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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-137567(P2015-137567A)
(43)【公開日】2015年7月30日
(54)【発明の名称】ベーンポンプユニット
(51)【国際特許分類】
   F04C 2/344 20060101AFI20150703BHJP
   F04C 15/00 20060101ALI20150703BHJP
【FI】
   F04C2/344 331Z
   F04C15/00 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-8628(P2014-8628)
(22)【出願日】2014年1月21日
(71)【出願人】
【識別番号】000146010
【氏名又は名称】株式会社ショーワ
(74)【代理人】
【識別番号】100064414
【弁理士】
【氏名又は名称】磯野 道造
(74)【代理人】
【識別番号】100111545
【弁理士】
【氏名又は名称】多田 悦夫
(74)【代理人】
【識別番号】100166187
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 慎一郎
(72)【発明者】
【氏名】塚原 義弘
(72)【発明者】
【氏名】多賀 直哉
【テーマコード(参考)】
3H040
3H044
【Fターム(参考)】
3H040AA03
3H040BB05
3H040BB11
3H040CC16
3H040CC20
3H040DD03
3H040DD06
3H040DD40
3H044AA02
3H044BB05
3H044CC14
3H044CC18
3H044DD03
3H044DD04
3H044DD28
(57)【要約】      (修正有)
【課題】プレートが歪み難いベーンポンプユニットを提供する。
【解決手段】ロータ10と、複数のベーン20と、カムリング30と、第1プレート40と、第2プレート50と、一端部61が第1プレート40に固定され、他端部62が第2プレート50から突出した連結棒60と、連結棒60から第2プレート50及びカムリング30の脱落を防止するクリップ71と、を備え、ハウジングに組み付けられるベーンポンプユニット1であって、クリップ71の止め位置は、ハウジングへの組み付け前において、第1プレート40及びカムリング30の間と第2プレート50及びカムリング30の間との少なくとも一方に、隙間が形成される位置であり、ハウジングへの組み付け後において、ハウジングは第1プレート40、カムリング30及び第2プレート50を軸方向において挟み、第1プレート40及び第2プレート50はカムリング30に密着する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロータと、
前記ロータに摺動自在に設けられた複数のベーンと、
前記ロータ及び前記複数のベーンを囲む環状のカムリングと、
前記ロータの一端面側に配置された第1プレートと、
前記ロータの他端面側に配置された第2プレートと、
軸方向において前記カムリングを貫通し、一端部が前記第1プレートに固定され、他端部が前記第2プレートを貫通し当該第2プレートから突出した連結棒と、
前記連結棒の前記他端部に止められ、当該連結棒から前記第2プレート及び前記カムリングの脱落を防止する止め具と、
を備え、
ベーンポンプを構成するハウジングに組み付けられるベーンポンプユニットであって、
前記止め具の止め位置は、前記ハウジングへの組み付け前において、前記第1プレート及び前記カムリングの間と前記第2プレート及び前記カムリングの間との少なくとも一方に、隙間が形成される位置であり、
前記ハウジングへの組み付け後において、前記ハウジングは前記第1プレート、前記カムリング及び前記第2プレートを軸方向において挟み、前記第1プレート及び前記第2プレートは前記カムリングに密着する
ことを特徴とするベーンポンプユニット。
【請求項2】
前記連結棒の前記他端部には、軸方向において前記止め具が当接する当接面が形成されている
ことを特徴とする請求項1に記載のベーンポンプユニット。
【請求項3】
前記連結棒の前記他端部には、前記止め具が取り付けられ周方向に延びる取付用溝が形成され、
前記止め具は、軸方向視においてC字形である
