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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-136856(P2015-136856A)
(43)【公開日】2015年7月30日
(54)【発明の名称】複合材の製造方法及び製造装置
(51)【国際特許分類】
   B29C 51/10 20060101AFI20150703BHJP
   B29C 51/12 20060101ALI20150703BHJP
   B29C 65/78 20060101ALI20150703BHJP
【FI】
   B29C51/10
   B29C51/12
   B29C65/78
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-9606(P2014-9606)
(22)【出願日】2014年1月22日
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000150774
【氏名又は名称】株式会社槌屋
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】宮川 洋一
(72)【発明者】
【氏名】菊池 大二郎
【テーマコード(参考)】
4F208
4F211
【Fターム(参考)】
4F208AD05
4F208AD18
4F208AD29
4F208AG03
4F208AH26
4F208AH42
4F208AJ05
4F208AK01
4F208AM03
4F208AM32
4F208MA03
4F208MB01
4F208MB11
4F208MC01
4F208MH06
4F208MJ14
4F208MJ15
4F208MJ21
4F208MK15
4F211TA13
4F211TC02
4F211TJ14
4F211TJ22
4F211TN01
4F211TN24
4F211TQ01
4F211TQ07
4F211TQ08
(57)【要約】
【課題】複合材を短時間で製造することができる複合材の製造方法を提供する。
【解決手段】本発明の一態様に係る複合材の製造方法は、チャンバーボックス2内に表皮材3を配置する工程と、チャンバーボックス2内を表皮材3が配置された第1の空間S1と芯材4が配置される第2の空間S2とに仕切り部6を閉じることによって仕切る工程と、表皮材3を加熱する工程と、表皮材3を加熱している間に、第2の空間S2に芯材4を配置する工程と、第1の空間S1及び第2の空間S2を減圧する工程と、仕切り部6を開いて第1の空間S1と第2の空間S2とを連通させ、芯材4と表皮材3とを相対的に近づけて、芯材4の被覆箇所を表皮材3で覆う工程と、チャンバーボックス2内を加圧し、芯材4の被覆箇所に表皮材3を沿わせて接合する工程と、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
チャンバーボックス内で加熱された表皮材で芯材を減圧条件下で覆い、前記チャンバーボックス内を加圧して、前記表皮材を前記芯材に接合することで複合材を製造する方法であって、
前記チャンバーボックス内に前記表皮材を配置する工程と、
前記チャンバーボックス内を前記表皮材が配置された第1の空間と前記芯材が配置される第2の空間とに仕切り部を閉じることによって仕切る工程と、
前記表皮材を加熱する工程と、
前記表皮材を加熱している間に、前記第2の空間に前記芯材を配置する工程と、
前記表皮材が配置された前記第1の空間及び前記芯材が配置された前記第2の空間を減圧する工程と、
前記第1の空間及び前記第2の空間を減圧する工程が終了すると、前記仕切り部を開いて前記第1の空間と前記第2の空間とを連通させ、前記芯材と前記表皮材とを相対的に近づけて、前記芯材の被覆箇所を前記表皮材で覆う工程と、
前記芯材の被覆箇所を前記表皮材で覆う工程が終了すると、前記チャンバーボックス内を加圧し、前記芯材の被覆箇所に前記表皮材を沿わせて接合する工程と、
を備える複合材の製造方法。
【請求項2】
前記表皮材を加熱している間に前記第1の空間の減圧を開始する請求項1に記載の複合材の製造方法。
【請求項3】
