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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-137950(P2015-137950A)
(43)【公開日】2015年7月30日
(54)【発明の名称】腐食検知電線
(51)【国際特許分類】
   G01N 17/02 20060101AFI20150703BHJP
   G01N 17/04 20060101ALI20150703BHJP
   G01N 27/26 20060101ALI20150703BHJP
【FI】
   G01N17/02
   G01N17/04
   G01N27/26 351H
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-9949(P2014-9949)
(22)【出願日】2014年1月23日
(71)【出願人】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(71)【出願人】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】特許業務法人あいち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山田 健介
【テーマコード(参考)】
2G050
【Fターム(参考)】
2G050AA01
2G050BA02
2G050BA03
2G050DA01
2G050EB03
(57)【要約】
【課題】腐食状況をリアルタイムに検知することが可能な腐食検知電線を提供する。
【解決手段】腐食検知電線1は、第1金属からなる第1導体21と、第1導体21と離間した状態で第1導体21とほぼ平行に配置されており、第1金属と異なる第2金属からなる第2導体22と、第1導体21および第2導体22を被覆する電気絶縁性のシース3とを有している。腐食検知電線1は、電線先端部に、第1導体21と第2導体22とが互いに離間した状態のまま第1導体21と第2導体22とが外部に露出されてなる腐食検知部4を有している。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1金属からなる第1導体と、
該第1導体と離間した状態で上記第1導体とほぼ平行に配置されており、上記第1金属と異なる第2金属からなる第2導体と、
上記第1導体および上記第2導体を被覆する電気絶縁性のシースとを有し、
電線先端部に、上記第1導体と上記第2導体とが互いに離間した状態のまま上記第1導体と上記第2導体とが外部に露出されてなる腐食検知部を有していることを特徴とする腐食検知電線。
【請求項2】
上記第1金属は、アルミニウムまたはアルミニウム合金であり、
上記第2金属は、銅または銅合金であることを特徴とする請求項1に記載の腐食検知電線。
【請求項3】
上記第1導体または上記第2導体のいずれか一方の外周に電気絶縁体が被覆されている、あるいは、
上記第1導体および上記第2導体の双方の外周にそれぞれ電気絶縁体が被覆されていることを特徴とする請求項1または2に記載の腐食検知電線。
【請求項4】
上記第1導体および上記第2導体をそれぞれ複数有しており、
上記第1導体と上記第2導体とが電線軸方向と垂直な一方向に交互に配置されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の腐食検知電線。
【請求項5】
上記電気絶縁体は、紫外線硬化型樹脂より構成されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の腐食検知電線。
【請求項6】
上記シースは、紫外線硬化型樹脂より構成されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の腐食検知電線。
【請求項7】
上記第1導体の周表面と上記第2導体の周表面との間の距離は、10〜80μmの範囲内とされていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の腐食検知電線。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、腐食検知電線に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車等の車両の分野において、各種電気・電子機器等を接続するためにワイヤーハーネスが使用されている。ワイヤーハーネスは、一般的に、銅または銅合金製の内部導体を備える絶縁電線と、絶縁電線の内部導体に電気的に接続された銅または銅合金製のコネクタ端子とを有している。
