【解決手段】車両用座席シートで、パッド本体2に二以上のステー挿着用縦孔20を有するバックレストのバックパッド用裏面材において、布製シート材の裁断加工により、パッド本体2の縦孔20をつくる箇所で分割して、車両前方側と車両後方側とに切り離され、且つその縦孔20に対応する部位に本体主部41から張り出す突片部45が夫々延在した二つの裁断片4A,4Bを具備し、両裁断片4A,4Bを含めて縫い合わせ部分55を縫合すると共に、重ね合わせた二つの突片部45,45の両側縁沿いを縫合することにより、突片部の先端縁46で縦孔20内の筒口52aを形成して、パッド本体2の縦孔20をつくる孔壁201にあてがう筒部52が設けられた。
前記突片部(45)の幅を、本体主部(41)につながる基端側から突片部(45)の先端側へ向けて先細りにし、且つ前記筒口(52a)の内径(d)を、バックパッド用発泡型(6)に係る縦孔形成用突出部(631)の対応位置における外径(D)よりも小さくした請求項1又は2に記載のバックパッド用裏面材。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかるに、特許文献1,2は以下のような問題を抱えている。
特許文献1は、その段落0010で「さらに、ヘッドレストなどの付加部材6取付位置では裏面から表面に通じる貫通孔部3が形成され、該貫通孔部3にも補強層が形成される必要がある。」とし、請求項1に記載の「成形性を有する不織布を発泡体形状に適合する形状に成形したクッション材用成形補強布」を発明するが、高コスト製品になっている。バックパッドのごとく、複雑な起伏もなく、比較的単純形状の製品を造る場合は、成形フェルト等の成形補強布の熱成形に頼らず、特開2005-238675号公報等のごとく、裁断,縫合で立体形状にする方が断然安いのである。
特許文献2は、その段落0021で「裏面布14には、ヘッドレストのための装着孔38が、パッド本体2の装着孔22に対応する位置に設けられている。」の技術内容にとどまる。装着孔38は裏面布にコ字形に切り抜いただけで、そのコ字形内の舌片部分を装着孔22内の孔壁にあてがっても、該孔壁の四方あるうちの一側壁のみにとどまる。残り三方のパッド本体がむきだしの孔壁になっていることから、擦れ音を防ぐのは依然として困難な状況にある。
特に、擦れ音は乗員の耳元近くで発することから気になり易く、且つ最近の静かなハイブリッド車等の登場で一層気になる場合が増えている。
【0005】
本発明は、上記問題を解決するもので、裁断,縫合を用いて低コスト化を維持し、それでいて、孔壁の周壁面全てに裏面材をあてがい、車両走行や乗員の動きに伴って縦孔周りで発生する擦れ音を完全防止できるバックパッド及びバックパッド用裏面材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成すべく、請求項1に記載の発明の要旨は、車両用座席シートで、パッド本体(2)に二以上のステー挿着用縦孔(20)を有するバックレストのバックパッド用裏面材において、布製シート材の裁断加工により、パッド本体(2)の前記縦孔(20)をつくる箇所で分割して、車両前方側と車両後方側とに切り離され、且つその縦孔(20)に対応する部位に本体主部(41)から張り出す突片部(45)が夫々延在した二つの裁断片(4A,4B)を具備し、両裁断片(4A,4B)を含めて縫い合わせ部分(55)を縫合すると共に、重ね合わせた二つの前記突片部(45,45)の両側縁沿いを縫合することにより、該突片部の先端縁(46)で縦孔(20)内の筒口(52a)を形成して、パッド本体(2)の縦孔(20)をつくる孔壁(201)にあてがう筒部(52)が設けられたことを特徴とするバックパッド用裏面材にある。請求項2の発明たるバックパッド用裏面材は、請求項1で、二つの前記裁断片(4A,4B)が性状の異なる異種材料で構成されたことを特徴とする。請求項3の発明たるバックパッド用裏面材は、請求項1又は2で、突片部(45)の幅を、本体主部(41)につながる基端側から突片部(45)の先端側へ向けて先細りにし、且つ前記筒口(52a)の内径(d)を、バックパッド用発泡型(6)に係る縦孔形成用突出部(631)の対応位置における外径(D)よりも小さくしたことを特徴とする。
