(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-136953(P2015-136953A)
(43)【公開日】2015年7月30日
(54)【発明の名称】二輪車両情報提供装置
(51)【国際特許分類】
B62J 99/00 20090101AFI20150703BHJP
【FI】
B62J99/00 B
B62J99/00 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-7987(P2014-7987)
(22)【出願日】2014年1月20日
(71)【出願人】
【識別番号】000101732
【氏名又は名称】アルパイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100097205
【弁理士】
【氏名又は名称】樋口 正樹
(72)【発明者】
【氏名】秡川 祐樹
(57)【要約】
【課題】カーブ道路を二輪車両が走行する際に、ヘルメットに設けられた透明部材に投影される提供画像の運転者の視界に与える悪影響を極力小さくすることのできる「二輪車両情報提供装置」を提供することである。
【解決手段】ヘルメットに設けられた透明部材に画像を投影する投影ユニット12と、二輪車両の運転者への提供情報を表す提供画像を前記投影ユニットに投影させる画像表示制御手段(S22)と、前記二輪車両の傾きを検出する傾き検出手段(21)と、前記傾き検出手段にて検出される前記二輪車両の傾きが所定の傾き条件を満たしているか否かを判定する傾き判定手段(S15)と、該傾き判定手段にて前記二輪車両の傾きが前記所定の傾き条件を満たしていると判定されたときに、前記投影ユニットによる前記提供画像の前記透明部材への投影を禁止する画像表示禁止制御手段(S18)とを有する構成となる。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘルメットに設けられた透明部材に画像を投影する投影ユニットと、
二輪車両の運転者への提供情報を表す提供画像を前記投影ユニットに投影させる画像表示制御手段と、
前記二輪車両の傾きを検出する傾き検出手段と、
前記傾き検出手段にて検出される前記二輪車両の傾きが所定の傾き条件を満たしているか否かを判定する傾き判定手段と、
該傾き判定手段にて前記二輪車両の傾きが前記所定の傾き条件を満たしていると判定されたときに、前記投影ユニットによる前記提供画像の前記透明部材への投影を禁止する画像表示禁止制御手段とを有する二輪車両情報提供装置。
【請求項2】
前記画像表示禁止制御手段は、該傾き判定手段にて前記二輪車両の傾きが前記所定の傾き条件を満たしていると判定された以後、前記傾き検出手段にて検出される前記二輪車両の傾きに係らず所定時間継続して、前記投影ユニットによる前記提供画像の投影を禁止する請求項1記載の二輪車両情報提供装置。
【請求項3】
ヘルメットに設けられた透明部材に画像を投影する投影ユニットと、
二輪車両の運転者への提供情報を表す提供画像を前記投影ユニットに前記透明部材に投影させる画像表示制御手段と、
前記二輪車両の傾きを検出する傾き検出手段と、
前記傾き検出手段にて検出される前記二輪車両の傾きが所定の傾き条件を満たしているか否かを判定する傾き判定手段と、
該傾き判定手段にて前記二輪車両の傾きが前記所定の傾き条件を満たしていると判定されたときに、前記画像表示制御手段の制御に基づいて前記投影ユニットにより前記透明部材に投影される前記提供画像を透過性のある画像に変える画像透過性制御手段とを有する二輪車両情報提供装置。
【請求項4】
前記画像透過性制御手段は、該傾き判定手段にて前記二輪車両の傾きが前記所定の傾き条件を満たしていると判定された以後、前記傾き検出手段にて検出される前記二輪車両の傾きに係らず所定時間継続して、前記投影ユニットにより投影される前記提供画像を透過性のある画像に維持させる請求項3記載の二輪車両情報提供装置。
【請求項5】
前記画像表示制御手段は、前記二輪車両のナビゲーションに係る案内情報を表す案内画像を前記提供画像として前記投影ユニットに投影させる請求項1乃至4のいずれかに記載の二輪車両情報提供装置。
【請求項6】
ヘルメットの透明部材に画像を投影する投影ユニットと、
前記ヘルメットの所定部位に設けられた音声出力ユニットと、
二輪車の運転者への提供情報を、音声として前記音声出力ユニットから出力させるとともに画像として前記投影ユニットに前記透明部材に投影させる情報提供制御手段と、
前記二輪車両の傾きを検出する傾き検出手段と、
前記傾き検出手段にて検出される前記二輪車両の傾きが所定の傾き条件を満たしているか否かを判定する傾き判定手段と、