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のベーンポンプユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベーンポンプユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
液体圧送装置として、ベーンポンプが知られている。ベーンポンプは、例えば、ベーンポンプユニット(ベーンポンプ本体)と、ベーンポンプユニットを回転自在で収容すると共に吸入路及び吐出路が形成されたハウジングと、を備えている(特許文献1参照)。ベーンポンプユニットは、動力入力軸と一体で回転するロータと、ロータに摺動(出没)自在に設けられる複数のベーンと、ロータ及びベーンを囲むカムリングと、ロータ及びカムリングを軸方向両側から挟む一対のプレート(第1プレート、第2プレート)と、カムリングを軸方向において貫通すると共に第1プレート及び第2プレートを連結する2本の連結棒と、を備えている。なお、各連結棒の一端部は第1プレートに圧入され、連結棒の他端部は第2プレートに圧入される構成である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−21742号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、連結棒の一端部は第1プレートに圧入され、連結棒の他端部は第2プレートに圧入される構成であるので、圧入荷重、圧入量にバラつきが生じる場合がある。これにより、例えば、設計時に対して圧入量が大きい場合、つまり、連結棒が過剰に圧入された場合、第1プレート及び/又は第2プレートが変形して歪むうえ、第1プレート及び/又は第2プレートとカムリング、ロータとの間に形成される極小隙間がバラつく虞がある。具体的には、極小隙間が設計時に対して大きくなると液漏れし易くなり、極小隙間が設計時に対して小さくなるとロータ及びプレートの摺動抵抗が大きくなってロータが回転し難くなり、ロータ及びプレートが焼き付いてしまう虞がある。
【0005】
そこで、本発明は、プレートが歪み難いベーンポンプユニットを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するための手段として、本発明は、ロータと、前記ロータに摺動自在に設けられた複数のベーンと、前記ロータ及び前記複数のベーンを囲む環状のカムリングと、前記ロータの一端面側に配置された第1プレートと、前記ロータの他端面側に配置された第2プレートと、軸方向において前記カムリングを貫通し、一端部が前記第1プレートに固定され、他端部が前記第2プレートを貫通し当該第2プレートから突出した連結棒と、前記連結棒の前記他端部に止められ、当該連結棒から前記第2プレート及び前記カムリングの脱落を防止する止め具と、を備え、ベーンポンプを構成するハウジングに組み付けられるベーンポンプユニットであって、前記止め具の止め位置は、前記ハウジングへの組み付け前において、前記第1プレート及び前記カムリングの間と前記第2プレート及び前記カムリングの間との少なくとも一方に、隙間が形成される位置であり、前記ハウジングへの組み付け後において、前記ハウジングは前記第1プレート、前記カムリング及び前記第2プレートを軸方向において挟み、前記第1プレート及び前記第2プレートは前記カムリングに密着することを特徴とするベーンポンプユニットである。
なお、ベーンポンプユニットが、ロータの中心軸線上に固定され、外部の動力発生措置からの動力が入力される動力入力軸を備える構成でもよい。
【0007】
このような構成によれば、連結棒の一端部を第1プレートに固定した後、連結棒の他端側からカムリング、第2プレートを順に貫通させ、連結棒の他端部を第2プレートから突出させる。この場合において、連結棒を第2プレートに圧入しないので、第2プレートが厚さ方向(連結棒の軸方向)において歪むことはない。
【0008】
次いで、止め具を連結棒の他端部に止めることにより、ベーンポンプユニットが組み立てられる。そして、他端部に止められた止め具により、連結棒から第2プレート及びカムリングの脱落が防止される。