【0003】
近年では、車両の軽量化を図る観点から、絶縁電線の内部導体として、銅または銅合金に比べて軽量なアルミニウムまたはアルミニウム合金が適用されるようになってきている。そのため、内部導体を構成する金属とコネクタ端子を構成する金属とが異なる状況下においてワイヤーハーネスが使用される機会が増えている。それ故、異種金属間において発生する腐食が大きな問題となる。
【0004】
例えば、車両の分野では、通常、次のようにして腐食状況の確認が行われている。先ず、水や塩水等の電解液との接触により腐食が生じやすいとされるテスト車両の所定部位に、ワイヤーハーネスのサンプルを取り付ける。次いで、腐食環境下にてテスト車両を一定時間走行させる。次いで、テスト車両の走行を停止し、サンプルの腐食状況を目視にて確認する。
【0005】
なお、本願に先行する特許文献1には、架空送電線に取り付けられたリングに締め付け力を加えるボルトの軸力を歪み計にて測定することにより、架空送電線の腐食を検知する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第5290866号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述したように、ワイヤーハーネスのサンプルを用いて腐食状況を確認する手法は、異種金属間の腐食がどの時点で発生したのかを正確に把握することができないという欠点がある。なお、歪み計を用いる手法は、構成が複雑になるので現実的ではない。
【0008】
本発明は、上記背景に鑑みてなされたものであり、腐食状況をリアルタイムに検知することが可能な腐食検知電線を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様は、第1金属からなる第1導体と、
該第1導体と離間した状態で上記第1導体とほぼ平行に配置されており、上記第1金属と異なる第2金属からなる第2導体と、
上記第1導体および上記第2導体を被覆する電気絶縁性のシースとを有し、
電線先端部に、上記第1導体と上記第2導体とが互いに離間した状態のまま上記第1導体と上記第2導体とが外部に露出されてなる腐食検知部を有していることを特徴とする腐食検知電線にある。
【発明の効果】
【0010】
上記腐食検知電線は、電線先端部に、第1導体と第2導体とが互いに離間した状態のまま第1導体と第2導体とが外部に露出されてなる腐食検知部を有している。
【0011】
したがって、上記腐食検知電線は、腐食状況を検知したい部分に電線先端部の腐食検知部が配置され、外部に露出する第1導体と第2導体とに水や塩水等の電解液が接触すると、第1導体と第2導体との間に電位差が生じる。そのため、この電位差を、例えば、電線基端部側にて測定することにより、電位差データに基づいて腐食環境を定量化することが可能となる。
【0012】
よって、上記腐食検知電線によれば、比較的簡易な構成により、腐食状況をリアルタイムに検知することが可能となる。また、上記腐食検知電線は、電線形態を有しているため、ワイヤーハーネスに自由に配策しやすい利点も有する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施例1の腐食検知電線を模式的に示す外観斜視図である。
図2図1のII−II断面図である。
図3】実施例1の腐食検知電線を用いた腐食検知方法を説明するための説明図である。
図4】実施例2の腐食検知電線を模式的に示す外観斜視図である。
図5図4のV−V断面図である。
図6】実施例2の腐食検知電線を用いた腐食検知方法を説明するための説明図である。
図7図5に対応する、実施例3の腐食検知電線の断面図である。
図8】実施例3の腐食検知電線を用いた腐食検知方法を説明するための説明図である。
図9】実施例2の腐食検知電線を用いた腐食試験の結果を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
上記腐食検知電線は、電線先端部の腐食検知部において、第1導体と第2導体とが外部に露出されている。具体的には、例えば、上記腐食検知電線は、電線先端部の腐食検知部において、第1導体の先端面と第2導体の先端面とが外部に露出されている構成とすることができる。この場合には、腐食環境下に存在する導電性部材との偶発的な接触によって第1導体と第2導体とが短絡し難く、かつ、第1導体および第2導体に電解液を確実に接触させることができる利点がある。
【0015】
上記腐食検知電線は、第1金属からなる内部導体を備える絶縁電線と、上記内部導体に電気的に接続され、第2金属を母材とするコネクタ端子とを有するワイヤーハーネスにおける異種金属間の腐食を検知するために好適に用いることができる。なお、コネクタ端子は、母材表面に第1金属および第2金属とは異なる金属からなるめっき層を1または2以上有していてもよい。
