(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-13792(P2015-13792A)
(43)【公開日】2015年1月22日
(54)【発明の名称】高結晶性二酸化ケイ素がコーティングされたチタン酸バリウムの製造方法及びその方法で製造した高結晶性二酸化ケイ素がコーティングされたチタン酸バリウム粉末
(51)【国際特許分類】
C01G 23/00 20060101AFI20141219BHJP
【FI】
C01G23/00 C
【審査請求】有
【請求項の数】19
【出願形態】OL
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2013-214676(P2013-214676)
(22)【出願日】2013年10月15日
(31)【優先権主張番号】10-2013-0078939
(32)【優先日】2013年7月5日
(33)【優先権主張国】KR
(71)【出願人】
【識別番号】594023722
【氏名又は名称】サムソン エレクトロ−メカニックス カンパニーリミテッド.
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】龍華国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】パーク、クム ジン
(72)【発明者】
【氏名】チョイ、チャン ハク
(72)【発明者】
【氏名】ジョン、ヒュン ジョーン
【テーマコード(参考)】
4G047
【Fターム(参考)】
4G047CA07
4G047CB05
4G047CB09
4G047CD04
(57)【要約】
【課題】高結晶性二酸化ケイ素(SiO
2)がコーティングされたチタン酸バリウムの製造方法及びその方法で製造した高結晶性二酸化ケイ素(SiO
2)がコーティングされたチタン酸バリウム粉末に関する。
【解決手段】本発明による高結晶性二酸化ケイ素(SiO
2)がコーティングされたチタン酸バリウムの製造方法は、ケイ素(Si)を含む物質を添加した後、加温してバリウム(Ba)をイオン化した水酸化バリウム原材料を設ける段階と、酸または塩基に分散されたチタン(Ti)原材料を設ける段階と、上記水酸化バリウム原材料及びチタン原材料を混合及び反応させてチタン酸バリウムのシード(seed)を得る段階と、上記チタン酸バリウムのシードを純水及び粒成長抑制剤と混合して粒成長させる段階と、上記粒成長したチタン酸バリウムのシードの表面に二酸化ケイ素(SiO
2)をコーティングする段階と、を含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケイ素(Si)を含む物質を添加した後に加温してバリウム(Ba)をイオン化した水酸化バリウム原材料を設ける段階と、
酸または塩基により分散されたチタン(Ti)原材料を設ける段階と、
前記水酸化バリウム原材料及び前記チタン原材料を混合及び反応させてチタン酸バリウムのシード(seed)を得る段階と、
前記チタン酸バリウムのシードを純水及び粒成長抑制剤と混合して粒成長させる段階と、
前記粒成長した前記チタン酸バリウムのシードの表面に二酸化ケイ素(SiO2)をコーティングする段階と、
を含む高結晶性二酸化ケイ素(SiO2)がコーティングされたチタン酸バリウムの製造方法。
【請求項2】
前記水酸化バリウム原材料は水酸化バリウム八水和物である、請求項1に記載の高結晶性二酸化ケイ素(SiO2)がコーティングされたチタン酸バリウムの製造方法。
【請求項3】
前記水酸化バリウム原材料を設ける段階は、水酸化バリウムにケイ素(Si)を含む物質を添加した後に窒素雰囲気で撹拌し、70℃以上に加温して溶解させることを特徴とする、請求項1又は2に記載の高結晶性二酸化ケイ素(SiO2)がコーティングされたチタン酸バリウムの製造方法。
【請求項4】
前記チタン(Ti)原材料は含水チタンまたは二酸化チタンである、請求項1から3のいずれか一項に記載の高結晶性二酸化ケイ素(SiO2)がコーティングされたチタン酸バリウムの製造方法。
【請求項5】
前記水酸化バリウム原材料及び前記チタン原材料を混合及び反応させる段階は80℃以上で行われる、請求項1から4のいずれか一項に記載の高結晶性二酸化ケイ素(SiO2)がコーティングされたチタン酸バリウムの製造方法。
【請求項6】
前記水酸化バリウム原材料及び前記チタン原材料を混合及び反応させる段階は、急速攪拌、マイクロ波及び超音波の何れか一つを用いて行われる、請求項1から5のいずれか一項に記載の高結晶性二酸化ケイ素(SiO2)がコーティングされたチタン酸バリウムの製造方法。
