0033】
第2送給ローラ31と第2押圧ローラ32とは、互いに協働して、ワイヤ891を所望の方向に送る。具体的には、第2送給ローラ31と第2押圧ローラ32との間にワイヤ891を挟んだ状態で、第2送給ローラ31と第2押圧ローラ32とが回転することにより、ワイヤ891を送給方向前方F1に送る。第2送給ローラ31が第3回転方向X3(
図3では時計回り)に回転し、第2押圧ローラ32が第2送給ローラ31とは逆方向に回転することにより、ワイヤ891が送給方向前方F1に送られる。すなわち、第3回転方向X3は、ワイヤ891を送給方向前方F1へ送給するための第2送給ローラ31の回転方向である。第4回転方向X4は、第3回転方向X3とは反対の方向である。
【0034】
本実施形態では、第1送給ローラ21、第1押圧ローラ22、第2送給ローラ31、および第2押圧ローラ32は、それぞれ、後方プッシュ側送給ローラ、後方プッシュ側押圧ローラ、前方プッシュ側送給ローラ、および前方プッシュ側押圧ローラである。第1送給ローラ21、第1押圧ローラ22、第2送給ローラ31、および第2押圧ローラ32はいずれも、ワイヤプッシュ装置B1における構成である。
【0035】
第1ワイヤガイド61、第2ワイヤガイド62、および第3ワイヤガイド63は、送給されているワイヤ891をガイドする。第1ワイヤガイド61、第2ワイヤガイド62、および第3ワイヤガイド63にはそれぞれ、ワイヤ891を挿通させるための穴が形成されている。これにより、ワイヤ891が適切に送給される。
【0036】
第1ワイヤガイド61、第2ワイヤガイド62、および第3ワイヤガイド63は、たとえば、樹脂あるいは金属よりなる。第1ワイヤガイド61はインレットガイドと称されることがあり、第1送給ローラ21および第1押圧ローラ22よりも、送給経路P1の上流側に配置されている。第2ワイヤガイド62はセンターガイドと称されることがあり、送給経路P1において、第1送給ローラ21と、第2送給ローラ31との間に配置されている。第3ワイヤガイド63はアウトレットガイドと称されることがあり、第2送給ローラ31および第2押圧ローラ32よりも下流側(送給方向前方F1)に配置されている。
【0037】
駆動部7は、第1送給ローラ21および第2送給ローラ31を回転させるためのものである。
図2では、矢印を用いて、駆動部7から第1送給ローラ21や第2送給ローラ31への回転駆動力の伝達態様を示している。本実施形態では、駆動部7は、プッシュ側モータ71を含む。プッシュ側モータ71は、第1送給ローラ21(後方プッシュ側送給ローラ)および第2送給ローラ31(前方プッシュ側送給ローラ)をいずれも、駆動させる。プッシュ側モータ71は、ワイヤプッシュ装置B1における構成である。
図2に模式的に示すように、駆動部7は、第1ワンウェイクラッチ29を介して、回転駆動力を第1送給ローラ21に伝達し、第2ワンウェイクラッチ39を介して、回転駆動力を第2送給ローラ31に伝達する。
【0038】
第1ワンウェイクラッチ29は、第1回転方向X1に第1送給ローラ21を回転するための回転駆動力を、第1送給ローラ21に伝達させる。一方、第1ワンウェイクラッチ29は、第2回転方向X2に第1送給ローラ21を回転するための回転駆動力を、第1送給ローラ21に伝達しない。本実施形態では、第1ワンウェイクラッチ29は、第1送給ローラ21に直接連結されている。
【0039】
第2ワンウェイクラッチ39は、第3回転方向X3に第2送給ローラ31を回転するための回転駆動力を、第2送給ローラ31に伝達させる。一方、第2ワンウェイクラッチ39は、第4回転方向X4に第2送給ローラ31を回転するための回転駆動力を、第2送給ローラ31に伝達しない。本実施形態では、第2ワンウェイクラッチ39は、第2送給ローラ31に直接連結されている。
【0040】
