特開2015-137431(P2015-137431A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特開2015137431-木質繊維板の製造方法 図000004
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-137431(P2015-137431A)
(43)【公開日】2015年7月30日
(54)【発明の名称】木質繊維板の製造方法
(51)【国際特許分類】
   D21J 1/00 20060101AFI20150703BHJP
   D21H 17/52 20060101ALI20150703BHJP
【FI】
   D21J1/00
   D21H17/52
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-8299(P2014-8299)
(22)【出願日】2014年1月21日
(71)【出願人】
【識別番号】000204985
【氏名又は名称】大建工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】長藤 慎介
(72)【発明者】
【氏名】江原 健一
(72)【発明者】
【氏名】武田 哲弥
(72)【発明者】
【氏名】中村 浩也
(72)【発明者】
【氏名】近藤 隼人
【テーマコード(参考)】
4L055
【Fターム(参考)】
4L055AG84
4L055AG85
4L055AG87
4L055AH37
4L055BD05
4L055BD07
4L055BE11
4L055CE71
4L055CF01
4L055CJ01
4L055FA13
4L055GA24
(57)【要約】
【課題】高密度で且つ高強度の木質繊維板を得られるようにする。
【解決手段】水に木質繊維、イソシアネート基を含有する接着剤、及びポリアミドエピクロロヒドリン樹脂を加えてスラリーを調製し、そのスラリーを抄造し、脱水プレスにより脱水して湿潤マットを形成し、その湿潤マットを乾燥する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
湿式抄造法によって木質繊維板を製造する方法であって、
水に木質繊維、イソシアネート基を含有する接着剤、及びポリアミドエピクロロヒドリン樹脂を加えてスラリーを調製する工程と、
前記スラリーを抄造し、脱水プレスにより脱水して湿潤マットを形成する工程と、
前記湿潤マットを乾燥する工程とを備えていることを特徴とする木質繊維板の製造方法。
【請求項2】
前記スラリーを調製する工程において、前記木質繊維を含む水に、前記イソシアネート基を含有する接着剤を加え、それと同時に、又はその後に前記ポリアミドエピクロロヒドリン樹脂を加えることを特徴とする請求項1に記載の木質繊維板の製造方法。
【請求項3】
前記脱水プレスとして、熱を加えないコールドプレスを用いることを特徴とする請求項1又は2に記載の木質繊維板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木質繊維板の製造方法に関し、特に、湿式抄造法による木質繊維板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、建築用下地材等には、木質繊維を主原料とする木質繊維板が用いられている。木質繊維板を製造する方法の一つとして、水に木質繊維と所定の接着剤を加えて撹拌することで得られたスラリーを湿式抄造し、脱水プレスにより脱水して湿潤マットを得た後、それを乾燥させる方法が知られている(湿式抄造法)。
【0003】
しかしながら、上記の方法により木質繊維板を得る場合、脱水プレス後に、得られた湿潤マットにおいて木質繊維の反発力により湿潤マットの厚みが増す、所謂スプリングバックが生じてしまう。スプリングバックが生じると、得られる木質繊維板の厚さが大きくなるため、木質繊維板の密度が低下して、その強度が低下することとなる。スラリーに含まれる接着剤は、通常、乾燥工程における熱により硬化して木質繊維同士を結合するため、脱水プレス後で且つ乾燥前の湿潤マットでは、接着剤の結合力が十分に生じていないので、上記スプリングバックが起こってしまう。
【0004】
脱水プレス時に接着剤の結合力を生じさせてスプリングバックを抑制するために、例えば特許文献1に提示されているように、熱を加えながらプレスするホットプレスを用いて脱水を行うことが考えられる。しかしながら、ホットプレスを行うためには、脱水と熱圧とを同時に行う設備が必要となり、このような設備の取扱は困難である。特に、厳密な圧力制御や温度制御を要することが知られており、生産性が良好でなく、また、圧力及び温度の制御値にぶれがあると、繊維板のパンクが発生するおそれもある。