請求項4に記載の発明の要旨は、パッド本体上部(22)に二以上のステー挿着用縦孔(20)を備える車両座席シートのバックパッドにおいて、布製シート材の裁断加工により、前記縦孔(20)をつくる箇所で分割して、車両前方側と車両後方側とに切り離され、且つその縦孔(20)に対応する部位に本体主部(41)の外周縁(42)から張り出す突片部(45)が夫々延在した二つの裁断片(4A,4B)を具備し、両裁断片(4A,4B)を含めて縫い合わせ部分(55)を縫合すると共に、重ね合わせた二つの前記突片部(45,45)の両側縁沿いを縫合することにより、該突片部の先端縁(46)で縦孔(20)内の筒口(52a)を形成して、パッド本体(2)の縦孔(20)をつくる孔壁(201)にあてがう筒部(52)が設けられた裏面材(3)と、該筒部(52)を前記孔壁(201)に被着させ、且つ該裏面材の車両前方側の前記裁断片(4A)がつくる前面部(3A)と車両後方側の前記裁断片(4B)がつくる後面部(3B)を裏面(2b)に被着させて一体発泡成形されるパッド本体(2)と、を具備することを特徴とするバックパッドにある。
【0007】
請求項1,4の発明のごとく、本体主部(41)から張り出す突片部(45)を重ね合わせて両側縁沿いを縫合すると、縦孔(20)をつくる孔壁(201)の全域にあてがう筒部(52)を容易に造ることができ、車両走行や乗員の動きに伴って縦孔周りで発生する擦れ音を防止できる。
請求項2の発明のごとく、二つの裁断片(4A,4B)が性状の異なる異種材料で構成されると、裏面材が配されるそれぞれの部位の要求仕様に個別対応でき、低コスト化を目指しながら品質向上を図ることができる。
請求項3の発明のごとく、突片部(45)の幅を、本体主部(41)につながる基端側から突片部(45)の先端側へ向けて先細りにし、且つ前記筒口(52a)の内径(d)を、バックパッド用発泡型(6)に係る縦孔形成用突出部(631)の対応位置における外径(D)よりも小さくすると、発泡成形時に裏面材への縦孔形成用突出部(631)の挿着セットが容易になる。また、突片部を先端側へ向けて先細りにすると、先端で筒口を縦孔形成用突出部(631)に密着させることが可能となり、発泡成形時に発泡原料の筒部内への漏れを抑えることができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明のバックパッド及びバックパッド用裏面材は、縦孔をつくる孔壁の周壁面全てに筒部をあてがって、パッド本体の発泡成形でこの筒部付き裏面材を被着一体化させるので、車両走行や乗員の動きに伴って縦孔周りで発生する擦れ音をなくすことができるだけでなく、その筒部付き裏面材を、成形フェルトに頼らずに縫製品で作製できるので、低コストで製造できるなど優れた効果を発揮する。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係るバックパッド及びバックパッド用裏面材について詳述する。
図1〜
図11は本発明のバックパッド及びバックパッド用裏面材の一形態で、
図1は裏面材向け裁断片の平面図、
図2は
図1の裁断片を縫合してできた裏面材の平面図、
図3,
図4は
図2の裏面材を中型にセットする様子を示す部分斜視図、
図5は(イ)が
図3に対応する断面図、(ロ)が
図4に対応する断面図、
図6は(イ)が
図2の筒部周りの拡大図、(ロ)が(イ)の筒部が開く様子の説明断面図、
図7は(イ)がバックパッドの縦断面図、(ロ)が(イ)の部分拡大図、
図8,
図9はバックパッドを発泡成形する様子を示す説明断面図、
図10は(イ)がバックパッドの斜視図、(ロ)が(イ)の縦孔周りの拡大斜視図、(ハ)が(ロ)の平面図、
図11は他態様の裏面材の説明図を示す。尚、
図5(ロ),
図7(イ),
図10(ハ)は、裏面材3を判り易くするため、パッド本体2から少し離して描く。
【0011】
(1)バックパッド用裏面材
バックパッド用裏面材3は、パッド本体上部22に二以上のステー挿着用縦孔20を備える車両座席シートのバックパッドで、パッド本体2の裏面2bに被着一体化される縫製裏面材である。裏面材3は、不織布等の布状シート材から裁断,縫合された縫製品とする。平物の布製シート材から裁断,縫製加工されるバックパッド用裏面材3は、パッド本体2の縦孔20をつくる箇所で縦割り二分割して、車両前方側と車両後方側とに切り離された裁断片4A,4Bを具備する(