プッシュ側モータ71から、第1送給ローラ21(後方プッシュ側送給ローラ)および第2送給ローラ31(前方プッシュ側送給ローラ)への回転駆動力は、以下のように伝達される。回転軸56は、駆動部7(プッシュ側モータ71)の駆動軸である。そのため、プッシュ側モータ71が回転すると回転軸56が回転する。ギア51は、回転軸56に固定されており、回転軸56の回転に伴い回転する。ギア52はギア51に噛み合っており、回転軸56の回転に伴い回転する。そして、ギア52の回転は、第1ワンウェイクラッチ29を介して、第1送給ローラ21に伝達され、第1送給ローラ21が回転する。一方、ギア53はギア51に噛み合っており、回転軸56の回転に伴い回転する。そして、ギア53の回転は、第2ワンウェイクラッチ39を介して、第2送給ローラ31に伝達され、第2送給ローラ31が回転する。
【0041】
なお、コンジットケーブル48は、第3ワイヤガイド63よりも送給方向前方F1側に配置されている。そして、ワイヤ891のうち、第3ワイヤガイド63よりも送給方向前方F1側の部位が、コンジットケーブル48に挿通されている。
【0042】
次に、本実施形態の作用効果について説明する。
【0043】
本実施形態においては、駆動部7は、第1ワンウェイクラッチ29を介して、回転駆動力を第1送給ローラ21に伝達する。第1ワンウェイクラッチ29は、第1回転方向X1に第1送給ローラ21を回転するための回転駆動力を、第1送給ローラ21に伝達させ、且つ、第2回転方向X2に第1送給ローラ21を回転するための回転駆動力を、第1送給ローラ21に伝達しない。このような構成によると、ワイヤ891から第1送給ローラ21が送給方向前方F1に向かう力を受けている場合、ワイヤ891からの送給方向前方F1に向かう力によって、第1送給ローラ21は、第1回転方向X1に更に回転可能である。その結果、第1送給ローラ21が、ワイヤ891からの送給方向前方F1に向かう力を、極めて小さくすることが可能となる。そうすると、第1送給ローラ21から受ける摩擦力をより多く、ワイヤ891の送給に用いることができる。これにより、供給機構12によって、ワイヤ891を安定して送給できる。
【0044】
同様に、駆動部7は、第2ワンウェイクラッチ39を介して、回転駆動力を第2送給ローラ31に伝達する。第2ワンウェイクラッチ39は、第3回転方向X3に第2送給ローラ31を回転するための回転駆動力を、第2送給ローラ31に伝達させ、且つ、第4回転方向X4に第2送給ローラ31を回転するための回転駆動力を、第2送給ローラ31に伝達しない。このような構成によると、ワイヤ891から第2送給ローラ31が送給方向前方F1に向かう力を受けている場合、ワイヤ891からの送給方向前方F1に向かう力によって、第2送給ローラ31は、第3回転方向X3に更に回転可能である。その結果、第2送給ローラ31が、ワイヤ891からの送給方向前方F1に向かう力を、極めて小さくすることが可能となる。そうすると、第2送給ローラ31から受ける摩擦力をより多く、ワイヤ891の送給に用いることができる。これにより、供給機構12によって、ワイヤ891を安定して送給できる。
【0045】
第1送給ローラ21や第2送給ローラ31に対する、ワイヤ891からの送給方向前方F1に向かう力を極めて小さくすることが、ワイヤ891の安定送給に資する理由は、本実施形態では次のように説明できる。
【0046】
供給機構12においては、現実には、第1送給ローラ21によるワイヤ891の送給速度と、第2送給ローラ31によるワイヤ891の送給速度とは、わずかに異なりうる。この原因としては、(i)第1送給ローラ21や第2送給ローラ31の機械加工精度の相違や、(ii)ギア52,53等のバックラッシュや、(iii)第1押圧ローラ22の押圧や第2押圧ローラ32の押圧によるワイヤ891の変形に起因するワイヤ891のガイド溝21b,31bへのはまり込みや、(iv)第1送給ローラ21とワイヤ891との間や第2送給ローラ31とワイヤ891との間にて発生するスリップ、等が考えられる。第1送給ローラ21によるワイヤ891の送給速度と、第2送給ローラ31によるワイヤ891の送給速度とが異なると、一対のローラ(第1送給ローラ21および第1押圧ローラ22)と、一対のローラ(第2送給ローラ31および第2押圧ローラ32)と、の間のワイヤ891が、たるんだり、あるいは、過度に緊張するおそれがある。
【0047】
