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特開2015-137498トンネル掘削機およびトンネル掘削工法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-137498(P2015-137498A)
(43)【公開日】2015年7月30日
(54)【発明の名称】トンネル掘削機およびトンネル掘削工法
(51)【国際特許分類】
   E21D 9/06 20060101AFI20150703BHJP
【FI】
   E21D9/06 301E
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-10069(P2014-10069)
(22)【出願日】2014年1月23日
(71)【出願人】
【識別番号】309036221
【氏名又は名称】三菱重工メカトロシステムズ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000228811
【氏名又は名称】日本シビックコンサルタント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078499
【弁理士】
【氏名又は名称】光石 俊郎
(74)【代理人】
【識別番号】230112449
【弁護士】
【氏名又は名称】光石 春平
(74)【代理人】
【識別番号】100102945
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 康幸
(74)【代理人】
【識別番号】100120673
【弁理士】
【氏名又は名称】松元 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100182224
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 哲三
(72)【発明者】
【氏名】杉山 雅彦
(72)【発明者】
【氏名】保苅 実
(72)【発明者】
【氏名】田家 学
【テーマコード(参考)】
2D054
【Fターム(参考)】
2D054AC01
2D054EA07
2D054FA06
(57)【要約】
【課題】地盤から到達立坑への浸水を防止すると共に、セグメントを到達立坑の側壁まで、すなわち、トンネルの全長に亘って容易に組み付けることができるようにする。
【解決手段】円筒形状のスキンプレート10と、前記スキンプレート10を前進させる推進手段30と、トンネル100の内周面にセグメントSを組み付けるエレクタ装置40とを備えたトンネル掘削機1において、前記スキンプレート10を、外側スキンプレート10aと内側スキンプレート10bとから成る二重構造とし、前記外側スキンプレート10aと前記内側スキンプレート10bとが互いに軸方向へ移動することができない結合状態と、前記外側スキンプレート10aと前記内側スキンプレート10bとが互いに軸方向へ移動することができる非結合状態とを切り替え可能にして成る。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒形状のスキンプレートと、前記スキンプレートを前進させる推進手段と、トンネルの内周面にセグメントを組み付けるエレクタ装置とを備えたトンネル掘削機において、
前記スキンプレートを、外側スキンプレートと内側スキンプレートとから成る二重構造とし、前記外側スキンプレートと前記内側スキンプレートとが互いに軸方向へ移動することができない結合状態と、前記外側スキンプレートと前記内側スキンプレートとが互いに軸方向へ移動することができる非結合状態とを切り替え可能にした
ことを特徴とするトンネル掘削機。
【請求項2】
トンネルを掘削する際に前記外側スキンプレートと前記内側スキンプレートとを結合状態とし、到達立坑に到達した際に前記外側スキンプレートと前記内側スキンプレートとを非結合状態とする
ことを特徴とする請求項1に記載のトンネル掘削機。
【請求項3】
前記推進手段および前記エレクタ装置を、前記内側スキンプレートに取り付けた
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のトンネル掘削機。
【請求項4】
前記外側スキンプレートに前記内側スキンプレートにおける前方側端縁部の全周を溶接することによって結合状態とする
ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のトンネル掘削機。
【請求項5】
トンネル掘削機によって地山を掘削すると共にセグメントを組み付けることにより、所定の工事区間にトンネルを形成するトンネル掘削工法であって、
前記工事区間に到達立坑を掘削し、前記トンネル掘削機を前記到達立坑まで掘進させ、前記トンネル掘削機におけるスキンプレートの外側スキンプレートを前記到達立坑の側壁に固定した後、