該傾き判定手段にて前記二輪車両の傾きが前記所定の傾き条件を満たしていると判定されたときに、前記情報提供制御手段の制御に基づいた前記音声出力ユニットからの音声出力を維持させつつ前記投影ユニットによる前記画像の投影を禁止する画像表示禁止制御手段とを有する二輪車両情報提供装置。
【請求項7】
前記画像表示禁止制御手段は、該傾き判定手段にて前記二輪車両の傾きが前記所定の傾き条件を満たしていると判定された以後、前記傾き検出手段にて検出される前記二輪車両の傾きに係らず所定時間継続して、前記投影ユニットによる前記提供画像の投影を禁止する請求項6記載の二輪車両情報提供装置。
【請求項8】
ヘルメットの透明部材に画像を投影する投影ユニットと、
前記ヘルメットの所定部位に設けられた音声出力ユニットと、
二輪車の運転者への提供情報を、音声として前記音声出力ユニットから出力させるとともに画像として前記投影ユニットに前記透明部材に投影させる情報提供制御手段と、
前記二輪車両の傾きを検出する傾き検出手段と、
前記傾き検出手段にて検出される前記二輪車両の傾きが所定の傾き条件を満たしているか否かを判定する傾き判定手段と、
該傾き判定手段にて前記二輪車両の傾きが前記所定の傾き条件を満たしていると判定されたときに、前記情報提供手段による制御に基づいた前記音声出力ユニットからの音声出力を維持させつつ前記投影ユニットにより前記透明部材に投影される前記提供画像を透過性のある画像に変える画像透過性制御手段とを有する二輪車両情報提供装置。
【請求項9】
前記画像透過性制御手段は、該傾き判定手段にて前記二輪車両の傾きが前記所定の傾き条件を満たしていると判定された以後、前記傾き検出手段にて検出される前記二輪車両の傾きに係らず所定時間継続して、前記投影ユニットにより投影される前記提供画像を透過性のある画像に維持させる請求項8記載の二輪車両情報提供装置。
【請求項10】
前記情報提供制御手段は、前記二輪車両の運転者に提供すべき当該二輪車両のナビゲーションに係る案内情報を、音声として前記音声出力ユニットから出力させるとともに画像として前記投影ユニットに前記透明部材に投影させる請求項6乃至9のいずれかに記載の二輪車両情報提供装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オートバイ等の二輪車両の運転者にナビゲーション情報等の情報を画像として提供する二輪車両情報提供装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に記載されるヘッドアップディスプレイが提案されている。このヘッドアップディスプレイでは、四輪乗用車等の車両のフロントガラスの上方部に対向して配置されたコンバイナに、車両のナビゲーションに係る案内情報を表す案内画像(案内ルート、案内表示アイコン等)が投影される。運転者は、コンバイナで反射した前記案内画像を、フロントガラスを通して見える風景(建物、標識、対向車等)に重ねて見ることができる。
【0003】
このようなヘッドアップディスプレイ装置によれば、前方の風景をフロントガラスを通して見ながら運転する運転者は、視線を大きく移動することなく、車両のナビゲーションに係る案内画像を見ることができる。従って、運転者に対して、当該運転者の前方注意を妨げることなく、ナビゲーションに係る案内情報を提供することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013−79930号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述したようなヘッドアップディスプレイ装置を利用した情報提供装置をオートバイ等の二輪車に適用することが考えられる。この場合、例えば、ヘルメットの透明シールドの手前に設けられたコンバイナあるいは、透明シールド自体にナビゲーションに係る案内情報(提供情報)を表す案内情報(提供画像)が投影される。そして、そのヘルメットを装着した運転者は、コンバイナや透明シールド等の透明部材で反射された案内画像を、透明シールドを通して見える風景に重ねて見ることができる。
【0006】
案内画像の投影位置は、通常、透明シールドを通して見える対向車や標識を妨害しない位置に設定される。しかし、カーブ道路を走行する際に二輪車両とともに運転者が傾くので、二輪車両が走行する際にヘルメットに設けられた透明部材(コンバイナや透明シールド等)に投影される案内画像の位置が、ヘルメットの透明シールドを通して見える風景に対して大きく変動してしまう。このため、ある走行状態(直線走行状態)を想定して、案内画像の投影位置を当該案内画像が視界を邪魔しないように適正に決めたとしても、直進道路、右折道路、左折道路、カーブ道路等の種々の道路を二輪車が走行する際に、ヘルメットに設けられた前記透明部材に投影される案内画像が運転者の視界の邪魔になる可能性がある。