(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-137092(P2015-137092A)
(43)【公開日】2015年7月30日
(54)【発明の名称】パラレルハイブリット方式によるマルチローター航空機
(51)【国際特許分類】
B64D 27/24 20060101AFI20150703BHJP
B64C 27/08 20060101ALI20150703BHJP
【FI】
B64D27/24
B64C27/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】書面
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2014-20740(P2014-20740)
(22)【出願日】2014年1月20日
(71)【出願人】
【識別番号】512167183
【氏名又は名称】安田 憲太
(72)【発明者】
【氏名】安田 憲太
(72)【発明者】
【氏名】山梨 剛宏
(57)【要約】 (修正有)
【課題】構造の簡便さ、姿勢制御性能の高さ、の利点を持ちつつ、連続飛行時間を増加させることができる、電動機と発動機のパラレルハイブリッド方式のマルチローター航空機を提供する。
【解決手段】発動機2と、発動機に供給する燃料と、発動機の出力軸に連結され推力を発生するプロペラ3と、発動機の出力軸に連結され電力を発生させる発電機4と、発電機による電力により動作する少なくとも3基以上の電動機と、電動機の出力軸に連結され推力を発生する少なくとも3個以上のプロペラと、電動機により必要とされる電力と発電機により発生する電力との差を吸収する目的の電池と、で構成する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
垂直離着陸が可能な航空機において、
少なくとも1基の発動機と、前記発動機に供給する燃料と、
前記発動機の出力軸に連結され推力を発生するプロペラと、
前記発動機の出力軸に連結され電力を発生させる発電機と、
前記発電機による電力により動作する少なくとも3基以上の電動機と、
前記電動機の出力軸に連結され推力を発生する少なくとも3個以上のプロペラと、
前記電動機により必要とされる電力と前記発電機により発生する電力との差を
吸収する目的の電池と、を有する航空機。
【請求項2】
前記航空機は、前記発動機の出力軸に連結されたプロペラによる推力と、
前記電動機の出力軸に連結された少なくとも3個以上のプロペラによる推力と、
の合力により空中に浮上し、
前記電動機の出力軸に連結された少なくとも3個以上のプロペラの推力の調整により機体姿勢を制御し、水平方向、垂直方向、に移動可能な航空機。
【請求項3】
前記航空機は、飛行継続に必要な出力に対して、前記発動機の出力が過剰な場合は、
前記電池に余剰な出力を一時的に蓄電し、
飛行継続に必要な出力に対して、前記発動機の出力が不足な場合は、
前記電池から不足する出力を一時的に放電し、
出力を調整する機能を有する航空機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パラレルハイブリット動力によるマルチローター航空機に関する。
3個以上のプロペラを持つ垂直離着陸航空機であるマルチローター航空機に、複数種類の動力を搭載し併用することによる飛行性能向上の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
空中からの偵察、観測、科学調査、資源探査、農薬散布、輸送、のため各種の垂直離着陸航空機が開発されている。
【0003】
垂直離着陸航空機の中でも、複数の電動機と電動機に連結されたプロペラを、
機体外周に少なくとも3個以上配し、プロペラの回転数制御により、
機体の浮上と、機体の姿勢制御と、を行う航空機を電動マルチローター航空機と呼ぶ。
簡素な構造であり、高い姿勢制御能力を備え、
コンピューター制御との親和性が高いことから、無人航空機に多用されている。
特に、プロペラが4個以上の場合においては、
一発の電動機が停止しても飛行継続が可能であり、信頼性が高い。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電動マルチローター航空機の電動機を作動させるための電源である電池は、
