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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-137433(P2015-137433A)
(43)【公開日】2015年7月30日
(54)【発明の名称】衛生薄葉紙
(51)【国際特許分類】
   D21H 21/28 20060101AFI20150703BHJP
   A47K 10/16 20060101ALI20150703BHJP
   A47K 7/00 20060101ALI20150703BHJP
   D21H 19/10 20060101ALI20150703BHJP
   D21H 27/00 20060101ALI20150703BHJP
【FI】
   D21H21/28 A
   A47K10/16 C
   A47K7/00 B
   D21H19/10 C
   D21H27/00 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-9000(P2014-9000)
(22)【出願日】2014年1月21日
(71)【出願人】
【識別番号】000183462
【氏名又は名称】日本製紙クレシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100144048
【弁理士】
【氏名又は名称】坂本 智弘
(74)【代理人】
【識別番号】100186679
【弁理士】
【氏名又は名称】矢田 歩
(74)【代理人】
【識別番号】100189186
【弁理士】
【氏名又は名称】大石 敏弘
(72)【発明者】
【氏名】大岡 康伸
(72)【発明者】
【氏名】大篭 幸治
【テーマコード(参考)】
2D034
4L055
【Fターム(参考)】
2D034AB00
4L055AF09
4L055AG34
4L055AG80
4L055AH03
4L055AH09
4L055EA07
4L055EA08
4L055EA14
4L055EA32
4L055EA34
4L055FA16
4L055GA29
(57)【要約】
【課題】柔らかく、濃厚な色調でありながら、製造過程において白水が汚れにくい衛生薄葉紙を提供する。
【解決手段】着色された衛生薄葉紙であって、着色剤と、定着剤と、ローション薬液とを含有し、0.05以上2.00以下の着色剤の有姿換算による添加率に対する定着剤の添加率を有し、L*a*b*表色系において、60以上96以下のL*値を、少なくとも一方が絶対値3以上のa*値またはb*値と、を有することを特徴とする衛生薄葉紙により解決される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
着色された衛生薄葉紙であって、
着色剤と、定着剤と、ローション薬液とを含有し、
0.05以上2.00以下の前記着色剤の有姿換算による添加率に対する前記定着剤の添加率を有し、
L*a*b*表色系において、60以上96以下のL*値を、
少なくとも一方が絶対値3以上のa*値またはb*値と、を有することを特徴とする衛生薄葉紙。
【請求項2】
前記定着剤の添加率が0.005質量%以上0.400質量%以下であることを特徴とする請求項1に記載の衛生薄葉紙。
【請求項3】
前記着色剤が染料を含有し、前記染料の有姿換算による添加率が0.02質量%以上0.40質量%以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の衛生薄葉紙。
【請求項4】
前記ローション薬液の塗工率が4質量%以上40質量%以下であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の衛生薄葉紙。
【請求項5】
50以上2000以下の前記定着剤の添加率に対する前記ローション薬液の塗工率を有することを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の衛生薄葉紙。
【請求項6】
10g/m以上25g/m以下の坪量を有することを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載の衛生薄葉紙。
【請求項7】
50μmm以上100μm以下の紙厚を有することを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1項に記載の衛生薄葉紙。
【請求項8】