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、カーブ道路を二輪車が走行する際に、ヘルメットに設けられた透明部材に投影される提供画像の運転者の視界に与える悪影響を極力小さくすることのできる二輪車両情報提供装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る第1の二輪車両情報提供装置は、ヘルメットに設けられた透明部材に画像を投影する投影ユニットと、二輪車両の運転者への提供情報を表す提供画像を前記投影ユニットに投影させる画像表示制御手段と、前記二輪車両の傾きを検出する傾き検出手段と、前記傾き検出手段にて検出される前記二輪車両の傾きが所定の傾き条件を満たしているか否かを判定する傾き判定手段と、該傾き判定手段にて前記二輪車両の傾きが前記所定の傾き条件を満たしていると判定されたときに、前記投影ユニットによる前記提供画像の前記透明部材への投影を禁止する画像表示禁止制御手段とを有する構成となる。
【0009】
このような構成により、ヘルメットを装着した二輪車両の運転者は、そのヘルメットに設けられた透明部材に投影された提供画像を前方の風景とともに見ることができる。そして、運転者とともに二輪車両が傾斜してカーブ道路を走行する際に、二輪車両の傾きが所定の傾き条件を満たすと、ヘルメットに設けられた透明部材への前記提供画像の投影が禁止される。
【0010】
本発明に係る前記第1の二輪車両情報提供装置において、前記画像表示禁止制御手段は、該傾き判定手段にて前記二輪車両の傾きが前記所定の傾き条件を満たしていると判定された以後、前記傾き検出手段にて検出される前記二輪車両の傾きに係らず所定時間継続して、前記投影成ユニットによる前記提供画像の投影を禁止する構成とすることができる。
【0011】
このような構成により、運転者とともに二輪車両が傾斜してカーブ道路を走行する際に、二輪車両の傾きが所定の傾き条件を満たすと、それ以後、二輪車両の傾きが前記傾き条件を満たさなくなったとしても、所定時間は継続して、ヘルメットに設けられた透明部材の前記提供画像の投影が禁止される。従って、ヘルメットに設けられた透明部材への前記提供画像の投影の禁止と前記提供画像の投影の復帰とが、前記所定時間に満たない時間で繰り返されることを防止することができる。
【0012】
本発明に係る第2の二輪車両情報提供装置は、ヘルメットに設けられた透明部材に画像を投影する投影ユニットと、二輪車両の運転者への提供情報を表す提供画像を前記投影ユニットに前記透明部材に投影させる画像表示制御手段と、前記二輪車両の傾きを検出する傾き検出手段と、前記傾き検出手段にて検出される前記二輪車両の傾きが所定の傾き条件を満たしているか否かを判定する傾き判定手段と、該傾き判定手段にて前記二輪車両の傾きが前記所定の傾き条件を満たしていると判定されたときに、前記画像表示制御手段の制御に基づいて前記投影ユニットにより前記透明部材に投影される前記提供画像を透過性のある画像に変える画像透過性制御手段とを有する構成となる。
【0013】
このような構成により、ヘルメットを装着した二輪車両の運転者は、そのヘルメットに設けられた透明部材に投影された提供画像を見ることができる。そして、運転者とともに二輪車両が傾斜してカーブ道路を走行する際に、二輪車両の傾きが所定の傾き条件を満たすと、ヘルメットに設けられた透明部材に投影される前記提供画像が透過性の画像に変えられる。この場合、カーブ道路を走行する二輪車両を運転する運転者は、透明部材に投影される透過性の画像となる提供画像を通して前方風景を視認することができる。
【0014】
本発明に係る前記第2の二輪車両情報提供装置において、前記画像透過性制御手段は、該傾き判定手段にて前記二輪車両の傾きが前記所定の傾き条件を満たしていると判定された以後、前記傾き検出手段にて検出される前記二輪車両の傾きに係らず所定時間継続して、前記投影ユニットにより投影される前記提供画像を透過性のある画像に維持させる構成とすることができる。
【0015】
このような構成により、運転者とともに二輪車両が傾斜してカーブ道路を走行する際に、二輪車両の傾きが所定の傾き条件を満たすと、それ以後、二輪車両の傾きが前記傾き条件を満たさなくなったとしても、所定時間は継続して、ヘルメットに設けられた透明部材に投影される前記提供画像は透過性のある画像に維持される。従って、ヘルメットに設けられた透明部材に投影される前記提供画像の、透過性のある画像への変更とそうでない画像への復帰とが所定時間に満たない時間間隔で繰り返されることが防止される。
【0016】
本発明に係る前記第1の二輪車両情報提供装置及び前記第2の二輪車両情報提供装置のいずれかにおいて、前記画像表示制御手段は、前記二輪車両のナビゲーションに係る案内情報を表す案内画像を前記提供画像として前記投影ユニットに投影させるよう構成することができる。