【請求項7】
前記水酸化バリウム原材料及び前記チタン原材料を混合及び反応させる段階において、バリウムとチタンの混合モル比(バリウム/チタン)は1以上3以下である、請求項1から6のいずれか一項に記載の高結晶性二酸化ケイ素(SiO2)がコーティングされたチタン酸バリウムの製造方法。
【請求項8】
前記水酸化バリウム原材料及び前記チタン原材料を混合及び反応させる段階において、前記バリウムと前記チタンの混合モル比(バリウム/チタン)は1.2以上2以下である、請求項7に記載の高結晶性二酸化ケイ素(SiO2)がコーティングされたチタン酸バリウムの製造方法。
【請求項9】
前記粒成長抑制剤は溶媒の極性及びpHを下げ、再析出を抑制する物質である、請求項1から8のいずれか一項に記載の高結晶性二酸化ケイ素(SiO2)がコーティングされたチタン酸バリウムの製造方法。
【請求項10】
前記粒成長抑制剤はケイ酸エチル(ethyl silicate)、ケイ酸(silicic acid)、ビニルトリエトキシシラン(vinytriethoxysilane)及びテトラヒドロキシシラン(tetrahydroxy silane)からなる群より選ばれる少なくとも一つである、請求項9に記載の高結晶性二酸化ケイ素(SiO2)がコーティングされたチタン酸バリウムの製造方法。
【請求項11】
前記粒成長させる段階で混合する前記チタン酸バリウムのシードの濃度は0.01〜0.7Mである、請求項1から10のいずれか一項に記載の高結晶性二酸化ケイ素(SiO2)がコーティングされたチタン酸バリウムの製造方法。
【請求項12】
前記粒成長させる段階は前記チタン酸バリウムのシードと前記純水及び前記粒成長抑制剤を混合して密封し、150〜380℃の温度で、オートクレーブ(Autoclave)内で1〜72時間撹拌しながら反応させることを特徴とする、請求項1から11のいずれか一項に記載の高結晶性二酸化ケイ素(SiO2)がコーティングされたチタン酸バリウムの製造方法。
【請求項13】
表面に二酸化ケイ素(SiO2)コーティング層が形成されており、前記二酸化ケイ素(SiO2)コーティング層の平均厚さは0.01nm〜20nmで、前記二酸化ケイ素(SiO2)コーティング層の最小厚さ(tmin)に対する最大厚さ(tmax)の比(tmax/tmin)がtmax/tmin≦2.0を満たす、高結晶性二酸化ケイ素(SiO2)がコーティングされたチタン酸バリウム粉末。
【請求項14】
前記チタン酸バリウム粉末は平均粒径が5〜200nmで、結晶軸比(c/a)が1.001〜1.010である、請求項13に記載の高結晶性二酸化ケイ素(SiO2)がコーティングされたチタン酸バリウム粉末。
【請求項15】
前記チタン酸バリウム粉末の粒径が5〜20nmの場合、結晶軸比(c/a)が1.001〜1.005である、請求項14に記載の高結晶性二酸化ケイ素(SiO2)がコーティングされたチタン酸バリウム粉末。
【請求項16】
前記チタン酸バリウム粉末の粒径が20〜40nmの場合、結晶軸比(c/a)が1.003〜1.0055である、請求項14又は15に記載の高結晶性二酸化ケイ素(SiO2)がコーティングされたチタン酸バリウム粉末。
【請求項17】
前記チタン酸バリウム粉末の粒径が40〜60nmの場合、結晶軸比(c/a)が1.0045〜1.0075である、請求項14から16のいずれか一項に記載の高結晶性二酸化ケイ素(SiO2)がコーティングされたチタン酸バリウム粉末。
【請求項18】
前記チタン酸バリウム粉末の粒径が60〜80nmの場合、結晶軸比(c/a)が1.0062〜1.009である、請求項14から17のいずれか一項に記載の高結晶性二酸化ケイ素(SiO2)がコーティングされたチタン酸バリウム粉末。
【請求項19】
前記チタン酸バリウム粉末の粒径が80〜200nmの場合、結晶軸比(c/a)が1.0080〜1.01である、請求項14から18のいずれか一項に記載の高結晶性二酸化ケイ素(SiO2)がコーティングされたチタン酸バリウム粉末。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高結晶性二酸化ケイ素(SiO
2)がコーティングされたチタン酸バリウムの製造方法及びその方法で製造した高結晶性二酸化ケイ素(SiO
2)がコーティングされたチタン酸バリウム粉末に関する。
【背景技術】
【0002】
今日、電子部品産業の軽薄短小化、高容量化、高信頼性化などの傾向により、積層セラミックキャパシタ(MLCC)の強誘電体材料として用いられるチタン酸バリウム粒子には小さく、且つ優れた誘電率及び信頼性が求められている。
【0003】