ここで、止め具の止め位置は、ハウジングへの組み付け前において、第1プレート及びカムリングの間と第2プレート及びカムリングの間との少なくとも一方に、隙間が形成される位置であるので、止め具を連結棒に止めた状態において、第1プレート及び第2プレートがカムリングに圧接することはない。したがって、第1プレート及び第2プレートが厚さ方向において歪むことはない。
【0009】
次いで、ベーンポンプユニットをハウジングに組み付けると、ベーンポンプを得る。
ベーンポンプユニットをハウジングに組み付け後において、ハウジングは第1プレート、カムリング及び第2プレートを軸方向において挟み、第1プレート及び第2プレートはカムリングに密着するので、第1プレート及びカムリングの間、第2プレート及びカムリングの間から液漏れし難くなる。
【0010】
また、ベーンポンプユニットにおいて、前記連結棒の前記他端部には、軸方向において前記止め具が当接する当接面が形成されていることが好ましい。
【0011】
このような構成によれば、止め具が連結棒の他端部に形成された当接面に当接することにより、止め具が連結棒の軸方向所定位置に位置決めされ易くなる。
【0012】
また、ベーンポンプユニットにおいて、前記連結棒の前記他端部には、前記止め具が取り付けられ周方向に延びる取付用溝が形成され、前記止め具は、軸方向視においてC字形であることが好ましい。
【0013】
このような構成によれば、軸方向視においてC字形である止め具を、前記他端部に形成された周方向に延びる取付用溝に取り付けることにより、止め具を連結棒に容易に取り付けることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、プレートが歪み難いベーンポンプユニットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本実施形態に係るベーンポンプの正面図であり、ベーンポンプユニットの組み付け後を示している。
図2】本実施形態に係るベーンポンプの側断面図であって図1のX1−X1線断面に対応しており、ベーンポンプユニットの組み付け後を示している。
図3】本実施形態に係るベーンポンプユニットの側断面図であり、組み付け前を示している。
図4】軸方向におけるロータ、ベーン、カムリングの長さ関係を示す図であり、図1のX2−X2線断面に対応している。
図5】本実施形態に係る連結棒及びクリップの図であり、(a)は側断面図、(b)は正面図である。
図6】変形例に係る連結棒及びクリップの図であり、(a)は側断面図、(b)は正面図である。
図7】変形例に係る連結棒及びクリップの図であり、(a)は側断面図、(b)は正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の一実施形態について、図1図5を参照して説明する。
【0017】
≪ベーンポンプの構成≫
ベーンポンプ200は、流体利用機器に油(流体)を供給する装置である。流体利用機器としては、例えば、油圧に対応して駆動プーリ及び従動プーリの間におけるベルトの巻き掛け径を無段階で可変することで無段変速する無段変速機、油圧パワーステアリング装置を構成する油圧シリンダである。
【0018】
ベーンポンプ200は、吐出量が一定である定量型のポンプであり、ロータ10が1回転する間に2回のポンプ行程、つまり、吸入行程、吐出行程、吸入行程、吐出行程を実行するものである。ただし、カムリング30が径方向において往復し吐出量が可変する可変型でもよい。また、ロータ10が1回転する間にポンプ行程が1回又は3回以上である構成でもよい。さらに、ベーン20が軸方向において多段で配置された構成でもよい。
【0019】
ベーンポンプ200は、外形が略円柱状であるベーンポンプユニット1(ベーンポンプ本体)と、その内部にベーンポンプユニット1を収容するハウジング100と、を備えている。
【0020】
<ハウジング>
ハウジング100は、浅底で有底円筒状を呈するハウジング本体110と、ハウジング本体110の開口を塞ぐカバー120とを備えている。ハウジング本体110とカバー120とはボルト131で締結されている。
【0021】
<ハウジング本体>
ハウジング本体110の内部には、ベーンポンプユニット1を収容する円柱状の収容室111と、吸入路112と、吐出路113とが形成されている。
【0022】