【0017】
このような構成により、ヘルメットを装着した二輪車両の運転者は、そのヘルメットに設けられた透明部材に投影された当該二輪車両のナビゲーションに係る案内画像を前方の風景とともに見ることができる。そして、運転者とともに二輪車両が傾斜してカーブ道路を走行する際に、二輪車両の傾きが所定の傾き条件を満たすと、ヘルメットに設けられた透明部材への前記提供画像の投影が禁止される、または、前記透明部材に投影される前記案内が透過性の画像に変えられる。
【0018】
本発明に係る第3の二輪車両情報提供装置は、ヘルメットの透明部材に画像を投影する投影ユニットと、前記ヘルメットの所定部位に設けられた音声出力ユニットと、二輪車の運転者への提供情報を、音声として前記音声出力ユニットから出力させるとともに画像として前記投影ユニットに前記透明部材に投影させる情報提供制御手段と、前記二輪車両の傾きを検出する傾き検出手段と、前記傾き検出手段にて検出される前記二輪車両の傾きが所定の傾き条件を満たしているか否かを判定する傾き判定手段と、該傾き判定手段にて前記二輪車両の傾きが前記所定の傾き条件を満たしていると判定されたときに、前記情報提供制御手段の制御に基づいた前記音声出力ユニットからの音声出力を維持させつつ前記投影ユニットによる前記画像の投影を禁止する画像表示禁止制御手段とを有する構成となる。
【0019】
このような構成により、ヘルメットを装着した二輪車両の運転者は、当該運転者に対する提供情報を、そのヘルメットに設けられた音声出力ユニットから出力される音声として認識できるとともに、当該ヘルメットに設けられた透明部材に投影された画像として前方の風景とともに見ることができる。そして、運転者とともに二輪車両が傾斜してカーブ道路を走行する際に、二輪車両の傾きが所定の傾き条件を満たすと、ヘルメットに設けられた透明部材への前記画像の投影が禁止され、前記提供情報は、音声出力ユニットからの音声としてだけ提供され得るようになる。
【0020】
本発明の前記第3の二輪車両情報提供装置において、前記画像表示禁止制御手段は、該傾き判定手段にて前記二輪車両の傾きが前記所定の傾き条件を満たしていると判定された以後、前記傾き検出手段にて検出される前記二輪車両の傾きに係らず所定時間継続して、前記投影ユニットによる前記提供画像の投影を禁止する構成とすることができる。
【0021】
本発明に係る第4の二輪車両情報提供装置は、ヘルメットの透明部材に画像を投影する投影ユニットと、前記ヘルメットの所定部位に設けられた音声出力ユニットと、二輪車の運転者への提供情報を、音声として前記音声出力ユニットから出力させるとともに画像として前記投影ユニットに前記透明部材に投影させる情報提供制御手段と、前記二輪車両の傾きを検出する傾き検出手段と、前記傾き検出手段にて検出される前記二輪車両の傾きが所定の傾き条件を満たしているか否かを判定する傾き判定手段と、該傾き判定手段にて前記二輪車両の傾きが前記所定の傾き条件を満たしていると判定されたときに、前記情報提供手段による制御に基づいた前記音声出力ユニットからの音声出力を維持させつつ前記投影ユニットにより前記透明部材に投影される前記提供画像を透過性のある画像に変える画透過性制御手段とを有する構成となる。
【0022】
このような構成により、ヘルメットを装着した二輪車両の運転者は、当該運転者に対する提供情報を、そのヘルメットに設けられた音声出力ユニットから出力される音声として認識できるとともに、当該ヘルメットに設けられた透明部材に投影された画像として前方の風景とともに見ることができる。そして、運転者とともに二輪車両が傾斜してカーブ道路を走行する際に、二輪車両の傾きが所定の傾き条件を満たすと、ヘルメットに設けられた透明部材に投影される前記画像が透過性のある画像に変えられ、運転者は、前記提供情報を、音声出力ユニットからの音声として聞くことができるとともに、前記透明部材に投影される透過性のある画像として前方の風景とともに見ることができる。
【0023】
本発明に係る前記第4の二輪車両情報提供装置において、前記画像透過性制御手段は、該傾き判定手段にて前記二輪車両の傾きが前記所定の傾き条件を満たしていると判定された以後、前記傾き検出手段にて検出される前記二輪車両の傾きに係らず所定時間継続して、前記投影ユニットにより投影される前記提供画像を透過性のある画像に維持させる構成とすることができる。
【0024】
