(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-137227(P2015-137227A)
(43)【公開日】2015年7月30日
(54)【発明の名称】N−ビニルアゾール類の製造方法
(51)【国際特許分類】
C07D 207/323 20060101AFI20150703BHJP
C07D 209/82 20060101ALI20150703BHJP
C07D 209/04 20060101ALI20150703BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20150703BHJP
【FI】
C07D207/323
C07D209/82
C07D209/04
C07B61/00 300
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-7841(P2014-7841)
(22)【出願日】2014年1月20日
(71)【出願人】
【識別番号】899000057
【氏名又は名称】学校法人日本大学
(71)【出願人】
【識別番号】507119250
【氏名又は名称】東ソー有機化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090022
【弁理士】
【氏名又は名称】長門 侃二
(72)【発明者】
【氏名】川面 基
(72)【発明者】
【氏名】曽我 真一
(72)【発明者】
【氏名】長崎 順隆
【テーマコード(参考)】
4C069
4C204
4H039
【Fターム(参考)】
4C069AC05
4C069BA03
4C204AB01
4C204BB04
4C204CB03
4C204CB25
4C204EB01
4C204FB04
4C204GB01
4H039CA42
4H039CD10
4H039CD20
(57)【要約】
【課題】有機エレクトロルミネッセンス、電子写真感光体、有機半導体、太陽電池等の機能性化合物の原料モノマーとして有用なN−ビニルアゾール類を高収率かつ経済的に得る方法を提供する。
【解決手段】アゾール類とハロゲン化ビニル類とをパラジウム化合物及びリン系配位子の存在下、塩基としてNaOHを用いて反応させることにより、高収率かつ高選択的にN−ビニルアゾール類を得る方法を用いる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)
【化1】
(式(1)中、R1、R2、R3及びR4は、各々独立して、水素、置換もしくは無置換のアリール基、炭素数1〜10のアルコキシ基、炭素数1〜10のアルキル基、シアノ基又はカルボキシル基を表し、R1とR4または、R2とR3は、互いに結合して炭化水素環を形成してもよい。)で表されるアゾール類と、一般式(2)
【化2】
(式(2)中、R5、R6及びR7は、各々独立して、水素、炭素数1〜10のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基又はフッ素を表し、Xは、塩素、臭素又はヨウ素を表す。)で表されるハロゲン化ビニル類とを、触媒としてパラジウム化合物及びリン化合物の存在下反応させ、一般式(3)
【化3】
(式(3)中、R1、R2、R3、R4、R5、R6及びR7は、前記式(1)及び式(2)における定義と同一である。)で表されるN−ビニルアゾール類を製造する方法であって、塩基として水酸化ナトリウムを用いる、N−ビニルアゾール類の製造方法。
【請求項2】
一般式(1)で表されるアゾール類が、ピロール、インドールまたはカルバゾールである、請求項1に記載のN−ビニルアゾール類の製造方法。
【請求項3】
一般式(2)で表されるハロゲン化ビニル化合物が、塩化ビニルまたは臭化ビニルである、請求項1または請求項2に記載のN−ビニルアゾール類の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機エレクトロルミネッセンス、電子写真感光体、有機半導体、太陽電池等の機能性化合物の原料モノマーとして有用なN−ビニルアゾール類の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、N−ビニルアゾール類の製造法としては、例えば、アゾール類と1,2−ジハロエタンを反応させ、N−(2−ハロエチル)アゾール類とした後、相間移動触媒の存在下、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム等の塩基を作用させてN−ビニルアゾール類を得る方法が知られている(例えば特許文献1および非特許文献1参照)。しかしながら、この方法は、2段階の反応が必要であることに加え、1段目の反応で得られるN−(2−ハロエチル)アゾール類の収率が低い上、大量の1,2−ジハロエタンを必要とする等の課題がある。