前記スキンプレートの内側スキンプレートを、前記外側スキンプレートに対して軸方向に移動させ、前記内側スキンプレートに支持される前記エレクタ装置によって、前記到達立坑の近傍に前記セグメントを組み付ける
ことを特徴とするトンネル掘削工法。
【請求項6】
前記トンネル掘削機によるトンネル掘削時には、前記外側スキンプレートおよび前記内側スキンプレートを、軸方向に移動できないように結合する
ことを特徴とする請求項5に記載のトンネル掘削工法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トンネル掘削機およびトンネル掘削工法に関する。
【背景技術】
【0002】
トンネル掘削機は、円筒形状を成す掘削機本体(スキンプレート)の前方部に円盤形状を成すカッタヘッドがカッタ駆動装置により駆動回転可能に支持されると共に、掘削機本体の後方部に当該掘削機本体を前進させる複数の推進ジャッキと既設トンネルの内壁面にセグメントを組み付けるエレクタ装置とが装着されて成る。よって、推進ジャッキを伸長させて既設のセグメントに押し当てることにより、セグメントからの反力を得て掘削機本体を前進させることができると共に、カッタ駆動装置を駆動させてカッタヘッドを回転させることにより、前方の地盤を掘削することができる。そして、エレクタ装置によって掘削されたトンネルの内壁面にセグメントを組み付けることにより、トンネルを形成することができる。
【0003】
このようなトンネル掘削機を用いて所定の工事区間にトンネルを構築する場合、この工事区間に発進立坑と到達立坑を予め掘削する。発進立坑内にトンネル掘削機を搬入または発進立坑内にてトンネル掘削機を組み立て、発進立坑内で反力を確保した状態で地山へ貫入し、所定のルートに沿って掘削を行う。そして、トンネル掘削機が到達立坑まで掘進すると、トンネル掘削機を到達立坑内に引き出して搬出、または、掘削したトンネル内にてトンネル掘削機を解体して到達立坑から各種機器を搬出する。このようにして所定の位置にトンネルを構築する。
【0004】
トンネル掘削機が到達立坑まで掘進した際、すなわち、トンネルが到達立坑と開通した際には、トンネル掘削機によって到達立坑の側壁に貫通させた穴とトンネル掘削機の外殻である掘削機本体との隙間から地盤の水等が入る虞がある。そこで、地盤から到達立坑への浸水を防止するために、到達立坑の側壁とトンネル掘削機の掘削機本体とを固定して止水しなければならない。
【0005】
この固定および止水作業は、トンネル掘削機の到達立坑への到達と同時またはその直後に行う。よって、掘削機本体の後方部に備えられたエレクタ装置では、到達立坑の側壁までセグメントを組み付けることはできない。そこで、到達立坑の近傍においては、セグメントを組み付けずに、到達立坑の側壁に固定した掘削機本体を、トンネルの内壁として利用することが行われている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−247581号公報
【特許文献2】特開平10−088979号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、客先要求によって到達立坑までセグメントを組み付けることが必要となった場合には、掘削機本体を固定した後に掘削機本体内の各種装置等を解体除去し、チェーンブロック等を用いて手作業によるセグメントの組み付けを行わなければならない(例えば、特許文献2)。
【0008】
これら手作業によるセグメントの組み付けには手間が掛かり、特に大径のトンネル施工においては、施工期間を著しく増大させてしまう。
【0009】
本発明は上記問題に鑑みてなされたもので、地盤から到達立坑への浸水を防止すると共に、セグメントを到達立坑の側壁まで、すなわち、トンネルの全長に亘って容易に組み付けることができるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決する第一の発明に係るトンネル掘削機は、円筒形状のスキンプレートと、前記スキンプレートを前進させる推進手段と、トンネルの内周面にセグメントを組み付けるエレクタ装置とを備えたトンネル掘削機において、前記スキンプレートを、外側スキンプレートと内側スキンプレートとから成る二重構造とし、前記外側スキンプレートと前記内側スキンプレートとが互いに軸方向へ移動することができない結合状態と、前記外側スキンプレートと前記内側スキンプレートとが互いに軸方向へ移動することができる非結合状態とを切り替え可能にしたことを特徴とする。
【0011】
上記課題を解決する第二の発明に係るトンネル掘削機は、第一の発明に係るトンネル掘削機において、トンネルを掘削する際に前記外側スキンプレートと前記内側スキンプレートとを結合状態とし、到達立坑に到達した際に前記外側スキンプレートと前記内側スキンプレートとを非結合状態とすることを特徴とする。