吸入路112は、ベーンポンプユニット1に吸い込まれる油が通流する流路である。吸入路112の上流端は、外部吸入流路(図示しない)を介して、油が一時的に貯溜するリザーバ(図示しない)に接続されている。吸入路112の下流側は、第1吸入路112aと第2吸入路112bとの二股に分岐している。第1吸入路112aの下流端はベーンポンプユニット1の第1吸入ポート2aと連通しており、第2吸入路112bの下流端はベーンポンプユニット1の第2吸入ポート2bと連通している。
【0023】
吐出路113は、ベーンポンプユニット1から吐出された油が通流する流路である。吐出路113の上流側は、第1吐出路113aと第2吐出路113bとに分岐している。第1吐出路113aの上流端はベーンポンプユニット1の第1吐出ポート3aと連通しており、第2吐出路113bの上流端はベーンポンプユニット1の第2吐出ポート3bに連通している。
【0024】
軸方向において、カバー120及び第2プレート50を跨ぐように、2本のピン132(図1図2参照)が差し込まれている。これにより、カバー120(ハウジング100)と第2プレート50(ベーンポンプユニット1)とが、周方向において位置決めされるようになっている。
【0025】
また、ハウジング本体110の底壁部110aと第1プレート40との間であって、第1吐出路113a及び第2吐出路113bを囲むようにOリング133が設けられている。すなわち、Oリング133は、軸方向において底壁部110aと第1プレート40とで挟まれており、第1吐出路113a及び第2吐出路113bの油が外部に漏れないようにシールしている。
【0026】
≪ベーンポンプユニットの構成≫
ベーンポンプユニット1は、略円柱状の外形を呈しており、前記したように、ロータ10が1回転する間に、吸入行程、吐出行程、吸入行程、吐出行程を実行するものである。ベーンポンプユニット1の外面において周方向で、第1吸入ポート2a、第1吐出ポート3a、第2吸入ポート2b、第2吐出ポート3bの順で配列している(図1参照)。
【0027】
第1吸入ポート2a、第2吸入ポート2bは、ベーンポンプユニット1に吸い込まれる油の入口であり、ベーンポンプユニット1の外面で開口している。第1吐出ポート3a、第2吐出ポート3bは、ベーンポンプユニット1から吐出される油の出口であり、ベーンポンプユニット1の一端面(図2図3の右側端面)で開口している。
【0028】
ベーンポンプユニット1は、ロータ10と、10枚(複数)のベーン20と、カムリング30と、第1プレート40と、第2プレート50と、2本(複数)の連結棒60と、2本のクリップ71と、を備えている(図1図3参照)。
【0029】
<ロータ>
ロータ10は、略円柱状を呈している。ロータ10には、その外周面から径方向内向きに延びる10本(複数)のベーン溝11が形成されている。10本のベーン溝11は、周方向において等間隔で配置されている。
【0030】
ロータ10の中心軸線上には、セレーション孔15が形成されている。セレーション孔15には、シャフト16のセレーション軸部17が嵌入されており、ロータ10とシャフト16とはセレーション結合し一体となって図1において左回りで回転するようになっている(矢印A1参照)。シャフト16には、外部の動力発生装置から動力が入力されるようになっている。この他、ベーンポンプユニット1はシャフト16を備えず、ハウジング100に組み込まれた後、シャフト16がセレーション孔15に嵌入される構成でもよい。
【0031】
<ベーン>
ベーン20は、複数のベーン溝11にそれぞれ設けられ、径方向において摺動自在である摺動片である。ロータ10が回転すると、各ベーン20に遠心力が作用し、その先端がカムリング30のカム面31(内周面)に摺接するようになっている。
【0032】
<カムリング>
カムリング30は、ロータ10及びベーン20を囲むようにロータ10と同軸で配置された肉厚の筒状の部品である。カムリング30のカム面31は軸方向視において略楕円形を呈している。
【0033】
カムリング30の内部には、軸方向に延び両端が開口した貫通孔32(図3参照)が形成されている。貫通孔32は、連結棒60が貫通する孔であり、その内径は連結棒60の外径よりも大きい。
【0034】
<ロータ、ベーン、カムリングの高さ(軸方向長さ)>
軸方向において、ロータ10の高さL10、ベーン20の高さL20、カムリング30の高さL30は、「L30>L10>L20」の関係となっている(図4参照)。これにより、カムリング30が第1プレート40及び第2プレート50で挟持された場合において、軸方向において、ロータ10、ベーン20と、第1プレート40及び/又は第2プレート50との間に極小隙間(クリアランス)が形成されるようになっている。したがって、ベーン20が第1プレート40及び/又は第2プレート50に対し径方向において容易に摺動しながら、ロータ10、ベーン20が回転するようになっている。