図1,
図7)。車両前方側の裁断片4Aと車両後方側の裁断片4Bには、縦孔20に対応する部位に,本体主部41の外周縁42から張り出す突片部45が夫々延在する。
【0012】
車両前方側裁断片4Aと車両後方側裁断片4Bの縫合部には、それぞれ縫い代部分が設けられている。両裁断片4A,4Bを含めて縫い合わせ部分55を縫合すると共に、重ね合わせた二つの前記突片部45,45の両側縁沿いを縫合し筒状にすることにより、バックパッド用裏面材3の全体形状に縫製されると共に、筒部52が造られる。突片部45の先端縁46で縦孔20内の筒口52aを形成して、パッド本体2の縦孔20をつくる孔壁201にあてがう筒部52が備わるバックパッド用裏面材となる(
図7)。
筒部52に関しては、真空成形等による成形フェルトを採用すると、素材の伸びに限界があり、筒部高さTを十分確保できない場合が多い。本発明の裏面材3は、複数パーツに分けた裁断片4A,4Bで構成されることから、突片部45の高さZを自由に設定できるので、縦孔20の高さh20に適合させた高さのある筒部52を簡単に造ることができる。
【0013】
車両前方側裁断片4Aの突片部45と車両後方側裁断片4Bの突片部45は同形状とする。両突片部45は、矩形形状でも構わないが、
図6(イ)のような台形の形にするのがより好ましい。詳しくは、突片部45の幅を本体主部41につながる基端側から突片部45の先端側へ向けて先細りにし、且つ筒部52に係る筒口52aの内径dを、後述するバックパッド用発泡型6に係る縦孔形成用突出部631の対応位置における外径Dよりも若干小さくする(
図6)。パッド本体2の発泡成形で筒口52aからの発泡原料の漏れを抑えられるからである(詳細後述)。また、突片部45を台形形状にすることで、筒部52の基端部分にゆとりができ、バックパッド本体の成形時に、筒部52への突出部631の挿着セットが行い易くなる。
【0014】
本実施形態は二つの縦孔20を備える運転席用バックパッドに適用する。
図1ごとくの車両前方側裁断片4Aと車両後方側裁断片4Bとを縫合することによって、
図2〜
図7のようなバックパッド用裏面材3の縫製品になる。車両用前方側裁断片4Aは、
図1(イ)のごとく上縁42から張り出す突片部45を有する略矩形のメイン部41aと、該メイン部の両側縁43から左右外方へ張り出す袖部41bと、を具備する裁断片である。尚、本発明でいう「上縁」,「上方」は、車両に組付けられた状態下のバックパッドで、そのパッド本体,裏面材,裁断片等の上縁,上方をいう。
袖部41bは、メイン部41aの両上端から外方へ斜め下降した後、メイン部41aの下半部を過ぎた地点まで、メイン部41aから横外方へ一定幅で張り出した図示ごとくの台形形状になっている。車両後方側裁断片4Bは、
図1(ロ)のごとく上縁42から張り出す突片部45を有する横長の略逆台形の裁断片である。略逆台形の下底にあたる車両後方側裁断片4Bに係る上辺側の横長さは、車両前方側裁断片4Aに係るメイン部41aの上辺の長さに略等しく、パッド本体2の車幅方向長さに対応する。符号441は略台形の上底に設けた切欠を示す。裏面材3の立体形状に付形し易くするためである。符号431bは右側袖部41bに設けた屈曲点を示す。
【0015】
車両前方側裁断片4Aは、
図10でいえば、メイン部41aがパッド本体上部22にある縦孔20よりも車両前方側のパッド本体主部21の裏面2bを覆い、袖部41bが車両前方側のパッド本体主部21の側方からパイプフレームを囲うようにして主部背面側へ回って側方後部24の裏面2bを覆う。車両後方側裁断片4Bは、パッド本体上部22にある縦孔20よりも車両後方側のパッド本体後部23の裏面2bを覆う。
二つの裁断片4A,4Bは、当初、車両前方側と車両後方側とに切り離された別体構成である。したがって、同じ材料でも構わないが、各部の要求仕様に応じ、目付けを変えたり不織布の種類や積層仕様を変えたりして、性状の異なる異種材料で造ることができる。例えば、パッド本体2の発泡成形で、裏面材3は