【0003】
一方、アゾール類からN−ビニルアゾール類を1段階反応で合成する手法として、アゾール類と臭化ビニルをPd
2(dba)
3及び
tBu
3P触媒存在下、塩基としてLiO
tBuを用いてN−ビニルアゾール類を合成する手法が提案されている(例えば非特許文献2参照)。しかしながら、同手法は塩基として高価なLiOtBuを使用する上、反応前にアゾール類とLiOtBuよりアゾールのLi塩を調製する必要がある。文献においてもLiO
tBu、KO
tBu等のアルコキシ塩基が必須であることが記載されている。また、収率についても65%程度であり、工業的な製法として必ずしも十分とはいえなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】ポーランド特許第134227号明細書
【非特許文献1】ダリウス ボグダルら、「活性化アザールアロマチック基によるビニルモノマーの合成 相転移触媒によるアプローチ」、シンセチック コミュニケーションズ(Darius Bogdal et al, "SYNTHESIS OF VINYL MONOMERS WITH ACTIVE AZAAROMATIC GROUPS. PHASE-TRANSFER CATALYTIC APPROACH" SYNTHETIC COMMUNICATIONS) 30(18)、pp3341−3352, 2000年発行
【非特許文献2】アーチオム ワイ レベデフら、「アゾール類とフェノチアジンのパラジウム触媒による立体制御されたビニル化」、オーガニック レターズ(Artyom Y. Lebedev et al, "Palladium-Catalyzed Stereocontrolled Vinyllation of Azoles and Phenothiazine" Organic Letters)4(No4),pp623−626, 2002年発行
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、従来の方法の課題を解決し工業的な製法として優れたN−ビニルアゾール類の製造方法を提供することにある。すなわち、従来の課題を解決し、極めて高選択的でかつ経済性に優れた製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、従来の問題点を解決すべく鋭意検討した結果、アゾール類とハロゲン化ビニル類を、触媒としてパラジウム化合物及びリン化合物の存在下に反応させる方法において、塩基として水酸化ナトリウムを用いることで、高収率かつ高選択的にN−ビニルアゾール類が得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は一般式(1)
【0007】
【化1】
【0008】
(式(1)中、R1、R2、R3及びR4は、各々独立して、水素、置換もしくは無置換のアリール基、炭素数1〜10のアルコキシ基、炭素数1〜10のアルキル基、シアノ基又はカルボキシル基を表し、R1とR4または、R2とR3は、互いに結合して炭化水素環を形成してもよい。)
で表されるアゾール類と、一般式(2)
【0009】
【化2】
【0010】
(式(2)中、R5、R6及びR7は、各々独立して、水素、炭素数1〜10のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基又はフッ素を表し、Xは、塩素、臭素又はヨウ素を表す。)で表されるハロゲン化ビニル類とを、触媒としてパラジウム化合物及びリン化合物の存在下反応させ、一般式(3)
【0011】
【化3】
【0012】
(式(3)中、R1、R2、R3、R4、R5、R6及びR7は、前記式(1)及び式(2)における定義と同一である。)
で表されるN−ビニルアゾール類を製造する方法であって、塩基として水酸化ナトリウムを用いる、N−ビニルアゾール類の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0013】
本発明の方法によれば、従来の課題を解決して、N−ビニルアゾール類を極めて高選択的かつ経済的に得ることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の方法において使用されるアゾール類は、上記一般式(1)で表される化合物である。上記一般式(1)において、R1、R2、R3及びR4は、各々独立して、水素、置換もしくは無置換のアリール基、炭素数1〜10のアルコキシ基、炭素数1〜10のアルキル基、シアノ基、カルボキシル基である。
【0015】