このようなチタン酸バリウム粉末を製造する方法には固相法、湿式法があり、湿式法はオキサレート沈殿法、水熱合成法などがある。固相法は、普通粒子の最小粉末サイズが1ミクロン前後とかなり大きい方で、粒子のサイズが調節が困難で、粒子同士の凝集現象と焼成時に発生する汚染などが問題となり、チタン酸バリウムを微粒子に製造することが困難である。
【0004】
誘電体粒子のサイズが小さくなるに伴って正方性(tetragonality)が低下するのは、様々な工法で一般的に現れる現象であり、100nm以下に小さくなると、結晶軸比(c/a)の確保が極めて困難である。また、粉末のサイズが小さくなるにつれて、分散がさらに困難となる。そのため、微粒粉末であるほど、高い分散性が要求される。
【0005】
既存の固相法または共沈法は、高温か焼によって結晶相を形成するため、高温か焼工程及び粉砕工程が必要である。そのため、合成されたチタン酸バリウムの形状が悪く、粒度分布が広いという短所があり、熱処理により凝集し分散が困難であり、粉砕後の微粒生成の問題点がある。
【0006】
熱処理なしに水熱でチタン酸バリウムを合成する場合、分散問題を解決することができ、また、水熱合成は形状の制御が容易で、小さいサイズ、粒子サイズの偏差が小さいチタン酸バリウムを合成することができる。しかし、水系で合成するため、ペロブスカイト結晶構造において、酸素位置に−OH基が置換され、これにより、気孔などの欠陥が多いため、合成された粒子の結晶性を上げることが困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−067504号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、高結晶性チタン酸バリウムの製造方法及びその方法で製造した高結晶性チタン酸バリウム粉末に関する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一実施形態は、ケイ素(Si)を含む物質を添加した後に加温してバリウム(Ba)をイオン化した水酸化バリウム原材料を設ける段階と、酸または塩基に分散されたチタン(Ti)原材料を設ける段階と、上記水酸化バリウム原材料及びチタン原材料を混合及び反応させてチタン酸バリウムのシード(seed)を得る段階と、上記チタン酸バリウムのシードを純水及び粒成長抑制剤と混合して粒成長させる段階と、上記粒成長したチタン酸バリウムのシードの表面に二酸化ケイ素(SiO
2)をコーティングする段階と、を含む高結晶性二酸化ケイ素(SiO
2)がコーティングされたチタン酸バリウムの製造方法を提供する。
【0010】
上記水酸化バリウム原材料は、水酸化バリウム八水和物であってもよい。
【0011】
上記水酸化バリウム原材料を設ける段階は、水酸化バリウムにケイ素(Si)を含む物質を添加した後に窒素雰囲気で撹拌し、70℃以上に加温して溶解させることを特徴とする。
【0012】
上記チタン(Ti)原材料は、含水チタンまたは二酸化チタンであってもよい。
【0013】
上記水酸化バリウム原材料及びチタン原材料を混合及び反応させる段階は、80℃以上で行われてもよい。
【0014】
上記水酸化バリウム原材料及びチタン原材料を混合及び反応させる段階は、急速攪拌、マイクロ波及び超音波の何れか一つを用いて行われてもよい。
【0015】
上記水酸化バリウム原材料及びチタン原材料を混合及び反応させる段階において、バリウムとチタンの混合モル比(バリウム/チタン)は1以上3以下であってもよい。
【0016】
また、上記水酸化バリウム原材料及びチタン原材料を混合及び反応させる段階において、バリウムとチタンの混合モル比(バリウム/チタン)は1.2以上2以下であってもよい。
【0017】
上記粒成長抑制剤は溶媒の極性及びpHを下げ、再析出を抑制する物質であってもよい。
【0018】
上記粒成長抑制剤はケイ酸エチル(ethyl silicate)、ケイ酸(silicic acid)、ビニルトリエトキシシラン(vinytriethoxysilane)及びテトラヒドロキシシラン(tetrahydroxy silane)からなる群より選ばれる少なくとも一つであってもよい。
【0019】
上記粒成長段階で混合される上記チタン酸バリウムのシードの濃度は、0.01〜0.7Mであってもよい。
【0020】
上記粒成長段階は、チタン酸バリウムのシードと純水及び粒成長抑制剤を混合して密封し、150〜380℃の温度で、オートクレーブ(Autoclave)内で1〜72時間撹拌しながら反応させることを特徴とする。
【0021】
本発明の他の実施形態は、表面に二酸化ケイ素(SiO
2)コーティング層が形成されており、上記二酸化ケイ素(SiO