乾燥時の縦方向の引張り強度DMDTと、乾燥時の横方向の引張り強度DCDTの積の平方根であるDGMT=(DMDT×DCDT)1/2が1.0N/25mm以上2.4N/25mm以下であることを特徴とする請求項1ないし7のいずれか1項に記載の衛生薄葉紙。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衛生薄葉紙に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、トイレットペーパーやフェイシャルティシュ等のティシューペーパー、紙タオル、ハンドタオルといった衛生薄葉紙は、高級感を付与するために、濃色に色調を調整することが多い。衛生薄葉紙に所望の色調で着色する場合、原料であるパルプスラリー中に染料や顔料のような着色剤を添加し、衛生薄葉紙に内添する方法が行われている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
抄紙工程において、着色されたパルプスラリーは、ワイヤー上に薄く均一に噴射され、徐々に脱水されて紙の層を形成していく(例えば、特許文献2、図1参照)。そして、定着しなかった着色剤は白水中に流出し、抄紙機の汚染や、排水処理の負荷となっていた。特に、濃色に色調を調整しようとすると、着色剤の添加量が増大することにより、上記のような問題が悪化していた。したがって、着色剤のパルプ繊維への定着性を高めるために、一般的に、パルプスラリーには定着剤を添加することが行われている(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平05−044187号公報
【特許文献2】特開2003−310476号公報
【特許文献3】特開2006−183169号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、パルプ繊維への定着性を高めようとして定着剤を使用すると、白水が汚れにくくなる一方、衛生薄葉紙が硬くなりやすく、柔らかさが劣ることが分かった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで、本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、柔らかく、濃厚な色調でありながら、製造過程において白水が汚れにくい衛生薄葉紙を提供することにある。
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は、以下の構成によって把握される。
(1)本発明の衛生薄葉紙は、着色された衛生薄葉紙であって、着色剤と、定着剤と、ローション薬液とを含有し、0.05以上2.00以下の着色剤の有姿換算による添加率に対する定着剤の添加率を有し、L*a*b*表色系において、60以上96以下のL*値を、少なくとも一方が絶対値3以上のa*値またはb*値と、を有することを特徴とする。
【0008】
(2)上記(1)の態様において、定着剤の添加率が0.005質量%以上0.400質量%以下であってもよい。
【0009】
(3)上記(1)または(2)の態様において、着色剤が染料を含有し、染料の有姿換算による添加率が0.02質量%以上0.40質量%以下であってもよい。
【0010】
(4)上記(1)ないし(3)のいずれかの態様において、ローション薬液の塗工率が4質量%以上40質量%以下であってもよい。
【0011】
(5)上記(1)ないし(4)のいずれかの態様において、50以上2000以下の定着剤の添加率に対するローション薬液の塗工率を有してもよい。
【0012】
(6)上記(1)ないし(5)のいずれかの態様において、10g/m以上25g/m以下の坪量を有してもよい。
【0013】
(7)上記(1)ないし(6)のいずれかの態様において、50μm以上100μm以下の紙厚を有してもよい。
【0014】
(8)上記(1)ないし(7)のいずれかの態様において、乾燥時の縦方向の引張り強度DMDTと、乾燥時の横方向の引張り強度DCDTの積の平方根であるDGMT=(DMDT×DCDT)1/2が1.0N/25mm以上2.4N/25mm以下であってもよい。
【発明の効果】
【0015】
この発明によれば、柔らかく、濃厚な色調でありながら、製造過程において白水が汚れにくい衛生薄葉紙を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための形態(以下、実施形態)について詳細に説明する。なお、衛生薄葉紙のウェブ及びその製品の抄紙の流れ方向を「縦方向」とし、流れ方向に直角な方向を「横方向」とする。
【0017】
衛生薄葉紙としては、例えば、ティシューペーパー、トイレットペーパー、ペーパータオル、キッチンタオル、ワイパー、ハンドタオルをあげることができる。このなかでも、高級品として採用されることが多いことから、ティシューペーパーが好ましい。
【0018】