前記第2の空間を減圧する前に、前記芯材を加熱する工程を備える請求項1又は2に記載の複合材の製造方法。
【請求項4】
チャンバーボックス内で加熱された表皮材で芯材を減圧条件下で覆い、前記チャンバーボックス内を加圧して、前記表皮材を前記芯材に接合することで複合材を製造する装置であって、
前記表皮材が収容され、圧力調整が可能な第1の空間と、前記芯材が収容され、圧力調整が可能な第2の空間と、に前記チャンバーボックス内を仕切ることができるように、前記第1の空間と前記第2の空間との第1の連通路を開閉する仕切り部を備える複合材の製造装置。
【請求項5】
前記第1の空間における前記表皮材を挟んで一方の側に配置された第1の加熱手段と、
前記仕切り部に設けられ、前記仕切り部が前記第1の連通路を閉じた状態で、前記第1の空間における前記表皮材の他方の側に配置される第2の加熱手段と、を備え、
前記表皮材を挟んで両側から前記第1の加熱手段と前記第2の加熱手段とで前記表皮材を加熱する請求項4に記載の複合材の製造装置。
【請求項6】
前記第1の空間に配置され、前記表皮材の周縁部を固定する固定手段を備え、
前記固定手段は、前記第1の空間における前記表皮材を挟んで一方の空間と前記第1の空間における他方の空間とを連通する第2の連通路を有する請求項4又は5に記載の複合材の製造装置。
【請求項7】
前記芯材を加熱する第3の加熱手段を備える請求項4乃至6のいずれか1項に記載の複合材の製造装置。
【請求項8】
前記第3の加熱手段は、前記第2の空間に温風を送り込むと共に、前記第2の空間の気体を吸い出す請求項7に記載の複合材の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合材の製造方法及び製造装置に関し、特に、表皮材を芯材に接合して複合材を製造する方法及び製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
合成樹脂製などの芯材にプラスチックシートなどの表皮材が接合された複合材が自動車や電化製品などに用いられている。このような複合材は、例えば特許文献1の製造装置を用いて製造することができる。
【0003】
特許文献1の製造装置は、内部に芯材と表皮材とが配置され、当該内部の圧力調整が可能なチャンバーボックスと、チャンバーボックスにおける芯材及び表皮材の搬入部を開閉する上蓋と、表皮材を加熱する加熱手段と、表皮材を下降させる駆動手段と、を備えている。
【0004】
このような製造装置を用いて、複合材は図8の上段に示す流れで製造される。先ず、上蓋を開いてチャンバーボックスの搬入部から芯材を当該チャンバーボックスの内部に配置する。次に、チャンバーボックスの搬入部近傍に表皮材を配置して上蓋を閉じ、表皮材を加熱手段で加熱しつつ、チャンバーボックス内を真空状態にする。
【0005】
そして、駆動手段によって表皮材を下降させて当該表皮材で芯材の被覆箇所を覆う。次に、チャンバーボックス内を大気圧に戻し、表皮材を芯材の被覆箇所に沿わせて接合し、表皮材を芯材に接合した複合材を取り出す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−262501号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述のような複合材を製造する場合、芯材の配置工程と表皮材の加熱工程とに時間がかかる。しかし、特許文献1の製造装置は、チャンバーボックスの一つの空間内で芯材の配置工程と表皮材の加熱工程とを行っているため、複合材を製造する際に最も時間がかかる芯材の配置工程と表皮材の加熱工程とを時間的に重複させて行うことができない。そのため、複合材を製造するために時間がかかる。
【0008】
本発明は、上記を鑑みなされたものであって、複合材を短時間で製造する方法及び製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様に係る複合材の製造方法は、チャンバーボックス内で加熱された表皮材で芯材を減圧条件下で覆い、前記チャンバーボックス内を加圧して、前記表皮材を前記芯材に接合することで複合材を製造する方法であって、
前記チャンバーボックス内に前記表皮材を配置する工程と、
前記チャンバーボックス内を前記表皮材が配置された第1の空間と前記芯材が配置される第2の空間とに仕切り部を閉じることによって仕切る工程と、