【0035】
<第1プレート、第2プレート>
第1プレート40、第2プレート50は、ロータ10及びカムリング30を軸方向において挟む肉厚のプレートである。
【0036】
第1プレート40は、ロータ10及びカムリング30の一端面側(図2図3の紙面右側)に配置されている。第1プレート40の中心には、シャフト16の一端部18を支持する凹状の支持部41が形成されている。シャフト16の一端部18は、軸受18aを介して支持部41に回転自在に支持されている。第1プレート40の外周縁部には、連結棒60の一端部61が圧入される圧入穴42が形成されている。
【0037】
第2プレート50は、ロータ10及びカムリング30の他端面側(図2図3の紙面左側)に配置されている。第2プレート50の中心には、シャフト16の他端部19が貫通する貫通孔51が形成されている。シャフト16の他端部19は、貫通孔51を貫通し、軸受19aを介して回転自在に支持されている。第2プレート50の外周縁部には、連結棒60の他端部62が貫通する貫通孔52が形成されており、貫通孔52の内径は連結棒60の外径よりも大きい。貫通孔52の他端側(左端側)は拡径し、他端側が開口した穴状でクリップ71を収容する収容部53が形成されている。
【0038】
<連結棒>
連結棒60は、第1プレート40及び第2プレート50を連結する棒である。連結棒60の一端部61は、圧入穴42に圧入されている。連結棒60の他端部62は、第2プレート50から他端側に突出しており、他端部62にはクリップ71が取り付けられ周方向に延びる溝63が形成されている(図3図5(a)参照)。
【0039】
溝63を軸方向において囲む一端側の第1当接面63aと他端側の第2当接面63bとにクリップ71が当接することで、つまり、クリップ71が溝63に差し込まれ、第1当接面63a及び第2当接面63bで挟まれることで、連結棒60に対してクリップ71が軸方向において位置決めされるようになっている。これにより、クリップ71が連結棒60の一端側に移動しないようになっている。したがって、例えば、第2プレート50が、凹状に歪まないようになっている。
【0040】
<クリップ>
クリップ71は、他端部62の溝63に止められ、連結棒60から第2プレート50及びカムリング30の脱落を防止する止め具である。クリップ71は軸方向視においてC字形を呈しており、その先端部が開閉可能なばね力を有している(図5(b)参照)。
【0041】
<溝の軸方向位置、クリップの止め位置>
ここで、溝63の軸方向位置、つまり、クリップ71の止め位置について、説明する。
クリップ71の止め位置(溝63の軸方向位置)は、ハウジング100への組み付け前において(図3参照)、第1プレート40及びカムリング30の間と第2プレート50及びカムリング30の間との少なくとも一方に、隙間が形成される位置に設定されている。すなわち、クリップ71の止め位置は、ハウジング100への組み付け前において、第1プレート40及び第2プレート50が、カムリング30に圧接せず、圧力をもってカムリング30を挟持しない構成である。これにより、ハウジング100への組み付け前において、第1プレート40及び第2プレート50が軸方向(厚さ方向)において歪まないようになっている。
【0042】
一方、ハウジング100への組み付け後において(図2参照)、クリップ71は穴状の収容部53に収容され、ハウジング本体110及びカバー120は、第1プレート40、カムリング30及び第2プレート50を軸方向において挟み、第1プレート40及び第2プレート50はカムリング30に密着するようになっている。
【0043】
≪ベーンポンプの組み立て方法(作用効果)≫
まず、ベーンポンプユニット1の組み立て方法を説明する。
【0044】
連結棒60の一端部61を第1プレート40の圧入穴42に差し込み圧入する。この場合において、一端部61の圧入長さが設計時の所定長さとなるように、例えば、(1)一端部61が圧入穴42の底面に当接した場合、圧入長さが設計時の所定長さとなるように構成されている。その他、(2)一端部61の外周面に軸方向の位置決め用の突起を形成し、この突起が第1プレート40に当接した場合に、圧入長さが設計時の所定長さとなる構成としてもよい。