式(1)におけるアリール基としては、特に限定されるものではないが、例えば、フェニル基、p−ビフェニル基、m−ビフェニル基、p、p−ターフェニル基、p、m−ターフェニル基、テトラフェニル基、ナフチル基、ベンゾフラニル基、ベンゾチエニル基、アントラセニル基、フルオレニル基、9,9−ジメチルフルオレニル基、9,9−ジフェニルフルオレニル基、カルバゾリル基等が挙げられる。該アリール基は、置換基を有していてもよく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等のアルキル基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等のアルコキシ基、フッ素、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基等が挙げられる。
【0016】
式(1)における炭素数1〜10のアルコキシ基としては、特に限定されるものではないが、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ベンジルオキシ基等が挙げられる。
式(1)における炭素数1〜10のアルキル基としては、特に限定されるものではないが、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、2−メチルプロピル基、n−ペンチル基、sec−ペンチル基、2−メチルブチル基、3−メチルブチル基、2,2−ジメチルプロピル基、1,1−ジメチルプロピル基、1,2−ジメチルプロピル基、n−ヘキシル基、sec−ヘキシル基、2−メチルペンチル基、3−メチルペンチル基、4−メチルペンチル基、1,1−ジメチルブチル基、2,2−ジメチルブチル基、3,3−ジメチルブチル基、1,2−ジメチルブチル基、1,3−ジメチルブチル基、2,3−ジメチルブチル基、1,1,2−トリメチルプロピル基、1,2,2−トリメチルプロピル基、2−エチルヘキシル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ベンジル基等を挙げることができる。また、これらのアルキル基は、任意の位置にシアノ基、フッ素、ニトロ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基等を有してもよい。
【0017】
式(1)中、R1及びR4同士、R2及びR3同士は、互いに結合して炭化水素環を形成してもよい。このように形成される炭化水素環として、例えばフェニレン環を挙げることができる。
本発明の方法において使用されるアゾール類として、具体的には、ピロール、1−(2−シアノエチル)ピロール、エチル1H−ピロール−2−カルボキシラート、3−アセチルピロール、3−ベンゾイルピロール、2−シアノピロール、3−シアノピロール、2−メチルピロール、3−メチルピロール、2−エチルピロール、3−エチル−2,4−ジメチルピロール、インドール、3−インドールアセトニトリル、メチル1H−インドール−3−カルボキシレート、メチルインドール−4−カルボキシレート、2−(トリフルオロメチル)インドール、5−メトキシ−2−メチルインドール、5−メトキシインドール、4−メトキシインドール、7−メトキシインドール、5−ベンジルオキシインドール、4−ベンジルオキシインドール、7−ベンジルオキシインドール、カルバゾール、1,4−ジメチルカルバゾール、3−エチルカルバゾール、6−メチル−1,2,3,4−テトラヒドロカルバゾール、3,6−ジ−t−ブチルカルバゾール、3,6−ジフェニルカルバゾール、2,3−ジメトキシカルバゾール等が例示される。
【0018】
本発明の方法において使用されるハロゲン化ビニル類は、上記一般式(2)で表される化合物である。上記一般式(2)におけるR5、R6及びR7は、各々独立して、水素、炭素数1〜10のアルキル基、置換または無置換のアリール基、フッ素であり、Xは塩素、臭素又はヨウ素である。
該アルキル基としては、特に限定されるものではないが、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、2−メチルプロピル基、n−ペンチル基、sec−ペンチル基、2−メチルブチル基、3−メチルブチル基、2,2−ジメチルプロピル基、1,1−ジメチルプロピル基、1,2−ジメチルプロピル基、n−ヘキシル基、sec−ヘキシル基、2−メチルペンチル基、3−メチルペンチル基、4−メチルペンチル基、1,1−ジメチルブチル基、2,2−ジメチルブチル基、3,3−ジメチルブチル基、1,2−ジメチルブチル基、1,3−ジメチルブチル基、2,3−ジメチルブチル基、1,1,2−トリメチルプロピル基、1,2,2−トリメチルプロピル基、2−エチルヘキシル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ベンジル基等を挙げることができる。
【0019】