【0016】
上記腐食検知電線において、第1金属には、具体的には、アルミニウムまたはアルミニウム合金を用いることができる。また、第2金属には、具体的には、銅または銅合金を用いることができる。
【0017】
この場合には、アルミニウムまたはアルミニウム合金からなる内部導体を備える絶縁電線と、上記内部導体に電気的に接続され、銅または銅合金を母材とするコネクタ端子とを有するワイヤーハーネスにおける異種金属間の腐食をリアルタイムに検知するのに有用な腐食検知電線が得られる。
【0018】
上記腐食検知電線は、第1導体または第2導体のいずれか一方の外周に電気絶縁体が被覆されている構成とすることができる。あるいは、上記腐食検知電線は、第1導体および第2導体の双方の外周にそれぞれ電気絶縁体が被覆されている構成とすることができる。
【0019】
これらの場合には、第1導体と第2導体との間に電気絶縁体が介在するので、第1導体と第2導体との間の電気絶縁が確実なものとなる。そのため、第1導体と第2導体との電位差を高精度で測定することが可能となり、腐食状況をリアルタイムに高精度で検知可能な腐食検知電線が得られる。また、第1導体と第2導体との間に電気絶縁体が介在するので、第1導体と第2導体とが確実に離間された状態でシースを被覆しやすくなる。そのため、製造性に優れた腐食検知電線が得られる。
【0020】
上記腐食検知電線は、第1導体および第2導体をそれぞれ複数有しており、第1導体と第2導体とが電線軸方向と垂直な一方向に交互に配置されている構成とすることができる。
【0021】
この場合には、同一平面上に第1導体と第2導体とが交互に並び、これら各導体がシースにより被覆されるので、フラット形状の腐食検知電線が得られる。そのため、隙間等、比較的狭いスペースに電線先端部の腐食検知部を配置し、腐食状況をリアルタイムに検知可能な腐食検知電線が得られる。また、この場合には、隣り合う第1導体と第2導体とからなる導体対が複数形成されるので、複数の導体対を使用して上記電位差の測定をすることが可能となる。そのため、腐食状況をリアルタイムに高精度で検知可能な腐食検知電線が得られる。また、この場合には、電解液を付着させることが可能な面積も増大するため、上記電位差の測定に有利である。
【0022】
また、上記の場合、隣り合う導体対の間に位置するシース表面に溝部が形成されていてもよい。この場合には、溝部に沿って上記腐食検知電線を電線先端部側から部分的に分割することにより、腐食検知部を複数形成することができる。そのため、腐食状況を検知したい複数の部分に、分割された複数の腐食検知部をそれぞれ配置し、腐食状況をリアルタイムに検知することが可能となる。
【0023】
上記腐食検知電線において、電気絶縁体の材質としては、例えば、通常、電線に用いられる各種の樹脂やゴム(エラストマー含む)などを例示することができる。電気絶縁体は、具体的には、紫外線硬化型樹脂より構成することができる。なお、電気絶縁体には、一般的に電線に適用される各種の添加剤が1または2以上含まれていてもよい。
【0024】
紫外線硬化型樹脂は、比較的粘度を低くすることができる。そのため、この場合には、第1導体および/または第2導体の外周に電気絶縁体をごく薄く押し出し被覆することができる。それ故、第1導体および/または第2導体の外周が比較的薄い肉厚の電気絶縁体によって被覆されている腐食検知電線が得られる。また、この腐食検知電線によれば、第1導体と第2導体との間の電気絶縁が確実に確保される。また、上記の通り、電気絶縁体をごく薄く押し出し被覆することが可能になるので、第1導体の周表面と第2導体の周表面との間の距離が短くなり、第1導体と第2導体との両方にまたがって電解液が付着しやすくなる。そのため、上記電位差の測定に有利である。
【0025】
上記腐食検知電線において、シースの材質としては、例えば、通常、電線に用いられる各種の樹脂やゴム(エラストマー含む)などを例示することができる。シースは、具体的には、紫外線硬化型樹脂より構成することができる。なお、シースには、一般的に電線に適用される各種の添加剤が1または2以上含まれていてもよい。
【0026】
上述したように、紫外線硬化型樹脂は、比較的粘度を低くすることができる。そのため、この場合には、第1導体および第2導体の外周にシースをごく薄く一括で押し出し被覆することができる。それ故、第1導体および第2導体が比較的薄い肉厚のシースによって一括被覆されている薄型の腐食検知電線が得られる。
【0027】
上記紫外線硬化型樹脂としては、具体的には、例えば、押し出し被覆性、電気絶縁性等の観点から、ウレタンアクリレート系の紫外線硬化型樹脂などを好適に用いることができる。