前記表皮材を加熱する工程と、
前記表皮材を加熱している間に、前記第2の空間に前記芯材を配置する工程と、
前記表皮材が配置された前記第1の空間及び前記芯材が配置された前記第2の空間を減圧する工程と、
前記第1の空間及び前記第2の空間を減圧する工程が終了すると、前記仕切り部を開いて前記第1の空間と前記第2の空間とを連通させ、前記芯材と前記表皮材とを相対的に近づけて、前記芯材の被覆箇所を前記表皮材で覆う工程と、
前記芯材の被覆箇所を前記表皮材で覆う工程が終了すると、前記チャンバーボックス内を加圧し、前記芯材の被覆箇所に前記表皮材を沿わせて接合する工程と、
を備える。
これにより、第1の空間と第2の空間とを仕切ることで、第1の空間で表皮材を加熱しつつ、第2の空間に芯材を配置することができ、従来、時間的に重複させて行うことができなかった、表皮材の加熱工程と芯材の配置工程とを時間的に重複させて行うことができる。そのため、複合材を短時間で製造することができる。
【0010】
上記複合材の製造方法において、前記表皮材を加熱している間に前記第1の空間の減圧を開始することが好ましい。
これにより、第2の空間を減圧するのと同時に、第1の空間を減圧する場合に比べて、第1の空間を減圧するための時間を稼ぐことができる。そのため、第1の空間の圧力調整手段を小型化することができ、当該圧力調整手段を安価に構成することができる。
【0011】
上記複合材の製造方法において、前記第2の空間を減圧する前に、前記芯材を加熱する工程を備えることが好ましい。
これにより、芯材を加熱することができ、表皮材と芯材との密着性をより向上させることができる。
【0012】
本発明の一態様に係る複合材の製造装置は、チャンバーボックス内で加熱された表皮材で芯材を減圧条件下で覆い、前記チャンバーボックス内を加圧して、前記表皮材を前記芯材に接合することで複合材を製造する装置であって、
前記表皮材が収容され、圧力調整が可能な第1の空間と、前記芯材が収容され、圧力調整が可能な第2の空間と、に前記チャンバーボックス内を仕切ることができるように、前記第1の空間と前記第2の空間との第1の連通路を開閉する仕切り部を備える。
これにより、第1の空間と第2の空間とを仕切ることで、第1の空間で表皮材を加熱しつつ、第2の空間に芯材を配置することができ、従来、時間的に重複させて行うことができなかった、表皮材の加熱工程と芯材の配置工程とを時間的に重複させて行うことができる。そのため、複合材を短時間で製造することができる。
【0013】
上記複合材の製造装置において、前記第1の空間における前記表皮材を挟んで一方の側に配置された第1の加熱手段と、
前記仕切り部に設けられ、前記仕切り部が前記第1の連通路を閉じた状態で、前記第1の空間における前記表皮材の他方の側に配置される第2の加熱手段と、を備え、
前記表皮材を挟んで両側から前記第1の加熱手段と前記第2の加熱手段とで前記表皮材を加熱することが好ましい。
これにより、第1の加熱手段と第2の加熱手段とで表皮材を挟むように加熱することができ、表皮材を短時間で加熱することができる。
【0014】
上記複合材の製造装置において、前記第1の空間に配置され、前記表皮材の周縁部を固定する固定手段を備え、
前記固定手段は、前記第1の空間における前記表皮材を挟んで一方の空間と前記第1の空間における他方の空間とを連通する第2の連通路を有することが好ましい。
これにより、表皮材を挟んで一方の空間で圧力調整を行うと、他方の空間も追従して圧力が調整されることになる。そのため、少ない圧力調整手段で第1の空間の圧力を調整することができる。
【0015】
上記複合材の製造装置において、前記芯材を加熱する第3の加熱手段を備えることが好ましい。
これにより、芯材を加熱することができ、表皮材と芯材との密着性をより向上させることができる。
【0016】
上記複合材の製造方法において、前記第3の加熱手段は、前記第2の空間に温風を送り込むと共に、前記第2の空間の気体を吸い出すことが好ましい。