該アリール基としては、特に限定されるものではないが、例えば、フェニル基、ビフェニル基、p−ターフェニル基、m−ターフェニル基、テトラフェニル基、ナフチル基、ベンゾフラニル基、ベンゾチエニル基、アントラセニル基、フルオレニル基、9,9−ジメチルフルオレニル基、9,9−ジフェニルフルオレニル基等が挙げられる。該アリール基は、置換基を有していてもよく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等のアルキル基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等のアルコキシ基、フッ素、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基等が挙げられる。
【0020】
本発明の方法において使用されるハロゲン化ビニル類として、具体的には、塩化ビニル、臭化ビニル、ヨウ化ビニル、2−クロロ−1−プロペン、2−ブロモ−1−プロペン、2−ヨウ化−1−プロペン、1−クロロ−1−プロペン、1−ブロモ−1−プロペン、1−ヨウ化−1−プロペン、2−クロロ−2−ブテン、2−ブロモ−2−ブテン、2−ヨウ化―2−ブテン、1−クロロ−2−メチル−1−プロペン、1−ブロモ−2−メチル−1−プロペン、1−ヨウ化−2−メチル−1−プロペン、1,2,2−トリフルオロ−1−エテン、1−フルオロ−1−エテン等が例示される。
【0021】
本発明の方法において、一般式(1)で表されるアゾール類と一般式(2)で表されるハロゲン化ビニル類のモル比は、(1):(2)が1:0.9〜1:10の範囲が好ましく、さらに好ましくは1:1〜1:5である。成分(2)が0.9モル比未満では、転化率が十分でないことがあり、一方10モル比を超えると転化率は一定となり、コスト的に好ましくないことがある。
【0022】
本発明の方法において使用されるパラジウム化合物は、特に限定はなく、均一系、不均一系任意のものが使用可能である。具体例としてパラジム金属、酢酸パラジウム、塩化パラジウム、(CH
3CN)
2PdCl
2、Pd
2(dba)
3、Pd/C、アリルクロロ〔1,3−ビス(2,6−ジ−イソプロピルフェニル)4,5−ジヒドロイミダゾール−2−イリデン〕パラジウム、アリルパラジウムクロリドダイマー、ビス(トリ−t−ブチルホスフィン)パラジウム、パラジウムシアニド、臭化パラジウム、ヨウ化パラジウム、酸化パラジウム等が例示される。
【0023】
また、本発明の方法において使用されるリン系配位子は、特に限定されないが、具体例として、トリフェニルホスフィン、トリ−o−トリルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、2,2‘−ビス(ジ−t−ブチルホスフィノ)−1,1’−ビフェニル、1,1−ビス(ジ−t−ブチルホスフィノ)フェロセン、1,1−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン、1,3−ビス(ジ−t−ブチルホスフィノメチル)ベンゼン、1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン、1,2−ビス(ジシクロヘキシルホスフィノ)エタン、1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン、1,3−ビス(ジシクロヘキシルホスフィノ)プロパン、2,2‘−ビス(ジシクロヘキシルホスフィノ)−1,1’−ビフェニル、2,2‘−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1,1’−ビフェニル、ビス(2−ジフェニルホスフィノフェニル)エーテル、ブチルジ−1−アダマンチルホスフィン、2−(ジ−t−ブチルホスフィノ)ビフェニル、2−ジ−t−ブチルホスフィノ−2‘−(N,N−ジメチルアミノ)ビフェニル、2−(ジシクロヘキシルホスフィノ)ビフェニル、9,9−ジメチル−4,5−ビス(ジ−t−ブチルホスフィノ)ザンテン、9,9−ジメチル−4,5−ビス(ジフェニルホスフィノ)ザンテン、トリ−t−ブチルホスフィン、トリ−t−ブチルホスホニウムテトラフルオロボレート、トリシクロヘキシルホスホニウムテトラフルオロボレート等が例示される。
【0024】
本発明の方法におけるパラジウム化合物の使用量は特に限定されないが、上記一般式(1)で示されるアゾール類に対し、金属パラジウムとして0.1〜10モル%の範囲が好ましく、さらに好ましくは0.5〜5モル%の範囲である。ここで、0.1モル%未満では反応速度が遅くなることがあり、一方、10モル%を超えると、選択性が低下する上、高価な金属を多量に使用するため、経済的に好ましくないことがある。
【0025】
また、リン系配位子の使用量は特に限定されないが、金属パラジウムに対し、0.5〜5倍モル量が好ましく、さらに好ましくは1〜3倍モル量の範囲が選ばれる。ここで、0.5倍モル量未満では、リン系配位子の添加効果が不十分となることがあり、一方、5倍モル量を超えると、添加しても反応の変化は見られず、好ましくないことがある。
