【実施例】
【0036】
以下、実施例の腐食検知電線について、図面を用いて説明する。なお、同一部材については同一の符号を用いて説明する。
【0037】
(実施例1)
実施例1の腐食検知電線について、
図1〜
図3を用いて説明する。
図1〜
図3に示すように、本例の腐食検知電線1は、第1金属からなる第1導体21と、第1導体21と離間した状態で第1導体21とほぼ平行に配置されており、第1金属と異なる第2金属からなる第2導体22と、第1導体21および第2導体22を被覆する電気絶縁性のシース3とを有している。
【0038】
ここで、本例の腐食検知電線1は、電線先端部に、第1導体21と第2導体22とが互いに離間した状態のまま第1導体21と第2導体22とが外部に露出されてなる腐食検知部4を有している。以下、これを詳説する。
【0039】
腐食検知電線1は、具体的には、第1導体21と第2導体22とをそれぞれ1本ずつ有している。第1導体21を構成する第1金属は、具体的には、アルミニウムまたはアルミニウム合金であり、第2導体22を構成する第2金属は、具体的には、銅または銅合金である。なお、第1金属、第2金属は、いずれも焼きなまし処理が施されることによって軟質化されている。また、第1導体21および第2導体22の導体径は、いずれも200μmである。また、第1導体21の周表面と第2導体22の周表面との間の距離tは、50μmである。
【0040】
腐食検知電線1は、電線先端部の腐食検知部4において、第1導体21の先端面と第2導体22の先端面とが外部に露出されている。なお、腐食検知電線1の電線基端部は、シース3の一部が皮剥ぎされており、第1導体21および第2導体22の基端部が露出されている。露出された第1導体21の基端部、露出された第2導体22の基端部には、第1導体21と第2導体22との間の電位差を測定する際に、電位差測定器9が接続される。
【0041】
シース3は、ウレタンアクリレート系の紫外線硬化型樹脂より構成されている。シースの厚みsは、50μmである。なお、シース3は、互いに離間した状態で並列に配置した第1導体21および第2導体22の外周に、低粘度の紫外線硬化型樹脂を押し出し被覆し、紫外線を照射して硬化させることにより形成されている。
【0042】
なお、腐食検知電線1は、アルミニウムまたはアルミニウム合金からなる内部導体を備える絶縁電線と、内部導体に電気的に接続され、銅または銅合金を母材とするコネクタ端子とを有するワイヤーハーネスにおける異種金属間の腐食を検知するために用いられる。
【0043】
次に、本例の腐食検知電線1の作用効果について説明する。
【0044】
本例の腐食検知電線1は、上記構成を有している。特に、腐食検知電線1は、電線先端部に、第1導体21と第2導体22とが互いに離間した状態のまま第1導体21と第2導体22とが外部に露出されてなる腐食検知部4を有している。
【0045】
したがって、腐食検知電線1は、腐食状況を検知したい部分に電線先端部の腐食検知部4が配置され、外部に露出する第1導体21と第2導体22とに水や塩水等の電解液が接触すると、第1導体21と第2導体22との間に電位差が生じる。そのため、この電位差を、電位差測定器9を用いて電線基端部側にて測定することにより、電位差データに基づいて腐食環境を定量化することが可能となる。よって、腐食検知電線1によれば、比較的簡易な構成により、腐食状況をリアルタイムに検知することが可能となる。
【0046】
また、腐食検知電線1は、電線形態を有しているため、ワイヤーハーネスに自由に配策しやすい利点も有している。したがって、腐食検知電線1を、例えば、テスト自動車に適用した場合には、テスト自動車のテスト者は、電位差の測定結果に基づいてワイヤーハーネスの腐食状況を正確に知ることが可能となる。それ故、テスト者は、ワイヤーハーネスの部品交換の時期を高い精度で把握することが可能となる。
【0047】
また、腐食検知電線1は、シース3に紫外線硬化型樹脂を用いている。そのため、腐食検知電線1は、その製造時に、第1導体21および第2導体22の外周にシース3をごく薄く一括で押し出し被覆することができる。それ故、腐食検知電線1は、第1導体21および第2導体22が比較的薄い肉厚のシース3によって一括被覆された薄型の電線として構成することができる。
【0048】
(実施例2)
実施例2の腐食検知電線について、
図4〜
図6を用いて説明する。
【0049】
本例の腐食検知電線1は、第1導体21および第2導体22をそれぞれ複数有している。そして、第1導体21と第2導体22とは、電線軸方向と垂直な一方向に交互に配置されている。また、第1導体21および第2導体22の双方の外周には、電気絶縁体211、222がそれぞれ被覆されている。
【0050】
腐食検知電線1は、具体的には、第1導体21を2本、第2導体22を2本有している。これら各導体21、22は、電線軸方向と垂直な一方向に、第1導体21、第2導体22、第1導体21、第2導体22の順となるように交互に配置されている。
【0051】
電気絶縁体211、222は、いずれも、同じウレタンアクリレート系の紫外線硬化型樹脂より構成されている。電気絶縁体211、222の厚みは、いずれも25μmである。また、本例では、電気絶縁体211の周表面は、電気絶縁体222の周表面に接触している。したがって、第1導体21の周表面と第2導体22の周表面との間の距離tは、50μmとされている。その他の構成は、実施例1と同様である。