衛生薄葉紙の原料パルプとしては、木材由来のパルプとして、針葉樹パルプ(NBKP)、広葉樹パルプ(LBKP)があげられ、古紙パルプとして、ミルクカートンセカンダリーファイバー(MSF)、デインキングパルプ(DIP)等があげられる。また、アバカ、サイザル麻、わらパルプ、竹パルプ、ケナフパルプ等の非木材パルプが含まれていてもよい。特に、ハンドフィールを重視する場合は、繊維粗度が比較的低いパルプを用いることが好ましい。
【0019】
本発明の実施形態に係る衛生薄葉紙は、着色剤と、定着剤と、ローション薬液を含有し、その含有量を上記範囲に規定することにより、見た目の高級感、柔らかさ、白水の低汚染性を共に満たすことができる。
【0020】
(着色剤)
着色剤としては、特に制限はなく、一般的に繊維・紙の着色に用いられる直接染料、カチオン染料、塩基性染料、酸性染料等の染料、天然色素、食用色素、染料ベースもしくは顔料ベースのインキ等をあげることができる。これらの中でも、衛生薄葉紙のリサイクル性や発色の均質性から、水溶性である染料を使用することが好ましい。なお、着色剤は、単独でも使用し得るが、2種類以上を混合して使用してもよい。
【0021】
直接染料としては、例えば、アニオン性直接染料、カチオン性直接染料等があげられる。なかでも、脱墨古紙パルプに対する染着性、着色コスト及び色落ちを抑制する効果が大きいことから、アニオン性直接染料がより好ましい。
【0022】
カチオン染料は、第四アンモニウム化合物型のカチオンとしてパルプ中の酸性基と結合して染着するものであり、例えば、ポリメチン系、アゾ系、アザメチン系、アントラキノン系をあげることができる。
【0023】
顔料ベースのインキとしては、例えば、無機顔料、有機顔料及びレーキ顔料のインキをあげることができる。脱墨古紙パルプへの定着性の観点から、無機顔料のインキを用いることが好ましい。
【0024】
また、着色剤が染料の場合、有姿換算による添加率を0.02質量%以上0.40質量%以下とすることが好ましく、0.02質量%以上0.15質量%以下とすることがより好ましく、0.04質量%以上0.15質量%以下とすることがさらに好ましい。なお、有姿とは、水分を含む質量をいう。例えば、3質量%のパルプ原料100gに対して、着色剤を1g添加した場合、有姿換算の添加率は、以下の計算によって求められる。
有姿換算による添加率(%)=100×着色剤 1g/(パルプ原料 100g×濃度3質量%)=33%
なお、着色剤は、水で希釈して添加しても良い。例えば、水で2倍に希釈した場合、添加量(g)を2倍にすれば、添加率(%)は同じ値となる。
【0025】
(定着剤)
着色剤の定着性を向上させるために、原料パルプに定着剤が添加される。定着剤として、一般的に繊維・紙の着色剤に対する定着剤として用いられるものであれば特に限定せず、例えば、着色剤が染料の場合、2級アミン、3級アミン、4級アンモニウム塩等のカチオン性物質、カチオン化澱粉、カチオン性ポリマー等があげられる。これらの定着剤は、染料中のスルホン酸基、カルボキシル基、アミノ基などと不溶な塩を形成して染料を捕獲し、色彩性の向上や、不溶な塩の形成による染料の流れ出しや滲み出しを抑制し、耐水性を向上させる。カチオン性ポリマーの分子量は10万以上200万以下が好ましく、10万以上100万以下がより好ましく、30万以上70万以下がさらに好ましい。10万未満では、ポリマーの繊維への定着性が劣る。一方、200万を超すと、ポリマーの粘度が上昇し、ハンドリングが悪化する。また、カチオン性ポリマーの電荷密度は、1以上10以下meq/gが好ましく、2以上8以下meq/gがより好ましく、2以上5以下meq/gがさらに好ましい。1meq/g未満では、染料の定着性が劣る。一方、10meq/g以上では、定着剤の安定性が劣る。カチオン性ポリマーとしては、ポリビニルアミン、ポリDADMAC(ジアリルジメチルアンモニウムクロライド)、ポリアミン系縮合物等があげられるが、ポリアミン系縮合物が好ましい。なお、硫酸バンドも定着剤として使用されることがあるが、抄紙pHや湿紙ウェブを乾燥するヤンキードライヤーのコーティングに影響を与える場合があるので、添加しないことが好ましい。
【0026】
また、着色剤が顔料の場合、定着剤としては、シリカ、4級アンモニウム塩、ピリジウム塩、ジシアンジアミド・ホルムアルデヒド縮合物、ポリアクリルアミドを除くポリアミドアミン系化合物等をあげることができる。なお、定着剤は、単独でも使用し得るが、2種類以上を混合して使用してもよい。
【0027】
定着剤は、添加率を0.005質量%以上0.400質量%以下とすることが好ましく、0.02質量%以上0.15質量%以下とすることがより好ましい。例えば、3質量%のパルプ原料100gに対して、固形分濃度50%の定着剤を1g添加した場合、定着剤の添加率は、以下の計算によって求められる。