本実施形態においては、一対のローラ(第1送給ローラ21および第1押圧ローラ22)と、一対のローラ(第2送給ローラ31および第2押圧ローラ32)と、の間のワイヤ891が、過度に緊張した場合には、第1送給ローラ21が、ワイヤ891から送給方向前方F1に向かう力を受けることとなる。しかしながら、本実施形態では上述のように、供給機構12は第1ワンウェイクラッチ29を含むので、第1送給ローラ21は、第1回転方向X1に更に回転し、ワイヤ891からの送給方向前方F1に向かう力が、極めて小さくなる。このことは、ワイヤ891の過度の緊張がほぼ解消されたことを意味する。
【0048】
一方、一対のローラ(第1送給ローラ21および第1押圧ローラ22)と、一対のローラ(第2送給ローラ31および第2押圧ローラ32)と、の間のワイヤ891にたるみが生じた場合には、第2送給ローラ31が、ワイヤ891から送給方向前方F1に向かう力を受けることとなる。しかしながら、本実施形態では上述のように、供給機構12は第2ワンウェイクラッチ39を含むので、第2送給ローラ31は、第3回転方向X3に更に回転し、ワイヤ891からの送給方向前方F1に向かう力が、極めて小さくなる。このことは、ワイヤ891のたるみがほぼ解消されたことを意味する。
【0049】
以上のように、本実施形態では、一対のローラ(第1送給ローラ21および第1押圧ローラ22)と、一対のローラ(第2送給ローラ31および第2押圧ローラ32)と、の間のワイヤ891が、たるんだり、あるいは、過度に緊張することを、ほぼ回避することができる。その結果、第1送給ローラ21や第2送給ローラ31から受ける摩擦力をより多く、ワイヤ891の送給に用いることができ、また、第1送給ローラ21や第2送給ローラ31の回転が停止してしまう不具合を回避できる。よって、非常に安定してワイヤ891を送給することが可能となる。
【0050】
そして、本実施形態によると、低コストで安定したワイヤ891の送給を実現でき、ワイヤ891の安定送給の実現により、高品位なアーク処理(溶接や溶射)が可能となる。
【0051】
<第1実施形態の第1変形例>
図6、
図7を用いて、本発明の第1実施形態の第1変形例について説明する。
【0052】
本変形例では、第1ワンウェイクラッチ29が第1送給ローラ21に直接連結されておらず、第2ワンウェイクラッチ39が第2送給ローラ31に直接連結されていない点において、上述の実施形態とは異なる。
【0053】
具体的には、
図6に示すように、ギア52Aにギア51が噛み合っており、ギア52Bにギア52Cが噛み合っている。駆動部7の回転駆動力は、ギア51、ギア52A、第1ワンウェイクラッチ29、ギア52B、およびギア52Cを、この順番に経由して、第1送給ローラ21に伝達される。同様に、
図7に示すように、ギア53Aにギア51が噛み合っており、ギア53Bにギア53Cが噛み合っている。駆動部7の回転駆動力は、ギア51、ギア53A、第2ワンウェイクラッチ39、ギア53B、およびギア53Cを、この順番に経由して、第2送給ローラ31に伝達される。
【0054】
このような構成によっても、第1実施形態で述べた作用効果と同様の作用効果を奏することができる。
【0055】
<第2実施形態>
図8〜
図10を用いて、本発明の第2実施形態について説明する。
【0056】
図8は、本発明の第2実施形態にかかるアーク処理システムを模式的に示した図である。
図9は、本発明の第2実施形態にかかるアーク処理システムにおける第1送給ローラおよび第1押圧ローラを主に示す正面図である。
図10は、本発明の第2実施形態にかかるアーク処理システムにおける第2送給ローラおよび第2押圧ローラを主に示す正面図である。
【0057】
同図に示す供給機構12は、支持部材20と、第1送給ローラ21と、第1押圧ローラ22と、ワイヤリール28と、第1ワンウェイクラッチ29と、第2送給ローラ41と、第2押圧ローラ42と、第2ワンウェイクラッチ49と、第1ワイヤガイド61と、第3ワイヤガイド63と、駆動部7と、を含む。
【0058】