これにより、第2の空間に滞留する埃などを気体と共に搬出することができる。これにより、表皮材と芯材との間に埃などが侵入し難く、精度の高い複合材を製造することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、複合材を短時間で製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】実施の形態1に係る複合材の製造方法の工程を示す模式図である。
図2】実施の形態1に係る複合材の製造方法の工程を示す模式図である。
図3】実施の形態1に係る複合材の製造方法の工程を示す模式図である。
図4】実施の形態1に係る複合材の製造方法の工程を示す模式図である。
図5】実施の形態1に係る複合材の製造方法の工程を示す模式図である。
図6】実施の形態1に係る複合材の製造方法の工程を示す模式図である。
図7】固定手段によって表皮材を固定する際の様子を概略的に示す斜視図である。
図8】上段は従来の複合材の製造方法の流れを示す図であり、下段は実施の形態1の複合材の製造方法の流れを示す図である。
図9】実施の形態2の複合材の製造装置を用いて複合材を製造する一工程を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を適用した具体的な実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。ただし、本発明が以下の実施の形態に限定される訳ではない。また、説明を明確にするため、以下の記載及び図面は、適宜、簡略化されている。
【0020】
<実施の形態1>
以下、本実施の形態に係る複合材の製造装置及び製造方法について説明する。先ず、本実施の形態の複合材の製造装置(以下、単に製造装置と省略する場合がある。)を概略的に説明する。当該製造装置は、自動車や電化製品などに用いられる、合成樹脂製などの芯材にプラスチックシートなどの表皮材が接合された複合材を製造する際に用いることができる。
【0021】
ここで、図1乃至図6は、本実施の形態に係る複合材の製造方法(以下、単に製造方法と省略する場合がある。)の各工程を示す模式図であり、これらの図面を引用しつつ製造装置1を説明する。
【0022】
図1乃至図6に示すように、製造装置1は、加熱された表皮材3と芯材4とをチャンバーボックス2内の減圧条件下で相対的に近づけて表皮材3で芯材4を覆い、その後、チャンバーボックス2内を加圧して、表皮材3を芯材4に接合することで複合材5を製造する。
【0023】
ここで、本実施の形態の製造装置1は、表皮材3が収容され、且つ圧力調整が可能な第1の空間S1と、芯材4が収容され、且つ圧力調整が可能な第2の空間S2と、にチャンバーボックス2内を仕切ることができるように、第1の空間S1と第2の空間S2との連通路を開閉する仕切り部6を備える。
【0024】
これにより、詳細は後述するが、第1の空間S1と第2の空間S2とを仕切ることで、第1の空間S1で表皮材3を加熱しつつ、第2の空間S2に芯材4を配置することができ、従来、時間的に重複させて行うことができなかった、表皮材3の加熱工程と芯材4の配置工程とを時間的に重複させて行うことができる。そのため、複合材5を短時間で製造することができる。
【0025】
次に、製造装置1を詳細に説明する。製造装置1は、チャンバーボックス2、仕切り部6、固定手段7、第1の加熱手段8、冶具9及び駆動手段10を備えている。
【0026】
チャンバーボックス2は、上述のように、表皮材3が収容される第1の空間S1と、芯材4が収容される第2の空間S2と、を備えている。本実施の形態のチャンバーボックス2は、図3などに示すように、仕切り部6を挟んで上側に第1の空間S1が配置され、下側に第2の空間S2が配置される。ここで、本実施の形態のチャンバーボックス2は、第1の空間S1と第2の空間S2との連通路近傍に、仕切り部6を収容する第3の空間S3を備えている。
【0027】
チャンバーボックス2は、上部に第1の蓋部2aを備えており、図1に示すように、第1の蓋部2aを開くと第1の空間S1の上部が開放され、この開放した部分が表皮材3の搬入部及び複合材5の搬出部となる。また、チャンバーボックス2は、下部に開閉可能な第2の蓋部2bを備えており、図2に示すように、第2の蓋部2bを開くと第2の空間S2の側部が開放され、この開放した部分が芯材4の搬入部となる。ちなみに、本実施の形態の第1の蓋部2a及び第2の蓋部2bは、ヒンジによって開閉可能な構成とされているが、スライド式などであってもよい。