図9の型構造から車両前方側主部21が含浸し易い傾向にある。車両後方側裁断片4Bを二層構造としながら、車両前方側裁断片4Aに三井化学社製タフネル(登録商標)等の三層構造不織布を採用して、斯かる含浸不具合を解消する。パイプフレームが当たるパッド本体上部22の裏面2b側に、丈夫な東洋紡社製ボランス(登録商標)等を使った裁断片4を用いたりすることもできる。
尚、本実施形態は、二分割された車両前方側裁断片4Aと車両後方側裁断片4Bで裏面材3を形成したが、必要に応じ、車両前方側裁断片4Aをさらに分割できる。両袖部41bを切り離して、四分割された裁断片4で裏面材3を形成する場合は、四つの裁断片の縫い合わせ部分55を縫合し、重ね合わせた二つの前記突片部45,45の両側縁沿いを縫合することにより、バックパッド用裏面材3が縫製されることになる。
【0016】
次に、車両前方側裁断片4Aと車両後方側裁断片4Bとでバックパッド用裏面材3に縫製加工する一例を示す。まず、
図1(イ)の車両前方側裁断片4Aと
図1(ロ)の車両後方側裁断片4Bとの突片部45,上縁42が一致するように双方を重ね合わせ、双方の上縁42沿いの縫い合わせ部分55aを縫合する。これと相前後して、重なり合った突片部45の両側縁を縫い合わせ、縫合ライン51を形成して筒部52とする。また、メイン部41aと袖部41bとの境界ライン49で、該袖部41bを車両後方側裁断片4Bが在る側へ折り曲げる。そして、折り曲げた袖部41bと車両後方側裁断片4Bとを
図2のように合わせ、縫い合わせ部分55を縫合することでバックパッド用裏面材3になる。袖部41bと車両後方側裁断片4Bの縫い合わせ部分55で、右側部分55cは、裏面材3が立体形状にできるように角部48から途中の屈曲地点431bまでで縫合を止める一方、左側部分55bは、切欠441を設けているので、角部48から内端まで縫い合わせてバックパッド用裏面材3とする。かくして、
図2〜
図7ごとく立体付形を可能にして、パッド本体裏面2bに被着し得る所望の裏面材3が出来上がる。図中、符号DBは車両後方側裁断片4Bと袖部41bとのダブリ部分、符号51Nは筒部形成用縫合ライン51の縫い目、符号4A
9,4B
9は縫い代を示す。符号55Nは縫い合わせ部分55を縫合する縫い目を示す。
【0017】
図11に他態様のバックパッド用裏面材3の概略図を示す。
図11(イ)が裏面材3の裁断片4A,4Bの平面図、(ロ)が(イ)の両裁断片4A,4Bを縫合してなる裏面材3の平面図、(ハ)が(ロ)のX-X線矢視図である。車両後部座席のバックパッド1で、パッド本体2の裏面2bに被着される裏面材3にして、縦孔20の孔壁201にあてがう筒部52が三個設けられている。
他の構成は、
図1〜
図10の裏面材3と同様で、その説明を省く。
図1〜
図10と同一符号は同一又は相当部分を示す。
【0018】
(2)バックパッド
バックパッド1は、パッド本体上部22に二以上のステー挿着用縦孔20を備える車両座席シートのバックパッドである。本バックパッド1は、
図2〜
図7に示した前記裏面材3と、該裏面材3の筒部52を前記孔壁201に被着させ、且つ裁断片4A,4Bがつくる前面部3A,後面部3Bを裏面2bに被着させて一体発泡成形されるパッド本体2と、を具備する。
【0019】
裏面材3は前述した縫製品である。縦孔20に対応する部位に本体主部41から張り出す突片部45が夫々延在した二つの裁断片4A,4Bの縫い合わせ部分55を縫合すると共に、重ね合わせた二つの突片部45,45の両側縁沿いを縫合することにより筒部52が設けられた裏面材3である。
【0020】
パッド本体2は、ポリウレタン材料等の発泡樹脂原料を用いて、運転席用バックパッド1の背もたれ部形状に成形された発泡成形品である(
図7,
図10)。パッド本体2は、
図7のごとく乗員の背もたれ部分の役目を果たす前方側主部21からヘッドレスト8が装着される上部22へと延びた後、その先で下方に曲がり、凹所uをつくるように後方側後部23が垂下する。前方側主部21の側縁部分はその上半部が、
図10のごとく車両後方に張り出した後、内向きに曲がって側方後部24になる。側方後部24は後部23とつながって凹所uを形成する。該凹所uに車体側パイプフレームを装着してパッド本体2が安定支持される。
【0021】