【0005】
ホットプレスを用いることなく、脱水プレス時に接着剤の結合力を生じさせるための方法は、例えば特許文献2に開示されている。特許文献2に開示された木質繊維板の製造方法では、スラリーに加える接着剤としてイソシアネート基を含有する接着剤(イソシアネート接着剤)を用いている。特許文献2の製造方法では、熱を加える乾燥工程の前に接着剤中のイソシアネート基が木質繊維の水酸基と結合することで、速やかに木質繊維に対して接着力を発揮できるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−107196号公報
【特許文献2】特開2007−138311号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献2の製造方法では、イソシアネート接着剤がスラリー内の木質繊維間に効率良く定着することができず、抄造・脱水工程の際に、その多くが木質繊維間から漏出するという問題が生じる。このため、スラリーに添加されたイソシアネート接着剤の量から期待される結合力を得ることができない。その結果、脱水プレス後に生じるスプリングバックを十分に抑制することができず、木質繊維板の厚みが大きくなってしまい、高密度で且つ高強度の木質繊維板を得ることが困難となる。
【0008】
本発明は、前記の問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、イソシアネート接着剤の接着力を十分に発揮させ、脱水プレス後に生じるスプリングバックを十分に抑制できるようにして、高密度で且つ高強度の木質繊維板を得られるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記の目的を達成するために、本発明者らは、鋭意研究した結果、木質繊維同士を結合するための接着剤としてイソシアネート基を含有する接着剤を用いると共に、その接着剤の結合力を十分に発揮させるためにポリアミドエピクロロヒドリン樹脂を用いることにより、木質繊維板の脱水プレス後のスプリングバックが強く抑制されることを見出して本発明を完成した。
【0010】
すなわち、本発明に係る木質繊維板の製造方法は、湿式抄造法によって木質繊維板を製造する方法であって、水に木質繊維、イソシアネート基を含有する接着剤、及びポリアミドエピクロロヒドリン樹脂を加えてスラリーを調製する工程と、スラリーを抄造し、脱水プレスにより脱水して湿潤マットを形成する工程と、湿潤マットを乾燥する工程とを備えていることを特徴とする。
【0011】
本発明に係る木質繊維板の製造方法によると、スラリーにイソシアネート基を含有する接着剤と共に、分子量が大きいカチオン水溶性高分子であるポリアミドエピクロロヒドリン樹脂を含有させることで、水酸基を有する木質繊維同士の間にポリアミドエピクロロヒドリン樹脂を介在させることができ、これにより、イソシアネート基を含有する接着剤が木質繊維間から漏出するのを防ぎ、該接着剤を木質繊維間に高効率で定着させることができる。このため、イソシアネート基を含有する接着剤は、抄造・脱水工程時に高効率で木質繊維同士を結合することができる。その結果、脱水プレス後の木質繊維の反発力によるスプリングバックが抑制されるため、湿潤マットの厚みを小さいままに維持できる。さらに、乾燥工程において木質繊維が乾燥する前に、100℃以下の低温で硬化する熱硬化性樹脂であるポリアミドエピクロロヒドリン樹脂とイソシアネート基を含有する接着剤を三次元的に架橋結合させることができる。その結果、木質繊維の乾燥工程中に生じるスプリングバックをも強く抑制でき、さらに、上記架橋結合による硬化に伴って、木質繊維板が硬化収縮されるため、高密度で且つ高強度の木質繊維板を得ることができる。
【0012】
本発明に係る木質繊維板の製造方法では、スラリーを調製する工程において、木質繊維を含む水に、イソシアネート基を含有する接着剤を加え、それと同時に、又はその後にポリアミドエピクロロヒドリン樹脂を加えることが好ましい。
【0013】
このようにすると、ポリアミドエピクロロヒドリン樹脂の多くが木質繊維間に介在する前に、イソシアネート基を含有する接着剤を木質繊維間に効率良く入り込ませることが可能となり、その接着剤を物理的に木質繊維間に高効率で留まらせることができる。
【0014】
本発明に係る木質繊維板の製造方法において、脱水プレスとして、熱を加えないコールドプレスを用いることが好ましい。
【0015】