第2送給ローラ41と、第2押圧ローラ42と、第2ワンウェイクラッチ49と、駆動部7と、を除き、本実施形態における、支持部材20と、第1送給ローラ21と、第1押圧ローラ22と、ワイヤリール28と、第1ワンウェイクラッチ29と、第1ワイヤガイド61と、第3ワイヤガイド63とについては、第1実施形態で述べた説明を適用できるから、本実施形態では説明を省略する。
【0059】
なお、本実施形態では、第1送給ローラ21、第1押圧ローラ22は、それぞれ、プッシュ側送給ローラ、プッシュ側押圧ローラである。第1送給ローラ21および第1押圧ローラ22は、ワイヤプッシュ装置B1における構成である。
【0060】
第2送給ローラ41および第2押圧ローラ42は、第1送給ローラ21および第1押圧ローラ22に対して、送給方向前方F1側に配置されている。本実施形態では、第2送給ローラ41、および第2押圧ローラ42は、それぞれ、プル側送給ローラ、プル側押圧ローラである。すなわち、第2送給ローラ41および第2押圧ローラ42は、ワイヤプル装置B2における構成である。
【0061】
第2押圧ローラ42は、回転軸線42Aを中心に回転可能である。第2押圧ローラ42は、第2送給ローラ41との間にワイヤ891を挟んだ状態で、第2送給ローラ41を押圧する。第2押圧ローラ42はローラ周面42aを有する。ローラ周面42aは、回転軸線42Aの径方向側を向いている。
【0062】
第2送給ローラ41は、回転軸線41Aを中心に回転可能に、支持部材20に支持されている。第2送給ローラ41はローラ周面41aを有する。ローラ周面41aは、回転軸線41Aの径方向側を向いている。第2送給ローラ41には、ガイド溝41bが形成されている(本実施形態では図示略。
図4のガイド溝21bや
図5のガイド溝31bと同様)。ガイド溝41bは、ローラ周面41aから凹んでいる。ガイド溝41bはワイヤ891をガイドするために形成されている。
【0063】
第2送給ローラ41と第2押圧ローラ42とは、互いに協働して、ワイヤ891を所望の方向に送る。具体的には、第2送給ローラ41と第2押圧ローラ42との間にワイヤ891を挟んだ状態で、第2送給ローラ41と第2押圧ローラ42とが回転することにより、ワイヤ891を送給方向前方F1に送る。第2送給ローラ41が第3回転方向X31(
図10では時計回り)に回転し、第2押圧ローラ42が第2送給ローラ41とは逆方向に回転することにより、ワイヤ891が送給方向前方F1に送られる。すなわち、第3回転方向X31は、ワイヤ891を送給方向前方F1へ送給するための第2送給ローラ41の回転方向である。第4回転方向X41は、第3回転方向X31とは反対の方向である。
【0064】
駆動部7は、第1送給ローラ21および第2送給ローラ41を回転させるためのものである。本実施形態では、駆動部7は、プッシュ側モータ71およびプル側モータ72を含む。
【0065】
プッシュ側モータ71は、第1送給ローラ21(プッシュ側送給ローラ)を、駆動させる。プッシュ側モータ71は、ワイヤプッシュ装置B1における構成である。
図8に模式的に示すように、駆動部7(プッシュ側モータ71)は、第1ワンウェイクラッチ29を介して、回転駆動力を第1送給ローラ21に伝達する。
【0066】
プル側モータ72は、第2送給ローラ41(プル側送給ローラ)を、駆動させる。プル側モータ72は、ワイヤプル装置B2における構成である。
図8に模式的に示すように、駆動部7(プル側モータ72)は、第2ワンウェイクラッチ49を介して、回転駆動力を第2送給ローラ41に伝達する。
【0067】
本実施形態では、第1送給ローラ21および第2送給ローラ41はいずれも、回転速度が制御されている。
【0068】
第2ワンウェイクラッチ49は、第3回転方向X31に第2送給ローラ41を回転するための回転駆動力を、第2送給ローラ41に伝達させる。一方、第2ワンウェイクラッチ49は、第4回転方向X41に第2送給ローラ41を回転するための回転駆動力を、第2送給ローラ41に伝達しない。本実施形態では、第2ワンウェイクラッチ49は、第2送給ローラ41に直接連結されている。
【0069】
なお、第1実施形態の第1変形例で述べたのと同様に、第2ワンウェイクラッチ49は第2送給ローラ41に直接連結されている必要は、必ずしもない。