本発明の方法は、塩基としてNaOHの存在下で反応が実施される。また、同塩基の形態に特に限定はなく、固体、水溶液いずれも使用可能である。塩基の使用量は特に限定されないが、一般式(1)で表されるアゾール類に対して、1〜5倍モルの範囲が好ましく、さらに好ましくは、1〜2倍モルの範囲である。ここで、1倍モル未満では、反応の転化率が十分でないことがあり、一方、5倍モルを超える使用は、特に反応に影響を与えるわけではなく、経済的に好ましくないことがある。
【0026】
本発明の方法において使用される反応溶媒は特に限定されないが、基質を適度に溶解させる溶媒であれば良く、具体例としては、トルエン、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレン、エチルベンゼン、プロピルベンゼン、ブチルベンゼン、メシチレン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の炭化水素系溶媒、テトラヒドロフラン、シクロペンチルメチルエーテル、1,2−ジメトキシエタン等のエーテル系溶媒が例示され、経済性及び汎用性の高さから、トルエン、キシレンの使用が好ましい。また、溶媒は単独で用いても混合溶媒で用いてもどちらでもよい。
【0027】
反応溶媒の使用量は特に限定されないが、一般式(1)で表されるアゾール類が、1重量%〜30重量%となるよう調製するとよい。
本発明の方法における反応温度は、0℃〜200℃の範囲が好ましく、さらに好ましくは、50℃〜150℃の範囲である。尚、反応時間は、反応転化率が十分に得られるまで継続され、通常、6時間〜30時間の範囲である。
【0028】
本発明の方法における反応圧力に格別の限定はなく、所望の反応温度において、基質が溶解していれば良い。通常反応圧力は、100kPa(大気圧)〜1MPaの範囲である。
本発明の方法における実施形態に格別の限定はなく、任意の反応剤を任意の順番で投入することができる。また、触媒として用いられるパラジウム化合物及びリン系配位子は、予め系外において混合して調製しても良いし、別々に反応系に添加しても良い。
【0029】
反応終了後は、常法に従い反応液に水を加えて生成した塩及び過剰の塩基を溶解処理した後、有機層を分離する。続いて、晶析等により、目的とするN−ビニルアゾール類を得る。本発明で得られるN−ビニルアゾール類は、純度が高く、特別な精製工程を必要とすることなく、次の反応に用いることが可能である。
なお、本方法により製造されたN−ビニルアゾール類は、
1H_NMR、
13C_NMR、質量分析、液体クロマトグラフィー、ガスクロマトグラフィー等によって、その構造を特定することができる。
【実施例】
【0030】
以下に、本発明の方法を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
実施例1
窒素雰囲気で置換した5mlリアクターに、トルエン1ml、カルバゾール50mg(0.3mmol)、塩化ビニル188mg(3mmol)、水酸化ナトリウム18mg(0.45mmol)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム2.7mg(0.003mmol)、トリ−t−ブチルホスホニウムテトラフルオロボレート1.7mg(0.006mmol)を仕込み、撹拌しながら内容物を100℃まで加熱昇温した。昇温後、同温度において10時間の反応熟成を行った。反応終了後、内容物を冷却し、水を加え生成した塩を溶解し分液した。有機層を分取し、これを
1H_NMRで内部標準法により分析した結果、目的物であるN−ビニルカルバゾールが71%の収率で生成していた。
【0031】
なお、
1H_NMRは、重クロロホルム中でJEOL EX-270あるいはJEOL ECA-500 spectrometerを用い、内部標準物質としてトリオキサンあるいはフェナントロリンを用いて収率を算出した。
実施例2〜6
実施例1におけるカルバゾール、塩化ビニル、及び触媒を表1に記載の条件に変更した以外は、実施例1に記載の方法に準じて反応を行った。結果を表1に示す。
【0032】
比較例1〜3
実施例1におけるカルバゾール、塩化ビニル及び塩基を表1に記載の条件に変更した以外は、実施例1に記載の方法に準じて反応を行った。結果を表1に示す。
表1から明らかなように、塩基として水酸化ナトリウムを用いることでN−ビニルアゾール類を極めて高選択的かつ経済的に得ることが可能となった。
【0033】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明の方法により製造されたN−ビニルアゾール類は、有機エレクトロルミネッセンス、電子写真感光体、有機半導体、太陽電池等の機能性化合物の原料モノマーとして有用である。