2)コーティング層の平均厚さは0.01nm〜20nmで、上記コーティング層の最小厚さ(tmin)に対する最大厚さ(tmax)の比(tmax/tmin)がtmax/tmin≦2.0を満たす高結晶性二酸化ケイ素(SiO
2)がコーティングされたチタン酸バリウム粉末を提供する。
【0022】
上記チタン酸バリウム粉末は平均粒径が5〜200nmで、結晶軸比(c/a)が1.003〜1.010であることを特徴とする。
【0023】
上記結晶軸比(c/a)は、チタン酸バリウム粉末の粒子サイズが5〜20nmの場合に1.001〜1.005で、チタン酸バリウム粉末の粒子サイズが20〜40nmの場合に1.003〜1.0055で、40〜60nmの場合に1.0045〜1.0075で、60〜80nmの場合に1.0062〜1.009で、80〜200nmの場合に1.0080〜1.01である。
【発明の効果】
【0024】
本発明の高結晶性二酸化ケイ素(SiO
2)がコーティングされたチタン酸バリウムの製造方法により製造されたチタン酸バリウム粉末は、水酸化バリウムとチタン原材料を混合して急速にシード(seed)を形成し、高温及び高圧下でゆっくり粒成長させて製造されるため、微粒子であるにも係らず高い結晶軸比(c/a)を有し、粒度分布に優れ、内部に気孔が殆どなく、巨大粒子がなく、ネッキング(necking)がなくて分散性に極めて優れ、表面密度が高くて焼成時に粒子同士の凝集現象がないため、広い領域で安定的に焼結されるという効果がある。
【0025】
また、積層セラミック電子部品に、本発明である二酸化ケイ素(SiO
2)がコーティングされたチタン酸バリウム粉末を誘電体として適用すると、焼成初期の粒子間のネッキング(necking)を抑制し、添加剤がグレーンの境界に沿ってうまく広がるため、焼成温度を下げて部品の信頼性及び電気的特性を向上させることができる。
【0026】
具体的には、二酸化ケイ素(SiO
2)がコーティングされたチタン酸バリウム粉末を共材として使用すると、従来に比べて、粒子同士のネッキング(necking)を遅延させながら、緻密化が完了する最終焼成温度を下げることで、内部電極の連結性を向上させて、静電容量を増加させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本発明の実施形態による高結晶性二酸化ケイ素(SiO
2)がコーティングされたチタン酸バリウムの製造工程を示すフローチャートである。
【
図2】本発明の実施例1によるチタン酸バリウム粉末のSEM(Scanning Electron Microscope)写真である。
【
図3】本発明の実施例1によるチタン酸バリウム粉末のTEM(Transmission Electron Microscope)写真である。
【
図6】本発明の実施例2によるチタン酸バリウム粉末のSEM(Scanning Electron Microscope)写真である。
【
図7】本発明の実施例3によるチタン酸バリウム粉末のTEM(Transmission Electron Microscope)写真である。
【
図10】本発明の実施例3によるチタン酸バリウム粉末のSTEM EDS(Scanning Transmission Electron Microscope Energy Dispersive Spectrometry)の分析結果を示すグラフである。
【
図11】本発明の実施例及び比較例によるチタン酸バリウム粉末のTMA(Thermo mechanical Analyzer)測定結果を示すグラフである。
【
図12】本発明の実施例によるチタン酸バリウム粉末を利用して製作した積層セラミックキャパシタの断面写真である。
【
図13】本発明の比較例によるチタン酸バリウム粉末を利用して製作した積層セラミックキャパシタの断面写真である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下では、添付の図面を参照し、本発明の好ましい実施形態について説明する。しかし、本発明の実施形態は様々な他の形態に変形されることができ、本発明の範囲は以下で説明する実施形態に限定されない。また、本発明の実施形態は、当該技術分野で平均的な知識を有する者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。図面における要素の形状及び大きさなどはより明確な説明のために誇張されることがある。
【0029】
図1は本発明の実施形態による高結晶性二酸化ケイ素(SiO
2)がコーティングされたチタン酸バリウムの製造工程を示すフローチャートである。