【0070】
本実施形態においては、コンジットケーブル48よりも送給方向前方F1側に、第2送給ローラ41が配置されている。
【0071】
次に、本実施形態の作用効果について説明する。
【0072】
本実施形態においては、駆動部7は、第1ワンウェイクラッチ29を介して、回転駆動力を第1送給ローラ21に伝達する。第1ワンウェイクラッチ29は、第1回転方向X1に第1送給ローラ21を回転するための回転駆動力を、第1送給ローラ21に伝達させ、且つ、第2回転方向X2に第1送給ローラ21を回転するための回転駆動力を、第1送給ローラ21に伝達しない。このような構成によると、ワイヤ891から第1送給ローラ21が送給方向前方F1に向かう力を受けている場合、ワイヤ891からの送給方向前方F1に向かう力によって、第1送給ローラ21は、第1回転方向X1に更に回転可能である。その結果、第1送給ローラ21が、ワイヤ891からの送給方向前方F1に向かう力を、極めて小さくすることが可能となる。そうすると、第1送給ローラ21から受ける摩擦力をより多く、ワイヤ891の送給に用いることができる。これにより、供給機構12によって、ワイヤ891を安定して送給できる。
【0073】
同様に、駆動部7は、第2ワンウェイクラッチ49を介して、回転駆動力を第2送給ローラ41に伝達する。第2ワンウェイクラッチ49は、第3回転方向X31に第2送給ローラ41を回転するための回転駆動力を、第2送給ローラ41に伝達させ、且つ、第4回転方向X41に第2送給ローラ41を回転するための回転駆動力を、第2送給ローラ41に伝達しない。このような構成によると、ワイヤ891から第2送給ローラ41が送給方向前方F1に向かう力を受けている場合、ワイヤ891からの送給方向前方F1に向かう力によって、第2送給ローラ41は、第3回転方向X31に更に回転可能である。その結果、第2送給ローラ41が、ワイヤ891からの送給方向前方F1に向かう力を、極めて小さくすることが可能となる。そうすると、第2送給ローラ41から受ける摩擦力をより多く、ワイヤ891の送給に用いることができる。これにより、供給機構12によって、ワイヤ891を安定して送給できる。
【0074】
第1送給ローラ21や第2送給ローラ41に対する、ワイヤ891からの送給方向前方F1に向かう力を極めて小さくすることが、ワイヤ891の安定送給に資する理由は、本実施形態では次のように説明できる。
【0075】
供給機構12においては、現実には、第1送給ローラ21によるワイヤ891の送給速度と、第2送給ローラ41によるワイヤ891の送給速度とは、わずかに異なりうる。この原因としては、(i)第1送給ローラ21や第2送給ローラ41の機械加工精度の相違や、(ii)第1押圧ローラ22の押圧や第2押圧ローラ42の押圧によるワイヤ891の変形に起因するワイヤ891のガイド溝21b,41bへのはまり込みや、(iii)第1送給ローラ21とワイヤ891との間や第2送給ローラ41とワイヤ891との間にて発生するスリップや、(iv)コンジットケーブル48の屈曲やコンジットケーブル48内への異物混入に起因するワイヤ891の送給負荷の変動や、(v)制御系における出力誤差や、(vi)時間的応答速度の相違、等が考えられる。第1送給ローラ21によるワイヤ891の送給速度と、第2送給ローラ41によるワイヤ891の送給速度とが異なると、一対のローラ(第1送給ローラ21および第1押圧ローラ22)と、一対のローラ(第2送給ローラ41および第2押圧ローラ42)と、の間のワイヤ891が、たるんだり、あるいは、過度に緊張するおそれがある。
【0076】
本実施形態においては、一対のローラ(第1送給ローラ21および第1押圧ローラ22)と、一対のローラ(第2送給ローラ41および第2押圧ローラ42)と、の間のワイヤ891が、過度に緊張した場合には、第1送給ローラ21が、ワイヤ891から送給方向前方F1に向かう力を受けることとなる。しかしながら、本実施形態では上述のように、供給機構12は第1ワンウェイクラッチ29を含むので、第1送給ローラ21は、第1回転方向X1に更に回転し、ワイヤ891からの送給方向前方F1に向かう力が、極めて小さくなる。このことは、ワイヤ891の過度の緊張がほぼ解消されたことを意味する。