添加率(%)=100×定着剤 1g×濃度50質量%/(パルプ原料 100g×濃度3質量%)=17%
なお、定着剤は、水で希釈して添加しても良い。例えば、水で2倍に希釈した場合、添加量(g)を2倍にすれば、添加率(%)は同じ値となる。
【0028】
本発明の実施形態に係る衛生薄葉紙において、着色剤の有姿換算による添加率に対する定着剤の添加率は、0.05以上2.00以下であり、0.05以上1.00以下がより好ましく、0.20以上0.60以下がさらに好ましい。0.05未満では、白水の入れ替え頻度や抄紙機の洗浄回数が増加したり、廃水処理の負荷が大きくなったりする。一方、2.00を超すと、衛生薄葉紙の柔らかさが低下する。着色剤と定着剤のパルプ原料への添加順番としては、まず、定着剤を添加し、次に着色剤を添加することが好ましい。この添加順であれば、定着剤であるカチオン性ポリマーが繊維に定着し、着色剤である染料がカチオン性ポリマーを介して繊維に定着しやすくなる。
【0029】
(ローション薬液)
ローション薬液は、衛生薄葉紙に柔軟性や滑らかさを付与するために用いられるものであれば特に制限はなく、その含有成分は、公知の成分、例えば、シリコーンオイル、グリセリン等の多価アルコールを含有する保湿剤、アロエエキス等の天然保湿成分、第四級アンモニウム塩等の柔軟剤、乳化剤、界面活性剤、抗酸化剤、流動パラフィン、鉱物油、ワックス等を配合したものがあげられる。衛生薄葉紙の基材にローション薬液を塗布、含浸又はスプレー等することにより、これらの成分を担持することができる。
【0030】
ローション薬液の塗工方法は、一般に使用する方法であれば特に限定せず、インクジェット印刷、フレキソ印刷、グラビア印刷、ロール塗布、スプレー塗布をあげることができる。また、シートの片面のみにローション薬液を塗布しても、両面に塗布しても、片面に塗布してもう一方の片面に浸透させてもよい。
【0031】
原料パルプに対して着色剤、定着剤等を添加した原料を抄紙機にて抄造し、抄紙機で巻き取られた原紙をインターフォルダで積層する前に、ローション薬液を塗布することが好ましい。インターフォルダとしては、例えば、マルチスタンド式インターフォルダ(MF)や、ロータリー式インターフォルダ(IF)があげられる。
【0032】
ローション薬液の塗工率は、水分を除く含有成分として、原紙質量当たり4質量%以上40質量%以下が好ましく、10質量%以上30質量%以下がより好ましい。4質量%未満では、ローション薬液を担持した衛生薄葉紙としてのしっとり感が得られない。一方、40質量%を超すと、衛生薄葉紙の強度が弱くなって、使用時に破れたり、操業時に断紙が発生しやすくなったりする場合がある。なお、ローション薬液の塗工率(%)は、薬液中に含まれる水分以外の成分の塗工量(重量)から計算する。例えば、薬液の水分以外の成分の濃度が80%であり、原紙1.0g当たりの薬液の水分を含む塗工量(重量)が0.15gの場合、薬液の水分以外の成分の塗工量(重量)は0.12gとなり、薬液の水分以外の成分の塗工率(%)は12%となる。
【0033】
また、本発明の実施形態に係る衛生薄葉紙において、定着剤の添加率に対するローション薬液の塗工率は、50以上2000以下が好ましく、200以上800以下がより好ましい。50未満であると、定着剤過多により、ローション薬液の効果が減少する。一方、2000を超えると、ローション薬液を塗布する際の操業性が劣る場合がある。
【0034】
(色)
L*a*b*表色系とは、1976年に国際照明委員会(CIE)で規格化され、JIS Z7829(ISO 2470)に規定する表色系である。L*値は、明度を示し、0になると黒、100になると白を示す。また、a*値及びb*値は、クロマネティクス指数を示し、a*値は、正の値が赤、負の値が補色の緑を示し、b*値は、正の値が黄色、負の値が補色の青を示し、それぞれの絶対値が大きいほど強い色(彩度が高い)となる。L*a*b*表色系において、衛生薄葉紙のL*値は、60以上96以下が好ましく、70以上96以下がより好ましく、78以上96以下がさらに好ましい。また、a*値あるいはb*値の少なくとも一方の値が絶対値で3以上が好ましく、絶対値で3以上30以下がより好ましく、絶対値で5以上20以下がさらに好ましい。衛生薄葉紙のL*a*b*表色系におけるL*値、a*値、b*値が上記範囲に有することにより、衛生薄葉紙は、明度が高く、濃色の色調を示し、高級感のある外観となる。L*値、a*値及びb*値は、例えば、村上色彩技術研究所社製の分光測色計CMS−35SPXを用いて測定することができる。
【0035】
(紙厚)
