【実施例1】
【0024】
本発明の実施例1に係るトンネル掘削機の構造について、
図1および
図2を参照して説明する。
【0025】
図2に示すように、トンネル掘削機1は、掘削機本体としての円筒形状を成すスキンプレート10と、スキンプレート10の前方部(
図2における左方側)に回転自在に装着される円盤形状のカッタヘッド20と、スキンプレート10の後方部(
図2における右方側)に設けられる推進ジャッキ(推進手段)30およびエレクタ装置40とから構成されている。
【0026】
スキンプレート10は、外側スキンプレート10aと内側スキンプレート10bとから成る二重構造で構成されている。外側スキンプレート10aは、カッタヘッド20の近傍からテール部11までの円筒形状から成り、施工するトンネル100と略同径の外径を有する。内側スキンプレート10bは、外側スキンプレート10aよりも軸方向(
図2における左右方向)に短く、カッタヘッド20の近傍からテール部11の手前までの円筒形状から成り、外側スキンプレート10aの内側に隣接して納められるように外側スキンプレート10aの内径と略同径の外径を有する。
【0027】
外側スキンプレート10aおよび内側スキンプレート10bは、互いに着脱可能に構成され、トンネル掘削機1によるトンネル100の掘削作業においては、互いに結合された結合状態、すなわち、外側スキンプレート10aと内側スキンプレート10bとが互いに軸方向への移動が制限された結合状態で使用される。一方、トンネル掘削機1によるトンネル100の掘削作業が終了し、後述する到達立坑110の近傍にセグメントSを組み立てる作業においては、外側スキンプレート10aと内側スキンプレート10bとの結合が外された非結合状態、すなわち、到達立坑100の側壁111に固定された外側スキンプレート10aに対して内側スキンプレート10bを軸方向へ移動可能な非結合状態で使用される。
【0028】
本実施例においては、スキンプレート10における外側スキンプレート10aと内側スキンプレート10bとを溶接によって結合状態とし、当該溶接箇所を削り取ることによって非結合状態として、結合状態と非結合状態とを切り替える。もちろん、本発明におけるスキンプレートは、本実施例のように溶接によって結合される二重構造のものに限定されず、トンネル掘削機1によるトンネル100の掘削作業の際に、外側スキンプレート10aと内側スキンプレート10bとを一体に掘進させ、トンネル掘削機1によるトンネル100の掘削作業後の到達立坑110近傍のセグメントSの組み立て作業の際に、外側スキンプレート10aに対して内側スキンプレート10bを軸方向に移動させることができるものであれば良い。例えば、スキンプレートをボルトや接着剤等を用いて固定させた二重構造のものとしても良く、ピン等を用いて軸方向の移動を制限した二重構造のものとても良い。
【0029】
また、本実施例においては、外側スキンプレート10aにおける前方側端縁部(
図2における左方側端縁部)11aと内側スキンプレート10bにおける前方側端縁部(
図2における左方側端縁部)11bとが全周に亘って溶接されると共に、外側スキンプレート10aにおける内周面13aと内側スキンプレート10bにおける後方側端縁部(
図2における右方側端縁部)12bとが周方向の複数箇所で溶接されている。
【0030】
外側スキンプレート10aおよび内側スキンプレート10bの前方側端縁部11a、11bを全周に亘って溶接することにより、外側スキンプレート10aと内側スキンプレート10bとを結合させると共に、外側スキンプレート10aと内側スキンプレート10bとの間の隙間をシールすることができる。すなわち、外側スキンプレート10aと内側スキンプレート10bとの間が溶接によって塞がれているので、トンネル掘削機1によるトンネル100の掘削作業の際に、外側スキンプレート10aと内側スキンプレート10bとの間に掘削した土砂が浸入しない。
【0031】