【0077】
一方、一対のローラ(第1送給ローラ21および第1押圧ローラ22)と、一対のローラ(第2送給ローラ41および第2押圧ローラ42)と、の間のワイヤ891にたるみが生じた場合には、第2送給ローラ41が、ワイヤ891から送給方向前方F1に向かう力を受けることとなる。しかしながら、本実施形態では上述のように、供給機構12は第2ワンウェイクラッチ49を含むので、第2送給ローラ41は、第3回転方向X31に更に回転し、ワイヤ891からの送給方向前方F1に向かう力が、極めて小さくなる。このことは、ワイヤ891のたるみがほぼ解消されたことを意味する。
【0078】
以上のように、本実施形態では、一対のローラ(第1送給ローラ21および第1押圧ローラ22)と、一対のローラ(第2送給ローラ41および第2押圧ローラ42)と、の間のワイヤ891が、たるんだり、あるいは、過度に緊張することを、ほぼ回避することができる。その結果、第1送給ローラ21や第2送給ローラ41から受ける摩擦力をより多く、ワイヤ891の送給に用いることができ、また、第1送給ローラ21や第2送給ローラ41の回転が停止してしまう不具合を回避できる。よって、非常に安定してワイヤ891を送給することが可能となる。
【0079】
そして、本実施形態によると、低コストで安定したワイヤ891の送給を実現でき、ワイヤ891の安定送給の実現により、高品位なアーク処理(溶接や溶射)が可能となる。
【0080】
また、本実施形態では、第1送給ローラ21および第2送給ローラ41はいずれも、回転速度が制御されているので、トルクカップリング等を必要としない。よって、本実施形態の構成では、複雑な電気制御を行う必要がなく、低コスト化を図ることが可能となる。
【0081】
<第2実施形態の第1変形例>
図11を用いて、本発明の第2実施形態の第1変形例について説明する。
【0082】
本変形例では、駆動部7がモータ74を含む。そして、第1送給ローラ21(プッシュ側送給ローラ)および第2送給ローラ41(プル側送給ローラ)はいずれも、モータ74によって駆動させられる。第1送給ローラ21(プッシュ側送給ローラ)および第2送給ローラ41(プル側送給ローラ)のいずれか一方には、ユニバーサルジョイント8を介して、モータ74の回転駆動力が伝達するとよい。たとえば、本実施形態では、モータ74は、ワイヤプッシュ装置B1における構成であり、モータ74から第2送給ローラ41への回転駆動力の伝達に、ユニバーサルジョイント8が用いられる。
【0083】
このような構成によっても、第2実施形態で述べた作用効果と同様の作用効果を奏することができる。
【0084】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではない。本発明の各部の具体的な構成は、種々に設計変更自在である。
【0085】
第1実施形態および第2実施形態においては、第1ワンウェイクラッチおよび第2ワンウェイクラッチのいずれもが設けられている例を示したが、第1ワンウェイクラッチのみが設けられる構成を採用してもよい。
【0086】
第1実施形態と第2実施形態の構成を組み合わせて用いてもよく、この場合は、たとえば3対のローラを用いるとよい。
【0087】
第1実施形態や第2実施形態では、ローラの数が4個である例を示したが、本発明におけるローラの数は、これらのものに限定されない。たとえば、ワイヤプッシュ装置B1におけるローラが6個以上であってもよいし、また、ワイヤプル装置B2におけるローラが4個や6個以上であってもよい。
【0088】
第1実施形態や第2実施形態とは異なり、ワイヤプッシュ装置B1に一対以上のローラが設けられており、且つ、ワイヤプル装置B2に一対以上のローラが設けられていてもよい。そして、ワイヤプッシュ装置B1のみに、ワンウェイクラッチ(第1ワンウェイクラッチ)が1つだけ設けられていてもよい。あるいは、ワイヤプル装置B2のみに、ワンウェイクラッチ(第1ワンウェイクラッチ)が1つだけ設けられていてもよい。