【0028】
上記腐食検知電線において、第1導体と第2導体とは、互いに離間した状態でほぼ平行に配置されている。上記腐食検知電線では、第1導体と第2導体とが直接接触して導通してしまうことがなく両者が電気的に絶縁されており、かつ、腐食環境下において腐食検知部に電解液が付着した際に、第1導体および第2導体に当該電解液が接触することができる程度に第1導体と第2導体とが離れておればよい。なお、ほぼ平行とは、完全に平行である場合のみならず、実質的に平行と認められる範囲が含まれる。
【0029】
上記腐食検知電線において、第1導体の周表面と第2導体の周表面との間の距離(両表面の最短距離)は、具体的には、10〜80μmの範囲内とされていることが好ましい。
【0030】
この場合には、第1導体と第2導体との間の電気的な絶縁を確実なものとすることができる。また、腐食環境下において腐食検知部に電解液が付着した際に、第1導体および第2導体に当該電解液が接触しやすく、腐食状況をリアルタイムに検知しやすくなる。
【0031】
第1導体の周表面と第2導体の周表面との間の距離は、電気絶縁性の確実な確保などの観点から、好ましくは20μm以上、より好ましくは30μm以上、さらに好ましくは40μm以上とすることができる。また、第1導体の周表面と第2導体の周表面との間の距離は、腐食検知部において第1導体と第2導体との両方に電解液が接触しやすくなるなどの観点から、好ましくは75μm以下、より好ましくは、70μm以下、さらに好ましくは65μm以下、さらにより好ましくは60μm以下とすることができる。
【0032】
上記腐食検知電線において、第1導体、第2導体の導体径は、電解液と接触させる部位の面積確保などの観点から、好ましくは100μm以上、より好ましくは、120μm以上、さらに好ましくは150μm以上とすることができる。また、第1導体、第2導体の導体径は、腐食検知電線の細径化などの観点から、好ましくは300μm以下、より好ましくは、280μm以下、さらに好ましくは250μm以下とすることができる。
【0033】
上記腐食検知電線において、電気絶縁体の厚みは、電気絶縁性の確実な確保などの観点から、好ましくは5μm以上、より好ましくは、10μm以上、さらに好ましくは15μm以上、さらにより好ましくは20μm以上とすることができる。また、電気絶縁体の厚みは、腐食検知部において第1導体と第2導体との両方に電解液が接触しやすくなるなどの観点から、好ましくは40μm以下、より好ましくは、35μm以下、さらに好ましくは30μm以下とすることができる。
【0034】
上記腐食検知電線において、シースの厚み(導体の周表面とシースの周表面との間の最短距離)は、製造上の制約などの観点から、好ましくは20μm以上、より好ましくは、30μm以上、さらに好ましくは40μm以上とすることができる。また、シースの厚みは、検知の感度の制約などの観点から、好ましくは80μm以下、より好ましくは、70μm以下、さらに好ましくは60μm以下とすることができる。
【0035】
なお、上述した各構成は、上述した各作用効果等を得るなどのために必要に応じて任意に組み合わせることができる。
【実施例】
【0036】
以下、実施例の腐食検知電線について、図面を用いて説明する。なお、同一部材については同一の符号を用いて説明する。
【0037】
(実施例1)
実施例1の腐食検知電線について、図1図3を用いて説明する。図1図3に示すように、本例の腐食検知電線1は、第1金属からなる第1導体21と、第1導体21と離間した状態で第1導体21とほぼ平行に配置されており、第1金属と異なる第2金属からなる第2導体22と、第1導体21および第2導体22を被覆する電気絶縁性のシース3とを有している。
【0038】
ここで、本例の腐食検知電線1は、電線先端部に、第1導体21と第2導体22とが互いに離間した状態のまま第1導体21と第2導体22とが外部に露出されてなる腐食検知部4を有している。以下、これを詳説する。
【0039】
腐食検知電線1は、具体的には、第1導体21と第2導体22とをそれぞれ1本ずつ有している。第1導体21を構成する第1金属は、具体的には、アルミニウムまたはアルミニウム合金であり、第2導体22を構成する第2金属は、具体的には、銅または銅合金である。なお、第1金属、第2金属は、いずれも焼きなまし処理が施されることによって軟質化されている。また、第1導体21および第2導体22の導体径は、いずれも200μmである。また、第1導体21の周表面と第2導体22の周表面との間の距離tは、50μmである。
【0040】