【0030】
図1を参照すると、本実施形態による高結晶性チタン酸バリウムの製造工程は、ケイ素(Si)を含む物質を添加した後、加温してバリウム(Ba)をイオン化した水酸化バリウム原材料を設ける段階(S1)と、酸または塩基に分散されたチタン(Ti)原材料を設ける段階(S2)と、上記水酸化バリウム原材料及びチタン原材料を混合及び反応させてチタン酸バリウムのシード(seed)を得る段階(S3)と、上記チタン酸バリウムのシードを純水及び粒成長抑制剤と混合して高圧下で粒成長させる段階(S4、S5)と、上記粒成長したチタン酸バリウムのシードの表面に二酸化ケイ素(SiO
2)をコーティングする段階(S6)と、を含む。
【0031】
水酸化バリウム(Ba)原材料としては、水酸化バリウム八水和物が用いられる。
【0032】
ケイ素(Si)を含む物質であるケイ素(Si)系塩またはケイ素(Si)系アルコキシドと、水酸化バリウム八水和物(Ba(OH)
28H
2O)とを、大気中の二酸化炭素によってバリウムカーボネートが形成されないように窒素雰囲気で撹拌し、70℃以上に加温して完全に溶解させてバリウム(Ba)をイオン化した水酸化バリウム原材料を用意する(S1)。
【0033】
本発明では、後述するチタン(Ti)原材料と混合及び反応させるときに急速に核生成しなければならないため、バリウム(Ba)原材料を加温下で完全にイオン化させることが重要である。
【0034】
チタン(Ti)原材料としては、含水チタン(TiO
x/2(OH)
4−X)または酸化チタン(TiO
2)ゾルを用いてもよい。含水チタンは、少量のアンモニアなどの塩基性物質を添加し、ミーリングし分散させて用いる。酸化チタン(TiO
2)ゾルは、炭素鎖の長い分散剤を用いて分散するより、酸または塩基により分散されたゾルを用いることがよい。チタン原材料の粒子サイズは小さいほどよい(S2)。
【0035】
溶解された水酸化バリウム八水和物に上記分散されたチタンゾルを急速に混合させてチタン酸バリウムのシード(seed)を得る(S3)。混合した瞬間にバリウム(Ba)イオンとチタン(Ti)原材料が速く反応することが重要である。
【0036】
本反応において、反応物のバリウムとチタンのモル比(Ba/Ti ratio)は1以上3以下であるが、1.2以上2以下であってもよい。
【0037】
チタン酸バリウムのシード生成が完了するまで、50℃〜200℃以下の温度を保持することがよく、100℃〜150℃の温度を保持してもよい。シード生成が完了した後の温度を100℃以下に下げてから窒素パージをして形成された気体ガスを除去すると、解膠剤などの不純物除去に効果的である。
【0038】
速く反応させるために、混合時の温度は80℃以上にする。そして、シード生成が完了するまで反応させる。
【0039】
チタン原材料とバリウム原材料を混合し、反応させてチタン酸バリウムのシード生成を速くするための方法は、(1)急速攪拌、(2)マイクロ波利用、及び(3)超音波利用の3種に大別できる。
【0040】
先ず、急速攪拌法を利用する場合は、閉じた反応器に小さな孔をあけて弁を連結する。原材料を投入するためのタンクを反応器に連結する。メイン反応器の弁を開けて窒素でパージをしてから閉める。それぞれのタンクを70℃〜200℃になるよう加温した後、メイン反応器の弁を開けて気体圧を抜き、原材料が入っているタンクの弁を同時に開けて加圧し、原材料を急速に投入する。投入する際にインペラを、分当たりの回転数が250以上50000以下になるように回転させる。原材料の投入が完了したら、全ての弁を閉めてから撹拌し、温度を保持してシード生成が完了するまで反応させる。
【0041】
次に、マイクロ波を利用する場合は、反応器にマイクロ波誘導端子を入れて装着し、上記急速攪拌法と同様に、反応器に原材料を投入するためのタンクを連結して密封する。反応器内を窒素でパージをした後、各原材料タンクを加温する。メイン反応器の弁を開けて気体圧を抜き、原材料が入っているタンクの弁を同時に開けて加圧し、原材料を急速に投入する。投入する際、インペラーを回転させながらマイクロ波で加温する。原材料の投入が完了したら、全ての弁を閉めてから撹拌し、マイクロ波で温度を保持してシード生成が完了するまで反応させる。
【0042】
最後に、超音波を利用する場合は、超音波装置として管型超音波装置を使用することがよい。超音波振動部は、反応器の長さの30%〜95%程度になるように設計する。超音波振動部を反応器に入れて密閉する。チタン原材料はメイン反応器に入れ、バリウム原材料を投入するためのタンクは反応器に連結して密封する。反応器内を窒素でパージをした後、メイン反応器と各原材料タンクを加温する。メイン反応器の弁を開けて気体圧を抜き、超音波を作動させ、バリウム原材料が入っているタンクの弁を同時に開けて加圧し、原材料を急速に投入する。投入する際にインペラーを回転させ、超音波を作動させ、温度を保持してシード生成が完了するまで反応させる。