なお、前述した接着剤を用いて固定させた場合には、本実施例と同様に、シール機能を兼ね備えた結合がなされる。一方、ボルトを用いて固定させた場合、または、ピンを用いて軸方向の移動を制限した場合には、本実施例のようにシール機能を兼ね備えた結合がなされないので、トンネル掘削機によるトンネル掘削作業の際に外側スキンプレートと内側スキンプレートとの間に掘削した土砂が入らないように、シール機構等を設けることが好ましい。
【0032】
また、外側スキンプレート10aにおける内周面13aと内側スキンプレート10bにおける後方側端縁部12bとを周方向の複数箇所で溶接することにより、外側スキンプレート10aと内側スキンプレート10bとの結合力を高めている。よって、推進ジャッキ30を伸長させた際に既設セグメントSから受ける反力が内側スキンプレート10bに伝わると共に、内側スキンプレート10bに溶接固定された外側スキンプレート10aに伝わり、内側スキンプレート10bおよび外側スキンプレート10a、すなわち、トンネル掘削機1を掘進させることができる。
【0033】
もちろん、前方側端縁部11a、11bにおける溶接による外側スキンプレート10aと内側スキンプレート10bとの結合力が十分である場合には、外側スキンプレート10aにおける内周面13aと内側スキンプレート10bにおける後方側端縁部12bとを溶接する必要はない。なお、外側スキンプレート10aと内側スキンプレート10bとの結合力が低い場合には、推進ジャッキ30による掘進力によって、外側スキンプレート10aと内側スキンプレート10bとの結合が壊れる虞がある。よって、外側スキンプレート10aと内側スキンプレート10bとの結合としては、軸方向におけるある程度の力に耐える得る強度が必要である。
【0034】
カッタヘッド20は、外側スキンプレート10aおよび内側スキンプレート10bの前方側端縁部11a、11b近傍に設けられる。カッタヘッド20の後方部(
図2における右方側)には、図示しないリングギア等のギア機構を介して旋回モータ21が連結され、旋回モータ21を駆動することにより、ギア機構を介してカッタヘッド20を回転させることができる。
【0035】
また、内側スキンプレート10bには、カッタヘッド20の後方に位置してバルクヘッド50が取り付けられており、カッタヘッド20とバルクヘッド50との間にチャンバ60が形成されている。なお、カッタヘッド20、旋回モータ21および図示しないギア機構は、バルクヘッド50を介して内側スキンプレート10bに支持されている。
【0036】
スキンプレート10の内部には、スクリューコンベア70が配設され、カッタヘッド20で掘削された土砂をトンネル100の後方へ排出可能になっている。すなわち、スクリューコンベア70の前端部(取り出し口)71がバルクヘッド50を貫通してチャンバ60に開口すると共に、後方部に設けた図示しない排出口がトンネル100内の長手方向に配設された図示しないベルトコンベア上に位置する。このスクリューコンベア70は、後上がりに傾斜して配置された円筒管の内部に、図示しない駆動モータによって回転可能にスクリュー翼72が装着されて成る。
【0037】
推進ジャッキ30は、内側スキンプレート10bの内周面13bに設置され、覆工部材としてトンネル100の内周面に構築された(組み立てられた)既設のセグメントSに対し伸縮することにより、内側スキンプレート10bすなわちトンネル掘削機1を掘進させるための反力を得ることができる。本実施例においては、内側スキンプレート10bの円周方向に所定間隔離間して多数本の推進ジャッキ30が配設されている。
【0038】
エレクタ装置40は、内側スキンプレート10bの後方部において支持部材によって旋回自在に保持された旋回リング41を介して装着されている。旋回リング41には駆動モータ42が連結され、駆動モータ42を駆動させることによって旋回リング41を旋回させ、エレクタ装置40を作動させることができる。
【0039】
外側スキンプレート10aの後端部12aには、既設セグメントSの外周面と嵌合するようにテールシール80が設けられている。一方、内側スキンプレート10bの後端部12bには、テールシールが設けられていない。よって、外側スキンプレート10aは、テールシール80を設けたテール部11を備えている分、内側スキンプレート10bよりも軸方向に長い円筒形状となっている。