そして、パッド本体2の上部22にはステー装着用の縦孔20が、その発泡成形で上下方向に貫通形成される。該発泡成形で、インサートされた裏面材3がパッド本体裏面2bに被着するが、突片部45の先端縁46が筒部52の上方側筒口52aを形成して、筒部52が縦孔20の孔壁201に被着し、パッド本体2が該裏面材3と一体発泡成形される(
図7)。裏面材3の筒部52を孔壁201に被着させ、且つ該裏面材3の車両前方側の裁断片4Aがつくる前面部3Aと車両後方側の裁断片4Bがつくる後面部3Bを裏面2bに被着させて、パッド本体2が一体発泡成形される。
ここでの縦孔20は
図10のような四角孔であり、これに合わせて、裏面材3の筒部52も四角筒になる。
図10(ハ)のごとく、同図上側に位置する車両前方側裁断片4Aの筒部用突片部45をコ字形に曲げると共に、同図下側に位置する車両後方側裁断片4Bの筒部用突片部45をコ字形に曲げることで、
図7(ロ)のようにパッド本体上部22の裏面2bに被着された車両前方側裁断片4A(詳しくはメイン部41a)の突片部寄り部分4A
1,車両後方側裁断片4Bの突片部寄り部分4B
1上に、筒部52を立設させることができる。
【0022】
筒部52が、文字通り筒状体に仕上がっていることから、
図7,
図10のごとく縦孔20をつくるパッド本体2に係る孔壁201を360°周回する形で覆う。縦孔高さh20に合わせた高さZがある筒部用突片部45を、裁断によって簡単作製でき、縦孔20の高さ方向の孔壁201の略全域に筒部52があてがわれる。
【0023】
ここで、本発明者は、本発明に到達する前に、
図12(イ)に示す裁断布を縫合してなる
図12(ロ)の改良裏面材RNを発明した。縦孔20に対応する位置にH形スリットSLを設けた裁断布CLの外周縁を縫合し、改良裏面材RNとした。
図8,
図9の発泡型6を用いて、突出部631を該H形スリットSLに通すようにして、該裁断布CLを中型63にセットし、パッド本体2を発泡成形したが、異音対策が不十分であった。パッド本体裏面2bに
図12(ロ)の裏面材RNを被着一体化させた場合、スリットSLに囲まれた二つの舌片部THが、四方に孔壁があるうちの二箇所の壁面に当てるにとどまった。特許文献2のごとく四方に孔壁があるうちの一壁面に舌片部分をあてるしかないものに比べれば、異音対策が向上するものの、残り二つの壁面はパッド本体そのものが露出し、この部分の異音発生を抑えることができなかった。
【0024】
これに対し、本発明の裏面材3は、四角柱形の孔壁201の四壁面全てに筒部52を当て、パッド本体2の縦孔20を覆う(
図10)。縦孔20内で、縦孔20の上開口200の近傍以外にパッド本体2が露出する部分はない。本実施形態は、
図7のごとく筒部52の上方開口縁521が縦孔20の上開口200よりも縦孔20内に若干引っ込む格好にしているが、パッド本体2の露出がごく僅かの範囲にとどまっており、全く問題ない。また、実際のパッド本体2は、筒部52の上方開口縁521から縦孔20の上開口200に向けて、縦孔20の口がアールをつけて広がっているので、ヘッドレストステー82,ステーホルダーHLやステーホルダー支持フレームが該パッド本体2へ直かに接触することがなく、異音対策は万全になる。符号25はパッド本体上部22に隆起形成した縦孔用隆起部分を示す。
【0025】
次に、本バックパッド1の一製造方法について述べる。
バックパッド1の製造に先立ち、
図2,
図3のような筒部52付き裏面材3を準備する。バックパッド1の製造に用いる発泡型6は、
図8,
図9ごとくの発泡型で、下型61と上型62と中型63とを備える。ヒンジ69を支点にして
図8から
図9のごとく型閉じすると、全体的に凹み度合いが大きな下型61の型面610と、中型63の型面630と,上型62との型面620とで、パッド本体2に裏面材3が一体化するバックパッド1のキャビティCをつくる。本製法では、下型61の型面610,上型62の型面620でバックパッド1の表面2a側が成形され、中型63の型面630でバックパッド1の裏面2b側が成形される。
【0026】
前記発泡型6,裏面材3を用いて、バックパッド1が例えば以下のように製造される。まず、発泡型6を型開状態とする(
図8)。次いで、この型開状態下、中型63に裏面材3をセットする。