【0043】
シード形成が完了した後、形成されたシード(seed)を回収する。このとき、大気中に露出すると、炭酸バリウム(BaCO
3)が形成される恐れがあるため、露出しないようにしなければならない。
【0044】
本発明の一実施形態によると、上記回収されたチタン酸バリウムのシード(seed)内にはケイ素(Si)が溶解された状態で存在してもよい。
【0045】
後述するように、上記チタン酸バリウムのシード(seed)を冷却する工程で、チタン酸バリウムの表面に上記ケイ素(Si)がコーティングされてもよい。
【0046】
粒成長は高温で、ゆっくり成長することがよい。高エネルギーでゆっくり粒成長しないと、全ての原子が安定した状態で配列されないため、欠陥が除去されない。粒成長は濃度が高いか、pHが高い場合に速い。従って、シード形成が終了してから純水をさらに添加して、濃度とpHを下げる。このとき、形成されたチタン酸バリウムのシードを沈殿させ、余剰液を一部捨てることで、pHをさらに下げることができる。
【0047】
粒成長時のチタン酸バリウムの濃度は0.01M〜0.7Mとする。
【0048】
粒成長を遅らせるために粒成長抑制剤を入れてもよい。粒成長抑制剤としては、ブチレングリコール(Butylene Glycol)、ジメトキシエタン(Dimethoxyethane)、へキサンジオール(Hexanediol)、ヘキシレングリコール(hexyleneglycol)、メトキシエタノール(Methoxyethanol)などを含むアルコール類のように溶媒の極性を下げる物質、アセト酸(acetic acid)、窒酸(nitric acid)などを含む酸類のようにpHを下げる物質、またはアルキル硫酸ナトリウム(sodium alkylsulfate)、アルキルベンゼンスルホン酸塩(alkylbenzene sulfonate)、N−アクリルアミノ酸塩、アクリルアミド(acrlyamide)、ジエタノールアミン(diethanol amine)、アミンオキシド(aminoxide)などを含む界面活性剤(surfactant)類のように再析出を抑制させる物質を使用することができる。
【0049】
具体的には、これに限定されないが、上記粒成長抑制剤は、ケイ酸エチル(ethyl silicate)、ケイ酸(silicic acid)、ビニルトリエトキシシラン(vinytriethoxysilane)及びテトラヒドロキシシラン(tetrahydroxy silane)からなる群より選ばれる少なくとも一つであってもよい。
【0050】
本段階は、オートクレーブ(autoclave)を使用して行い、オートクレーブに上記急速シード形成法により製作された沈殿物、純水及び粒成長抑制剤を入れて密封した後、オートクレーブの温度を150℃〜380℃に上げ、1時間〜72時間撹拌しながら反応させる。
【0051】
温度を下げた後、形成物を取り出して洗浄及びろ過して余剰バリウムを除去し200℃以下で乾燥して、二酸化ケイ素(SiO
2)がコーティングされたチタン酸バリウム粉末を得る。
【0052】
二酸化ケイ素(SiO
2)コーティング層は、レイヤータイプ(layer type)であってもよく、コーティング層の平均厚さは0.01nm〜20nmであってもよいが、必ずしもこれに制限されない。
【0053】
また、上記二酸化ケイ素(SiO
2)コーティング層は、上記チタン酸バリウム粉末粒子の全体を均一に包んでおり、上記コーティング層の最小厚さ(tmin)に対する最大厚さ(tmax)の比(tmax/tmin)がtmax/tmin≦2.0を満たすことができる。
【0054】
上記のように、二酸化ケイ素(SiO
2)コーティング層が上記チタン酸バリウム粉末粒子全体を均一に包んでおり、上記コーティング層の最小厚さ(tmin)に対する最大厚さ(tmax)の比(tmax/tmin)がtmax/tmin≦2.0を満たすことで、焼成初期の粒子同士のネッキング(necking)を抑制し、初期焼成は遅延されるが、焼成が始まると、急速、且つ安定的に焼成される。
【0055】
これにより、上記二酸化ケイ素(SiO
2)がコーティングされたチタン酸バリウム粉末を共材として使用する場合、従来より粒子同士のネッキング(necking)を遅延させながら緻密化が完了する最終焼成温度を減少させることで、内部電極の連結性を向上させて静電容量を増加させることができる。
