特開2015-137584(P2015-137584A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-137584(P2015-137584A)
(43)【公開日】2015年7月30日
(54)【発明の名称】排気管
(51)【国際特許分類】
   F01N 13/14 20100101AFI20150703BHJP
   F01N 13/08 20100101ALI20150703BHJP
   F16L 59/147 20060101ALI20150703BHJP
【FI】
   F01N13/14
   F01N13/08 A
   F16L59/147
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-9462(P2014-9462)
(22)【出願日】2014年1月22日
(71)【出願人】
【識別番号】391002498
【氏名又は名称】フタバ産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】永田 好伸
【テーマコード(参考)】
3G004
3H036
【Fターム(参考)】
3G004AA01
3G004BA06
3G004DA14
3G004EA05
3G004FA01
3H036AA01
3H036AB15
3H036AB24
3H036AB32
3H036AB44
3H036AC06
3H036AD09
(57)【要約】
【課題】初期状態での暖機性能及び定常状態での保温性能が共に良好な排気管を提供する。
【解決手段】二重管構造の排気管であって、外管と、前記外管よりも肉厚が薄く、前記外管の内側において排気流路を形成する内管と、前記内管との間に空気層を残す形で前記外管の内面に沿って設けられた断熱層と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
二重管構造の排気管であって、
外管と、
前記外管よりも肉厚が薄く、前記外管の内側において排気流路を形成する内管と、
前記内管との間に空気層を残す形で前記外管の内面に沿って設けられた断熱層と、
を備えることを特徴とする排気管。
【請求項2】
請求項1に記載の排気管であって、
前記外管の内面と前記内管の外面との間に挟まれた状態で設けられる介在部材を更に備え、
前記内管は、前記介在部材によって前記外管の内側に固定されている
を特徴とする排気管。
【請求項3】
請求項2に記載の排気管であって、
前記介在部材は、前記排気流路と前記空気層とを区画する
ことを特徴とする排気管。
【請求項4】
請求項2又は請求項3に記載の排気管であって、
第1の軸方向と平行な方向を除く方向への前記内管の移動を規制する第1の前記介在部材と、
前記第1の軸方向と平行でない第2の軸方向と平行な方向を除く方向への前記内管の移動を規制する第2の前記介在部材と、
を備えることを特徴とする排気管。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二重管構造の排気管に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関の排気系において排ガスの温度低下を抑制するための排気管として、二重管構造の排気管が知られている。例えば特許文献1には、外管と、外管に内挿された内管と、により二重管を形成した排気管が開示されている。この排気管では、排気流路を形成する内管の熱容量を小さくするために、内管の肉厚が極力薄く設計されている。内管は、一端が溶接により外管に固定され、他端がワイヤメッシュ製の支持部材により支持されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−63958号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述した特許文献1に記載の排気管によれば、内管の熱容量が小さく、かつ、内管と外管との間に形成された空気層が断熱効果を奏するため、排ガスの温度が上昇傾向にある初期状態において、排ガスの熱を奪われにくくする(暖機性能を高くする)ことができる。しかしながら、排気流路を形成する管の外面に沿って断熱層が設けられた構成と比較すると、定常状態での排ガスの保温性能が劣る。かといって、このような断熱層が設けられた構成では、断熱層により熱容量が増加する分、初期状態での暖機性能が低くなる。
【0005】
本発明は、初期状態での暖機性能及び定常状態での保温性能が共に良好な排気管を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面は、二重管構造の排気管であって、外管と、前記外管よりも肉厚が薄く、前記外管の内側において排気流路を形成する内管と、前記内管との間に空気層を残す形で前記外管の内面に沿って設けられた断熱層と、を備える。このように、内管の肉厚が薄く、かつ、内管の外側(内管と断熱層との間)に空気層が形成されているため、排気流路を形成する管の外面に沿って断熱層が設けられた構成と比較して、断熱層による熱容量の影響が小さく、初期状態での暖機性能が良好となる。しかも、空気層の外側(外管の内側)に断熱層が設けられているため、断熱層が設けられていない構成と比較して、定常状態での保温性能が良好となる。したがって、このような構成によれば、初期状態での暖機性能及び定常状態での保温性能を共に良好にすることができる。
【0007】
上記構成において、前記外管の内面と前記内管の外面との間に挟まれた状態で設けられる介在部材を更に備え、前記内管は、前記介在部材によって前記外管の内側に固定されていてもよい。このような構成によれば、外管と内管とが接触している構成と比較して、内管から外管への伝熱を抑えることができる。
【0008】