また、本発明に係る前記第3の二輪車両情報提供装置及び前記第4の二輪車両情報提供装置のいずれかにおいて、前記情報提供制御手段は、前記二輪車両の運転者に提供すべき当該二輪車両のナビゲーションに係る案内情報を、音声として前記音声出力ユニットから出力させるとともに画像として前記投影ユニットに前記透明部材に投影させる構成とすることができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明に係る第1の二輪車両情報提供装置によれば、運転者とともに二輪車両が傾斜してカーブ道路を走行する際に、二輪車両の傾きが所定の傾き条件を満たすと、ヘルメットに設けられた透明部材への前記提供画像の投影が禁止されるので、カーブ道路を二輪車が走行する際に、ヘルメットに設けられた透明部材に投影される提供画像が運転者の視界を妨げて当該運転者の視界に悪影響を与えることを防止することができる。
【0026】
本発明に係る第2の二輪車両情報提供装置によれば、運転者とともに二輪車両が傾斜してカーブ道路を走行する際に、二輪車両の傾きが所定の傾き条件を満たすと、ヘルメットに設けられた透明部材に投影される前記提供画像が透過性の画像に変えられて、カーブ道路を走行する二輪車両を運転する運転者は、透明部材に投影される透過性の画像となる提供画像を通して前方風景を視認することができるので、カーブ道路を二輪車が走行する際に、ヘルメットに設けられた透明部材に投影される提供画像の運転者の視界に与える悪影響を極力小さくすることができる。
【0027】
本発明に係る第3の二輪車両情報提供装置よれば、運転者とともに二輪車両が傾斜してカーブ道路を走行する際に、二輪車両の傾きが所定の傾き条件を満たすと、ヘルメットに設けられた透明部材への前記画像の投影が禁止され、前記提供情報は、音声出力ユニットからの音声としてだけ提供され得るようになるので、カーブ道路を二輪車が走行する際に、ヘルメットに設けられた透明部材に投影される提供画像が運転者の視界を妨げて当該運転者の視界に悪影響を与えることを防止することができる。
【0028】
本発明に係る第4の二輪車両情報提供装置によれば、運転者とともに二輪車両が傾斜してカーブ道路を走行する際に、二輪車両の傾きが所定の傾き条件を満たすと、ヘルメットに設けられた透明部材に投影される前記画像が透過性のある画像に変えられて、運転者は、前記提供情報を、音声出力ユニットからの音声として聞くことができるとともに、前記透明部材に投影される透過性のある画像として前方の風景とともに見ることができるので、カーブ道路を二輪車が走行する際に、ヘルメットに設けられた透明部材に投影される提供画像の運転者の視界に与える悪影響を極力小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】本発明の実施の形態に係る二輪車両情報提供装置の構成を示すブロック図である。
【
図2】二輪車両情報提供装置に含まれる投影ユニットのヘルメット内での設置例を示す図である。
【
図3】
図1に示す二輪車両情報提供装置の処理ユニットが実行するナビゲーションに係る案内情報の提供についての処理の手順を示すフローチャートである。
【
図4】二輪車両が直進道路を走行する際にヘルメットの透明シールドに投影されるナビゲーションに係る案内画像の一例を示す図である。
【
図5】二輪車両がカーブ道路を走行する際にヘルメットの透明シールドへの案内画像の投影が禁止された状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。
【0031】
本発明の実施の一形態に係る二輪車両情報提供装置は
図1に示すように構成される。
【0032】
図1において、二輪車両情報提供装置10は、各種処理に係るプログラムを実行するコンピュータ(CPUを含む)で構成される処理ユニット11、投影ユニット12、出力回路13、2つのイヤフォン14a、14b、記憶部15及び通信部16を有している。投影ユニット12は、例えば、
図2に示すようにヘルメット100のヘルメット本体101内の後方所定部に設けられている。また、ヘルメット本体101内には、投影ユニット12から出射する光をヘルメット本体101の前方に設けられた透明シールド12(透明部材)の所定部位に導く光学系(図示略)が設けられており、投影ユニット12から出射する光に基づいた画像が透明シールド12の前記所定部位に投影されるようになっている。透明シールド12の前記所定部位は、所謂、半透明であって、外光を透過するとともに、投影ユニット12からの光像をヘルメット100を装着した者(運転者)の目に向けて反射させる。また、2つのイヤフォン14a、14bは、ヘルメット本体101内の当該ヘルメット100を装着する者の耳に対応した部位に設けられている。
【0033】