【0028】
第1の空間S1は、チャンバーボックス2が仕切り部6で仕切られ、且つ第1の蓋部2aが閉じられた状態で、略密閉空間になる。そして、第1の空間S1の圧力調整ができるように、第1の空間S1はチャンバーボックス2に形成された第1の吸排気口2cを介してバルブやポンプなどを有する第1の圧力調整手段(図示を省略)に接続されている。
【0029】
第2の空間S2は、チャンバーボックス2が仕切り部6で仕切られ、且つ第2の蓋部2bが閉じられた状態で、略密閉空間になる。そして、第2の空間S2の圧力調整ができるように、第2の空間S2はチャンバーボックス2に形成された第2の吸排気口2dを介してバルブやポンプなどを有する第2の圧力調整手段(図示を省略)に接続されている。これにより、第1の空間S1及び第2の空間S2を個別に略真空状態及び大気圧状態に変化させる。
【0030】
仕切り部6は、第1の空間S1と第2の空間S2との連通路を開閉する。本実施の形態の仕切り部6は、図示を省略した駆動手段によって水平方向にスライド可能な板状部材であって、図3及び図4などに示すように、一方向にスライドすると第1の空間S1と第2の空間S2との連通路を閉じ、他方向にスライドするとチャンバーボックス2の第3の空間S3に収容される。
【0031】
仕切り部6は、第1の空間S1又は第2の空間S2を圧力調整した際に変形し難い材料で形成されていることが好ましく、例えば金属製である。また、仕切り部6を一方向にスライドさせた際に、スライド方向側の端部とチャンバーボックス2との間に隙間が生じないように、チャンバーボックス2の内側面にパッキン11が設けられていることが好ましい。パッキン11は、仕切り部6の端部が接触した際に良好に変形して当該仕切り部6の端部に密着する材料であることが好ましく、例えばゴムなどの合成樹脂製である。
【0032】
固定手段7は、表皮材3の周縁部を固定する。ここで、図7は、固定手段7によって表皮材3を固定する際の様子を概略的に示す斜視図である。図7に示すように、固定手段7は、枠材7a及び押え部材7bなどを備えている。
【0033】
枠材7aは、上下方向から見て表皮材3における芯材4に接合される箇所が露出するように、開口部7cを備えており、当該枠材7aの上面に表皮材3が載置される。この枠材7aは、第1の空間S1において内側面から突出する支持部2eに支持され、仕切り部6がチャンバーボックス2内を第1の空間S1と第2の空間S2とに仕切った状態で当該仕切り部6の上方に配置される。ちなみに、表皮材3は、上述のようにプラスチックシートなどからなり、芯材4に接合される側の面に接着剤が塗布されている。
【0034】
押え部材7bは、上下方向から見て表皮材3における芯材4に接合される箇所が露出するように、開口部7dを備えており、枠材7a上に載置された表皮材3の周縁部を当該枠材7aと共に挟み込む。このとき、枠材7aの開口部7cと押え部材7bの開口部7dとは、上下方向から見て略等しい位置に配置される。この押え部材7bは、枠材7aと共に表皮材3の周縁部を挟み込んだ状態で、図示を省略したクランプ手段によって枠材7aに固定される。
【0035】
ここで、表皮材3を固定した固定手段7が第1の空間S1の支持部2dに支持された状態では、表皮材3などによって第1の空間S1が上下の空間に仕切られることになる。そのため、第1の空間S1の圧力を均一に調整するためには、上下の空間をそれぞれ圧力調整するための圧力調整手段が必要である。
【0036】
そこで、図7に示すように、表皮材3などによって仕切られた上下の空間を連通させる連通路7eを枠材7aが備えていることが好ましい。これにより、上下いずれか一方の空間で圧力調整を行うと、他方の空間も追従して圧力が調整されることになる。そのため、少ない圧力調整手段で第1の空間S1の圧力を調整することができる。
【0037】
第1の加熱手段8は、第1の空間S1に配置されており、表皮材3を加熱する。本実施の形態の第1の加熱手段8は、図2などに示すように、表皮材3の上面と向かい合うように、チャンバーボックス2の第1の蓋部2aの内側上面に設けられている。
【0038】