このようにすると、ホットプレスの設備を必要とせず、厳密な温度制御及び圧力制御をする必要がなく、生産性を向上できる。また、ホットプレスを用いると、温度及び圧力の制御値にぶれが生じた場合に、熱圧硬化された木質繊維板の表面と裏面との間の水分が蒸発して生じた高圧の水蒸気により内部パンクが発生するおそれがあるが、コールドプレスを用いることで、このようなパンクの発生を防止できる。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る木質繊維板の製造方法によると、抄造・脱水工程時にイソシアネート接着剤を木質繊維間に高効率で定着させることができて、脱水プレス時に木質繊維同士を十分に結合できるため、脱水プレス後に生じるスプリングバックを十分に抑制できるので、高密度で且つ高強度の木質繊維板を得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施形態に係る木質繊維板の製造方法を示すフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための形態について説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されない。また、本発明の効果を奏する範囲を逸脱しない範囲で、適宜変更は可能である。
【0019】
本発明の実施形態に係る木質繊維板の製造方法は、木質繊維等を含むスラリーを調製する工程と、調製したスラリーを抄造し、脱水プレスにより脱水して湿潤マットを形成する工程と、湿潤マットを乾燥して木質繊維板を得る工程とを有している。
【0020】
スラリー調製工程では、水に木質繊維、イソシアネート基を含有する接着剤(イソシアネート接着剤)、及びポリアミドエピクロロヒドリン(PAE)樹脂を加え、撹拌して木質繊維を主体とするスラリーを調製する。用いられる木質繊維としては、その種類は限定されず、針葉樹又は広葉樹でもよく、建築廃材又はパレット廃材等由来の繊維又はパルプや、麻、亜麻等の植物繊維も利用できる。例えば、用いる木質繊維の繊維長は0.2mm〜20mm程度で、繊維径が1μm〜100μm程度のものを適宜選択して用いることができる。但し、用いる木質繊維としては、繊維長が長く、吸水膨脹が小さくて強度が大きいものが望ましい。このような木質繊維を用いると、繊維長が長いので繊維同士が絡み合った交点、すなわち、交絡点が多くなるので、得られる木質繊維板の曲げ強度を向上できる。さらに、上記交絡点にイソシアネート接着剤が定着することで、得られる木質繊維板の剪断力を増大でき、壁倍率の決定に影響が大きい釘側面抵抗力が大きい木質繊維板を得ることができる。
【0021】
上記イソシアネート接着剤としては、モノメリックMDI(4,4'−ジフェニルメタンジイソシアネート)、ポリメリックMDI、TDI(トリレンジイソシアネート)、XDI(キシリレンジイソシアネート)、HDI(ヘキサメチレンジイソシアネート)、H12MDI(4,4'−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート))、IPDI(イソホロンジイソシアネート)及びそれらの各種ポリオール(低分子量ポリオール類、ポリエーテルポリオール類、ポリエステルポリオール類、ポリカーボネートジオール類、アクリルポリオール類、シリコンポリオール類、2−ヒドロキシエチルアクリレート類)や、二塩基酸(アゼライン酸、アジピン酸、セバチン酸、イソフタル酸、テレフタル酸等)、各種エポキシ樹脂、ひまし油、液状ポリブタジエン、ネオプレン等の活性水素化合物等との反応物、又は各種変性を加えることや各種界面活性剤との混合により水への分散性を向上させたものや、ポットライフを長くするためにイソシアネート基をブロックしたものを含む各種変性品が挙げられ、これらを単独あるいは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0022】
上記PAE樹脂は、ジカルボン酸(例えばアジピン酸)と多価アミン(例えばジエチレントリアミン)との縮合体にエピクロロヒドリンを付加反応させ、一部を架橋させたカチオン性の重合体である。スラリーにカチオン性のPAE樹脂が含まれることで、そのPAE樹脂が水酸基を有する木質繊維間に高効率で介在するので、物理的にイソシアネート接着剤を効率良く木質繊維間に留まらせて定着させることができる。本実施形態において、PAE樹脂におけるジカルボン酸と多価アミンとエピクロロヒドリンとの比率は、イソシアネート接着剤の木質繊維間における定着性向上効果が得られれば、特に限定されるものではないが、通常、ジカルボン酸と多価アミンはモル比で0.8:1〜1:0.8、エピクロルヒドリンはジカルボン酸と多価アミンの縮合物中の2級アミン基に対してモル比で0.01〜0.2の比率で用いられる。分子量は、上記イソシアネート接着剤の木質繊維間における定着性向上効果が得られれば、特に限定されるものではないが、より分子量が高いものを用いることが好ましい。そのようにすると、木質繊維間で長い分子鎖が存在することとなり、上記イソシアネート接着剤が木質繊維間に溜まり易くなり、また、分子サイズが大きいため、スラリーの抄造時に木質繊維間から抜けることを抑制できる。このため、PAE樹脂としては、例えば分子量が50万〜300万の分子量が大きいものを用いることが好ましい。