腐食検知電線1は、電線先端部の腐食検知部4において、第1導体21の先端面と第2導体22の先端面とが外部に露出されている。なお、腐食検知電線1の電線基端部は、シース3の一部が皮剥ぎされており、第1導体21および第2導体22の基端部が露出されている。露出された第1導体21の基端部、露出された第2導体22の基端部には、第1導体21と第2導体22との間の電位差を測定する際に、電位差測定器9が接続される。
【0041】
シース3は、ウレタンアクリレート系の紫外線硬化型樹脂より構成されている。シースの厚みsは、50μmである。なお、シース3は、互いに離間した状態で並列に配置した第1導体21および第2導体22の外周に、低粘度の紫外線硬化型樹脂を押し出し被覆し、紫外線を照射して硬化させることにより形成されている。
【0042】
なお、腐食検知電線1は、アルミニウムまたはアルミニウム合金からなる内部導体を備える絶縁電線と、内部導体に電気的に接続され、銅または銅合金を母材とするコネクタ端子とを有するワイヤーハーネスにおける異種金属間の腐食を検知するために用いられる。
【0043】
次に、本例の腐食検知電線1の作用効果について説明する。
【0044】
本例の腐食検知電線1は、上記構成を有している。特に、腐食検知電線1は、電線先端部に、第1導体21と第2導体22とが互いに離間した状態のまま第1導体21と第2導体22とが外部に露出されてなる腐食検知部4を有している。
【0045】
したがって、腐食検知電線1は、腐食状況を検知したい部分に電線先端部の腐食検知部4が配置され、外部に露出する第1導体21と第2導体22とに水や塩水等の電解液が接触すると、第1導体21と第2導体22との間に電位差が生じる。そのため、この電位差を、電位差測定器9を用いて電線基端部側にて測定することにより、電位差データに基づいて腐食環境を定量化することが可能となる。よって、腐食検知電線1によれば、比較的簡易な構成により、腐食状況をリアルタイムに検知することが可能となる。
【0046】
また、腐食検知電線1は、電線形態を有しているため、ワイヤーハーネスに自由に配策しやすい利点も有している。したがって、腐食検知電線1を、例えば、テスト自動車に適用した場合には、テスト自動車のテスト者は、電位差の測定結果に基づいてワイヤーハーネスの腐食状況を正確に知ることが可能となる。それ故、テスト者は、ワイヤーハーネスの部品交換の時期を高い精度で把握することが可能となる。
【0047】
また、腐食検知電線1は、シース3に紫外線硬化型樹脂を用いている。そのため、腐食検知電線1は、その製造時に、第1導体21および第2導体22の外周にシース3をごく薄く一括で押し出し被覆することができる。それ故、腐食検知電線1は、第1導体21および第2導体22が比較的薄い肉厚のシース3によって一括被覆された薄型の電線として構成することができる。
【0048】
(実施例2)
実施例2の腐食検知電線について、図4図6を用いて説明する。
【0049】
本例の腐食検知電線1は、第1導体21および第2導体22をそれぞれ複数有している。そして、第1導体21と第2導体22とは、電線軸方向と垂直な一方向に交互に配置されている。また、第1導体21および第2導体22の双方の外周には、電気絶縁体211、222がそれぞれ被覆されている。
【0050】
腐食検知電線1は、具体的には、第1導体21を2本、第2導体22を2本有している。これら各導体21、22は、電線軸方向と垂直な一方向に、第1導体21、第2導体22、第1導体21、第2導体22の順となるように交互に配置されている。
【0051】
電気絶縁体211、222は、いずれも、同じウレタンアクリレート系の紫外線硬化型樹脂より構成されている。電気絶縁体211、222の厚みは、いずれも25μmである。また、本例では、電気絶縁体211の周表面は、電気絶縁体222の周表面に接触している。したがって、第1導体21の周表面と第2導体22の周表面との間の距離tは、50μmとされている。その他の構成は、実施例1と同様である。
【0052】
なお、本例の腐食検知電線1は、例えば、次のように製造することができる。第1導体21の外周に、低粘度の紫外線硬化型樹脂を押し出し被覆し、紫外線を照射して硬化させることにより、第1導体21の外周に電気絶縁体211を被覆する。同様に、第2導体22の外周に、低粘度の紫外線硬化型樹脂を押し出し被覆し、紫外線を照射して硬化させることにより、第2導体22の外周に電気絶縁体222を被覆する。次いで、電気絶縁体211が被覆された第1導体21、電気絶縁体222が被覆された第2導体22を、電気絶縁体211および電気絶縁体222を接触させた状態で、交互に配置する。次いで、この配置体の外周に、低粘度の紫外線硬化型樹脂を押し出し被覆し、紫外線を照射して硬化させ、シース3を形成する。
【0053】
次に、本例の腐食検知電線1の作用効果について説明する。
【0054】