ここで、複合材を製造する場合、上述のように表皮材3の加熱工程に時間がかかるので、表皮材3を効率的に加熱することが好ましい。そこで、仕切り部6の上面に第2の加熱手段13を備えていることが好ましい。これにより、仕切り部6でチャンバーボックス2内を第1の空間S1と第2の空間S2とに仕切った際に、第2の加熱手段13が表皮材3の下方に配置されることになる。そのため、第1の加熱手段8と第2の加熱手段13とで表皮材3を上下から挟むように加熱することができ、表皮材3を短時間で加熱することができる。
【0039】
冶具9は、芯材4を支持する。本実施の形態の冶具9は、図示を省略した搬送手段によって、外部からチャンバーボックス2における芯材4の搬入部を介して駆動手段10まで搬入されたり、駆動手段10からチャンバーボックス2における芯材4の搬入部を介して外部まで搬出されたり、する。ちなみに、冶具9は、芯材4の形状に応じて適宜変更される。
【0040】
駆動手段10は、表皮材3と芯材4とを相対的に移動させる。本実施の形態の駆動手段10は、ステージ10a及び当該ステージ10aに連結されたアクチュエータ10bを備えており、表皮材3の直下位置に配置される。そして、アクチュエータ10bは、上下方向に駆動する。そのため、ステージ10a上に載置された冶具9を芯材4と共に、アクチュエータ10bの駆動によって上昇させ、表皮材3に近づけることができる。
【0041】
上述の製造装置を用いて、以下のように複合材が製造される。ここで、図8の下段は本実施の形態の製造方法の流れを示す図である。先ず、表皮材3における芯材4に接合される部分が開口部7cから露出するように、枠材7aの上面に表皮材3を載置して上方から押え部材7bで当該表皮材3を押え、押え部材7bをクランプ手段で枠材7aに固定して、枠材7aと押え部材7bとで表皮材3を固定する。
【0042】
次に、図1に示すように、チャンバーボックス2の第1の蓋部2aを開けて、枠材7aと押え部材7bとで固定された表皮材3を第1の空間S1内に搬入する。そして、枠材7aをチャンバーボックス2の支持部2dで支持し、チャンバーボックス2の第1の蓋部2aを閉じる。それと共に、チャンバーボックス2における第2の蓋部2bを開けておく。
【0043】
次に、図2に示すように、仕切り部6によってチャンバーボックス2内を第1の空間S1と第2の空間S2とに仕切る。そして、第1の加熱手段8と第2の加熱手段13とで表皮材3を上下から加熱すると共に、第1の圧力調整手段のポンプを操作して第1の空間S1から気体を排気し、第1の空間S1を減圧する。それと共に、搬送手段によって、芯材4を支持した冶具9を駆動手段10のステージ10a上に載置し、芯材4を表皮材3の直下位置に配置する。
【0044】
次に、図3に示すように、表皮材3の加熱工程と第1の空間S1の減圧工程とを継続しつつ、チャンバーボックス2の第2の蓋部2bを閉じて、第2の圧力調整手段のポンプを操作して第2の空間S2から気体を排気し、第2の空間S2を減圧する。そして、図4に示すように、第1の空間S1及び第2の空間S2共に略真空状態となると、第1及び第2の圧力調整手段のバルブを閉じ、その後、仕切り部6をスライドさせてチャンバーボックス2の第3の空間S3に収容し、第1の空間S1と第2の空間S2とを連通させる。これにより、チャンバーボックス2内の全域を略真空状態にする。
【0045】
次に、図5に示すように、アクチュエータ10bによってステージ10aを上昇させて枠材7aの開口部7cから芯材4の被覆箇所に表皮材3を押し当て、当該表皮材3で芯材4の被覆箇所を覆う。このとき、表皮材3で芯材4の被覆箇所を略真空条件下で覆うので、表皮材3と芯材4との間に気泡が侵入することがない。
【0046】
そして、第1及び第2の圧力調整手段のバルブを開いてチャンバーボックス2内に外気を吸気し、チャンバーボックス2内を大気圧に戻して表皮材3を芯材4の被覆箇所に沿わせて接合する。チャンバーボックス2内を略真空状態から大気圧状態に加圧するので、加熱された表皮材3を芯材4の被覆箇所に良好に沿わせて接合することができる。
【0047】
最後に、図6に示すように、チャンバーボックス2の第1の蓋部2aを開けて、固定手段7による表皮材3の固定を解除し、芯材4の被覆箇所に表皮材3が接合された複合材5を取り出すと、複合材5の製造が完了する。
【0048】