【0012】
上記課題を解決する第三の発明に係るトンネル掘削機は、第一または第二の発明に係るトンネル掘削機において、前記推進手段および前記エレクタ装置を、前記内側スキンプレートに取り付けたことを特徴とする。
【0013】
上記課題を解決する第四の発明に係るトンネル掘削機は、第一から第三のいずれか一つの発明に係るトンネル掘削機において、前記外側スキンプレートに前記内側スキンプレートにおける前方側端縁部の全周を溶接することによって結合状態とすることを特徴とする。
【0014】
上記課題を解決する第五の発明に係るトンネル掘削工法は、トンネル掘削機によって地山を掘削すると共にセグメントを組み付けることにより、所定の工事区間にトンネルを形成するトンネル掘削工法であって、前記工事区間に到達立坑を掘削し、前記トンネル掘削機を前記到達立坑まで掘進させ、前記トンネル掘削機におけるスキンプレートの外側スキンプレートを前記到達立坑の側壁に固定した後、前記スキンプレートの内側スキンプレートを、前記外側スキンプレートに対して軸方向に移動させ、前記内側スキンプレートに支持される前記エレクタ装置によって、前記到達立坑の近傍に前記セグメントを組み付けることを特徴とする。
【0015】
上記課題を解決する第六の発明に係るトンネル掘削工法は、第五の発明に係るトンネル掘削工法において、前記トンネル掘削機によるトンネル掘削時には、前記外側スキンプレートおよび前記内側スキンプレートを、軸方向に移動できないように結合することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
第一の発明に係るトンネル掘削機によれば、円筒形状のスキンプレートと、前記スキンプレートを前進させる推進手段と、トンネルの内周面にセグメントを組み付けるエレクタ装置とを備えたトンネル掘削機において、前記スキンプレートを、外側スキンプレートと内側スキンプレートとから成る二重構造とし、前記外側スキンプレートと前記内側スキンプレートとが互いに軸方向へ移動することができない結合状態と、前記外側スキンプレートと前記内側スキンプレートとが互いに軸方向へ移動することができる非結合状態とを切り替え可能にしたことにより、当該トンネル掘削機を到達立坑まで掘進させた際に、外側スキンプレートを到達立坑に固定して地盤から到達立坑への浸水を防止すると共に、外側スキンプレートに対して内側スキンプレートを軸方向へ移動させ、セグメントを到達立坑の側壁まで、すなわち、トンネルの全長に亘って容易に組み付けることができる。
【0017】
第二の発明に係るトンネル掘削機によれば、第一の発明に係るトンネル掘削機において、トンネルを掘削する際に前記外側スキンプレートと前記内側スキンプレートとを結合状態とし、到達立坑に到達した際に前記外側スキンプレートと前記内側スキンプレートとを非結合状態としたことにより、掘進時には外側スキンプレートと内側スキンプレートとを一体にしているので、従来通りの掘削作業を行うことができると共に、到達立坑への到達時には外側スキンプレートと内側スキンプレートとを個別に移動させ、到達立坑の近傍にセグメントを組み付けることができる。
【0018】
第三の発明に係るトンネル掘削機によれば、第一または第二の発明に係るトンネル掘削機において、前記推進手段および前記エレクタ装置を、前記内側スキンプレートに取り付けたことにより、到達立坑への到達時に外側スキンプレートに対して内側スキンプレートを移動させ、容易に到達立坑の近傍にセグメントを組み付けることができる。
【0019】
第四の発明に係るトンネル掘削機によれば、第一から第三のいずれか一つの発明に係るトンネル掘削機において、前記外側スキンプレートに前記内側スキンプレートにおける前方側端縁部の全周を溶接することによって結合状態としたことにより、外側スキンプレートと内側スキンプレートとを容易に結合させることができる。外側スキンプレートと内側スキンプレートとの間が溶接によって塞ぐことができるので、トンネル掘削作業の際に、外側スキンプレートと内側スキンプレートとの間に掘削した土砂が浸入しない、すなわち、外側スキンプレートと内側スキンプレートとの間の隙間をシールすることができる。
【0020】
第五の発明に係るトンネル掘削工法によれば、トンネル掘削機によって地山を掘削すると共にセグメントを組み付けることにより、所定の工事区間にトンネルを形成するトンネル掘削工法であって、前記工事区間に到達立坑を掘削し、前記トンネル掘削機を前記到達立坑まで掘進させ、前記トンネル掘削機におけるスキンプレートの外側スキンプレートを前記到達立坑の側壁に固定した後、前記スキンプレートの内側スキンプレートを、前記外側スキンプレートに対して軸方向に移動させ、前記内側スキンプレートに支持される前記エレクタ装置によって、前記到達立坑の近傍に前記セグメントを組み付けることにより、トンネル掘削機を到達立坑まで掘進させた際に、外側スキンプレートを到達立坑に固定して地盤から到達立坑への浸水を防止すると共に、外側スキンプレートに対して内側スキンプレートを軸方向へ移動させ、セグメントを到達立坑の側壁まで、すなわち、トンネルの全長に亘って容易に組み付けることができる。