通信部16は、処理ユニット11の制御のもと、所定の近距離通信規格(例えば、Bluetooth(登録商標))に従って、オートバイ等の二輪車両に設けられたナビゲーションユニット20と無線通信を行う。ナビゲーションユニット20は、二輪車両のルート案内等のナビゲーション処理を行い、そのナビゲーションに係る案内情報を二輪車両情報提供装置10の通信部16に送信する。また、ナビゲーションユニット20の筐体(図示略)にはジャイロセンサ21(傾き検出手段)が設けられており、ナビゲーションユニット20は、ジャイロセンサ21から出力される姿勢を表す検出情報を前記案内情報とともに通信部16に送信する。通信部16は、ナビゲーションユニット20から受信する案内情報及びジャイロセンサ21での検出情報を処理ユニット11に供する。
【0034】
処理ユニット11は、通信部16を介して取得するナビゲーションユニット20からの二輪車両のナビゲーションに係る案内情報を表す案内画像(案内ルート画像、案内メッセージ画像、各種アイコン等)を、投影ユニット12にヘルメット100の透明シールド102の前記所定部位に投影させる。なお、詳細については後述する。また、処理ユニット11の制御のもと、前記案内情報に基づいた音声信号が出力回路13から2つのイヤフォン14a,14bに供給され、該音声信号(案内情報に対応)に応じた音が2つのイヤフォン14a、14bから出力される。
【0035】
記憶部15には、処理ユニット11が実行可能なプログラムが格納されるとともに、処理ユニット11での処理に必要な各種情報、また、処理ユニット11での処理により生成された情報等が格納される。
【0036】
処理ユニット11は、例えば、
図3に示す手順に従って、ナビゲーションユニット20から提供される二輪車両のナビゲーションに係る案内情報を画像及び音声として提供するための処理を実行する。
【0037】
処理ユニット11は、上記処理において、利用者(運転者)が設定した案内情報の提供モードを表すパラメータAと、二輪車両の傾きが所定角度以上であるという傾き条件を満たしているか否かを表すパラメータBとを用いる。前記パラメータAが「0」である場合(A=0)は、前記案内情報を音声と画像とによって提供する第1提供モードを表し、前記パラメータAが「1」である場合(A=1)は、前記案内情報を画像によって提供することなく音声だけで提供する第2提供モードを表す。前記パラメータBが「0」である場合(B=0)は、二輪車両の傾きが所定角度以上であるという前記傾き条件を満たしていないことを表し、前記パラメータBが「1」である場合(B=1)は、二輪車両の傾きが所定角度以上であるという前記傾き条件を満たしていることを表す。
【0038】
図3において、処理ユニット11は、パラメータBを「0」(二輪車両の傾きが所定角度以上であるという前記傾き条件を満たしていないことを表す)に設定した後、第1提供モード(案内情報を音声と画像とによって提供する)が設定されているか否かを判定する(S12)。前記第1提供モードが設定されていると(S12でYES)、処理ユニット11は、パラメータAを「0」に設定し(S13)、ナビゲーションユニット20(ジャイロセンサ21:傾き検出手段)から提供される二輪車両の姿勢についての検出情報に基づいて、二輪車両の傾きが所定角度(例えば、30度)以上であるという傾き条件を満たしているか否かを判定する(S15:傾き判定手段)。
【0039】
例えば、二輪車両が直進道路を走行中であって、当該二輪車両の傾きが所定角度以上であるという傾き条件が満されていない場合(S15でNO)、処理ユニット11は、更に、パラメータAが「1」に設定されているか否かを判定する(S17)。パラメータAが「1」に設定されていない(S13でA=0)と判定すると(S17でNO)、処理ユニット11は、第1提供モードでの案内情報の提供処理を行う(S22)。即ち、処理ユニット11は、ナビゲーションユニット20から供される二輪車両のナビゲーションに係る案内情報に基づいた音声案内をフォン14a、14bから出力させるとともに、前記案内情報に基づいた案内画像を投影ユニット12にヘルメット100の透明シールド102の所定部位に投影させる(画像表示制御手段、情報提供制御手段)。これにより、ヘルメット100を装着する二輪車両の運転者は、イヤフォン14a、14bから出力されるナビゲーションに係る音声案内を聴きつつ、例えば、
図4に示すように、透明シールド102を通して二輪車両BKの両サイドミラーやハンドル周りの部位を含む前方風景Vを見るとともに、透明シールド102に投影される案内画像、例えば、次に曲がる交差点までの案内メッセージを表すメッセージ画像Im、前方に延びる案内ルートを表す案内ルート画像Ir、及び案内アイコンエリアEimg内に配置された方向を表す方向指示アイコンIdrc、現在時刻を表す現在時刻アイコンIctm及び目的地への到達予定時刻を表す到達時刻アイコンIavtmを見ることができる。
【0040】