【0040】
内側スキンプレート10bは、到達立坑110の側壁111に固定された外側スキンプレート10aの内部において、到達立坑110近傍のセグメントSを組み立てるために、エレクタ装置40と共に軸方向へ移動させるものである。つまり、スキンプレート10とセグメントSとの隙間は、外側スキンプレート10aに設けたテールシール80によってシールされているので、内側スキンプレート10bにはテールシールを設ける必要がないのである。
【0041】
次に、本発明の実施例1に係るトンネル掘削機の動作について、
図1および
図2を参照して説明する。
【0042】
まず、掘削開始位置に所定深さの発進立坑を掘削し、この発進立坑内にトンネル掘削機1を搬入、または、発進立坑内にてトンネル掘削機1を組み立て、トンネル掘削機1を発進立坑内の所定位置にセットする(図示せず)。この状態で駆動モータ21を駆動させてカッタヘッド20を回転させると共に、複数の推進ジャッキ30を伸長させて発進立坑内の反力受けからの反力によってスキンプレート10すなわちトンネル掘削機1を前進させる。このようにして、発進立坑の縦壁を掘削し、トンネル掘削作業を開始する。
【0043】
トンネル掘削機1を掘進させ、カッタヘッド20の回転によって地盤120を掘削して発生した掘削土砂は、チャンバ60内に取り込まれる。チャンバ60内に取り込まれた掘削土砂は、スクリューコンベア70の前端部71から、スクリュー翼72によって後方へ搬送され、スクリューコンベア70の後方部における図示しない排出口およびベルトコンベアによって外部へ排出される。
【0044】
トンネル掘削機1の後方部においては、エレクタ装置40によって、既設トンネル100内に搬入されたセグメントSを把持し、既設トンネル100の内壁面にリング状に組み付けることにより、トンネル100を構築していく。
【0045】
一方、掘削終了位置には予め所定深さの到達立坑110を掘削しておき、トンネル掘削機1によって図示しない発進立坑から構築したトンネル100をこの到達立坑110に連通させる。
【0046】
トンネル掘削機1が到達立坑110まで掘進した際、すなわち、トンネル100が到達立坑110と開通した際には、地盤120から到達立坑110への浸水を防止するために、到達立坑110の側壁111とトンネル掘削機1のスキンプレート10における外側スキンプレート10aとを固定する。
【0047】
スキンプレート10の前方部に備えられたカッタヘッド20を解体し、バルクヘッド50の一部を残して切断し、それらを到達立坑110から搬出する。そして、外側スキンプレート10aと内側スキンプレート10bとの溶接箇所を削り取り、外側スキンプレート10aと内側スキンプレート10bとを互いに(相対的に)軸方向へ移動可能な状態、すなわち、到達立坑110の側壁111に固定された外側スキンプレート10aに対して内側スキンプレート10bを軸方向に移動可能な状態にする。
【0048】
推進ジャッキ30を伸縮させることにより、到達立坑110の側壁111に固定された外側スキンプレート10aに対して、内側スキンプレート10bを軸方向へ移動させると共に、エレクタ装置40によってトンネル100の内周面にセグメントSを組み付けることにより、到達立坑110の近傍にセグメントSを組み付けることができる(
図1参照)。
【0049】
推進ジャッキ30およびエレクタ装置40は、外側スキンプレート10aと分離された内側スキンプレート10bに設置されているので、推進ジャッキ30の伸縮によって内側スキンプレート10bおよびエレクタ装置40を外側スキンプレート10aすなわちトンネル100に対して軸方向へ移動させることができるのである。
【0050】
よって、手間の掛かる手作業によるセグメントの組み付け作業はなく、トンネル掘削機1によって容易に到達立坑110の近傍にセグメントSを組み付けることができる、すなわち、トンネル100の全長に亘ってセグメントSを組み付けることができる。