【0021】
第六の発明に係るトンネル掘削工法によれば、第五の発明に係るトンネル掘削工法において、前記トンネル掘削機によるトンネル掘削時には、前記外側スキンプレートおよび前記内側スキンプレートを、軸方向に移動できないように結合することにより、掘進時に外側スキンプレートと内側スキンプレートとが一体となっているので、従来通りの掘削作業を行うことができる
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】実施例1に係るトンネル掘削機の構造を示す説明図(到達立坑到達後のセグメント組み立て時)である。
図2】実施例1に係るトンネル掘削機の構造を示す説明図(到達立坑到達時)である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に、本発明に係るトンネル掘削機の実施例について、添付図面を参照して詳細に説明する。以下に示す実施例は、本発明に係るトンネル掘削機を土圧式シールド掘削機に適用させたものである。もちろん、本発明は以下の実施例に限定されず、泥水式シールド掘削機、泥土式シールド掘削機、トンネルボーリングマシンなど種々のトンネル掘削機に適用することができる。また、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で各種変更が可能であることは言うまでもない。
【実施例1】
【0024】
本発明の実施例1に係るトンネル掘削機の構造について、図1および図2を参照して説明する。
【0025】
図2に示すように、トンネル掘削機1は、掘削機本体としての円筒形状を成すスキンプレート10と、スキンプレート10の前方部(図2における左方側)に回転自在に装着される円盤形状のカッタヘッド20と、スキンプレート10の後方部(図2における右方側)に設けられる推進ジャッキ(推進手段)30およびエレクタ装置40とから構成されている。
【0026】
スキンプレート10は、外側スキンプレート10aと内側スキンプレート10bとから成る二重構造で構成されている。外側スキンプレート10aは、カッタヘッド20の近傍からテール部11までの円筒形状から成り、施工するトンネル100と略同径の外径を有する。内側スキンプレート10bは、外側スキンプレート10aよりも軸方向(図2における左右方向)に短く、カッタヘッド20の近傍からテール部11の手前までの円筒形状から成り、外側スキンプレート10aの内側に隣接して納められるように外側スキンプレート10aの内径と略同径の外径を有する。
【0027】
外側スキンプレート10aおよび内側スキンプレート10bは、互いに着脱可能に構成され、トンネル掘削機1によるトンネル100の掘削作業においては、互いに結合された結合状態、すなわち、外側スキンプレート10aと内側スキンプレート10bとが互いに軸方向への移動が制限された結合状態で使用される。一方、トンネル掘削機1によるトンネル100の掘削作業が終了し、後述する到達立坑110の近傍にセグメントSを組み立てる作業においては、外側スキンプレート10aと内側スキンプレート10bとの結合が外された非結合状態、すなわち、到達立坑100の側壁111に固定された外側スキンプレート10aに対して内側スキンプレート10bを軸方向へ移動可能な非結合状態で使用される。
【0028】
本実施例においては、スキンプレート10における外側スキンプレート10aと内側スキンプレート10bとを溶接によって結合状態とし、当該溶接箇所を削り取ることによって非結合状態として、結合状態と非結合状態とを切り替える。もちろん、本発明におけるスキンプレートは、本実施例のように溶接によって結合される二重構造のものに限定されず、トンネル掘削機1によるトンネル100の掘削作業の際に、外側スキンプレート10aと内側スキンプレート10bとを一体に掘進させ、トンネル掘削機1によるトンネル100の掘削作業後の到達立坑110近傍のセグメントSの組み立て作業の際に、外側スキンプレート10aに対して内側スキンプレート10bを軸方向に移動させることができるものであれば良い。例えば、スキンプレートをボルトや接着剤等を用いて固定させた二重構造のものとしても良く、ピン等を用いて軸方向の移動を制限した二重構造のものとても良い。
【0029】
また、本実施例においては、外側スキンプレート10aにおける前方側端縁部(図2における左方側端縁部)11aと内側スキンプレート10bにおける前方側端縁部(図2における左方側端縁部)11bとが全周に亘って溶接されると共に、外側スキンプレート10aにおける内周面13aと内側スキンプレート10bにおける後方側端縁部(図2における右方側端縁部)12bとが周方向の複数箇所で溶接されている。