本実施の形態の製造装置及び製造方法は、図8の下段に示すように、表皮材3の加熱工程と芯材4の配置工程とを時間的に重複させて行うことができる。そのため、従来の複合材の製造方法の流れを示した図8の上段と、本実施の形態の複合材の製造方法の流れを示した図8の下段と、を比較して明らかなように、複合材を短時間で製造することができる。特に、複合材を製造する場合に、時間がかかる表皮材3の加熱工程と芯材4の配置工程とを時間的に重複させることができるので、複合材の製造時間の短縮により寄与することができる。
【0049】
しかも、本実施の形態では、表皮材3を加熱しつつ第1の空間S1を減圧している。つまり、第2の空間S2を減圧するのと同時に、第1の空間S1を減圧する場合に比べて、第1の空間S1を略真空状態にするための時間を稼ぐことができる。そのため、第1の圧力調整手段のポンプを小型化することができ、第1の圧力調整手段を安価に構成することができる。なお、第2の空間S2を減圧するのと同時に第1の空間S1を減圧してもよい。
【0050】
<実施の形態2>
本実施の形態の複合材の製造装置は、表皮材3と芯材4との密着性をより向上させることができる構成とされている。ここで、図9は、本実施の形態の製造装置20を用いて複合材を製造する一工程を示す模式図であり、例えば実施の形態1の図2に示す工程と図3に示す工程との間で行われる。なお、本実施の形態の製造装置20は、実施の形態1の製造装置1と略同様の構成とされているため、重複する説明は省略し、実施の形態1と等しい部材には等しい符号を用いて説明する。
【0051】
図9に示すように、製造装置20は、芯材4を加熱するための第3の加熱手段21を備えている。本実施の形態の第3の加熱手段21は、第2の空間S2に温風を送り込むと共に、第2の空間S2の気体を吸い出す構成とされている。例えば、第3の加熱手段21は、チャンバーボックス2の第2の蓋部2bに形成された吸気口2fから吹出し手段によって吹出された温風を第2の空間S2に送り込み、その後、第2の圧力調整手段を用いて第2の空間S2から吸い出す。
【0052】
これにより、芯材4を加熱することができ、表皮材3と芯材4との密着性をより向上させることができる。しかも、表皮材3を加熱している間に、芯材4も加熱することができるので、複合材の製造時間に影響を与えることが少ない。
【0053】
また、第2の空間S2に温風を送り込むと共に、第2の空間S2の気体を吸い出しているので、第2の空間S2に滞留する埃などを気体と共に搬出することができる。これにより、表皮材3と芯材4との間に埃などが侵入し難く、精度の高い複合材を製造することができる。
【0054】
さらに、従来の製造装置において、芯材を加熱しようとすると、芯材と表皮材との間の空間の圧力と、表皮材と上蓋との間の空間の圧力と、に差が生じて、表皮材が変形してしまう可能性があるが、本実施の形態の製造装置は、第1の空間S1と第2の空間S2とを仕切り部6で仕切った後に芯材4を加熱するので、表皮材3に影響を及ぼすことがない。
【0055】
但し、第3の加熱手段21は、上記の構成に限らず、例えば温風を吹出す構成でない加熱手段を第2の空間S2に配置してもよい。
【0056】
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。
例えば、上記実施の形態では、冶具9を上昇させて芯材4を表皮材3に押し当てているが、固定手段7を下降させて表皮材3を芯材4に押し当ててもよい。
例えば、上記実施の形態では、表皮材3における芯材4と接合される側の面に接着剤を塗布したが、芯材4における表皮材3と接合される側の面に接着剤を塗布してもよい。
【符号の説明】
【0057】
1 複合材の製造装置
2 チャンバーボックス
2a 第1の蓋部、2b 第2の蓋部、2c 第1の吸排気口、2d 第2の吸排気口、2e 支持部、2f 吸気口
3 表皮材
4 芯材
5 複合材
6 仕切り部
7 固定手段、7a 枠材、7b 部材、7c 開口部、7d 開口部、7e 連通路
8 第1の加熱手段
9 冶具
10 駆動手段、10a ステージ、10b アクチュエータ
11 パッキン
13 第2の加熱手段
20 製造装置
21 第3の加熱手段
S1 第1の空間
S2 第2の空間
S3 第3の空間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9