【0056】
上記コーティング層の最小厚さ(tmin)に対する最大厚さ(tmax)の比(tmax/tmin)が2.0を超えると、チタン酸バリウム粉末の表面に二酸化ケイ素(SiO
2)が均一にコーティングされず、粒子同士のネッキング(necking)を遅延させる効果及び最終焼成温度を減少させる効果がない。
【0057】
上記のように、急速なシード形成と粒成長の制御を通じて得た高結晶性で、二酸化ケイ素(SiO
2)がコーティングされた60nmチタン酸バリウム粉末、及び急速なシード形成と粒成長の制御をせずにシード形成と粒成長後に分離して得た60nmチタン酸バリウム粉末に、それぞれ焼結助剤、可塑剤、バインダーを入れて混合した後、積層セラミックキャパシタを製作して熱処理した。
【0058】
本発明で提示した方法により合成した粉末は、緻密化完了後にも粒成長が起きず、均一な形態の粒子であるが、本発明のように急速なシード形成と粒成長の制御をしない結晶性の低い粉末を合成すると、緻密化完了後に粒成長が急激に起きた。
【0059】
本発明で提示した粉末は、誘電率及び信頼性が高いだけでなく、焼成ウィンドウ(window)も広かった。
【0060】
一方、本発明の他の実施形態による高結晶性二酸化ケイ素(SiO
2)がコーティングされたチタン酸バリウム粉末は、表面に二酸化ケイ素(SiO
2)コーティング層が形成されており、上記二酸化ケイ素(SiO
2)コーティング層の平均厚さは0.01nm〜20nmで、上記コーティング層の最小厚さ(tmin)に対する最大厚さ(tmax)の比(tmax/tmin)がtmax/tmin≦2.0を満たすことができる。
【0061】
一方、上記高結晶性二酸化ケイ素(SiO
2)がコーティングされたチタン酸バリウムの製造方法により製造された高結晶性二酸化ケイ素(SiO
2)がコーティングされたチタン酸バリウム粉末は、平均粒径が5〜200nmで、結晶軸比(c/a)が1.003〜1.010であることを特徴とする。
【0062】
上記結晶軸比(c/a)は、チタン酸バリウム粉末の粒子サイズが5〜20nmの場合に1.001〜1.005で、チタン酸バリウム粉末の粒子サイズが20〜40nmの場合に1.003〜1.0055であり、40〜60nmの場合に1.0045〜1.0075であり、60〜80nmの場合に1.0062〜1.009であり、80〜200nmの場合に1.0080〜1.01である。
【0063】
以下、好ましい実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれにより制限されない。
【0064】
実施例1)
水酸化バリウム八水和物(Ba(OH)
28H
2O)と、水酸化バリウムに対して1mol%含量のテトラヒドロキシシラン(tetrahydroxy silane)とを反応器に入れて窒素でパージをした後、100℃以上で撹拌して溶かす。酸化チタン(TiO
2)ゾルも60℃以上に加温して用意する。バリウム(Ba)溶液と酸化チタン(TiO
2)ゾルを急速に投入して混合させる。110℃で撹拌して反応させる。300rpm以上で高速攪拌して10分間反応させることで、チタン酸バリウムに全て転移させてシード形成を終了させる。
【0065】
純水を入れて混合液の濃度とpHを下げる。このとき、pHは11.5となるようにする。250℃に上げた後、20時間チタン酸バリウムを粒成長させた。
【0066】
ろ過後に純水で洗浄及び乾燥して得た粉末のBET比表面積は16.2m
2/gであり、SEM(scanning electron microscope)により測定した粒径は64nmで、D99/D50は1.5と均一な方であり、形態は球形で、結晶軸比(c/a)値は1.008であった。
【0067】
図2は実施例1で得られた粉末のSEM写真であり、
図3は本発明の実施例1によるチタン酸バリウム粉末のTEM(Transmission Electron Microscope)写真であり、
図4及び
図5は
図3の一部拡大写真である。
【0068】
図3〜
図5を参照すると、実施例1により得られた粉末の表面には均一な二酸化ケイ素(SiO
2)コーティング層が形成されていることが分かる。
【0069】
実施例2)
水酸化バリウム八水和物(Ba(OH)
28H
2O)と、水酸化バリウムに対して0.5mol%含量のテトラヒドロキシシラン(tetrahydroxy silane)とを反応器に入れて窒素でパージをした後、100℃以上で撹拌して溶かす。酸化チタン(TiO
2)ゾルも60℃以上に加温して用意する。バリウム(Ba)溶液と酸化チタン(TiO