【0023】
なお、上記スラリーには、木質繊維、イソシアネート接着剤及びPAE樹脂の他に、イソシアネート接着剤の反応を高めて短時間の加熱反応で強固な結合を可能とするために、水以外のイソシアネート基反応性物質を添加し、加熱乾燥工程中で反応させ、ウレタン、ウレア、アミド、ビューレット、アシルウレア、アロファネート等を生成することができる。イソシアネート基反応性物質としては、各種ポリオール(低分子量ポリオール類、ポリエーテルポリオール類、ポリエステルポリオール類、ポリカーボネートジオール類、アクリルポリオール類、シリコンポリオール類等)、一般には各種ポリプロピレングリコール(以下PPGという)(エチレンオキサイド変性PPG、一級OH化PPG、ビスフェノールA変性PPG、ロジン変性PPG等)、各種ポリエチレングリコール、各種ポバール、ポリブタジエンポリオール、水素添加ポリブタジエンポリオール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリエステルポリオール、ひまし油系ポリオール、アクリルポリオール等であり、また、2−ヒドロキシエチルアクリレートやアミノ基をもつ化合物(アクリルアマイド類、尿素化合物類、各種ジアミン類等)や、二塩基酸類(アゼライン酸、アジピン酸、セバチン酸、イソフタル酸、テレフタル酸等)、酢酸ビニール類等のカルボキシル基をもつ化合物や、各種エポキシ樹脂化合物、ひまし油、液状ポリブタジエン、ネオプレン等の活性水素化合物等が挙げられる。また、これらを単独あるいは2種以上を組み合わせて使用することも可能である。
【0024】
なお、スラリー調製工程において、イソシアネート接着剤の反応を促進するため、各種アミン系化合物、オクチル酸鉛等の有機金属化合物等の反応触媒を適宜添加してもよい。但し、触媒は乾燥工程に入る前の反応を極力抑えるために、常温では活性を発現せず、乾燥工程における加熱温度付近で活性を発現する感温性触媒であることが好ましい。また、必要に応じて、サイズ剤、凝集剤、又は消泡剤等の抄造用添加剤を適宜用いても構わない。
【0025】
また、木質繊維を水に加えた後に、イソシアネート接着剤及びPAE樹脂を同時に添加する、又はイソシアネート接着剤を添加した後にPAE樹脂を添加することが好ましい。このようにすると、PAE樹脂の多くが木質繊維間に介在する前に、イソシアネート接着剤を木質繊維間に効率良く入り込ませることが可能となり、イソシアネート接着剤を物理的に木質繊維間に高効率で留まらせることができる。
【0026】
上記のようにしてスラリーを調製した後に、スラリーに対して通常の長網式又は丸網式の抄造機を用いて抄造し、得られた生成物を脱水プレスにより所定の圧力で圧搾して脱水することで湿潤マットを作製する。この工程において、木質繊維間に定着されたイソシアネート接着剤のイソシアネート基と木質繊維の水酸基とが反応して結合する。このため、脱水プレス後の木質繊維の反発力によるスプリングバックが抑制されるので、湿潤マットの厚みを小さいままに維持できる。その結果、後に乾燥して得られる木質繊維板の厚みも小さくできるため、高密度で且つ高強度の木質繊維板を得ることができる。
【0027】
なお、本工程で用いられる脱水プレスとしては、所定の圧力で圧搾することにより脱水できるものであれば特に限定されず、例えば、一般に用いられる平板プレスやロールプレス等を用いることができる。但し、生産性の向上や熱圧による内部パンクの防止の観点から、熱を加えないコールドプレスを用いることが好ましい。
【0028】
次に、乾燥機等を用いて上記湿潤マットを100℃〜250℃程度で乾燥する。この工程において、木質繊維が十分に乾燥する前に、まず、100℃以下の低温の硬化温度を有する熱硬化性樹脂であるPAE樹脂とイソシアネート接着剤とが三次元的に架橋結合する。これにより、木質繊維のスプリングバックを抑制できて、得られる木質繊維板の低密度化を抑制できると共に、接着剤及びPAE樹脂による硬化収縮が促進されて木質繊維板を高密度化することができる。その結果、高密度で且つ高強度の木質繊維板を得ることができる。
【実施例】
【0029】
以下に、本発明に係る木質繊維板の製造方法について詳細に説明するための実施例を示す。本実施例では、上記イソシアネート接着剤とPAE樹脂とを用いて製造した木質繊維板の種々の性能を測定した。