処理ユニット11は、二輪車両が直線道路を走行中(S15でNO)で第1提供モード(A=0)が設定されている間(S13、S17でNO)、前述した処理(S11、S12でYES、S13、S15でNO、S17でNO、S22)を繰り返し実行する。その結果、ナビゲーションユニット20から提供される案内情報は、2つのイヤフォン14a、14bから音声案内として、また、透明シールド102に投影される案内画像(メッセージ画像Im、案内ルート画像Ir、方向指示アイコンIdirc、現在時刻アイコンIctm、到達時刻アイコンIavtm)として運転者に提供される。
【0041】
上述した処理の過程で、二輪車両が傾けられた状態でカーブ道路を走行する状況になると、処理ユニット11は、ナビゲーションユニット20(ジャイロセンサ21)から提供される二輪車両の姿勢についての検出情報に基づいて二輪車両の傾きが所定角度以上であるという傾き条件が満たされていると判定する(S15でYES)。そして、処理ユニット11は、パラメータBを「1」に設定し(S16)、第2提供モードでの案内情報の提供処理を行う(S18)。即ち、処理ユニット11は、投影ユニット12に前記案内画像を投影させることなく、案内情報に基づいた音声案内をフォン14a、14bから出力させる(画像表示禁止制御手段)。これにより、ヘルメット100を装着する二輪車両の運転者は、イヤフォン14a、14bから出力されるナビゲーションに係る音声案内を聴きつつ、例えば、
図5に示すように、前述したメッセージ画像Im及び案内ルート画像Irや案内アイコンエリアEimgに含まれる各アイコンが表示されていない透明シールド102を通して前方風景Vを見ることができる。
【0042】
前記第2提供モードでの案内情報の提供処理を実行する処理ユニット11は、更に、パラメータBが「0」に設定されているか否かを判定する(S19)。そして、パラメータBが「0」に設定されていない(S16でB=1)と判定すると(S19でNO)、処理ユニット11は、所定時間(例えば、5秒間)、前記第2提供モードでの案内情報の提供処理を実行する状態を維持する(S20)。その後、処理ユニット11は、ステップ11に戻って、パラメータBを「0」に設定し(S11)、第2提供モードが設定されていることを確認すると(S12でNO)、パラメータAを「1」に設定する。以後、パラメータAが「1」に設定された状態(S12でNO、S14)で二輪車両がカーブ道路を走行中(S15でYES)、処理ユニット11は、前述した処理(S11、S12でNO,S14、S15でYES、S16、S18、S19でNO、S20)を繰り返し実行する。その結果、ナビゲーションユニット20から提供される案内情報は、案内画像として透明シールド102に投影されることなく、2つのイヤフォン14a、14bから音声案内として運転者に提供される。
【0043】
上述した処理の過程で、二輪車両が再び直進道路を走行する状況になると、第2提供モードによって案内情報の提供処理を行っている処理ユニット11は、パラメータAを「1」に設定した(S12でNO、S14)後に、ナビゲーションユニット20(ジャイロセンサ21)から提供される二輪車両の姿勢についての検出情報に基づいて二輪車両の傾きが所定角度以上であるという傾き条件が満たされていないと判定する(S15でNO)。すると、処理ユニット11は、更に、パラメータAが「1」であることを確認して(S17でYES)、第2提供モードでの案内情報を提供する(S18)。その後、処理ユニット11は、パラメータBが「0」である(S11でB=0)ことを判定すると(S19でYES)、前記第2提供モードを第1提供モードに切換える(S21)。
【0044】
そして、処理ユニット11は、ステップS11に戻って、パラメータBを「0」に設定し(S11)、第1提供モードが設定されている(S21で設定)ことを確認すると(S12でYES)、パラメータAを「0」に設定する(S13)。そして、処理ユニット11は、ナビゲーションユニット20(ジャイロセンサ21)から提供される二輪車両の姿勢についての検出情報に基づいて二輪車両の傾きが所定角度以上であるという傾き条件が満たされていないと判定すると(S15でNO)、更に、パラメータAが「1」に設定されていないこと(S13でA=0)を確認した(S17でNO)後、第1提供モードでの案内情報の提供処理を行う(S22)。その結果、前述したように、ナビゲーションユニット20から提供される案内情報が、2つのイヤフォン14a、14bから音声案内として、また、透明シールド102に投影される案内画像(メッセージ画像Im、案内ルート画像Ir、方向指示アイコンIdirc、現在時刻アイコンIctm、到達時刻アイコンIavtm)として運転者に提供される。
【0045】