衛生薄葉紙のシート1枚当たりの厚さは、50μm以上100μm以下であり、好ましくは55μm以上90μm以下である。シート1枚当りの紙厚が50μm未満の場合、しなやかさが向上するものの、剛性が低く、ボリューム感が乏しくなり、吸水時の保水能力も低くなる。一方、シート1枚当りの紙厚が100μmを超えると、剛性が高くなり、ゴワツキ感が生じる。
【0036】
紙厚は、JIS P 8111(1998)の温湿度条件下(23±1℃、50±2%相対湿度)において、シックネスゲージ(例えば、尾崎製作所製のダイヤルシックネスゲージ「PEACOCK」)を用いて測定した。紙厚の測定条件は、測定荷重250gf、測定子直径29mmで、測定子と測定台の間に試料を置き、測定子を1秒間に1mm以下の速度で下ろしたときのゲージを読み取った。なお、1回の測定は試料である衛生薄葉紙を10枚重ねて行い、1枚当たりの紙厚に換算した。紙厚は、この測定を10回繰り返して得られる平均値とした。
【0037】
(坪量)
衛生薄葉紙の1プライ当たりの坪量は、JIS P 8124に基づいて測定され、10g/m以上25g/m以下が好ましく、12g/m以上20g/m以下がより好ましい。坪量が10g/m未満であるとシートの剛性が低くなり、所望する強度とならない。一方、坪量が25g/mを超えると紙質が硬く柔らかさに劣る。
【0038】
(比容積)
比容積とは、密度(緊度)の逆数をいう。すなわち、比容積とは一定質量に対する容積のことで、嵩ともいわれ、体積や厚み、高さなど嵩張り状態の目安となり、次式で求められる。
比容積(cm/g)=厚さ(μm)/坪量(g/m
衛生薄葉紙の比容積は、3.7cm/g以上6.0cm/g以下が好ましく、3.7cm/g以上5.5cm/g以下がさらに好ましい。比容積が3.7cm/g未満であると、吸水性と柔らかさが乏しくなる。一方、比容積が5.5cm/gを超えると、平滑性が劣り、触感が悪くなる。
【0039】
(乾燥引張り強度)
衛生薄葉紙の乾燥引張り強度は、JIS P 8113の引張試験方法に基づいて製品プライ数のまま測定される。縦方向の乾燥引張り強度DMDT(Dry Machine Direction Tensile strength)は、2.2N/25mm以上4.2N/25mm以下が好ましく、2.5N/25mm以上3.8N/25mm以下がより好ましい。また、横方向の乾燥引張り強度をDCDT(Dry Cross Direction Tensile strength)は、0.50N/25mm以上1.40N/25mm以下が好ましく、0.70N/25mm以上1.10N/25mm以下がより好ましい。
【0040】
また、衛生薄葉紙の乾燥時の縦方向の引張り強度DMDTと、乾燥時の横方向の引張り強度DCDTの積の平方根であるDGMT(Dry Geometric Mean Tensile strength)=(DMDT×DCDT)1/2は、1.0N/25mm以上2.4N/25mm以下が好ましく、1.3N/25mm以上2.0N/25mm以下がより好ましい。衛生薄葉紙のDGMTが1.0N/25mm未満であると、破れ易くて実用に適さない。一方、DGMTが2.4N/25mmを超えると衛生薄葉紙が硬くなり、柔らかさが損なわれる。
【0041】
衛生薄葉紙を折り畳み、積層する方法としては、特に限定はなく、例えば、前述のマルチスタンド式インターフォルダ(MF)や、ロータリー式インターフォルダ(IF)等があげられる。インターフォルダを使用することで、複数の連続する衛生薄葉紙を折り畳みながら積層し、所定の長さに切断してポップアップ式の衛生薄葉紙積層体を製造し、この衛生薄葉紙積層体を収納箱の内部に収納することにより衛生薄葉紙収納体とすることができる。本発明の衛生薄葉紙は、ローション薬液を塗布しながらも、適切な強度範囲にしていることから、マルチスタンド式インターフォルダやロータリー式インターフォルダによる衛生薄葉紙の積層体の製造方法を採用しても、生産性を維持することができる。また、ティシューを収納箱から引き出すときに破れにくいことから、品質面も良好である。
【実施例】
【0042】
以下、実施例及び比較例をあげて、本発明を具体的に説明する。また、特に断らない限り、以下に記載する「部」及び「%」は、それぞれ「質量部」及び「質量%」を示す。
【0043】
(実施例1)
実施例1において、パルプ繊維が分散されたパルプ分散液(パルプ原料)に対して、定着剤(ポリアミン系縮合物)を添加率0.035%の割合で添加した。着色剤としてアニオン性直接染料を選択し、有姿換算による添加率0.10%の割合で添加して、原紙を抄紙した。次いで、得られた原紙に対して、ローション薬液(グリセリン84%、アミノ変性シリコーンエマルション1%、水15%)を塗工率が原紙質量当たり15%の割合となるよう、表裏面に印刷機を用いて塗工し、マルチスタンド式インターフォルダ(MF)を使用して色つきローションティシューを製造した。この色つきローションティシューに対する物性(紙質、色)、操業性、及び官能試験の結果を表1に示す。