化石燃料に対して、重量あたりのエネルギー量が小さいため、
連続飛行時間が制限される問題がある。
【0005】
連続飛行時間を増大させるために、電動マルチローター航空機の、
電池と複数の電動機を、化石燃料と複数の発動機に置き換えた場合、
電動機に比べて発動機の回転数制御の、速度と、安定性と、精度と、が劣るため、構造の簡便さ、姿勢制御性能の高さ、の利点が失われる問題がある。
【0006】
連続飛行時間を増大させるために、プロペラを駆動するための電動機はそのままに、電源を、電池から化石燃料と発動機と発電機に置き換えた場合、
発動機による軸出力の全量を、発電機により電力に変換してから使用するため、エネルギー変換効率の低下と、発電機の重量が増大する、という問題がある。
この方式をシリーズハイブリット方式と呼ぶ。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1から3に記載する以下の
パラレルハイブリット方式によるマルチローター航空機により、課題を解決する。
【0008】
垂直離着陸が可能な航空機において、
少なくとも1基の発動機と、前記発動機に供給する燃料と、
前記発動機の出力軸に連結され推力を発生するプロペラと、
前記発動機の出力軸に連結され電力を発生させる発電機と、
前記発電機による電力により動作する少なくとも3基以上の電動機と、
前記電動機の出力軸に連結され推力を発生する少なくとも3個以上のプロペラと、
前記電動機により必要とされる電力と前記発電機により発生する電力との差を吸収する目的の電池と、を有する航空機。
【0009】
前記航空機は、前記発動機の出力軸に連結されたプロペラによる推力と、
前記電動機の出力軸に連結された少なくとも3個以上のプロペラによる推力と、
の合力により空中に浮上し、
前記電動機の出力軸に連結された少なくとも3個以上のプロペラの推力の調整により機体姿勢を制御し、水平方向、垂直方向、に移動可能な航空機。
【0010】
前記航空機は、飛行継続に必要な出力に対して、前記発動機の出力が過剰な場合は、
前記電池に余剰な出力を一時的に蓄電し、
飛行継続に必要な出力に対して、前記発動機の出力が不足な場合は、
前記電池から不足する出力を一時的に放電し、出力を調整する機能を有する航空機。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば前記航空機は、電動マルチローター航空機の持つ、
構造の簡便さ、姿勢制御性能の高さ、の利点を持ちつつ、
重量あたりエネルギー量の大きな燃料をエネルギー源とすることで、
連続飛行時間を増加させることができ、有利である。
【0012】
本発明によれば前記航空機は、発動機により発生させた軸出力を、
直接プロペラに伝達して推力を発生させ、一部の出力だけを発電機で電力に変換し、電動機による推力制御に利用する。この方式をパラレルハイブリット方式と呼ぶ。
発動機の軸出力の全量を電力に変換する前記シリーズハイブリット方式に比べてエネルギー変換効率、発電機重量、の点で有利である。
【0013】
本発明によれば前記航空機は、発動機出力の変動を電池の蓄電と放電により調整することが可能であり、飛行制御を容易にするため有利である。
特に、発動機の出力低下時、または発電機の停止時には、
電池で出力を補い飛行継続が可能なため安全性が高い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態(実施例)を図面に基づいてより詳細に説明する。
図1は車両を用いず運搬可能な小型無人航空機として設計された
該航空機の構成を説明するための概要図である。航空機1の仕様は以下である。
航空機1の総重量はおよそ10キログラム。
航空機1の重心位置は機体中央。
発動機2の最大出力は8kW。
発動機2の設置位置は機体中央。
プロペラ3は、発動機2の出力軸に固定され直径は600mm。
発電機4は、発動機2の出力軸に固定され最大発電能力は4kW。
推進器5、6、7、8、は電動機と電動機の出力軸に固定されたプロペラの推進系で、電動機定格出力は各1kW、プロペラ直径は300mm。
電池9は、リチウムイオン電池。