【0030】
外側スキンプレート10aおよび内側スキンプレート10bの前方側端縁部11a、11bを全周に亘って溶接することにより、外側スキンプレート10aと内側スキンプレート10bとを結合させると共に、外側スキンプレート10aと内側スキンプレート10bとの間の隙間をシールすることができる。すなわち、外側スキンプレート10aと内側スキンプレート10bとの間が溶接によって塞がれているので、トンネル掘削機1によるトンネル100の掘削作業の際に、外側スキンプレート10aと内側スキンプレート10bとの間に掘削した土砂が浸入しない。
【0031】
なお、前述した接着剤を用いて固定させた場合には、本実施例と同様に、シール機能を兼ね備えた結合がなされる。一方、ボルトを用いて固定させた場合、または、ピンを用いて軸方向の移動を制限した場合には、本実施例のようにシール機能を兼ね備えた結合がなされないので、トンネル掘削機によるトンネル掘削作業の際に外側スキンプレートと内側スキンプレートとの間に掘削した土砂が入らないように、シール機構等を設けることが好ましい。
【0032】
また、外側スキンプレート10aにおける内周面13aと内側スキンプレート10bにおける後方側端縁部12bとを周方向の複数箇所で溶接することにより、外側スキンプレート10aと内側スキンプレート10bとの結合力を高めている。よって、推進ジャッキ30を伸長させた際に既設セグメントSから受ける反力が内側スキンプレート10bに伝わると共に、内側スキンプレート10bに溶接固定された外側スキンプレート10aに伝わり、内側スキンプレート10bおよび外側スキンプレート10a、すなわち、トンネル掘削機1を掘進させることができる。
【0033】
もちろん、前方側端縁部11a、11bにおける溶接による外側スキンプレート10aと内側スキンプレート10bとの結合力が十分である場合には、外側スキンプレート10aにおける内周面13aと内側スキンプレート10bにおける後方側端縁部12bとを溶接する必要はない。なお、外側スキンプレート10aと内側スキンプレート10bとの結合力が低い場合には、推進ジャッキ30による掘進力によって、外側スキンプレート10aと内側スキンプレート10bとの結合が壊れる虞がある。よって、外側スキンプレート10aと内側スキンプレート10bとの結合としては、軸方向におけるある程度の力に耐える得る強度が必要である。
【0034】
カッタヘッド20は、外側スキンプレート10aおよび内側スキンプレート10bの前方側端縁部11a、11b近傍に設けられる。カッタヘッド20の後方部(図2における右方側)には、図示しないリングギア等のギア機構を介して旋回モータ21が連結され、旋回モータ21を駆動することにより、ギア機構を介してカッタヘッド20を回転させることができる。
【0035】
また、内側スキンプレート10bには、カッタヘッド20の後方に位置してバルクヘッド50が取り付けられており、カッタヘッド20とバルクヘッド50との間にチャンバ60が形成されている。なお、カッタヘッド20、旋回モータ21および図示しないギア機構は、バルクヘッド50を介して内側スキンプレート10bに支持されている。
【0036】
スキンプレート10の内部には、スクリューコンベア70が配設され、カッタヘッド20で掘削された土砂をトンネル100の後方へ排出可能になっている。すなわち、スクリューコンベア70の前端部(取り出し口)71がバルクヘッド50を貫通してチャンバ60に開口すると共に、後方部に設けた図示しない排出口がトンネル100内の長手方向に配設された図示しないベルトコンベア上に位置する。このスクリューコンベア70は、後上がりに傾斜して配置された円筒管の内部に、図示しない駆動モータによって回転可能にスクリュー翼72が装着されて成る。
【0037】
推進ジャッキ30は、内側スキンプレート10bの内周面13bに設置され、覆工部材としてトンネル100の内周面に構築された(組み立てられた)既設のセグメントSに対し伸縮することにより、内側スキンプレート10bすなわちトンネル掘削機1を掘進させるための反力を得ることができる。本実施例においては、内側スキンプレート10bの円周方向に所定間隔離間して多数本の推進ジャッキ30が配設されている。
【0038】
エレクタ装置40は、内側スキンプレート10bの後方部において支持部材によって旋回自在に保持された旋回リング41を介して装着されている。旋回リング41には駆動モータ42が連結され、駆動モータ42を駆動させることによって旋回リング41を旋回させ、エレクタ装置40を作動させることができる。
【0039】
外側スキンプレート10aの後端部12aには、既設セグメントSの外周面と嵌合するようにテールシール80が設けられている。一方、内側スキンプレート10bの後端部12bには、テールシールが設けられていない。よって、外側スキンプレート10aは、テールシール80を設けたテール部11を備えている分、内側スキンプレート10bよりも軸方向に長い円筒形状となっている。