上記構成において、前記介在部材は、前記排気流路と前記空気層とを区画してもよい。このような構成によれば、空気層への排ガスの侵入を抑制することで、空気層による断熱性能を高めることができる。
【0009】
上記構成において、第1の軸方向と平行な方向を除く方向への前記内管の移動を規制する第1の前記介在部材と、前記第1の軸方向と平行でない第2の軸方向と平行な方向を除く方向への前記内管の移動を規制する第2の前記介在部材と、を備えてもよい。このような構成によれば、例えば内管が単なる直管である場合と比較して、外管に対する内管の位置ずれを生じにくくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態の排気管の断面図である。
図2図2(A)は第1比較例の排気管の断面図、図2(B)は第2比較例の排気管の断面図、図2(C)は第3比較例の排気管の断面図である。
図3図3(A)は初期状態での排ガスの温度低下代の経時変化を示すグラフ、図3(B)は定常状態での排ガスの温度の経時変化を示すグラフである。
図4】変形例の排気管の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明が適用された実施形態について、図面を用いて説明する。
[1.構成]
図1に示す二重管構造の排気管1は、自動車の内燃機関から排出されて矢印F1に示す方向へ流れる排ガスを、自動車の外部へ導くための排気流路の一部を形成する。ここでいう排気流路の一部とは、例えば、排ガスを浄化するために設けられた図示しない触媒よりも上流側の排気流路である。排気管1には、内燃機関からの排ガスが流れる主流路とは別に、図示しない噴射装置により矢印F2に示す方向へ噴射された液状の還元剤を主流路へ導く副流路が形成されている。なお、ここでいう還元剤とは、排ガス中に含まれる窒素酸化物を、触媒(例えばSCR方式の触媒)において還元浄化するためのものであり、例えば尿素水が用いられる。
【0012】
排気管1は、外管11と、内管12と、断熱層13と、介在部材14,15,16と、を備える。
外管11は、二重管の外側を形成する管状部材である。本実施形態の外管11は、湾曲した形状の金属製の円管部材であって、主流路を形成する本体部111と、副流路を形成する枝部112と、を備える。外管11は、排気管1に要求される強度を確保するための肉厚に設計されている。
【0013】
内管12は、二重管の内側を形成する管状部材である。本実施形態の内管12は、外管11よりも一回り小さく、外管11と同様に湾曲した形状の金属製の円管部材である。内管12は、その中心軸が外管11の中心軸と一致するように(断面が同心円状となるように)外管11の内側に設けられ、外管11の内側において排気流路(排ガスと接触する流路)を形成する。具体的には、外管11及び内管12のそれぞれにおける上流側円管部の中心軸C1は共通であり、外管11及び内管12のそれぞれにおける下流側円管部の中心軸C2も共通である。また、内管12には、外管11の枝部112を臨む部分(副流路が主流路に合流する部分)に、貫通孔121が形成されている。内管12は、排気管1の強度に直接寄与する部材ではなく、外管11よりも肉厚が薄く設計されている。
【0014】
断熱層13は、断熱性を有する材料(少なくとも外管11よりも熱伝導率の低い材料)で形成されている。本実施形態では、アルミナ繊維をマット状に成形した断熱材であるアルミナマットを用いて断熱層13が形成されている。断熱層13は、内管12との間に空気層(隙間)を残す形で外管11の内面に沿って設けられている。
【0015】
介在部材14,15,16は、外管11と内管12との間の空間を形成するスペーサとして機能するものであり、外管11の内面と内管12の外面との間に挟まれた状態で設けられる。具体的には、本実施形態では、断熱層13が介在部材14,15,16の外側にも設けられているため、介在部材14,15,16は、断熱層13と内管12とにより挟まれた状態となる。
【0016】
介在部材14,15は、円筒状(本実施形態では、直線帯状かつマット状の部材を内管12の外面に沿って円筒状に丸めた形状)の部材である。介在部材14,15は、内管12の両端部に設けられ、内管12の内側に形成された排気流路と、内管12の外側に形成された空気層と、を区画する。
【0017】
介在部材16は、環状(本実施形態では、環帯状かつマット状)の部材であり、貫通孔121の周囲を囲むように設けられ、内管12の内側に形成された排気流路と、内管12の外側に形成された空気層と、を区画する。
【0018】
内管12は、外管11に接触しておらず、介在部材14,15,16(主として介在部材14,15)によって、外管11の内側に固定されている。具体的には、上流側の介在部材14は、上流側円管部の中心軸C1(第1の軸方向)と平行な方向を除く方向への内管12の移動を規制する。また、下流側の介在部材15は、上流側円管部の中心軸C1と平行でない下流側円管部の中心軸C2(第2の軸方向)と平行な方向を除く方向への内管12の移動を規制する。したがって、外管11と内管12とを溶接等で接合しなくても、介在部材14,15により、外管11に対する内管12の移動が規制される。介在部材14,15,16は、弾性及び断熱性を有する材料で形成されることが好ましく、本実施形態では、断熱層13と同じ材料(アルミナマット)が用いられている。
【0019】
[2.効果]
以上詳述した実施形態によれば、以下の効果が得られる。
[2A]排気管1では、排気流路を形成する内管12の肉厚が外管11の肉厚よりも薄く設計され、かつ、内管12の外側(内管12と断熱層13との間)に空気層が形成されている。このため、排気管1は、排気流路を形成する管の外面に沿って断熱層が設けられた構成と比較して、断熱層13による熱容量の影響が小さく、初期状態での暖機性能が良好となる。しかも、排気管1では、空気層の外側(外管11の内側)に断熱層13が設けられている。このため、排気管1は、断熱層が設けられていない構成と比較して、定常状態での保温性能が良好となる。したがって、排気管1によれば、初期状態での暖機性能及び定常状態での保温性能を共に良好にすることができる。