燃料10は、ガソリン。
制御装置11は、航空機1の位置と速度と姿勢を計算し、航空機1の飛行を制御する。
【0015】
図2は、発動機2とプロペラ3と発電機4の構成を説明するための概要図である。
発動機2は、出力軸が上下方向となるように航空機1に固定される。
発動機2の出力軸の上方側にはプロペラ3が固定され、下方側には発電機4が固定される。プロペラ3による吹き下ろし気流は、航空機1に推力を与えると共に、発動機2と、発電機4と、を冷却する。
【0016】
図3は、定常飛行中の航空機1の各機器の動作状況を説明するブロック図である。
発動機2は燃料10を消費し6kWの軸出力に変換する。
プロペラ3は4kWの軸出力を消費し70ニュートンの推力を発生する。
発電機4は残りの2kWの軸出力を消費し1.5kWの電力を発生する。
推進器5、6、7、8、は合わせて1.5kWの電力を消費して
30ニュートンの推力を発生し
プロペラ3による推力と合わせて機体を浮遊させると同時に、
4個の推進器の推力を個別に調整して機体の姿勢を制御する。
電池9は充放電を行わない。
なお、発電機4の出力を、推進器5、6、7、8、が必要とする出力より小さくし、電池9の出力により不足分の出力を補いながら定常飛行する設計も可能である。
その場合、発電機4の重量が減少し、電池9の重量が増加する。
【0017】
図4は、航空機1において発動機2の発生出力が飛行に必要な出力を上回った状態での各機器の動作状況を説明するブロック図である。
発動機2は燃料10を消費し7kWの軸出力に変換する。
プロペラ3は4.5kWの軸出力を消費し75ニュートンの推力を発生する。
発電機4は残りの2.5kWの軸出力を消費し2kWの電力を発生する。
推進器5、6、7、8、は合わせて1kWの電力を消費して
25ニュートンの推力を発生し、
プロペラ3による推力と合わせて機体を浮遊させると同時に、
4個の推進器の推力を個別に調整して機体の姿勢を制御する。
電池9は余剰の1kWの電力を充電する。
【0018】
図5は、航空機1において発動機2の発生出力が飛行に必要な出力を下回った状態での各機器の動作状況を説明するブロック図である。
発動機2は燃料10を消費し4kWの軸出力に変換する。
プロペラ3は2.5kWの軸出力を消費し50ニュートンの推力を発生する。
発電機4は残りの1.5kWの軸出力を消費し1kWの電力を発生する。
推進器5、6、7、8、は合わせて3kWの電力を消費して
50ニュートンの推力を発生し
プロペラ3による推力と合わせて機体を浮遊させると同時に、
4個の推進器の推力を個別に調整して機体の姿勢を制御する。
電池9は不足の2kWの電力を放電する。
【0019】
図6は、航空機1において発動機2が意図せず作動停止した非常時の各機器の動作状況を説明するブロック図である。
電池9は6kWの出力で放電し、推進器5、6、7、8、は6kWを消費して合わせて100ニュートンの推力を発生し機体を浮遊させると同時に、4個の推進器の推力を個別に調整して機体の姿勢を制御する。
この際、推進器5、6、7、8、の電動機は、定格出力を上回る出力で動作するため長時間の連続運転を避けて速やかに緊急着陸するものとする。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】
図1は、小型無人航空機として設計された航空機1の構成を説明するための図である。
【
図2】
図2は、発動機2とプロペラ3と発電機4の構成を説明するための概要図である。
【
図3】
図3は、定常飛行中の航空機1の各機器の動作状況を説明するブロック図である。
【
図4】
図4は、航空機1において発動機2の発生出力が飛行に必要な出力を上回った状態での各機器の動作状況を説明するブロック図である。
【
図5】
図5は、航空機1において発動機2の発生出力が飛行に必要な出力を下回った状態での各機器の動作状況を説明するブロック図である。
【
図6】
図6は、航空機1において発動機2が意図せず作動停止した非常時の各機器の動作状況を説明するブロック図である。
【符号の説明】
【0021】
1 航空機
2 発動機
3 プロペラ
4 発電機
5 推進器左前
6 推進器右前
7 推進器左後
8 推進器右後
9 電池
10 燃料
11 制御装置