【0045】
次いで、ロータ10とセレーション結合したシャフト16の一端部を、支持部41に差し込むと共に、ベーン20が装着されたロータ10を第1プレート40の上に重ねる。これに並行して、連結棒60を、ロータ10を囲むカムリング30の貫通孔32に挿し通し、カムリング30も第1プレート40の上に重ねる。
【0046】
次いで、シャフト16を第2プレート50の貫通孔51に挿し通し、連結棒60を第2プレート50の貫通孔52に挿し通し、第2プレート50をロータ10及びカムリング30の上に重ねる。この状態において、連結棒60の他端部62は、第2プレート50から突出している。
【0047】
次いで、クリップ71を連結棒60の溝63に取り付ける。これにより、ベーンポンプユニット1を得る。
この状態において、クリップ71が取り付けられているので、第2プレート50、カムリング30、ロータ10等が脱落することはない。これにより、ベーンポンプユニット1の運搬中に、第2プレート50等が脱落することはなく、ベーンポンプユニット1の取り扱いは容易となる。
【0048】
また、この状態において、第1プレート40及び第2プレート50はカムリング30に圧接しておらず、第1プレート40及び第2プレート50が歪むことはない。
【0049】
次に、ベーンポンプ200の組み立て方法を説明する。
ハウジング本体110の収容室111にベーンポンプユニット1を収容する。次いで、ハウジング本体110及びベーンポンプユニット1をカバー120で覆い、ハウジング本体110及びカバー120をボルト131で締結する。
【0050】
そうすると、ハウジング100はベーンポンプユニット1を軸方向において挟み、つまり、ハウジング本体110及びカバー120は、第1プレート40、第2プレート50及びカムリング30を挟み、第1プレート40及び第2プレート50がカムリング30に密着する。
そうすると、ベーンポンプ200を得る。
【0051】
このようなベーンポンプユニット1、ベーンポンプ200によれば、例えば、メイン工場(マザー工場)においてベーンポンプユニット1を製造し、ベーンポンプユニット1を各地のサブ工場に搬送した後、サブ工場においてベーンポンプユニット1をハウジング100に組み付け、ベーンポンプ200を製造できる。この場合において、メイン工場からサブ工場へのベーンポンプユニット1の搬送中、クリップ71が連結棒60に止められているので、第2プレート50等が脱落することはなく、また、第1プレート40、第2プレート50が歪むこともない。そして、サブ工場にはベーンポンプユニット1を組み立てる設備が不要であるから、サブ工場を省スペース化しつつ、ベーンポンプ200を低コストで製造できる。
【0052】
≪変形例≫
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されず、例えば、次のように変更してもよい。
【0053】
図6(a)、図6(b)に示す連結棒60、クリップ72の構成としてもよい。図6(a)に示すように、連結棒60の他端部62には段違いで縮径した小径部64が形成されており、段違い面はクリップ72が当接する当接面64aを構成している。クリップ72はリング板状を呈している。クリップ72の内周縁部には径方向外向きに延びる複数のスリットが周方向に等間隔で形成され、内周縁部を複数のばね片72aに分割している。そして、小径部64がクリップ72に挿入されると、複数のばね片72aが小径部64の外周面に圧接し、クリップ72が連結棒60に取り付けられるようになっている。
【0054】
図7(a)、図7(b)に示す連結棒60、クリップ73の構成としてもよい。図7(a)に示すように、連結棒60の他端部62には径方向に延びる差込孔65が形成されている。クリップ73は、差込孔65に差し込まれる差込片73aと、他端部62の外周面に圧接する圧接片73bとを備えている。
【符号の説明】
【0055】
1 ベーンポンプユニット
10 ロータ
20 ベーン
30 カムリング
40 第1プレート
50 第2プレート
60 連結棒
61 一端部
62 他端部
63 溝
63a 第1当接面
63b 第2当接面
64a 当接面
71、72、73 クリップ(止め具)
100 ハウジング
200 ベーンポンプ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7