【0044】
(実施例2〜11、比較例1〜5)
実施例2〜11、比較例1〜3は、抄紙・製造条件を表1のとおりとし、実施例1と同様に調整し、得られた色つきローションティシューを評価した。実施例6、7、10及び11は、ロータリー式インターフォルダ(IF)を使用し、色つきローションティシューを製造した。なお、比較例4及び5は、着色されていないローションティシューの市販品である。実施例2〜11の物性及び官能試験の結果を表1に、比較例1〜5の物性及び官能試験の結果を表2に示す。
【0045】
本実施例及び比較例における物性、測定方法、試験方法及び評価方法については、下記のとおりである。
(測定条件)
坪量、厚さ、乾燥引張強度、色(L*値、a*値、b*値)は、JIS P 8111に規定される温湿度条件下(23±1℃、50±2%RH)で平衡状態に保持後に行った。
【0046】
(坪量)
坪量は、JIS P 8124の規定に準拠して測定し、シート1枚当たりに換算した。
【0047】
(紙厚)
紙厚は、シックネスゲージ(尾崎製作所ダイヤルシックネスゲージ「PEACOCK」)を用いて測定した。紙厚の測定条件は、測定荷重250gf、測定子直径29mmで、測定子と測定台の間に試料を置き、測定子を1秒間に1mm以下の速度で下ろしたときのゲージを読み取った。なお、1回の測定は試料を10枚重ねて行い、1枚当たりの紙厚に換算した。紙厚は、測定を10回繰り返して得られる平均値とした。
【0048】
(比容積)
比容積は、シート1枚当たりの厚さをシート1枚当たりの坪量で割り、単位g当たりの容積cmで表した。
【0049】
(乾燥引張り強度)
乾燥時の縦方向の引張り強度DMDTと、乾燥時の横方向の引張り強度DCDTは、JIS P 8113の規定に準拠して、製品プライ数のまま測定した。またこの測定結果に基づいて、DMDTと、DCDTの積の平方根であるDGMT=(DMDT×DCDT)1/2を算出した。
【0050】
(L*値、a*値、b*値)
ISO 2470(JIS P 8150)により規定されるL*値、a*値及びb*値は、村上色彩技術研究所社製の分光測色計CMS−35SPXを用いて、色つきローションティシューを測定した。
【0051】
(官能評価)
見た目の高級感及び柔らかさについて、モニター20人による官能評価にて行った。なお、評価基準は次のとおりとした。
5点:大変良好である、4点:良好である、3点:実用上問題ない、2点:劣る、1点:顕著に劣る
【0052】
また、白水の汚れについては、抄紙者による官能評価にて行った。なお、評価基準は次のとおりとした。
5点:汚れが極めて少ない、4点:汚れが少ない、3点:実用上問題ない、2点:汚れる、1点:顕著に汚れる
【0053】
ローション薬液塗工時の操業性については、製造者による官能評価にて行った。なお、評価基準は次のとおりとした。
5点:断紙が全く発生しない、4点:断紙はほとんど発生しない、3点:断紙は発生するが、実用上問題ない、2点:断紙が発生しやすい、1点:断紙の発生が顕著に多い
【0054】
【表1】
【0055】
【表2】
【0056】
表1に示す結果から明らかなとおり、実施例1〜11の衛生薄葉紙は、見た目の高級感、柔らかさが良好であり、白水の汚れが少なく、塗工時の操業性に優れていた。特に、実施例1〜4、6及び10は、見た目の高級感、柔らかさ、白水の汚れ、塗工時の操業性がすべて高い評価を示した。
【0057】
また、表2に示すとおり、L*a*b*表色系において、絶対値3未満のa*値とb*値を有し、着色剤の有姿換算による添加率に対する定着剤の添加率が50である比較例1は、見た目の高級感及び柔らかさが低評価となった。
【0058】
ローション薬液を塗工せず、着色剤の有姿換算による添加率に対する定着剤の添加率が0.08である比較例2は、柔らかさに欠け、白水の汚れが目立つこととなった。
【0059】
定着剤を添加しなかった比較例3は、着色剤が原料パルプから流出しやすく、濃厚な色調にしようとするためには、着色剤の添加量が増え、いっそう白水の汚れが目立つこととなった。
【0060】
着色していない市販品のティシューである比較例4及び5は、見た目の高級感に欠け、柔らかさも低い評価となった。
【0061】
以上、実施形態を用いて本発明を説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されないことは言うまでもない。上記実施形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。またその様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。