【0052】
なお、本例の腐食検知電線1は、例えば、次のように製造することができる。第1導体21の外周に、低粘度の紫外線硬化型樹脂を押し出し被覆し、紫外線を照射して硬化させることにより、第1導体21の外周に電気絶縁体211を被覆する。同様に、第2導体22の外周に、低粘度の紫外線硬化型樹脂を押し出し被覆し、紫外線を照射して硬化させることにより、第2導体22の外周に電気絶縁体222を被覆する。次いで、電気絶縁体211が被覆された第1導体21、電気絶縁体222が被覆された第2導体22を、電気絶縁体211および電気絶縁体222を接触させた状態で、交互に配置する。次いで、この配置体の外周に、低粘度の紫外線硬化型樹脂を押し出し被覆し、紫外線を照射して硬化させ、シース3を形成する。
【0053】
次に、本例の腐食検知電線1の作用効果について説明する。
【0054】
本例の腐食検知電線1は、第1導体21と第2導体22との間に電気絶縁体211、222が介在するので、第1導体21と第2導体22との間の電気絶縁が確実なものとなる。そのため、腐食検知電線1は、第1導体21と第2導体22との電位差を高精度で測定することが可能となり、腐食状況をリアルタイムに高精度で検知することが可能となる。。また、第1導体21と第2導体22との間に電気絶縁体211、222が介在するので、第1導体21と第2導体22とが確実に離間された状態でシース3を被覆しやすくなる。そのため、腐食検知電線1は、製造性に優れる。
【0055】
また、腐食検知電線1は、第1導体21および第2導体22をそれぞれ複数有しており、第1導体1と第2導体22とが電線軸方向と垂直な一方向に交互に配置されている。そのため、本例の腐食検知電線1は、同一平面上に第1導体21と第2導体22とが交互に並び、これら各導体21、22がシース3により被覆されるので、フラット形状を呈することができる。それ故、腐食検知電線1は、隙間等、比較的狭いスペースに電線先端部の腐食検知部4を配置し、腐食状況をリアルタイムに検知することが可能となる。また、腐食検知電線1は、隣り合う第1導体21と第2導体22とからなる導体対23が複数形成されるので、複数の導体対23を使用して電位差の測定をすることが可能となる。そのため、腐食検知電線1は、腐食状況をリアルタイムに高精度で検知することが可能となる。また、本例の腐食検知電線1は、電解液を付着させることが可能な面積も増大するため、電位差の測定に有利である。
【0056】
また、腐食検知電線1は、電気絶縁体211、222に紫外線硬化型樹脂を用いている。そのため、腐食検知電線1は、その製造時に、第1導体21の外周に電気絶縁体211を、第2導体22の外周に電気絶縁体222を、それぞれごく薄く押し出し被覆することができる。それ故、腐食検知電線1は、第1導体21、第2導体22の外周が比較的薄い肉厚の電気絶縁体211、222によってそれぞれ被覆された電線とすることができる。その他の作用効果は、実施例1と同様である。
【0057】
(実施例3)
実施例3の腐食検知電線について、
図7、
図8を用いて説明する。
【0058】
本例の腐食検知電線1は、隣り合う導体対23、23の間に位置するシース3表面に溝部5が形成されている。本例では、溝部5は、シース3の平坦な両表面にそれぞれ形成されている。なお、溝部5は、シース3の片側表面にだけ形成されていてもよい。また、端子対23間は、離間した状態とされている。その他の構成は、実施例2と同様である。
【0059】
次に、本例の腐食検知電線1の作用効果について説明する。
【0060】
本例の腐食検知電線1は、
図8に例示するように、溝部5に沿って腐食検知電線1を電線先端部側から部分的に分割することにより、腐食検知部4を複数(本例では2つ)形成することができる。
【0061】
そのため、腐食検知電線1は、腐食状況を検知したい複数の部分に、分割された複数の腐食検知部4をそれぞれ配置し、腐食状況をリアルタイムに検知することが可能となる。その他の作用効果は、実施例2と同様である。
【0062】
<実験例>
以下、実験例を用いてより具体的に説明する。
実施例2の構成を有する腐食検知電線を用い、腐食試験を行った。具体的には、5%食塩水または10%食塩水に腐食検知部を浸し、第1導体と第2導体との間の電位差を電位差測定器により測定した。また、比較のため、食塩水に腐食検知部を浸すことなく、第1導体と第2導体との間の電位差を電位差測定器により測定した。なお、第1導体は、具体的には、軟アルミニウムからなり、第2導体は、具体的には、軟銅からなる。電位差測定器には、GRAPHTEC Corporation社製のGL220 Ver.1.02を用い、電位差の測定間隔は1秒とした。その結果を、
図9に示す。
【0063】
図9に示されるように、腐食検知部に食塩水が接触していない場合には、第1導体と第2導体との間の電位差が0になっている。これに対し、腐食検知部に食塩水が接触した場合には、第1導体と第2導体との間に電位差が生じることがわかる。したがって、この結果によれば、電位差データに基づいて腐食環境を定量化することができるといえる。よって、上記腐食検知電線によれば、腐食状況をリアルタイムに検知することができるといえる。
【0064】
以上、本発明の実施例について詳細に説明したが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨を損なわない範囲内で種々の変更が可能である。