中型63には縦孔20の形をした軸状突出部631が主部から突出するように設けられている。セータを着る時、手をセータの腕の部分に通すように、該突出部631を
図5(イ)のように筒部52に通して、
図5(ロ)のごとく中型63に裏面材3をセットする。突出部631は四角柱状にして、その根元部分が筒部52に合わせて広がる。
図8の型開状態下、
図3の状態から
図4の状態にし、裏面材3を中型63にセットする。縫製筒部52であっても、突片部45の幅を、本体主部41につながる基端側から突片部45の先端側へ向けて先細りにし、該筒部52は根元部位に向けて八の字状に広がる筒口になるので、根元部位側の大きな口へ突出部631が難なく入り込む。筒部52は突出部631を覆って取巻く四角筒状になる。
図4の円内拡大図のごとく、突出部631が筒部52の上方側開口縁521よりも僅かに突き出る。
尚、図示を省略するが、裏面材3の適宜箇所にフェライト製テープ片を貼着すると共に、該テープ片に対応する中型63の型面630に永久磁石を露出させて、その磁力吸着で、裏面材3を中型63の型面630に確実にセットする。
【0027】
次いで、型開状態のまま発泡原料gを所定量注入し(
図8)、その後、型閉じする。上型62,下型61,中型63の型閉じで、裏面材3がインサートされたバックパッド1のキャビティCができる(
図9)。と同時に、突出部631の先端が下型61の隆起部分611に当接し、縦孔20を形成する準備を整える。図中、符合619,629,639は型合せ面、符号67は支持バー、符号68はアーム,符号68aはフックを示す。
【0028】
前記型閉じの後、パッド本体2の発泡成形に移る。型閉じ状態を所定時間維持し、
図7,
図10ごとくのパッド本体2を、その裏面2b側に裏面材3が被着一体化するように発泡成形する。突出部631の外径Dよりも筒口52aの内径dを若干小さくしているので、発泡成形時に発泡原料gが筒部52内へ漏れ出すことはない。かくして、該パッド本体2と裏面材3が一体のバックパッド1が造られる。四角柱状の突出部631を筒部52が取巻くようにして、裏面材3を中型63にセットしているので、縦孔20をつくるパッド本体孔壁201を周回する全ての壁面に、筒状形成された筒部52を被着一体化させた所望のバックパッド1が出来上がる。
該バックパッド1に図示しない表皮を被せると、車両用座席シートの背もたれ用バックレストになる。
【0029】
(3)効果
このように構成したバックパッド及びバックパッド用裏面材3は、特許文献1のような成形フェルト等の成形補強布の熱成形に頼らずに、裁断片4を縫製して造るので、特に、立体形状が比較的単純なバックパッド1において、低コスト生産でき、極めて有益である。
【0030】
また、縫製裏面材3といっても、特許文献2の裏面材3と違って、縦孔20に係る孔壁201を360°周回する形で裏面材3の筒部52が覆い、且つ筒部52が孔壁201に被着する格好で、パッド本体2に裏面材3が一体化したバックパッド1が出来上がるので、異音発生を確実に抑えることができる。
特許文献2のコ字状に切り抜いた舌片部分が孔壁の四方あるうちの一壁面しか当てがわなかったり、
図11の裏面材3のごとく孔壁の四方あるうちの二壁面しかあてがわなかったりするケースと違って、本裏面材3は筒部52で孔壁201の四方あるうちの四方の周壁面全てをあてがい、覆い尽くすので、異音対策が磐石となる。車両走行や乗員の動きに伴って縦孔20周りで発生していた擦れ音を防止できる。
【0031】
さらに、真空成形等で造られる成形フェルトのバックパッド用裏面材3は素材の伸びに限界があり、縦孔20の孔壁201にあてがう必要高さの筒部52を形成するのが困難であったが、本裏面材3は裁断片の突片部45が担うので、必要な高さの筒部52を難なく得ることができる。擦れ音対策が万全となる。
加えて、裏面材3が複数の裁断片を用いた縫製品であるので、各部の要求品質に適合させた異種裁断片の複合裏面材3とすることも容易であり、さらなる品質向上,低コスト化等に向け、優れた効果を発揮する。
【0032】
尚、本発明においては前記実施形態に示すものに限られず、目的,用途に応じて本発明の範囲で種々変更できる。バックパッド1,パッド本体2,縦孔20,裏面材3,裁断布4等の形状,大きさ,個数,材質等は用途に合わせて適宜選択できる。