2)ゾルを急速に投入して混合させる。110℃で撹拌して反応させる。300rpm以上で高速攪拌して10分間反応させることで、チタン酸バリウムに全て転移させてシード形成を終了させる。
【0070】
純水を入れて混合液の濃度とpHを下げる。このとき、pHは11.5となるようにする。TEOS(Tetraethoxysilane)をさらに添加する。250℃に上げた後、1時間チタン酸バリウムを粒成長させた。
【0071】
ろ過後に純水で洗浄及び乾燥して得た粉末のBET比表面積は38m
2/gであり、SEM(scanning electron microscope)により測定した粒径は25nmで、D99/D50は1.5と均一な方であり、形態は球形で、結晶軸比(c/a)値は1.008であった。
図6は実施例2で得られた粉末のSEM写真である。
【0072】
実施例3)
水酸化バリウム八水和物(Ba(OH)
28H
2O)と、水酸化バリウムに対して5mol%含量のビニルトリエトキシシラン(vinytriethoxysilane)とを反応器に入れて窒素でパージをした後、100℃以上で撹拌して溶かす。酸化チタン(TiO
2)ゾルも60℃以上に加温して用意する。バリウム(Ba)溶液と酸化チタン(TiO
2)ゾルを急速に投入して混合させる。110℃で撹拌して反応させる。300rpm以上で高速攪拌して10分間反応させることで、チタン酸バリウムに全て転移させてシード形成を終了させる。
【0073】
純水を入れて混合液の濃度とpHを下げる。このとき、pHは11.5となるようにする。250℃に上げた後、20時間チタン酸バリウムを粒成長させた。
【0074】
ろ過後に純水で洗浄及び乾燥して得た粉末のBET比表面積は20m
2/gであり、SEMにより測定した粒径は62nmで、D99/D50は1.5と均一な方であり、形態は球形で、結晶軸比(c/a)値は1.0082であった。
【0075】
図7は本発明の実施例3によるチタン酸バリウム粉末のTEM(Transmission Electron Microscope)写真であり、
図8及び
図9は
図7の一部拡大写真である。
【0076】
図7〜
図9を参照すると、実施例3により得られた粉末の表面には均一な二酸化ケイ素(SiO
2)コーティング層が形成されていることが分かる。
【0077】
図10は本発明の実施例3によるチタン酸バリウム粉末(Scanning Transmission Electron Microscope Energy Dispersive Spectrometry)の分析結果を示すグラフである。
【0078】
図10を参照すると、本発明の実施例3によるチタン酸バリウム粉末の表面に均一な二酸化ケイ素(SiO
2)コーティング層が形成されていることが分かる。
【0079】
比較例
シードを形成する際に急速攪拌及び急速投入せずに低速で撹拌し、また、粒成長時に純水と粒成長抑制剤を添加しないことを除き、上記実施例1)と同様の条件で実験した。合成された粉末が非常に大きく、不均一であった。
【0080】
図11は本発明の実施例及び比較例によるチタン酸バリウム粉末のTMA(Thermo mechanical Analyzer)測定結果を示すグラフである。
【0081】
図11を参照すると、本発明の実施例である二酸化ケイ素(SiO
2)がコーティングされたチタン酸バリウム粉末は、比較例に比べて、粒子同士のネッキング(necking)が遅延され、収縮開始温度がさらに高くなり、高温で急速に収縮することが分かる。
【0082】
本発明の実施例による二酸化ケイ素(SiO
2)がコーティングされたチタン酸バリウム粉末を共材として使用する場合、内部電極の連結性が大きく向上することができる。
【0083】
図12は本発明の実施例によるチタン酸バリウム粉末を利用して製作した積層セラミックキャパシタの断面写真であり、
図13は本発明の比較例によるチタン酸バリウム粉末を利用して製作した積層セラミックキャパシタの断面写真である。
【0084】
図12及び
図13を参照すると、高結晶性二酸化ケイ素(SiO
2)がコーティングされたチタン酸バリウム粉末を使用する場合、高温でも誘電体グレーンの粒成長が多く発生しないが、高結晶性二酸化ケイ素(SiO
2)がコーティングされないチタン酸バリウム粉末を使用する場合は、誘電体グレーンの粒成長が多く発生することが分かる。
【0085】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明の権利範囲はこれに限定されず、特許請求の範囲に記載された本発明の技術的思想から外れない範囲内で多様な修正及び変形が可能であるということは、当技術分野の通常の知識を有する者には明らかである。