【0030】
具体的に、実施例1の木質繊維板の材料として、木質繊維と古紙とが9:1の割合で含まれる木質由来繊維100重量部に対して、2.5重量部のイソシアネート接着剤、1重量部のPAE樹脂、7重量部のスターチ、8重量部の粉末フェノール、0.5重量部の凝集剤、1重量部のサイズ剤を用いた。具体的に、ここでは、イソシアネート接着剤としてポリメリックMDIのMS450S(日本ポリウレタン工業株式会社製)を用い、PAE樹脂としてWS4030(星光PMC株式会社製)を用いた。スターチとして1000Y(日本コーンスターチ株式会社製)、粉末フェノールとして481L(昭和高分子株式会社製)、凝集剤として硫酸バンドのAHS−T(浅田化学工業株式会社製)、サイズ剤として固形パラフィンの水性エマルジョンのEMUSTAR−0430(日本精蝋株式会社製)を用いた。これらを含むスラリーを調製し、上記の方法に従って木質繊維板を作製した。なお、実施例1では546g/枚(サイズを360mm×360mm×10mmとし、比重を0.4g/cmとし、但し歩留まりを0.95として考慮した。)を基準として設定した。すなわち、比重が0.4g/cmで厚みが10mmの木質繊維板を得ることを狙って、上記材料の仕込み量を設定した。また、湿潤マットの脱水のためのプレスは、熱を加えることなく、平板プレスにて10kgf/cmで1.5min、その後、20kgf/cmで1.5minの条件で行った。
【0031】
また、比較例として上記イソシアネート接着剤及びPAE樹脂を共に用いない、又はどちらか一方のみを用いて木質繊維板を製造した。具体的に、比較例1では、実施例1の材料からPAE樹脂を除いた。比較例2では、実施例1の材料からイソシアネート接着剤を除いた。比較例3では、実施例1の材料からイソシアネート接着剤及びPAE樹脂を除き、PAE樹脂と同様にカチオン性液体フェノールを10重量部加えた。比較例4では、実施例1の材料からPAE樹脂を除き、10重量部のカチオン性液体フェノールを加えた。比較例5では、実施例1の材料からイソシアネート接着剤を除き、10重量部のカチオン性液体フェノールを加えた。比較例6では、実施例1の材料からイソシアネート接着剤及びPAE樹脂を除いた。比較例1〜6と実施例1とにおける上記木質由来繊維の量は同一とした。
【0032】
実施例1及び比較例1〜6において、それぞれ上記材料を含むスラリーの調製及び抄造を行い、脱水プレス後の湿潤マットの厚み及び含水率を測定し、また、乾燥工程後の木質繊維板の厚み、密度、曲げ強度(MOR)、曲げ破壊荷重(曲げBL)及び釘側面抵抗を測定した。
【0033】
なお、脱水プレス後の湿潤マットの厚み及び含水率、並びに乾燥工程後の木質繊維板の厚み、密度、曲げ強度(MOR)及び曲げ破壊荷重(曲げBL)はJIS A5905に準じて測定し、木質繊維板の釘側面抵抗はASTM D 1037に準じて測定した。それらの結果を表1に示す。
【0034】
【表1】
【0035】
表1に示すように、実施例1と比較例1〜6とを比較すると、脱水後の厚み及び乾燥後の厚みは実施例1の方が小さく、乾燥後の密度は実施例1の方が大きかった。これは、実施例1では、イソシアネート接着剤及びPAE樹脂が含有されているため、製造工程においてスラリー中の表面に水酸基を有する木質繊維間にカチオン性のPAE樹脂が介在するので、イソシアネート接着剤が木質繊維間に高効率で定着できるようになる。その結果、脱水プレス後の木質繊維の反発力によるスプリングバックが抑制されるため、厚みが小さいままで維持される。また、実施例1の木質繊維板では、乾燥工程において、熱によりイソシアネート接着剤とPAE樹脂との架橋反応が進み、硬化収縮が促進する。それらの結果、実施例1の木質繊維板では、比較例1〜6の木質繊維板よりも厚みを小さく、高密度にすることができる。
【0036】
また、表1に示すように、実施例1の木質繊維板は、比較例1〜6の木質繊維板と比較して曲げ強度、曲げ破壊荷重及び釘側面抵抗が高い。これは、上記のように実施例1の木質繊維板が比較例1〜6の木質繊維板と比較して高密度に形成されているため高強度であるからと考えられる。以上の結果から、実施例1の木質繊維板は、木質繊維を同一量含む比較例1〜6の木質繊維板よりも、高密度で且つ高強度であることが認められる。
【0037】
以上の通り、本発明に係る木質繊維板の製造方法によると、イソシアネート接着剤の結合力を十分に発揮させることが可能となり、高密度で且つ高強度の木質繊維板を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明に係る木質繊維板の製造方法は、高密度で且つ高強度の木質繊維板を製造することができ、汎用性が高い建築用下地材等の製造に有用である。
図1