【0040】
内側スキンプレート10bは、到達立坑110の側壁111に固定された外側スキンプレート10aの内部において、到達立坑110近傍のセグメントSを組み立てるために、エレクタ装置40と共に軸方向へ移動させるものである。つまり、スキンプレート10とセグメントSとの隙間は、外側スキンプレート10aに設けたテールシール80によってシールされているので、内側スキンプレート10bにはテールシールを設ける必要がないのである。
【0041】
次に、本発明の実施例1に係るトンネル掘削機の動作について、図1および図2を参照して説明する。
【0042】
まず、掘削開始位置に所定深さの発進立坑を掘削し、この発進立坑内にトンネル掘削機1を搬入、または、発進立坑内にてトンネル掘削機1を組み立て、トンネル掘削機1を発進立坑内の所定位置にセットする(図示せず)。この状態で駆動モータ21を駆動させてカッタヘッド20を回転させると共に、複数の推進ジャッキ30を伸長させて発進立坑内の反力受けからの反力によってスキンプレート10すなわちトンネル掘削機1を前進させる。このようにして、発進立坑の縦壁を掘削し、トンネル掘削作業を開始する。
【0043】
トンネル掘削機1を掘進させ、カッタヘッド20の回転によって地盤120を掘削して発生した掘削土砂は、チャンバ60内に取り込まれる。チャンバ60内に取り込まれた掘削土砂は、スクリューコンベア70の前端部71から、スクリュー翼72によって後方へ搬送され、スクリューコンベア70の後方部における図示しない排出口およびベルトコンベアによって外部へ排出される。
【0044】
トンネル掘削機1の後方部においては、エレクタ装置40によって、既設トンネル100内に搬入されたセグメントSを把持し、既設トンネル100の内壁面にリング状に組み付けることにより、トンネル100を構築していく。
【0045】
一方、掘削終了位置には予め所定深さの到達立坑110を掘削しておき、トンネル掘削機1によって図示しない発進立坑から構築したトンネル100をこの到達立坑110に連通させる。
【0046】
トンネル掘削機1が到達立坑110まで掘進した際、すなわち、トンネル100が到達立坑110と開通した際には、地盤120から到達立坑110への浸水を防止するために、到達立坑110の側壁111とトンネル掘削機1のスキンプレート10における外側スキンプレート10aとを固定する。
【0047】
スキンプレート10の前方部に備えられたカッタヘッド20を解体し、バルクヘッド50の一部を残して切断し、それらを到達立坑110から搬出する。そして、外側スキンプレート10aと内側スキンプレート10bとの溶接箇所を削り取り、外側スキンプレート10aと内側スキンプレート10bとを互いに(相対的に)軸方向へ移動可能な状態、すなわち、到達立坑110の側壁111に固定された外側スキンプレート10aに対して内側スキンプレート10bを軸方向に移動可能な状態にする。
【0048】
推進ジャッキ30を伸縮させることにより、到達立坑110の側壁111に固定された外側スキンプレート10aに対して、内側スキンプレート10bを軸方向へ移動させると共に、エレクタ装置40によってトンネル100の内周面にセグメントSを組み付けることにより、到達立坑110の近傍にセグメントSを組み付けることができる(図1参照)。
【0049】
推進ジャッキ30およびエレクタ装置40は、外側スキンプレート10aと分離された内側スキンプレート10bに設置されているので、推進ジャッキ30の伸縮によって内側スキンプレート10bおよびエレクタ装置40を外側スキンプレート10aすなわちトンネル100に対して軸方向へ移動させることができるのである。
【0050】
よって、手間の掛かる手作業によるセグメントの組み付け作業はなく、トンネル掘削機1によって容易に到達立坑110の近傍にセグメントSを組み付けることができる、すなわち、トンネル100の全長に亘ってセグメントSを組み付けることができる。
【符号の説明】
【0051】
1 電動車両
10 スキンプレート
10a 外側スキンプレート
10b 内側スキンプレート
11a 外側スキンプレートの前端縁
11b 内側スキンプレートの前端縁
12a 外側スキンプレートの後端縁
12b 内側スキンプレートの後端縁
13a 外側スキンプレートの内周面
13b 内側スキンプレートの内周面
20 カッタヘッド
21 駆動モータ
30 エレクタ装置
40 推進ジャッキ
41 旋回リング
50 バルクヘッド
60 チャンバ
70 スクリューコンベア
71 スクリューコンベアの前端部
72 スクリューコンベアのスクリュー翼
80 テールシール
100 トンネル
110 到達立坑
111 到達立坑の側壁
120 地盤
図1
図2