本例の腐食検知電線1は、第1導体21と第2導体22との間に電気絶縁体211、222が介在するので、第1導体21と第2導体22との間の電気絶縁が確実なものとなる。そのため、腐食検知電線1は、第1導体21と第2導体22との電位差を高精度で測定することが可能となり、腐食状況をリアルタイムに高精度で検知することが可能となる。。また、第1導体21と第2導体22との間に電気絶縁体211、222が介在するので、第1導体21と第2導体22とが確実に離間された状態でシース3を被覆しやすくなる。そのため、腐食検知電線1は、製造性に優れる。
【0055】
また、腐食検知電線1は、第1導体21および第2導体22をそれぞれ複数有しており、第1導体1と第2導体22とが電線軸方向と垂直な一方向に交互に配置されている。そのため、本例の腐食検知電線1は、同一平面上に第1導体21と第2導体22とが交互に並び、これら各導体21、22がシース3により被覆されるので、フラット形状を呈することができる。それ故、腐食検知電線1は、隙間等、比較的狭いスペースに電線先端部の腐食検知部4を配置し、腐食状況をリアルタイムに検知することが可能となる。また、腐食検知電線1は、隣り合う第1導体21と第2導体22とからなる導体対23が複数形成されるので、複数の導体対23を使用して電位差の測定をすることが可能となる。そのため、腐食検知電線1は、腐食状況をリアルタイムに高精度で検知することが可能となる。また、本例の腐食検知電線1は、電解液を付着させることが可能な面積も増大するため、電位差の測定に有利である。
【0056】
また、腐食検知電線1は、電気絶縁体211、222に紫外線硬化型樹脂を用いている。そのため、腐食検知電線1は、その製造時に、第1導体21の外周に電気絶縁体211を、第2導体22の外周に電気絶縁体222を、それぞれごく薄く押し出し被覆することができる。それ故、腐食検知電線1は、第1導体21、第2導体22の外周が比較的薄い肉厚の電気絶縁体211、222によってそれぞれ被覆された電線とすることができる。その他の作用効果は、実施例1と同様である。
【0057】
(実施例3)
実施例3の腐食検知電線について、図7図8を用いて説明する。
【0058】
本例の腐食検知電線1は、隣り合う導体対23、23の間に位置するシース3表面に溝部5が形成されている。本例では、溝部5は、シース3の平坦な両表面にそれぞれ形成されている。なお、溝部5は、シース3の片側表面にだけ形成されていてもよい。また、端子対23間は、離間した状態とされている。その他の構成は、実施例2と同様である。
【0059】
次に、本例の腐食検知電線1の作用効果について説明する。
【0060】
本例の腐食検知電線1は、図8に例示するように、溝部5に沿って腐食検知電線1を電線先端部側から部分的に分割することにより、腐食検知部4を複数(本例では2つ)形成することができる。
【0061】
そのため、腐食検知電線1は、腐食状況を検知したい複数の部分に、分割された複数の腐食検知部4をそれぞれ配置し、腐食状況をリアルタイムに検知することが可能となる。その他の作用効果は、実施例2と同様である。
【0062】
<実験例>
以下、実験例を用いてより具体的に説明する。
実施例2の構成を有する腐食検知電線を用い、腐食試験を行った。具体的には、5%食塩水または10%食塩水に腐食検知部を浸し、第1導体と第2導体との間の電位差を電位差測定器により測定した。また、比較のため、食塩水に腐食検知部を浸すことなく、第1導体と第2導体との間の電位差を電位差測定器により測定した。なお、第1導体は、具体的には、軟アルミニウムからなり、第2導体は、具体的には、軟銅からなる。電位差測定器には、GRAPHTEC Corporation社製のGL220 Ver.1.02を用い、電位差の測定間隔は1秒とした。その結果を、図9に示す。
【0063】
図9に示されるように、腐食検知部に食塩水が接触していない場合には、第1導体と第2導体との間の電位差が0になっている。これに対し、腐食検知部に食塩水が接触した場合には、第1導体と第2導体との間に電位差が生じることがわかる。したがって、この結果によれば、電位差データに基づいて腐食環境を定量化することができるといえる。よって、上記腐食検知電線によれば、腐食状況をリアルタイムに検知することができるといえる。
【0064】
以上、本発明の実施例について詳細に説明したが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨を損なわない範囲内で種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0065】
1 腐食検知電線
21 第1導体
22 第2導体
3 シース
4 腐食検知部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9