上述したような二輪車両情報提供装置10によれば、二輪車両が直線道路を走行する等傾きが小さい状態(傾き条件が満たされていない状態)で走行している際に、ヘルメット100を装着した当該二輪車両の運転者は、イヤフォン14a、14bから出力されるナビゲーションに係る音声案内を聴きつつ、透明シールド102を通して二輪車両BKの両サイドミラーやハンドル周りの部位を含む前方風景Vを見るとともに、透明シールド102に投影される案内画像(メッセージ画像Im、案内ルート画像Ir、及び案内アイコンエリアEimg内に配置された各アイコンIdrc、Ictm、Iavtm)を見ることができる(
図4参照)。従って、運転者は、音声案内及び案内画像による支援を受けつつ二輪車両を運転することができる。
【0046】
一方、二輪車両がカーブ道路を走行する等傾きが大きい状態(傾き条件が満たされている状態)で走行する際に、ヘルメット100を装着した当該二輪車両の運転者は、イヤフォン14a、14bから出力されるナビゲーションに係る音声案内を聴きつつ、案内画像(メッセージ画像Im、案内ルート画像Ir、案内アイコンエリアEimgに含まれる各アイコンIdrc、Ictm、Iavtm)が表示されていない透明シールド102を通して前方風景Vを見ることができる(
図5参照)。従って、カーブ道路を走行する車両とともに運転者が大きく傾く状況において、透明シールド102の案内画像の表示領域(
図5におけるIm、Ir、Eimg等参照)が、透明シールド102を通した視界内の多くの建物、標識、対向車等に重なり得る状況となっても、透明シールド102に投影される案内画像が運転者の視界を妨げて当該運転者の視界に悪影響を与えることが防止される。また、このように二輪車両が大きく傾く(傾き条件が満たされる)状況においても、案内情報は音声案内として提供されるので、当該に二輪車両の運転者は、その音声案内によって支援されつつ運転を継続することができる。
【0047】
更に、運転者とともに二輪車両が傾斜してカーブ道路を走行する際に、二輪車両の傾きが傾き条件を満たすと(B=1、A=2、S19でNO)、それ以後、二輪車両の傾きが前記傾き条件を満たさなくなったとしても、所定時間(例えば、5秒)は継続して、第2提供モードでの案内情報の提供が維持される、即ち、案内情報が、案内画像として透明シールド102に投影されることなく、2つのイヤフォン14a、14bから音声案内として運転者に提供される状況が維持される。このため、従って、ヘルメット100に設けられた透明シールド102への案内画像の投影の禁止(第2提供モード)と前記案内画像の投影(第1提供モード)の復帰とが、前記所定時間(例えば、5秒)に満たない時間で繰り返されることを防止することができる。
【0048】
上述した二輪車両情報提供装置10では、第2提供モード(A=1)で、案内画像の透明シールド102への投影が禁止されたが、それに代えて、投影ユニット12から透明シールド102に投影される案内画像を、透明性を有する、所謂半透明の画像に変えることができる。なお、透明の度合いは適宜設定することができる。この場合、二輪車両の傾きが傾き条件を満たして(S15でYES)、第2提供モードで案内情報が提供される(S18)際に、投影ユニット12からヘルメット100の透明シールド102に透明性を有する(半透明)の案内画像が投影される。従って、カーブ道路を走行する二輪車両を運転する運転者は、ヘルメット100の透明シールド102に投影される透明性を有する案内画像を通して前方風景Vを視認することができる。よって、ヘルメット100に設けられた透明シールド102に投影される案内画像の運転者の視界に与える悪影響を極力小さくすることができる。
【0049】
上述した二輪車車両情報提供装置10で用いられた傾き条件は、街中の道路を走行する際と郊外を走行する際とで変えるようにしても、二輪車両の種類に応じて変えるようにしてもよい。
【0050】
上述した二輪車両情報提供装置10では、ナビゲーションに係る案内情報を提供するものであったが、車両速度、エンジン回転数等の他の種類の情報を提供するものであってもよい。
【0051】
なお、上述した二輪車両情報提供装置10は、案内情報(提供情報)を音声と画像とによって提供するものであったが、これに限られず、案内情報を音声にて提供することなく画像だけによって提供するものであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明に係る二輪車両情報提供装置は、カーブ道路を二輪車が走行する際に、ヘルメットに設けられた透明部材に投影される提供画像の運転者の視界に与える悪影響を極力小さくすることができるという効果を有し、オートバイ等の二輪車両の運転者にナビゲーション情報等の情報を画像として提供する二輪車両情報提供装置として有用である。
【符号の説明】
【0053】
10 二輪車両情報提供装置
11 処理ユニット
12 投影ユニット
13 出力回路
14a、14b イヤフォン
15 記憶部
16 通信部
20 ナビゲーションユニット
21 ジャイロセンサ