【0020】
図2(A)に示す第1比較例の排気管21は、上記実施形態の排気管1と比較すると、内管12、断熱層13及び介在部材14,15,16を備えていない点で相違する。つまり、第1比較例の排気管21は、二重管構造ではなく、断熱構造でない点で、上記実施形態の排気管1と相違する。
【0021】
図2(B)に示す第2比較例の排気管22は、上記実施形態の排気管1と比較すると、内管12、断熱層13及び介在部材14,15,16を備えていない代わりに、外管11の外側に断熱層221を備える点で相違する。つまり、第2比較例の排気管22は、二重管構造ではなく、断熱層221による断熱構造とされている点で、上記実施形態の排気管1と相違する。
【0022】
図2(C)に示す第3比較例の排気管23は、上記実施形態の排気管1と比較すると、断熱層13を備えていない点で相違する。つまり、第3比較例の排気管23は、二重管構造であるが、断熱層13を備えていない点で、上記実施形態の排気管1と相違する。なお、図2(C)に示す介在部材231,232,233は、上記実施形態の介在部材14,15,16と同様のものであり、断熱層13が存在しない分、肉厚が厚い点が相違する。
【0023】
図3(A)に示すように、初期状態での排ガスの温度低下代は、第2比較例の排気管22が最も大きく(排ガスの熱が最も奪われやすく)、第3比較例の排気管23が最も小さい(排ガスの熱が最も奪われにくい)。本実施形態の排気管1は、第3比較例の排気管23にほぼ近い性能を発揮し、第2比較例の排気管22と比較すると、初期状態での暖機性能を大幅に高くすることができる。
【0024】
また、図3(B)に示すように、定常状態での排ガスの温度は、第1比較例の排気管21が最も下がり(排ガスの熱が最も奪われやすく)、第2比較例の排気管22が最も下がらない(排ガスの熱が最も奪われにくい)。本実施形態の排気管1は、第2比較例の排気管22にほぼ近い性能を発揮し、第3比較例の排気管23と比較すると、定常状態での保温性能を大幅に高くすることができる。
【0025】
[2B]内管12は、介在部材14,15によって外管11の内側に固定されている。したがって、排気管1によれば、外管11と内管12とが接触している構成と比較して、内管12から外管11への伝熱を抑えることができる。
【0026】
[2C]介在部材14,15,16は、排気流路と空気層とを区画する。したがって、排気管1によれば、空気層への排ガスの侵入を抑制することで、空気層による断熱性能を高めることができる。
【0027】
[2D]介在部材14は、第1の軸方向と平行な方向を除く方向への内管12の移動を規制する。また、介在部材15は、第2の軸方向と平行な方向を除く方向への内管12の移動を規制する。したがって、排気管1によれば、例えば内管12が単なる直管である場合と比較して、外管11に対する内管12の位置ずれを生じにくくすることができる。
【0028】
[3.他の実施形態]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されることなく、種々の形態を採り得ることは言うまでもない。
【0029】
[3A]上記実施形態では、断熱層13が介在部材14,15,16の外側にも設けられ、介在部材14,15,16が断熱層13と内管12との間に挟まれた構成(介在部材14,15,16が断熱層13を介して外管11の内面と内管12の外面との間に挟まれた構成)を例示したが、これに限定されるものではない。例えば図4に示す排気管3のように、断熱層33が介在部材34,35,36の外側に設けられておらず、介在部材34,35,36が外管11と内管12とにより直接挟まれた構成であってもよい。
【0030】
[3B]二重管を形成する外管及び内管は、円管以外の形状であってもよい。また、外管及び内管は、湾曲していない形状であってもよい。
[3C]断熱層は、アルミナマット以外の断熱材(例えばグラスウール等)を用いて形成されていてもよい。また、断熱層は、外管の内面における少なくとも一部に設けられていてもよい。
【0031】
[3D]介在部材の数、形状、材質等は特に限定されない。例えば、介在部材の材質は、断熱材以外であってもよい。また、排気管は、介在部材を備えない構成であってもよい。
【0032】
[3E]排気管の設置場所は特に限定されない。例えば、排気管は、還元剤の流路を有しない構成であってもよい。また例えば、排気管の設置場所は、触媒の上流側以外であってもよい。また例えば、排気管は、自動車以外に用いられるものであってもよい。
【0033】
[3F]上記実施形態における1つの構成要素が有する機能を複数の構成要素として分散させたり、複数の構成要素が有する機能を1つの構成要素に統合したりしてもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、同様の機能を有する公知の構成に置き換えてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を、課題を解決できる限りにおいて省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加、置換等してもよい。なお、特許請求の範囲に記載の文言から特定される技術思想に含まれるあらゆる態様が本発明の実施形態である。
【0034】
[3G]本発明は、前述した排気管の他、排気管の製造方法など、種々の形態で実現することができる。
【符号の説明】
【0035】
1…排気管、11…外管、12…内管、13…断熱層、14,15,16…介在部材。
図1
図2
図3
図4